説明

パネル及び体外処理システム

【課題】血液浄化システムにおいて、液体の温度調節を効率的に行うことができ、なおかつパネルの内部管路とパネルの外部の円管路との接続を適正に行うパネルを提供する。
【解決手段】血液浄化流路の一部が形成され、温度調節板に接触して体外液体流路の液体の温度を調節するためのパネル20において、パネル20はパネル内管路Aと、パネル内管路Aの端部と外部の体外液体流路の円管路Bとを接続するための接続管路130を有する。パネル20の一の面は、平坦に形成され、パネル内管路Aは、流路断面がパネル20の他の面側に突出する半円状に形成され、接続管路130は、外周形状がパネル内管路Aの端部A1の流路断面に適合する半円形に形成され、流路断面が円管路Bの外周形状に適合する円状に形成されており、接続管路130の一端部がパネル内管路Aの端部A1に挿入され、接続管路Aの他端部には、円管路Bが挿入可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者等の体内から取り出された体液を体外で処理して体内に戻すために用いられる体外液体流路の一部が形成されるパネルと、そのパネルを有する体外処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば血液などの体液を体外に取り出し浄化して体内に戻す治療法が普及している。例えば、重篤な循環器系の合併症を有する腎疾患や多臓器不全等の疾患の治療にあたり、特に救急・集中治療領域において持続的血液浄化法と総称される血液浄化法が普及しており、臨床効果を上げている。
【0003】
持続的血液浄化法には、具体的には、持続的血液ろ過法(continuous hemofiltration、以下「CHF」という)、持続的血液透析法(continuous hemodialysis、以下「CHD」という)、持続的血液ろ過透析法(continuous hemodiafiltration、以下「CHDF」という)等があり、治療目的に応じて使い分けられている。
【0004】
CHFとは、半透膜を収容した血液浄化器に血液を流し、ろ過膜を介して血液から老廃物を含む排液を排出する一方で、補液を体内に補充することを持続的かつ緩徐に施行する方法である。また、CHDとは、半透膜を介した拡散により、酸塩基平衡の是正等を持続的かつ緩徐に施行する方法である。そして、CHDFとは、前記CHFの小分子量除去能力を改善するために、ろ過液側に透析液を流し、透析効果も得られるように前記CHFと前記CHDとを複合させた方法である。
【0005】
また、肝不全に対する血液浄化法として、血漿交換療法(plasma exchange、以下「PE」という)や、二重ろ過療法(double filtration plasma pheresis、以下「DFPP」という)や、血漿吸着療法(plasma adsorption、以下「PA」という)等のアフェレーシス療法が治療目的に応じて使い分けられ、臨床効果をあげている。
【0006】
PEとは、肝臓が代謝、解毒する有害物質を除去すると共に肝臓が合成する有用物質を補充する方法である。また、DFPPとは、血漿分離器及び血漿成分分離器を用いて前記有用物質の補充液の削減を可能とする方法である。そして、PAとは、分離した血漿を吸着カラムに灌流し、特異的もしくは選択的に病因物質を吸着除去する方法である。
【0007】
以上の血液浄化法は、一般的に血液浄化システムにより実現される。血液浄化システムは、血液浄化流路を有し、当該血液浄化流路は、患者から採血された血液を血液浄化器に送る採血流路と、血液浄化器の血液を患者に戻す返血流路からなる血液循環回路を有し、その他用途に応じて、血液浄化器からの排液を行う排液流路や、血液浄化器に透析液を供給する透析液流路や、採血流路又は返血流路に補液を供給する補液流路等を有している(例えば特許文献1、2参照)。
【0008】
【特許文献1】特開平09−239024号公報
【特許文献2】特開2007−268257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記血液浄化法に用いられる血液浄化流路内を通る透析液、補液等の液体は、治療を行う際に、体液との温度バランスを保つため、所望の温度に温度調節する必要がある。
【0010】
本発明の発明者は、液体流路内の液体の温度を調整する方法として、例えば図9に示すように血液浄化流路の一部201をパネル200に形成し、当該パネル200を温度調節板に接触させて行うことを新たに考えている。この方法によれば、例えば液体をパネルに集約し一括して温度調節できるので、温度調節を効率的に行うことができる。またパネルを温度調節板に取り付けるだけでよいので、血液浄化治療時等の医療スタッフの作業が簡単になる。
