説明

パリソン形成方法とこの形成方法で形成したパリソンを用いるブロー成形方法

【課題】パリソンの肉厚制御と相俟って、ブロー成形に必要な長さと肉厚輪郭形状及び所望重量のパリソン安定化方法を提供する。
【解決手段】パリソンリフター80の下降速度切換位置をプログラマー10のプロファイル画面で指定されたポイントをパルス信号としてPLC演算装置110に出力する。PLC演算装置110において、パリソンリフター速度設定部130から入力されるパリソンリフター速度設定値とポイントに基づいてポイントに対応するモーター速度を求め、モータードライバー100にモーター速度指令信号を出力する。次いで、モータードライバー100で速度指令信号に基づいてサーボモーター90を駆動制御して、前記パリソンリフター80の下降速度切換位置毎で、パリソンリフター80の下降速度を増減する。この下降速度の増減と、コア30の位置変位による肉厚制御都により、所望輪郭、長さ、肉厚寸法のパリソンPを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブロー成形用の熱可塑性合成樹脂製のパリソンを形成する方法とこの形成方法で形成したパリソンを用いるブロー成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のブロー成形においては、アキューム方式があり、アキューム方式では、射出開始時にダイリップ部分で熱可塑性合成樹脂製のパリソンのまくれ込みが起こり易く、またプリーツ状の皺が発生し易い。
このアキューム方式の前記現象を低減する方式として押出方式がある(特許文献1及び特許文献2)。特許文献1及び特許文献2には、パリソンリフターで発泡したパリソンを延伸成形する方法が記載されているが、パリソンの肉厚制御を考慮した発明ではない。この結果、殊にドローダウンが激しく成形性が悪い熱可塑性合成樹脂製のパリソンの形成を安定良く行えない傾向にあり、改良する余地がある。
【先行技術文献】
【0003】
【特許文献】
【特許文献1】 特開昭52ー144060号公報
【特許文献2】 特開2000ー268010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本件発明の目的はアキューム方式、連続押出方式を問わず、ダイとコアの相対的な位置を調整、制御しダイリップから押出されるパリソンの肉厚を制御しながら、この押出されるパリソンの下端を把持しダイヘッドからパリソンを押出す押出速度より速い速度で下降するチャックつきのパリソンリフターの下降速度の切換位置を適宜出力しパリソンリフターの下降速度を、適宜切換え制御することにより、ブロー成形に必要な寸法と所望重量をパリソンに付与可能とし、パリソンの形成を安定化することである。
更に、本件発明の他の目的は、ドローダウンが激しく成形性が悪い材料からなるパリソンの形成をも安定良く行えるようにし、かつ肉厚変化のある長物成形品、例えばダクト、パネルなどでも安定良くブロー成形するに適したパリソンを形成可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、特定発明は、ダイに対してコアを位置変位させてパリソンの肉厚を制御して、所定寸法のパリソンを形成する方法において、ダイリップから押出されたパリソン下端部を把持し金型内に引き込むパリソンリフターの下降速度を制御し調整することにより、パリソンをブロー成形金型内に引き込む際に、前記パリソンリフターの下降速度切換位置毎で、パリソンリフターの下降速度を増減し、前記コアの位置変位による肉厚制御と相俟って、所望輪郭、長さ、肉厚寸法のパリソンを形成することを特徴とするパリソン形成方法としてある。
好ましくは前記パリソンリフターの下降速度切換位置をプログラマーのプロファイル画面で任意に指定し、この指定したポイントをパルス信号としてPLC演算装置に出力し、前記パリソンリフターの下降速度切換位置毎で、パリソンリフターの下降速度を増減することが制御上好ましい。
若しくは、パリソンプログラマーのプロファイルポイント全点パルス出力を、PLC演算装置で取込み、PLC内にカウンターを設定して所定何パルス目度でリフターの切換点を作り、前記切換点毎で、パリソンリフターの下降速度を増減することもある。
例えば、前記パリソンリフターの下降速度切換位置を少なくとも3箇所とすることがパリソンの形成に望ましい。
関連発明は、請求項1、2または3記載の形成方法で形成したパリソンを用いてブロー成形することを特徴とするブロー成形方法としてある。
