説明

パッチアンテナおよびその給電ピン半田付け方法

【課題】接合強度を劣化させることなく、半田の量を極力減少させること。
【解決手段】互いに対向する天面(12u)と底面(12d)とを持ち、所定の位置で天面から底面へ貫通する基板貫通孔(12a)が穿設されている誘電体基板(12)と、誘電体基板の天面に形成されたアンテナ放射電極(14)と、誘電体基板の底面に形成された接地電極と、上端部(18a)の頭部(181)が所定の位置で半田によりアンテナ放射電極と接続され、下端部(18b)が基板貫通孔を介して誘電体基板の底面側へ導出される給電ピン(18)と、を有するパッチアンテナ(10A)において、半田が、互いに離間し、かつ基板貫通孔(12a)の中心線に対して回転対称に設けられた複数の半田部(15A)から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッチアンテナに関し、特に、自動車等の車両に搭載されるアンテナに好適なパッチアンテナおよびその給電ピンの半田付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この技術分野において周知のように、現在、自動車等の車両には種々のアンテナが搭載される。例えば、そのようなアンテナとしては、GPS(全地球測位システム)用アンテナやSDARS(衛星デジタルラジオサービス)用アンテナ等がある。
【0003】
GPS(Global Positioning System)は、人工衛星を用いた衛星測位システムである。GPSは、地球を周回している24基の人工衛星(以下、「GPS衛星」と呼ぶ)のうちの4基のGPS衛星からの電波(GPS信号)を受信し、この受信した電波から移動体とGPS衛星との位置関係および時間誤差を測定して三角測量の原理に基づいて、移動体の地図上における位置や高度を高精度で算出することを可能としたものである。
【0004】
GPSは、近年では、走行する自動車の位置を検出するカーナビゲーションシステム等に利用され、広く普及している。カーナビゲーション装置は、このGPS信号を受信するためのGPS用アンテナと、このGPS用アンテナが受信したGPS信号を処理して車両の現在位置を検出する処理装置と、この処理装置で検出された位置を地図上に表示するための表示装置等から構成される。GPS用アンテナとしては、パッチアンテナのような平面アンテナが使用される。
【0005】
一方、SDARS(Satellite Digital Audio Radio Service)とは、米国における衛星(以下、「SDARS衛星」と呼ぶ)を使用したデジタル放送によるサービスである。すなわち、米国においては、SDARS衛星からの衛星波または地上波を受信して、デジタルラジオ放送を聴取可能にしたデジタルラジオ受信機が開発され、実用化されている。現在、米国では、XMとシリウスという2つの放送局が計250チャネル以上のラジオ番組を全国に提供している。このデジタルラジオ受信機は、一般には、自動車等の移動体に搭載され、周波数が約2.3GHz帯の電波を受信してラジオ放送を聴取することが可能である。すなわち、デジタルラジオ受信機は、モバイル放送を聴取することが可能なラジオ受信機である。受信電波の周波数が約2.3GHz帯なので、そのときの受信波長(共振波長)λは約128.3mmである。尚、地上波は、衛星波を一旦、地球局で受信した後、周波数を若干シフトし、直線偏波で再送信したものである。すなわち、衛星波は円偏波の電波であるのに対して、地上波は直線偏波の電波である。SDARS用アンテナとしても、上記GPS用アンテナと同様に、パッチアンテナのような平面アンテナが使用される。
【0006】
XM衛星ラジオ用アンテナ装置は、静止衛星2基より円偏波電波を受信し、不感地帯では地上直線偏波設備により電波を受信する。一方、シリウス衛星ラジオ用アンテナ装置は、周回衛星3基(シンクロ型)より円偏波電波を受信し、不感地帯では地上直線偏波設備により電波を受信する。
【0007】