【0011】
しかしながら、例えば図10に示すようにパネル200に、単純に円形断面の管路201を形成し、そのパネル200を、温度調節板202に接触させようとした場合、管路201と温度調節板202の接触面積が小さくなってしまう。また、管路201と温度調節板202との接触面積を大きくするために、温度調節板202に管路201の形状に対応した凹部を形成することも考えられるが、この場合、パネル200を温度調節板202に取り付ける際に、管路201の数だけ、管路201を凹部にはめ込む必要があり、取り付け作業が煩雑となる。そこで、本発明の発明者は、パネル200の一の面を平坦にし、管路201をパネル200の他の面側に突出させ流路断面を半円状に形成することを考えている。
【0012】
しかしながら、その場合には、パネル200の半円状の管路201の端部に、図9に示すようにパネル200の外部の管路の円形チューブ203を接続しようとしたときに、半円状の管路201と円形チューブ203との間に隙間ができて、液体の漏れが起こりやすくなることが考えられる。なお、パネル200の外部の管路は、安価な円形チューブを用いるのが好ましい。
【0013】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、温度調節を効率的に行うことができ、なおかつパネルの内部管路とパネルの外部の円管路との接続を適正に行うパネル、及びそのパネルを備えた血液浄化システムなどの体外処理システムを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明は、体内から取り出された体液を体外で処理して体内に戻すために用いられる体外液体流路の一部が形成され、温度調節板に接触して前記体外液体流路の液体の温度を調節するためのパネルであって、該パネルは、パネル面内に形成された、液体が流れるパネル内管路と、前記パネル内管路の端部とパネルの外部の体外液体流路の円管路とを接続するための接続管路と、を有し、パネルの一の面は、平坦に形成され、前記パネル内管路は、流路断面がパネルの他の面側に突出する半円状に形成され、前記接続管路は、前記パネルの他の面側に形成され、流路断面が前記円管路の外周形状に適合する円状に形成されており、当該接続管路には、前記円管路が挿入可能であることを特徴とする。なお、前記「接続管路」には、パネル内管路と一体に製造されているものも、別体に形成されているものも含まれる。
【0015】
本発明によれば、パネルの一の面が平坦に形成され、パネル内管路の流路断面がパネルの他の面側に突出する半円状に形成されているので、パネルの一の面を温度調節板に面接触させ、さらにパネル内管路の半円状の平らの底面が温度調節板側に向く。この結果、パネルを通る液体と温度調節板との間の熱交換が効率的に行われ、液体の温度調節が効率的に行われる。また、接続管路は、流路断面が円管路の外周形状に適合する円状に形成されており、円管路が挿入できるので、パネル内管路とパネル外の円管路との間の接続が気密に行われ、液体の漏れを防止できる。したがって、パネル内管路を半円状に形成して高精度の温度調節を可能にしつつ、当該パネル内管路とパネル外の円管路との接続を適正に行うことができる。さらに、接続管路がパネルの他の面側に設けられているので、パネル内管路とパネル外の円管路との接続部分においても接続管路が温度調節板側に突出することがなく、パネルの一の面を温度調節板により密着できる。したがって、この点からも液体の温度調節を効率的に行うことができる。
【0016】
前記接続管路は、外周形状が前記パネル内管路の端部の流路断面に適合する半円状に形成され、前記接続管路の一端部が前記パネル内管路の端部に挿入され、前記接続管路の他端部には、前記円管路が挿入可能であってもよい。
【0017】
前記パネル内管路の端部と前記接続管路は高周波溶着されていてもよい。また、前記パネル内管路の端部の流路断面の内径は、パネル内管路の端部以外の流路断面の内径より拡径していてもよい。さらに前記接続管路は、前記円管路側よりパネル内管路側の内径が小さくなっていてもよい。また、前記パネル内管路の一部が蛇行していてもよい。
【0018】
少なくとも2つの端部を有する前記パネル内管路が複数形成され、異なるパネル内管路の端部同士が前記パネルの外部の円管路により互いに接続されて、同一系統の流路を形成していてもよい。また、複数系統の流路が形成されていてもよい。
【0019】
前記体外液体流路は、体内から採血された血液を体外で浄化し体内に戻すための血液浄化流路であり、パネルは、血液浄化のために供給される透析液用の流路と、血液に補充される補液用の流路を少なくとも有していてもよい。
