パラ型全芳香族ポリアミドパルプの製造方法及びその製造装置
【課題】耐熱性及び圧軸復原力等の基本的な物性が優れると共に、摩擦係数及び摩耗率が低いパラ型全芳香族ポリアミドパルプを製造できる製造装置等を提供すること。
【解決手段】製造装置は、(A)配向インペラ9と、配向モータ7と、固定フレーム14とを有する撹拌手段と、(B)配向領域及び熟成領域へと移動可能なプレポリマーを含む配向槽10と、配向槽移動シリンダ8と、配向槽ガイド板16とを有する連続移動手段と、(C)配向領域に位置する配向槽ガイド板16のジャケットに冷却媒体を供給する冷却媒体供給弁17と、冷却媒体排出弁17’と、配向槽ガイド板16と熟成/高速攪拌棒13のジャケットとに温熱媒体を供給する温熱媒体供給弁18と、温熱媒体排出弁18’とを有する温熱冷却媒体循環手段と、(D)熟成領域の下方に設けられ配向ポリマー15を切断するための選択的な切断手段と、を備える。
【解決手段】製造装置は、(A)配向インペラ9と、配向モータ7と、固定フレーム14とを有する撹拌手段と、(B)配向領域及び熟成領域へと移動可能なプレポリマーを含む配向槽10と、配向槽移動シリンダ8と、配向槽ガイド板16とを有する連続移動手段と、(C)配向領域に位置する配向槽ガイド板16のジャケットに冷却媒体を供給する冷却媒体供給弁17と、冷却媒体排出弁17’と、配向槽ガイド板16と熟成/高速攪拌棒13のジャケットとに温熱媒体を供給する温熱媒体供給弁18と、温熱媒体排出弁18’とを有する温熱冷却媒体循環手段と、(D)熟成領域の下方に設けられ配向ポリマー15を切断するための選択的な切断手段と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラ型全芳香族ポリアミドパルプ(para−free aromatic polyamidepulp)の製造方法及びその製造装置に関する。より具体的には平均直径が1μm以下のミクロフィブリルからなり、ゆかんだ楕円形状の断面を有し、断面の最長距離が断面の最短距離の1.2倍以上であるパラ型全芳香族ポリアミドパルプの製造方法及びその製造装置に関する。
【0002】
また、本発明は重合溶媒下で芳香族ジアミンと当量モル(equivalent mole)の芳香族ジアシッドクロライド(芳香族塩化二酸塩、aromatic diacid chloride)とを反応させて製造したプレポリマー(pre−polymer、未配向ポリマー)を、連続的に配向及び熟成する方法、又は、配向、熟成及び切断する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
芳香族ポリアミドパルプは、主に石綿の代替材として脚光を浴びており、その用途としては、樹脂の補強剤、自動車の部品、ガスケット、ポンプのパッキング、ディスク或いはドラムブレーキ、機関車のブレーキブロック、産業用ブレーキとクラッチフェーシング、ブレーキライニング、摩擦剤等の石綿の代替材及びセメント補強剤などの建築資材がある。
【0004】
このような応用分野で要求される物性は、各々の用途及び適用技術に従って違うが、大部分が、パルプとしてどのくらいのフィブリル(fibril)を有しているかと、どんな長さの分布を有しているかとが大切である。また、摩擦材として使用する場合においては、瞬間摩擦による発熱に耐えるために高耐熱性を有することが基本的に求められる。更にガスケットやパッキング分野では、圧縮を受けた後この圧縮に対する復原力を有することも大切であり、この復原力はパルプの弾性力によって決定される。
【0005】
従来の芳香族ポリアミドパルプの製造方法及びその方法によるいろいろな問題点を具体的に調べてみる。
【0006】
米国特許第3869430号では、芳香族ジアミンと芳香族ジアシッドクロライドを混合溶媒で重合させてポリマーを製造し、製造されたポリマーを濃硫酸に溶かして紡糸用の液晶ドープを作ってから、これを口金(spinneret)を通じて吐出及び凝固させてフィラメント(filament)を製造する。通常的に芳香族ポリアミドパルプの製造方法は、紡糸されたフィラメントを切断し、これを湿った状態で精練(refining)してフィブリルの発達した芳香族ポリアミドパルプを製造する。即ち、精練工程によりフィラメントの表面を損傷させることによりフィブリルを発達させる。このような方法から製造した芳香族ポリアミドパルプの場合は、パルプの断面積に限界があった。
【0007】
即ち、紡糸されたフィラメントが通常的に12μmであるのは周知であり、このフィラメントを切断し精練して得たパルプの断面は円形からあまり外れないし、かつ断面積も本来のフィラメント以上に大きくないという。パルプ断面が円形である場合には、ゆがんだ楕円形の断面である場合より樹脂との接触面積が少ないし、凹凸部分(jagged part)による摩擦係数が低くて樹脂との常用性が低くなる。
【0008】
米国特許第4511623号では、芳香族ジアミンと芳香族ジアシッドクロライドを混合溶媒で重合させる時、ピリジンを添加して重合した後常温で5時間以上放置して熟成させる。熟成されたポリマーを粉砕してポリアミドパルプを製造する。
【0009】
この方法は複雑な紡糸工程を行わず芳香族ポリアミドパルプを製造できるが、有害なピリジンを使用しなければならないし、ピリジンの添加時にポリマーが短時間でゲル化されるので工程上の困難が多いとの問題点がある。
【0010】
このような方法で製造されたパルプは、平均直径が2μm以上の楕円形のフィブリルからなり、パルプの断面は円形に近い楕円形であり、パルプの両端は針状構造になっている。ここで、パルプの断面が円形に近い楕円形とは、断面の最長距離が断面の最短距離の1.2倍未満であることを意味する。具体的に、パルプを構成する各々のフィブリルは、断面最長距離が断面の最短距離の1.2倍以上の楕円形であるが、それらが集合したパルプの断面は円形に近い楕円形である。その結果、断面が完全な円形の形状であるパルプと比べて、樹脂との接触面積が大きいし凹凸部分による摩擦係数が低くて樹脂との常用性が向上するが、断面が完全にゆがんだ楕円形のパルプと比べれば前記効果が落ちる。従って、最終的に使用する際、熱伝達、熱拡散、耐衝撃性及び分散性などが低くなる。
【0011】
米国特許第5028372号では、多孔質ダイを用いて、芳香族ジアミンと芳香族ジアシッドクロライドを混合溶媒で重合させたプレポリマーに配向を与える。
【0012】
その後、それを25〜60℃で2〜8分間熟成してから切断し、次いでゲルが固くなるまで熟成させる。90分以上熟成してから凝固液に入れる過程を経て粉砕する。熟成は空気中や窒素雰囲気で行っている。
【0013】
この方法も、重合したポリマーを硫酸に溶かして紡糸する工程を排除するために試みられたものである。しかし、この方法においても多孔質の連続ダイを使用することが産業的な生産力があるかに対して疑問があり、また、この方法により製造されたパルプは米国特許第4511623号が提示したピリジンを用いたパルプの物性より極めて低い物性を示している。しかし、このような低い物性を有するパルプでも、既存のフィラメントから得られるパルプを用いた応用分野で使用可能であると報告されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、平均直径が1μm以下のミクロフィブリルからなり、断面の形状がゆがんだ楕円形であり、屈折率等の光学的性質と色相が既存の芳香族ポリアミドパルプのものと異なる新規な芳香族ポリアミドパルプの製造方法及びその製造装置に関する。本発明の芳香族ポリアミドパルプは、工業的に連続生産が可能であり、重合と同時的に配向を与える方法により製造される。即ち、製造工程で硫酸を用いた紡糸工程が省略される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の芳香族ポリアミドパルプは、平均直径が1μm以下のミクロフィブリルからなり、ゆがんだ楕円形に近い形状の断面を有し、断面の最長距離が断面の最短距離の1.2倍以上である。
【0016】
また、本発明の芳香族ポリアミドパルプの側面構造は、図4のように両端は板状構造であり、パルプの幹から多数のフィブリルが分枝されている。
【0017】
一方、本発明の芳香族ポリアミドパルプは、パルプ軸に対する平行方向の屈折率(n‖)の干渉フリンジとパルプ軸に対する垂直方向の屈折率(n⊥)の干渉フリンジとは各々非対称であり、不規則的なピークを示す。
【0018】
このような本発明の芳香族ポリアミドパルプは、長さが断面の最長距離以上であるので、石綿の代替材として使用する場合、耐熱性及び圧軸復原力等の基本的な物性が優れると共に、摩擦係数及び摩耗率が低いという利点を有する。
【0019】
また、本発明は重合溶媒下で芳香族ジアミンと当量モルの芳香族ジアシッドクロライドとを反応させて製造したプレポリマー(未配向のポリマー)を連続的に配向及び熟成するか、配向、熟成及び切断する方法及び装置に関する。
【0020】
本発明は、以下のステップから構成されることを特徴とする芳香族ポリアミドパルプの製造方法を提供する。
(A)配向モータ(7)により回転する配向インペラ(9)が設けられ且つ混合初期配向領域(I)に位置する配向槽(10)に、芳香族ポリアミドプレポリマーを供給しながら混合及び配向させること
(B)混合初期配向領域(I)に位置する配向槽(10)を配向槽移動シリンダ(8)によって配向領域へと順次移動させながら、配向させること
(C)配向領域で配向を完了した配向槽(10)を配向槽移動シリンダ(8)によって熟成領域へと順次移動させながら、熟成させること
(D)最終熟成領域にある配向槽(10)から熟成ポリマーを分離し、分離後の配向槽(10)を混合初期配向領域(I)に戻すこと
(E)前記工程と連続的又は不連続的に、配向ポリマー(15)を切断すること
【0021】
本発明は、以下の手段から構成されることを特徴とする芳香族ポリアミドパルプの製造装置を提供する。
(A)配向インペラ(9)と、配向インペラ(9)を高速回転させる配向モータ(7)と、配向インペラ(9)の固定フレーム(14)とを有する撹拌手段
(B)プレポリマーを含む配向領域及び熟成領域へと移動可能な数個の配向槽(10)と、配向槽を上下左右に移動させる配向槽移動シリンダ(8)と、配向槽ガイド板(16)とを有する連続移動手段
(C)配向領域に位置する配向槽ガイド板(16)のジャケットに冷却媒体を供給する冷却媒体供給弁(17)と、ジャケットに供給された冷却媒体を排出する冷却媒体排出弁(17’)と、熟成領域に位置する配向槽ガイド板(16)と熟成/高速攪拌棒(13)のジャケットとに温熱媒体を供給する温熱媒体供給弁(18)と、ジャケットに供給された温熱媒体を排出する温熱媒体排出弁(18’)とを有する温熱冷却媒体循環手段
(D)熟成領域の下方に設けられ配向ポリマー(15)を切断するための選択的な切断手段
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、平均直径が1μm以下のミクロフィブリルからなり、断面の形状がゆがんだ楕円形であり、屈折率等の光学的性質及び色相が既存の芳香族ポリアミドパルプとは異なる新規な芳香族ポリアミドパルプの製造方法及びその製造装置に関する。
【0023】
配向及び熟成工程をより詳しく説明すると以下のようになる。
(A)配向モータ(7)により回転する配向インペラ(9)が設けられ且つ混合初期配向領域(I)に位置する配向槽(10)に、芳香族ポリアミドプレポリマーを供給しながら混合及び配向させること
(B)混合初期配向領域(I)に位置する配向槽(10)を配向槽移動シリンダ(8)によって配向領域へと順次移動させながら、配向させること
(C)配向領域で配向を完了した配向槽(10)を配向槽移動シリンダ(8)によって熟成領域へと順次移動させながら、熟成させること
(D)最終熟成領域にある配向槽(10)から熟成ポリマーを分離し、分離後の配向槽(10)を混合初期配向領域(I)に戻すこと
(E)前記工程と連続的又は不連続的に、配向ポリマー(15)を切断すること
【0024】
本発明の配向及び熟成装置、又は、配向、熟成及び切断装置は、
(A)配向インペラ(9)と、配向インペラ(9)を高速回転させる配向モータ(7)と、配向インペラ(9)の固定フレーム(14)とを有する撹拌手段と、
