説明

パッケージトレイの支持構造

【課題】軸部にかかる負荷を軽減し、軸部の折損を未然に防ぐ。
【解決手段】本発明は、車両の荷室30に設けられたパッケージトレイ10を棚部33側に対して回動可能に支持するパッケージトレイ10の支持構造であって、パッケージトレイ10側または棚部33側のいずれか一方に設けられ、パッケージトレイ10の回動軸に沿って延びるヒンジピン32と、同他方に設けられ、ヒンジピン32を支持する収容溝21と、収容溝21に延設され、ヒンジピン32が弾性限界を超えない所定量の負荷を受けた際に、その所定量の負荷が軽減する方向にヒンジピン32を逃がす延長溝22とを備えた構成としたところに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体側に対して回動可能に支持されたパッケージトレイの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のパッケージトレイの支持構造として、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。パッケージトレイを支持する車体側には、軸部が設けられており、パッケージトレイ側には、軸部を支持する軸受け部が設けられている。これにより、パッケージトレイは、車体側に対して回動可能に支持されている。このようなパッケージトレイは、シートバックの車両後方側に配置されており、シートバックとバックドアとの隙間を塞ぐことにより、荷室内の荷物を外部から遮蔽することができる。そして、パッケージトレイはバックドアの開閉動作と連動して軸部を中心に上下方向に回動可能とすることで荷室内への荷物の出し入れを容易にしている。
【特許文献1】特開平9−210030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、パッケージトレイの設定位置よりも高さを有する荷物を荷室に搭載した場合、パッケージトレイが荷物と干渉して軸部を中心として後方側が上方に傾いた姿勢のまま設定位置に戻らなくなり、閉じたときのバックドアの位置よりも外側にパッケージトレイが突き出た状態となってしまう。このような状態で、バックドアを閉めようとすると、バックドア内壁部(ウィンドウ部)がパッケージトレイに干渉することで、パッケージトレイが車両前方に押し込まれるとともに、軸部に弾性限界を超える負荷がかかることで軸部が折損するおそれがある。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、軸部にかかる負荷を軽減し、軸部の折損を未然に防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車両の荷室に設けられたパッケージトレイを車体側に対して回動可能に支持するパッケージトレイの支持構造であって、パッケージトレイ側または車体側のいずれか一方に設けられ、パッケージトレイの回動軸に沿って延びる軸部と、同他方に設けられ、軸部を支持する軸受け部と、軸受け部に延設され、軸部が弾性限界を超えない所定量の負荷を受けた際に、その所定量の負荷が軽減する方向に軸部を逃がす延設部とを備えた構成としたところに特徴を有する。
【0006】
このような構成によると、パッケージトレイが外力を受けて軸部に弾性限界を超えない所定量の負荷がかかった際に、軸部を軸受け部から延設部に逃がすことができる。このような事態は、例えば荷室に大きな荷物を搭載してパッケージトレイが軸部を中心として後方側が上方に傾いた姿勢となり、そのままバックドアを閉めようとしたときに、バックドア内壁部がパッケージトレイに干渉することで、パッケージトレイが車両前方に押し込まれる場合に起こり得る。このような場合に、軸部を軸受け部から延設部に逃がすことで軸部にかかる負荷を軽減することができ、軸部の折損を未然に防ぐことができる。
【0007】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
軸受け部は、軸部を着脱、収容可能な第1開口部が形成された収容溝によって構成され、収容溝は、パッケージトレイを水平姿勢とした際に収容溝の下側に配置された支持部と、収容溝の上側に配置された周壁部との間に形成されており、支持部は、所定量の負荷を受けた軸部によって押圧された際に、周壁部から離れる方向に撓み変形することにより、軸部を軸受け部から延設部へ移動させる構成としてもよい。
【0008】