デジタルラジオ受信機としては、自動車に搭載されるもの、屋内に置かれる据置型のもの、さらに、バッテリを電源として持ち運びできる可搬型のものがある。
【0008】
図1乃至図3を参照して、従来のパッチアンテナ10について説明する。図1はパッチアンテナ10の斜視図である。図2において、(A)はパッチアンテナ10の平面図、(B)はパッチアンテナ10の正面図、(C)はパッチアンテナ10の左側面図、(D)はパッチアンテナ10の底面図である。図3は図2(A)のIII−IIIでの断面図である。
【0009】
パッチアンテナ10は、略直方体形状の誘電体基板12と、アンテナ放射電極(放射素子)14と、接地電極(接地導体)16と、リベット状の給電ピン18とから構成される。アンテナ放射電極14は、受信電極やパッチ電極とも呼ばれる。
【0010】
誘電体基板12は、たとえばチタン酸バリウムなどからなる高誘電率のセラミックス材料が用いられる。誘電体基板12は、互いに対向する天面(表面)12uおよび底面(裏面)12dと、側面12sとを持つ。図示の例では、誘電体基板12の側面12sの角が面取りされている。誘電体基板12には、後述する給電点15の設置位置で、天面12uから底面12dへ貫通する基板貫通孔12aが穿設されている。
【0011】
アンテナ放射電極(放射素子)14は、導電体からなり、誘電体基板12の天面12u上に形成されている。アンテナ放射電極(放射素子)12は、ほぼ正方形状をしている。アンテナ放射電極(放射素子)12は、例えば、銀パターン印刷によって形成される。
【0012】
接地電極(接地導体)16は、導電体からなり、誘電体基板12の底面12dに形成されている。この接地電極(接地導体)16は、基板貫通孔12aとほぼ同心で、かつ基板貫通孔12aの直径よりも大きい直径の接地開口部16aを持つ。
【0013】
アンテナ放射電極12の中心からx軸方向およびy軸方向に変位した位置に給電点15が設けられる。この給電点15に給電ピン18の上端部18aが接続される。給電ピン18は、基板貫通孔12aおよび接地貫通孔16aを経て、接地電極(接地導体)16と離間して下側に導出されている。
【0014】
ここで、給電点15としては半田が用いられる。その為、この給電点15は、アンテナ放射電極14の主表面から上方へ盛り上がった凸形状をしている。
【0015】
図示の給電ピン18は、上端部18aに設けられた頭部181と、上端部18aから下端部18bへ延在する棒状の胴体部182と、を有するリベットピンからなる。この場合、リベットピン18の頭部181がアンテナ放射電極14の主表面上から突出した状態で、このリベットピン18の頭部181が半田によりアンテナ放射電極14に接合される。そのため、この接合部分が給電点15として凸形状となる。
【0016】
給電ピン18の半田付け方法(装着方法)としては、種々の方法が採用されている。例えば、人間の手で半田ゴテを使用して給電ピン18を半田付けする方法がある。しかしながら、この方法では、半田の量が一定とならないという問題がある。その為、給電ピン18の周辺に加わる容量値(キャパシタンス)が変化してしまう。その結果、パッチアンテナ10の同調周波数に影響が出るという問題がある。
【0017】
また、別の給電ピン半田付け方法(装着方法)が、例えば、特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示された給電ピン装着方法では、アンテナ放射電極(パッチ電極)12上に、基板貫通孔12aの周囲に環状の半田(半田ペースト)を所定量載置しておき、この状態で給電ピン18をその下端部18bから基板貫通孔12aに挿入して押し込み、その後、半田(半田ペースト)を加熱して溶解して給電ピン18の上端部(頭部)181を半田で覆い、アンテナ放射電極(パッチ電極)12と給電ピン18を導通接続する。
【0018】
尚、特許文献1に開示されている給電ピン半田付け方法(装着方法)では、給電ピン18を誘電体基板12に挿入する前に、最初に、所定量の半田ペーストをアンテナ放射電極(パッチ電極)12上に載置している。しかしながら、特許文献1は、どのようにして所定量の半田ペーストをアンテナ放射電極(パッチ電極)12上に載置するかについては何ら開示せず、示唆していない。