(B)プレポリマーを含む配向領域及び熟成領域へと移動可能な数個の配向槽(10)と、配向槽を上下左右に移動させる配向槽移動シリンダ(8)と、配向槽ガイド板(16)とを有する連続移動手段と、
(C)配向領域に位置する配向槽ガイド板(16)のジャケットに冷却媒体を供給する冷却媒体供給弁(17)と、ジャケットに供給された冷却媒体を排出する冷却媒体排出弁(17’)と、熟成領域に位置する配向槽ガイド板(16)と熟成/高速攪拌棒(13)のジャケットとに温熱媒体を供給する温熱媒体供給弁(18)と、ジャケットに供給された温熱媒体を排出する温熱媒体排出弁(18’)とを有する温熱冷却媒体循環手段と、
(D)熟成領域の下方に設けられ配向ポリマー(15)を切断するための選択的な切断手段と、を備える。
【0025】
前記工程の中で、切断手段としては、配向ポリマー(15)を進行方向に対する垂直方向に切断する直線ナイフシリンダ(11)及び直線ナイフ(22)と、
直線ナイフシリンダ(11)の下端に設けられ配向ポリマー(15)を進行方向に対する水平方向に切断する四角ナイフ(12)と、を有する切断手段が用いられる。
【0026】
より具体的には、本発明の連続配向熟成システムは、配向領域と熟成及び固化領域が必須的に一体を成し、分離及び切断領域は前記配向及び熟成領域と選択的に一体を成すことができ、前記配向及び熟成領域と分離されるように構成することもできる。
【0027】
配向領域及び熟成領域は、2〜10段階で構成されるほうが望ましい。配向領域及び熟成領域の段階が多いほど製品の物性は向上するが、機械の設置及び効率的な作動のためには10段階以下が望ましい。しかし、本発明は、配向領域及び熟成領域の段階を別に制限するものではない。
【0028】
配向及び熟成のための配向インペラ(9)は、配向領域で望ましくは300〜1500rpmで回転しながら配向剪断力を与える。配向領域にはポリマーがゲル化する時間を調整するために配向槽の外部温度を調整する装置が付着される。即ち、配向領域の配向槽ガイド板(16)をジャケット化し、ここに冷却媒体供給弁(17)を通じて冷却媒体を供給し、冷却媒体排出弁(17’)を通じて冷却媒体を排出する。
【0029】
熟成領域には、熟成/高速攪拌棒(13)を設ける[以下では、“攪拌部材”ということがある]。即ち、配向インペラ(9)が一体型であって上部から下部まで全て回転すると、配向ポリマーの内部が熟成領域で変形を受けて配向ポリマーが損傷される恐れがある。従って、このような損傷を防止するために、図11に示すように配向後の熟成領域では回転体が配向ポリマーに接触しないようにした。
【0030】
即ち、熟成/高速攪拌棒(13)にて配向インペラ(9)をくるみながら加熱できるようにし、この熟成/高速攪拌棒(13)は固定した。また、配向領域から熟成領域へ移動する時、配向インペラ(9)と熟成/高速攪拌棒(13)との間にポリマーが流入するのを防止するために、ポリマー砕け防止顎(20)を設けた。
【0031】
この時、充分に熟成させることによりパルプの物性を向上させると共に、ポリマーの分離の円滑化のために熟成/高速攪拌棒(13)と配向槽ガイド板(16)とをジャケット化し、ここに温熱媒体供給弁(18)を通じて蒸気又はオイル等の温熱媒体を供給して熟成を促進させる。配向の領域及び熟成領域には配向槽の円滑な移動のために配向槽ガイド板(16)を設ける。
【0032】
一方、配向領域及び熟成領域と、切断領域とが一体に構成された場合には、最終熟成領域(VI)の下端に、直線ナイフシリンダ(11)に付着された直線ナイフ(22)と四角ナイフ(12)とからなる切断システムが位置しており、配向ポリマー(15)を連続的に切断できるようになっている。
【0033】
図11を参照して本発明の工程の循環サイクルをより具体的に説明する。
【0034】
未配向重合体であるプレポリマー(6)を、混合初期配向領域(I)にあるシリンダ形状の配向槽(10)に連続的に投入しながら配向モータ(7)にて配向インペラ(9)を回転させて、投入されたプレポリマー(6)を混合及び配向させる。
【0035】
混合初期配向領域(I)にあるシリンダ形状の配向槽(10)が、プレポリマーが一定の高さ以上となるまで満されると、配向槽移動シリンダ(8)が混合初期配向領域(I)にある配向槽(10)を配向領域(II)に移動させると共に、熟成領域(VI)にある配向槽(10)が配向槽移動システムによって混合初期配向領域(I)に移動されて新しいプレポリマー(I)を収容する。また、配向領域(II)で配向を完了した配向槽は、配向槽移動シリンダ(8)を通って最終配向領域(III)、熟成領域(IV)〜(VI)を順次移動しながら配向及び熟成を行う。
【0036】
このような動作を連続的に繰り返して、混合初期配向領域(I)→配向領域(II)→最終配向領域(III)→熟成領域(IV)→熟成領域(V)→熟成領域(VI)と循環するような循環サイクルを有する。
【0037】
熟成領域(VI)でポリマーの熟成が完了すると、配向ポリマー(15)は配向槽(10)と分離される。分離された配向ポリマー(15)は、熟成領域(VI)の下端に設けられている直線ナイフシリンダ(11)に付着された直線ナイフ(22)によって、ポリマーの進行方向に対して垂直方向に切断され、次いでその下端に設けられている四角ナイフ(12)にてポリマーの進行方向に対して水平方向に切断される。
【0038】
続いて、以上で説明した方法及び装置を用いて製造された本発明の芳香族ポリアミドパルプの形状及び物性に対して、より具体的に説明しようとする。
【0039】
本発明の芳香族ポリアミドパルプの形状においては、パルプを構成する幹部分の断面形状が円形ではなくゆがんだ楕円形に近い形状を有する。従って、このようなパルプの断面で中心点を経て直線を描くと、最長距離を形成する線もあり、また最短距離を形成する線もあることが確認できる。この最長距離及び最短距離の測定は、断面を観察してからこれをイメージ分析機(image analyzer)を用いて容易に分析することができる。
【0040】
本発明で得たパルプの断面をイメージ分析機により観察した結果、断面の最長距離は通常断面の最短距離より1.2倍以上であり、極て平らな形状を形成する断面は30倍以上になることもあった。
【0041】
このように断面がゆがんだ楕円形の形状を有するパルプは、紡糸工程が無く重合過程で配向も同時に行われるから正確な円形の断面を有するパルプ形状にならないためである。
【0042】
また、バルキーな状態でクラッシング及び精練すると、パルプを構成するミクロフィブリルが正確に一つずつ分離されないためである。実際に断面を正確に観察すると、一つの大塊の断面ではなく、平均直径が1μm以下のミクロフィブリル(以下、繊維素とする)の束の形態で断面は構成される。このように、クラッシングと精練過程で繊維素がバラバラに分離されないのは、繊維素を構成するポリマー鎖の−CO基と−NH基が相互に水素結合を形成しているためである。ここで、繊維素間の水素結合の数が少なければクラッシングと精練過程で強い外力を受けるため繊維素がバラバラに分離される。また、繊維間の水素結合数が多いということは、分子の鎖などが相互平行によく配向されていることを意味する。このように配向した鎖間には水素結合が多く形成されているので、クラッシングと精練過程で強い外力を受けても繊維素がバラバラに分離されるのに耐えることができる。
【0043】
各々の繊維素を分離させるには、強い水素結合力を切断できるように、各々の繊維素間の境界面に大きい力を加えなければならない。しかし、実際はこのような小さい繊維素間の境界部分に大きい力を加えることができない。無理にこの結合を分離する場合、繊維素間の境界が切られる前に繊維素の長さ方向への切断が多く発生することになる。こうなると、自然に繊維の長さが極て短くなって、最終的にパルプを摩擦材や補強材として使用する時、パルプ間の強い結合力を期待することができる。即ち、パルプを使用することにおいては、フィブリルの発達も重要な役割を果たすが、適当な長さを有する幹で多いフィブリルが形成されることがもっと望ましい。即ち、この幹及び微細なフィブリルのもつれ現象によってかなり強い結合力を示すからである。
【0044】
従って、パルプの長さは、できればパルプ断面の最長距離と同一であるか長いことが望ましい。通常パルプは断面の最長距離より10倍以上の長さを有するように形成してあり、この長さより小さいときは破砕物(debris)とも言われる。パルプ全体を大きく観察するとこのような破砕物は常に含まれている。この破砕物を完全に除去して工業的に使用するのは経済的な側面で不利である。また、このような破砕が少量含まれても芳香族ポリアミドパルプを使用する際にはあまり影響を及ばさない。
【0045】
また、パルプを構成するミクロフィブリルの断面は、幹部分、即ち、パルプの断面とは少し異なる態様を示す。ミクロフィブリルの断面は、前記パルプの断面よりは円形に近いと言える。さらに言えば、ミクロフィブリルの断面は、断面の最長と最短の長さの比率がほぼ1.2に近いという意味であり、比率が4.0以上の断面はほとんど見られない。
本発明のパルプを構成するミクロフィブリルの平均直径は1μm以下である。
【0046】
従って、光学顕微鏡あるいは走査電子顕微鏡の写真のみでは、本発明のパルプの断面を立体的に観察しにくい。それで、本発明者らはパルプの断面を観察するためにパルプをなるべく一定の方向に配列させてからエポキシ樹脂で含浸し硬化させ、これを薄く切断して光学顕微鏡を通って断面を観察し、ここで得た写真をイメージ分析機を通して深く観察した結果、パルプの断面は平均直径が1μm以下のミクロフィブリルからなり、円形ではなくゆがんだ楕円形の形状を形成することがわかった。これは、後述するが、繊維素間の強い水素結合と、更に精練工程のようなかなり強い外力を受ける工程とから生じた結果である。このようなゆがんだ楕円形の形状の断面積を有する芳香族ポリアミドパルプは、既存の商品化されているデュポン社(Du Pont Co.)の芳香族ポリアミドパルプ(商品名:ケブラ、KEVLAR)又はアクゾ社(AKZO Co.)の芳香族ポリアミド(商品名:トワロン、TWARON)とは異なり、パルプの側面が平らな形状であると言え、このような平らな形状のパルプはこれを用いる側面で新しい面を発見することができる。
【0047】
また、本発明のパルプは、両端部が板状構造を有し、パルプの幹から多数個のフィブリルが分枝されている。分枝されたフィブリルはミクロフィブリルからなっている。従って、本発明の芳香族ポリアミドパルプは従来の針状構造のパルプに比べて、ブレーキライニングの補強材等で用いる場合熱伝達あるいは熱拡散の側面で有利で、かつ衝撃を受けた場合衝撃の吸収、衝撃の緩和及び衝撃の分散などの附加的な効果を発生することができる。
【0048】
本発明で得た芳香族ポリアミドパルプは、前記のように断面が平らな特徴を有する。このような点をもっと観察すると断面の重量中心を経る最長距離が通常3〜500μm、ミクロフィブリルも含めて断面を観察すると0.12〜500μmの範囲であった。一方、断面の重量中心を経る最短距離を測定した結果、通常は2〜50μmで、更にミクロフィブリルも含めて観察した結果0.1〜50μmの範囲であった。
【0049】
また、パルプの長さを観察するために多様な試験をした。実際にパルプは自然に捲縮された形状を取るから、正確な長さを測定することは現在としてはとても困難な作業である。それで、現在の技術として一般的に用られる方法であり、サイズの異なるメッシュを用いてサイズ別に濾過されるようにして、ここから逆にパルプの平均繊維長を計算する方法を使用する。
【0050】
J.E.Tasman.Tappi vol55.no.1.136−138 1972では、各々のメッシュから濾過された繊維の長さを測定して報告されている。従来の技術により製造された芳香族ポリアミドパルプは、Bauer−McNett方法によってパルプの長さの分布図を測定した結果、250メッシュより小さいものも10%程度含有することを発見した。これは、パルプのフィブリル化のために外力を過大に加えた場合に極めて小さい粒子が形成されたからである。しかし、本発明のように、芳香族ポリアミドを重合と同時的に配向を与えてパルプを製造する方法においては、フィブリルを発達させる精練過程でかなり外力を大きく受けるため、大概の場合200メッシュより小さいものが10%以下含有されていた。標準試料(reference)で測定したデータを引用すると、250メッシュに該当する繊維の長さは0.2mm程度であった。勿論、この0.2mmより小さいものも見えた。しかし、これは極めて少量なので無視してもよい。
