説明

パネル固定機構

【課題】パネル着脱の作業性を向上させることができると共に、パネルを固定する上での信頼性を向上させることができるパネル固定機構を提供する。
【解決手段】パネル40をパネル支持部材45に着脱可能に固定するパネル固定機構50であって、パネル40を固定するための頭部22aと係合ピン22fを有するパネル固定部材22と、パネル支持部材45側に接合され内部に空間を有し、パネル固定部材22側の端部の閉止板部26bに、パネル固定部材22が挿通する孔26c及び係合ピン22fが通過するための切欠部26dが形成されたキャップ部材26と、前記空間内に収納され、キャップ部材26の軸線方向に伸縮する弾性部材28と、弾性部材28の閉止板部26b側に設けられ、パネル固定部材22の先端部に係合する係合部材30とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、クリーンルームやオフィスルーム等の床部に敷設されるフリーアクセスフロアを構成する、複数のフリーアクセスフロア用パネル等のパネルを支持部材に着脱可能に固定するために用いるパネル固定機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のパネル固定機構としては、例えば、下記の特許文献1に記載されたようなものがある。この従来のパネル固定機構は、特許文献1の図3に示されたパネル固定金具3を、特許文献1の図5(a)に示されているような、パネル1の穴1a内に挿入した仮取付状態から、ロックピン5の頭部5aを下方に押し込んで、ロックボルト7の頭部7b及び係合ピン7a,7aが受部12の長円孔12a(特許文献1の図4(a)参照)をくぐり抜けて、ロックピン5を右回りに回転させることにより、係合ピン7a,7aが、受部12の長円孔12aの短径部の下側に入り込んで受部12の下面に係合された本取付状態(特許文献1の図5(b)参照)となる。
【0003】
このとき、圧縮コイルバネ6がその軸線方向に圧縮されることに反発して発生した付勢力により、スリーブ4の頭部4bと係合ピン7a,7aとを互いに接近させるような力が働くので、スリーブ4の頭部4bがパネル1を受部12側に抑え込むことにより固定することができるようになっている。
【0004】
従来のパネル固定機構はこのように構成することにより、パネルの着脱を略ワンタッチ方式にして、例えば他の方式で、ネジ部材をそのネジの始めから終わりまでの長い距離を連続してネジ回転させることにより、パネルを着脱するのに長時間を要するような方式に比べて、パネルを短時間で着脱できるようにして、一応はその着脱の作業性を向上させることができるようになっていた。
【特許文献1】特許第3422934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来のパネル固定機構にあっては、圧縮コイルバネ6がその軸方向に圧縮されて発生した付勢力により、スリーブ4の頭部4bを介してパネル1を受部12側に抑え込んで固定するような構造になっているので、パネル1に上記付勢力よりも大きな地震等の外力が働いたときは、パネル1は上記付勢力に打ち勝って基部11から離れてその上方に浮き上がってしまうため、安定して強固に固定することができず、パネル1を固定する上での信頼性が低下するという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、パネル着脱の作業性を向上させることができると共に、パネルを固定する上での信頼性を向上させることができるパネル固定機構を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、
パネルをパネル支持部材に着脱可能に固定するパネル固定機構であって、
前記パネルを固定するための頭部と係合ピンを有するパネル固定部材と、
前記パネル支持部材側に接合され、内部に空間を有し、前記パネル固定部材側の端部の閉止板部に、前記パネル固定部材が挿通する孔、及び前記係合ピンが通過するための切欠部が形成されたキャップ部材と、
前記空間内に収納され、前記キャップ部材の軸線方向に伸縮する弾性部材と、
前記弾性部材の前記閉止板部側に設けられ、前記パネル固定部材の先端部に係合する係合部材とを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
