パルスモータの駆動方法
【課題】パルスモータの脱調を防止しながら、短時間でパルスモータの速度を目標速度まで増速させことを目的とする。
【解決手段】
上記課題を解決するために、本願発明のパルスモータの制御方法は、パルスモータの速度を第1の速度から第2の速度に増速させるまでの速度パターンを、曲線の傾きが漸増する単調増加の第1の速度曲線f1、一定の傾きをもつ単調増加の第2の速度直線f2、曲線の傾きが漸減する単調増加の第3の速度曲線f3の順で変化させ、前記第1の速度曲線f1は、前記第3の速度曲線f3よりも設定時間が短いことを特徴とする。
【解決手段】
上記課題を解決するために、本願発明のパルスモータの制御方法は、パルスモータの速度を第1の速度から第2の速度に増速させるまでの速度パターンを、曲線の傾きが漸増する単調増加の第1の速度曲線f1、一定の傾きをもつ単調増加の第2の速度直線f2、曲線の傾きが漸減する単調増加の第3の速度曲線f3の順で変化させ、前記第1の速度曲線f1は、前記第3の速度曲線f3よりも設定時間が短いことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置などに使用されるパルスモータの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パルスモータは、パルスを印加するごとに複数のセグメントに分割されたコイルに流れる電流の向きあるいはON/OFFを切り替えることにより一定の角度ずつ回転するため、与えるパルス数に応じて回転角度を制御することできる。
【0003】
パルスレートに対応するパルスモータの設定回転速度を変化させた場合、実回転速度が設定回転速度に追従するようにパルスモータを加速又は減速させる。
【0004】
しかし、モータの回転子や機構部の慣性モーメントが大きい場合、実回転速度と設定回転速度との開きが大きい場合には、摩擦などによる抵抗負荷に慣性負荷が加わり、パルスモータが印加されるパルスに追従できなくなる脱調と呼ばれる現象が発生する。
【0005】
したがって、静止状態にあるパルスモータが追従できるパルスレートには、モータ回転子と機構部との慣性モーメントによって決まる上限値が存在し、この上限値を超えない範囲のパルスレートで起動することができる。モータのトルクは、パルスレートと駆動電流に依存するので、起動可能なパルスレートは駆動電流に依存する。
【0006】
また、加速時に、モータ回転子と機構部の加速に要する加速トルク、摩擦、重力、バネなどに抗して動作するための抵抗負荷トルクの和が、一定の値を超えると脱調が発生する。この脱調が発生するときのトルクをプルアウトトルクという。
【0007】
プルアウトトルクは、パルスレート値とコイルに流れる駆動電流に依存する。プルアウトトルクから抵抗負荷トルクを差し引いた残りのトルクが加減速に使うことができるトルクである。
【0008】
図1にパルスモータのプルアウトトルク曲線の例を示す。パルスモータにかかる負荷が、プルアウトトルクトルクよりも小さいに時に、パルスモータはパルスに追従して回転することができる。
【0009】
パルスモータの定速制御モードでは、起動可能なパルスレートのパルスでモータを駆動し、その後も起動時と同じパルスレートのパルスで駆動する。機構部が2地点間を移動する時間は、2地点間のパルス数をパルスレートで割ることにより算出される。
【0010】
パルスモータの台形制御モードでは、所定のパルスレートのパルスでモータを起動した後、又は、静止状態から、一定の加速度で加速を行い、所定の速度に達したら定速運転に移行し、終点の少し手前から一定の減速度で減速を行う。台形制御モードでは、平均速度を起動時の速度よりも速くすることができるため、定速制御モードより2地点間を移動する時間を短縮することができる。
【0011】
さらに、2地点間を移動する時間を短縮すると同時に、起動時や、加速から定速に移行する際の振動抑制のためにS字制御モードなどが用いられる。
【0012】
S字制御モードでは、サイン曲線あるいは二本の二次曲線を滑らかにつなげた曲線を加速曲線として使用する。始点と終点で加速度がゼロになるため、滑らかな動きが可能になるが、パルスモータのトルクを最大限に利用していないため、加速が遅くなり、最大パルスレートとパルスレートの変化率の最大値を等しくした場合には、台形制御モードに比べて2地点間の移動時間が長くなる。
【0013】