【0051】
パルプの平均繊維長は、光学顕微鏡を通して分散した試料を観察してから、イメージ分析機を通して長さ分布プログラムを用いて繊維長の分布を統計測定する。
【0052】
逆に、長さが長いことを観察してみる。本発明のように、重合と同時的に配向を与える方法によりパルプを製造する方法においては、紡糸から得られるエンドレスフィラメント(endless filament)の製造は不可能である。即ち、極めて長いパルプを得ることは不可能であると言える。本発明から得た長いパルプは肉眼で長さを測定できた。しかし、手作業で測定するため10%程度の誤差が生じ得る。
【0053】
一番長いパルプの場合は、50mm程度もあった。しかし、大概の場合30mm以下であった。即ち、本発明によるパルプの長さは0.2乃至50mmの範囲に分布しており、大概の場合は0.2乃至30mmの長さ分布を有する。
【0054】
従来の方法で重合して得たポリマーを硫酸に溶かして紡糸し、ここで得たフィラメントを用いてパルプを製造すると、重合に使われた溶媒の残量はかなり少なく相対的に硫酸アンモニウム塩の残量が存在することになる。しかし、本発明のように、重合と同時に配向を与えてパルプを得ると、使用しない硫酸による硫酸アンモニウムの残留量が発生しない。しかし、本発明で使用した方法により重合と配向が同時に行われるようにすると、重合に使用された溶媒と無機塩等の残量が相対的に多くなるように残存させることもできる。重合に用いられる溶媒は通常アミド系溶媒と無機塩の混合溶媒である。
【0055】
溶媒と無機塩に少量の異物が存在するので、パルプ内にも少量の異物が残存することになる。このような溶媒と無機塩の残存量は工程上で十分にその量を調整できる。しかし、水洗を完全にして溶媒を0.2%以下に除去しようとすれば工業的な側面でかなり不利である。
【0056】
即ち、製造原価の上昇を起こす結果になる。しかしながら、水洗をざっとして重合に用いられた溶媒と無機塩等が多量残存するようにすると、パルプを用いる側面で問題を起こすこともある。
【0057】
溶媒の残留量を測定する方法は以下のようなものである。
【0058】
水等の溶媒抽出剤を用いてパルプ中の残溜溶媒を抽出し、ガスクロマトグラフ(Gas Chromatography)を用いて定量測定する。
【0059】
水洗過程で残存するアミド溶媒の残量を0.2%以下にする場合においては、工業的な側面でかなり不利である。また、需要者らの要求に応じてこの残量より多い残存量にすることができるが、工程水分率が6%程度になるため、これより多い量のアミド溶媒を残存させることは望ましくない。また、重合に用いた無機塩の残存量はアミド溶媒の抽出程度によって比例的に減少する。また、パルプのフィブリルをどの程度まで発達させるかも大切な問題の一つである。
【0060】
本発明の方法によりパルプを製造するためには、クラッシング(又は、デフレーキング(deflaking)工程ともいう)と精練過程を経なければならず、ここでフィブリルの発達を調節することができる。フィブリルの発達程度を確認するためは光学顕微鏡や走査電子顕微鏡を用いるのが一番速い方法である。しかし、このような光学的方法では、フィブリル発達の微細な差異を工学的に表現することが難しい。従って、パルプ及び製紙業界では通常的にCanadian standard freeness(以下CSFとする)試験により測定している。
【0061】
CSFの測定は、TAPPI標準T227om−85方法を用いて行った。20℃の水1000mlにパルプ3gを入れて解離器で75,000回回転させ解離してから、Freeness Testerのドレインチェンバー(drainchamber)に解離された内容物を注いでチェンバーの下端のサイドオリフィス(Side Orifice)から出る水量を測定する。
【0062】
現在、商業的に用いられるデュポン社の芳香族ポリアミドパルプ(商品名:ケブラ)及びアクゾ社の芳香族ポリアミドパルプ(商品名:トワロン)はCSF値が250〜450程度の範囲にあることが知られている。CSF値が低いというのはフィブリル発達がよくなっていることを示す。しかし、CSF値が低ければ排水過程では不利である。即ち、芳香族ポリアミドパルプを用いて高耐熱性の紙やシートを製造するためにはシートの製造工程が必要であるが、この工程で水がどのくらい排水されるかという問題は工程の容易性と直結する。
【0063】
即ち、低すぎるCSF値を有するパルプを用いて製紙した場合は、排水が円滑にならないから製造原価の上昇を招く場合もある。
【0064】
これは、芳香族ポリアミドパルプの場合も、一般の木材パルプと同じく、パルプを用いる使用者の要求に応ずることが望ましい。
【0065】
本発明のように、重合と配向を同時に行いながら分子を配向させて精練工程によって最終パルプの物性を調節する工程を用いると、多様な種類のCSF値を有するパルプを製造できるようになる。
【0066】
芳香族ポリアミドパルプの性質はCSF値のみによって左右されるものではなく、長さ分布、比表面積、弾性、密度及び熱的性質等の項目によって決まる。即ち、パルプをどの分野にどう用いるかによって必要な性質が選択される。例として、ブレーキパッドやブロック等の応用分野では、CSF値だけでなく熱的性質、弾性及び比表面積等の項目も大切である。しかし、芳香族ポリアミドパルプの場合においては、現在まで商業的に知られていることは、デュポン社のケブラ(商品名)及びアクゾ社のトワロン(商品名)等の極めて限定的な製品に依存しているので、使用者らは選択の余地が無くCSF値の低いもののみを使用していた。
【0067】
しかし、本発明によって製造された芳香族ポリアミドパルプは、CSF値は700程度であるが、熱的性質としては既存製品と同様に500℃以上の温度まで耐えることができ、またブレーキの製造にも使用することができる。
【0068】
本発明で、CSF値が低いために精練工程をかなり深くして試験した結果、CSF値を約100程度以下にするのも可能であることを確認した。しかし、本発明の芳香族ポリアミドパルプのCSF値は200〜800である。CSF値が200〜800の場合が一番経済的である。また、パルプの屈折率及び複屈折率をAus Jena Interparkoを用いて測定した結果、次のようであった。
【0069】
パルプの軸方向に対して平行方向の屈折率(n‖)及び垂直方向の屈折率(n⊥)を求めると、パルプの平均屈折率及び複屈折がわかる。屈折率は、パルプの光学的性質を知るための要素であり、複屈折は(△n)パルプの分子配向の程度(結晶及び非結晶を含む)を知るための要素である。
【0070】
パルプの軸方向に対して平行方向の屈折率(n‖)、垂直方向の屈折率(n⊥)及び複屈折率(△n)は次式によって求められる。
【数1】
ここで、λは光の波長であり、F‖及びF⊥はパルプの軸方向に対する平行及び垂直の屈折率の干渉フリンジ移動面積であり、hはフリンジ空間であり、Aはパルプの断面積であり、Mは倍率(Magnification)で、nは液浸オイルの屈折率である。
【0071】
測定方法は、まず低偏光干渉顕微鏡(Interparko)を用いて液浸オイル(ImmersionOil)方法によりパルプの軸方向に対して平行及び垂直方向の屈折率の干渉フリンジを測定し、これらをイメージ分析機を用いて分析して干渉フリンジ移動面積及びパルプ断面積を求める。断面積の分布別に選択した10個の本発明のパルプ試料について、前記測定方法により屈折率干渉フリンジ、屈折率及び複屈折率を測定した結果、パルプの軸方向に垂直な屈折率の干渉フリンジは図5と同じであり、パルプの軸方向に平行な屈折率の干渉フリンジは図6と同じであった。この時、使用された光源は波長550nmの白色光である。
【0072】
また、パルプの垂直方向の屈折率(n垂直)の分布は1.58〜1.64であり、平行方向の屈折率(n平行)の分布は2.11〜2.23であり、平均屈折率は1.80である。複屈折の分布は0.47〜0.65という値である。
【0073】
このようなパルプの複屈折値からは、繊維内の分子の配向程度を間接的に知ることができ、分子がよく配向していると強度などの力学的性質が向上する。
【0074】
パルプの光に対する安定度を測定するために、紫外線(UV ray)及び可視光線の領域で反射程度を測定した。即ち、繊維内の分子が光を受ける時、どんな影響を受けるか確認した。
【0075】
反射率の測定は、紫外線−可視分光計(シマヅ(Shimadzu)製UV−260)を用いて波長領域100〜700nmで行った。試料パルプをシート状にして表面を平らにしてから、反射装置を用いて測定する。標準試料と試料の反射率とを比較して光反射率を測定する。標準試料はほぼ100%反射するようになっている。
【数2】
【0076】
可視光線の領域別の光反射率を以下に示す。
【表1】
紫外線領域の反射率は無く、可視光線領域での反射率は波長により差がある。
【0077】
一般に、繊維内の分子は、紫外線によりわずかに分解されて力学的な物性に影響を及ぼす場合もある。しかし、上の測定結果のように、反射率がほぼ無く100%吸収すると、紫外線領域の光による分解程度が極めて微小なので、長時間使用する紫外線遮断素材の用途として使用できる。そして、可視光領域でも反射率が波長700nmで81%であるから光に露出されてもあまり支障がない。
【0078】
本発明から得られた芳香族ポリアミドパルプの色相を、“データカラーインタナショナルSF600(機器モデル名)”を用いて次のような方法により測定した。データカラーインタナショナルSF600は、可視光線領域(400〜700nm)内で10nm間隔で反射度及び透過度を測定できる2−チャネル(Channel)の分光光度計(Spectrophotometer)である。試料を大きさ別(大:口径30nm、小:口径12nm、超小:口径6.5nm)で測定することができる。
【0079】
光源D65/10で標準試料及び試料を照射し、標準試料及び試料から反射された光線を分析機に付設された二つの光電極にて感知して、これをコンピュタープロクラムにより測定した。
【0080】
測定したデータは標準色相度システム(International Color System)を用いて解析した。
【0081】
その測定結果の値は、L:80.0〜82.1、a:2.0〜2.8、b:23.0〜23.4であった。ここで、Lは明るさ(Lightness)、aは+赤(red)、−青(blue)、bは+黄(Yellow)、−青(blue)である。
【0082】
パルプの密度を測定することにより繊維内の結晶化程度を間接的に知ることができる。本発明の芳香族ポリアミドパルプの密度をU型配管法[重液:CCl4、軽液:N−ヘプタン、標準フローター(Floator)を利用]により測定した結果、密度は1.40〜1.43(g/cm3)であった。一般的に知られている1.44より低い密度を示していた。これは製品の軽量化に好ましい影響を及ぼすと判断される。
【0083】
5%程度の水分を含んだ状態で本発明の芳香族ポリアミドパルプの結晶化度をX−線回折計(X−ray Diffractometer:WAXD)を利用して測定すると、結晶化度は45〜60%であった。
【0084】
パルプを乾燥してからこれを水に浸漬させて水分が50%程度になった状態で測定すると、前記結晶化度は30乃至40%程度の低い値を示した。
【0085】
一般的には、芳香族ポリアミドパルプの結晶化度が、水分を含むことに依存して変動すると考えるのは難しい。これに対する正確な理由はまだ知られていないが、再び湿潤させる時結晶化度が落ちることがわかっている。
【0086】
また、結晶のサイズも同じ分析機にて測定でき、面(110)の結晶サイズは40〜60Åであった。
【0087】
更に、結晶配向も測定した。面(110)の配向角は約28〜35°の範囲にあった。
この時試料としては、重合と配向を同時に行って乾燥して製造したポリマーを薄いシート形状にスライスしたものを用い、これをX−線回折計を用いて結晶配向角を測定した。使用した分析機のターゲット(target)の縦横が約1mm程度になる。