また本発明の前記キャップ部材は、位置を調整可能に設けられたことを特徴とするものである。
【0009】
また本発明の前記閉止板部は、傾斜面状に形成されると共に、前記係合ピンが係止可能な係止部を有することを特徴とするものである。
【0010】
また本発明は、前記パネル固定部材の先端部に前記係合部材に係合可能な係合部と小径部を形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
このような本発明によれば、
パネルをパネル支持部材に着脱可能に固定するパネル固定機構であって、
前記パネルを固定するための頭部と係合ピンを有するパネル固定部材と、
前記パネル支持部材側に接合され、内部に空間を有し、前記パネル固定部材側の端部の閉止板部に、前記パネル固定部材が挿通する孔、及び前記係合ピンが通過するための切欠部が形成されたキャップ部材と、
前記空間内に収納され、前記キャップ部材の軸線方向に伸縮する弾性部材と、
前記弾性部材の前記閉止板部側に設けられ、前記パネル固定部材の先端部に係合する係合部材とを備えたことにより、
パネル着脱の作業性を向上させることができると共に、パネルを固定する上での信頼性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明のパネル固定機構において、前記キャップ部材が、位置を調整可能に設けられたことにより、パネルにおける取り付け位置が多少ずれていても確実にパネルを固定することができ、パネル着脱の作業性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明のパネル固定機構において、前記閉止板部は、傾斜面状に形成されると共に、前記係合ピンが係止可能な係止部を有することにより、パネル着脱の作業性を向上させることができると共に、前記パネルの寸法のバラツキを吸収することができる。
【0014】
また、本発明のパネル固定機構において、前記パネル固定部材の先端部に前記係合部材に係合可能な係合部と小径部を形成したことにより、パネル固定部材の着脱の際の移動方向を係合部がガイドして、パネル着脱の作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係るパネル固定機構を実施するための最良の形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
図1から図11は、本発明の一実施の形態に係るパネル固定機構50について説明するために参照する図である。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態に係るパネル固定機構50は、フリーアクセスフロア用のパネル40をパネル支持部材45上に着脱可能に固定するために用いられるもので、パネル固定部材22と、底板24上に立設させパネル固定部材22と接合させるキャップ部材26と、このキャップ部材26内の空間に収納される圧縮コイルバネ28(弾性部材)と、この圧縮コイルバネ28の上端部に設けられる絞り座金30(係合部材)とを備えて構成されている。これらの部材にはすべて金属製のものが用いられている。
【0017】
パネル支持部材45としては、前記特許文献1における図11に示された角パイプ2と同様のものが用いられている。
なお、パネル支持部材としては、角パイプを用いた上記パネル支持部材45の他に、前記特許文献1における図11に示された支持脚52のようなものを用いて、そのような支持脚の上端部の上にパネル固定機構50を設けてパネル40を固定するようにしてもよい。
【0018】
図2(a)に示すように、底板24は略正方形に形成されており、この四隅にそれぞれ1つずつ各キャップ部材26が配置されている。図2(a)における縦横の2点鎖線は、互いに隣り合う4枚のフリーアクセスフロア用のパネル40の各隅部の境界を示しているので、各キャップ部材26は各パネル40の隅部に配置されることになることがこの図から分かる。図2(b)は、図1に示したパネル固定機構50のパネル40及びパネル固定部材22を省略した状態を示す側面図である。
【0019】
図4(b)に示すように、キャップ部材26には、その下端部にフランジ部26aが形成されており、その上端部には例えば絞り加工等によって閉止板部26bが形成されている。この閉止板部26bの中央部には、図4(a),(c)に示すように、軸孔26c(孔)が形成されていると共に、この軸孔26cには互いに対向する状態に配置された一対の切欠部26dが形成されている。
