説明

パノラマ展開画像撮像装置およびパノラマ展開画像撮像システム

【課題】被写体が切れてしまうことなく、360度のパノラマ展開画像を撮影すること。
【解決手段】パノラマ展開画像撮像装置1は、撮像による360度のパノラマ展開画像を生成する。そして、魚眼レンズ22による結像に基づいて撮像手段27,36により生成される撮像画像中の、360度のパノラマ展開画像の生成に使用するリング形状の範囲を規定する内円境界42および外円境界43の位置あるいはサイズを記憶するメモリ41と、ユーザの操作に基づいて、メモリ41に記憶される内円境界42および外円境界43の中の少なくとも一方の位置あるいはサイズを更新するユーザ更新手段55と、撮像手段27,36が生成する撮像画像中の、メモリ41に記憶される内円境界42と外円境界43とで挟まれるリング形状の範囲内の画像に基づいて、360度のパノラマ展開画像を生成するパノラマ展開画像生成手段52と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パノラマ展開画像撮像装置およびパノラマ展開画像撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、全方位撮影装置を開示する。全方位撮影装置は、360度の環状映像を直接取込可能なレンズを有する1つのカメラモジュールにより撮影された映像を展開して表示したり、記録したりする。
【0003】
【特許文献1】特開2006−148787号公報(要約、発明の詳細な説明、図面、特に、段落0024、段落0049、図8、図9など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において360度の環状映像を直接取り込むレンズは、特殊な凸型のガラスレンズであり、具体的には、天頂反射面と、その周りを取り囲むように形成された略円環状のレンズ面と、レンズ面の下側に配設される略円環状の奥側反射面と、奥側反射面により取り囲まれている透過面と、を有する。また、特許文献1は、この特殊な凸型のガラスレンズの変わりに、魚眼レンズを使用することが可能であることを示唆している。
【0005】
しかしながら、特許文献1の全方位撮影装置では、360度の環状映像において、撮像可能な像高さに制限がある。この環状映像では、レンズ面の下側部位により屈折され、奥側反射面の外周部位で反射され、さらに天頂反射面の外周部位により反射される方向からの入射光から、レンズ面の上側部位を透過し、奥側反射面の内周部位で反射され、さらに天頂反射面の内周部位により反射される方向からの入射光までとなる画角範囲の画像しか得ることができない。環状映像の中央には、天頂反射面が円形に撮影される。特許文献1の全方位撮影装置では、このような特殊な凸型のガラスレンズなどを使用しているので、撮像可能な像高さに制限が生じる。
【0006】
像高さに制限があるため、特許文献1の全方位撮影装置では、実用上、ガラスレンズと被写体との距離などに制限が生じる。たとえば、被写体がガラスレンズに近づきすぎてしまうと、360度の環状映像において被写体の頭などが切れてしまうことになる。被写体の頭などが切れてしまわないようにするためには、被写体に対するガラスレンズの距離を確保しなければならない。
【0007】
特に、全方位撮影装置をテーブルの中央に置いて会議風景などを撮像しようとする場合、この実用上の距離制限が全方位撮影装置の利便性を大きく損なうことになる。たとえば小さな会議室では、被写体に対するガラスレンズの距離が確保できなくなり、被写体の頭などが切れないように撮影することができなくなってしまう可能性がある。
【0008】
本発明は、被写体が切れてしまうことなく、360度のパノラマ展開画像を撮影することができるパノラマ展開画像撮像装置およびパノラマ展開画像撮像システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るパノラマ展開画像撮像装置は、撮像による360度のパノラマ展開画像を生成するものである。そして、パノラマ展開画像撮像装置は、魚眼レンズと、複数の受光素子が配列される受光面に魚眼レンズによる円形の像が結像し、円形画像を有する撮像画像のデータを生成する撮像手段と、撮像画像中の、360度のパノラマ展開画像の生成に使用するリング形状の範囲を規定する内円境界および外円境界の位置あるいはサイズを記憶するメモリと、ユーザの操作に基づいて、メモリに記憶される内円境界および外円境界の中の少なくとも一方の位置あるいはサイズを更新するユーザ更新手段と、撮像手段が生成する撮像画像中の、メモリに記憶される内円境界と外円境界とで挟まれるリング形状の範囲内の画像に基づいて、360度のパノラマ展開画像を生成するパノラマ展開画像生成手段と、を有する。
【0010】
この構成を採用すれば、撮像手段には、魚眼レンズによる円形の像が結像する。撮像手段は、円形画像を有する撮像画像を生成する。円形画像内には、被写体の頭などが切れたりすることなく含まれる。
【0011】
また、パノラマ展開画像生成手段は、この撮像画像の中の、内円境界と外円境界とに挟まれているリング形状の範囲内の画像に基づいて、360度のパノラマ展開画像を生成する。この内円境界および外円境界の位置およびサイズは、ユーザの操作に基づいて、ユーザ更新手段により更新することができる。したがって、たとえば被写体に対する魚眼レンズの距離を物理的に確保することがでなくても、ユーザの操作により内円境界の位置あるいは外円境界の位置を更新することで、円形画像内の被写体がリング形状の範囲内に収まるように調整することができる。その結果、被写体の頭などが切れていない360度のパノラマ展開画像を生成することができる。
【0012】
本発明に係るパノラマ展開画像撮像装置は、上述した発明の構成に加えて、以下の特徴を有するものである。すなわち、魚眼レンズは、立体射影方式のものである。メモリは、立体射影方式の魚眼レンズの入射角と像高との関係に基づいて得られる被写体の結像サイズのバランスを補正する像高補正テーブルを記憶する。パノラマ展開画像生成手段は、像高補正テーブルを参照し、被写体の結像サイズのバランスを整えた360度のパノラマ展開画像を生成する。
【0013】
この構成を採用すれば、一般的な等距離射影方式の魚眼レンズを使用する場合に比べて、魚眼レンズにより結像される画像中の周辺部のゆがみが少なく、且つ、周辺部の情報量が多くなる。したがって、パノラマ展開画像撮像装置を、その魚眼レンズを上向きにテーブルに載置したとき、その周囲にいる人物や黒板などの画像を、高分解能で得ることができる。黒板の文字などを、360度のパノラマ展開画像中に再現することができる。また、魚眼レンズの周囲にいる人物や黒板などの画像として、バランスが整ったものを得ることができる。
【0014】
本発明に係るパノラマ展開画像撮像装置は、上述した発明の各構成に加えて、以下の特徴を有するものである。すなわち、ユーザ更新手段は、メモリに記憶される内円境界および外円境界の中の少なくとも一方の位置あるいはサイズを更新した後に、メモリに記憶される像高補正テーブルを、更新した内円境界および外円境界と、立体射影方式の魚眼レンズの入射角と像高との関係とに基づいて更新する。
【0015】