【0088】
この面積では、実際に光学顕微鏡を通って観察した結果、繊維素らの配列状態は良好でなかった。従って、実際的な分子水準(level)での配向角度は、前記範囲より小さく示すようと予想されるが現在としては正確な値を観察できなかった。
【0089】
本発明のパルプの比表面積をマイクロメリティクス(Micromeritics:FlowsorbII2300)を用いて測定した。これは不均一な表面を有する材料の重量対比表面の面積を測定する際に適用される。先ず、試料を入れるU字型ガラス管に窒素を強く通過させて水分を除去してからガラス管の重量を正確に測定した後、ガラス管に試料を満たしてから重量を測定して試料重量を求める。続いて一定の時間の間試料が充填されたU字型ガラス管の一側入口に窒素ガスを注入し、他側入口に窒素ガスを排出することにより窒素ガスを試料に吸着させ、試料に吸着された窒素ガス量を求めて試料の表面積を計算する。
【数3】
このように測定した結果は、3〜14m2/gであった。
【0090】
この複合的な性質を有する芳香族ポリアミドパルプはブレーキの摩擦材、ガスケット等の分野で石綿の代替材として使用可能である。
【0091】
また、本発明の範囲よりもっと太い形態のパルプも、本発明のように重合及び配向を同時に実施する方法により製造可能であり、このような場合フィブリルの発達はあまり期待できないが、セメント補強材及び断熱材等の分野において石綿の代替材として使用する場合、好ましい性能を示す。
【実施例】
【0092】
<実施例1>
反応器に1000KgのN−メチル−2−ピロリドンを80℃で維持し、塩化カルシウムを80Kg投入して溶かした。この重合溶媒に48.67KgのP−フェニレンジアミンを溶かして芳香族ジアミン溶液を製造した。この芳香族アミン溶液を1128.67g/分の速度で温度調節装置を通って5℃で維持されるミキサーに供給すると共に溶融したテレフタロイルクロリド(Terephthaloyl Chloride)を27.41g/分の速度で前記ミキサーに供給してからこれを反応させて第1ポリマーを製造する。そして、第1ポリマーを5℃に冷却して連続ミキサーであるニーダに1156.06g/分の速度で投入すると共に熔融テレフタロイルクロリドを63.95g/分の速度でニーダに投入してこれを反応させた。
【0093】
投入物らを連続ミキサーのニーダ内で初期重合及び混合して未配向重合体(プリポリマー)を製造した。製造された朱配向重合体であるプレポリマー(6)を混合初期配向領域(I)の位置にある配向槽(10)に連続的に供給すると共に配向モータ(7)によって420rpmで回転する配向インペラ(9)にて投入したポリマーを撹拌して混合及び配向させた。混合初期配向領域(I)に位置する配向槽(10)にポリマーの一定量が満されると配向槽移動シリンダ(8)にて配向槽(10)を配向領域(II)及び配向領域(III)の位置へ順次的に移動させながら配向を実施した。
【0094】
この時、重合及び配向時間は190秒とし、配向領域(I)〜(III)内の配向槽ガイド板(16)のジャケット内側へ水を供給してポリマーのゲル化を遅延させた。配向領域(III)の位置で配向が完了すると、配向槽移動シリンダ(8)にて配向槽(10)を熟成領域(IV)、(V)及び(VI)位置へ順次的に移動させながら熟成させた。この時、熟成領域(IV)〜(VI)には熟成/高速撹拌棒(13)を設け、熟成が効率的に行われるように熟成領域内の配向槽ガイド板(16)のジャケットと熟成/高速攪拌棒(13)のジャケットの内側へ蒸気を供給した。領域(VI)の位置で熟成が完了すると、配向ポリマー(15)と配向槽(10)を分離し、配向槽(10)は配向槽移動システムによって初期混合及び配向領域(I)の位置へ復帰させる。分離された配向ポリマー(15)を熟成領域(VI)の下端に設けられている直線ナイフ(22)及び四角ナイフ(12)にて配向方向に3cm程度の長さになるように切断した。
【0095】
この切断したポリマーを温度50℃の水に2時間浸漬してから、これを鎚を用いてクラッシング(加粉砕)し、水に入れてポリマーの内部に残存する溶媒を抽出した。続いてディスクミル(disk mill)[ドイツのエイリチ(EIRICHSF−6)剤]にて粉砕した。
【0096】
この後、内部に残存するN−メチル−2−ピロリドンをもっと抽出するために水で数回水洗した。
【0097】
この後に最終パルプを得るために、製造されたパルプスラリーの濃度を1%としてからAndritz Sprout Bauer剤のリパイナーを用いて精練した。この時、リパイナーの間隔は7Milsで、通過回数は20回である。
【0098】
この後、スラリーから水を除去し乾燥させてから、再びディスクミルにて繊維素を拡げて、平均直径が1μm以下のミクロフィブリルからなり、断面がゆがんだ楕円形である全芳香族ポリアミドパルプを製造した。
【0099】
製造されたパルプの物性は下のようである。
密度 1.4322
結晶のサイズ 51Å
断面の最長距離 12〜66μm
断面の最短距離 2〜21μm
断面の最長距離/断面の最短距離=1.2〜30
長さ分布の測定(30メッシュ以上):18%
破砕物(200メッシュ以下):10%
平均長さ:1200μm
【0100】
<実施例2〜7>
芳香族ポリアミドパルプを製造する方法は、実施例1と同一であり、ただ連続ミキサーであるニーダの後に重合及び配向させる過程での剪断力の付与量(インペラの回転数)と総重合及び配向時間のみを異なるようにして、平均直径が1μm以下のミクロフィブリルからなり、断面がゆがんだ楕円形である芳香族ポリアミドパルプを製造した。
【0101】
このように製造されたパルプの物性は下のようである。
【表2】
【0102】
<実施例8〜13>
全芳香族ポリアミドパルプを製造する方法は、実施例1と基本的に同一であり、精練時のリパイナーの間隔を15Milsとし、スラリーの濃度及び精練処理回数を異なるようにして、平均直径が1μm以下のミクロフィブリルからなり、断面がゆがんだ楕円形である芳香族ポリアミドパルプを製造した。
【0103】
このように製造されたパルプの物性は下のようである。
【表3】
【0104】
上述から得たパルプの中、実施例12で得たパルプを用いて、パルプ5%、ドロマイト52%、硫酸バリウム12%及びカドライト21%の組成物を製造し、これを180℃で30分間モールディングしてブレーキ模型を製作した。
【0105】
本発明の芳香族ポリアミドパルプを用いたブレーキと既存のデュポン社の芳香族ポリアミドパルプ(ケブラ)を用いたブレーキの磨耗率及び摩擦係数を比較した結果は下のようである。
【表4】
【0106】
本発明の芳香族ポリアミドパルプは、平均直径が1μm以下のミクロフィブリルからなり、ゆがんだ楕円形の断面を有しているので、樹脂の補強材として使用する時樹脂との常用性が優れる。その結果ブレーキの磨滅率が低下する。また、パルプのCSF値の幅が広いため用途によって適当なパルプを選択的に使用できる。また、光学的性質が優れるので、紫外線による老化現状が既存のパルプに比べて著しく減る。
また、本発明の配向、熟成及び切断装置は、設置空間が節約されるだけでなく、工程が簡素化され、収率も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明のパラ型全芳香族ポリアミドパルプの断面の写真である。
【図2】本発明のパラ型全芳香族ポリアミドパルプの断面の写真である。
【図3】本発明のパラ型全芳香族ポリアミドパルプの断面の模式図である。図3で、1は断面を構成するミクロフィブリルで、2は断面の最長距離で、3は断面の最短距離である。
【図4】本発明のパラ型全芳香族ポリアミドパルプの側面構造の模式図である。図4で、1は断面を構成するフィブリルで、4はパルプの幹で、5はパルプの幹から分枝されたフィブリルである。
【図5】本発明のパルプ軸に対する垂直方向の屈折率(n⊥)の干渉フリンジである。
【図6】本発明のパルプ軸に対する平行方向の屈折率(n‖)の干渉フリンジである。
【図7】従来の全芳香族ポリアミドパルプ(デュポン社の製品)のパルプ軸に対する垂直方向の屈折率(n⊥)の干渉フリンジである。図5〜図7で、Aはパルプの断面積で、hはフリンジスペーシング、F‖及びF⊥は各々フリンジ移動面積である。
【図8】本発明のパラ型全芳香族ポリアミドパルプの走査電子顕微鏡写真である。
【図9】本発明のパラ型全芳香族ポリアミドパルプの光学顕微鏡写真である。
【図10】従来のパラ型全芳香族ポリアミドパルプ(デュポン社の製品)の光学顕微鏡写真である。
【図11】本発明のパラ型全芳香族ポリアミドパルプ製造に用いる配向、熟成及び切断装置の概略図である。図11において、6:プレポリマー、7:配向モータ、8:配向槽移動シリンダ、9:配向インペラ、10:配向槽、11:直線ナイフシリンダ、12:四角ナイフ、13:熟成/高速攪拌棒(stirrer)、14:配向インペラ固定フレーム、15:配向ポリマー、16:配向槽ガイド板、17:冷却媒体供給弁、17’:冷却媒体排出弁、18:温熱媒体供給弁、18’:温熱媒体排出弁、19:切断配向ポリマー、20:ポリマー砕け防止顎、21:曲面の腰部、22:直線ナイフ、I〜III:配向の領域、IV〜VI:熟成領域である。
【図12】図11に示す直線ナイフの拡大平面図である。
【図13】図11のA−Aラインから見た四角ナイフ(図11の12)の底面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラ型全芳香族ポリアミドパルプ(para−free aromatic polyamidepulp)の製造方法及びその製造装置に関する。より具体的には平均直径が1μm以下のミクロフィブリルからなり、ゆかんだ楕円形状の断面を有し、断面の最長距離が断面の最短距離の1.2倍以上であるパラ型全芳香族ポリアミドパルプの製造方法及びその製造装置に関する。
【0002】
また、本発明は重合溶媒下で芳香族ジアミンと当量モル(equivalent mole)の芳香族ジアシッドクロライド(芳香族塩化二酸塩、aromatic diacid chloride)とを反応させて製造したプレポリマー(pre−polymer、未配向ポリマー)を、連続的に配向及び熟成する方法、又は、配向、熟成及び切断する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
芳香族ポリアミドパルプは、主に石綿の代替材として脚光を浴びており、その用途としては、樹脂の補強剤、自動車の部品、ガスケット、ポンプのパッキング、ディスク或いはドラムブレーキ、機関車のブレーキブロック、産業用ブレーキとクラッチフェーシング、ブレーキライニング、摩擦剤等の石綿の代替材及びセメント補強剤などの建築資材がある。
【0004】
このような応用分野で要求される物性は、各々の用途及び適用技術に従って違うが、大部分が、パルプとしてどのくらいのフィブリル(fibril)を有しているかと、どんな長さの分布を有しているかとが大切である。また、摩擦材として使用する場合においては、瞬間摩擦による発熱に耐えるために高耐熱性を有することが基本的に求められる。更にガスケットやパッキング分野では、圧縮を受けた後この圧縮に対する復原力を有することも大切であり、この復原力はパルプの弾性力によって決定される。
【0005】
従来の芳香族ポリアミドパルプの製造方法及びその方法によるいろいろな問題点を具体的に調べてみる。
【0006】
米国特許第3869430号では、芳香族ジアミンと芳香族ジアシッドクロライドを混合溶媒で重合させてポリマーを製造し、製造されたポリマーを濃硫酸に溶かして紡糸用の液晶ドープを作ってから、これを口金(spinneret)を通じて吐出及び凝固させてフィラメント(filament)を製造する。通常的に芳香族ポリアミドパルプの製造方法は、紡糸されたフィラメントを切断し、これを湿った状態で精練(refining)してフィブリルの発達した芳香族ポリアミドパルプを製造する。即ち、精練工程によりフィラメントの表面を損傷させることによりフィブリルを発達させる。このような方法から製造した芳香族ポリアミドパルプの場合は、パルプの断面積に限界があった。
【0007】
