説明

パラ型全芳香族ポリアミド繊維および当該繊維の製造方法

【課題】機械的強度を有しつつ、高温条件下における高い収縮性有するパラ型全芳香族ポリアミド繊維および当該繊維の製造方法を提供する。
【課題手段】パラ型全芳香族ポリアミド繊維の製造にあたり、熱延伸工程を経た後に、低酸素雰囲気下で特定温度範囲において熱処理する。具体的には、熱延伸工程を経た後に、酸素濃度が1体積%以下の雰囲気において、450〜550℃の温度で熱処理を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラ型全芳香族ポリアミド繊維および当該繊維の製造方法に関する。さらに詳しくは、機械的強度を有しつつ、高温条件下において高い収縮性を有するパラ型全芳香族ポリアミド繊維および当該繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸ジハライドとから製造される全芳香族ポリアミドは、耐熱性および難燃性に優れている。このため、全芳香族ポリアミ繊維は、耐熱・難燃性繊維として有用であり、これらの特性を発揮する分野、例えば、フィルター、電子部品等の産業用途や、耐熱性、防炎性、耐炎性が重視される防護衣等の防災安全衣料用途等において用いられている。
【0003】
なかでも、防護衣は、溶鉱炉、電気炉、焼却炉等の高温炉前で着用する防護衣、消火作業に従事する人のための消防衣料、高温火花を浴びる溶接作業用の溶接防護衣、引火性の強い薬品を取り扱う人のための難燃作業服等として、幅広く使用されている。
しかしながら、火炎現場への早期突入、火元へのさらなる接近、消防隊員等に対するさらなる安全性の向上を求めて、防護衣における耐火性、耐炎性、耐熱性の要求はつきることがなく、さらなる高いレベルが求められていた。
【0004】
そこで、防護衣の防火性能を向上させることを目的として、近年では、積層構造体の内部に空気層を持たせることにより、遮熱性を向上させた積層防護衣料が提案されている(特許文献1および2参照)。
特許文献1および2においては、熱収縮性の異なる素材を異なる層として使い分けることにより、火炎暴露時における熱収縮性の違いを利用し、積層構造体に空隙を生じさせる。
【0005】
ここで、メタ型の全芳香族ポリアミド繊維については、繊維の結晶構造をコントロールすることにより、強度を保持しつつ、繊維を高収縮率化する手法が提案されている(特許文献3参照)。しかしながら、メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、本来、機械的強度が十分に高くないことから、防護服として用いるにあたっては、布帛強度を確保するために総目付けを高くする必要があり、その結果、得られる防護服の重量が増加するという問題があった。
したがって、機械的強度を有するパラ型全芳香族ポリアミド繊維等であって、高収縮率性を有する繊維が期待されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2006−516306号公報
【特許文献2】特表2005−507468号公報
【特許文献3】特開昭63−235523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術を背景になされたものであり、その目的とするところは、機械的強度を有しつつ、高温条件下における高い収縮性を有するパラ型全芳香族ポリアミド繊維および当該繊維の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、パラ型全芳香族ポリアミド繊維の製造にあたり、熱延伸工程を経た後に、低酸素雰囲気下で特定温度範囲において熱処理すれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、500℃乾熱収縮率が10%以上であり、引張強度が18cN/dtex以上であるパラ型全芳香族ポリアミド繊維である。
また別の本発明は、上記物性を有するパラ型全芳香族ポリアミド繊維の製造方法であって、熱延伸工程を経た後に、酸素濃度が1体積%以下の雰囲気において、450〜550℃の温度で熱処理することを特徴とするパラ型全芳香族ポリアミドの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維は、機械的強度を有しつつ、高温条件下における高い収縮性を有する。したがって、本発明の繊維は、遮熱性に優れた防護衣料用の繊維素材として極めて有用であり、防護衣料の耐炎性のみならず、軽量化に対しても極めて有効である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<パラ型全芳香族ポリアミド>