内円境界と外円境界との間隔が変更により変化する場合、それらの間の画像空間の、複数の画素による分割割合が変化する。また、内円境界および外円境界の位置が移動するだけであっても、それらの間の画像空間の、複数の画素による分割割合が変化する。この構成を採用すれば、像高補正テーブルを、これらと適合するものに維持することができる。
【0016】
本発明に係るパノラマ展開画像撮像装置は、上述した発明の各構成に加えて、以下の特徴を有するものである。すなわち、ユーザ更新手段は、内円境界あるいは外円境界の変更後のサイズが、所定の画素数以上の半径である場合、内円境界あるいは外円境界の変更指示に基づいて、メモリに記憶される内円境界あるいは外円境界を更新する。
【0017】
仮にたとえば内円境界の半径が1画素になると、360度のパノラマ展開画像の最上段の複数の表示画素の画素値を得るために、撮像画像中の同じ画素が何度も利用されることになる。この場合、360度のパノラマ展開画像の画質が向上することなく、360度のパノラマ展開画像の生成負荷が増大する。この構成のように、内円境界あるいは外円境界の半径が所定の画素数より小さくなってしまうことを防止することで、そのような不利益が発生してしまうことを防止することができる。
【0018】
本発明に係るパノラマ展開画像撮像装置は、上述した発明の各構成に加えて、以下の特徴を有するものである。すなわち、パノラマ展開画像生成手段は、360度のパノラマ展開画像の各表示画素の、円形画像の中心からの距離および方角を演算し、演算した距離および方角を用いて、各表示画素の、撮像画像での座標を演算し、演算した各座標に位置する撮像画像の画素の画素値を、各表示画素の画素値として取得する。
【0019】
この構成を採用すれば、撮像画像中の円形画像の画素の画素値をそのまま用いた、360度のパノラマ展開画像を生成することができる。360度のパノラマ展開画像の各表示画素の画素値そのものを演算により求める必要がない。演算により各表示画素の画素値を得る場合のように、演算による画質劣化が発生することはなく、1つのパノラマ展開画像の生成時間を短縮することができる。その結果、360度のパノラマ展開画像を短時間で生成することができる。また、パノラマ展開画像の生成処理を連続的に繰り返すことで、360度のパノラマ展開画像による、連続的な動きのある動画を得ることができる。
【0020】
本発明に係るパノラマ展開画像撮像装置は、上述した発明の各構成に加えて、以下の特徴を有するものである。すなわち、パノラマ展開画像生成手段は、撮像画像中の、内円境界と外円境界とで挟まれる範囲を180度毎に2つの範囲に分割し、その分割した画像の範囲毎の2つの横長のパノラマ分割展開画像を生成する。また、2つの横長のパノラマ分割展開画像を上下に並べて表示させる表示データを生成する表示データ生成手段を有する。
【0021】
この構成を採用すれば、仮にたとえばこれらが1つの展開画像である場合に比べて、表示データを表示する表示手段の表示画面を有効に利用することができる。表示手段に、360度のパノラマ展開画像を大きく表示することができる。
【0022】
本発明に係るパノラマ展開画像撮像システムは、上述した発明の各構成に係るパノラマ展開画像撮像装置と、パノラマ展開画像撮像装置が生成する360度のパノラマ展開画像を、表示あるいは保存するコンピュータ装置と、を有するものである。
【0023】
この構成を採用すれば、360度のパノラマ展開画像を表示し、あるいは保存することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、被写体が切れてしまうことなく、360度のパノラマ展開画像を撮影することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態に係るパノラマ展開画像撮像装置およびパノラマ展開画像撮像システムを、図面に基づいて説明する。パノラマ展開画像撮像装置は、会議用の360度ビデオカメラ装置を例として説明する。パノラマ展開画像撮像システムは、360度ビデオカメラ装置とパーソナルコンピュータとを接続したものを例として説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態に係るパノラマ展開画像撮像システムを示す斜視図である。パノラマ展開画像撮像システムは、パノラマ展開画像撮像装置としての360度ビデオカメラ装置1と、コンピュータ装置としてのPC(パーソナルコンピュータ)3とを有する。360度ビデオカメラ装置1は、USB(Universal Serial Bus)ケーブル2により、PC3に接続されている。
【0027】
PC3は、USBコネクタ11、液晶表示デバイス12、スピーカ13、入力デバイス14などを有する。また、図示外のCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)が、図示外の記憶デバイスからプログラムを読み込んで実行することで、PC3には、通信処理部15、再生処理部16、コマンド生成部17などが実現される。
【0028】
通信処理部15は、USBコネクタ11を用いたデータ通信を制御する。再生処理部16は、液晶表示デバイス12で表示される内容などを制御し、スピーカ13に音を出力させる。コマンド生成部17は、入力デバイス14から入力される入力データに基づいてコマンドを生成する。入力デバイス14には、たとえばキーボード、ポインティングデバイスなどがある。
【0029】
360度ビデオカメラ装置1は、立方体形状のハウジング21を有する。ハウジング21には、魚眼レンズ22、USBコネクタ23、ビデオ出力コネクタ24、音声出力コネクタ25などが配設される。魚眼レンズ22は、ハウジング21の上面に配設される。ハウジング21の上面には、マイクロフォン26用の通気孔20が形成される。USBコネクタ23、ビデオ出力コネクタ24および音声出力コネクタ25は、ハウジング21の側面に配設される。
【0030】
図2は、図1中の360度ビデオカメラ装置1の電気回路を示すブロック図である。360度ビデオカメラ装置1のハウジング21の内部には、撮像による360度のパノラマ展開画像を生成するための電気回路が組み込まれている。
【0031】
360度ビデオカメラ装置1は、魚眼レンズ22、USBコネクタ23、ビデオ出力コネクタ24、音声出力コネクタ25の他に、撮像手段の一部としてのイメージセンサ27、FPGA(Field Programable Gate Array)28、DSP(Digital Signal Processor)29、外部メモリ30、音声IC(Integrated Circuit)31、ビデオエンコーダ32などを有する。
【0032】
図3は、魚眼レンズ22と、イメージセンサ27との光学的な配置を示す説明図である。
【0033】
イメージセンサ27には、たとえばCMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor )イメージセンサがある。イメージセンサ27は、受光面33を有する。受光面33には、図示外の複数の受光素子がたとえば縦横3:4の比率でマトリックス状に配列される。各受光素子は、受光光量に応じた値を出力する。イメージセンサ27は、複数の受光素子から出力される複数の受光光量値を有する輝度分布データを生成する。イメージセンサ27は、所定の周期で、輝度分布データを生成する。
【0034】