即ち、紡糸されたフィラメントが通常的に12μmであるのは周知であり、このフィラメントを切断し精練して得たパルプの断面は円形からあまり外れないし、かつ断面積も本来のフィラメント以上に大きくないという。パルプ断面が円形である場合には、ゆがんだ楕円形の断面である場合より樹脂との接触面積が少ないし、凹凸部分(jagged part)による摩擦係数が低くて樹脂との常用性が低くなる。
【0008】
米国特許第4511623号では、芳香族ジアミンと芳香族ジアシッドクロライドを混合溶媒で重合させる時、ピリジンを添加して重合した後常温で5時間以上放置して熟成させる。熟成されたポリマーを粉砕してポリアミドパルプを製造する。
【0009】
この方法は複雑な紡糸工程を行わず芳香族ポリアミドパルプを製造できるが、有害なピリジンを使用しなければならないし、ピリジンの添加時にポリマーが短時間でゲル化されるので工程上の困難が多いとの問題点がある。
【0010】
このような方法で製造されたパルプは、平均直径が2μm以上の楕円形のフィブリルからなり、パルプの断面は円形に近い楕円形であり、パルプの両端は針状構造になっている。ここで、パルプの断面が円形に近い楕円形とは、断面の最長距離が断面の最短距離の1.2倍未満であることを意味する。具体的に、パルプを構成する各々のフィブリルは、断面最長距離が断面の最短距離の1.2倍以上の楕円形であるが、それらが集合したパルプの断面は円形に近い楕円形である。その結果、断面が完全な円形の形状であるパルプと比べて、樹脂との接触面積が大きいし凹凸部分による摩擦係数が低くて樹脂との常用性が向上するが、断面が完全にゆがんだ楕円形のパルプと比べれば前記効果が落ちる。従って、最終的に使用する際、熱伝達、熱拡散、耐衝撃性及び分散性などが低くなる。
【0011】
米国特許第5028372号では、多孔質ダイを用いて、芳香族ジアミンと芳香族ジアシッドクロライドを混合溶媒で重合させたプレポリマーに配向を与える。
【0012】
その後、それを25〜60℃で2〜8分間熟成してから切断し、次いでゲルが固くなるまで熟成させる。90分以上熟成してから凝固液に入れる過程を経て粉砕する。熟成は空気中や窒素雰囲気で行っている。
【0013】
この方法も、重合したポリマーを硫酸に溶かして紡糸する工程を排除するために試みられたものである。しかし、この方法においても多孔質の連続ダイを使用することが産業的な生産力があるかに対して疑問があり、また、この方法により製造されたパルプは米国特許第4511623号が提示したピリジンを用いたパルプの物性より極めて低い物性を示している。しかし、このような低い物性を有するパルプでも、既存のフィラメントから得られるパルプを用いた応用分野で使用可能であると報告されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、平均直径が1μm以下のミクロフィブリルからなり、断面の形状がゆがんだ楕円形であり、屈折率等の光学的性質と色相が既存の芳香族ポリアミドパルプのものと異なる新規な芳香族ポリアミドパルプの製造方法及びその製造装置に関する。本発明の芳香族ポリアミドパルプは、工業的に連続生産が可能であり、重合と同時的に配向を与える方法により製造される。即ち、製造工程で硫酸を用いた紡糸工程が省略される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の芳香族ポリアミドパルプは、平均直径が1μm以下のミクロフィブリルからなり、ゆがんだ楕円形に近い形状の断面を有し、断面の最長距離が断面の最短距離の1.2倍以上である。
【0016】
また、本発明の芳香族ポリアミドパルプの側面構造は、図4のように両端は板状構造であり、パルプの幹から多数のフィブリルが分枝されている。
【0017】
一方、本発明の芳香族ポリアミドパルプは、パルプ軸に対する平行方向の屈折率(n‖)の干渉フリンジとパルプ軸に対する垂直方向の屈折率(n⊥)の干渉フリンジとは各々非対称であり、不規則的なピークを示す。
【0018】
このような本発明の芳香族ポリアミドパルプは、長さが断面の最長距離以上であるので、石綿の代替材として使用する場合、耐熱性及び圧軸復原力等の基本的な物性が優れると共に、摩擦係数及び摩耗率が低いという利点を有する。
【0019】
また、本発明は重合溶媒下で芳香族ジアミンと当量モルの芳香族ジアシッドクロライドとを反応させて製造したプレポリマー(未配向のポリマー)を連続的に配向及び熟成するか、配向、熟成及び切断する方法及び装置に関する。
【0020】
本発明は、以下のステップから構成されることを特徴とする芳香族ポリアミドパルプの製造方法を提供する。
(A)配向モータ(7)により回転する配向インペラ(9)が設けられ且つ混合初期配向領域(I)に位置する配向槽(10)に、芳香族ポリアミドプレポリマーを供給しながら混合及び配向させること
(B)混合初期配向領域(I)に位置する配向槽(10)を配向槽移動シリンダ(8)によって配向領域へと順次移動させながら、配向させること
(C)配向領域で配向を完了した配向槽(10)を配向槽移動シリンダ(8)によって熟成領域へと順次移動させながら、熟成させること
(D)最終熟成領域にある配向槽(10)から熟成ポリマーを分離し、分離後の配向槽(10)を混合初期配向領域(I)に戻すこと
(E)前記工程と連続的又は不連続的に、配向ポリマー(15)を切断すること
【0021】
本発明は、以下の手段から構成されることを特徴とする芳香族ポリアミドパルプの製造装置を提供する。
(A)配向インペラ(9)と、配向インペラ(9)を高速回転させる配向モータ(7)と、配向インペラ(9)の固定フレーム(14)とを有する撹拌手段
(B)プレポリマーを含む配向領域及び熟成領域へと移動可能な数個の配向槽(10)と、配向槽を上下左右に移動させる配向槽移動シリンダ(8)と、配向槽ガイド板(16)とを有する連続移動手段
(C)配向領域に位置する配向槽ガイド板(16)のジャケットに冷却媒体を供給する冷却媒体供給弁(17)と、ジャケットに供給された冷却媒体を排出する冷却媒体排出弁(17’)と、熟成領域に位置する配向槽ガイド板(16)と熟成/高速攪拌棒(13)のジャケットとに温熱媒体を供給する温熱媒体供給弁(18)と、ジャケットに供給された温熱媒体を排出する温熱媒体排出弁(18’)とを有する温熱冷却媒体循環手段
(D)熟成領域の下方に設けられ配向ポリマー(15)を切断するための選択的な切断手段
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、平均直径が1μm以下のミクロフィブリルからなり、断面の形状がゆがんだ楕円形であり、屈折率等の光学的性質及び色相が既存の芳香族ポリアミドパルプとは異なる新規な芳香族ポリアミドパルプの製造方法及びその製造装置に関する。
【0023】
配向及び熟成工程をより詳しく説明すると以下のようになる。
(A)配向モータ(7)により回転する配向インペラ(9)が設けられ且つ混合初期配向領域(I)に位置する配向槽(10)に、芳香族ポリアミドプレポリマーを供給しながら混合及び配向させること
(B)混合初期配向領域(I)に位置する配向槽(10)を配向槽移動シリンダ(8)によって配向領域へと順次移動させながら、配向させること
(C)配向領域で配向を完了した配向槽(10)を配向槽移動シリンダ(8)によって熟成領域へと順次移動させながら、熟成させること
(D)最終熟成領域にある配向槽(10)から熟成ポリマーを分離し、分離後の配向槽(10)を混合初期配向領域(I)に戻すこと
(E)前記工程と連続的又は不連続的に、配向ポリマー(15)を切断すること
【0024】
本発明の配向及び熟成装置、又は、配向、熟成及び切断装置は、
(A)配向インペラ(9)と、配向インペラ(9)を高速回転させる配向モータ(7)と、配向インペラ(9)の固定フレーム(14)とを有する撹拌手段と、
(B)プレポリマーを含む配向領域及び熟成領域へと移動可能な数個の配向槽(10)と、配向槽を上下左右に移動させる配向槽移動シリンダ(8)と、配向槽ガイド板(16)とを有する連続移動手段と、
(C)配向領域に位置する配向槽ガイド板(16)のジャケットに冷却媒体を供給する冷却媒体供給弁(17)と、ジャケットに供給された冷却媒体を排出する冷却媒体排出弁(17’)と、熟成領域に位置する配向槽ガイド板(16)と熟成/高速攪拌棒(13)のジャケットとに温熱媒体を供給する温熱媒体供給弁(18)と、ジャケットに供給された温熱媒体を排出する温熱媒体排出弁(18’)とを有する温熱冷却媒体循環手段と、
(D)熟成領域の下方に設けられ配向ポリマー(15)を切断するための選択的な切断手段と、を備える。
【0025】
前記工程の中で、切断手段としては、配向ポリマー(15)を進行方向に対する垂直方向に切断する直線ナイフシリンダ(11)及び直線ナイフ(22)と、
直線ナイフシリンダ(11)の下端に設けられ配向ポリマー(15)を進行方向に対する水平方向に切断する四角ナイフ(12)と、を有する切断手段が用いられる。
【0026】
より具体的には、本発明の連続配向熟成システムは、配向領域と熟成及び固化領域が必須的に一体を成し、分離及び切断領域は前記配向及び熟成領域と選択的に一体を成すことができ、前記配向及び熟成領域と分離されるように構成することもできる。
【0027】
配向領域及び熟成領域は、2〜10段階で構成されるほうが望ましい。配向領域及び熟成領域の段階が多いほど製品の物性は向上するが、機械の設置及び効率的な作動のためには10段階以下が望ましい。しかし、本発明は、配向領域及び熟成領域の段階を別に制限するものではない。
【0028】
配向及び熟成のための配向インペラ(9)は、配向領域で望ましくは300〜1500rpmで回転しながら配向剪断力を与える。配向領域にはポリマーがゲル化する時間を調整するために配向槽の外部温度を調整する装置が付着される。即ち、配向領域の配向槽ガイド板(16)をジャケット化し、ここに冷却媒体供給弁(17)を通じて冷却媒体を供給し、冷却媒体排出弁(17’)を通じて冷却媒体を排出する。
【0029】
熟成領域には、熟成/高速攪拌棒(13)を設ける[以下では、“攪拌部材”ということがある]。即ち、配向インペラ(9)が一体型であって上部から下部まで全て回転すると、配向ポリマーの内部が熟成領域で変形を受けて配向ポリマーが損傷される恐れがある。従って、このような損傷を防止するために、図11に示すように配向後の熟成領域では回転体が配向ポリマーに接触しないようにした。
【0030】
即ち、熟成/高速攪拌棒(13)にて配向インペラ(9)をくるみながら加熱できるようにし、この熟成/高速攪拌棒(13)は固定した。また、配向領域から熟成領域へ移動する時、配向インペラ(9)と熟成/高速攪拌棒(13)との間にポリマーが流入するのを防止するために、ポリマー砕け防止顎(20)を設けた。
【0031】
この時、充分に熟成させることによりパルプの物性を向上させると共に、ポリマーの分離の円滑化のために熟成/高速攪拌棒(13)と配向槽ガイド板(16)とをジャケット化し、ここに温熱媒体供給弁(18)を通じて蒸気又はオイル等の温熱媒体を供給して熟成を促進させる。配向の領域及び熟成領域には配向槽の円滑な移動のために配向槽ガイド板(16)を設ける。
【0032】
一方、配向領域及び熟成領域と、切断領域とが一体に構成された場合には、最終熟成領域(VI)の下端に、直線ナイフシリンダ(11)に付着された直線ナイフ(22)と四角ナイフ(12)とからなる切断システムが位置しており、配向ポリマー(15)を連続的に切断できるようになっている。
【0033】
図11を参照して本発明の工程の循環サイクルをより具体的に説明する。
【0034】
未配向重合体であるプレポリマー(6)を、混合初期配向領域(I)にあるシリンダ形状の配向槽(10)に連続的に投入しながら配向モータ(7)にて配向インペラ(9)を回転させて、投入されたプレポリマー(6)を混合及び配向させる。
【0035】
混合初期配向領域(I)にあるシリンダ形状の配向槽(10)が、プレポリマーが一定の高さ以上となるまで満されると、配向槽移動シリンダ(8)が混合初期配向領域(I)にある配向槽(10)を配向領域(II)に移動させると共に、熟成領域(VI)にある配向槽(10)が配向槽移動システムによって混合初期配向領域(I)に移動されて新しいプレポリマー(I)を収容する。また、配向領域(II)で配向を完了した配向槽は、配向槽移動シリンダ(8)を通って最終配向領域(III)、熟成領域(IV)〜(VI)を順次移動しながら配向及び熟成を行う。
