説明

パラボラアンテナ装置及びそれを用いる無線伝送システム

【課題】オフセット型のパラボラアンテナ装置及びそれを用いる無線伝送システムにおいて、アンテナ本体の向きの粗調整を容易にする。
【解決手段】マウント金具3の上面は、第4のフレーム22側から受信部4B側に延びる平面で、アンテナ本体2Bによって受信される電波の到来方向W1に平行である上面板部3aが形成されている。また、このマウント金具3の上面板部3aには、照準器6が設けられている。この照準器6は、V字状の凹溝6Aa,6Baを有し上面板部a上に一定間隔を存して設けられる前側部材6A及び後側部材6Bで構成される。両部材6A,6Bの凹溝6Aa,6Baを結ぶ直線が、前記送信される電波の送信方向に平行となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バラボラアンテナ装置及びそれを用いる無線伝送システムに関する。特に、多チャンネル映像信号などの送受信に用いられるオフセット型のパラボラアンテナ装置及びそれを用いる無線伝送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ミリ波帯(30〜300GHz)の電波を使用する無線システムでは、十分広い周波数帯域を利用できるため、多チャンネル映像信号などの大容量の信号を無線伝送するのに適している。
【0003】
そこで、そのような無線伝送を行うために、ミリ波(周波数:60GHz)を、アンテナ装置(例えば,アンテナ本体としてパラボラアンテナを用いるアンテナ装置)を用いて送信し、離れた位置に設けた別のアンテナ装置で受信させることが考えられる。
【0004】
一方、伝送しようとするミリ波は超高周波信号で、半値角が1°以下と指向性が鋭く、アンテナ装置の設置の際に、アンテナ本体の向き(取付角度)を、精度よく微調整する必要があるが、その微調整に先立って、アンテナ本体の向きをおおむね調整する粗調整が行われる。
【0005】
そして、パラボラアンテナとしては、センターフィード型と、オフセット型とが知られている(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−245523号公報
【特許文献2】特開2002−204111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に記載されるようなセンターフィード型のものでは、反射鏡が、ビーム方向と垂直な方向に向くため、送信方向あるいは受信方向へのアンテナの向きの粗調整は、反射鏡と垂直な方向をアンテナの向きを調整すればよく、粗調整が容易である。
【0008】
一方、前記特許文献2に記載されるようなオフセット型のものでは、給電部(送信部・受信部)やそれを保持する保持金具が影にならずに特性劣化がないというセンターフィード型に比べて電気性能面の優位性を得るために、反射鏡がビーム方向に対して傾斜し、反射鏡の向きとビーム方向とが異なるため、粗調整が困難である。
【0009】
本発明は、オフセット型のパラボラアンテナ装置及びそれを用いる無線伝送システムにおいて、アンテナ本体の向きの粗調整を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、支持部材に取付フレームが角度調整手段を介して取り付けられ、前記取付フレームに、送信側あるいは受信側のアンテナ本体が設けられるとともに保持具を介して送信部あるいは受信部が設けられているオフセット型のパラボラアンテナ装置であって、前記保持具が、前記アンテナ本体によって送信あるいは受信される電波の送信方向あるいは受信方向に平行である基準部を有することを特徴とする。ここで、基準部は、前記方向の視認ができる程度の長さを有していればよく、保持具の上下面板部や左右側面板部そのもので構成してもよいし、それら面板部に設けた部材が基準部を形成するようにしてもよい。また、基準部を、保持具の上下面板部や左右側面板部で形成する場合には、前記送信方向などについての方向確認ができるように一部に含まれていればよく、面板部全体が基準部となっている必要はない。角度調整手段は、方位角、俯角・仰角についての粗調整手段を意味するが、方位角、俯角・仰角についての微調整手段を備えていてもよい。
【0011】