魚眼レンズ22は、たとえば180度以上の広視野角を有するものであり、立体射影方式のものである。立体射影方式の魚眼レンズ22は、一般的な等距離射影方式の魚眼レンズに比べて、それにより結像される画像中の周辺部のゆがみが少なく、且つ、周辺部の情報量が多くなる。魚眼レンズ22の射影方式としては、立体射影方式や等距離射影方式の他にも、等立体射影方式や正射影方式などを採用することが可能である。但し、360度ビデオカメラ装置1を会議室のテーブル上に魚眼レンズ22が上向きとなる姿勢で置いて撮像する場合、周辺部に写る人物や黒板などの情報量が多くなるため、立体射影方式のものが最適である。
【0035】
この魚眼レンズ22は、イメージセンサ27の受光面33の上方に配設される。これにより、イメージセンサ27の受光面33には、魚眼レンズ22による円形の像(以下、円形画像とよぶ)が結像する。イメージセンサ27は、輝度分布データを周期的に生成し、FPGA28へ出力する。FPGA28では、撮像手段の一部としての色変換処理部36が実現される。
【0036】
色変換処理部36は、図示外の色変換テーブルを用いて、輝度分布データの各画素のデータを置き換える。色変換処理部36は、たとえば円形画像中の画素のデータを、輝度分布データにおけるその画素の値および周辺画素の値を用いて、所定の色データへ置き換える。これにより、適当な色データを有する撮像画像データが生成される。
【0037】
図4は、色変換処理部36がイメージセンサ27の輝度分布データに基づいて生成する撮像画像の一例を示す図である。図4に示すように、撮像画像は、その中央部に、円形画像を有する。円形画像の内部には、被写体の像が結像する。色変換処理部36は、生成した撮像画像データを、DSP29へ出力する。
【0038】
マイクロフォン26は、音声に応じた波形信号を生成する。波形信号は、音声IC31により、音声信号へ変換され、音声出力コネクタ25へ供給される。音声出力コネクタ25には、たとえばスピーカユニット、ヘッドフォンなどが接続可能である。音声出力コネクタ25に接続されるスピーカユニットやヘッドフォンなどにより、音声を聞くことができる。また、音声IC31には、音声保存処理部37が実現される。音声保存処理部37は、マイクロフォン26から供給される波形信号をサンプリングし、そのサンプリングにより生成した音声データ38を、外部メモリ30に保存する。
【0039】
DSP29は、メモリとしてのEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory:不揮発性メモリの一種)41を有する。EEPROM41は、内円境界データ42、外円境界データ43、入射角像高テーブル44、像高補正テーブル45、方角テーブル46などを記憶する。
【0040】
図5は、撮像画像に、内円境界の位置を示す円形のマーク47と、外円境界の位置を示す円形のマーク48とを重ねた画像を示す説明図である。内円境界および外円境界は、パノラマ展開画像として展開する画像範囲を指定する境界である。内円境界と外円境界との間の画像部分が、パノラマ展開画像として展開される。内円境界データ42は、内円境界の、撮像画像中の位置やサイズを示すデータである。外円境界データ43は、外円境界の、撮像画像中の位置やサイズを示すデータである。
【0041】
図6は、立体射影方式の魚眼レンズ22の像高(画角差)特性図である。横軸は、魚眼レンズ22の光軸方向を画角0度としたときの相対画角であり、縦軸は、像高(画角差)である。図6の特性の立体射影方式の魚眼レンズ22を用いると、たとえば魚眼レンズ22の画角0度の方向に存在する被写体の像高(画角差)が約0.1の像高(画角差)となるとき、画角90度の方向に存在する被写体の像高(画角差)は、約0.2の大きさとなる。これは、魚眼レンズ22の周辺方向にある被写体は、中央方向にある被写体に比べて約2倍の大きさで結像することを意味する。また、被写体が周辺部から中央部にかけて写るとき、そのバランスが崩れることを意味する。入射角像高テーブル44は、この魚眼レンズ22の画角に対する像高(画角差)の特性をデータ化したものである。
【0042】
魚眼レンズを使用したとき、一般的に、1つの被写体の画像は周辺へ行く程ひずむ。このひずみ具合を軽減し、周辺の情報量を多くする方式として立体射影方式が存在する。この立体射影方式の魚眼レンズ22を使用すると、被写体は、画角的に中心部に撮像される場合に比べて、周辺部に撮像される場合の方が大きく撮像される。中心部に撮像される被写体は、周辺部に撮像される被写体より画角的に小さく結像する。このことは、図6にイメージセンサ27の中心部寄りの4つの受光素子と、周辺部寄りの4つの受光素子とを図示するように、イメージセンサ27の画角0度に近い部位、すなわち天頂付近の受光素子には、イメージセンサ27の画角90度に近い部位、すなわち真横方向の受光素子に比べて、広い画角の像が結像することを意味する。
【0043】
このように立体射影方式は、従来の等距離射影方式の魚眼レンズと比べれば、周辺の情報が多いため、死角が少なくなり、ゆがみが少ない画像となる。しかし、ゆがみは少なくなるが、零とはならない。これに対して、パノラマ展開画像では、被写体は、本来の大きさのバランスで表示されることが望ましい。像高補正テーブル45は、立体射影方式の魚眼レンズ22によりイメージセンサ27に結像する画像から、被写体が本来のバランスとして写る展開画像を得るための補正データを記憶する。
【0044】
また、DSP29は、図示外のCPUを有する。このCPUがプログラムを実行することで、DSP29には、静止画保存処理部51、パノラマ展開画像生成手段としての展開静止画生成部52、圧縮静止画生成部53、表示データ生成手段としてのストリーミング生成部54、ユーザ更新手段としての処理管理部55、通信処理部56などが実現される。
【0045】
また、DSP29には、外部メモリ30が接続される。外部メモリ30は、SRAM(Static RAM)やDDR−SDRAM(Double Data Rate SDRAM)などの記憶デバイスにより構成され、DSP29のCPUがアクセス可能である。
【0046】
外部メモリ30は、静止画データ39、音声データ38、2つの圧縮展開静止画データ61,62などを記憶する。また、外部メモリ30は、第一VRAM(VideoRAM)エリア63と、第二VRAMエリア64と、を有する。2つの圧縮展開静止画データ61,62の中の一方は、第一VRAMエリア63に記憶され、他方は、第二VRAMエリア64に記憶される。図2では、第一VRAMエリア63に、第n−1圧縮展開静止画データ61が記憶され、第二VRAMエリア64に、第n圧縮展開静止画データ62が記憶されている状態である。
【0047】
DSP29に実現される静止画保存処理部51は、色変換処理部36から、新たな撮像画像データが供給されると、その撮像画像データを、外部メモリ30に静止画データ39として保存する。
【0048】
展開静止画生成部52は、外部メモリ30に記憶される静止画データ39から、展開静止画データを生成する。展開静止画データは、撮像画像中の円形画像を、360度のパノラマ展開画像に展開した画像のデータである。展開静止画生成部52は、第一VRAMエリア63および第二VRAMエリア64に交互に展開静止画データを生成し、保存する。
【0049】