本発明におけるパラ型全芳香族ポリアミドとは、1種または2種以上の2価の芳香族基が、アミド結合により直接連結されたポリマーである。芳香族基には、2個の芳香環が酸素、硫黄、または、アルキレン基を介して結合されたもの、あるいは、2個以上の芳香環が直接結合したものも含む。さらに、これらの2価の芳香族基には、メチル基やエチル基等の低級アルキル基、メトキシ基、クロル基等のハロゲン基等が含まれていてもよい。なお、2価の芳香族基を直接連結するアミド結合の位置は、パラ型である。
【0012】
<パラ型全芳香族ポリアミドの製造方法>
本発明におけるパラ型全芳香族ポリアミドは、従来公知の方法にしたがって製造することができる。例えば、アミド系極性溶媒中で、芳香族ジカルボン酸クロライド成分と、芳香族ジアミン成分とを反応せしめることにより、芳香族ポリアミドのポリマー溶液を得ることができる。
【0013】
[パラ型全芳香族ポリアミドの原料]
(芳香族ジカルボン酸ジクロライド成分)
本発明に用いられるパラ型全芳香族ポリアミドの原料となる芳香族ジカルボン酸クロライド成分としては、特に限定されるものではなく、一般的に公知なものを用いることができる。例えば、テレフタル酸クロライド、2−クロルテレフタル酸クロライド、2,5−ジクロルテレフタル酸クロライド、2,6−ジクロルテレフタル酸クロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド等を挙げることができる。また、これらの芳香族ジカルボン酸ジクロライドは、1種類のみならず2種類以上を用いることができ、その組成比は特に限定されるものではない。これらのなかでは、汎用性や得られる繊維の機械的物性等の観点から、テレフタル酸ジクロライドが好ましい。
【0014】
(芳香族ジアミン成分)
本発明に用いられるパラ型全芳香族ポリアミドの原料となる芳香族ジアミン成分としては、特に限定されるものではなく、一般的に公知なものを用いることができる。例えば、p−フェニレンジアミン、2−クロル−p−フェニレンジアミン、2,5−ジクロル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジクロル−p−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン等を挙げることができる。これらは、1種類のみならず2種類以上を用いることができ、その組成比は特に限定されるものではない。
【0015】
これらのなかでは、得られる繊維の機械的強度の観点から、p−フェニレンジアミン、および、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルを単独で使用、あるいは併用することが好ましく、p−フェニレンジアミンと3,4’−ジアミノジフェニルエーテルとの組み合わせが最も好ましい。パラフェニレンジアミンと3,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを組み合わせて用いる場合には、その組成比は特に限定されるものではないが、全芳香族ジアミン量に対して、それぞれ30〜70モル%、70〜30モル%とすることが好ましく、さらに好ましくは、それぞれ40〜60モル%、60〜40モル%、最も好ましくは、それぞれ45〜55モル%、55〜45モル%とする。
【0016】
(芳香族ジカルボン酸ジクロライド成分と芳香族ジアミン成分の組み合わせ)
したがって、本発明に用いられるパラ型全芳香族ポリアミドとしては、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド、ポリパラフェニレンテレフタルアミド等を挙げることができる。
【0017】
[原料組成比]
芳香族ポリアミドの原料となる上記の芳香族ジカルボン酸クロライド成分と芳香族ジアミン成分との比は、芳香族ジアミン成分に対する芳香族ジカルボン酸クロライド成分のモル比として、0.90〜1.10の範囲とすることが好ましく、0.95〜1.05の範囲とすることがより好ましい。芳香族ジカルボン酸クロライド成分のモル比が0.90未満または1.10を超える場合には、芳香族ジアミン成分との反応が十分に進まず、高い重合度が得られないため好ましくない。