【0020】
閉止板部26bの平面図を示す図9における、半円弧状のA−B線を直線状に引き伸ばして、軸孔26cの半径中心側から見た、軸孔26cの内周曲面を平面状に展開した状態を示す、図11に示すように、閉止板部26bの円周方向の大部分は同方向に沿って傾斜面状に形成されている。
【0021】
閉止板部26bの上記傾斜面状部分は、図9の閉止板部26bの円周方向において180°の領域内に形成されているが、その円周方向において残りの180°の領域内にも、同じもう1つの傾斜面状の部分が、先の傾斜面状部分の位置から丁度180°位相をずらした位置に配置されるよう形成されている。
【0022】
したがって、図11に示した閉止板部26bの展開図と同じ展開図をもう1つ図11の左右方向に連続するように繋げて示したとすると、閉止板部26bの軸孔26cの内周曲面を円周方向全周にわたって(2つの切欠部26dの突き当たり面をも含む)展開して示すことができることになる。
【0023】
そして、閉止板部26bの傾斜面状部分の頂部Pと谷底部Rは、切欠部26dに対応する箇所で、逆方向への急峻な傾斜部を介して接続されている。このため、閉止板部26bの、その円周方向に沿って切断した断面は、円周方向全周にわたって、頂部Pと谷底部Rが交互に繰り返し現れる鋸状波形断面を有していることになる。
【0024】
このように、閉止板部26bの円周方向に沿って切断した断面が、本実施の形態において、正確には鋸状波形断面を有しているのであるが、図10,11以外の図においては、本実施の形態の構成がかえって分かり難くなるのを防止するために、閉止板部26bは便宜上単一面を有する単なる円板状のように簡略化して図示するものとする。
【0025】
このような閉止板部26bの傾斜面状部分には、図11に示すように、その長さ方向(図9では円周方向)に間隔を置いて複数の、下方に突出する係止部27が形成されている。このような係止部27は、閉止板部26bに、外側(図中上側)に凸部、内側(図中下側)に凹部ができるような、プレス加工部26f間に形成されるようになっている。
【0026】
図11に示すように、閉止板部26bの傾斜面状部分において最も低い部分(谷底部Rの近傍部)には、図中下方に突出する突起29が形成されている。この突起29は、パネル固定部材22を軸周りに大きな角度(略180°)で回転させたときに、係合ピン22fがそれに当接してそれ以上の回転を制止し、パネル固定部材22が回転し過ぎて係合ピン22fが切欠部26dからキャップ部材26の外側へ押し出されて、パネル固定部材22がパネル40を固定できなくなることを防止するために用いられる。
【0027】
このため、本実施の形態に係るパネル固定機構50は、パネル固定部材22の頭部22aを下方に押し込んでその一対の係合ピン22fを、キャップ部材26の閉止板部26bの一対の切欠部26dをくぐらせてから、パネル固定部材22をその軸周りの時計回り方向に回転させると、係合ピン22fを閉止板部26bの内側(図11中下側)に配置させることができる。
【0028】
このように、パネル固定部材22をその軸周りに回転させて閉止板部26bの内側に配置させると、係合ピン22fは、閉止板部26bの傾斜状部分の内側に形成された複数の係止部27のいずれかに係止して止まる。このことにより、パネル固定部材22はパネル40を、表面板32の上に着脱可能に固定することができるようになっている。
【0029】
一方、キャップ部材26の内部の空間には、図3に示すように、圧縮コイルバネ28と、この圧縮コイルバネ28の上端部に嵌合して設けられた絞り座金30(係合部材)が収納されるようになっている。
【0030】
図6に示すように、絞り座金30は、圧縮コイルバネ28の上端部の外側に嵌合する外筒部30aと、この外筒部30aより上面部30dを介して半径内方に形成された内筒部30bとを有し、この内筒部30bの内側には係合孔30cが形成されている。
【0031】
他方、図7に示すように、パネル固定部材22は、平面が円形で高さを有する頭部22aが形成されており、この頭部22aの上面には、マイナスドライバー等の工具が係合するための溝部22bが形成されている。
【0032】