圧縮静止画生成部53は、第一VRAMエリア63あるいは第二VRAMエリア64に記憶される展開静止画データを圧縮する。展開静止画データの圧縮には、たとえばJPEG(Joint Photographic Coding Experts Group)圧縮方式やMPEG(Moving Picture Coding Experts Group)圧縮方式などの画像圧縮方式を用いればよい。これにより、第一VRAMエリア63には、圧縮展開静止画データ61が記憶され、第二VRAMエリア64には、圧縮展開静止画データ62が記憶される。
【0050】
ストリーミング生成部54は、外部メモリ30から、圧縮展開静止画データ61,62および音声データ38を読み込み、これらのコンテンツデータを有するストリーミングデータを生成する。ストリーミングデータとしては、MPEG方式、div−X(ディビックス)方式などのストリーミングフォーマットを採用すればよい。
【0051】
通信処理部56は、USBコネクタ23を用いたデータ通信を制御する。
【0052】
処理管理部55は、静止画保存処理部51、展開静止画生成部52、圧縮静止画生成部53、ストリーミング生成部54、通信処理部56などの実行を管理する。処理管理部55は、静止画保存処理部51、展開静止画生成部52、圧縮静止画生成部53、ストリーミング生成部54、通信処理部56などへ、それらの起動や停止などを指示する。
【0053】
ビデオエンコーダ32は、外部メモリ30から、圧縮展開静止画データ61,62を読み込み、ビデオ信号を生成する。ビデオ信号には、たとえばNTSC(National TV Standards Committee)方式やPAL(Phase Alternating Line)方式のものがある。ビデオエンコーダ32は、生成したビデオ信号を、ビデオ出力コネクタ24へ出力する。ビデオ出力コネクタ24には、テレビジョン受信機などが接続可能である。ビデオ出力コネクタ24に接続されるテレビジョン受信機などにより、ビデオ信号を再生し、その映像を鑑賞することができる。
【0054】
次に、以上の構成を有するパノラマ展開画像撮像システムの動作を説明する。
【0055】
360度ビデオカメラ装置1にたとえばUSBケーブル2から電力が供給されると、 DPS29などが動作し、360度ビデオカメラ装置1に、色変換処理部36、音声保存処理部37、静止画保存処理部51、展開静止画生成部52、圧縮静止画生成部53、ストリーミング生成部54、処理管理部55などが実現される。処理管理部55は、静止画保存処理部51、展開静止画生成部52、圧縮静止画生成部53、ストリーミング生成部54へそれらの起動を指示する。
【0056】
360度ビデオカメラ装置1のイメージセンサ27には、魚眼レンズ22により集光される光による像が結像する。イメージセンサ27は、円形画像の輝度分布を含む輝度分布データを生成する。色変換処理部36は、図示外の色変換テーブルを用いて、輝度分布データから、図4に例示するような、円形画像を有する撮像画像データを生成する。静止画保存処理部51は、撮像画像データを、静止画データ39として外部メモリ30に保存する。
【0057】
また、イメージセンサ27は、周期的に輝度分布データを生成する。そのため、外部メモリ30の静止画データ39は、所定の周期毎に、新たな撮像画像データへ更新される。
【0058】
外部メモリ30の静止画データ39が更新されると、展開静止画生成部52は、更新された静止画データ39から、展開静止画データを生成する。
【0059】
展開静止画生成部52は、まず、EEPROM41から、内円境界データ42、外円境界データ43を読込み、更新された静止画データ39による撮像画像中の、パノラマ展開画像を生成するためのリング形状の範囲を決定する。また、展開静止画生成部52は、そのリング形状の画像範囲を180度ずつに均等に二分割した2つの分割範囲を決定する。図5中に、リング形状の画像範囲を水平に二分割する点線71,72を示す。展開静止画生成部52は、外円境界と内円境界との間のリング形状の画像を、たとえばこの2つの点線71,72で180度毎に2つに分割し、上下2つの分割画像範囲73,74毎に、分割展開画像の生成処理を実行する。
【0060】
図7は、1つの分割画像範囲73(74)に関する、展開静止画生成部52による分割展開画像の生成処理の流れを示すフローチャートである。展開静止画生成部52は、まず、最後に展開画像を生成した後に、EEPROM41に記憶される内円境界データ42や外円境界データ43が更新されたか否かを確認する(ステップST1)。
【0061】
そして、最後の展開画像生成後に内円境界データ42や外円境界データ43が更新されている場合(ステップSTでNoの場合)、展開静止画生成部52は、分割展開画像の各展開画素列の、分割画像範囲73(74)における方向を演算し、方角テーブル46を生成する(ステップST2)。
【0062】
図8は、分割展開画像の複数の表示画素の配列の一例を示す図である。説明を簡便にするため、この分割展開画像には複数の表示画素が縦3行×横4列に配列されている。この場合、展開静止画生成部52は、4つの展開画素列(1,Z)81、(2,Z)82、(3,Z)83、(4,Z)84毎に、リング形状の画像における方向(分割画像範囲73(74)における方向)を演算する。
【0063】
図9は、図8の各展開画素列81,82,83,84の、リング形状の画像における方向(分割画像範囲73(74)における方向)を図示する説明図である。展開静止画生成部52は、図9の2つの軸の交点を円形画像の中心と想定し、180度(=360度÷2)を列数(=4)で均等に分割した角度を演算する。
【0064】
図9に示すように、たとえば図8の第1列の展開画素列(1,Z)81が角度θ1の方向であるとすると、展開静止画生成部52は、第2列の展開画素列(2,Z)82の角度を「θ1+均等分割角度」として演算する。展開静止画生成部52は、第3列の展開画素列(3,Z)83の角度を「θ1+均等分割角度×2」として演算する。展開静止画生成部52は、第4列の展開画素列(4,Z)84の角度を「θ1+均等分割角度×3」として演算する。
【0065】
展開静止画生成部52は、このように展開画素列81,82,83,84毎に、それぞれの方向を演算する。展開静止画生成部52は、複数の展開画素列81,82,83,84にそれぞれの方向を対応付けた方角テーブル46を生成する。展開静止画生成部52は、生成した方角テーブル46をEEPROM41に保存する。なお、方角テーブル46は、外部メモリ30などに保存してもよい。
【0066】
方角テーブル46を生成した後、展開静止画生成部52は、分割展開画像の最初の表示画素を特定する(ステップST3)。展開静止画生成部52は、たとえば分割展開画像の左上の表示画素(図8では(1,1))を特定する。内円境界データ42や外円境界データ43が更新されていない場合(ステップST1でYesの場合)にも、展開静止画生成部52は、分割展開画像の最初の表示画素を特定する(ステップST3)。
【0067】
そして、展開静止画生成部52は、特定した表示画素に対応する、撮像画像中の画素を特定し、その特定した撮像画像中の画素の画素値を取得し、取得した画素値を特定した表示画素の画素値として保存する。
【0068】