また、前記ダイヘットに接続した押出機のスクリュウ駆動装置は、前記肉厚制御と並行して前記パリソンプログラマーからの開始信号を受信するタイマで駆動制御される事が、パリソンの安定化のために好ましい。
【発明の効果】
【0006】
特定発明においては、前記パリソンリフターの下降速度切換位置毎で、前記パリソンリフターの下降速度を増減し、前記コアの位置変位による前記肉厚制御と相俟って、所望輪郭、長さ、肉厚寸法のパリソンを形成することにより、ブロー成形に必要な長さと肉厚輪郭形状及び所望重量をパリソンに付与出来る。この結果、パリソンの形成を安定化することである。
更に、ドローダウンが激しく成形性が悪い材料からなるパリソンの形成をも安定良く行え、かつ肉厚変化のある長物成形品、例えばダクト、パネルなどでも安定良くブロー成形できる。
前記を要すれば、前記パリソンがドローダウンする影響を軽減して、所定プロファイルの肉厚を有するパリソンを安定良く形成でき、その結果、パリソンの重量と長さを所定値とし、ブロー成形品の肉厚を所定値に安定することができる。
更に、プリーツ状の皺の発生を低減して、パリソンを無駄なく形成できる。この結果、原料を節約し、冷却時間を短縮でき、生産量をアップ出きる。
請求項6記載の発明においては、前記パリソン形成方法に関する効果を奏するパリソンを用いることにより、前記効果を発揮でき、所定肉厚、輪郭形状のブロー成型品を成形できる。これに加えて、前記パリソンリフターの下降速度切換位置毎で、パリソンリフターの下降速度を前記のように増減する事で、パリソンの長手方向肉厚分布を調整しながら前記コアの位置変位による肉厚制御との相乗作用により、最小ブロー成形可能な成形品重量を軽量化できる。この効果は、殊に連続押出方式において顕著である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】 本件発明の方法を実施する装置の概略図である。
【図2】 パリソンリフターの下降速度の切換位置と変化を示す作動線図である。
【図3】 前記パリソンリフターが上限位置にある状態を示す概略図である。
【図4】 下限位置に前記パリソンリフターが下降した状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態1
この形態は、請求項1、2、4及び6記載の発明を実施する連続押出方式のブロー成形装置に用いられるパリソン形成装置の代表的な実施の態様である。図1において、10は前記パリソン形成装置におけるパリソンプログラマーを示し、ダイ20に対してコア30を位置変位させて熱可塑性合成樹脂製のブロー成形用のパリソンPの肉厚を制御する機能を有する。一例としては、前記コア30を上下動作させるためにサーボバルブまたは油圧シリンダーからなるパリソン肉厚制御用アクチュエーター40がダイヘッド50に配備されている。
前記コア30の位置を検出する検出装置60が前記ダイヘッド50に設けられている。
1ショットの樹脂量を計測するためにポテンショメータが前記パリソンプログラマー10に組み込まれ、このポテンショメータは、1ショットを例えば30点に分割し、各点のコア位置をプロファイルする機能を有する。このプロファイル位置と検出装置60で検出されたコア位置の偏差をパリソン肉厚制御用アクチュエーター40に与える。この際、パリソン肉厚制御用アクチュエーター40への出力とコア位置は、閉ループを構成し、パリソンPの肉厚を制御して、所定寸法の前記パリソンPを形成可能としてある。
更に前記ダイヘッド50のダイリップ70から押出す時にパリソンP下端部である下バリ部分を前記ダイヘッド50下方の上限位置において把持するパリソンリフター80が、前記上限位置とブロー金型の型締め高さより下方の下限位置間で昇降可能に配備されている。
前記パリソンリフター80を前記ダイヘッド50の上限位置から前記下限位置まで下降して、前記パリソンPをブロー成形金型内に引き込むに十分な寸法形成するべく、パリソンリフター上下駆動装置であるサーボモーター90が前記パリソンリフター80に連結されている。
前記パリソンリフター80の下降速度切換位置を指定し、出力する機能を前記パリソンプログラマー10は有する。
具体的には、前記パリソンリフター80の下降速度切換位置はパリソンプログラマー10のプロファイル画面で任意に指定され、指定されたポイントはパルス信号としてシーケンス制御専用のマイクロコンピューターを利用した制御装置である演算装置(以下PLC演算装置と言う)110にパリソンプログラマー10から出力され、パリソンリフター速度設定部130から入力されるパリソンリフター速度設定値と前記ポイントに基づいてPLC演算装置110は、前記ポイントに対応するモーター速度を求め、モータードライバー100に求めたモーター速度指令信号を出力するように構成されている。