このようにすれば、保持具が、アンテナ本体によって送信あるいは受信される電波の送信方向あるいは受信方向に平行である基準部を有するので、その基準部を利用して、アンテナ本体の向き(取付角度)を容易に粗調整することができる。なお、この粗調整は、アンテナ本体の向きをおおむね決定する粗調整で、周知のように前記粗調整の後に、アンテナ本体の正確な向きを決定する微調整が行われる。
【0012】
この場合、請求項2に記載のように、前記保持具は、前記基準部となる基準面板部を有し、前記基準面板部に前記送信あるいは受信される電波の送信方向あるいは受信方向を視認する照準器が設けられていることが望ましい。ここで、照準器は、固定式でもよいし、必要時のみ取り付けられる着脱式でもよい。また、必要時のみ起立させる折りたたみ式でもよい。
【0013】
このようにすれば、照準器を利用して、アンテナの向きの粗調整をより簡単に行うことができる。
【0014】
請求項3に記載のように、前記照準器は、V字状の凹溝を有し前記基準面板部上に一定間隔を存して設けられる板状の後側部材及び前側部材とを有し、前記両部材の凹溝を結ぶ直線が、前記送信あるいは受信される電波の送信方向あるいは受信方向に平行である構成とすることができる。
【0015】
このようにすれば、照準器の構造を簡単にできる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載のパラボラアンテナ装置を用いる無線伝送システムであって、送信側の前記パラボラアンテナ装置のアンテナ本体と、受信側の前記パラボラアンテナ装置のアンテナ本体とが離れた位置に対向して設置されることを特徴とする。
【0017】
このようにすれば、対向するアンテナ本体の向きをおおむね調整する粗調整が容易に行えるので、例えば、河川や道路を横断する無線伝送や、離れたビル間の無線伝送に使用する場合に、対向するアンテナ本体を作業効率のよい方向に容易に粗調整することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、上記のように、保持具が、アンテナ本体によって送信あるいは受信される電波の送信方向あるいは受信方向に平行である基準部を有するので、その基準部を利用して、アンテナの向きを容易に粗調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るパラボラアンテナ装置の使用例の説明図である。
【図2】本発明に係るパラボラアンテナ装置の側面図である。
【図3】同装置の背面図である。
【図4】同装置を後側上方からみた斜視図である。
【図5】同装置を後側下方からみた斜視図である。
【図6】同装置を前側下方からみた斜視図である。
【図7】同装置の底面図である。
【図8】図2のA−A線断面図である。
【図9】図3のB−B線断面図である。
【図10】アンテナ本体を支持する部分の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
【0021】
本発明に係るアンテナ装置は、例えば図1に示すように、送信側のパラボラアンテナ装置1Aのアンテナ本体2Aと、受信側のパラボラアンテナ装置1Bのアンテナ本体2Bとを対向して配置して、同軸ケーブルに代えて、無線伝送(ミリ波)で超高周波信号(テレビ放送信号をたとえば60GHzへ周波数変換した信号)を伝送するのに使用されるものである。ここで、パラボラアンテナを利用すると、高利得で送受信距離を長くすることができるが、パラボラアンテナは半値角が狭く、指向性が鋭いため、方向調整(方位角、仰角、俯角)を正確に合わせるときに時間を要する。そこで、送信側のパラボラアンテナ装置1Aから送信される電波の到来方向W1(図2参照)に、受信側のパラボラアンテナ装置1Bのアンテナ本体2Bの向きをおおむね調整する粗調整のために、後述するマスト固定手段(取付ボルト10,第1のフレーム11及び固定金具12A,12B)及び粗調整手段M3が設けられている。送信側のパラボラアンテナ装置1Aから送信される電波は、アンテナ本体2B(反射鏡)で受信部4Bに向かう方向W2に反射され、受信部4Bで受信される。なお、送信側のアンテナ装置1Aは、後述する第4のフレーム22(取付フレーム)に、マウント金具3(保持具)を介してアンテナ本体2A(例えばパラボラアンテナ)の送信部4Aが設けられているが、受信側のアンテナ装置1Bは、送信部4Aに代えて受信部4Bが設けられている点が異なるだけである。よって、送信側のアンテナ装置1Aも受信側のアンテナ装置1Bも、基本的には同じ構造であるので、以下の説明においては、受信側のパラボラアンテナ装置1Bについて説明する。