具体的には、展開静止画生成部52は、まず、像高補正テーブル45を参照し、特定した表示画素についての、元画像(円形画像)の中心からの距離Rを演算する(ステップST4)。展開静止画生成部52は、たとえば、像高補正テーブル45を参照しながら、分割展開画像の1つの展開画素列と、撮像画像のリング形状の範囲内の半径方向の画素配列とを比較し、特定表示画素に対応する元画像(円形画像)の位置の、ドーナッツの中心からの距離Rを演算する。
【0069】
次に、展開静止画生成部52は、方角テーブル46に記憶される特定表示画素の方角と、演算した距離Rとから、特定表示画素の、元画像(円形画像)での横座標を演算する(ステップST5)。展開静止画生成部52は、方角テーブル46に記憶される特定表示画素の方角と、演算した距離Rとから、特定表示画素の、元画像(円形画像)での縦座標を演算する(ステップST6)。
【0070】
図10は、特定表示画素の元画像(円形画像)での座標位置の説明図である。図10では、元画像(円形画像)の中心(IOX,IOY)が、内円境界の中心であり、且つ、外円境界の中心である。つまり、(IOX,IOY)は、内円境界および外円境界によるドーナッツの中心である。特定表示画素の中心からの距離がRであり、方角がθであるとすると、特定表示画素の、元画像(円形画像)での座標位置(IX,IY)は、以下の式1および式2により演算される。座標位置(IX,IY)は、元画像(円形画像)の左上が基準である。
【0071】
IX = IOX+R×cosθ ・・・式1
IY = IOY−R×sinθ ・・・式2
【0072】
特定表示画素の、元画像(円形画像)での座標位置(IX,IY)を演算すると、展開静止画生成部52は、その座標にある元画像(円形画像)の画素91の画素値を取得し、特定した表示画素の画素値として保存する。展開静止画生成部52は、外部メモリ30の第一VRAMエリア63あるいは第二VRAMエリア64に、特定した表示画素の画素値を保存する(ステップST7)。
【0073】
以上のステップST4からST7までの処理により、展開静止画生成部52は、ステップST3で特定した1つの表示画素の画素値を決定し、保存する。その後、展開静止画生成部52は、分割展開画像の複数の表示画素の内、画素値を決定していない表示画素が残っているか否かを判断し、画素値を決定していない表示画素が無くなるまで、以上の表示画素の画素値の決定処理を繰り返す。
【0074】
具体的にはたとえば、展開静止画生成部52は、まず、分割展開画像の一列分の表示画素について画素値の決定が終了したか否かを判断する(ステップST8)。そして、一列分が終了してない場合(ステップST8でNoの場合)、展開静止画生成部52は、同じ列の次の行の表示画素を特定し(ステップST9)、その特定表示画素の画素値を決定する(ステップST4〜ST7)。
【0075】
一列分の表示画素についての画素値の決定が終了している場合(ステップST8でYesの場合)、展開静止画生成部52は、さらに分割展開画像のすべての列について画素値の決定が終了したか否かを判断する(ステップST10)。そして、すべての列について終了してない場合(ステップST10でNoの場合)、展開静止画生成部52は、次の列の上端(最も上の行)の表示画素を特定し(ステップST11)、その特定表示画素の画素値を決定する(ステップST4〜ST7)。
【0076】
分割展開画像のすべての列について画素値の決定が終了した場合(ステップST10でYesの場合)、展開静止画生成部52は、図7の分割展開画像の生成処理を終了する。これにより、1つの分割画像範囲73(74)に関する、分割展開画像の生成処理が終了する。
【0077】
その後、展開静止画生成部52は、残りの1つの分割画像範囲74(73)に関する、分割展開画像の生成処理を実行する。これにより、外部メモリ30の第一VRAMエリア63あるいは第二VRAMエリア64には、静止画データ39に基づく、2つの分割展開画像が保存される。
【0078】
外部メモリ30の第一VRAMエリア63あるいは第二VRAMエリア64に2つの分割展開画像が保存されると、圧縮静止画生成部53は、その2つの分割展開画像を圧縮する。これにより、第一VRAMエリア63あるいは第二VRAMエリア64には、圧縮展開静止画データ61,62が記憶される。
【0079】
ストリーミング生成部54は、第一VRAMエリア63および第二VRAMエリア64から、圧縮展開静止画データ61,62を順番に読込み、且つ、外部メモリ30から音声データ38を読み込み、これらのコンテンツデータを有するストリーミングデータを生成する。ストリーミングデータにおいて、2つの分割展開画像は、上下に並べられている。
【0080】
ストリーミング生成部54は、生成したストリーミングデータを通信処理部56へ供給する。360度ビデオカメラ装置1の通信処理部56は、USBコネクタ23、USBケーブル2およびPC3のUSBコネクタ11を介して、PC3の通信処理部15へストリーミングデータを送信する。
【0081】
PC3の通信処理部15は、受信したストリーミングデータを再生処理部16へ供給する。PC3の再生処理部16は、ストリーミングデータから、圧縮された展開静止画データを抽出して復号し、2つの分割展開画像のデータを表示データとして液晶表示デバイス12へ供給する。液晶表示デバイス12は、2つの分割展開画像を表示する。また、PC3の再生処理部16は、ストリーミングデータから音声データを抽出し、スピーカ13へ供給する。スピーカ13は、抽出された音声データに基づく音を出力する。
【0082】
図11は、PC3の液晶表示デバイス12に表示される、撮像による360度のパノラマ展開画像の表示例である。液晶表示デバイス12には、撮像による360度のパノラマ展開画像が、上下に並んだ2つの分割展開画面101,102により表示される。2つの分割展開画面101,102が上下に並べられているので、仮にたとえばこれらが1つの展開画像である場合に比べて、液晶表示デバイス12の表示画面を有効に利用することができる。また、液晶表示デバイス12に、360度のパノラマ展開画像を大きく表示することができる。
【0083】
なお、図11中の2つの分割展開画面101,102には、図5のリング形状の画像範囲を点線71,72で2つに分割して得られる180度毎の2つの分割展開画像が表示されている。2つの分割展開画像は、その両端において画像が互いに連続しており、全体として360度のパノラマ画像を切れ目なく表示する。この表示により、PC3のユーザは、360度ビデオカメラ装置1により撮像された360度のパノラマ展開画像を閲覧することができる。また、PC3のユーザは、スピーカ13が発する音により、360度ビデオカメラ装置1により取得された音を聞くことができる。
【0084】
なお、上述したように360度ビデオカメラ装置1のイメージセンサ27は、周期毎に輝度分布データを生成する。色変換処理部36は、輝度分布データから撮像画像データを生成する。静止画保存処理部51は、外部メモリ30の静止画データ39をこの周期毎に生成される撮像画像データで更新する。展開静止画生成部52は、外部メモリ30から静止画データ39を読込み、読み込んだ静止画データ39に基づく2つの分割展開画像のデータを、第一VRAMエリア63および第二VRAMエリア64に交互に書込む。ストリーミング生成部54は、この第一VRAMエリア63あるいは第二VRAMエリア64に書込まれた圧縮済みの2つの分割展開画像のデータを読み込んで、ストリーミングデータを生成する。