パネル固定部材22の軸部22cの長さ途中には、軸部22cの軸線と直角方向に、かつ互いに反対方向に突出する一対の係合ピン22fが、互いに同一軸線上に設けられている。またパネル固定部材22の軸部22cの先端部(図中下端部)には、小径部22dと段部22e(係合部)が形成されている。
【0033】
また、図3から分かるように、キャップ部材26のフランジ部26aは底板24と表面板32との間に形成された空間内に配置されて、固定されてはいない。底板24と表面板32との間には中間板34が挟まれて、図示してないネジ部材により底板24と表面板32に一体的に固定されている。中間板34は、キャップ部材26のフランジ部26aの肉厚よりも少し厚い肉厚を有しているので、キャップ部材26のフランジ部26aは水平方向に移動可能である。
【0034】
図5(a)に示すように、表面板32には、四隅の内側の4箇所の位置に、4つのキャップ部材26のそれぞれの筒部26eが挿入する、短径がキャップ部材26の筒部26eの径より大きな長孔32aが形成されているので、その筒部26eは長孔32a内で移動可能である。
【0035】
また、表面板32の周部4辺のそれぞれの中央部近傍には、上記3枚の板24,32,34を一体的に固定する、パネル固定部材22とは別の、図示してない皿状の頭部を有する第2ネジ部材のその皿状の頭部が嵌着すると共に、そのネジ部が挿通する皿状凹部付孔32bが形成されている。
【0036】
また、表面板32の中央部には、底板24の下側の、図示してない梁状の角パイプ(パネル支持部材)に上記3枚の板24,32,34を固定するための、上記第2ネジ部材より少し大き目の、図示してない皿状の頭部を有する第3ネジ部材のその皿状の頭部が嵌着すると共に、そのネジ部が挿通する、上記皿状凹部付孔32bより少し大き目の皿状凹部付孔32cが形成されている。
【0037】
図5(b)に示すように、中間板34には、四隅の内側の4箇所の位置に、4つのキャップ部材26のフランジ部26aが収納される、フランジ部26aより大きい面積の異形孔34aが形成されている。また、中間板34の周部4辺のそれぞれの中央部近傍には、上記3枚の板24,32,34を一体的に固定する、上記第2ネジ部材のネジ部が挿通する挿通孔34bが形成されている。
【0038】
また、中間板34の中央部には、底板24の下側の角パイプに上記3枚の板24,32,34を固定するための、上記第3ネジ部材のネジ部が挿通する挿通孔34cが形成されている。
【0039】
図5(c)に示すように、底板24の周部4辺のそれぞれの中央部近傍には、上記3枚の板24,32,34を一体的に固定する、上記第2ネジ部材のネジ先端部がネジ締結するネジ孔24bが形成されている。また、底板24の中央部には、底板24の下側の角パイプに上記3枚の板24,32,34を固定するための、上記第3ネジ部材のネジ部が挿通する挿通孔24cが形成されている。この第3ネジ部材のネジ先端部は、底板24の下側の角パイプに形成されたネジ穴にネジ締結するようになっている。
【0040】
次に、パネル固定部材22がパネル40を表面板32上に固定するときの取付手順について以下に説明する。
図8に示すように、パネル固定部材22をキャップ部材26の上方から下降させて、その先端部から軸部22cを、図8に示していないパネル40のパネル固定用孔40a(図1参照)を通った後、キャップ部材26の閉止板部26bの軸孔26cから内部の空間に挿し込む。
【0041】
このことにより、パネル固定部材22の先端部の小径部22dが圧縮コイルバネ28の上端部に設けられた絞り座金30の係合孔30cに嵌合すると共に、小径部22dに隣接して形成された段部22eが絞り座金30の上面部30dに当接して係合するようになっている(図1中右方のパネル固定部材22参照)。
【0042】
それからさらに、パネル固定部材22の頭部22aを、圧縮コイルバネ28を圧縮させるよう下方に押し込んで、係合ピン22fが切欠部26dを通過して閉止板部26bより下方に下降させた後、頭部22aの溝部22bに係合させたドライバー等の工具により、パネル固定部材22をその軸周りの時計回り方向に回転させる。
【0043】
このことにより、その係合ピン22fは、キャップ部材26の閉止板部26bの内側(図11中下側)に配置されて、係止部27のいずれかに係止する。このことにより、パネル固定部材22はパネル40を表面板32上に固定することができる(図1中左半部参照)ことになる。
【0044】