【0020】
別の観点による本発明は、体内から取り出された体液を体外で処理して体内に戻すための体外処理システムであって、上記パネルを有する体外液体流路と、温度調節板を有する体外処理装置と、を有し、前記パネルは、前記体外処理装置に対し、平坦な一の面が前記温度調節板と面接触するように取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、パネルを用いて温度調節を効率的に行うことができ、なおかつパネルの内部管路とパネルの外部の円管路との接続を適正に行うことができるので、体外液体流路を用いた血液の処理を適正に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係るパネルが用いられる体外処理システムとしての血液浄化システム1の構成の概略を示す説明図である。
【0023】
本実施の形態では、例えば持続的血液ろ過法(CHF)と持続的血液透析法(CHD)とを複合させた持続的血液ろ過透析法(CHDF)を実施する血液浄化システム1について説明する。
【0024】
図1に示すように血液浄化システム1は、例えば体外液体流路としての血液浄化流路2と、体外処理装置としての血液浄化装置3を有している。血液浄化流路2は、例えば血液を浄化する血液浄化器10と、患者から採血された血液を血液浄化器10に送る採血流路11と、血液浄化器10の血液を患者に戻す返血流路12と、血液浄化器10から排出される排液を流す排液流路13と、血液浄化器10に透析液を供給する透析液供給流路14と、採血流路11または返血流路12に補液を供給する補液供給流路15等を有している。
【0025】
血液浄化器10は、血液内の老廃物等を除去するろ過膜16を有している。この血液浄化器10、採血流路11及び返血流路12により、患者から血液を採取して戻す血液循環回路が形成されている。この血液循環回路に、排液流路13、透析液供給流路14及び補液供給流路15が分岐するように形成されている。
【0026】
血液浄化流路2は、本実施の形態にかかる第1のパネル20と、第2のパネル21をさらに有している。第1のパネル20と、第2のパネル21には、上記排液流路13、透析液供給流路14及び補液供給流路15の一部が形成されている。
【0027】
例えば排液流路13は、上流端部が血液浄化器10に接続されており、例えば排液管路50、第1のパネル20内の排液パネル内管路51、排液管路52、第1のパネル20内の排液パネル内管路53、排液管路54、第2のパネル21内の排液パネル内管路55、排液管路56、第1のパネル20内の排液パネル内管路57、排液管路58、トランスデューサ保護フィルタ59、排液管路60及びエアポンプ61を、上流側からこの順に有している。第2のパネル21の排液パネル内管路55には、排液を貯留する排液貯留部62が接続されている。また、排液管路60には、エアバルブ63が接続されている。また、排液パネル内管路53は、分岐しており、排液管路64に接続されている。この排液管路64の下流端部は、開放されている。
【0028】
かかる構成により、排液流路13は、血液浄化器10から排出される排液を排液貯留部62に貯留したり、排液管路64から排出したりできる。
【0029】
透析液供給流路14は、例えば透析液供給源70、透析液管路71、第1のパネル20内の透析液パネル内管路72、透析液管路73、第2のパネル21内の透析液パネル内管路74、透析液管路75、第1のパネル20内の透析液パネル内管路76、透析液管路77、第1のパネル20内の透析液パネル内管路78及び透析液管路79を、上流側からこの順に有している。透析液管路79の下流端部は、血液浄化器10に接続されている。第2のパネル21内の透析液パネル内管路74には、透析液を貯留する透析液貯留部80が接続されている。透析液貯留部80は、透析液管路81にも接続されており、透析液管路81の他端には、トランスデューサ保護フィルタ82が接続されている。
【0030】
かかる構成により、透析液供給流路14は、例えば透析液供給源70の透析液を透析液貯留部80に貯留し、その透析液を血液浄化器10に供給できる。
【0031】
補液供給流路15は、例えば補液供給源90、補液管路91、第1のパネル20内の補液パネル内管路92、補液管路93、第1のパネル20内の補液パネル内管路94、補液管路95、コネクタ96及び補液管路97を、上流側からこの順で有している。補液管路97の下流端部は、例えば返血流路12に接続されている。第1のパネル20の補液パネル内管路92は、分岐しており、補液管路98、第2のパネル21内の補液パネル内管路99にこの順で接続されている。補液パネル内管路99には、補液を貯留する補液貯留部100が接続されている。補液貯留部100は、補液管路101にも接続されており、補液管路101の他端には、トランスデューサ保護フィルタ102が接続されている。
