説明

パネル体

【課題】 表裏面板を組み付けてパネル体を構成するに際し、一方の面板に対して他方の面板を上方から押圧するのみで容易に組み付け作業を行うことができ外観上も優れたパネル体を得ることができるようにする。
【解決手段】 表裏面板の各両端側をそれぞれ対向状に折曲形成してなる折曲片同士を突き合わせてパネル体を構成するに、前記各折曲片には傾斜面を形成し、該傾斜面同士を当接するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアの扉や間仕切り等に用いられるパネル体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築用あるいは建具用のパネル体としては、鋼板製の表面板と裏面板の左右両端側にそれぞれ直角方向に折曲した折曲片を形成し、該折曲片の先端に直角方向に形成した内折れ部の面部同士を当接することにより矩形状に組み付けて構成されるものがある。そしてこの種のパネル体は、表裏面板のうちいずれか一方側の面板の裏面側に突成した断面略Z型の係止体を他方側の面板の裏面側に設けた係止受体に嵌合することでパネル体として組み付けられるようになっている。
【特許文献1】特開平5−332070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に示す従来のパネル体は、表裏面板の裏面側に係止体や係止受体の別部材を溶接手段にて取り付けなければならないためパネル製作上の手間が多くかかり、また面板の表面側に溶接痕が発生し易いばかりか、これら別部材は正確な位置に精度よく取り付ける必要があって、結果的に加工工数が増加してコストアップを招くものであった。また、このものは表裏面板の組み付け時において、一方側の面板に突成した係止体に他方側の面板に設けた係止受体が係止するよう一方側の面板を上方から押し付けた状態で他方側の面板に対して平行状に移動させて組み付ける必要があり、突合せ部で両面板にずれが生じることなく精度良く組み合わせるための調整作業を要する等、煩雑な作業を強いられるものであった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の課題を解決するために創案されたものであって、請求項1の発明は、表裏面板の各両端側をそれぞれ対向状に折曲形成してなる折曲片同士を突き合わせてパネル体を構成するに、前記各折曲片にはそれぞれ同一角度を有する傾斜片を形成し、該傾斜片の斜面同士を当接するように構成したことを特徴とするものである。
請求項2の発明は、前記折曲片には、表裏面板の背面側に当接する補強片がそれぞれ延設されていることを特徴とするものである。
請求項3の発明は、前記対向する表面板の傾斜片と裏面板の傾斜片とは、いずれか一方側の傾斜片に突成した係止片を他方側の傾斜片に穿設した係止孔に係止することで組み付けられていることを特徴とするものである。
請求項4の発明は、前記表面板と裏面板とは、折曲片を含む断面形状が同一の面板で構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明とすることにより、一方の面板に対して他方の面板を上方から押圧することで容易に組み付け作業を行うことができ、しかも両面板は傾斜片の斜面を介して相互に位置合わせがなされるので両面板の組み付け状態において突合せ部での位置ずれを生じることがなく外観上優れたパネル体を得ることができるものである。
請求項2の発明とすることにより、パネル体の内部に別部材の補強骨材を設ける必要がないので軽量化と加工工数の低減が図られ、また表裏面板の各端部に形成される中空部同士を当接することとなって折曲片と補強片が薄板であっても強度的に優れたパネル体とすることができるものである。
請求項3の発明とすることにより、表裏面板の組み付け作業と同時に両面板をしっかりと固定させることができるものであるので、パネル体の製作作業の効率化を図ることができる。
請求項4の発明とすることにより、一種類の面板で表裏面板としてパネル体を製作することができ、面板の加工作業の省力化と在庫管理上の効率化を図ることができるものである。また、パネル体の左右端部で同一の見込み寸法を確保でき
寸法精度の高いパネル体を製作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
つぎに、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図において、1は扉体や間仕切りパネル等として用いられる建築用のパネル体であって、該パネル体1は、対設した一対の面板2,2によって内部に空間部Sを存した状態で矩形状に形成されており、該空間部Sには図示しないハニカムコア等の芯材が充填されている。