【0036】
このような動作を連続的に繰り返して、混合初期配向領域(I)→配向領域(II)→最終配向領域(III)→熟成領域(IV)→熟成領域(V)→熟成領域(VI)と循環するような循環サイクルを有する。
【0037】
熟成領域(VI)でポリマーの熟成が完了すると、配向ポリマー(15)は配向槽(10)と分離される。分離された配向ポリマー(15)は、熟成領域(VI)の下端に設けられている直線ナイフシリンダ(11)に付着された直線ナイフ(22)によって、ポリマーの進行方向に対して垂直方向に切断され、次いでその下端に設けられている四角ナイフ(12)にてポリマーの進行方向に対して水平方向に切断される。
【0038】
続いて、以上で説明した方法及び装置を用いて製造された本発明の芳香族ポリアミドパルプの形状及び物性に対して、より具体的に説明しようとする。
【0039】
本発明の芳香族ポリアミドパルプの形状においては、パルプを構成する幹部分の断面形状が円形ではなくゆがんだ楕円形に近い形状を有する。従って、このようなパルプの断面で中心点を経て直線を描くと、最長距離を形成する線もあり、また最短距離を形成する線もあることが確認できる。この最長距離及び最短距離の測定は、断面を観察してからこれをイメージ分析機(image analyzer)を用いて容易に分析することができる。
【0040】
本発明で得たパルプの断面をイメージ分析機により観察した結果、断面の最長距離は通常断面の最短距離より1.2倍以上であり、極て平らな形状を形成する断面は30倍以上になることもあった。
【0041】
このように断面がゆがんだ楕円形の形状を有するパルプは、紡糸工程が無く重合過程で配向も同時に行われるから正確な円形の断面を有するパルプ形状にならないためである。
【0042】
また、バルキーな状態でクラッシング及び精練すると、パルプを構成するミクロフィブリルが正確に一つずつ分離されないためである。実際に断面を正確に観察すると、一つの大塊の断面ではなく、平均直径が1μm以下のミクロフィブリル(以下、繊維素とする)の束の形態で断面は構成される。このように、クラッシングと精練過程で繊維素がバラバラに分離されないのは、繊維素を構成するポリマー鎖の−CO基と−NH基が相互に水素結合を形成しているためである。ここで、繊維素間の水素結合の数が少なければクラッシングと精練過程で強い外力を受けるため繊維素がバラバラに分離される。また、繊維間の水素結合数が多いということは、分子の鎖などが相互平行によく配向されていることを意味する。このように配向した鎖間には水素結合が多く形成されているので、クラッシングと精練過程で強い外力を受けても繊維素がバラバラに分離されるのに耐えることができる。
【0043】
各々の繊維素を分離させるには、強い水素結合力を切断できるように、各々の繊維素間の境界面に大きい力を加えなければならない。しかし、実際はこのような小さい繊維素間の境界部分に大きい力を加えることができない。無理にこの結合を分離する場合、繊維素間の境界が切られる前に繊維素の長さ方向への切断が多く発生することになる。こうなると、自然に繊維の長さが極て短くなって、最終的にパルプを摩擦材や補強材として使用する時、パルプ間の強い結合力を期待することができる。即ち、パルプを使用することにおいては、フィブリルの発達も重要な役割を果たすが、適当な長さを有する幹で多いフィブリルが形成されることがもっと望ましい。即ち、この幹及び微細なフィブリルのもつれ現象によってかなり強い結合力を示すからである。
【0044】
従って、パルプの長さは、できればパルプ断面の最長距離と同一であるか長いことが望ましい。通常パルプは断面の最長距離より10倍以上の長さを有するように形成してあり、この長さより小さいときは破砕物(debris)とも言われる。パルプ全体を大きく観察するとこのような破砕物は常に含まれている。この破砕物を完全に除去して工業的に使用するのは経済的な側面で不利である。また、このような破砕が少量含まれても芳香族ポリアミドパルプを使用する際にはあまり影響を及ばさない。
【0045】
また、パルプを構成するミクロフィブリルの断面は、幹部分、即ち、パルプの断面とは少し異なる態様を示す。ミクロフィブリルの断面は、前記パルプの断面よりは円形に近いと言える。さらに言えば、ミクロフィブリルの断面は、断面の最長と最短の長さの比率がほぼ1.2に近いという意味であり、比率が4.0以上の断面はほとんど見られない。
本発明のパルプを構成するミクロフィブリルの平均直径は1μm以下である。
【0046】
従って、光学顕微鏡あるいは走査電子顕微鏡の写真のみでは、本発明のパルプの断面を立体的に観察しにくい。それで、本発明者らはパルプの断面を観察するためにパルプをなるべく一定の方向に配列させてからエポキシ樹脂で含浸し硬化させ、これを薄く切断して光学顕微鏡を通って断面を観察し、ここで得た写真をイメージ分析機を通して深く観察した結果、パルプの断面は平均直径が1μm以下のミクロフィブリルからなり、円形ではなくゆがんだ楕円形の形状を形成することがわかった。これは、後述するが、繊維素間の強い水素結合と、更に精練工程のようなかなり強い外力を受ける工程とから生じた結果である。このようなゆがんだ楕円形の形状の断面積を有する芳香族ポリアミドパルプは、既存の商品化されているデュポン社(Du Pont Co.)の芳香族ポリアミドパルプ(商品名:ケブラ、KEVLAR)又はアクゾ社(AKZO Co.)の芳香族ポリアミド(商品名:トワロン、TWARON)とは異なり、パルプの側面が平らな形状であると言え、このような平らな形状のパルプはこれを用いる側面で新しい面を発見することができる。
【0047】
また、本発明のパルプは、両端部が板状構造を有し、パルプの幹から多数個のフィブリルが分枝されている。分枝されたフィブリルはミクロフィブリルからなっている。従って、本発明の芳香族ポリアミドパルプは従来の針状構造のパルプに比べて、ブレーキライニングの補強材等で用いる場合熱伝達あるいは熱拡散の側面で有利で、かつ衝撃を受けた場合衝撃の吸収、衝撃の緩和及び衝撃の分散などの附加的な効果を発生することができる。
【0048】
本発明で得た芳香族ポリアミドパルプは、前記のように断面が平らな特徴を有する。このような点をもっと観察すると断面の重量中心を経る最長距離が通常3〜500μm、ミクロフィブリルも含めて断面を観察すると0.12〜500μmの範囲であった。一方、断面の重量中心を経る最短距離を測定した結果、通常は2〜50μmで、更にミクロフィブリルも含めて観察した結果0.1〜50μmの範囲であった。
【0049】
また、パルプの長さを観察するために多様な試験をした。実際にパルプは自然に捲縮された形状を取るから、正確な長さを測定することは現在としてはとても困難な作業である。それで、現在の技術として一般的に用られる方法であり、サイズの異なるメッシュを用いてサイズ別に濾過されるようにして、ここから逆にパルプの平均繊維長を計算する方法を使用する。
【0050】
J.E.Tasman.Tappi vol55.no.1.136−138 1972では、各々のメッシュから濾過された繊維の長さを測定して報告されている。従来の技術により製造された芳香族ポリアミドパルプは、Bauer−McNett方法によってパルプの長さの分布図を測定した結果、250メッシュより小さいものも10%程度含有することを発見した。これは、パルプのフィブリル化のために外力を過大に加えた場合に極めて小さい粒子が形成されたからである。しかし、本発明のように、芳香族ポリアミドを重合と同時的に配向を与えてパルプを製造する方法においては、フィブリルを発達させる精練過程でかなり外力を大きく受けるため、大概の場合200メッシュより小さいものが10%以下含有されていた。標準試料(reference)で測定したデータを引用すると、250メッシュに該当する繊維の長さは0.2mm程度であった。勿論、この0.2mmより小さいものも見えた。しかし、これは極めて少量なので無視してもよい。
【0051】
パルプの平均繊維長は、光学顕微鏡を通して分散した試料を観察してから、イメージ分析機を通して長さ分布プログラムを用いて繊維長の分布を統計測定する。
【0052】
逆に、長さが長いことを観察してみる。本発明のように、重合と同時的に配向を与える方法によりパルプを製造する方法においては、紡糸から得られるエンドレスフィラメント(endless filament)の製造は不可能である。即ち、極めて長いパルプを得ることは不可能であると言える。本発明から得た長いパルプは肉眼で長さを測定できた。しかし、手作業で測定するため10%程度の誤差が生じ得る。
【0053】
一番長いパルプの場合は、50mm程度もあった。しかし、大概の場合30mm以下であった。即ち、本発明によるパルプの長さは0.2乃至50mmの範囲に分布しており、大概の場合は0.2乃至30mmの長さ分布を有する。
【0054】
従来の方法で重合して得たポリマーを硫酸に溶かして紡糸し、ここで得たフィラメントを用いてパルプを製造すると、重合に使われた溶媒の残量はかなり少なく相対的に硫酸アンモニウム塩の残量が存在することになる。しかし、本発明のように、重合と同時に配向を与えてパルプを得ると、使用しない硫酸による硫酸アンモニウムの残留量が発生しない。しかし、本発明で使用した方法により重合と配向が同時に行われるようにすると、重合に使用された溶媒と無機塩等の残量が相対的に多くなるように残存させることもできる。重合に用いられる溶媒は通常アミド系溶媒と無機塩の混合溶媒である。
【0055】
溶媒と無機塩に少量の異物が存在するので、パルプ内にも少量の異物が残存することになる。このような溶媒と無機塩の残存量は工程上で十分にその量を調整できる。しかし、水洗を完全にして溶媒を0.2%以下に除去しようとすれば工業的な側面でかなり不利である。
【0056】
即ち、製造原価の上昇を起こす結果になる。しかしながら、水洗をざっとして重合に用いられた溶媒と無機塩等が多量残存するようにすると、パルプを用いる側面で問題を起こすこともある。
【0057】
溶媒の残留量を測定する方法は以下のようなものである。
【0058】
水等の溶媒抽出剤を用いてパルプ中の残溜溶媒を抽出し、ガスクロマトグラフ(Gas Chromatography)を用いて定量測定する。
【0059】
水洗過程で残存するアミド溶媒の残量を0.2%以下にする場合においては、工業的な側面でかなり不利である。また、需要者らの要求に応じてこの残量より多い残存量にすることができるが、工程水分率が6%程度になるため、これより多い量のアミド溶媒を残存させることは望ましくない。また、重合に用いた無機塩の残存量はアミド溶媒の抽出程度によって比例的に減少する。また、パルプのフィブリルをどの程度まで発達させるかも大切な問題の一つである。
【0060】
本発明の方法によりパルプを製造するためには、クラッシング(又は、デフレーキング(deflaking)工程ともいう)と精練過程を経なければならず、ここでフィブリルの発達を調節することができる。フィブリルの発達程度を確認するためは光学顕微鏡や走査電子顕微鏡を用いるのが一番速い方法である。しかし、このような光学的方法では、フィブリル発達の微細な差異を工学的に表現することが難しい。従って、パルプ及び製紙業界では通常的にCanadian standard freeness(以下CSFとする)試験により測定している。
【0061】
CSFの測定は、TAPPI標準T227om−85方法を用いて行った。20℃の水1000mlにパルプ3gを入れて解離器で75,000回回転させ解離してから、Freeness Testerのドレインチェンバー(drainchamber)に解離された内容物を注いでチェンバーの下端のサイドオリフィス(Side Orifice)から出る水量を測定する。
【0062】
現在、商業的に用いられるデュポン社の芳香族ポリアミドパルプ(商品名:ケブラ)及びアクゾ社の芳香族ポリアミドパルプ(商品名:トワロン)はCSF値が250〜450程度の範囲にあることが知られている。CSF値が低いというのはフィブリル発達がよくなっていることを示す。しかし、CSF値が低ければ排水過程では不利である。即ち、芳香族ポリアミドパルプを用いて高耐熱性の紙やシートを製造するためにはシートの製造工程が必要であるが、この工程で水がどのくらい排水されるかという問題は工程の容易性と直結する。