【0022】
パラボラアンテナ装置1Bは、図2〜図7及び図10に示すように、上下方向に延びるマスト5(支持部材)に対し、アンテナ本体2Bが、互いに直交する第1及び第2の回転軸P1,P2回りに回転可能に設けられ、アンテナ本体2Bを第1及び第2の回転軸P1,P2回りに回転することでアンテナ本体2Bの向き(方位角、仰角・俯角)を調整することができる。第1の回転軸P1は、マスト5が延びる方向に平行な方向の軸線を有するものであり、第2の回転軸P2は第1の回転軸P1に直交する方向の軸線を有するものである。なお、この実施の形態では、第1の回転軸P1は上下方向に延び、この軸回りにアンテナ本体2Bを回転することで、方位角の調整(微調整)ができる。また、第2の回転軸P2は左右方向に延び、この軸回りにアンテナ本体2Bを回転することで、仰角・俯角の調整(粗調整・微調整)ができる。
【0023】
マスト5には、鉛直断面コ字形状の第1のフレーム11が、1対の固定金具12A,12Bの間にマスト5を挟んで、取付ボルト10にて、それらを締結することで固定されている。この固定に先立って、第1のフレーム11をマスト5の軸線を回転軸として、前記軸線回りに回転し、アンテナ本体2Bの方位角の調整がなされる。つまり、第1のフレーム11をマスト5の軸線回りに回転することでアンテナ本体2Bの向き(方位角)をおおむね調整できるようなっており、この調整が、アンテナ本体2Bの方位角の粗調整となる。なお、第1のフレーム11の本体板部11Cには、固定金具12Bを第1のフレーム11に取り付けるために固定金具12Bのねじ穴12Baにビス14が挿通される貫通孔11aと、取付ボルト10が螺合されるねじ穴11bが形成されている。固定金具12A,12Bには、取付ボルト10が挿通される貫通孔12Aa,12Bbが形成されている。
【0024】
第1のフレーム11には、マスト5と反対側において、鉛直断面コ字形状の第2のフレーム13が第1の回転軸P1回りに回転可能に取り付けられている。
【0025】
第1のフレーム11は、第2の回転軸P2の軸線に平行に延びる1対の案内板部11A,11Bと、それらの間に配置されそれらを連結する本体板部11Cとを有する。一方、第2のフレーム13も、第2の回転軸P2の軸線に平行に延びる1対の側板部13A,13Bと、第1の回転軸P1の軸線と平行に延び両側板部13A,13Bを連結する本体板部13Cとを有する。本体板部13Cの方が、本体板部11Cよりも上下方向の長さが長く、案内板部11A,11Bの外側に側板部13A,13Bが位置するように両フレーム11,13が相対変位可能に嵌め合わされている。なお、側板部13A,13Bが案内板部11A,11Bの外側に位置するようにようにしてもよい。
【0026】
そして、第1のフレーム11の案内板部11A,11Bと第2のフレーム13の側板部13A,13Bとは、それぞれ、一方の端部において回転軸ボルト15(第1の回転軸P1を構成する)にて回転可能に連結され、他方の端部において、第1のフレーム11に対し第2のフレーム13を第1の回転軸P1回りに回転させてアンテナ本体2Bの向き(方位角)を微調整する第1の微調整手段M1が設けられている。つまり、第1の回転軸P1(回転軸ボルト15)と第1の微調整手段M1との間にマスト5が位置している。
【0027】
第1の微調整手段M1は、図8に詳細を示すように、本体板部11Cと本体板部13Cとの間にスプリング受16A,16Bを介して配置される圧縮スプリング17と、本体板部13Cに形成されたねじ穴13Ca(雌ねじ部)と、本体板部11Cに形成された貫通孔11Caと、この貫通孔11Ca及び圧縮スプリング17を貫通してねじ穴13Caに螺合される方位角微調整用ボルト18とを有する。この微調整用ボルト18を回転することで、本体板部11Cと本体板部13Cとの右側端部の間隔が変化し、第1の回転軸P1回りに第2のフレーム13が回転し、アンテナ本体2Bの方位角が小さく変化し、微調整される。この調整量は微小であるので、ねじ穴13Caと微調整用ボルト18との螺合関係を損ないねじ山がつぶれるというようなことなど起こらない。
【0028】