また、台形制御モードで駆動した場合と移動時間を同じにするためには、最大パルスレートあるいはパルスレートの最大変化率を大きく設定しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来の台形制御モードでは、加速時間中に加速度が一定であるため、加速に必要なトルクはパルスレートによらず一定である。パルスモータのプルアウトトルクは、低パルスレートではほぼ一定であるが、高パルスレートでは下降する。低パルスレートで高トルクを利用して加速度を大きくする場合には、高パルスレートでトルクが不足するため、使用できる最高パルスレートが制限された。また、高パルスレートまで加速するためには必要なトルクを減らすために加速度を落とす必要があった。
【0015】
また、従来のS字制御モードでは、加速領域の中間で加速度が最大になるが、加速度が最大になるパルスレートで加速トルクと抵抗負荷トルクの和をプルアウトトルクよりも小さく設定する必要があるため、加速初期と加速終期の加速度が低くなった。
【0016】
このように、台形制御モード、S字制御モードでは、起動から加速終了までの全パルスレートで加速トルクと抵抗負荷トルクの和がプルアウトトルクを超えないように加速度を設定すると、パルスモータのトルクとプルアウトトルクとの開きが大きくなる領域が生じた。
【0017】
また、パルスモータの代わりに、高速駆動の容易なDCサーボモータ、ACサーボモータなどを用いると、コストが増大する。
【0018】
そこで、本願発明は、パルスモータの脱調を防止しながら、短時間でパルスモータの速度を目標速度まで増速させことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本願発明のパルスモータの制御方法は、パルスモータの速度を第1の速度から第2の速度に増速させるまでの速度パターンを、曲線の傾きが漸増する単調増加の第1の速度曲線f1、一定の傾きをもつ単調増加の第2の速度直線f2、曲線の傾きが漸減する単調増加の第3の速度曲線f3の順で変化させ、前記第1の速度曲線f1は、前記第3の速度曲線f3よりも設定時間が短いことを特徴とする。
【0020】
ここで、第1の速度は図2の点1、つまり図3のt=0におけるパルスレート(P0)に対応しており、第2の速度は図2の点4、つまり図3のt=tcにおけるパルスレート(Pc)に対応している。また、第1の速度曲線f1は、図3の第1の速度二次曲線1に対応しており、第2の速度曲線f2は、図3の第2の速度直線2に対応しており、第3の速度曲線f3は、図3の第3の速度二次曲線3に対応している。
【0021】
このように、パルスモータを制御することにより、図2に図示するように、プルアウトトルクよりも僅かに低い値に加速トルク及び抵抗負荷トルクの和を設定した状態で、パルスモータを駆動することができる。
【発明の効果】
【0022】
本願発明によれば、短時間でパルスモータの速度を目標速度に増速することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図8、図9及び図10を参照しながら、本発明のパルスモータを適用した自動分析装置について説明する。図8及び図9は自動分析装置の反応容器供給部の平面図であり、図10は搬送アームやピックアップ装置11の駆動制御を行うためのブロック図である。
【0024】
これらの図において、ピックアップ装置(駆動装置)11は、搬送アーム(駆動装置)12に支持されており、ピックアップ装置搬送モータユニット53から駆動力を受けて搬送アーム12上をX軸方向にスライド移動する。
【0025】
この搬送アーム12は、Z軸ガイド14及びY軸ガイド13にガイドされており、Z軸用搬送アーム駆動モータユニット54から駆動力を受けて、Z軸方向に駆動され、Y軸用搬送アーム駆動モータユニット52から駆動力を受けて、Y軸方向に駆動される。
【0026】
これらの搬送アーム駆動モータユニット52、54及びピックアップ装置搬送モータユニット53の駆動源にはパルスモータが使用されており、CPU51から出力される信号に基づき、パルスモータの駆動が制御される。
【0027】
ピックアップ装置11には、容器ストレージラック3にマトリクス状に配置された反応容器31をピックアップするための容器ピックアップ装置(吸着ヘッド)21と、不図示のピペットチップをピックアップするためのチップピックアップ装置22が搭載されている。
【0028】
反応容器31には、測定対象物質に対する抗体等を固定した水不溶性固相や、測定対象物質に対する、酵素等で標識された標識抗体等の試薬が収容されており、分注液の注入などの各種操作に対応させるために上部開口が設けられており、この上部開口は密閉シールにより覆われている。なお、上記免疫測定用の反応容器31に代えて、試料中の微量生理活性物質を検出するために用いられる空の生化学反応用容器を用い、分析装置本体に搬送した後で試薬を分注することもできる。