【0018】
[反応条件]
芳香族ジカルボン酸クロライド成分と芳香族ジアミン成分との反応条件は、特に限定されるものではない。酸クロライドとジアミンとの反応は一般に急速であり、反応温度としては、例えば、−25℃〜100℃の範囲とすることが好ましく、−10℃〜80℃の範囲とすることがさらに好ましい。
【0019】
[重合溶媒]
本発明に用いられるパラ型全芳香族ポリアミドの重合に用いられる溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという場合もある)、N−メチルカプロラクタム等の有機極性アミド系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の水溶性エーテル化合物、メタノール、エタノール、エチレングリコール等の水溶性アルコール系化合物、アセトン、メチルエチルケトン等の水溶性ケトン系化合物、アセトニトリル、プロピオニトリル等の水溶性ニトリル化合物等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独であっても、また、2種以上の混合溶媒として使用することも可能である。なお、用いられる溶媒は、脱水されていることが望ましい。
【0020】
本発明に用いられるパラ型全芳香族ポリアミドの製造においては、汎用性、有害性、取り扱い性、パラ型全芳香族ポリアミドに対する溶解性等の観点から、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いることが最も好ましい。
【0021】
[その他重合条件等]
生成するパラ型全芳香族ポリアミドの溶解性を挙げるために、重合前、途中、終了時のいずれかに、一般に公知の無機塩を適当量添加しても差し支えない。このような無機塩としては、例えば、塩化リチウム、塩化カルシウム等が挙げられる。
また、パラ型全芳香族ポリアミドの末端は、封止することもできる。末端封止剤を用いて末端を封止する場合には、例えば、フタル酸クロライドおよびその置換体、アニリンおよびその置換体等を末端封止剤として用いることができる。
【0022】
また、生成する塩化水素のごとき酸を捕捉するために、脂肪族や芳香族のアミン、第4級アンモニウム塩等を併用することもできる。
反応の終了後は、必要に応じて、塩基性の無機化合物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム等を添加し、中和反応を実施してもよい。
【0023】
[重合後処理等]
上記のようにして得られるパラ型全芳香族ポリアミドは、アルコール、水等の非溶媒に投入して沈殿せしめ、パルプ状にして取り出すことができる。取り出されたパラ型全芳香族ポリアミドを再度他の溶媒に溶解し、その後に繊維の成形に供することもできるが、重合反応によって得たポリマー溶液をそのまま紡糸用溶液(ドープ)に調整して用いることも可能である。一度取り出してから再度溶解させる際に用いる溶媒としては、パラ型全芳香族ポリアミドを溶解するものであれば特に限定されるものではないが、上記パラ型全芳香族ポリアミドの重合に用いられる溶媒とすることが好ましい。
【0024】
<パラ型全芳香族ポリアミド繊維の製造方法>
本発明のパラ型全芳香族ポリアミド繊維の製造方法においては、湿式紡糸法または半乾半湿式紡糸法が採用される。すなわち、先ず、パラ型全芳香族ポリアミドと溶媒とを含む紡糸用溶液(ポリマードープ)を、紡糸口金から吐出して凝固糸を形成する。その後、凝固糸に含まれる溶媒を除去した後、熱延伸を行い、引き続き、低酸素雰囲気下で特定温度範囲で熱処理することで、最終的なパラ型全芳香族ポリアミド系繊維を得る。
【0025】
以下、パラ型全芳香族ポリアミドの製造方法について、工程ごとに分けて説明する。
[紡糸用溶液(ポリマードープ)調整工程]
パラ型全芳香族ポリアミド繊維を得るにあたっては、先ず、紡糸用溶液(ポリマードープ)調整工程において、パラ型全芳香族ポリアミドと溶媒とを含む紡糸用溶液(ポリマードープ)を調整する。
【0026】
パラ型全芳香族ポリアミドおよび溶媒を含む紡糸用溶液(ドープ)を調整する方法としては、特に限定されるものではない。また、紡糸用溶液(ドープ)の調製に用いられる溶媒としては、上記したパラ型全芳香族ポリアミドの重合に用いられる溶媒を使用することが好ましい。なお、用いられる溶媒は1種単独であっても、2種以上の溶媒を混合した混合溶媒であってもよい。本発明の製造方法においては、パラ型全芳香族ポリアミドの製造によって得られたポリマー溶液から当該ポリマーを単離することなく、そのまま用いることも可能である。