このような構成によると、収容溝に収容された軸部が所定量の負荷を受けることで支持部を押圧し、支持部が周壁部から離れる方向に撓み変形することによって、軸部の軸受け部から延設部への移動が許容される。
【0009】
延設部は、収容溝と連通して軸部を収容する第2開口部が形成された延長溝を有し、第2開口部には、延長溝から出る順方向への移動は許容するものの延長溝に入る逆方向への移動は許容しない逆止片が設けられている構成としてもよい。
【0010】
このような構成によると、収容溝に収容された軸部が逆止片を通過して延長溝から出た後、再び逆止片を通過して延長溝に進入することを防ぐことができる。
【0011】
周壁部は、収容溝と延長溝の境界部分である収容部の連絡部分に配置された第1突出部と、その第1突出部よりも収容溝の第1開口部に近い側に配置された第2突出部とを有し、軸部は、支持部、第1突出部、および第2突出部の少なくとも3点で支持されており、第1突出部は撓み不能に設けられている一方、第2突出部は撓み可能に設けられている構成としてもよい。
【0012】
このような構成によると、軸部は、通常、収容溝の出入口部分となる第1開口部から収容溝に進入し、第2突出部を通過した後、支持部、第1突出部、および第2突出部の少なくとも3点で支持される。ここで、第2突出部は撓み可能とされているから、軸部は容易に第2突出部を通過することができる一方、第1突出部は所定量より少ない負荷では撓み不能とされているから、軸部が容易に第1突出部を通過して延長溝へ移動してしまうことはない。また、収容部の連絡部分を通って軸部を収容溝から延長溝に移動させる動作は、専ら支持部の弾性に依存することになるから、所定量の負荷を管理しやすくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、軸部にかかる負荷を軽減することができ、軸部の折損を未然に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図8の図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態におけるパッケージトレイ10の取付状態を示した図であり、パッケージトレイ10を簡略化して図示してある。パッケージトレイ10は、車両における荷室30の上方に配置されている。荷室30の後方には、後部開口40が設けられており、車体側には、後部開口40を上下方向に開閉可能なバックドア(図3参照)50が取り付けられている。パッケージトレイ10は、リアシート60のシートバックとバックドア50との隙間を塞ぐことにより、荷室30内の荷物を外部から遮蔽する目的で使用される。なお、以下の説明において前方とは車両前後方向を基準として車両前方のことをいい、後方とは車両前後方向を基準として車両後方のことをいい、幅方向とは車幅方向のことをいうものとする。
【0015】
パッケージトレイ10は、その前方側を回動中心として、水平姿勢(図1にて実線で示したパッケージトレイ10の姿勢)と前傾姿勢(図1にて二点鎖線で示したパッケージトレイ10の姿勢)との間で、後端部が上下方向に回動可能とされている。パッケージトレイ10の後端部とバックドア50は、細長い紐(図示せず)によって互いに連結されており、バックドア50の開閉動作に連動してパッケージトレイ10の後端部が上下方向に回動する。つまり、バックドア50を開けると、パッケージトレイ10が水平姿勢から前傾姿勢に回動し、バックドア50を閉じると、パッケージトレイ10が前傾姿勢から水平姿勢に回動する。
【0016】
荷室30の幅方向両側を構成する側壁31には、図2に示すように、一対のヒンジピン(本発明の「軸部」の一例)32がそれぞれ設けられている。両ヒンジピン32は、両側壁31の上部に形成された一対の棚部33に一体成形されている。両ヒンジピン32は丸棒状をなし、同軸上で互いに対向する側である荷室内側に突出している。両ヒンジピン32は、図1に示すように、上下方向については水平姿勢となったパッケージトレイ10の設定位置(リアシート60のシートバック上部の後方付近)に配置されている。なお、ヒンジピン32は、側壁31とともにポリプロピレンなどの合成樹脂材料によって構成されている。そして、棚部33の上方にはリヤピラー35が位置している。
【0017】