【0029】
搬送レーン16は、X軸方向にスライド移動可能に設けられており、この搬送レーン16の略一端部に設定された容器載置予定位置16aに、容器ピックアップ装置21に吸着された反応容器31が搬送されるようになっている。
【0030】
このように、自動分析装置では、多数の反応容器31やピペットチップを搬送レーン16に搬送させる必要があり、搬送時間を短縮化することにより、自動分析装置の処理能力を向上させることができる。
【0031】
したがって、搬送アーム駆動モータユニット52、54及びピックアップ装置搬送モータユニット53の駆動源であるパルスモータの速度を短時間で最高速度に増速させる必要がある。特に、X、Y及びZ軸方向のうちY軸方向への駆動負荷が大きいため、Y軸用搬送アーム駆動モータユニット52に本願発明のパルスモータを適用するのが好ましい。そこで、本願発明では、パルスモータを下記のように制御している。
(実施例1)
本発明では、加速トルクと抵抗負荷トルクの和が、パルスモータのプルアウトトルクを超えないように設定する必要がある。上述したように脱調が生じるからである。
【0032】
ここで、加速トルクは、パルスモータの速度曲線の微分で得られる加速度と、パルスモータと負荷となる機構部の等価慣性モーメントから算出される。
【0033】
抵抗負荷トルクは、摩擦、重力、バネなどに抗して動かすためのトルクである。機構部が直線運動する場合は、適宜、機構の重量やプーリ径等を考慮してパルスモータの回転軸に対する等価慣性モーメントが算出される。また、機構部が歯車、ベルトなどの伝達機構を介して駆動される場合には、歯数比、プーリ比を考慮して等価慣性モーメントを算出することができる。
【0034】
パルスモータの加速パターンには、静止状態から連続的にパルスレートを増加させるか、有限の値のパルスレートで起動した後で連続的にパルスレートを増加させる方法がある。
【0035】
所定の二地点間の移動時間を短くするためには、平均パルスレートを引き上げることが好ましい。このため、加速開始後に加速度、つまりパルスレートの増加率を、数パルスでモータのプルアウトトルクから求められる上限値まで増加させることが好ましい。
【0036】
パルスレートの増加率の上限値は、プルアウトトルクに安全率を考慮して求めた値から負荷抵抗トルクを引いたトルクを回転子と負荷の慣性モーメントで割ることにより算出される。
【0037】
またパルスレートの増加率が、上限値に達した後は、パルスレートに応じた上限値を維持することが好ましい。具体的には、下記のようにパルスモータの速度を増速する。
【0038】
図2はプルアウトトルクと、搬送アーム12を駆動するために必要なトルク値とプルアウトトルク値との関係を示すトルク―速度線図である。同図において、点1はパルスモータが回転を開始する点を示しており、点2は加速度が最大値に達する点を示しており、点3は加速度が減少を開始する点を示しており、点4は加速が終了する点を示している。
【0039】
ここで、点1〜点4のパルスレートをそれぞれパルスレート1〜4とした場合に、図2は、(パルスレート2−パルスレート1)<(パルスレート4−パルスレート1)/10を満足し、パルスモータのプルアウトトルクが降下するパルスレートと点3のパルスレート3とが同じ値になるように設定している。
【0040】
実際には、パルスレート1=400CPS、パルスレート2=500CPS、パルスレート3=1000CPS、パルスレート4=3600CPSに設定した。
【0041】
次に、点1〜点4におけるパルスレートの変化率をそれぞれ4000CPS/s、24000CPS/s、24000CPS/s、4000CPS/sに設定し、速度変化を示す速度パターンは、点1と点2の間が単調増加で傾きが漸増する第1の速度二次曲線1(第1の速度曲線)、点2と点3との間が単調増加の第2の速度直線2(第2の速度直線)、点3と点4との間が単調増加で傾きが漸減する第3の速度二次曲線3(第3の速度曲線)である。なお、漸増するとは、時間経過に応じて徐々に増えるという意味であり、増加率が一定である場合も、異なる場合も含まれる。漸減についても同様である。
【0042】
ここで、第1の速度二次曲線1、第2の速度直線2、第3の速度二次曲線3は滑らかにつながっている。つまり、第1の速度二次曲線1の終点(第2の速度直線2に合流する点)での傾きは、第2の速度直線2の傾きに等しく、第3の速度二次曲線3の始点(第2の速度直線2に合流する点)での傾きは、第2の速度直線2に等しい。これにより、速度パターンを切り替える際に、機構の振動を効果的に抑制することができる。
