説明

パッケージの製造方法

【課題】
フリットにより封止されたパッケージのレーザによる封止工程で多発していたクラックの発生を抑制した、信頼性の高いパッケージの製造方法を提供する。
【解決手段】
対向配置させた2枚の基体の間に封止された空間を有するパッケージを製造する方法であって、前記2枚の基体の間に、前記2枚の基体が重なる方向からみたときに、リング状の1部分が第1端と第2端とで途切れたパターンを形成するようにフリットを配置するフリット配置工程と、前記フリットをトレースするようにレーザを照射し、前記フリットを溶融させて前記2枚の基体を接合するレーザ照射工程と、前記フリットの前記パターンと合わせて閉空間を形成するように、前記フリットの前記第1端と前記第2端との間に封止部材を配置して、前記2枚の基体の間に封止された空間を形成する封止工程と、を含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は周囲の環境に敏感な電子部品等を保護するための封止された空間を有するパッケージの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、色素増感型太陽電池素子や、有機EL素子など、周囲の環境に敏感な電子部品を保護するパッケージの製造方法として、上下2枚のガラス間にフリットをリング状に設置し、このフリットで溶着する方法が知られている。
【0003】
例えば、電子部品として、有機EL素子や色素増感型太陽電池素子がある。これらは有機物質であるため、熱に弱く、一般的には、130℃程度の温度にしか耐えられない。これに対して、フリットの融点は低融点のものであっても400℃程度であり、全体を均一に加熱する方法では素子を破壊してしまうため、局所的な加熱が求められる。この局所的な加熱の方法としてフリット部分にのみレーザを短時間照射し、局所的に温度を上昇させることで、素子部を高温とならないようにしながら封止するレーザ溶着の方法が提案されている。
【0004】
従来のパッケージの製造方法を図4を用いて説明する。図4はパッケージの要部平面図である、なお、封止すべき電子部品の図示を省略している。
【0005】
上ガラス101、下ガラス102をリング上のフリット103を介して積層し、a部からb部,c部,d部を経てa部に戻るように上ガラス101上からレーザを照射しながら移動させ、フリットを溶融させることで上ガラス101と下ガラス102とを溶着させ、フリット103が固化することでフリット103に囲まれた領域に封止された空間を有するパッケージを製造することができる。
【0006】
ここで、レーザをa点に戻し溶着が完了する直前にガラス基板101,102やフリット103にクラックが多発するため、その対策として、レーザの出力を弱めたり、フォーカスをぼかしたり、移動速度を遅くする方法等が提案されていた。
【特許文献1】特開2008−527655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の方法では、クラックを回避しようとして、レーザの出力を弱めるとフリットをその融点まで高めるのに時間がかかり、その間に熱が電子部品にまで伝わり、電子部品を熱損傷させてしまうという問題がある。また、レーザのフォーカスをぼかしたり、レーザの移動速度を遅くしたりすると、フリット103やガラス基板101,102のクラックは防止できるが、電子部品の温度も上昇してしまい、電子部品を熱損傷させてしまうという問題がある。つまり、電子部品の熱損傷を防ぐ方法と、フリット103やガラス基板101,102のクラックを防ぐ方法とは、同時に満たされないという問題を有していた。このように、従来の方法では、内部に収容する電子部品によっては適用できない場合があるという問題点があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みて案出されたものであり、その目的は、クラックの発生を抑制した、信頼性の高く汎用性の高いパッケージの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のパッケージの製造方法は、(1)対向配置させた2枚の基体の間に封止された空間を有するパッケージを製造する方法であって、前記2枚の基体の間に、前記2枚の基体が重なる方向からみたときに、リング状の1部分が第1端と第2端とで途切れたパターンを形成するようにフリットを配置するフリット配置工程と、前記フリットをトレースするようにレーザを照射し、前記フリットを溶融させて前記2枚の基体を接合するレーザ照射工程と、前記フリットの前記パターンと合わせて閉空間を形成するように、前記フリットの前記第1端と前記第2端との間に封止部材を配置して、前記2枚の基体の間に封止された空間を形成する封止工程と、を含むものである。