棚部33には、水平姿勢となったパッケージトレイ10の幅方向側縁部を支持する段差部34が設けられている。段差部34は、ヒンジピン32のやや後方からパッケージトレイ10の後端側に至る長さ範囲で形成されている。段差部34の前端部には、図2に示すように、斜め下方に傾斜した前端傾斜面34Aが形成されている。この前端傾斜面34Aの傾斜角度は、前傾姿勢となったパッケージトレイ10の可動範囲を規制するために設定されている。前傾姿勢となったパッケージトレイ10の前端部は、前端傾斜面34Aに接触可能とされている。これにより、パッケージトレイ10の回動動作の際に棚部33の上方に位置するリヤピラー35との干渉を防止することができる。
【0018】
パッケージトレイ10の前方側における幅方向両側には、図3に示すように、合成樹脂材料からなる一対のヒンジカラー(本発明の「軸受け部」の一例)20がそれぞれ取り付けられている。両ヒンジカラー20は、上述した両ヒンジピン32によって軸支されており、これによってパッケージトレイ10が水平姿勢と前傾姿勢との間を回動可能とされている。
【0019】
ヒンジカラー20は、図7ないし図8に示すように、ベース部20Aと、裏当て部20Bと、ベース部20Aおよび裏当て部20Bを連結するヒンジ部20Cとを備えている。ベース部20Aの裏面には、図8に示すように、ロック突部20Dが突出しており、ロック突部20Dの側面には、係止爪20Eが突出して設けられている。一方、裏当て部20Bには、ロック突部20Dと嵌合可能なロック孔20Fが貫通形成されている。さらに、パッケージトレイ10の幅方向両側部においてロック孔20Fと対応する位置には、挿通孔(図示せず)が貫通形成されている。ロック孔20Fと挿通孔を同軸で配置し、ヒンジ部20Cを回動中心としてベース部20Aと裏当て部20Bを重ね合わせるようにすると、ロック突部20Dが挿通孔、ロック孔20Fに嵌合し、係止爪20Eがロック孔20Fの孔縁部に引っ掛かって係止する。したがって、ベース部20Aと裏当て部20Bとの間にパッケージトレイ10の側部が挟まれた状態となり、ヒンジカラー20がパッケージトレイ10に取り付けられる。なお、裏当て部20Bには、ヒンジ部20Cを回動中心としてベース部20A側に組み付けられたときに、次述する凹部20Gの裏面側との干渉を回避する切欠部が形成されている。
【0020】
ベース部20Aには、その表面側から裏面側に凹んだ形状をなし、ヒンジピン32を収容する凹部20Gが設けられている。この凹部20Gは、前後2箇所で下方に開口した略U字状をなし、互いに連通する収容溝(本発明の「軸受け部」の一例)21と延長溝(本発明の「延設部」の一例)22とから構成されている。延長溝22は、収容溝21の後方に延設されている。具体的には、収容溝21は、図3においてヒンジピン32が収容されている部分およびこの部分よりも前方に形成された部分である。一方、延長溝22は、図3においてヒンジピン32が収容されている部分よりも後方に形成された部分である。なお、以下において収容溝21のうち下方に開口した部分を収容溝21の第1開口部21Aというものとし、延長溝22のうち下方に開口した部分(延長溝22の両端部のうち収容溝21とは反対側となる端部)を延長溝22の第2開口部22Aというものとし、収容溝21の連絡部分21Bとは、収容溝21と延長溝22の境界部分をいうものとする。
【0021】
図6は、パッケージトレイ10が前傾姿勢となった状態でのヒンジカラー20の拡大図である。パッケージトレイ10を水平姿勢(図3参照)とした際における収容溝21および延長溝22の下側となる部分には、島状をなす支持部23が配置され、同上側となる部分には、周壁部24が配置されている。換言すると、収容溝21および延長溝22は、支持部23と周壁部24との間に形成されている。支持部23は、収容溝21および延長溝22の奥面との連結部を基端部として撓み可能である。
【0022】
なお、ベース部20Aの表面において周壁部24の上側には、周壁部24の外周形状に沿って突出する位置決めビード25が設けられている。この位置決めビード25は、パッケージトレイ10が棚部33に取り付けられた状態において棚部33の側壁33Aに対する幅方向の位置決めを行うためのものである。具体的には、位置決めビード25の突出高さは、位置決めビード25が棚部33の側壁33Aと接触したときに、パッケージトレイ10の幅方向両側部が棚部33の側壁33Aと接触しない高さに設定されている。
【0023】