逆に、パネル40を表面板32の上から取り外したいときは、パネル固定部材22を、パネル40を固定するときと反対方向の軸周りに回転させることにより、その係合ピン22fがキャップ部材26の閉止板部26bの係止部27から離脱する。それから、係合ピン22fが切欠部26dの位置に来ると、パネル固定部材22は、圧縮コイルバネ28に圧縮により蓄えられていた付勢力により上方に瞬時に押し上げられて、その頭部22aをパネル40の上面より上方に突出させる。
【0045】
そして、パネル固定部材22の頭部22aを指で摘まみ上げて、その係合ピン22fを切欠部26dから引き抜くと共に、その小径部22dを絞り座金30の係合孔30cから引き抜いて、その軸部22cをキャップ部材26の軸孔26cを通って上方に引き抜くことにより、パネル40を容易に取り外すことができる。
【0046】
ところで、キャップ部材26のフランジ部26aは、図5に示すように、中間板34に形成された、フランジ部26aより大きい面積の異形孔34a内に収納されると共に、中間板34の肉厚はフランジ部26aの肉厚より厚いことと、キャップ部材26の筒部26eがそれより大きな表面板32の長孔32aに緩く嵌合していることにより、キャップ部材26は底板24の上で移動でき、その位置を調整可能に設けられている。
【0047】
このため、パネル40に形成される、パネル固定部材22が挿通するパネル固定用孔40a(図1参照)の中心位置が、キャップ部材26の中心位置と多少ずれていたとしても、キャップ部材26がその位置を調整するよう移動できることにより互いの中心位置を一致させて、確実にパネル40をパネル固定機構50の表面板32上に固定することができるようになっている。
【0048】
他方、パネル40のパネル固定用孔40aには、その径方向両端側に、パネル固定部材22の係合ピン22fが通る、キャップ部材26の閉止板部26bの、軸孔26cの一対の切欠部26dと同様の切欠部(図示せず)が形成されている。
【0049】
また、本実施の形態に係るパネル固定機構50は、パネル固定部材22の係合ピン22fを、軸部22cの軸周りに僅かに回転させただけで、キャップ部材26の閉止板部26bの内側の係止部27に係止できることにより、パネル固定部材22を迅速なワンタッチ操作で、キャップ部材26に接合させることができるようになっている。
【0050】
また、本実施の形態に係るパネル固定機構50は、パネル固定部材22の下端部に、圧縮コイルバネ28の上端部の絞り座金30の上面部30dに係合可能な段部22e(係合部)と、絞り座金30の係合孔30cに嵌合する小径部22dを形成したことにより、パネル固定部材22が上下動する際に圧縮コイルバネ28が曲がらない(座屈しない)ようにして、パネル固定部材22の着脱時の高さ方向の移動がまっすぐになるようガイドすることができるようになっている。
【0051】
また、前記従来のパネル固定機構のように、係合ピン7a,7aを受部12の長円孔12aの短径部の下側に係止することにより、圧縮コイルバネ6が圧縮されて発生した付勢力によりパネルを抑え込んで固定するようになっていたのとは異なり、本実施の形態に係るパネル固定機構50は、パネル固定部材22の係合ピン22fをキャップ部材26の閉止板部26b内側の係止部27に係合させることにより、パネル40を剛的に固定するようになっている。
【0052】
このように本実施の形態に係るパネル固定機構50は、パネル40の固定に際しては圧縮コイルバネ28の付勢力は全く関与していないので、地震等によりパネル40に、圧縮コイルバネ28の付勢力より大きな外力が働いたとしても、その外力により従来のパネル固定機構のようにパネル40が浮き上がることはない。本実施の形態に係るパネル固定機構50の圧縮コイルバネ28は、パネル固定部材22をキャップ部材26から取り外すときに、その付勢力によりパネル固定部材22の頭部22aをパネル40の上面より上方に押し上げるためだけの機能のために用いられている。
【0053】
以上説明したように、本実施の形態に係るパネル固定機構50によれば、パネル固定部材22を所定の長さだけ下方に押し込んでから、わずかの角度分だけパネル固定部材22を軸周りに回転させればよいので、非常に迅速なワンタッチ方式でパネル固定部材22を着脱できる。このため、パネル着脱の作業性を向上させることができる。
【0054】