また、第1の微調整手段M1が設けられている側であって、一方の側において案内板部11A,11B(第1のフレーム11)と側板部13A,13B(第2のフレーム13)との間には、方位角の微調整後に第1のフレーム11に対し第2のフレーム13を固定する第1の固定手段M2が上下にそれぞれ設けられている。この第1の固定手段M2は、側板部13A,13Bに形成され第1の回転軸P1を回転中心とする円弧状の長孔13Aa,13Baと、案内板部11A,11Bに形成され長孔13Aa,13Baに対応するねじ穴11Aa,11Baと、長孔13Aa,13Baを通じてねじ穴11Aa,11Baに螺合される固定ボルト19とを有し、方位角を微調整する際には、固定ボルト19を長孔13Aa,13Baに沿って移動できるように緩められ、微調整終了後には、固定され、その調整終了後の状態を維持できるようにしている。
【0029】
また、第2のフレーム13には、第1のフレーム11とは反対側に、第3のフレーム21が第2の回転軸P2まわりに回転可能に取り付けられている。また、アンテナ本体2Bが取り付けられた第4のフレーム22が、第3のフレーム21に第2の回転軸P2回りに回転可能に取り付けられている。
【0030】
第2のフレーム13の本体板部13Cの左右両側において、側板部13A,13Bとは反対側に平行に延びる略三角形状の案内板部13D,13Eが形成されている。一方、第3のフレーム21は、第1の回転軸P1の軸線に平行に延び第2のフレーム13の案内板部13D,13Eの外側に配置される1対の側板部21A,21Bと、第2の回転軸P2の軸線に平行に延び両側板部21A,21Bを連結する本体板部21Cとを有する。側板部21A,21Bは、略三角形状の下側部分21Aa,21Baの上側に略矩形状の上側部分21Ab,21Bbが連接され、その上側部分21Ab,21Bbが、それらの間に配置される本体板部21Cにて連結されている。
【0031】
第4のフレーム22も、第1の回転軸P1の軸線に平行に延びかつ、第3のフレーム21の側板部21A,21Bの外側に位置しそれらの上側部分21Aa,21Baと略同じ幅である1対の側板部22A,22Bと、第2の回転軸P2の軸線に平行に延び両側板部22A,22Bを連結する本体板部22Cとを有する。なお、第4のフレーム22は上下方向に長く形成され、下部にアンテナ本体2Bが取付固定され、上部にマウント金具3を介して受信部4Bが設けられている。
【0032】
マウント金具3(保持具)は、下向きに開放される断面コの字形状で、第4のフレーム22側から受信部4B側に延びアンテナ本体2Bによって受信される電波の到来方向W1に平行である上面(平面)を有する上面板部3aと、この上面板部3aの両側縁から互いに平行に同方向に延びる側面板部3b,3bとを有する。この上面板部3aは、電波の到来方向W1に平行であるので、上面部3aが延びる方向W3(図2参照)は、前記電波の到来方向W1と平行になる。また、マウント金具3の上面板部3a上には、アンテナ本体2Bの向きを粗調整するための照準器6が設けられている。
【0033】
この照準器6は、上方に開放するV字状の凹溝6Aaを有する前側部材6Aと、V字状の凹溝6Baを有する後側部材6Bとで構成され、それら両部材6A,6Bが、上面板部3a上に一定間隔を存して設けられている。そして、両部材6A,6Bの凹溝6Aa,6Baを結ぶ直線が、前記送信される電波の送信方向に平行となっている。よって、上面板部3aが延びる方向のみを基準として、アンテナ本体2Bの向きを調整する場合に比べて、照準器6を利用することで、前記向きの調整がより容易となる。なお、各部材6A,6Bは、薄板を折り曲げてなる断面L字形状で、図4に詳細を示すように、上面板部3aに固着される取付部6Ab,6Bbと、この取付部6Ab,6Bbから直交する方向に延び凹溝6Aa,6Baが形成される鉛直部6Ac,6Bcとを有する。
【0034】
また、第2のフレーム13の案内板部13D,13Eの先端部において、回転軸ボルト23によって、第3のフレーム21の側板部21A,21Bの下側部分21Aa,21Ba及び第4のフレーム22の側板部22A,22Bが相対回転可能に連結され、第2のフレーム13に対し第3及び第4のフレーム21,22が第2の回転軸P2(回転軸ボルト23)回りに回転可能になる構成とされている。
【0035】