【0027】
また、繊維に機能性等を付与する目的で、本発明の要旨を超えない範囲において、添加剤等のその他の任意成分を配合してもよい。添加剤等を配合する場合には、ドープの調整において導入することができる。導入の方法は特に限定されるものではなく、例えば、ドープに対して、ルーダーやミキサ等を使用して導入することができる。
【0028】
なお、紡糸用溶液(ドープ)におけるポリマー濃度、すなわちパラ型全芳香族ポリアミドの濃度は、0.5〜30質量%の範囲とすることが好ましく、1〜20質量%の範囲とすることがさらに好ましい。紡糸用溶液(ドープ)におけるポリマー濃度が0.5質量%未満の場合には、ポリマーの絡み合いが少ないため紡糸に必要な粘度を得ることができず、紡糸時の吐出安定性が低下してしまう。一方で、ポリマー濃度が30質量%を超える場合には、ドープの粘性が急激に増加することから紡糸時の吐出安定性が低下し、紡糸パック内の急激な圧上昇により、安定的に紡糸することが困難となる。
【0029】
[紡糸・凝固工程]
次に、紡糸・凝固工程において、上記で得られた紡糸用溶液(ポリマードープ)を紡糸口金から吐出し、凝固液中を通過させることにより凝固させ、凝固糸を得る。
紡糸にあたっては、紡糸用溶液(ポリマードープ)を凝固浴中に直接吐出してもよいし、あるいは、空気または不活性気体からなるエアギャップを設け、エアギャップを介して凝固浴中に吐出してもよい。
【0030】
凝固浴に充填される凝固液としては、一般的に、芳香族ポリアミドの貧溶媒が用いられる。このとき、芳香族ポリアミドドープから溶媒があまりに急速に抜け出して、形成される凝固糸に欠陥ができないように、良溶媒を添加して凝固速度を調節するのが通常である。一般には、貧溶媒としては水、良溶媒としては芳香族ポリアミドドープ用の溶媒を用いることが好ましい。良溶媒/貧溶媒の組成比は、用いる芳香族ポリアミドの溶解性や凝固性によって適宜選択すればよいが、一般的に15/85〜40/60の範囲とすることが好ましい。
なお、凝固液の温度としては特に限定されるものではなく、凝固液の組成、および、用いる芳香族ポリアミドの溶解性や凝固性によって、適宜設定することができる。
【0031】
[延伸工程]
また、パラ型全芳香族ポリアミド繊維の製造にあたっては、機械的強度を向上させることを目的として、延伸により繊維に配向を与えるのが一般的である。延伸の場所としては特に限定されるものではなく、紡糸・凝固工程の直後に、凝固糸の状態での水洗延伸、沸水延伸等を実施してもよい。
【0032】
[熱延伸工程]
本発明においては、熱延伸工程において、未延伸の凝固糸あるいは延伸が実施された凝固糸に対して、当該凝固糸を乾燥して乾燥糸とした後に、乾燥糸の状態で熱延伸を行うことが必要である。
【0033】
未延伸の凝固糸あるいは延伸が実施された凝固糸の段階では、繊維はまだ十分には配向していない。このため、本発明においては、凝固糸を乾燥して乾燥糸をした後、熱延伸を実施する。この熱延伸により、繊維を形成するパラ型芳香族ポリアミドは高度に配向し、かつ、結晶化するため、十分な機械的強度を有する繊維となる。
熱延伸の温度は、パラ型全芳香族ポリアミドのポリマー骨格にもよるが、300℃以上550℃以下とすることが好ましい。また、延伸倍率は10倍以上とすることが好ましい。
【0034】
[低酸素熱処理工程]
上記の熱延伸工程を経た繊維は、高度に配向および結晶化が進んでおり、既に機械的強度は十分に発現している。しかしながら、本発明の課題である高温条件下における高い収縮特性は得られない。そこで、本発明においては、熱延伸工程を経た後の繊維に対して、低酸素熱処理工程にて、低酸素雰囲気下で特定温度範囲において熱処理を実施する必要がある。
低酸素熱処理工程における酸素濃度は、1体積%以下とする。好ましくは0.5体積%以下である。酸素濃度が1体積%を超える場合には、存在する酸素によりポリマー鎖の分解が促進され、十分な引張強度が得られなくなる。
【0035】
熱処理温度は、450〜550℃の範囲とする必要がある。熱処理温度が450℃未満の場合には、繊維の非晶部の配向を変化させることができず、このため、高収縮性を発現させることが困難となる。一方で、550℃を超える場合には、繊維が熱劣化を引き起こすために、十分な引張強度が得られなくなる。