前記モータードライバー100は前記モーター速度指令信号に基づいて前記サーボモーター90を駆動制御して、前記パリソンリフター80の下降速度切換位置毎で、パリソンリフター80の下降速度を増減可能に設けられている。
換言すれば、前記パリソンリフター80の下降速度を前記指定され、出力される下降速度切換位置毎にサーボモーター90の回転数を増減するためのモータードライバー100が前記サーボモーター90に電気的に接続されている。
【0009】
前記構成の装置の作用を本件発明の代表的実施態様として説明する。前記ダイヘッド50に連結した押出機120を始動しパリソンPを押出すと共に、前記パリソンプログラマー10に組み込まれた前記ポテンショメータで1ショットを例えば30点に分割し、各点のコア位置をプロファイルし、このプロファイル位置と前記検出装置60で検出されたコア位置の偏差をパリソン肉厚制御用アクチュエーター40に与える。この際、パリソン肉厚制御用アクチュエーター40への出力とコア位置は、閉ループを構成し、パリソンPの肉厚を制御する。
これと並行して、前記ブロー成形金型がダイヘッド50の下方から待避している状態で、前記ダイヘッド50のダイリップ70から押出されるパリソンP下端部である下バリ部分を前記ダイヘッド50下方の上限位置において前記パリソンリフター80で把持する(図3参照)。次いで前記ダイヘッド50下方の上限位置から前記ブロー成形金型の型締め高さより下方の下限位置に向けて前記パリソンリフター80を下降して、前記パリソンPをブロー成形金型内に引き込むに十分な寸法形成するべく、前記サーボモーター90を前記モータードライバー100で前記速度指令信号に基づいて駆動制御する。
パリソンリフター80の下降時に前記ブロー成形金型をダイヘッド50真下に前進して、パリソンPをブロー成形金型内に位置させる。
この下降工程において、前記パリソンリフター80の下降速度切換位置をプログラマー10のプロファイル画面で任意に指定し、指定されたポイントをパルス信号として前記PLC演算装置110に出力する。
前記PLC演算装置110において、パリソンリフター速度設定部130から入力されるパリソンリフター速度設定値と前記ポイントに基づいてポイントに対応するモーター速度を求め、前記モータードライバー100にモーター速度指令信号を出力する。次いで、前記モータードライバー100で速度指令信号に基づいて前記サーボモーター90を駆動制御して、前記パリソンリフター80の下降速度切換位置毎で、パリソンリフター80の下降速度を増減する(図2参照)この際、前記押出機120のスクリュウ駆動装置であるモーター150は、前記肉厚制御と並行して前記パリソンプログラマー10からの開始信号を受信するタイマ、或いはパリソンプログラマー10からのパルス信号を起点として、ドライバー140により駆動され、このスクリュウ回転が切換駆動制御される。
【0010】
即ち、前記パリソンリフター80の下降速度を前記指定され出力される下降速度切換位置毎にサーボモーター90の回転数を増減するモータードライバー100により、前記サーボモーター90を駆動制御する。この際、前記パリソンリフター80の下降速度切換位置を4箇所とし(図2におけるPOINTOUT1参照)、ダイリップ70寄りの下降速度切換位置では前記パリソンリフター80の下降速度を高速とし、前記パリソンPを引き下げ、次の下流の下降速度切換位置では前記パリソンリフター80の下降速度を低速に切換え、最下流寄りの下降速度切換位置では更に低速とし、前記ブロー成形金型の型締め高さより下方まで前記パリソンリフター80を下降する。
前記下降速度切換位置毎に前記パリソンリフター80の下降速度を増減する事と、前記コア30の位置変位による前記肉厚制御する事を並行し、前記パリソンプログラマー10からの指令信号に基づいて行い、その相互作用で、所望輪郭、長さ、肉厚寸法のパリソンPを形成する。
更に、前記パリソンリフター80を前記下限位置まで下降した(図4参照)後、前記ブロー成形金型を型締めする。次いで前記押出機120を停止し、ブロー成形金型を前記ダイヘッド50の真下から製品取出し側に後退させて、パリソンPにエアを吹き込み、ブロー成形する。