【0032】
かかる構成により、補液供給流路15は、例えば補液供給源90の補液を補液貯留部100に貯留し、その補液を返血流路12に供給できる。
【0033】
上記採血流路11、返血流路12、排液流路13の排液管路50、52、54、56、58、60、64、透析液供給流路14の透析液管路71、73、75、77、79、81、補液供給流路15の補液管路91、93、95、97、98、101には、例えば熱可塑性で軟質素材の円形チューブが用いられている。円形チューブの材質として、例えば軟質塩化ビニルが用いられる。なお、円形チューブの材質は、製造コスト、加工性および操作性の観点から合成樹脂、特に熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、弗素系樹脂、シリコン系樹脂等、さらにはABS(アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体)樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアセタール等を例示することができ、何れにおいても円形チューブの材料として好適に用いることができる。中でも、軟質素材は折れ曲がりや割れ等に強く、操作時の柔軟性に優れているため好ましく、組み立て性の理由から軟質塩化ビニルが特に好ましい。
【0034】
血液浄化装置3は、例えば採血流路11の血液を圧送するチューブポンプ110、排液流路13の排液を排液管路52において圧送するチューブポンプ111、透析液流路14の透析液を透析液管路77において圧送するチューブポンプ112、補液供給流路15の排液を補液管路93において圧送するチューブポンプ113、排液流路13の排液管路64を遮断する遮断バルブ114、透析液供給流路14の透析液管路71を遮断する遮断バルブ115、補液供給流路15の補液管路91を遮断する遮断バルブ116等を有している。
【0035】
また、血液浄化装置3は、第1のパネル20内を流れる液体の温度を調節する温度調節板120を備えている。温度調節板120は、図2に示すように垂直に立設されており、上下部には、第1のパネル20を支持する支持部材121が設けられている。
【0036】
さらに、血液浄化装置3は、第2のパネル21の重量を計測する図示しない重量計を備えている。この重量計により、患者から排出される液体の除水量と患者に供給される液体の供給量を正確に把握し、患者の体液量の管理を厳格に行うことができる。
【0037】
ここで、上記第1のパネル20の構成について説明する。第1のパネル20は、例えば図1に示すように略方形状を有し、例えば硬質の塩化ビニルなどの硬質プラスチックで形成されている。第1のパネル20は、患者の体液が直接または間接的に触れるため、生体適合性や生物学的安全性を有している材質が好ましい。材質としては、製造コスト、加工性および操作性の観点から合成樹脂、特に熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、弗素系樹脂、シリコン系樹脂等、さらにはABS(アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体)樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアセタール等を例示することができ、何れにおいても第1のパネル20の材質として好適に用いることができる。第1のパネル20の材質が硬質プラスチックである場合、流路内を流れる液体の圧力が陰圧下においても流路形状が変形することがなく、後述する温度調節板120との接触が十分になされるため、温度調節能力の低下が生じることがない。また、流路形状の変形が起こらないので、液体の流量が変化することもない。これらの理由から、本実施の形態では、第1のパネル20の材質として、例えば硬質プラスチックが用いられる。
【0038】
第1のパネル20は、上述のように複数のパネル内管路51、53、57、72、76、78、92、94(以下、「パネル内管路A」とする)を有し、排液、透析液及び補液の3系統のパネル内流路が形成されている。パネル内管路Aのうちの透析液パネル内管路78と補液パネル内管路94は、第1のパネル20面内において蛇行するように形成され、上部から下部に亘り形成されている。