【0019】
次に、図4を参照して、リフローによる従来の給電ピン半田付け方法について説明する。尚、図4では、誘電体基板12の底面12dに形成される接地電極(接地導体)16を省略している。
【0020】
先ず、図4(A)に示されるように、給電ピン18の胴体部182を誘電体基板12の基板貫通孔12a中に挿入する。このとき、基板貫通孔12aの直径よりも給電ピン18の頭部181の直径が大きいので、給電ピン18の頭部181はアンテナ放射電極(受信電極)14上に載っている。
【0021】
次に、図4(B)に示されるように、マスク20をアンテナ放射電極(受信電極)14上に搭載して、ペースト半田15を塗布する。マスク20の厚さは、給電ピン18の頭部181の厚さ(高さ)よりも厚い。また、マスク20は、給電ピン18の頭部181を囲むような円形開口部20aを持つ。この円形開口部20aの直径は、給電ピン18の頭部181の直径よりも大きい。マスク20をアンテナ放射電極(受信電極)14上に搭載する場合、マスク20の円形開口部20aの中心線と給電ピン18(基板貫通孔12a)の中心線とが互いに一致するように位置あわせされる。ペースト半田15は、円形開口部20aからはみ出さないように、不要な部分を除去して塗布される。従って、所定量のペースト半田15が、円形開口部20a内で給電ピン18の頭部181上に全周に亘って塗布される。
【0022】
引き続いて、マスク20をアンテナ放射電極(受信電極)14から剥がし、電気炉において、リフローによりペースト半田15を溶融する。これにより、図4(C)に示されるように、給電ピン18の頭部181の全周を半田15で覆い、アンテナ放射電極(受信電極)14と給電ピン18とを導電接続する。
【0023】
【特許文献1】特開平9−260933号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、特許文献1に開示され、又は図4に図示された従来の給電ピン半田付け方法(装着方法)においては、給電ピン18の頭部181全体(全周)を半田15で覆って、アンテナ放射電極(受信電極)14と給電ピン18とを導電接続しているので、半田15の量を減らすことが困難である。
【0025】
一方、半田15の量を減らし過ぎると、アンテナ放射電極(受信電極)14と給電ピン18と間の接合強度が下がってしまう。その結果、給電ピン18がパッチアンテナから抜ける恐れがあり、強度劣化に繋がる。
【0026】
したがって、本発明の課題は、接合強度を劣化させることなく、半田の量を極力減少させることができる、パッチアンテナおよびその給電ピン半田付け方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の第1の態様によれば、互いに対向する天面(12u)と底面(12d)とを持ち、所定の位置で天面から底面へ貫通する基板貫通孔(12a)が穿設されている、誘電体基板(12)と、導電体からなり、誘電体基板の天面に形成されたアンテナ放射電極(14)と、導電体からなり、誘電体基板の底面に形成され、基板貫通孔と実質的に同心で、かつ基板貫通孔の直径よりも大きい径の接地開口部(16a)を持つ、接地電極(16)と、上端部(18a)に設けられた頭部(181)と、上端部から下端部(18b)へ延在する棒状の胴体部(182)と、から構成される給電ピン(18)であって、頭部が所定の位置で半田によりアンテナ放射電極と接続され、下端部が基板貫通孔および接地開口部を介して誘電体基板の底面側へ導出される、給電ピン(18)と、を有するパッチアンテナにおいて、半田が、互いに離間し、かつ基板貫通孔の中心線に対して回転対称に設けられた複数の半田部(15A)から成る、ことを特徴とするパッチアンテナ(10A:10B)が得られる。
【0028】