【0085】
したがって、ストリーミング生成部54が、第一VRAMエリア63および第二VRAMエリア64の中の一方のVRAMエリアから、圧縮済みの2つの分割展開画像のデータを読み込む間に、展開静止画生成部52は他方のVRAMエリアに2つの分割展開画像を生成し、且つ、圧縮静止画生成部53はその他方のVRAMエリアの2つの分割展開画像を圧縮することができる。ストリーミング生成部54は、イメージセンサ27が周期毎に生成する輝度分布データに基づく2つの分割展開画像を、画像抜け(フレーム抜け)を生じることなくストリーミングデータに割り付けることができる。これにより、PC3の液晶表示デバイス12には、イメージセンサ27により周期的に生成される輝度分布データに基づく動画が表示される。
【0086】
次に、パノラマ展開画像をオートパンさせる動作を説明する。
【0087】
PC3のコマンド生成部17は、入力デバイス14から入力される入力データに基づいてオートパン指示コマンドを生成する。PC3の通信処理部15は、オートパン指示コマンドを、USBケーブル2を介して360度ビデオカメラ装置1の通信処理部56へ送信する。360度ビデオカメラ装置1の通信処理部56は、受信したオートパン指示コマンドを処理管理部55へ供給する。
【0088】
オートパン指示コマンドが供給されると、処理管理部55は、EEPROM41に記憶される方角テーブル46を周期的に更新する。具体的には、処理管理部55は、周期的に、方角テーブル46の展開画素列毎の複数の方向のデータに、所定の一定角度を加算する処理を繰り返す。
【0089】
これにより、展開静止画生成部52が図7のフローチャートにおいて特定表示画素の方角は、周期的に、所定の一定角度ずつ増加する。たとえば図9中の第1列の展開画素列(1,Z)81の角度θ1は、周期的に、所定の一定角度ずつ増加する。図7中のステップST5およびST6で使用する特定表示画素の方角も、周期的に、所定の一定角度ずつ増加する。
【0090】
その結果、各特定表示画素の元画像(円形画像)での座標位置は一定角度ずつ回転し、各特定表示画素の画素値もその回転にしたがって変化する。その結果、分割展開画像中において、元画像(円形画像)中の被写体は、横へ移動する。360度のパノラマ展開画像においてオートパン動作が実現される。
【0091】
次に、パノラマ展開画像の高さ調整動作について説明する。
【0092】
PC3のコマンド生成部17は、入力デバイス14から入力される入力データに基づいて変更モード開始指示コマンドを生成する。PC3の通信処理部15は、変更モード開始指示コマンドを、USBケーブル2を介して360度ビデオカメラ装置1の通信処理部56へ送信する。360度ビデオカメラ装置1の通信処理部56は、受信した変更モード開始指示コマンドを処理管理部55へ供給する。
【0093】
図12は、変更モードにおける処理管理部55の動作を示すフローチャートである。処理管理部55は、変更モード開始指示コマンドが供給される(ステップST21)と、ストリーミング生成部54へ、境界表示指示を供給する(ステップST22)。その後、処理管理部55は、境界変更指示コマンドと、変更モード終了指示コマンドとの受信待ち状態となる(ステップST23およびST24)。
【0094】
境界表示指示が供給されたストリーミング生成部54は、外部メモリ30から、静止画データ39を読み込む。ストリーミング生成部54は、この静止画データ39を読み込む度に、その読込みに続けて、EEPROM41から、内円境界データ42および外円境界データ43を読み込む。ストリーミング生成部54は、図5に示すように、静止画データ39の撮像画像に、内円境界のマーク47および外円境界のマーク48を重ねて表示する表示画像を生成する。なお、ストリーミング生成部54は、所定の複数回の静止画データ39の読み込みの度に、内円境界データ42および外円境界データ43を読み込むようにしてもよい。
【0095】
さらに、ストリーミング生成部54は、生成した表示画像のデータを有するストリーミングデータを生成し、通信処理部56へ供給する。360度ビデオカメラ装置1の通信処理部56は、USBケーブル2を介して、PC3の通信処理部15へストリーミングデータを送信する。
【0096】
PC3の通信処理部15は、受信したストリーミングデータを再生処理部16へ供給する。PC3の再生処理部16は、ストリーミングデータから、表示画像のデータを抽出し、表示データとして液晶表示デバイス12へ供給する。液晶表示デバイス12は、図5に示すように、内円境界の円形のマーク47と、外円境界の円形のマーク48とが重ねられた撮像画像を表示する。
【0097】
PC3のコマンド生成部17は、入力デバイス14に対するユーザの操作に基づいて、内円境界および外円境界の位置を移動したり、内円境界および外円境界の半径を拡縮したりする境界変更指示コマンドを生成する。PC3の通信処理部15は、境界変更指示コマンドを、USBケーブル2を介して360度ビデオカメラ装置1の通信処理部56へ送信する。360度ビデオカメラ装置1の通信処理部56は、受信した境界変更指示コマンドを処理管理部55へ供給する。
【0098】
境界変更指示コマンドを受信する(ステップST23でYesとなる)と、処理管理部55は、まず、その指示の適否を判断する(ステップST25)。処理管理部55は、具体的にはたとえば、変更後の内円境界の半径あるいは変更後の外円境界の半径が、所定の半径(たとえば144ピクセル)以上であるか否かを判断する。
【0099】
指示が適当であると判断する(ステップST25でYesとなる)と、処理管理部55は、その変更指示に基づいて、EEPROM41に記憶される内円境界データ42や外円境界データ43を更新する(ステップST26)。また、処理管理部55は、その新たな内円境界と外円境界との組合せに基づいて、EEPROM41に記憶される像高補正テーブル45を更新する(ステップST27)。
【0100】
内円境界と外円境界との間隔が変更により変化する場合、撮像画像中の、内円境界と外円境界との間の複数の画素数は変化する。その結果、その複数の画素により撮像される空間の範囲が変化し、その撮像空間の、複数の画素による分割割合も変化する。
【0101】
また、立体射影方式の魚眼レンズ22を使用すると、被写体は、画角に応じて異なる大きさで結像する。したがって、図6において説明したように、内円境界と外円境界との間隔が更新により変化していない場合であっても、内円境界および外円境界の位置が移動するだけで、撮像空間の、複数の画素による分割割合が変化する。
【0102】
処理管理部55は、これら内円境界と外円境界との変更に伴なう複数の画素の分割割合の変化に応じて、像高補正テーブル45を更新する。その後、処理管理部55は、境界変更指示コマンドおよび変更モード終了指示コマンドの受信待ち状態へ戻る(ステップST23およびST24)。
【0103】
指示が適当でない場合(ステップST25でNoの場合)、たとえば内円境界の半径が所定の半径より小さい場合、処理管理部55は、その変更指示を無視し、境界変更指示コマンドおよび変更モード終了指示コマンドの受信待ち状態へ戻る(ステップST23およびST24)。
【0104】