【0043】
ここで、第1の速度二次曲線1をf1とおくと、f1=(Pa−Px){(t−tx)/(t1−tx)}2+Pxである。また、第2の速度直線2をf2とおくと、f2=(Pb−Pa){(t−ta)/(tb−ta)}+Paである。また、第3の速度二次曲線3をf3とおくと、f3=(Pb−Py){(ty−t)/(ty−tb)}2+Pyである。
【0044】
ただし、tx及びPxはそれぞれ、第1の速度二次曲線f1の傾きが0であるときの仮想的な時間及びパルスレートを示しており、t0及びP0はそれぞれ、第1の速度曲線の始点での時間(つまり、t=0)及びパルスレートを示しており、ta及びPaはそれぞれ、第1の速度二次曲線f1及び第2の速度直線f2の合流点での時間及びパルスレートを示しており、tb及びPbはそれぞれ、第2の速度直線f2及び第3の速度曲線f3の合流点での時間及びパルスレートを示しており、tc及びPcはそれぞれ、第3の速度曲線f3の終点での時間及びパルスレートを示しており、ty及びPyはそれぞれ、第3の速度曲線f3の傾きが0であるときの仮想的な時間及びパルスレートを示している。
【0045】
f1〜f3の関数を上記のように設定するとともに、第3の速度二次曲線3よりも第1の速度二次曲線1の加速時間(設定時間)を短く設定することにより、パルスモータを図2に図示するように、プルアウトトルクに近い値で駆動制御することができる。これにより、自動分析装置の処理能力を高めることができる。
【0046】
これらの第1の速度二次曲線1、第2の速度直線2及び第3の速度二次曲線3を時間で微分することにより得られるパルスレートの変化率を図3(b)に示す。図3(b)に図示するように、第3の速度二次曲線f3の速度の変化率は、時間経過とともに、一定の割合で漸減する。図3(c)も同様にパルスレートの変化率を示しているが、横軸をパルスレートにしている。
【0047】
この条件で求めた加速トルクとパルスレートとの関係を図4に示す。加速トルクと抵抗負荷トルクの和がパルスモータのプルアウトトルクよりも安全率を見込んで小さく設定されていることがわかる。
【0048】
本実施例では、各点におけるパルスレートの変化率をあらかじめ決定し、その値から加速トルクを算出し、この加速トルクと抵抗負荷トルクとの和がパルスモータのプルアウトトルクよりも小さくなることを確認した。
【0049】
その一方で、図4において、点1、点2、点3及び点4のパルスレートと、モータの使用時のトルク上限値を求め、その値から安全率と抵抗負荷トルクを考慮して加速トルクを求め、さらにパルスモータの回転子と負荷となる機構部の慣性モーメントから点1〜点4におけるパルスレートの変化率を求めることができる。
【0050】
減速するときのパターンは、減速時には減速トルクと摩擦などによる抵抗負荷トルクが逆向きに働くため、加速時より迅速に減速することができ、また、停止時の振動を減らすために、停止前の減速度を小さくすることが有効であるので、上述の加速するときのパターンと異なっていてもよいが、本実施例では図5に図示するように加速パターンと対称になるように設定している。
(実施例2)
実施例1と同様に、図2に図示するように、点1はパルスモータが回転を開始する点を示しており、点2は加速度が最大値に達する点を示しており、点3は加速度が減少を開始する点を示しており、点4は加速が終了する点を示している。
【0051】
ここで、点1〜点4のパルスレートをそれぞれパルスレート1〜4とした場合に、図2は、(パルスレート2−パルスレート1)<(パルスレート4−パルスレート1)/10を満足し、パルスモータのプルアウトトルクが降下するパルスレートと点3のパルスレート3とが同じになるように設定している。
【0052】
実施例1と異なり、本実施例では、パルスレート1=400CPS、パルスレート2=500CPS、パルスレート3=1000CPS、パルスレート4=4000CPSに設定した。
次に、点1〜点4におけるパルスレートの変化率をそれぞれ4000CPS/s、24000CPS/s、24000CPS/s、4000CPS/sに設定する。、実施例1の第3の速度二次曲線f3に代えて、第3の速度指数関数曲線fsを用いた。第1の速度曲線1及び第2の速度直線2は実施例1と同様である。
【0053】
f1〜f3の関数を上記のように設定するとともに、第3の指数関数曲線4よりも第1の速度二次曲線1の加速時間(設定時間)を短く設定することにより、プルアウトトルクに近い値で駆動制御することができる。
【0054】