また、熱処理時間は、1分以下とすることが望ましい。熱処理時間が1分を超える場合には、ポリマー鎖の分解が促進され、十分な引張強度が得られなくなる。
【0036】
<パラ型全芳香族ポリアミド繊維の物性>
本発明の製造方法によって得られるパラ型全芳香族ポリアミド繊維は、500℃乾熱収縮率が10%以上であり、引張強度が18cN/dtex以上である。
【実施例】
【0037】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって何ら限定されるのものではない。
【0038】
<測定・評価方法>
実施例および比較例における各特性値は、以下の方法により測定・評価を行った。
【0039】
(1)繊度
JIS−L−1015 B法に準じ、測定した。
【0040】
(2)引張強度
引張試験機(オリエンテック社製、商品名:テンシロン万能試験機、型式:RTC−1210A)を用いて、ASTM D885の手順に基づき、以下の条件にて測定を実施した。
[測定条件]
測定試料長 :500mm
初荷重 :0.2cN/dtex
引張速度 :250mm/min
【0041】
(3)500℃乾熱収縮率
繊維の初期長をLoとし、当該繊維に対して500℃雰囲気の乾燥熱処理を10分間施した後の繊維長をLとしたとき、下記式により計算される(S)を乾熱収縮率とした。
[式1]
S(%)=(Lo−L)/Lo×100
【0042】
<実施例1>
コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド(98%濃度の濃硫酸中、ポリマー濃度0.5g/dLの溶液について30℃で測定した固有粘度(IV)=3.4)の濃度6質量%のNMP溶液を、紡糸用溶液として調整した。
得られた紡糸用溶液を孔数25ホールの紡糸口金から吐出し、エアギャップ約10mmを介して、NMP濃度30質量%の水溶液中に紡出して凝固させた後(半乾半湿式紡糸法)、水洗、乾燥し、温度530℃下で10倍に熱延伸した。
引き続き、熱延伸が施された繊維に対して、温度500℃下、酸素濃度0.2体積%の雰囲気で30秒間の熱処理を行いった。熱処理後の繊維を巻き取ることにより、42dtex/25filのパラ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。
得られた繊維の物性等を表1に示す。
【0043】
<実施例2〜5、比較例1〜5>
熱処理条件を表1に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてパラ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維の物性等を表1にまとめて示す。
【0044】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の製造方法によって得られるパラ型全芳香族ポリアミド繊維は、機械的強度を有しつつも、高温条件下における高い収縮性を有する。このため、織物、編物、不織布等の布帛のほか、組紐、ロープ、撚糸コード、ヤーン、綿等の繊維構造物を構成することができ、とりわけ、高温条件下における高い収縮性が求められる、積層防護衣を構成する布帛として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
500℃乾熱収縮率が10%以上であり、引張強度が18cN/dtex以上であるパラ型全芳香族ポリアミド繊維。
【請求項2】
前記パラ型全芳香族ポリアミド繊維が、コポリパラフェニレン−3、4’オキシジフェニレンテレフタラミド繊維である請求項1記載のパラ型全芳香族ポリアミド繊維。
【請求項3】
請求項1または2に記載のパラ型全芳香族ポリアミド繊維の製造方法であって、
熱延伸工程を経た後に、酸素濃度が1体積%以下の雰囲気において、450〜550℃の温度で熱処理することを特徴とするパラ型全芳香族ポリアミド繊維の製造方法。

【公開番号】特開2011−236511(P2011−236511A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106408(P2010−106408)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】