ところで、境界表示指示が供給されたストリーミング生成部54は、外部メモリ30から静止画データ39を読み込む度に、EEPROM41から、内円境界データ42および外円境界データ43を読み込んでいる。したがって、処理管理部55が内円境界データ42や外円境界データ43を更新した場合、ストリーミング生成部54が、円形マーク47,48の、撮像画像に対する重なりの位置やサイズも更新される。液晶表示デバイス12において撮像画像と重ねて表示させる円形マーク47,48の位置およびサイズは、境界変更指示コマンドに応じて変更される。ユーザは、液晶表示デバイス12の表示により、内円境界データ42や外円境界データ43が更新されたことを知ることができる。
【0105】
PC3のコマンド生成部17は、入力デバイス14に対するユーザの操作に基づいて、変更モード終了指示コマンドを生成する。PC3の通信処理部15は、変更モード終了指示コマンドを、USBケーブル2を介して360度ビデオカメラ装置1の通信処理部56へ送信する。360度ビデオカメラ装置1の通信処理部56は、受信した変更モード終了指示コマンドを処理管理部55へ供給する。変更モード終了指示コマンドを受信する(ステップST24においてYesとなる)と、処理管理部55は、図12の変更モードの処理を終了する。この変更モードの処理後には、内円境界データ42、外円境界データ43および像高補正テーブル45が新たなものへ変更され、360度ビデオカメラ装置1の展開静止画生成部52は、この変更されたデータを用いて、360度のパノラマ展開画像を生成するようになる。
【0106】
以上のように、この実施の形態によれば、360度ビデオカメラ装置1のイメージセンサ27には、魚眼レンズ22による円形の像が結像する。静止画保存処理部51は、このイメージセンサ27の輝度分布データに基づいて、円形画像を有する撮像画像データを生成する。この円形画像には、被写体の頭などが切れたりすることなく含まれる。
【0107】
また、展開静止画生成部52は、この撮像画像の中の、内円境界と外円境界とに挟まれているリング形状の範囲内の画像に基づいて、2つの分割展開画像による360度のパノラマ展開画像を生成する。内円境界および外円境界の位置およびサイズは、処理管理部55によりユーザが自由に設定することができる。
【0108】
したがって、処理管理部55により内円境界あるいは外円境界の位置あるいはサイズを更新することで、円形画像内の被写体がリング形状の範囲内に収まるように調整することができる。その結果、たとえば被写体が魚眼レンズ22に近い位置に存在し、被写体に対する魚眼レンズ22の物理的な距離を確保することがでない場合であっても、内円境界の位置などを調整することで、被写体の頭などが切れていない360度のパノラマ展開画像を生成することができる。また、たとえば被写体としての人の頭と体とがバランス良く表示される360度のパノラマ展開画像を生成することができる。
【0109】
また、180度毎の2つの横長の分割展開画像は、上下に並べてPC3の液晶表示デバイス12に表示される。したがって、仮にたとえば360度のパノラマ展開画像が1つの展開画像である場合に比べて、液晶表示デバイス12の表示画面を有効に利用することができる。液晶表示デバイス12に、360度のパノラマ展開画像を大きく表示することができる。
【0110】
また、この実施の形態では、魚眼レンズ22は、立体射影方式のものである。立体射影方式の魚眼レンズ22は、一般的な等距離射影方式の魚眼レンズを使用する場合に比べて、魚眼レンズ22により結像される画像中の周辺部のゆがみが少なく、且つ、周辺部の情報量が多くなる。また、EEPROM41は、この立体射影方式の魚眼レンズ22の入射角と像高との関係に基づいて得られる被写体の結像サイズのバランスを補正する像高補正テーブル45を記憶する。展開静止画生成部52は、像高補正テーブル45を参照し、被写体の結像サイズのバランスを整えた360度のパノラマ展開画像を生成する。
【0111】
したがって、360度ビデオカメラ装置1を、その魚眼レンズ22を上向きにテーブルに載置したとき、その周囲にいる人物や黒板などの画像を、高分解能で得ることができる。黒板の文字などを、360度のパノラマ展開画像中に再現することができる。また、魚眼レンズ22の周囲にいる人物や黒板などの画像として、バランスが整ったものを得ることができる。
【0112】
また、この実施の形態では、EEPROM41に記憶される像高補正テーブル45は、内円境界データ42あるいは外円境界データ43が更新される度に、更新される。内円境界と外円境界との間隔が変更により変化する場合、それらの間の画像空間の、複数の画素による分割割合が変化する。また、内円境界および外円境界の位置が移動するだけであっても、それらの間の画像空間の、複数の画素による分割割合が変化する。このように内円境界データ42あるいは外円境界データ43の更新の度に像高補正テーブル45を更新することで、像高補正テーブル45は、これらと適合するものに維持される。
【0113】
また、この実施の形態では、EEPROM41に記憶される内円境界データ42および外円境界データ43は、変更後のサイズが144ピクセル以上の半径である場合に、更新される。仮にたとえば内円境界の半径が1画素になると、360度のパノラマ展開画像の最上段の複数の表示画素の画素値を得るために、撮像画像中の同じ画素が何度も利用されることになる。この場合、360度のパノラマ展開画像の画質が向上することなく、360度のパノラマ展開画像の生成負荷が増大してしまう。この実施の形態のように、内円境界あるいは外円境界の半径が144ピクセルより小さくなってしまうことを防止することで、そのような不利益が発生してしまうことを防止することができる。
【0114】
また、この実施の形態では、展開静止画生成部52は、360度のパノラマ展開画像の各表示画素の、円形画像の中心からの距離Rおよび方角を演算し、演算した距離Rおよび方角を用いて、各表示画素の、撮像画像での座標(IX,IY)を演算し、演算した各座標(IX,IY)に位置する撮像画像の画素91の画素値を、各表示画素の画素値として取得する。
【0115】
したがって、撮像画像中の円形画像の画素の画素値をそのまま用いた、360度のパノラマ展開画像を生成することができる。360度のパノラマ展開画像の各表示画素の画素値そのものを演算により求める必要がない。演算により各表示画素の画素値を得る場合のように、演算による画質劣化が発生することはない。また、1つのパノラマ展開画像の生成時間を短縮することができる。その結果、360度のパノラマ展開画像を短時間で生成することができる。また、パノラマ展開画像の生成処理を連続的に繰り返すことで、360度のパノラマ展開画像による、連続的な動きのある動画を得ることができる。
【0116】
以上に説明したように、この実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形や変更が可能である。
【0117】
たとえば上記実施の形態では、魚眼レンズ22として、立体射影方式のものを利用している。この他にもたとえば、一般的な等距離射影方式のもの、等立体射影方式のもの、正射影方式のものなどを魚眼レンズ22として利用してもよい。
【0118】
上記実施の形態では、展開静止画生成部52は、360度のパノラマ展開画像として、180度毎の2つの分割展開画像を生成している。この他にもたとえば、展開静止画生成部52は、1つの360度のパノラマ展開画像を生成するようにしたり、三分割としたり、四分割としたりしてもよい。