【0039】
第1のパネル20は、図2及び図3に示すように一の面20aが平坦に形成され、他の面20bにパネル内管路Aが形成されている。パネル内管路Aは、流路断面が他の面20b側に突出する半円状に形成されている。第1のパネル20は、例えば図3に示すように2枚のプラスチックシートが張り合わされて形成されている。例えば他の面20b側のプラスチックシートには、断面が半円状の凹み通路が成型され、一の面20a側のプラスチックシートは、平坦に成型されており、それらを張り合わせてパネル内管路Aが形成されている。この第1のパネル20のプラスチックシート同士の張り合わせは、例えば高周波溶着により行われている。
【0040】
図4に示すように第1のパネル20におけるパネル内管路Aの端部A1は、第1のパネル20の外縁部に形成されている。つまり、パネル内管路Aと第1のパネル20の外部の管路は、総て第1のパネル20の外縁部において接続されている。パネル内管路Aの端部A1は、図5に示すように他の部分と同じ形状で、他の部分よりわずかに径が大きい半円状に形成され、第1のパネル20の外縁部で開口している。このパネル内管路Aの各端部A1には、接続管路130の一端部が挿入される。
【0041】
接続管路130の材質は、製造コスト、加工性の観点から合成樹脂、特に熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、弗素系樹脂、シリコン系樹脂等、さらにはABS(アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体)樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアセタール等を例示することができ、何れにおいても接続管の材料として好適に用いることができる。中でも、軟質素材は折れ曲がりや割れ等に強く、また、組み立て性の理由から軟質塩化ビニルが特に好ましい。接続管路130は、外周面130aがパネル内管路Aの端部A1の流路断面に適合する半円状に形成されている。また、接続管路130は、流路断面が上述の円形の排液管路50、52、54、56、58、64、透析液管路71、73、75、77、79、補液管路91、93、95(以下、「円管路B」とする)の外周形状に適合する円形に形成されている。これにより、図6に示すように接続管路130がパネル内管路Aに隙間なく嵌め込まれ、その接続管路130の中央に円形流路130bが形成されている。接続管路130の他端部の円形流路130bには、円管路Bが挿入されている。また、図7に示すように接続管路130は、内周面にテーパが形成されており、円管路B側よりパネル内管路A側の内径が小さくなっている。
【0042】
なお、パネル内管路Aの端部A1と接続管路130は、例えば高周波溶着により接着されている。また、接続管路130と円管路Bは、例えば溶剤溶着により接着されている。また、パネル内管路A、パネル内管路の端部A1及び接続管路130の外周面130aは、上述のように半円状に形成されているが、当該半円状には、図8に示すような半円と長方形を組み合わせたような形状も含まれる。
【0043】
次に、以上の第1のパネル20や血液浄化システム1を用いて行われる血液浄化プロセスについて説明する。先ず、血液浄化流路2の所定部分が血液浄化装置3に取り付けられる。このとき、第1のパネル20は、図2に示すように温度調節板120の支持部材121に支持され、第1のパネル20の一の面20aの平坦面が温度調節板120に密着され面接触される。また、例えば採血流路11、排液管路52、透析液管路77、補液管路93は、それぞれチューブポンプ110〜113に装着される。
【0044】
そして、患者に対する血液浄化処理が開始されると、採血された血液が血液浄化器10に送られ、その血液浄化器10で浄化された血液が患者に戻される。血液浄化器10には、透析液供給流路14により透析液が供給される。透析液供給流路14では、例えば透析液貯留部80の透析液が、第1のパネル20の透析液パネル内管路76、78を通って温度調節板120により所定の温度に調節され、その後血液浄化器10に供給される。また、血液浄化器10で生じた排液は、排液流路13を通じて排液される。さらに、返血流路12には、補液供給流路15により補液が供給される。補液供給流路15では、例えば補液貯留部100の補液が、第1のパネル20の補液パネル内管路92、94を通って温度調節板120により所定の温度に調節され、その後返血流路12に供給される。上記排液、透析液の供給、補液の供給は、例えば重量計により排液貯留部62、透析液貯留部80、補液貯留部100の重さを量りながら行われる。