上記本発明の第1の態様によるパッチアンテナ(10A;10B)において、前記誘電体基板(12)は実質的に直方体形状をしていてよい。前記誘電体基板(12)は、例えば、セラミックス材料から構成される。前記アンテナ放射電極(14)は銀パターン印刷によって形成されてよい。前記アンテナ放射電(14)極はほぼ正方形状をしてよい。前記パッチアンテナ(10A;10B)はGPS衛星からの電波を受信するGPS用アンテナであってよい。
【0029】
本発明の第2の態様によれば、互いに対向する天面(12u)と底面(12d)とを持ち、所定の位置で天面から底面へ貫通する基板貫通孔(12a)が穿設されている、誘電体基板(12)と;導電体からなり、誘電体基板の天面に形成されたアンテナ放射電極(14)と;導電体からなり、誘電体基板の底面に形成された接地電極(16)と;上端部(18a)に設けられた頭部(181)と、上端部から下端部(18b)へ延在する棒状の胴体部(182)と、から構成される給電ピン(18)であって、頭部が所定の位置でアンテナ放射電極と接続され、下端部が基板貫通孔を介して誘電体基板の底面側へ導出される、給電ピン(18)と;を有するパッチアンテナ(10A;10B)の給電ピン(18)をアンテナ放射電極(14)に半田付けする方法であって、互いに離間し、かつ基板貫通孔(12a)の中心線に対して回転対称に設けられたN(Nは2以上の整数)個のペースト半田(15A)を、アンテナ放射電極(14)上に塗布する工程と、給電ピン(18)を誘電体基板の天面から基板貫通孔(12a)に押し込んで、給電ピンの頭部(181)をN個のペースト半田上に載せる工程と、リフローによりN個のペースト半田(15A)を溶融して、給電ピンを半田付けする工程と、を含むことを特徴とするパッチアンテナの給電ピン半田付け方法が得られる。
【0030】
上記本発明の第2の態様によるパッチアンテナの給電ピン半田付け方法において、前記N個のペースト半田を塗布する工程は、例えば、互いに離間し、かつ基板貫通孔(12a)の中心線に対して回転対称に設けられたN個の開口部(20Aa)を持つマスク(20A)をアンテナ放射電極(14)上に搭載する工程と、このマスク(20A)を使用してペースト半田(15A)を塗布することにより、マスクのN個の開口部と対応する位置に、N個のペースト半田(15A)を形成する工程と、から構成されてよい。この場合、マスクとして、その厚さが給電ピン(18)の頭部(181)の高さより薄いマスク(20A)を使用することが好ましい。また、マスクとして、N個の開口部が仮想円環をN個に分割して出来るN個の円弧状開口部(20Aa)である、マスク(20A)を使用して良い。この場合、仮想円環の内径は、給電ピン(18)の頭部(181)の直径よりも小さく、仮想円環の外径は、給電ピン(18)の頭部の直径よりも大きいことが好ましい。
【0031】
尚、上記括弧内の符号は、本発明の理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、これらに限定されないのは勿論である。
【発明の効果】
【0032】
本発明では、給電ピンの頭部とアンテナ放射電極とを接続するための半田が、互いに離間し、かつ誘電体基板の基板貫通孔の中心線に対して回転対称に設けられた複数の半田部から成るので、接合強度を劣化させることなく、半田の量を極力減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0034】
図5を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るパッチアンテナ10Aおよびその給電ピン半田付け方法について説明する。図5は、パッチアンテナ10Aおよびその給電ピン半田付け方法の工程を示す図である。尚、図5でも、誘電体基板12の底面12dに形成される接地電極(接地導体)16を省略している。
【0035】
図示のパッチアンテナ10Aは、半田の塗布の仕方が、後述するように図4に図示されたものと異なる点を除いて、従来のパッチアンテナ10と同様の構成を有する。従って、半田に15Aの参照符号を付してある。図4に示されたものと同様の機能を有するものには同一の参照符号を付してある。