【0119】
上記実施の形態では、処理管理部55は、ユーザの操作に基づいて、EEPROM41に記憶される内円境界データ42および外円境界データ43の両方を更新する。この他にもたとえば、処理管理部55は、ユーザの操作に基づいて、EEPROM41に記憶される内円境界データ42および外円境界データ43の中の一方のみを、更新するようにしてもよい。
【0120】
上記実施の形態では、360度ビデオカメラ装置1には、USBケーブル2により、PC3が接続されている。この他にもたとえば、360度ビデオカメラ装置1には、USBケーブル2などにより、たとえばコマンドを出力する入力ボードなどが接続されていてもよい。
【0121】
上記実施の形態では、360度ビデオカメラ装置1に接続されるPC3は、液晶表示デバイス12に、360度のパノラマ展開画像による動画を表示する。この他にもたとえば、PC3は、図示外の記憶デバイスに、360度のパノラマ展開画像による動画を保存するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、会議の様子などを撮像するためのパノラマ展開画像撮像装置およびパノラマ展開画像撮像システムなどとして、広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の実施の形態に係るパノラマ展開画像撮像システムを示す斜視図である。
【図2】図1中の360度ビデオカメラ装置の電気回路を示すブロック図である。
【図3】図1中の魚眼レンズとイメージセンサとの光学的な配置を示す説明図である。
【図4】図1中の色変換処理部がイメージセンサの輝度分布データに基づいて生成する撮像画像の一例を示す図である。
【図5】図1の360度ビデオカメラ装置において、撮像画像に、内円境界の位置を示す円形のマークと、外円境界の位置を示す円形のマークとを重ねた画像を示す説明図である。
【図6】図1中の立体射影方式の魚眼レンズの像高(画角差)特性図である。
【図7】図1の360度ビデオカメラ装置において生成される、1つの分割画像範囲に関する、展開静止画生成部による分割展開画像の生成処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】図1の360度ビデオカメラ装置において生成される分割展開画像での複数の表示画素の配列の一例を示す図である。
【図9】図8の各展開画素列の、リング形状の画像における方向(分割画像範囲における方向)を図示する説明図である。
【図10】図1の360度ビデオカメラ装置における特定表示画素の元画像(円形画像)での座標位置の説明図である。
【図11】図1中のPCの液晶表示デバイスに表示される、撮像による360度のパノラマ展開画像の表示例である。
【図12】図1の360度ビデオカメラ装置の変更モードにおける処理管理部の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0124】
1 360度ビデオカメラ装置(パノラマ展開画像撮像装置)
3 パーソナルコンピュータ(コンピュータ装置)
22 魚眼レンズ
27 イメージセンサ(撮像手段の一部)
33 受光面
36 色変換処理部(撮像手段の一部)
41 EEPROM(メモリ)
45 像高補正テーブル
52 展開静止画生成部(パノラマ展開画像生成手段)
54 ストリーミング生成部(表示データ生成手段)
55 処理管理部(ユーザ更新手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像による360度のパノラマ展開画像を生成するパノラマ展開画像撮像装置であって、
魚眼レンズと、
複数の受光素子が配列される受光面に上記魚眼レンズによる円形の像が結像し、円形画像を有する撮像画像のデータを生成する撮像手段と、
上記撮像画像中の、360度のパノラマ展開画像の生成に使用するリング形状の範囲を規定する内円境界および外円境界の位置あるいはサイズを記憶するメモリと、
ユーザの操作に基づいて、上記メモリに記憶される上記内円境界および上記外円境界の中の少なくとも一方の位置あるいはサイズを更新するユーザ更新手段と、
上記撮像手段が生成する上記撮像画像中の、上記メモリに記憶される上記内円境界と上記外円境界とで挟まれるリング形状の範囲内の画像に基づいて、360度のパノラマ展開画像を生成するパノラマ展開画像生成手段と、
を有することを特徴とするパノラマ展開画像撮像装置。
【請求項2】
前記魚眼レンズは、立体射影方式のものであり、
前記メモリは、前記立体射影方式の魚眼レンズの入射角と像高との関係に基づいて得られる被写体の結像サイズのバランスを補正する像高補正テーブルを記憶し、
前記パノラマ展開画像生成手段は、上記像高補正テーブルを参照し、被写体の結像サイズのバランスを整えた360度のパノラマ展開画像を生成すること、
を特徴とする請求項1記載のパノラマ展開画像撮像装置。
【請求項3】
前記ユーザ更新手段は、前記メモリに記憶される前記内円境界および前記外円境界の中の少なくとも一方の位置あるいはサイズを更新した後に、前記メモリに記憶される前記像高補正テーブルを、更新した前記内円境界および前記外円境界と、前記立体射影方式の魚眼レンズの入射角と像高との関係とに基づいて更新することを特徴とする請求項2記載のパノラマ展開画像撮像装置。
【請求項4】
前記ユーザ更新手段は、前記内円境界あるいは前記外円境界の変更後のサイズが、所定の画素数以上の半径である場合、前記内円境界あるいは前記外円境界の変更指示に基づいて、前記メモリに記憶される前記内円境界あるいは前記外円境界を更新することを特徴とする請求項1記載のパノラマ展開画像撮像装置。
【請求項5】
前記パノラマ展開画像生成手段は、前記360度のパノラマ展開画像の各表示画素の、前記円形画像の中心からの距離および方角を演算し、演算した距離および方角を用いて、上記各表示画素の、前記撮像画像での座標を演算し、演算した上記各座標に位置する前記撮像画像の画素の画素値を、上記各表示画素の画素値として取得することを特徴とする請求項1記載のパノラマ展開画像撮像装置。
【請求項6】
前記パノラマ展開画像生成手段は、前記撮像画像中の、前記内円境界と前記外円境界とで挟まれる範囲を180度毎に2つの範囲に分割し、その分割した画像の範囲毎の2つの横長のパノラマ分割展開画像を生成し、
上記2つの横長のパノラマ分割展開画像を縦に並べて表示させる表示データを生成する表示データ生成手段を有すること、
を特徴とする請求項1記載のパノラマ展開画像撮像装置。
【請求項7】
請求項1から6の中のいずれか1項記載のパノラマ展開画像撮像装置と、
前記パノラマ展開画像撮像装置が生成する360度のパノラマ展開画像を、表示あるいは保存するコンピュータ装置と、
を有することを特徴とするパノラマ展開画像撮像システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−28606(P2008−28606A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−197848(P2006−197848)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(596143691)オプト株式会社 (26)
【Fターム(参考)】