【0010】
また、本発明のパッケージの製造方法は、(2)上記(1)の方法において、前記封止工程において、前記封止部材としてガラス部材を用い、溶融させた前記ガラス部材を前記フリットの前記第1端と前記第2端との間に流し込んだ後に固化させるものである。
【0011】
また、本発明のパッケージの製造方法は、(3)上記(2)の方法において、前記封止工程は、前記レーザ照射工程において前記第1端または前記第2端の前記フリットが溶融されてから固化される間に行なうものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の(1)のパッケージの製造方法によれば、フリットと封止部材とで閉空間を形成するので、これにより2枚の基体を接合するとともに、フリットと封止部材と2枚の基体とで囲まれた領域に封止された空間(以後、単に封止空間という)を形成することができる。
【0013】
ここで、従来のパッケージの製造方法においてクラックが発生するメカニズムについて、鋭意検討を重ねた結果、クラックの発生は、レーザを走査させて図4のa部に戻る直前の、レーザを中心としたフリット103における温度分布が原因であることを突き止めた。つまり、レーザ照射部のフリット103は高温で、その周囲は同心円上に温度分布を有し、照射部に比べ低温となる。この温度の高いレーザ照射部ではフリット103が膨張し、温度が低くなる周囲ではフリット103が収縮しようとする。すなわち、レーザ照射部の周囲のフリット103には、同心円状に引っ張り応力が高く働く。ここで、レーザ照射部の後方(レーザ走査方向に対して後方)では、フリット103が溶融した状態でまだ完全に固化していないのでクラックは生じないが、すでに溶着されたレーザ照射のスタート地点であるa部ではフリット103は温度が低下し完全に固化されているので変形することができず、引っ張り応力によりクラックが発生してしまっていることが分かった。つまり、レーザ照射において、一度固化したフリットに再度レーザによる温度分布が生じて引っ張り応力が生じることが原因であり、それはレーザ照射の始点及び終点で発生することが分かった。そして、このような現象は、レーザにより局所的な温度分布が発生する場合に特有なものであることが分かった。
【0014】
上述のようなメカニズムの判明を受けて、本発明においては、レーザ照射により溶融・固化することにより2枚の基体を接合するフリットのパターンは第1端と第2端とで途切れているため、レーザ照射の終点においても既に2枚の基体を接合して固化しているフリットに再度レーザが照射されることがない。したがって、レーザ照射の終点においても、一度固化したフリットに再度レーザ照射による温度分布が生じることはなく、それに伴う引っ張り応力が発生することもない。そして、別工程により封止部材を第1端と第2端との間に配置することで封止空間を形成する。このため、フリットおよび2枚の基体におけるクラックの発生を抑制することができ、信頼性の高いパッケージの製造方法を提供することができる。
【0015】
また、従来のようにレーザの出力を弱めたり、焦点をぼかしたり、走査速度を遅くしたりするなど、レーザの照射時間や照射面積を必要以上に設ける必要がなくなるので、レーザによる熱がフリットを中心とした局所的な部分のみに伝達され、中に収容すべき電子部品が熱損傷を受けることを抑制することができる。このため、中に収容する電子部品によらず、クラックの発生を抑制したパッケージを製造することができるので、汎用性の高いパッケージの製造方法を提供することができる。
【0016】
また、本発明の(2)のパッケージの製造方法によれば、封止工程を、溶融させたガラス部材を流し込むだけでよいので、生産性の高いパッケージの製造方法を提供することができる。
【0017】
また、本発明の(3)のパッケージの製造方法によれば、第1端または第2端においてフリットと封止部材との接合強度を高めることができるとともに、溶融した封止部材による熱が第1端または第2端のフリットに伝達しても、まだ固化していないことから変形するなどして温度分布による応力を緩和することができるので、さらに信頼性の高いパッケージの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のパッケージの製造方法について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明のパッケージの製造方法により製造したパッケージの(a)は上方透視図,(b)は(a)のI―I線による断面図である。