説明

パッシブマトリクス有機発光ダイオードディスプレイの製造方法

【課題】 パッシブマトリクス有機発光ダイオードディスプレイの製造方法を提供する。
【解決手段】 基板40上において、第1導線マトリクス42と、基板40の両側縁に設けられ、第1導線マトリクス42に平行な一対の第1導線ブロックと、を形成する。第1導線マトリクス42は、複数の第1導線422を含む。第1導線マトリクス42上方に有機層46を形成する。有機層46上に、複数の第2導線482を含む第2導線マトリクスを形成する。第2導線マトリクスの各第2導線482は、第1導線422に垂直である。また、各第2導線482それぞれは、第1導線ブロックに接続する。複数のレーザビームを第2導線482の平行方向へ走査する。これにより、第1導線ブロックを、部分的にエッチングして、第2導線に接続する各リード線44aとして分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッシブマトリクス有機発光ダイオードディスプレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(organic light emitting diode, OLED)技術は、従来広く知られており、高い輝度及び高い解析度を有するフルカラー、動態平面ディスプレイを可能にする。有機発光ダイオードは、主に反対電気性をもつ両電極及び、これら両電極間に介される有機発光材からなり、自発光特性を有するので、液晶ディスプレイにおいて必要とされる背面光源、拡散板、分極板等の部材が必要とされない。したがって、有機発光ダイオード技術は、軽薄でかつ小型である多様な種類のディスプレイを提供することができる。また、有機発光ダイオードは、その発光効率が高く熱変換効率が低いので、電子部品への熱干渉及び電気干渉を低くすることができる。これら特徴により、有機発光ダイオードディスプレイは、より注目される方式で多くの情報を伝送することができ、重量が軽く、さらには必要な空間も小さくて済む。
【0003】
有機発光ダイオードの基本構造は、陰極電極、陽極電極及び両電極間に介在する有機層積層構造を含む。この有機層積層構造は正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層を含む。これら陽極電極と陰極電極の間に、電圧が適宜(例えば2〜10V)印加されると、陽極電極は正孔を射出し、この正孔は正孔注入層と正孔輸送層を通って発光層に届き、陰極電極は電子を射出し、この電子は電子注入層および電子輸送層を通って発光層まで至り、発光層において正孔と電子とは結合して発光する。
【0004】
有機発光ダイオードディスプレイは、パッシブマトリクス有機発光ダイオードディスプレイ(passive-matrix OLED display)およびアクティブマトリクス有機発光ダイオードディスプレイ(active-matrix OLED display)の両形式がある。
【0005】
図1は、周知のパッシブマトリクス有機発光ダイオードディスプレイ(passive-matrix organic light emitting diode display)10の立体斜面図である。このディスプレイ10において、透光基板11上に、複数の平行に配列された透明陽極12が形成される。透明陽極12上には、正孔輸送層、発光層および電子輸送層として提供される有機層13、14および15が、この順序で形成される。有機層15上には、複数の平行に配列した陰極電極16が形成される。陰極電極16は透明陽極12に垂直し、両重ね部に位置した各部の有機層がピクセルとして定義される。トップカバー18は陰極電極16の上方を覆い、パッシブマトリクス有機発光ダイオードディスプレイ10の内部部材を保護する。透明陽極12と陰極電極16それぞれの駆動回路によって、ディスプレイパネルにデータが提供され、透明陽極12と陰極電極16との間に電圧が適宜印加され、ディスプレイパネルに動画や文字等が表示される(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−115381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、陰極電極16は、図2に示すように、蒸着により、各金属ワイヤがそれぞれ基板11両側に予設されたリード線(図示せず)に接続されて製造されることが考えられる。このような方法においては、蒸着されるとき金属マスク20が使用され、金属ワイヤの図案が定められる。すなわち、金属ワイヤが蒸着される前、電荷結合素子(CCD)アライメントシステム21およびアライメントマーク11a、20aが使用され、金属マスク20は基板11に位置合わせされ、これにより金属ワイヤは基板11の両側辺それぞれに予設されたリード線上に跨るように形成される。