【0063】
即ち、低すぎるCSF値を有するパルプを用いて製紙した場合は、排水が円滑にならないから製造原価の上昇を招く場合もある。
【0064】
これは、芳香族ポリアミドパルプの場合も、一般の木材パルプと同じく、パルプを用いる使用者の要求に応ずることが望ましい。
【0065】
本発明のように、重合と配向を同時に行いながら分子を配向させて精練工程によって最終パルプの物性を調節する工程を用いると、多様な種類のCSF値を有するパルプを製造できるようになる。
【0066】
芳香族ポリアミドパルプの性質はCSF値のみによって左右されるものではなく、長さ分布、比表面積、弾性、密度及び熱的性質等の項目によって決まる。即ち、パルプをどの分野にどう用いるかによって必要な性質が選択される。例として、ブレーキパッドやブロック等の応用分野では、CSF値だけでなく熱的性質、弾性及び比表面積等の項目も大切である。しかし、芳香族ポリアミドパルプの場合においては、現在まで商業的に知られていることは、デュポン社のケブラ(商品名)及びアクゾ社のトワロン(商品名)等の極めて限定的な製品に依存しているので、使用者らは選択の余地が無くCSF値の低いもののみを使用していた。
【0067】
しかし、本発明によって製造された芳香族ポリアミドパルプは、CSF値は700程度であるが、熱的性質としては既存製品と同様に500℃以上の温度まで耐えることができ、またブレーキの製造にも使用することができる。
【0068】
本発明で、CSF値が低いために精練工程をかなり深くして試験した結果、CSF値を約100程度以下にするのも可能であることを確認した。しかし、本発明の芳香族ポリアミドパルプのCSF値は200〜800である。CSF値が200〜800の場合が一番経済的である。また、パルプの屈折率及び複屈折率をAus Jena Interparkoを用いて測定した結果、次のようであった。
【0069】
パルプの軸方向に対して平行方向の屈折率(n‖)及び垂直方向の屈折率(n⊥)を求めると、パルプの平均屈折率及び複屈折がわかる。屈折率は、パルプの光学的性質を知るための要素であり、複屈折は(△n)パルプの分子配向の程度(結晶及び非結晶を含む)を知るための要素である。
【0070】
パルプの軸方向に対して平行方向の屈折率(n‖)、垂直方向の屈折率(n⊥)及び複屈折率(△n)は次式によって求められる。
【数1】
ここで、λは光の波長であり、F‖及びF⊥はパルプの軸方向に対する平行及び垂直の屈折率の干渉フリンジ移動面積であり、hはフリンジ空間であり、Aはパルプの断面積であり、Mは倍率(Magnification)で、nは液浸オイルの屈折率である。
【0071】
測定方法は、まず低偏光干渉顕微鏡(Interparko)を用いて液浸オイル(ImmersionOil)方法によりパルプの軸方向に対して平行及び垂直方向の屈折率の干渉フリンジを測定し、これらをイメージ分析機を用いて分析して干渉フリンジ移動面積及びパルプ断面積を求める。断面積の分布別に選択した10個の本発明のパルプ試料について、前記測定方法により屈折率干渉フリンジ、屈折率及び複屈折率を測定した結果、パルプの軸方向に垂直な屈折率の干渉フリンジは図5と同じであり、パルプの軸方向に平行な屈折率の干渉フリンジは図6と同じであった。この時、使用された光源は波長550nmの白色光である。
【0072】
また、パルプの垂直方向の屈折率(n垂直)の分布は1.58〜1.64であり、平行方向の屈折率(n平行)の分布は2.11〜2.23であり、平均屈折率は1.80である。複屈折の分布は0.47〜0.65という値である。
【0073】
このようなパルプの複屈折値からは、繊維内の分子の配向程度を間接的に知ることができ、分子がよく配向していると強度などの力学的性質が向上する。
【0074】
パルプの光に対する安定度を測定するために、紫外線(UV ray)及び可視光線の領域で反射程度を測定した。即ち、繊維内の分子が光を受ける時、どんな影響を受けるか確認した。
【0075】
反射率の測定は、紫外線−可視分光計(シマヅ(Shimadzu)製UV−260)を用いて波長領域100〜700nmで行った。試料パルプをシート状にして表面を平らにしてから、反射装置を用いて測定する。標準試料と試料の反射率とを比較して光反射率を測定する。標準試料はほぼ100%反射するようになっている。
【数2】
【0076】
可視光線の領域別の光反射率を以下に示す。
【表1】
紫外線領域の反射率は無く、可視光線領域での反射率は波長により差がある。
【0077】
一般に、繊維内の分子は、紫外線によりわずかに分解されて力学的な物性に影響を及ぼす場合もある。しかし、上の測定結果のように、反射率がほぼ無く100%吸収すると、紫外線領域の光による分解程度が極めて微小なので、長時間使用する紫外線遮断素材の用途として使用できる。そして、可視光領域でも反射率が波長700nmで81%であるから光に露出されてもあまり支障がない。
【0078】
本発明から得られた芳香族ポリアミドパルプの色相を、“データカラーインタナショナルSF600(機器モデル名)”を用いて次のような方法により測定した。データカラーインタナショナルSF600は、可視光線領域(400〜700nm)内で10nm間隔で反射度及び透過度を測定できる2−チャネル(Channel)の分光光度計(Spectrophotometer)である。試料を大きさ別(大:口径30nm、小:口径12nm、超小:口径6.5nm)で測定することができる。
【0079】
光源D65/10で標準試料及び試料を照射し、標準試料及び試料から反射された光線を分析機に付設された二つの光電極にて感知して、これをコンピュタープロクラムにより測定した。
【0080】
測定したデータは標準色相度システム(International Color System)を用いて解析した。
【0081】
その測定結果の値は、L:80.0〜82.1、a:2.0〜2.8、b:23.0〜23.4であった。ここで、Lは明るさ(Lightness)、aは+赤(red)、−青(blue)、bは+黄(Yellow)、−青(blue)である。
【0082】
パルプの密度を測定することにより繊維内の結晶化程度を間接的に知ることができる。本発明の芳香族ポリアミドパルプの密度をU型配管法[重液:CCl4、軽液:N−ヘプタン、標準フローター(Floator)を利用]により測定した結果、密度は1.40〜1.43(g/cm3)であった。一般的に知られている1.44より低い密度を示していた。これは製品の軽量化に好ましい影響を及ぼすと判断される。
【0083】
5%程度の水分を含んだ状態で本発明の芳香族ポリアミドパルプの結晶化度をX−線回折計(X−ray Diffractometer:WAXD)を利用して測定すると、結晶化度は45〜60%であった。
【0084】
パルプを乾燥してからこれを水に浸漬させて水分が50%程度になった状態で測定すると、前記結晶化度は30乃至40%程度の低い値を示した。
【0085】
一般的には、芳香族ポリアミドパルプの結晶化度が、水分を含むことに依存して変動すると考えるのは難しい。これに対する正確な理由はまだ知られていないが、再び湿潤させる時結晶化度が落ちることがわかっている。
【0086】
また、結晶のサイズも同じ分析機にて測定でき、面(110)の結晶サイズは40〜60Åであった。
【0087】
更に、結晶配向も測定した。面(110)の配向角は約28〜35°の範囲にあった。
この時試料としては、重合と配向を同時に行って乾燥して製造したポリマーを薄いシート形状にスライスしたものを用い、これをX−線回折計を用いて結晶配向角を測定した。使用した分析機のターゲット(target)の縦横が約1mm程度になる。
【0088】
この面積では、実際に光学顕微鏡を通って観察した結果、繊維素らの配列状態は良好でなかった。従って、実際的な分子水準(level)での配向角度は、前記範囲より小さく示すようと予想されるが現在としては正確な値を観察できなかった。
【0089】
本発明のパルプの比表面積をマイクロメリティクス(Micromeritics:FlowsorbII2300)を用いて測定した。これは不均一な表面を有する材料の重量対比表面の面積を測定する際に適用される。先ず、試料を入れるU字型ガラス管に窒素を強く通過させて水分を除去してからガラス管の重量を正確に測定した後、ガラス管に試料を満たしてから重量を測定して試料重量を求める。続いて一定の時間の間試料が充填されたU字型ガラス管の一側入口に窒素ガスを注入し、他側入口に窒素ガスを排出することにより窒素ガスを試料に吸着させ、試料に吸着された窒素ガス量を求めて試料の表面積を計算する。
【数3】
このように測定した結果は、3〜14m2/gであった。
【0090】
この複合的な性質を有する芳香族ポリアミドパルプはブレーキの摩擦材、ガスケット等の分野で石綿の代替材として使用可能である。
【0091】
また、本発明の範囲よりもっと太い形態のパルプも、本発明のように重合及び配向を同時に実施する方法により製造可能であり、このような場合フィブリルの発達はあまり期待できないが、セメント補強材及び断熱材等の分野において石綿の代替材として使用する場合、好ましい性能を示す。
【実施例】
【0092】
<実施例1>
反応器に1000KgのN−メチル−2−ピロリドンを80℃で維持し、塩化カルシウムを80Kg投入して溶かした。この重合溶媒に48.67KgのP−フェニレンジアミンを溶かして芳香族ジアミン溶液を製造した。この芳香族アミン溶液を1128.67g/分の速度で温度調節装置を通って5℃で維持されるミキサーに供給すると共に溶融したテレフタロイルクロリド(Terephthaloyl Chloride)を27.41g/分の速度で前記ミキサーに供給してからこれを反応させて第1ポリマーを製造する。そして、第1ポリマーを5℃に冷却して連続ミキサーであるニーダに1156.06g/分の速度で投入すると共に熔融テレフタロイルクロリドを63.95g/分の速度でニーダに投入してこれを反応させた。
【0093】
投入物らを連続ミキサーのニーダ内で初期重合及び混合して未配向重合体(プリポリマー)を製造した。製造された朱配向重合体であるプレポリマー(6)を混合初期配向領域(I)の位置にある配向槽(10)に連続的に供給すると共に配向モータ(7)によって420rpmで回転する配向インペラ(9)にて投入したポリマーを撹拌して混合及び配向させた。混合初期配向領域(I)に位置する配向槽(10)にポリマーの一定量が満されると配向槽移動シリンダ(8)にて配向槽(10)を配向領域(II)及び配向領域(III)の位置へ順次的に移動させながら配向を実施した。
【0094】
この時、重合及び配向時間は190秒とし、配向領域(I)〜(III)内の配向槽ガイド板(16)のジャケット内側へ水を供給してポリマーのゲル化を遅延させた。配向領域(III)の位置で配向が完了すると、配向槽移動シリンダ(8)にて配向槽(10)を熟成領域(IV)、(V)及び(VI)位置へ順次的に移動させながら熟成させた。この時、熟成領域(IV)〜(VI)には熟成/高速撹拌棒(13)を設け、熟成が効率的に行われるように熟成領域内の配向槽ガイド板(16)のジャケットと熟成/高速攪拌棒(13)のジャケットの内側へ蒸気を供給した。領域(VI)の位置で熟成が完了すると、配向ポリマー(15)と配向槽(10)を分離し、配向槽(10)は配向槽移動システムによって初期混合及び配向領域(I)の位置へ復帰させる。分離された配向ポリマー(15)を熟成領域(VI)の下端に設けられている直線ナイフ(22)及び四角ナイフ(12)にて配向方向に3cm程度の長さになるように切断した。
【0095】
この切断したポリマーを温度50℃の水に2時間浸漬してから、これを鎚を用いてクラッシング(加粉砕)し、水に入れてポリマーの内部に残存する溶媒を抽出した。続いてディスクミル(disk mill)[ドイツのエイリチ(EIRICHSF−6)剤]にて粉砕した。
【0096】
この後、内部に残存するN−メチル−2−ピロリドンをもっと抽出するために水で数回水洗した。
【0097】