図1において、1、2は、2枚の基体である第1基体,第2基体、3は2枚の基体1,2間に配置されたフリット、4は封止部材である。ここで、フリット3は、リング状の一部が第1端3a,第2端3bとで途切れたパターンとなっており、封止部材4はこの第1端3a,第2端3bとの間に配置され、フリット3と封止部材4とで閉空間を形成している。フリット3と封止部材4と第1および第2の基体1,2との間の封止空間には、色素増感型太陽電池素子や、有機EL素子等の電子部品が配設されているが、図示を省略している。なお、理解を容易にするために、フリット3および封止部材4に網掛けパターンを付している。また、以下の図面についても同様であるが、同様の箇所には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
本発明のパッケージの製造方法は大きく分けて3つの工程からなる。以下、各工程について詳述する。
【0021】
〔フリット配置工程〕
基体1,2の間にフリット3を配置する。
【0022】
第1基体1は、封止空間を保つ強度を有していれば特に限定されず、セラミック基板,ガラス基板,有機樹脂基板等を用いることができる。
【0023】
第2基体2は、封止空間を保つ強度を有しているとともに、レーザ照射による熱を後述するフリット3に伝達することができれば特に限定されず、例えば、ガラス基板等を用いることができる。第2基体2は、第1基体1と同じ材料でもよいし、異なる材料でもよいが、両者の熱膨張係数が近いことが好ましい。また、図では、第2基体2は、第1基体1と同一形状であるが、両者の間に封止空間を形成できれば異なる形状であってもよい。
【0024】
また、第1および第2基体1,2は、内部に収容する電子部品に応じて選択すればよい。例えば、電子部品として色素増感型太陽電池素子や、有機EL素子を用いる場合には、透光性を有するものを選択し、第1または第2基体1,2を電子部品を形成する基板として用いる場合には、電子部品の製造に適したものを選択する。
【0025】
フリット3は、ガラス技術分野では、添加剤が含まれたパウダー状のガラス原料を指すが、ガラス技術分野以外では、一般的にガラス原料が溶融されて形成されたガラスを指すので、本明細書では、この両方を示すものとする。フリット3は、レーザを効率よく吸収して、溶融、あるいは軟化するために、光吸収材が含まれることが望ましい。また、低融点であることが望ましく、第1及び第2基体1,2との熱膨張差を小さくするよう組成を調整してもよい。とくにフリット3の材料や、その組成は、レーザ照射により加熱され溶融し、その後固化することで第1および第2基体1、2を接合できれば特に限定はされず、例えば低融点のはんだガラスなどを用いることができる。
【0026】
フリット3は第1基体1,第2基体2の間にリング状の一部が途切れたパターンに配置されればよく、第1基体1上に配置しても、第2基体2上に配置してもよい。また、図面では略直方形状であるが、楕円状でも多角形状でもよい。
【0027】
このフリット3の第1端3aと第2端3bとは、一方にレーザが照射されたときにレーザにより生じる温度分布が他方のフリット3を溶融させない程度に間隔をあけて互いに近接配置されていれば、その間隔は自由に設定できるが、例えば、後述するレーザの径と同程度から3倍以内とすればよい。
【0028】
さらに詳述すると、このフリット3の第1端3aと第2端3bとは、一方にレーザが照射されたときにレーザにより発生した温度勾配が、他方に影響を与えない位置まで離す事が望ましい。レーザ照射部は高温で、その周囲は低温となり、低温部には、引っ張り応力が発生するが、この応力は、温度勾配に比例する。よって、レーザを照射する一方の端部と、レーザが照射されない他方の端部の位置関係は、レーザを照射されない他方の端部での温度勾配が小さくなる距離まで、隔てて設けることが、クラックを回避する上で望ましい。レーザによって発生する温度勾配は、レーザの出力、レーザの照射面積、第1、第2基体1,2の厚みや材質、表面状態、雰囲気状態等により変化し、一概に距離と温度勾配の関係を規定できないが、一般的にレーザによる温度勾配は、レーザ照射部近辺で強くなり、ある程度離れると小さくなる。よって、概してレーザ照射径と同一から、レーザ照射径の10倍くらいの距離を隔てて、第1端3aと第2端3bを設けることが望ましい。
【0029】