【0007】
しかし、この方法によれば、CCDアライメントシステム21自身が誤差を有するとともに、金属マスク20は基板11に対して所定距離離れて設けられる。したがって、金属ワイヤが蒸着されるとき誤差が生じる。この誤差により、図3に示すように、金属ワイヤ(すなわち陰極電極)16は、基板11に予設された隣接するリード線11b上に跨る場合があり、パネルの製造効率を低下させることになる。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するために成されたものであり、改良されたパッシブマトリクス有機発光ダイオードディスプレイの電極の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るパッシブマトリクス有機発光ダイオードディスプレイの製造方法は、有機層上に一方の電極マトリクスをアライメントシステムを使わずに形成した後、多数の高エネルギー電気射出ビームを用いて基板側縁に予設した導線ブロックを分け、上記電極マトリクスに接続される電極リード線を形成することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、電極マトリクスを製造する際に生じる誤差を低減させ、ディスプレイパネルの製造効率を向上することができる。
【0011】
本発明によれば、アライメントシステムおよびアライメントマークを使わずに電極マトリクスを製造することができるので、電極マトリクスの製造工程が簡略化され製造時間を短縮することができる。
【0012】
本発明に係るパッシブマトリクス有機発光ダイオードディスプレイの製造方法は、詳述すると、基板を提供するステップと、基板上に、互いに平行な複数の第1導線が含まれる第1導線マトリクスを形成するステップと、基板上における周縁に第1導線マトリクスに平行な複数の第1導線ブロックを形成するステップと、第1導線マトリクス上方に有機層を形成するステップと、有機層上に、複数の第1導線ブロックに垂直で、かつ互いに平行な複数の第2導線が含まれる第2導線マトリクスを、第2導線が複数の第1導線ブロックに接続されるように形成するステップと、複数のレーザビームを第2導線に沿って走査することによって、第1導線ブロックを部分的にエッチングして各第2導線に接続された、それぞれのリード線として分離させるステップとを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明は電極マトリクスの製造工程にアライメントシステムを使わずに、電極マトリクスを基板に形成した後、この電極マトリクスのリード線を、多数の高エネルギーレーザビームを使用して形成している。したがって、パッシブマトリクス有機発光ダイオードディスプレイの製造効率は向上され、製造プロセスを簡略化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
パッシブマトリクス有機発光ダイオードディスプレイの陰極電極マトリクスの製造は、通常、金属蒸着方法が採用される。本実施形態においては、金属マスクを基板に位置決めさせるのにアライメントシステムを使わずに、金属ワイヤを蒸着した後、多数の平行した高エネルギーレーザビームを使用して基板両側辺に予設した陰極リード線を分離させ、陰極電極マトリクスの製造を完成させる。
【0015】
以下、本発明に係る実施形態について、添付図面を用いて詳しく説明する。図4〜図7は、本実施形態の各製造プロセス段階において製造された構造を示す平面見取図である。図4に示すように、まず略正方形を呈する基板40が提供され、基板40上に第1導線マトリクス42および一対の第1導線ブロック44が形成される。第1導線ブロック44は、互いに平行に延びる矩形を呈し、基板40の対向する両側縁にそれぞれ設けられる。第1導線マトリクス42は、これら一対の第1導線ブロック44の間に、これらブロックに平行に設けられる。第1導線ブロック44は後に形成される陰極電極マトリクスの各第2導線が接続されるリード線となる。なお、該リード線により各陰極電極を駆動回路に接続することができる。
【0016】