第2のフレーム13の案内板部13D,13Eと第3のフレーム21の側板部21A,21Bには、それらを結合し本体板部13C寄りに第2のフレーム13に対し第3のフレーム21を第2の回転軸P2回りに回転させてアンテナ本体2Bの仰角・俯角を粗調整する粗調整手段M3が設けられている。そして、第3のフレーム21の本体板部21Cと第4のフレーム22の本体板部22Cには、それらを結合し第3のフレーム21に対し第2の回転軸P2回りに第4のフレーム22を回転させて、アンテナ本体2Bの仰角・俯角を微調整する第2の微調整手段M4が設けられている。
【0036】
第2のフレーム13の案内板部13D,13Eの外側に第3のフレーム21の左右側板部21A,21Bが位置するので、粗調整手段M3は、外側に位置する第3のフレーム21の左右側板部21A,21Bに形成され第2の回転軸P2(回転軸ボルト23の軸線)を中心とする円弧状の、長孔21a,21bと、案内板部13D,13Eに形成され長孔21a,21bに対応するねじ穴(側板部13Eのねじ穴13Eaのみ図示)と、長孔21a,21bを通じて前記ねじ穴に挿通され、第3のフレーム21を第2のフレーム13に対し第2の回転軸P2回りに回転可能に結合する固定用ボルト24(ボルト軸部材)とを有し、第2及び第4のフレーム21,22を一体として第2の回転軸P2回りに回転させるものである。
【0037】
第2の微調整手段M4は、第2の回転軸P2から上方に離れた、本体板部21Cの左右方向の略中央位置で、第3のフレーム21の本体板部21Cと第4のフレーム22の本体板部22Cとの間隔を調整するものである。この第2の微調整手段M4は、第3のフレーム21の本体板部21Cに形成された貫通孔21Caと、第4のフレーム22の本体板部22Cに形成されたねじ穴22Ca(雌ねじ部)と、貫通孔21Caに挿通されねじ穴22Caに螺合する仰角・俯角微調整用ボルト27と、第3のフレーム21の本体板部21Cと第4のフレーム22の本体板部22Cとの間にスプリング受け26A,26Bを介して設けられた圧縮スプリング25とを有する。この微調整用ボルト27を回転することで、両本体板部21C,22Cの間隔が変化し、第2の回転軸P2回りに第4のフレーム22が回転し、アンテナ本体2Bの仰角・俯角が変化し調整される。
【0038】
この粗調整手段M3と第2の微調整手段M4とによって、第3のフレーム21とアンテナ本体2B(第4のフレーム22)との間に設けられ第2の回転軸P2回りの回転によりアンテナ位置(仰角、俯角)を調整する角度調整手段が構成されることになる。
【0039】
第3のフレーム21の側板部21A,21B(上側部分21Ab,21Bb)と第4のフレーム22の側板部22A,22Bとの間には、第3のフレーム21に対し第4のフレーム22を固定する第2の固定手段M5が設けられている。この第2の固定手段M5は、側板部22A,22Bに形成され第2の回転軸P2を中心とする円弧状の、長孔22Aa,22Baと、側板部21A,21Bに形成され長孔22Aa,22Baに対応するねじ穴21c,21dと、長孔22Aa,22Baを通じてねじ穴21c,21dに螺合される固定用ボルト28とを有し、アンテナ本体2Bの仰角・俯角を微調整する際には、固定用ボルト28を長孔22Aa,22Baに沿って移動できるように緩められ、微調整終了後には固定され、その微調整終了後の状態を維持できるようにしている。
【0040】
続いて、例えば、河川や道路を横断する無線伝送や、離れたビル間の無線伝送などに使用するため、送信側のパラボラアンテナ装置1Aのアンテナ本体2Aと、受信側のパラボラアンテナ装置2Bのアンテナ本体2Bとを離れた位置に対向して設置する場合、パラボラアンテナ装置1A,1Bのアンテナ本体2A,2Bの方位角及び仰角・俯角の調整方法について説明する。
(粗調整)
まず、離れた位置(例えば300m程度離れた位置)に設置された送信側のパラボラアンテナ装置1Aと、受信側のパラボラアンテナ装置1Bとのそれぞれにおいて、作業者が、後側部材6Bの凹溝6Baを通じて前側部材6Aの凹溝6Aaを見て、凹溝6Ba,6Aa同士を結ぶラインの延長線上に、目標とする、相手側(送信側あるいは受信側)のアンテナ装置1A,1Bのアンテナ本体2A,2Bが見えるように方向を確認しながら、粗調整を行う。
【0041】
方位角については、取付ボルト10を緩めた状態で、後側部材6Bの凹溝6Baと前側部材6Aの凹溝6Aaとを利用して、マスト5の軸線回りに第1のフレーム11及び固定金具12A,12Bを回転することでアンテナ本体2A,2Bの方位角を粗調整し、粗調整終了後、取付ボルト10を締め付け、第1のフレーム11をマスト5(支持部材)に固定する。一方。俯角・仰角についても、固定用ボルト24を緩めた状態で、後側部材6Bの凹溝6Baと前側部材6Aの凹溝6Aaとを利用して、第2のフレーム13に対し第2の回転軸P2回りに第3のフレーム21を回転させて、アンテナ本体2A,2Bの仰角・俯角の粗調整をし(粗調整手段M3)、粗調整終了後、固定用ボルト24を締め付け、第2のフレーム13に対し第3のフレーム21固定する。