図2は、パネル体1の一実施形態を示す縦断面図であって、各面板2の上下両端側を略直角方向にそれぞれ対向状に折曲形成した上側折曲片3と下側折曲片4同士を重合状に組み付け、該重合部位をブラインドリベット5等の締結手段を用いてパネル幅方向所定間隔を存して複数箇所固定されている。
また、パネル体1の横断面は、図3に示すように一対の各面板2,2の左右両端側に該各面板2,2を折曲することによりそれぞれ形成した縦側第一折曲片6と縦側第二折曲片7とをパネル体1の見込幅方向に付き合わせることで組み付けられている。
このようにしてパネル体1は矩形状に形成されているものであるが、該パネル体1を構成する面板2の構成を図4に基づいて詳説する。
【0007】
図4において、面板2は薄板の鋼板から成り、その左右両端側には縦方向に連続する縦側第一折曲片6と縦側第二折曲片7とがそれぞれ折曲形成されている。
縦側第一折曲片6は、面板2の一端側(図4の右側端)を略直角方向に折曲形成されパネル体1の見込面を構成する見込片6aと、該見込片6aの先端を面板2の背面2a側に向けて傾斜状に折り返し形成される第一傾斜片6bとで構成されている。さらに第一傾斜片6bの先端には面板2の背面2aに至る第一補強片6cが延設されており、該第一補強片6cの先端に設けた平板状の固定片6dを面板2の背面2aに当接させることによって縦側第一折曲片6の剛性を高めてその形状が安定するようになっている。
また、第一傾斜片6bの斜面略中央部には長手方向所定間隔を存して複数個の係止片8が突成されており、該係止片8は、第一傾斜片6bをその傾斜面上方側に向けて切り起こし加工によって平面視において基部8aに対して先端部8bが幅広の凸字形に形成されており、該係止片8は第一傾斜片6bとの間に面板2の板厚より僅かに大きな間隙8cを有して突設されている。
【0008】
一方、縦側第二折曲片7は、面板2の他端側(図4の左側端)を前記第一傾斜片6bと同一角度に設定して平行となるよう傾斜状に折曲した第二傾斜片7aで形成されており、さらに該第二傾斜片7aの先端を折り返して形成され面板2の背面2aに至る第二補強片7bが延設されている。
そして、該第二補強片7bの先端に設けた平板状の固定片7cを面板2の背面2aに当接させることによって縦側第二折曲片7の形状が安定するように構成されていることは上記した固定片6dの場合と同様である。
また、第二傾斜片7aの斜面略中央部で前記係止片8と対向する位置には該係止片8が嵌入可能な平面視先細状の凸字形の係止孔9がその先細部を第二傾斜片7aの傾斜面下方側に向けて複数個穿設されている。
なお、縦側第一折曲片6の見込片6aと縦側第二折曲片7の第二補強片7bとは面板2の背面2aからの高さ寸法が同一となるように設定されている。
叙述の如く構成された面板2は、その両端部背面2a側にそれぞれ合同関係にある直角三角形状の中空部が縦方向全長に亘って形成され、面板2の上下には上側折曲片3と下側折曲片4がそれぞれ対向状に折曲形成されて一方が開口した箱型に構成されている。
【0009】
次に、面板2を組み付けてパネル体1を形成する手順を図5に基づいて説明する。
表裏面板2,2のうち、一方側の面板2を他方側の面板2に対し断面視において180度反転することにより、一方側の面板2の縦側第一折曲片6と他方側の面板2の縦側第二折曲片7とを対向状に位置させる(図5(A))と共に、係止片8を係止孔9に嵌入し(図5(B))、一方の面板2を押圧することで第一傾斜片6bと第二傾斜片7aの傾斜面同士が摺接移動して係止片8の先端部8bが第二傾斜片7aの背面側に係止して抜け出し規制され両面板2,2は組み付け固定されることとなる(図5(C))。
【0010】
このようにして、例えば一方の面板2の上に他方の面板2を反転載置し、上方の面板2を押圧することで第一傾斜片6bと第二傾斜片7aの各傾斜面により上方の面板2は下方の面板2に対してスライドしながら降下接近することにより両面板2,2は正確な位置合わせと固定が同時になされることとなって組み付け作業の効率化が図れる。
しかも、パネル体1は、面板2の両端側に形成された中空状の折曲片同志を当接するようにして組み合わされるので充分な剛性を有しており、別途補強骨を設ける必要が無いので製作上の省力化を図ることができるばかりでなく、パネル重量の軽量化によりパネル体1の取り付け施工や運搬時の取り扱いにおいてその労力の軽減を図ることができる。
また、上記実施形態に示したものは、一種類の形状の面板を反転して組み付けるようにしたものであるため表裏で異なる形状の面板を用意する必要が無く在庫管理上の効率化を図ることができる。
尚、図5(C)に示すように、両面板2,2を組み付けた後、縦側第一折曲片6と縦側第二折曲片7との突合せ部を外面側からスポット溶接等の固定手段によって長手方向に間隔を存して固定すればより剛性の高いパネル体とすることができる。
【0011】