【0045】
以上の実施の形態によれば、第1のパネル20の一の面20aが平坦に形成され、パネル内管路Aの流路断面が第1のパネル20の他の面20b側に突出する半円状に形成されているので、第1のパネル20の一の面20aを温度調節板120に面接触させ、さらにパネル内管路Aの半円状の平らの底面が温度調節板120側に向く。この結果、第1のパネル20を通る液体と温度調節板120との間の熱交換が効率的に行われ、液体の温度調節が効率的に行われる。また、接続管路130は、外周形状がパネル内管路Aの流路断面に適合する半円形に形成され、流路断面が円管路Bの外周形状に適合する円形に形成されており、接続管路130の一端部がパネル内管路Aに挿入され、接続管路120の他端部に円管路Bが挿入できる。このため、パネル内管路Aと外部の円管路Bとの間の接続が気密に行われ、液体の漏れを防止できる。したがって、パネル内管路Aを半円状に形成して高精度の温度調節を可能にしつつ、当該パネル内管路Aとパネル外の円管路Bとの接続を適正に行うことができる。さらに接続管路130が第1のパネル20の他の面20b側に設けられ、半円状で温度調節板120側が平らな底面となるので、パネル内管路Aと円管路Bとの接続部分においても接続管路130が温度調節板120側に突出することがなく、第1のパネル20の一の面20aを温度調節板120により密着できる。したがって、この点からも液体の温度調節を効率的に行うことができる。
【0046】
接続管路130は、円管路B側よりパネル内管路A側の内径が小さくなっているので、接続管路130内の適正な位置まで円管路Bを挿入しつつ、接続管路130と円管路Bとの間の液体の漏れを防止できる。
【0047】
パネル内管路Aの一部である透析液パネル内管路78、補液パネル内管路94が蛇行するように形成されているので、温度調節板120との熱交換を安定して効率的に行うことができる。したがって、透析液や補液の温度調節をより高精度に行うことができる。
【0048】
第1のパネル20には、少なくとも2つの端部を有するパネル内管路Aが複数形成され、異なるパネル内管路A同士が円管路Bにより互いに接続されて、同一系統のパネル内流路を形成しているので、同じ液体が複数回パネル内管路Aを流れる。このため、液体と温度調節板120との熱交換を効果的に行うことができる。なお、本実施の形態では、上述のように例えば第1のパネル20内にパネル内管路Aである複数の透析液パネル内管路76、78が形成され、それらの透析液パネル内管路76、78の端部同士が円管路Bである透析液管路77により互いに接続されて、同一系統のパネル内流路である透析液供給流路14が形成されている。また、本実施の形態では、例えば第1のパネル20内の排液パネル内管路51、53の端部同士が排液管路52により互いに接続されて排液流路13が形成され、透析液パネル内管路76、78の端部同士が透析液管路77により互いに接続されて透析液供給流路14が形成され、補液パネル内管路92、94の端部同士が補液管路93により互いに接続されて補液供給流路15が形成されて、合わせて3系統の複数の流路が形成されている。
【0049】
また、パネル内管路Aのうちの透析液パネル内管路78と補液パネル内管路94は、第1のパネル20面内において蛇行するように形成され、上部から下部に亘り形成されているので、透析液と補液を一括して温度調節できる。この結果、透析液と補液の温度を患者に適した均一な温度に調整できるので、患者の血液浄化の治療を適正に行うことができる。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に相到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0051】
例えば以上の実施の形態は、第1のパネル20の接続管路130がパネル内管路Aに挿入されたものであったが、接続管路130は、パネル内管路Aと一体に製造されたものであってもよい。また、以上の実施の形態では、持続的血液浄化法のCHDFを行うための第1のパネル20であったが、本発明は、上記CHF、CHD、PE、DFPP、PA等の他の血液浄化法にも適用できる。また、本発明は、血液浄化以外の輸血、輸液による治療、人工心肺治療や血液成分献血などの体外処理にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、体内から取り出された体液を体外で処理して体内に戻すための体外処理システムにおいて、パネルを用いて液体の温度調節を効率的に行いつつ、なおかつパネルの内部管路とパネルの外部の円管路との接続を適正に行う際に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施の形態における血液浄化システムの構成を示す概略図である。