周壁部24において支持部23の斜め前方には、可撓性を有する撓み突出部(本発明の「第2突出部」の一例)26が設けられている。撓み突出部26は、図8に示すように、幅方向両側に切欠部26aを形成することにより両持ち状に形成され、かつ、支持部23側に入り込ませることによりヒンジピン32の移動経路上に配置されている。また、撓み突出部26の板厚は、周壁部24の板厚とほぼ同じとされている。これにより、撓み突出部26は、支持部23から離れる方向に撓み可能である。
【0024】
周壁部24において支持部23の斜め後方には、固定突出部(本発明の「第1突出部」の一例)27が設けられている。すなわち、撓み突出部26は、固定突出部27よりも収容溝21の第1開口部21Aに近い側に配置されている。固定突出部27は、収容溝21の連絡部分21Bにおいて周壁部24を支持部23側に膨出させて略山形に形成することによりヒンジピン32の移動経路上に配置されている。また、固定突出部27の裏側には、図8に示すように、略三角形の板状をなす一対の補強リブ28が一体に設けられている。両補強リブ28によって、固定突出部27は、ヒンジピン32から負荷を受けても撓み変形しないようになっている。
【0025】
延長溝22の第2開口部22Aには、一対の逆止片29が設けられている。両逆止片29は、第2開口部22Aにおいて支持部23側と周壁部24側とに分かれて対向配置されている。両逆止片29は、先端に向かうほど延長溝22から離れる方向に延出されている。これにより、ヒンジピン32は、延長溝22から出る順方向への移動は許容されるものの延長溝22に入る逆方向への移動は禁止され、一旦延長溝22から出た後、再び延長溝22に戻ることはない。
【0026】
ヒンジピン32は、収容溝21の第1開口部21Aから収容溝21に進入し、撓み突出部26を撓ませつつ、撓み突出部26を乗り越えると、正規位置(図6において二点鎖線で示したヒンジピン32の位置)に保持される。この正規位置では、ヒンジピン32は、支持部23、撓み突出部26、および固定突出部27の少なくとも3点によって支持される。支持部23においてヒンジピン32との接触面には、細長い形状をなす接触突部23Aが設けられている。このため、正規位置にあるヒンジピン32は、支持部23に直接接触することなく接触突部23Aを介して間接的に接触する。また、周壁部24において接触突部23Aと上下方向に対向する位置(撓み突出部26と固定突出部27との間)には、対向突部24Aが設けられている。これにより、ヒンジピン32が撓み突出部26と固定突出部27との間に深く入り込んだ際に、ヒンジピン32が対向突部24Aに接触するようになっている。
【0027】
さて、荷室30にパッケージトレイ10の設定位置よりも高さを有する荷物P(図4参照)を搭載することにより、パッケージトレイ10が前傾姿勢のまま水平姿勢に戻らなくなる場合が考えられる。このような場合に、バックドア50を閉めようとすると、図4に示すように、バックドア50のウィンドウ部51とパッケージトレイ10の後端部とが干渉することになる。そうすると、パッケージトレイ10は、前方に押し込まれ、ヒンジカラー20を介してヒンジピン32にかかる負荷が増加する。このとき、ヒンジピン32が弾性限界を超えない所定量の負荷を受けると、支持部23が固定突出部27から離れる方向に撓み変形し、支持部23と固定突出部27との間隔が開いてヒンジピン32が収容溝21の連絡部分21Bを通過し、図5に示すように、ヒンジピン32が延長溝22に収容される。これにより、ヒンジピン32にかかる負荷が軽減し、ヒンジピン32の折損を未然に防ぐことができる。
【0028】
本実施形態は以上のような構成であって、続いてその作用を説明する。まず、パッケージトレイ10を車体側に取り付ける際には、収容溝21の第1開口部21Aからヒンジピン32を進入させる。このとき、延長溝22の第2開口部22Aには、一対の逆止片29が設けられているから、誤って延長溝22にヒンジピン32を進入させてしまうことがない。ヒンジピン32が収容溝21に正規に進入し撓み突出部26に接触したら、パッケージトレイ10を前方に押し込むことにより、撓み突出部26を撓み変形させ、この撓み突出部26を乗り越えさせる。すると、図3に示すように、ヒンジピン32は、支持部23、撓み突出部26、および固定突出部27の少なくとも3点で支持される。また、パッケージトレイ10を取り外す際は、取り付ける際の逆の作用でパッケージトレイ10を後方に引き寄せることで、ヒンジピン32が撓み突出部26を撓み変形させて乗り越え、収容溝21に移動し、第1開口部21Aから抜け出してパッケージトレイ10が取り外される。