このブロー成形中に前記パリソンリフター80を前記ダイヘッド50下方の上限位置に上昇復帰させて(図3参照)、押出機120を再稼動させて、前記パリソン形成とブロー成形を繰り返す。このようにして連続押出方式でパリソンPを形成し、ブロー成形する。
実施の形態2
この形態は。請求項3記載の発明の代表的な実施の形態である。
実施の形態1と異なる構成は次の通りである。
パリソンプログラマー10を100点式とし100パルスを出力し(図2におけるPOINT OUT2)、PLC演算装置110で、カウンターを設定して所定何パルス目度でパリソンリフター80の前記下降速度切換点を作る。
次いで、前記PLC演算装置110にパリソンリフター速度設定部130から入力されるパリソンリフター速度設定値とこの切換点に基づいて前記PLC演算装置110でモーター速度指令信号を求め、前記モータードライバーに切換点に対応する前記モーター速度指令信号を出力する。
次いで前記モーター速度指令信号に基づいて前記モータードライバー100により前記サーボモーター90を駆動制御して、前記パリソンリフター80の下降速度切換位置毎で、パリソンリフター80の下降速度を増減する。その他は、実施の形態1と同様である。
なお、前記の実施の形態では、押出方式としたが、アキューム方式でも適用できる。
このアキューム方式において、前記ダイヘッド50がアキューム式で、その射出動作は、前記実施の形態1同様に肉厚制御と並行して前記パリソンプログラマー10からのパルス信号を起点として、射出速度が切換制御される。(請求項5記載の発明の代表的な実施の形態に対応。)そのほかは実施の形態1と同じである。
【符号の説明】
【0011】
10 パリソンプログラマー
20 ダイ
30 コア
80 パリソンリフター
90 サーボモーター
100 パリソンリフター用モータードライバー
110 PLC
120 押出機
130 パリソンリフター速度設定部
140 押出機のスクリュウ回転駆動用ドライバー
150 押出機駆動モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイに対してコアを位置変位させてパリソンの肉厚を制御して、所定寸法のパリソンを形成する方法において、ダイリップから押出されたパリソン下端部を把持し金型内に引き込むパリソンリフターの下降速度を制御し調整することにより、パリソンをブロー成形金型内に引き込む際に、前記パリソンリフターの下降速度切換位置毎で、パリソンリフターの下降速度を増減し、前記コアの位置変位による肉厚制御と相俟って、所望輪郭、長さ、肉厚寸法のパリソンを形成することを特徴とするパリソン形成方法。
【請求項2】
前記パリソンリフターの下降速度切換位置をプログラマーのプロファイル画面で任意に指定したポイントとし、このポイントをパルス信号として前記PLC演算装置に出力し、前記パリソンリフターの下降速度切換位置毎で、パリソンリフターの下降速度を増減することを特徴とする請求項1記載のパリソン形成方法。
【請求項3】
パリソンプログラマーのプロファイルポイント全点パルス出力を、PLC演算装置で取込み、PLC内にカウンターを設定して所定何パルス目度でリフターの切換点を作り、前記切換点毎で、パリソンリフターの下降速度を増減することを特徴とする請求項1記載のパリソン形成方法。
【請求項4】
前記ダイヘッドに接続した押出機のスクリュウ駆動装置は、前記肉厚制御と並行して前記パリソンプログラマーからの開始信号を受信するタイマ或いはパリソンプログラマーのプロファイル画面で任意に指定したポイントを切換位置の起点として、スクリュウ回転が切換制御されることを特徴とする請求項2又は3記載のパリソン形成方法。
【請求項5】
前記請求項1、2又は3記載のダイとコアからなるダイヘッドがアキューム式で、その射出動作は、前記肉厚制御と並行して前記パリソンプログラマーからのパルス信号を起点として、射出速度が切換制御されることを特徴とする請求項2又は3記載のパリソン形成方法。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載の形成方法で形成したパリソンを用いてブロー成形することを特徴とするブロー成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−6366(P2012−6366A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159123(P2010−159123)
【出願日】平成22年6月27日(2010.6.27)
【出願人】(000136723)株式会社プラコー (8)
【Fターム(参考)】