この後に最終パルプを得るために、製造されたパルプスラリーの濃度を1%としてからAndritz Sprout Bauer剤のリパイナーを用いて精練した。この時、リパイナーの間隔は7Milsで、通過回数は20回である。
【0098】
この後、スラリーから水を除去し乾燥させてから、再びディスクミルにて繊維素を拡げて、平均直径が1μm以下のミクロフィブリルからなり、断面がゆがんだ楕円形である全芳香族ポリアミドパルプを製造した。
【0099】
製造されたパルプの物性は下のようである。
密度 1.4322
結晶のサイズ 51Å
断面の最長距離 12〜66μm
断面の最短距離 2〜21μm
断面の最長距離/断面の最短距離=1.2〜30
長さ分布の測定(30メッシュ以上):18%
破砕物(200メッシュ以下):10%
平均長さ:1200μm
【0100】
<実施例2〜7>
芳香族ポリアミドパルプを製造する方法は、実施例1と同一であり、ただ連続ミキサーであるニーダの後に重合及び配向させる過程での剪断力の付与量(インペラの回転数)と総重合及び配向時間のみを異なるようにして、平均直径が1μm以下のミクロフィブリルからなり、断面がゆがんだ楕円形である芳香族ポリアミドパルプを製造した。
【0101】
このように製造されたパルプの物性は下のようである。
【表2】
【0102】
<実施例8〜13>
全芳香族ポリアミドパルプを製造する方法は、実施例1と基本的に同一であり、精練時のリパイナーの間隔を15Milsとし、スラリーの濃度及び精練処理回数を異なるようにして、平均直径が1μm以下のミクロフィブリルからなり、断面がゆがんだ楕円形である芳香族ポリアミドパルプを製造した。
【0103】
このように製造されたパルプの物性は下のようである。
【表3】
【0104】
上述から得たパルプの中、実施例12で得たパルプを用いて、パルプ5%、ドロマイト52%、硫酸バリウム12%及びカドライト21%の組成物を製造し、これを180℃で30分間モールディングしてブレーキ模型を製作した。
【0105】
本発明の芳香族ポリアミドパルプを用いたブレーキと既存のデュポン社の芳香族ポリアミドパルプ(ケブラ)を用いたブレーキの磨耗率及び摩擦係数を比較した結果は下のようである。
【表4】
【0106】
本発明の芳香族ポリアミドパルプは、平均直径が1μm以下のミクロフィブリルからなり、ゆがんだ楕円形の断面を有しているので、樹脂の補強材として使用する時樹脂との常用性が優れる。その結果ブレーキの磨滅率が低下する。また、パルプのCSF値の幅が広いため用途によって適当なパルプを選択的に使用できる。また、光学的性質が優れるので、紫外線による老化現状が既存のパルプに比べて著しく減る。
また、本発明の配向、熟成及び切断装置は、設置空間が節約されるだけでなく、工程が簡素化され、収率も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明のパラ型全芳香族ポリアミドパルプの断面の写真である。
【図2】本発明のパラ型全芳香族ポリアミドパルプの断面の写真である。
【図3】本発明のパラ型全芳香族ポリアミドパルプの断面の模式図である。図3で、1は断面を構成するミクロフィブリルで、2は断面の最長距離で、3は断面の最短距離である。
【図4】本発明のパラ型全芳香族ポリアミドパルプの側面構造の模式図である。図4で、1は断面を構成するフィブリルで、4はパルプの幹で、5はパルプの幹から分枝されたフィブリルである。
【図5】本発明のパルプ軸に対する垂直方向の屈折率(n⊥)の干渉フリンジである。
【図6】本発明のパルプ軸に対する平行方向の屈折率(n‖)の干渉フリンジである。
【図7】従来の全芳香族ポリアミドパルプ(デュポン社の製品)のパルプ軸に対する垂直方向の屈折率(n⊥)の干渉フリンジである。図5〜図7で、Aはパルプの断面積で、hはフリンジスペーシング、F‖及びF⊥は各々フリンジ移動面積である。
【図8】本発明のパラ型全芳香族ポリアミドパルプの走査電子顕微鏡写真である。
【図9】本発明のパラ型全芳香族ポリアミドパルプの光学顕微鏡写真である。
【図10】従来のパラ型全芳香族ポリアミドパルプ(デュポン社の製品)の光学顕微鏡写真である。
【図11】本発明のパラ型全芳香族ポリアミドパルプ製造に用いる配向、熟成及び切断装置の概略図である。図11において、6:プレポリマー、7:配向モータ、8:配向槽移動シリンダ、9:配向インペラ、10:配向槽、11:直線ナイフシリンダ、12:四角ナイフ、13:熟成/高速攪拌棒(stirrer)、14:配向インペラ固定フレーム、15:配向ポリマー、16:配向槽ガイド板、17:冷却媒体供給弁、17’:冷却媒体排出弁、18:温熱媒体供給弁、18’:温熱媒体排出弁、19:切断配向ポリマー、20:ポリマー砕け防止顎、21:曲面の腰部、22:直線ナイフ、I〜III:配向の領域、IV〜VI:熟成領域である。
【図12】図11に示す直線ナイフの拡大平面図である。
【図13】図11のA−Aラインから見た四角ナイフ(図11の12)の底面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラ型全芳香族ポリアミドパルプの製造装置であって、
(A)配向インペラ(9)と、配向インペラ(9)を高速回転させる配向モータ(7)と、配向インペラ(9)の固定フレーム(14)とを有する撹拌手段と、
(B)プレポリマーを含む配向領域及び熟成領域へと移動可能な数個の配向槽(10)と、配向槽(10)を上下左右に移動させる配向槽移動シリンダ(8)と、配向槽ガイド板(16)とを有する連続移動手段と、
(C)配向領域に位置する配向槽ガイド板(16)のジャケットに冷却媒体を供給する冷却媒体供給弁(17)と、ジャケットに供給された冷却媒体を排出する冷却媒体排出弁(17’)と、熟成領域に位置する配向槽ガイド板(16)と熟成/高速攪拌棒(13)のジャケットとに温熱媒体を供給する温熱媒体供給弁(18)と、ジャケットに供給された温熱媒体を排出する温熱媒体排出弁(18’)とを有する温熱冷却媒体循環手段と、
(D)熟成領域の下方に設けられ配向ポリマー(15)を切断するための選択的な切断手段と、を備えることを特徴とするパラ型全芳香族ポリアミドパルプの製造装置。
【請求項2】
請求項1記載のパラ型全芳香族ポリアミドパルプの製造装置において、
前記切断手段は、配向ポリマー(15)を進行方向に対する垂直方向に切断する直線ナイフシリンダー(11)及び直線ナイフ(22)と、
直線ナイフシリンダー(11)の下端に設けられ配向ポリマー(15)を進行方向に対する水平方向に切断する四角ナイフ(12)と、を有することを特徴とするパラ型全芳香族ポリアミドパルプの製造装置。
【請求項3】
請求項1記載のパラ型全芳香族ポリアミドパルプの製造装置において、
前記熟成/高速攪拌棒(13)は、配向インペラ(9)から分離され、前記熟成領域に位置する配向槽(10)に設けられたことを特徴とするパラ型全芳香族ポリアミドパルプの製造装置。
【請求項4】
請求項1記載のパラ型全芳香族ポリアミドパルプの製造装置において、
前記温熱媒体は、蒸気又はオイルであることを特徴とするパラ型全芳香族ポリアミドパルプの製造装置。
【請求項5】
芳香族ポリアミドパルプの製造方法であって、
芳香族ジアミン及び芳香族ジアシッドクロライドが重合溶媒下で重合して製造される芳香族ポリアミドプレポリマーを、下記の工程を繰り返すことで、配向、熟成、及び切断することを特徴とする芳香族ポリアミドパルプの製造方法。
(A)配向モータ(7)により回転する配向インペラ(9)が設けられ且つ混合初期配向領域(I)に位置する配向槽(10)に、芳香族ポリアミドプレポリマーを供給しながら混合及び配向させること
(B)混合初期配向領域(I)に位置する配向槽(10)を配向槽移動シリンダ(8)によって配向領域へと順次移動させながら、配向させること
(C)配向領域で配向を完了した配向槽(10)を配向槽移動シリンダ(8)によって熟成領域へと順次移動させながら、熟成させること
(D)最終熟成領域にある配向槽(10)から熟成ポリマーを分離し、分離後の配向槽(10)を混合初期配向領域(I)に戻すこと
(E)前記工程と連続的又は不連続的に、配向ポリマー(15)を切断すること
【請求項1】
パラ型全芳香族ポリアミドパルプの製造装置であって、
(A)配向インペラ(9)と、配向インペラ(9)を高速回転させる配向モータ(7)と、配向インペラ(9)の固定フレーム(14)とを有する撹拌手段と、
(B)プレポリマーを含む配向領域及び熟成領域へと移動可能な数個の配向槽(10)と、配向槽(10)を上下左右に移動させる配向槽移動シリンダ(8)と、配向槽ガイド板(16)とを有する連続移動手段と、
(C)配向領域に位置する配向槽ガイド板(16)のジャケットに冷却媒体を供給する冷却媒体供給弁(17)と、ジャケットに供給された冷却媒体を排出する冷却媒体排出弁(17’)と、熟成領域に位置する配向槽ガイド板(16)と熟成/高速攪拌棒(13)のジャケットとに温熱媒体を供給する温熱媒体供給弁(18)と、ジャケットに供給された温熱媒体を排出する温熱媒体排出弁(18’)とを有する温熱冷却媒体循環手段と、
(D)熟成領域の下方に設けられ配向ポリマー(15)を切断するための選択的な切断手段と、を備えることを特徴とするパラ型全芳香族ポリアミドパルプの製造装置。
【請求項2】
請求項1記載のパラ型全芳香族ポリアミドパルプの製造装置において、
前記切断手段は、配向ポリマー(15)を進行方向に対する垂直方向に切断する直線ナイフシリンダー(11)及び直線ナイフ(22)と、
直線ナイフシリンダー(11)の下端に設けられ配向ポリマー(15)を進行方向に対する水平方向に切断する四角ナイフ(12)と、を有することを特徴とするパラ型全芳香族ポリアミドパルプの製造装置。
【請求項3】
請求項1記載のパラ型全芳香族ポリアミドパルプの製造装置において、
前記熟成/高速攪拌棒(13)は、配向インペラ(9)から分離され、前記熟成領域に位置する配向槽(10)に設けられたことを特徴とするパラ型全芳香族ポリアミドパルプの製造装置。
【請求項4】
請求項1記載のパラ型全芳香族ポリアミドパルプの製造装置において、
前記温熱媒体は、蒸気又はオイルであることを特徴とするパラ型全芳香族ポリアミドパルプの製造装置。
【請求項5】
芳香族ポリアミドパルプの製造方法であって、
芳香族ジアミン及び芳香族ジアシッドクロライドが重合溶媒下で重合して製造される芳香族ポリアミドプレポリマーを、下記の工程を繰り返すことで、配向、熟成、及び切断することを特徴とする芳香族ポリアミドパルプの製造方法。
(A)配向モータ(7)により回転する配向インペラ(9)が設けられ且つ混合初期配向領域(I)に位置する配向槽(10)に、芳香族ポリアミドプレポリマーを供給しながら混合及び配向させること
(B)混合初期配向領域(I)に位置する配向槽(10)を配向槽移動シリンダ(8)によって配向領域へと順次移動させながら、配向させること
(C)配向領域で配向を完了した配向槽(10)を配向槽移動シリンダ(8)によって熟成領域へと順次移動させながら、熟成させること
(D)最終熟成領域にある配向槽(10)から熟成ポリマーを分離し、分離後の配向槽(10)を混合初期配向領域(I)に戻すこと
(E)前記工程と連続的又は不連続的に、配向ポリマー(15)を切断すること
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−257631(P2006−257631A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126681(P2006−126681)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【分割の表示】特願平10−515518の分割
【原出願日】平成9年9月23日(1997.9.23)
【出願人】(597114649)コーロン インダストリーズ インク (99)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【分割の表示】特願平10−515518の分割
【原出願日】平成9年9月23日(1997.9.23)
【出願人】(597114649)コーロン インダストリーズ インク (99)
【Fターム(参考)】
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