また、前述したように、地震等によりパネル40に圧縮コイルバネ28の付勢力より大きな外力が働いたとしても、その外力により従来のパネル固定機構のようにパネル40が浮き上がることはないので、パネルを固定する上での信頼性を向上させることができる。
【0055】
また、本実施の形態に係るパネル固定機構50によれば、キャップ部材26の閉止板部26bが傾斜面状に形成され、この傾斜面状部分の内側に複数の係止部27を設けているので、複数の係止部27のそれぞれの高さ位置が互いに異なる。このため、そのいずれかの係止部27に係合ピン22fが係止することによりパネル40を固定できるので、パネル40のパネル固定部材22との係合部の、高さ方向の寸法に多少の製造誤差があってもそれを吸収することができる。
【0056】
また、本実施の形態に係るパネル固定機構50によれば、キャップ部材26が、その位置を調整可能に設けられたことにより、パネル40における取り付け位置が多少ずれていても確実にパネル40を底板24上に固定することができるので、パネル40着脱の作業性を向上させることができる。
【0057】
また、本実施の形態に係るパネル固定機構50によれば、パネル固定部材22の下端部に絞り座金30に係合可能な段部22eと小径部22dを形成したことにより、パネル固定部材22の着脱の際の移動方向をまっすぐにガイドすることができるので、パネル着脱の作業性を向上させることができる。
【0058】
なお、前記実施の形態では、パネル固定部材22の頭部22aの上面にマイナスドライバーが係合するための溝部22bを形成したが、その他のネジ回転用工具を用いるために、頭部22aの上面に形成される形状を変更してもよい。
【0059】
また、前記実施の形態では、本発明をフリ−アクセスフロア用のパネルに適用した場合について説明したが、パネルはフリ−アクセスフロア用のパネルに限定する必要はなく、他の用途に用いられるパネルに適用することもできる。
【0060】
また、前記実施の形態においては、パネル固定機構50の底板24等の各板が水平方向に配置される場合について説明したが、それらの各板が鉛直方向に配置されるように、パネル固定機構50を壁等のような鉛直面に取付けて、パネル40をその鉛直面に固定することも可能である。或は、パネル固定機構50を介してパネル40を天井のような場所に取付けることも可能である。
【0061】
また、前記実施の形態では、弾性部材として圧縮コイルバネ28を用いたが、これに限定する必要は無く、その代わりに、プラスチック製の合成ゴムや、板バネ等の、他の種類の弾性部材を用いることもできる。
【0062】
また、前記実施の形態では、パネル固定機構を構成する部品がそれぞれ金属製のものを用いたが、その構成部品は、充分な強度を有するものであれば、例えば、グラスファイバーや、炭素繊維等を混入したプラスチック等、金属以外の材料によっても形成することができる。
【0063】
また、前記実施の形態では、前記各板24,32,34はそれらの4箇所をネジ部材により締結することによりそれらが互いに一体となるように固定したが、それらの固定箇所は4箇所に限定されるものではなく、3箇所以下でも、或は5箇所以上でもよい。
【0064】
また、上記ネジ部材以外の固定手段を用いてもよく、例えばリベット等の他の固定手段により各板24,32,34のそれぞれの4箇所同士を締結することによりそれら各板が一体となるように固定してもよい。
【0065】
また、前記実施の形態では、前記各板24,32,34はそれらの中心部1箇所をネジ部材により、底板24の下側の角パイプのパネル支持部材45に固定したが、この場合も1箇所に限定されるものではなく、2箇所以上で固定してもよい。
【0066】
また、前記実施の形態では、底板24と中間板34を別部材とした場合について説明したが、底板24と中間板34を一体形成するようにしてもよい。例えば、中間板34の異形孔34aを絞り加工により凹部形状に形成することにより、底板24を省略することができる。このとき、キャップ部材26のフランジ部26aが拘束されない程度の空間が形成されることが条件となるので、上記凹部形状は必ずしも異形孔34aのような異形とする必要はない。
【0067】
または、表面板32と中間板34を一体形成するようにしてもよい。例えば、表面板32の外周部に凸部あるいは折り曲げ部等を設けることにより、キャップ部材26のフランジ部26aが拘束されない程度の空間が形成されるようにすることができ、この結果として中間板34を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施の形態に係るパネル固定機構50の側面断面図であり、図中右半部はパネル40を固定する前の状態を示し、図中左半部はパネル40を固定したときの状態を示す図である。