これらの第1の速度二次曲線1、第2の速度直線2及び第3の指数関数曲線4を微分することにより得られるパルスレートの変化率を図6(b)に示す。図6(c)も同様にパルスレートの変化率を示しているが、横軸をパルスレートにしている。図6(c)に図示するように、本実施例では、第3の速度指数関数曲線f3の速度の変化率を、パルスレートの増加に応じて、一定の割合で降下させている。
【0055】
この条件で求めた加速トルクとパルスレートとの関係を図7に示す。加速トルクと抵抗負荷トルクの和がパルスモータのプルアウトトルクよりもほぼ一定の幅だけ小さく設定されていることがわかる。
【0056】
本実施例では、各点におけるパルスレートの変化率をあらかじめ決定し、その値から加速トルクを算出し、この加速トルクと抵抗負荷トルクとの和がパルスモータのプルアウトトルクよりも小さくなることを確認した。
【0057】
その一方で、図2において、点1、点2、点3及び点4のパルスレートと、モータの使用時のトルク上限値(プルアウトトルク)を求め、その値から安全率と抵抗負荷トルクを考慮して加速トルクを求め、さらにパルスモータの回転子と負荷となる機構部の慣性モーメントから点1〜点4におけるパルスレートの変化率を求めることができる。
【0058】
実施例1では、点4の速度を4000CPSとすると安全率が小さくなる速度域が存在したため3600CPSに設定した。そのため、モータのトルクを最大限に利用することができなかったが、本実施例では、図7からわかるように、加速トルクと抵抗負荷トルクの和の曲線が点3と点4の二地点間で直線に近いため点4の速度を4000CPSに設定することができた。
【0059】
減速するときのパターンは、上述の加速するときのパターンと異なっていてもよいが、本実施例では図5に図示するように加速パターンと対称になるように設定している。
(他の実施例)
上述のパルスモータは、分注シリンジ、分注ノズル移送機構、反応容器移送機構、反応テーブルの駆動源として用いることもできる。特に、移動部分の質量や慣性モーメントが大きく、一定の時間内に何回も移動を繰り返す必要のある用途に適する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】速度(パルスレート)とプルアウトトルクとの関係を示した速度―トルク図である。
【図2】プルアウトトルクと、加速トルク及び慣性負荷トルクの和との関係を示した速度−トルク図である。
【図3a】モータの速度(パルスレート)と時間との関係を示した速度―時間図である。
【図3b】モータの加速度(パルスレートの変化率)と時間との関係を示した加速度―時間図である。
【図3c】モータの加速度と速度との関係を示した加速度―速度図である。
【図4】パルスレートとトルクとの関係を図示したパルスレート―トルク図である。
【図5】加速パターンと減速パターンを示すパターン図である。
【図6a】実施例2のモータの速度(パルスレート)と時間との関係を図示した速度―時間図である。
【図6b】実施例2のモータの加速度(パルスレートの変化率)と時間との関係を示した加速度―時間図である。
【図6c】実施例2のモータの加速度(パルスレートの変化率)と速度との関係を示した加速度―速度図である。
【図7】実施例2のトルクとモータの速度(パルスレート)との関係を示したトルク−速度図である。
【図8】自動分析装置の平面図である(反応容器の捕捉前)。
【図9】自動分析装置の平面図である(反応容器の捕捉時)。
【図10】ピックアップ装置及び搬送アームの駆動制御を行うためのブロック図である。
【符号の説明】
【0061】
3 容器ストレージラック
11 ピックアップ装置
12 搬送アーム
16 搬送レーン
16a 容器載置予定位置
21 容器ピックアップ装置
22 チップピックアップ装置
31 反応容器
51 CPU
52 Y軸用搬送アーム駆動モータユニット
53 ピックアップ装置搬送モータユニット
54 Z軸用搬送アーム駆動モータユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置などに使用されるパルスモータの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パルスモータは、パルスを印加するごとに複数のセグメントに分割されたコイルに流れる電流の向きあるいはON/OFFを切り替えることにより一定の角度ずつ回転するため、与えるパルス数に応じて回転角度を制御することできる。
【0003】
パルスレートに対応するパルスモータの設定回転速度を変化させた場合、実回転速度が設定回転速度に追従するようにパルスモータを加速又は減速させる。