【0036】
図示のパッチアンテナ10Aは、GPS衛星からの電波を受信するGPS用アンテナやSDARS衛星からの電波を受信するSDARS用アンテナとして使用される。
【0037】
給電ピン18の胴体部182を誘電体基板12の基板貫通孔12a中に挿入する前に、先ず、図5(A)に示されるように、マスク20Aをアンテナ放射電極(受信電極)14上に搭載して、ペースト半田15Aを塗布する。
【0038】
ここで、マスク20Aの厚さは、給電ピン18の頭部181の厚さ(高さ)よりも薄い。また、マスク20Aは、仮想円環を4つに分割(分離)しで出来る、4つの円弧状開口部20Aaを持つ。すなわち、4つの円弧状開口部20Aaは、互いに離間して、上記仮想円環の中心線に対して回転対称(等角度間隔)に配置されている。各円弧状開口部20Aaの内半径は、給電ピン18の頭部181の半径よりも小さく、各円弧状開口部20Aaの外半径は、給電ピン18の頭部181の半径よりも大きい。換言すれば、上記仮想円環の内径は、給電ピン18の頭部181の直径よりも小さく、上記仮想円環の外径は、給電ピン18の頭部181の直径よりも大きい。
【0039】
マスク20Aをアンテナ放射電極(受信電極)14上に搭載する場合、マスク20Aの上記仮想円環の中心線と誘電体基板12の基板貫通孔12aの中心線とが互いに一致するように位置あわせされる。
【0040】
ペースト半田15Aは、これら4つの円弧状開口部20Aa内に、不要な部分を除去して、塗布される。したがって、塗布されたペースト半田15Aの厚さ(高さ)は、給電ピン18の頭部181の厚さ(高さ)よりも低い。
【0041】
次に、図5(B)に示されるように、マスク20Aをアンテナ放射電極(受信電極)14から剥がし、給電ピン18の胴体部182を誘電体基板12の基板貫通孔12a中に挿入する。これにより、4つのペースト半田15A上に、給電ピン18の頭部181が載ることになる。
【0042】
最後に、電気炉において、リフローによりペースト半田15Aを溶融する。これにより、図5(C)に示されるように、給電ピン18の頭部181を、その4箇所で、半田15Aで覆い、アンテナ放射電極(受信電極)14と給電ピン18とを導電接続する。半田15Aは、フィレット状に、アンテナ放射電極(受信電極)14と給電ピン18の頭部181とを接合している。
【0043】
このようにして製造されたパッチアンテナ10Aでは、半田が、互いに離間し、かつ給電ピン18(基板貫通孔12a)の中心線に対して回転対称に設けられた4つの半田部15Aから成る。
【0044】
上述したように、本実施の形態では、ペースト半田15Aを、マスク20Aを使用して機械式印刷によりアンテナ放射電極(受信電極)14上に塗布するので、塗布すべき半田15Aの量を一定にすることができる。これにより、容量の変化を抑えることができる。また、給電ピン18の頭部181の全周ではなく、等角度間隔の4箇所で、半田部15Aを付けるので、半田15Aの量を減らすことが出来る。従って、パッチアンテナ10Aのコストダウンを図ることができる。さらに、アンテナ放射電極(受信電極)14と給電ピン18の頭部181とを、フィレット状の半田15Aで接合しているので、アンテナ放射電極(受信電極)14と給電ピン18の頭部181と間の接合強度を確保することが出来る。換言すれば、応力が分散されるので、給電ピン18が抜けるのを防止することができる。
【0045】
尚、図5に示した実施の形態では、給電ピン18の頭部181を、回転対称な位置の(等角度間隔の)4箇所で、アンテナ放射電極(受信電極)14に半田15Aにより接合しているが、これに限定されないは勿論である。すなわち、一般的には、給電ピン18の頭部181を、回転対称な位置の(等角度間隔の)N(Nは2以上の整数)箇所で、アンテナ放射電極(受信電極)14に半田15Aにより接合しても良い。
【0046】