上述の実施形態のパネル体1において、補強片6c,7bを設けないものであってもよい。すなわち、図6(A)の第二の実施形態に示すように面板2の両端側にそれぞれ形成される縦側第一折曲片6と縦側第二折曲片7とには、第一傾斜片6bと第二傾斜片7aのみ形成して補強片6c,7bを設けないようにすることができる。この場合においては別途長尺の骨材12を両面板2,2間に介在させることが望ましい。
【0012】
図6(B)は、第三の実施形態を示すものであって、このものは縦側第一折曲片6と縦側第二折曲片7の形状を異ならしめたものである。縦側第一折曲片10は面板2の一端側(図の右側端)を略直角方向に折曲形成した見込片10aと、該見込片10aの先端を面板2の背面2aに平行となるよう折り返した水平片10bと、該水平片10bの先端を面板2の背面2a側に向けて傾斜状に折曲形成される傾斜片10cとで構成されている。
また、傾斜片10cの先端には面板2の背面2aに至る補強片10dが延設されており、該補強片10dの先端に形成した固定片10eを前記背面2aに当接することによって断面視台形状の中空部が形成され、縦側第一折曲片10の形状が安定するようになっている。
【0013】
一方、縦側第二折曲片11は、面板2の他端側(図の左側端)を前記見込片10aと対向するよう略直角方向に折曲形成した見込片11aと、該見込片11aの先端を面板2の背面2aに平行となるよう折り返してなる水平片11bと、該水平片11bの先端から斜め上方に向けて前記傾斜片10cと平行となるよう同一角度を有して傾斜状に折曲した傾斜片11cとで構成されており、さらに傾斜片11cの先端を折り返して面板2の背面2aに至る補強片11dが延設されている。そして補強片11dの先端に設けた固定片11eを前記背面2aに当接することによって断面五形状の中空部が形成され、縦側第二折曲片11の形状が安定するようになっている。
尚、傾斜片10cに係止片8を突成する一方、傾斜片11cには該係止片8が嵌入係止可能な係止孔9が穿設されていることは前記第一の実施形態と同様であるので詳しい説明は省略する。
そして、この実施形態の場合においても一方の面板2の上に他方の面板2を反転載置し、上方の面板2を押圧することで傾斜片10cと傾斜片11cの斜面同士が当接して組み付けられるものであるが、水平片10bと水平片11bが形成されているのでこれら両片10b,11bの当接によってパネル体1の見込み幅の寸法を正確に確保することができることとなる。また、縦側第一折曲片10と縦側第二折曲片11との突合せ部が外観上パネル体1の見込み面中央寄りに形成されるので、パネル体1の正面視においてすっきりとした外観を呈するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】パネル体の正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図2のB−B断面図である。
【図4】(A)は、面板の正面図である。(B)は、同上の要部を示す横断面図である。
【図5】面板の組み付け手順を示す図である。
【図6】(A)は、第二の実施の形態を示す横断面図である。(B)は、第三の実施の形態を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 パネル体
2 面板
6 縦側第一折曲片
6a 見込片
6b 第一傾斜片
6c 第一補強片
6d 固定片
7 縦側第二折曲片
7a 第二傾斜片
7b 第二補強片
7c 固定片
8 係止片
9 係止孔
10 縦側第一折曲片
11 縦側第二折曲片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏面板の各両端側をそれぞれ対向状に折曲形成してなる折曲片同士を突き合わせてパネル体を構成するに、前記各折曲片にはそれぞれ同一角度を有する傾斜片を形成し、該傾斜片の斜面同士を当接するように構成したことを特徴とするパネル体。
【請求項2】
前記折曲片には、表裏面板の背面側に当接する補強片がそれぞれ延設されていることを特徴とする請求項1記載のパネル体。
【請求項3】
前記対向する表面板の傾斜片と裏面板の傾斜片とは、いずれか一方側の傾斜片に突成した係止片を他方側の傾斜片に穿設した係止孔に係止することで組み付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパネル体。
【請求項4】
前記表面板と裏面板とは、折曲片を含む断面形状が同一の面板で構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のパネル体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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