【0004】
しかし、モータの回転子や機構部の慣性モーメントが大きい場合、実回転速度と設定回転速度との開きが大きい場合には、摩擦などによる抵抗負荷に慣性負荷が加わり、パルスモータが印加されるパルスに追従できなくなる脱調と呼ばれる現象が発生する。
【0005】
したがって、静止状態にあるパルスモータが追従できるパルスレートには、モータ回転子と機構部との慣性モーメントによって決まる上限値が存在し、この上限値を超えない範囲のパルスレートで起動することができる。モータのトルクは、パルスレートと駆動電流に依存するので、起動可能なパルスレートは駆動電流に依存する。
【0006】
また、加速時に、モータ回転子と機構部の加速に要する加速トルク、摩擦、重力、バネなどに抗して動作するための抵抗負荷トルクの和が、一定の値を超えると脱調が発生する。この脱調が発生するときのトルクをプルアウトトルクという。
【0007】
プルアウトトルクは、パルスレート値とコイルに流れる駆動電流に依存する。プルアウトトルクから抵抗負荷トルクを差し引いた残りのトルクが加減速に使うことができるトルクである。
【0008】
図1にパルスモータのプルアウトトルク曲線の例を示す。パルスモータにかかる負荷が、プルアウトトルクトルクよりも小さいに時に、パルスモータはパルスに追従して回転することができる。
【0009】
パルスモータの定速制御モードでは、起動可能なパルスレートのパルスでモータを駆動し、その後も起動時と同じパルスレートのパルスで駆動する。機構部が2地点間を移動する時間は、2地点間のパルス数をパルスレートで割ることにより算出される。
【0010】
パルスモータの台形制御モードでは、所定のパルスレートのパルスでモータを起動した後、又は、静止状態から、一定の加速度で加速を行い、所定の速度に達したら定速運転に移行し、終点の少し手前から一定の減速度で減速を行う。台形制御モードでは、平均速度を起動時の速度よりも速くすることができるため、定速制御モードより2地点間を移動する時間を短縮することができる。
【0011】
さらに、2地点間を移動する時間を短縮すると同時に、起動時や、加速から定速に移行する際の振動抑制のためにS字制御モードなどが用いられる。
【0012】
S字制御モードでは、サイン曲線あるいは二本の二次曲線を滑らかにつなげた曲線を加速曲線として使用する。始点と終点で加速度がゼロになるため、滑らかな動きが可能になるが、パルスモータのトルクを最大限に利用していないため、加速が遅くなり、最大パルスレートとパルスレートの変化率の最大値を等しくした場合には、台形制御モードに比べて2地点間の移動時間が長くなる。
【0013】
また、台形制御モードで駆動した場合と移動時間を同じにするためには、最大パルスレートあるいはパルスレートの最大変化率を大きく設定しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来の台形制御モードでは、加速時間中に加速度が一定であるため、加速に必要なトルクはパルスレートによらず一定である。パルスモータのプルアウトトルクは、低パルスレートではほぼ一定であるが、高パルスレートでは下降する。低パルスレートで高トルクを利用して加速度を大きくする場合には、高パルスレートでトルクが不足するため、使用できる最高パルスレートが制限された。また、高パルスレートまで加速するためには必要なトルクを減らすために加速度を落とす必要があった。
【0015】
また、従来のS字制御モードでは、加速領域の中間で加速度が最大になるが、加速度が最大になるパルスレートで加速トルクと抵抗負荷トルクの和をプルアウトトルクよりも小さく設定する必要があるため、加速初期と加速終期の加速度が低くなった。
【0016】
このように、台形制御モード、S字制御モードでは、起動から加速終了までの全パルスレートで加速トルクと抵抗負荷トルクの和がプルアウトトルクを超えないように加速度を設定すると、パルスモータのトルクとプルアウトトルクとの開きが大きくなる領域が生じた。
【0017】
また、パルスモータの代わりに、高速駆動の容易なDCサーボモータ、ACサーボモータなどを用いると、コストが増大する。
【0018】
そこで、本願発明は、パルスモータの脱調を防止しながら、短時間でパルスモータの速度を目標速度まで増速させことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本願発明のパルスモータの制御方法は、パルスモータの速度を第1の速度から第2の速度に増速させるまでの速度パターンを、曲線の傾きが漸増する単調増加の第1の速度曲線f1、一定の傾きをもつ単調増加の第2の速度直線f2、曲線の傾きが漸減する単調増加の第3の速度曲線f3の順で変化させ、前記第1の速度曲線f1は、前記第3の速度曲線f3よりも設定時間が短いことを特徴とする。