図6は、給電ピン18の頭部181を、回転対称な位置の(等角度間隔の)6箇所で、アンテナ放射電極(受信電極)14に半田15Aにより接合する、本発明の第2の実施の形態によるパッチアンテナ10Bおよびその給電ピン装着方法を説明するための図である。図6において、(A)は、半田15Aで接合する前の状態のパッチアンテナ10Bを示す分解斜視図であり、(B)は半田15Aで接合した後のパッチアンテナ10Bを示す平面図である。
【0047】
この場合、半田15Aは、互いに離間し、かつ給電ピン18(基板貫通孔12a)の中心線に対して回転対称に設けられた6つの半田部15Aから成る。
【0048】
このような構成のパッチアンテナ10Bは、図4に示したパッチアンテナ10Aと同様の効果を奏する。すなわち、ペースト半田15Aを、マスク(図示せず)を使用して機械式印刷によりアンテナ放射電極(受信電極)14上に塗布するので、塗布すべき半田15Aの量を一定にすることができる。これにより、容量の変化を抑えることができる。また、給電ピン18の頭部181の全周ではなく、等角度間隔の6箇所で、半田部15Aを付けるので、半田15Aの量を減らすことが出来る。従って、パッチアンテナ10Bのコストダウンを図ることができる。さらに、アンテナ放射電極(受信電極)14と給電ピン18の頭部181とを、フィレット状の半田15Aで接合しているので、アンテナ放射電極(受信電極)14と給電ピン18の頭部181と間の接合強度を確保することが出来る。換言すれば、応力が分散されるので、給電ピン18がパッチアンテナ10Bから抜けるのを防止することができる。
【0049】
以上、本発明について好ましい実施の形態によって説明してきたが、本発明は上述した実施の形態に限定しないのは勿論である。例えば、上記実施の形態では、アンテナ放射電極が正方形状をしているが、円形状をしていても良いのは勿論である。また、誘電体基板の素材は、セラミック材料に限定されず、樹脂材料から構成されても良い。マスクに形成された開口部も、図5に図示されているような、円弧状開口部に限定されず、種々の形状のものを使用して良いのは勿論である。さらに、本発明に係るパッチアンテナは、GPS用アンテナやSDARS用アンテナに適しているが、これらに限定される訳ではなく、他の衛星波、地上波を受信するための移動体通信用のアンテナとしても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1の従来のパッチアンテナの斜視図である。
【図2】図1に示したパッチアンテナを示す図で、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は左側面図、(D)は底面図である。
【図3】図2(A)の線III-IIIについての断面図である。
【図4】リフローによる従来の給電ピン半田付け方法を説明するための工程図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るパッチアンテナおよびその給電ピン半田付け方法の工程を示す工程図である。
【図6】給電ピンの頭部を、回転対称な位置の(等角度間隔の)6箇所で、アンテナ放射電極(受信電極)に半田により接合する、本発明の第2の実施の形態によるパッチアンテナおよびその給電ピン半田付け方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0051】
10A、10B パッチアンテナ
12 誘電体基板
12u 天面(表面)
12d 底面(裏面)
12a 基板貫通孔
14 アンテナ放射電極(受信電極)
15A 半田(ペースト半田、半田部)
16 接地電極
16a 接地開口部
18 給電ピン(リベットピン)
18a 上端部
18b 下端部
181 頭部
182 胴体部
20A マスク
20Aa 円弧状の開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する天面と底面とを持ち、所定の位置で前記天面から前記底面へ貫通する基板貫通孔が穿設されている、誘電体基板と、
導電体からなり、前記誘電体基板の前記天面に形成されたアンテナ放射電極と、