また、フリット3の幅は、0.3mmから3.0mmであることが望ましい。フリット3の幅が0.3mm以上の場合には、十分な接着面積を確保できるので、フリット3に不連続部や隙間が発生することにより封止が不完全となることに起因する密閉不良の発生を抑制することができる。また、十分な接着力で確実に基体1,2と接続されるので、信頼性の高いパッケージを提供できる。フリット3の幅が3.0mm以下であることから、溶融に多くの熱を必要としないため好ましい。特に、熱に弱い電子部品を封止空間に収容する場合にも、フリット3の周辺部分が高温にならないので、フリット3溶融時の熱が電子部品に伝達してしまうことを抑制することができる。よって、フリット3の幅は、0.3mmから3.0mmの範囲が望ましい。また、フリット3の高さは、3μmから500μmの間が望ましい。フリット3の高さが3μm以上であれば、基体1,2を間隔を開けて保持することができると共に、フリット3における隙間や不連続部分の発生を抑制することで安定して封止空間を保持することができる。一方、高さが500μm以下であれば、レーザ照射による熱が厚み方向にも伝達しやすく、溶融に必要な熱量を抑制することができる。これにより、熱に弱い電子部品を封止空間に収容する場合においても、フリット3の周辺部分が高温にならず、レーザ照射による熱が電子部品に伝達することを抑制できるので、収容する電子部品によらず適用可能な汎用性の高いパッケージの製造方法を提供できる。従って、フリット3の高さは3μmから500μmの間が望ましい。
【0030】
〔レーザ照射工程〕
このように第1基体1,第2基体2を、フリット3を介して積層した状態で、第2基体2を介してフリット3にレーザが照射されるようにレーザを走査する。レーザ照射によりフリット3を溶融した後固化することで、第1基体1と第2基体2とを接合する。
【0031】
ここで、照射するレーザの径は、フリット3の幅全体を十分に発熱させ、幅全体において溶融させるために、フリット3の幅をD1、レーザの径をD2とすれば、1.01D1<D2<3.0D1の範囲が望ましい。D2が1.01D1よりも大きければ、レーザ照射の位置ずれや、フリット3の寸法誤差は発生しても、レーザをフリット3幅全体に当てることができ、部分的に未溶着となることに起因する密閉不良の発生を抑制できる。また、D2が、3.0D1より小さければ、照射したエネルギーを効率的に利用できるとともに、フリット3の外側に漏洩するレーザ照射面を小さく抑えることができるので、レーザ漏洩部による周囲部材の高温化を抑制し、熱的な不安定の発生を抑制することができる。よって、レーザ径D2は1.01D1<D2<3.0D1の範囲が望ましい。
【0032】
レーザの走査方法は、1本のレーザで行なっても、複数のレーザで行なってもよいが、一度レーザ照射により溶融し固化したフリットに再度レーザ照射されないように、個々のレーザの軌跡が重複しないように設定する。例えば、1本のレーザで行なう場合には、第1端3aから第2端3bまでフリット3のパターンをトレースさせればよい。2本のレーザで行なう場合には、例えば、フリット3のパターンを2区間に分割し、分割点A点から第1端3a,第2端3bまで互いに離れるように走査させればよい。
【0033】
このようにレーザを走査することで、レーザ照射の終点において熱が伝達する範囲内に一度固化したフリット3が存在しないため、レーザ照射に起因するフリット3及び基体1,2のクラック発生を抑制することができる。
【0034】
〔封止工程〕
次に、フリット3の第1端3aと第2端3bとの間の未溶着部分に封止部材4を配置して基体1,2とフリット3,封止部材4で囲まれる封止空間を形成する。
【0035】
封止部材4は、フリット3のパターンと合わせて閉空間を形成するように配置されれば、特にその形状に限定はない。図1(a)に示すように、フリット3の第1端3aと第2端3bとの間にフリット3の幅と等しい幅で配置してもよいし、図2(a)に示すようにフリット3の幅よりも太くてもよい。また、閉空間を実現できればフリット3の幅よりも細くてもよい。さらに、図2(b)に示すように、フリット3の第1端3a,第2端3bを覆うような形状としてもよいし、図2(c)に示すように、平面視でフリット3のパターンの外側から第1端3aと第2端3bとの間を塞いでもよい。
【0036】
この封止部材4の配置方法は、フリット3と共に封止空間を封止することができればその方法に限定はないが、例えば以下のような方法を用いればよい。
【0037】
第1の方法
レーザ照射工程の後、溶融したガラス部材からなる封止部材4を第1端3aと第2端3bとの微小な間隙をつなぐように流し込んで固化する。
【0038】