本実施形態においては、基板は金属基板、ガラス基板またはプラスチック基板の何れでも良い。そしてプラスチック基板は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸塩、ポリスチレン、およびプラスチックに近似する材質の一つから選択されることが可能である。第1導線マトリクス42は第1電極マトリクス、例えば陽極電極マトリクスとして供され、複数の互いに平行な第1導線422が含まれる。第1導線422それぞれは、第1導線ブロック44が延びる方向に平行に延びる。第1導線422は、インジウムと錫の酸化物(ITO)、インジウムと亜鉛の酸化物(IZO)、または金属の何れかから選択されることが可能である。
【0017】
次に、図5に示すように、第1導線マトリクス42の上方に有機層46が形成される。有機層46は多数積層構造で、基板40から上方向へ順に積層される正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層を含む。有機層46は低分子有機層であって、例えば真空蒸着方式で被膜が蒸着される。また、有機層46は高分子有機層であっても良く、この場合、例えばスピンコーティング、インクジェットまたはスクリーン印刷などの方式で塗膜が形成される。
【0018】
次に、図6に示すように、第2導線マトリクス、例えば陰極電極マトリクスとして、有機層46上に第2導線マトリクス48が形成される。第2導線マトリクス48は、複数の互いに平行な第2導線482を含み、各第2導線482は、第1導線422それぞれに垂直である。各第2導線482の両端部は、一対の対向する第1導線ブロック44それぞれに接続される。各第1導線422は陽極電極であるとともに、各第2導線482は陰極電極である。そして第1導線422と第2導線482とが交叉する位置それぞれにおいて、第1導線422および第2導線482の間に積層される有機層の各部分は、ピクセルユニット400を構成する。第2導線482の材質はカルシウム(Ca)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)、またはこれらの複合金属材料、またはその他の低仕事関数の金属材料である。なお、第2導線マトリクス48は、例えば真空熱蒸着あるいは真空スパッタリング方式で形成されることが可能である。
【0019】
第2導線マトリクス48が形成されると、各第2導線482は第1導線ブロック44に接続されている。したがって、次に互いに平行した複数の高エネルギーのレーザビームを第2導線482の延びる方向へ走査することによって、第1導線ブロック44を部分的にエッチングすると、第1導線ブロック44は各第2導線482に接続されたそれぞれのリード線44aとして分離される(図7参照)。レーザビームの操作方法としては、第1導線ブロック44上を走査する時のみ照射し、有機層上を走査する時は、シャッター等で遮断する。各第2導線482は、それぞれのリード線44aにより駆動回路に接続される。これにより、第2電極マトリクス(陰極電極マトリクス)の製造が完成する。なお、この工程において、各レーザビームの直径は隣接する第2導線482の間隙より小さいものを使用することが好まれる。
【0020】
以上のように本実施形態においては、アライメントシステムを使用せずに、陰極電極マトリクスを基板に形成した後、多くの高エネルギーレーザビームを使用して基板側縁に予設された陰極リード線を分離させる。これにより、パッシブマトリクス発光ダイオードディスプレイの製造効率は向上され、製造工程を簡略化すると同時に製造工程の時間も短縮することができる。
【0021】
なお、以上の説明は、本発明の実施形態の説明にすぎず、本発明の特許請求の範囲を制限するものではない。また、本実施形態では第1導線マトリクスを陽極電極、第2導線マトリクスを陰極電極として説明したが、第1導線マトリクスを陰極電極、第2導線マトリクスを陽極電極としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来のパッシブマトリクス有機発光ダイオードディスプレイの立体斜面図を示す。
【図2】アライメントシステムの基板と金属マスクの立体見取図を示す。
【図3】アライメントシステムを用いて金属ワイヤが形成されたときの基板の見取図で、金属ワイヤが隣接した両リード線上に跨ることを示す。
【図4】本実施形態における製造工程の一部を示す平面見取図である。
【図5】本実施形態における製造工程の一部を示す平面見取図である。
【図6】本実施形態における製造工程の一部を示す平面見取図である。