導電体からなり、前記誘電体基板の前記底面に形成され、前記基板貫通孔と実質的に同心で、かつ前記基板貫通孔の直径よりも大きい径の接地開口部を持つ、接地電極と、
上端部に設けられた頭部と、前記上端部から下端部へ延在する棒状の胴体部と、から構成される給電ピンであって、前記頭部が前記所定の位置で半田により前記アンテナ放射電極と接続され、前記下端部が前記基板貫通孔および前記接地開口部を介して前記誘電体基板の前記底面側へ導出される、前記給電ピンと、
を有するパッチアンテナにおいて、
前記半田が、互いに離間し、かつ前記基板貫通孔の中心線に対して回転対称に設けられたN(Nは2以上の整数)個の半田部から成る、ことを特徴とするパッチアンテナ。
【請求項2】
前記誘電体基板は実質的に直方体形状をしている、請求項1に記載のパッチアンテナ。
【請求項3】
前記誘電体基板はセラミックス材料から成る、請求項1又は2に記載のパッチアンテナ。
【請求項4】
前記アンテナ放射電極は銀パターン印刷によって形成される、請求項1乃至3のいずれか1つに記載のパッチアンテナ。
【請求項5】
前記アンテナ放射電極はほぼ正方形状をしている、請求項1乃至4のいずれか1つに記載のパッチアンテナ。
【請求項6】
前記パッチアンテナはGPS衛星からの電波を受信するGPS用アンテナである、請求項1乃至5のいずれか1つに記載のパッチアンテナ。
【請求項7】
互いに対向する天面と底面とを持ち、所定の位置で前記天面から前記底面へ貫通する基板貫通孔が穿設されている、誘電体基板と;導電体からなり、前記誘電体基板の前記天面に形成されたアンテナ放射電極と;導電体からなり、前記誘電体基板の前記底面に形成された接地電極と;上端部に設けられた頭部と、前記上端部から下端部へ延在する棒状の胴体部と、から構成される給電ピンであって、前記頭部が前記所定の位置で前記アンテナ放射電極と接続され、前記下端部が前記基板貫通孔を介して前記誘電体基板の前記底面側へ導出される、前記給電ピンと;を有するパッチアンテナの前記給電ピンを前記アンテナ放射電極に半田付けする方法であって、
互いに離間し、かつ前記基板貫通孔の中心線に対して回転対称に設けられたN(Nは2以上の整数)個のペースト半田を、前記アンテナ放射電極上に塗布する工程と、
前記給電ピンを前記誘電体基板の天面から前記基板貫通孔に押し込んで、前記給電ピンの頭部を前記N個のペースト半田上に載せる工程と、
リフローにより前記N個のペースト半田を溶融して、前記給電ピンを半田付けする工程と、
を含むことを特徴とするパッチアンテナの給電ピン半田付け方法。
【請求項8】
前記N個のペースト半田を塗布する工程は、
互いに離間し、かつ前記基板貫通孔の中心線に対して回転対称に設けられたN個の開口部を持つマスクを前記アンテナ放射電極上に搭載する工程と、
該マスクを使用してペースト半田を塗布することにより、前記マスクの前記N個の開口部と対応する位置に、前記N個のペースト半田を形成する工程と、
を有する、請求項7に記載のパッチアンテナの給電ピン半田付け方法。
【請求項9】
前記マスクとして、その厚さが前記給電ピンの頭部の高さより薄いマスクを使用することを特徴とする、請求項8に記載のパッチアンテナの給電ピン半田付け方法。
【請求項10】
前記マスクとして、前記N個の開口部が仮想円環をN個に分割(分離)して出来るN個の円弧状開口部である、マスクを使用することを特徴とする、請求項8又は9に記載のパッチアンテナの給電ピン半田付け方法。
【請求項11】
前記仮想円環の内径は、前記給電ピンの頭部の直径よりも小さく、前記仮想円環の外径は、前記給電ピンの頭部の直径よりも大きい、請求項10に記載のパッチアンテナの給電ピン半田付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−260673(P2009−260673A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107459(P2008−107459)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】