溶融した封止部材4の供給方法は、例えば、フリット配置工程において、封止部材4の予備パターン4’を形成しておき、レーザ照射工程の後、続いて封止部材4を構成するための予備パターン4’にレーザを照射して溶融させればよい。封止部材4の予備パターン4’としては、フリット3のパターンと一体化したパターンでもよいし、分離したパターンでもよい。例えば、図3(a)に示すようにドット状のパターンをフリット3の第1端3aと第2端3bとの間に両者から間隔をあけて設けてもよいし、図3(b)に示すように、フリット3の第1端3aまたは第2端3bに連続して設けてもよいし、図3(c)に示すように、平面視でフリット3のパターンの外周部側に第1端3aと第2端3bとの間隔に対応するように配置してもよい。
【0039】
このようにして供給された溶融した封止部材4を流し込むための推進力は、基体1,2を傾けることで発生する重力を用いてもよいし、温風やプローブを用いた外力を用いてもよい。例えば、重力を用いる場合には、図3(a)では左右の辺が順に下になるように傾ければよいし、図3(b)では左側が下になるように、図3(c)では上側が下になるように、それぞれ傾ければよい。
【0040】
ここで、この封止部材4の配置を、レーザ照射工程による第1端3aまたは第2端3cにおけるフリット3が溶融している状態で行なうことが好ましい。このようにすることで、溶融したフリット3と封止部材4とが強固に接合し、両者の接続部分においても隙間なく接続することができるので、安定した封止空間を実現できる。また、溶融した封止部材4による熱がフリット3の第1端3aまたは第2端3cに伝達しても、フリット3は溶融しているので変形するなどして封止部材4による応力を緩和することができ、より信頼性の高い製造方法を提供することができる。なお、この封止部材4による熱の伝達は、そもそも必要量が極少量のため熱容量も小さく、かつ、レーザ照射による熱の伝達に比べれば極めて小さいものなので、第1端3aまたは第2端3cのフリット3が固化していても、従来技術のような大きな問題とはならない。
【0041】
なお、図3(b)に示すように、封止部材4の予備パターン4’がフリット3のパターンに連続して配置されて一体化している場合には、予備パターン4’へのレーザ照射時の温度分布が、予備パターン4’と連続しているフリット3(図では第2端3b)にも伝達するので、フリット3の予備パターン4’と連続している部分(図では第2端3b)が溶融して状態で行なうことが好ましい。
【0042】
第2の方法
外部から封止部材4を供給して、フリット3の第1端3aと第2端3bとの間に配置する。例えば、溶融したガラス部材を注入後固化することで封止部材4を配置してもよいし、有機樹脂からなる封止部材4を注入して配置してもよい。
【0043】
このようにして配置される封止部材4の材料は、その配置方法によって多少の制約が生じるが、基本的にはフリット3と共に封止空間を封止することができればその材料に限定はない。例えば、封止部材4の配置方法として第1の方法を採用する場合には、フリット3と同じ材料を用いることもできる。また、第2の方法を採用する場合には、有機樹脂材料などを用いることができるが、基体1,2と熱膨張係数が近い材料を用いることが好ましい。
【0044】
上記3つの工程を経ることで、基体1,2,フリット3,封止部材4とで囲まれる封止空間を有するパッケージを提供することができる。
【0045】
このようにして、フリット3による基体1,2の接合と封止部材4による基体1,2の接合との2段階で封止空間を形成することで、従来のように、一度固化したフリット3が再溶融することに起因するフリット3及び基体1,2に生じるクラック発生を抑制しつつ、封止空間を形成することができるので、信頼性の高いパッケージの製造方法を提供することができる。
【0046】
特に、従来のようにレーザの出力を弱めたり、焦点をぼかしたり、走査速度を遅くしたりするなど、レーザの照射時間や照射面積を必要以上に長くしたり、広範囲にしたりするなどする必要がなくなるので、必要最小限のレーザ照射によりパッケージを製造することができる。すなわち、レーザによる熱がフリット3を中心とした局所的な部分のみに伝達され、中に収容すべき電子部品が熱損傷を受けることを抑制することができる。このため、例え、熱に弱い有機物を用いた電子部品、例えば、有機EL素子や色素増感型胎動電池素子などを封止空間の内部に収容した場合においても、レーザ照射の熱が電子部品に伝達することなく、パッケージを製造することができる。つまり、熱に対する耐性の低い電子部品に対しても、電子部品が熱損傷を受けることなくパッケージを製造することができるので、このような電子部品の封止に適している。このように、内部に収容する電子部品によらずクラックの発生を抑制した、汎用性の高いパッケージの製造方法を提供できる。
【0047】