【図7】本実施形態における製造工程の一部を示す平面見取図である。
【符号の説明】
【0023】
10 パッシブマトリクス有機発光ダイオードディスプレイ
11 透光基板
11a アライメントマーク
11b リード線
12 透明陽極
13、14、15 有機層
16 陰極電極(金属ワイヤ)
18 トップカバー
20 金属マスク
20a アライメントマーク
21 電荷結合素子(CCD)アライメントシステム
40 基板
42 第1導線マトリクス
44 第1導線ブロック
46 有機層
48 第2導線マトリクス
400 ピクセルユニット
422 第1導線
482 第2導線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を提供するステップと、
前記基板上に、互いに平行な複数の第1導線が含まれる第1導線マトリクスを形成するステップと、
前記基板上における周縁に前記第1導線マトリクスに平行な複数の第1導線ブロックを形成するステップと、
前記第1導線マトリクス上方に有機層を形成するステップと、
前記有機層上に、前記複数の第1導線ブロックに垂直でかつ互いに平行な複数の第2導線が含まれる第2導線マトリクスを、前記第2導線が前記複数の第1導線ブロックに接続されるように形成するステップと、
複数のレーザビームを前記第2導線に沿って走査することによって、前記第1導線ブロックを部分的にエッチングして前記各第2導線に接続された、それぞれのリード線として分離させるステップと
を備えるパッシブマトリクス有機発光ダイオードディスプレイの製造方法。
【請求項2】
前記基板は、金属基板、ガラス基板またはプラスチック基板の何れか一つを選んだものであることを特徴とする請求項1に記載のパッシブマトリクス有機発光ダイオードディスプレイの製造方法。
【請求項3】
前記プラスチック基板は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸塩、ポリスチレンおよびプラスチックに近似する材質の何れか一つを選んだ材質であることを特徴とする請求項2に記載のパッシブマトリクス有機発光ダイオードディスプレイの製造方法。
【請求項4】
前記第1導線の材質は、インジウムと錫の酸化物、インジウムと亜鉛の酸化物、および金属の何れか一つを選んだものであることを特徴とする請求項1に記載のパッシブマトリクス有機発光ダイオードディスプレイの製造方法。
【請求項5】
前記レーザビームの直径は、前記第2導線の間隙より小さいことを特徴とする請求項1に記載のパッシブマトリクス有機発光ダイオードディスプレイの製造方法。
【請求項6】
前記有機層に含まれる発光層は、低分子有機発光層または高分子有機発光層の何れか一つを選んだものであることを特徴とする請求項1に記載のパッシブマトリクス有機発光ダイオードディスプレイの製造方法。
【請求項7】
前記低分子有機発光層は、真空蒸着方式により形成されることを特徴とする請求項6に記載のパッシブマトリクス有機発光ダイオードディスプレイの製造方法。
【請求項8】
前記高分子有機層は、スピンコーティング、インクジェットまたはスクリーン印刷の何れか一つの方法で形成されることを特徴とする請求項6に記載のパッシブマトリクス有機発光ダイオードディスプレイの製造方法。
【請求項9】
前記第2導線は、カルシウム、銀、マグネシウム、アルミニウム、リチウム、およびこれらの複合金属材料の何れか一つを選んだ材質であることを特徴とする請求項1に記載のパッシブマトリクス有機発光ダイオードディスプレイの製造方法。
【請求項10】
前記第2導線は、真空熱蒸着または真空スパッタリングの何れか一つから選んだ方法で形成されることを特徴とする請求項9に記載のパッシブマトリクス有機発光ダイオードディスプレイの製造方法。
【請求項11】
前記複数の第1導線ブロックは、対向するように設けられる一対の第1導線ブロックであって、前記第1導線マトリックスは前記一対の第1導線ブロックの間に設けられることを特徴とする請求項1に記載のパッシブマトリクス有機発光ダイオードディスプレイの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−260965(P2006−260965A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−77371(P2005−77371)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】