【0029】
次に、荷室30に荷物を搭載する際には、バックドア50を開けることによりパッケージトレイ10を前傾姿勢にする。この状態では、パッケージトレイ10の後端部が上方に持ち上がっており、パッケージトレイ10の水平姿勢における設定位置よりも高さを有する荷物Pを搭載可能となっている。そして、このような荷物Pを荷室30に搭載した後、バックドア50を閉めようとすると、パッケージトレイ10は、荷物Pと干渉して水平姿勢に戻らなくなってしまう。このことに気が付かないまま無理にバックドア50を閉めようとすると、図4に示すように、バックドア50のウィンドウ部51がパッケージトレイ10の後端部に干渉し、パッケージトレイ10は前方に押し込まれる。
【0030】
このとき、ヒンジピン32は、ヒンジカラー20の支持部23や固定突出部27などに押圧されて負荷が増加するものの、ヒンジピン32にかかる負荷がヒンジピン32の弾性限界を超えない所定量の負荷に達すると、支持部23が固定突出部27から離れる方向に撓み変形する。これにより、ヒンジピン32は、収容溝21の連絡部分21Bを通過して延長溝22へ移動する。すると、ヒンジピン32にかかる負荷が軽減し、ヒンジピン32の折損を未然に防ぐことができる。
【0031】
ここで、パッケージトレイ10の前端部とリアシート60のシートバックとのクリアランスは、ヒンジピン32が延長溝22に収容されている場合であっても、パッケージトレイ10を前傾姿勢から水平姿勢に戻すことができる程度の余裕をもって設定されている。このため、パッケージトレイ10の前端部とリアシート60のシートバックとが干渉することによってヒンジピン32に負荷がかかり、ヒンジピン32が折損するおそれもない。さらに、そのまま車の運転を開始した場合には、ヒンジピン32とヒンジカラー20が安定していないため、車両の振動によってパッケージトレイ10も振動し、パッケージトレイ10が周辺部品に当接することで異音が発生するため、ヒンジピン32が正規位置にないことを検知できる。よって、ヒンジピン32を延長溝22の第2開口部22Aから外に出し、収容溝21の第1開口部21Aから再び正規位置にセットすることができる。
【0032】
以上のように本実施形態では、前傾姿勢となったパッケージトレイ10がバックドア50のウィンドウ部51によって前方に押し込まれたとしても、正規位置にあるヒンジピン32が延長溝22に逃げてヒンジピン32にかかる負荷を軽減することができるから、ヒンジピン32の折損を防ぐことができる。このとき、支持部23が固定突出部27から離間する方向に撓み変形するから、支持部23と固定突出部27との間を通過させてヒンジピン32を延長溝22に移動させることができる。さらに、固定突出部27は撓み不能とされているから、支持部23の大きさや形状などによって所定量の負荷を自在に設定することができる。
【0033】
また、延長溝22の第2開口部22Aに一対の逆止片29を設けたから、ヒンジピン32を収容溝21の第1開口部21Aに進入させる際に、誤って延長溝22に進入させてしまうことを規制できる。
【0034】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本実施形態ではパッケージトレイ10がバックドア50と干渉することでヒンジピン32に負荷がかかる場合を例示しているものの、本発明によると、例えばパッケージトレイ10を組み付ける作業を行う際にパッケージトレイ10を無理に押し込むなどしてヒンジピン32に負荷がかかる場合も含まれる。
【0035】
(2)本実施形態ではパッケージトレイ10側にヒンジカラー20を設けるとともに棚部33側にヒンジピン32を設けているものの、本発明によると、パッケージトレイ10側にヒンジピンを設けるとともに棚部33側にヒンジカラーを設けてもよい。
【0036】
(3)本実施形態ではパッケージトレイ10が前方に押し込まれる場合を例示しているものの、本発明によると、パッケージトレイ10が押し込まれる方向はいずれの方向であってもよい。
【0037】
(4)本実施形態ではヒンジピン32を収容する部分が溝状に形成された凹部20Gとされているものの、本発明によると、ヒンジピン32を収容する部分は必ずしも凹部20Gである必要はなく、凹部20Gの奥側、いわゆる車幅方向に貫通した長孔としてもよい。この場合、延長溝22の第2開口部22Aを閉じた形状とすることにより支持部23を周壁部24に連結してもよい。
【0038】