本発明のパッケージの製造方法は、レーザの軌跡の終点をフリットの途切れる部分に設定することで、既に固化したフリット3を再溶融させることを防ぐことが重要であり、用いるレーザの本数や、各レーザの軌跡の始点および終点、封止部材4の配置方法は自由に設定できる。
【0048】
例えば、図1(a)では、フリット3のパターンを2区間に分ける分割点Aをその分割区間の長さが等しくなるようにしているが、異なるようにしてもよい。
【0049】
さらに、また、図1〜3では、フリット3の途切れる部分(第1端3aと第2端3bとの間)を封止空間の平面形状の角部に設けたが、直線部分に設けてもよい。各レーザの始点、および、終点をフリット3の直線部分に設けた場合には、始点、終点で発生する熱応力が、フリット3の角部の形状的な要因による応力の集中が付加される影響を回避でき、より安定に封止を行う事ができる。
【0050】
また、図1では、第1基体1,第2基体2として平らな基板状のものを例に説明したが、一方がキャップ状となっていてもよい。この場合には、基板状の一方の基体が、キャップ状の他方の基体の蓋をするように両者を対向させ、キャップ状の基体の開口部側上面にフリット3や封止部材4を配置すればよい。
【実施例】
【0051】
外形寸法60×60×厚み1.1mmのガラス基板2枚を第1及び第2基体1,2として、図1(a)に示すようなリング状の一部分が途切れたパターンのフリット3を介して積層し、このガラスフリット3をレーザで溶着することで、パッケージを製造した。フリット3は上下ガラス間の30×30mmの領域に幅1mmでほぼリング状に形成した。途切れた部分(第1端3aと第2端3b)の間隔は1mmとした。この基本条件のもと、第1端3aから第2端3bまでフリット3のパターンをトレースするようにレーザ照射を行ない、その後溶融したガラス部材からなる封止部材4を第1端3aと第2端3bとの間に流し込んでパッケージを100個製造した。その結果、100個すべてのパッケージにクラックが発生することはなかった。
【0052】
比較のため、従来と同一の製造方法で100個のパッケージを製造した。なお、フリット3のパターンは、途切れた部分のないリング状とした。その結果、100個すべてのパッケージにクラックの発生が見られた。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】(a),(b)はそれぞれ、フリットにより封止されたパッケージを示す平面図および断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、それぞれ本発明のパッケージの製造方法における封止部材の配置例を示す平面図である。
【図3】(a)〜(c)は、それぞれ本発明のパッケージの製造方法における封止部材の予備パターンの配置例を示す平面図である。
【図4】従来のパッケージの製造方法を示す平面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 第1基体
2 第2基体
3 フリット
3a 第1端
3b 第2端
4 封止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置させた2枚の基体の間に封止された空間を有するパッケージを製造する方法であって、
前記2枚の基体の間に、前記2枚の基体が重なる方向からみたときに、リング状の1部分が第1端と第2端とで途切れたパターンを形成するようにフリットを配置するフリット配置工程と、
前記フリットをトレースするようにレーザを照射し、前記フリットを溶融させて前記2枚の基体を接合するレーザ照射工程と、
前記フリットの前記パターンと合わせて閉空間を形成するように、前記フリットの前記第1端と前記第2端との間に封止部材を配置して、前記2枚の基体の間に封止された空間を形成する封止工程と、を含むパッケージの製造方法。
【請求項2】
前記封止工程において、前記封止部材としてガラス部材を用い、溶融させた前記ガラス部材を前記フリットの前記第1端と前記第2端との間に流し込んだ後に固化させる、請求項1に記載のパッケージの製造方法。
【請求項3】
前記封止工程は、前記レーザ照射工程において前記第1端または前記第2端の前記フリットが溶融されてから固化される間に行なう、請求項2に記載のパッケージの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−129348(P2010−129348A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302307(P2008−302307)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】