【0042】
これにより、送信側のアンテナ本体2Aと受信側のアンテナ本体2Bとがおおむね対向するように固定される。
【0043】
このような粗調整により固定した後、続いて微調整が行われる。
(微調整)
粗調整は、受信感度が最大となるように、受信側において測定器(レベルチェッカー)で確認しながら、まず、受信側のアンテナ本体2Bについて、方位角及び俯角・仰角を微調整し、それから、送信側のアンテナ本体2Aについて、方位角及び俯角・仰角を微調整する。
【0044】
方位角については、アンテナ本体2A,2Bにおいて、固定ボルト19(第1の固定手段M2)を緩めた状態で、微調整用ボルト18の回転によって、第1の回転軸P1回りに第2のフレーム13を回転させて微調整する(第1の微調整手段M1)。この微調整の際に、圧縮スプリング17が設けられているので、微調整用ボルト18とねじ穴13Caとの螺合におけるバックラッシの影響を受けることなく、精度よく微調整できる。
【0045】
この微調整終了後に固定ボルト19と回転軸ボルト15を締め付け、第1のフレーム11に対し第2のフレーム13を固定し、方位角について微調整された状態を保持する。
【0046】
一方、仰角・俯角については、固定用ボルト28(第2の固定手段M5)を緩めた状態で、微調整ボルト27を回転して、第3のフレーム21に対し第2の回転軸P2回りに第4のフレーム22を回転させて微調整する(第2の微調整手段M4)。この場合、先行技術の場合とは異なり、アンテナ本体2Bの中央部付近に対応する、第4のフレーム22の部位を押して回転させるので、方位角が調整された後の状態で、左右のバランスよく安定した微調整が可能となる。なお、第1の微調整手段M1の場合と同様に、圧縮スプリング25が設けられているので、バックラッシの影響を受けることなく、精度よく微調整できる。
【0047】
この微調整終了後に固定用ボルト28と回転軸ボルト23とを締め付け、第3のフレーム21に対し第4のフレーム22を固定し、俯角・仰角についても微調整された状態を保持する。
【0048】
これにより、離れた位置に設置された、送信側のパラボラアンテナ装置1Aのアンテナ本体2Aと、受信側の前記パラボラアンテナ装置1Bのアンテナ本体2Bとが、受信感度が最大となるように、精度よく対向して設置される。
【0049】
このように、上記アンテナ装置によれば、第2の回転軸P2回りの位置調整(粗調整・微調整)だけでなく、第1の回転軸P1回りの位置調整についても、微調整をすることができ、指向性の鋭いパラボラアンテナの場合の、向き(方位角、仰角・俯角)の調整に有利となる。
【0050】
第1の微調整手段M1によって、第1のフレーム11の本体板部11Cに対し第2のフレーム12の本体板部12Cを第1の回転軸P1回りに回転させる、という簡単な動きで、方位角を微調整することができる。とくに、第1の回転軸P1と第1の微調整手段M1との間にマスト5が位置しているので、微調整用ボルト18の一回転当たりの方位角の変化が小さく、微調整に有利である。
【0051】
第2の微調整手段M4によって、第3のフレーム21の本体板部21Cに対し第4のフレーム22の本体板部22Cを第2の回転軸P2回りに回転させる、という簡単な動きで、仰角・俯角を微調整することができる。
【0052】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、次のように変更して実施することも可能である。
【0053】
(i)前記実施の形態では、照準器は、マウント金具に固定しているが、本発明はそれに限定されず、比較的近距離に配置されるアンテナ装置間での粗調整など、上面板部3aが延びている方向を利用しての視認が容易な場合には、照準器を省略し、作業者の目線を上面板部3aの延びる方向に沿わして方向確認しながら、アンテナの向きを粗調整することも可能である。つまり、照準器を設けることなく、上面板部3a(上面)を基準部として、アンテナ本体の向きを調整することも可能である。
【0054】