(5)本実施形態では支持部23が固定突出部27から離れる方向に撓み変形しているものの、本発明によると、支持部23の撓み方向は周壁部24から離れる方向であればよく、例えば支持部23を上下方向に撓み可能に設定してもよい。
【0039】
(6)本実施形態では逆止片29を一対設けているものの、本発明によると、逆止片を1つだけ設けてもよいし、あるいは3つ以上設けてもよい。
【0040】
(7)本実施形態では固定突出部27が撓み不能とされているものの、本発明によると、固定リブを撓み可能としてもよい。
【0041】
(8)本実施形態ではヒンジピン32を支持部23、撓み突出部26、および固定突出部27の3点で支持しているものの、本発明によると、上記3点に対向突部24Aを加えて4点でヒンジピン32を支持してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施形態1におけるパッケージトレイの取付状態を示した斜視図
【図2】図1におけるヒンジピンを拡大して示した一部切り欠き斜視図
【図3】水平姿勢となったパッケージトレイを示した側面図
【図4】前傾姿勢となったパッケージトレイにおいてヒンジピンが正規位置にて支持されている様子を示した側面図
【図5】前傾姿勢となったパッケージトレイにおいてヒンジピンが延長溝に収容されている様子を示した側面図
【図6】前傾姿勢となったパッケージトレイにおいてヒンジピンが正規位置から延長溝に移動する様子を拡大して示した一部切り欠き側面図
【図7】パッケージトレイに取り付けられる前のヒンジカラーを正面側から見た斜視図
【図8】パッケージトレイに取り付けられる前のヒンジカラーを背面側から見た斜視図
【符号の説明】
【0043】
10…パッケージトレイ
21…収容溝(軸受け部)
21A…第1開口部
21B…連絡部分
22…延長溝(延設部)
22A…第2開口部
23…支持部
24…周壁部
26…撓み突出部(第2突出部)
27…固定突出部(第1突出部)
29…逆止片
30…荷室
32…ヒンジピン(軸部)
33…棚部(車体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷室に設けられたパッケージトレイを車体側に対して回動可能に支持するパッケージトレイの支持構造であって、
前記パッケージトレイ側または前記車体側のいずれか一方に設けられ、前記パッケージトレイの回動軸に沿って延びる軸部と、
同他方に設けられ、前記軸部を支持する軸受け部と、
前記軸受け部に延設され、前記軸部が弾性限界を超えない所定量の負荷を受けた際に、その所定量の負荷が軽減する方向に前記軸部を逃がす延設部とを備えたパッケージトレイの支持構造。
【請求項2】
前記軸受け部は、前記軸部を着脱、収容可能な第1開口部が形成された収容溝によって構成され、前記収容溝は、前記パッケージトレイを水平姿勢とした際に前記収容溝の下側に配置された支持部と、前記収容溝の上側に配置された周壁部との間に形成されており、
前記支持部は、前記所定量の負荷を受けた前記軸部によって押圧された際に、前記周壁部から離れる方向に撓み変形することにより、前記軸部を前記軸受け部から前記延設部へ移動させる請求項1に記載のパッケージトレイの支持構造。
【請求項3】
前記延設部は、前記収容溝と連通して前記軸部を収容する第2開口部が形成された延長溝を有し、前記第2開口部には、前記延長溝から出る順方向への移動は許容するものの前記延長溝に入る逆方向への移動は許容しない逆止片が設けられている請求項2に記載のパッケージトレイの支持構造。
【請求項4】
前記周壁部は、前記収容溝と前記延長溝の境界部分である前記収容溝の連絡部分に配置された第1突出部と、その第1突出部よりも前記収容溝の第1開口部に近い側に配置された第2突出部とを有し、前記軸部は、前記支持部、前記第1突出部、および前記第2突出部の少なくとも3点で支持されており、前記第1突出部は撓み不能に設けられている一方、前記第2突出部は撓み可能に設けられている請求項3に記載のパッケージトレイの支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−149671(P2010−149671A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329243(P2008−329243)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】