【図2】第1のパネルの温度調節板への取り付け状態を示す説明図である。
【図3】第1のパネルの部分断面図である。
【図4】第1のパネルの外縁部付近の拡大図である。
【図5】第1のパネルのパネル内管路、接続管路と、円管路の構成を示す説明図である。
【図6】パネル内管路の端部に接続管路を取り付けた状態の正面図である。
【図7】パネル内管路、接続管路及び円管路を接続した状態の縦断面図である。
【図8】半円状の他の態様を示す説明図である。
【図9】改良前のパネルを示す説明図である。
【図10】円形断面のパネル内管路を有するパネルと、温度調節板との接触状態を示す縦断面の説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1 血液浄化システム
2 血液浄化流路
3 血液浄化装置
20 第1のパネル
120 温度調節板
130 接続管路
A パネル内管路
B 円管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内から取り出された体液を体外で処理して体内に戻すために用いられる体外液体流路の一部が形成され、温度調節板に接触して前記体外液体流路の液体の温度を調節するためのパネルであって、
該パネルは、パネル面内に形成された、液体が流れるパネル内管路と、前記パネル内管路の端部とパネルの外部の体外液体流路の円管路とを接続するための接続管路と、を有し、
パネルの一の面は、平坦に形成され、
前記パネル内管路は、流路断面がパネルの他の面側に突出する半円状に形成され、
前記接続管路は、前記パネルの他の面側に形成され、流路断面が前記円管路の外周形状に適合する円状に形成されており、当該接続管路には、前記円管路が挿入可能であることを特徴とする、パネル。
【請求項2】
前記接続管路は、外周形状が前記パネル内管路の端部の流路断面に適合する半円状に形成され、前記接続管路の一端部が前記パネル内管路の端部に挿入され、前記接続管路の他端部には、前記円管路が挿入可能であることを特徴とする、請求項1に記載のパネル。
【請求項3】
前記パネル内管路の端部と前記接続管路が高周波溶着されていることを特徴とする、請求項2に記載のパネル。
【請求項4】
前記パネル内管路の端部の流路断面の内径が、パネル内管路の端部以外の流路断面の内径より拡径していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のパネル。
【請求項5】
前記接続管路は、前記円管路側よりパネル内管路側の内径が小さくなっていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のパネル。
【請求項6】
前記パネル内管路の一部が蛇行していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のパネル。
【請求項7】
少なくとも2つの端部を有する前記パネル内管路が複数形成され、
異なるパネル内管路の端部同士が前記パネルの外部の円管路により互いに接続されて、同一系統の流路を形成していることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のパネル。
【請求項8】
複数系統の流路が形成されていることを特徴とする、請求項7に記載のパネル。
【請求項9】
前記体外液体流路は、体内から採血された血液を体外で浄化し体内に戻すための血液浄化流路であり、
血液浄化のために供給される透析液用の流路と、血液に補充される補液用の流路を少なくとも有することを特徴とする、請求項8に記載のパネル。
【請求項10】
体内から取り出された体液を体外で処理して体内に戻すための体外処理システムであって、
請求項1〜9のいずれかに記載のパネルを有する体外液体流路と、
温度調節板を有する体外処理装置と、を有し、
前記パネルは、前記体外処理装置に対し、平坦な一の面が前記温度調節板と面接触するように取り付けられることを特徴とする、体外処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−233081(P2009−233081A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82476(P2008−82476)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000116806)旭化成クラレメディカル株式会社 (133)
【Fターム(参考)】