(ii)前記実施の形態では、水平方向に広がる上面板部3aを基準部としているが、鉛直方向に広がる左右側面板部などの他の面板部を基準部とすることができるのはもちろんであり、下面板部がある場合にはそれを基準部とすることも可能である。
【0055】
(iii)前記実施の形態では、上面板部3aを基準部としているが、保持具(マウント金具3)の面板部そのもので形成する必要はなく、保持具の各面を形成する面板部に直交する方向に突出させた板状部、棒状部(丸棒、各棒など)、突出部(凸条や、直線状に配置された複数の突起)などで構成することも可能であり、この場合には、板状部などが延びる方向(配置される方向)を基準に方向確認ができ、板状部などが照準器としての機能も発揮することになるので、照準器を設ける必要がなくなる。
【0056】
(iv)前記実施の形態では、照準器6を構成する両部材6A,6Bは、いずれもV字状の凹溝6Aa,6Baを有する構成としているが、前側部材は凹溝に代えて突起を有する形状とし、後側部材の凹溝を通じて前側部材の突起をみて、凹溝と突起を結ぶ延長線上に目標が見えるように粗調整するようにしてもよいし、両部材ともに突起を有する形状としてもよい。また、凹溝に代えて、開孔とすることもできる。
【0057】
(v)前記実施の形態では、照準器6はマウント金具3に固定される固定式としているが、照準器を構成する各部材(後側部材及び前側部材)の取付部と鉛直部との間にヒンジを設け、必要時のみ鉛直部を起立させることができる折り畳み式としたり、必要時のみマウント金具3に取り付ける着脱式(例えばマグネットを利用した着脱式)とすることも可能である。また、マグネットなどで着脱可能に吸着させる着脱式とする場合には、着脱することで照準器を再使用することができ、その場合には光学式照準器(例えば、小型の望遠鏡の機能を持つ照準器)などを用いることも可能である。
【0058】
(vi)前記実施の形態では、支持部材として、上下方向に延びるマスト5を用いているが,本発明はそれに限定されるものではなく、マストが水平方向に延びていてもよいし,傾斜していてもよい。マスト以外を支持部材として用いることもできる。
【符号の説明】
【0059】
1A,1B アンテナ装置
2A,2B アンテナ本体
3 マウント金具(保持具)
3a 上面板部(基準部)
3b 側面板部
4A 送信部
4B 受信部
6 照準器
6A 前側部材
6B 後側部材
6Aa,6Ba 凹溝
6Ab,6Bb 取付部
6Ac,6Bc 鉛直部
22 第4のフレーム(取付フレーム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材に取付フレームが角度調整手段を介して取り付けられ、前記取付フレームに、送信側あるいは受信側のアンテナ本体が設けられるとともに保持具を介して送信部あるいは受信部が設けられているオフセット型のパラボラアンテナ装置であって、
前記保持具が、前記アンテナ本体によって送信あるいは受信される電波の送信方向あるいは受信方向に平行である基準部を有することを特徴とするパラボラアンテナ装置。
【請求項2】
前記保持具は、前記基準部となる基準面板部を有し、前記基準面板部に前記送信あるいは受信される電波の送信方向あるいは受信方向を視認する照準器が設けられている請求項1に記載のパラボラアンテナ装置。
【請求項3】
前記照準器は、V字状の凹溝を有し前記基準面板部上に一定間隔を存して設けられる板状の後側部材及び前側部材とを有し、
前記両部材の凹溝を結ぶ直線が、前記送信あるいは受信される電波の送信方向あるいは受信方向に平行である請求項2に記載のパラボラアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のパラボラアンテナ装置を用いる無線伝送システムであって、送信側の前記パラボラアンテナ装置のアンテナ本体と、受信側の前記パラボラアンテナ装置のアンテナ本体とが離れた位置に対向して設置されることを特徴とする無線伝送システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−124777(P2012−124777A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274889(P2010−274889)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】