【図2】図1に示したパネル固定機構50のパネル40及びパネル固定部材22を省略した状態を示す図であり、図2(a)はその上面図、図2(b)はその側面図である。
【図3】図2(a)のA−A線矢視断面図である。
【図4】キャップ部材26を示す図であり、図4(a)はその上面図、図4(b)はその側面断面簡略図、図4(c)はその下面図である。
【図5】角パイプのパネル支持部材45の上に一体的に取り付けられるパネル固定機構50の各板を上から順に示す図であり、図5(a)は表面板32の上面図、図5(b)は中間板34の上面図、図5(c)は底板24の上面図である。
【図6】絞り座金30を示す図であり、図6(a)はその上面図、図6(b)はその側面断面図、図6(c)はその下面図である。
【図7】パネル固定部材22を示す図であり、図7(a)はその上面図、図7(b)はその側面図、図7(c)は図7(b)のパネル固定部材22を軸周りに90°回転させたときの側面図である。
【図8】パネル固定部材22、キャップ部材26、絞り座金30、及び圧縮コイルバネ28の取付け手順を説明するための側面分解断面図である。
【図9】図4(a)に示すキャップ部材26の拡大詳細平面図である。
【図10】図9に示すキャップ部材26の側面図である。
【図11】図9における閉止板部26bのA−B半円弧状線矢視展開図である。
【符号の説明】
【0069】
22 パネル固定部材
22a 頭部
22b 溝部
22c 軸部
22d 小径部
22e 段部
24 底板
24b ネジ孔
24c 挿通孔
26 キャップ部材
26a フランジ部
26b 閉止板部
26c 軸孔
26d 切欠部
26e 筒部
26f プレス加工部
27 係止部
28 圧縮コイルバネ
29 突起
30 絞り座金
30a 外筒部
30b 内筒部
30c 係合孔
30d 上面部
32 表面板
32a 長孔
32b 皿状凹部孔
32c 皿状凹部孔
34 中間板
34a 異形孔
34b 挿通孔
34c 挿通孔
40 パネル
40a パネル固定用孔
45 パネル支持部材
50 パネル固定機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルをパネル支持部材に着脱可能に固定するパネル固定機構であって、
前記パネルを固定するための頭部と係合ピンを有するパネル固定部材と、
前記パネル支持部材側に接合され、内部に空間を有し、前記パネル固定部材側の端部の閉止板部に、前記パネル固定部材が挿通する孔、及び前記係合ピンが通過するための切欠部が形成されたキャップ部材と、
前記空間内に収納され、前記キャップ部材の軸線方向に伸縮する弾性部材と、
前記弾性部材の前記閉止板部側に設けられ、前記パネル固定部材の先端部に係合する係合部材と
を備えたことを特徴とするパネル固定機構。
【請求項2】
前記キャップ部材は、位置を調整可能に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のパネル固定機構。
【請求項3】
前記閉止板部は、傾斜面状に形成されると共に、前記係合ピンが係止可能な係止部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のパネル固定機構。
【請求項4】
前記パネル固定部材の先端部に前記係合部材に係合可能な係合部と小径部を形成したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のパネル固定機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−115669(P2008−115669A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302446(P2006−302446)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(000233239)日立機材株式会社 (225)
【出願人】(591201217)大滝成形工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】