【0020】
ここで、第1の速度は図2の点1、つまり図3のt=0におけるパルスレート(P0)に対応しており、第2の速度は図2の点4、つまり図3のt=tcにおけるパルスレート(Pc)に対応している。また、第1の速度曲線f1は、図3の第1の速度二次曲線1に対応しており、第2の速度曲線f2は、図3の第2の速度直線2に対応しており、第3の速度曲線f3は、図3の第3の速度二次曲線3に対応している。
【0021】
このように、パルスモータを制御することにより、図2に図示するように、プルアウトトルクよりも僅かに低い値に加速トルク及び抵抗負荷トルクの和を設定した状態で、パルスモータを駆動することができる。
【発明の効果】
【0022】
本願発明によれば、短時間でパルスモータの速度を目標速度に増速することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図8、図9及び図10を参照しながら、本発明のパルスモータを適用した自動分析装置について説明する。図8及び図9は自動分析装置の反応容器供給部の平面図であり、図10は搬送アームやピックアップ装置11の駆動制御を行うためのブロック図である。
【0024】
これらの図において、ピックアップ装置(駆動装置)11は、搬送アーム(駆動装置)12に支持されており、ピックアップ装置搬送モータユニット53から駆動力を受けて搬送アーム12上をX軸方向にスライド移動する。
【0025】
この搬送アーム12は、Z軸ガイド14及びY軸ガイド13にガイドされており、Z軸用搬送アーム駆動モータユニット54から駆動力を受けて、Z軸方向に駆動され、Y軸用搬送アーム駆動モータユニット52から駆動力を受けて、Y軸方向に駆動される。
【0026】
これらの搬送アーム駆動モータユニット52、54及びピックアップ装置搬送モータユニット53の駆動源にはパルスモータが使用されており、CPU51から出力される信号に基づき、パルスモータの駆動が制御される。
【0027】
ピックアップ装置11には、容器ストレージラック3にマトリクス状に配置された反応容器31をピックアップするための容器ピックアップ装置(吸着ヘッド)21と、不図示のピペットチップをピックアップするためのチップピックアップ装置22が搭載されている。
【0028】
反応容器31には、測定対象物質に対する抗体等を固定した水不溶性固相や、測定対象物質に対する、酵素等で標識された標識抗体等の試薬が収容されており、分注液の注入などの各種操作に対応させるために上部開口が設けられており、この上部開口は密閉シールにより覆われている。なお、上記免疫測定用の反応容器31に代えて、試料中の微量生理活性物質を検出するために用いられる空の生化学反応用容器を用い、分析装置本体に搬送した後で試薬を分注することもできる。
【0029】
搬送レーン16は、X軸方向にスライド移動可能に設けられており、この搬送レーン16の略一端部に設定された容器載置予定位置16aに、容器ピックアップ装置21に吸着された反応容器31が搬送されるようになっている。
【0030】
このように、自動分析装置では、多数の反応容器31やピペットチップを搬送レーン16に搬送させる必要があり、搬送時間を短縮化することにより、自動分析装置の処理能力を向上させることができる。
【0031】
したがって、搬送アーム駆動モータユニット52、54及びピックアップ装置搬送モータユニット53の駆動源であるパルスモータの速度を短時間で最高速度に増速させる必要がある。特に、X、Y及びZ軸方向のうちY軸方向への駆動負荷が大きいため、Y軸用搬送アーム駆動モータユニット52に本願発明のパルスモータを適用するのが好ましい。そこで、本願発明では、パルスモータを下記のように制御している。
(実施例1)
本発明では、加速トルクと抵抗負荷トルクの和が、パルスモータのプルアウトトルクを超えないように設定する必要がある。上述したように脱調が生じるからである。
【0032】
ここで、加速トルクは、パルスモータの速度曲線の微分で得られる加速度と、パルスモータと負荷となる機構部の等価慣性モーメントから算出される。
【0033】
抵抗負荷トルクは、摩擦、重力、バネなどに抗して動かすためのトルクである。機構部が直線運動する場合は、適宜、機構の重量やプーリ径等を考慮してパルスモータの回転軸に対する等価慣性モーメントが算出される。また、機構部が歯車、ベルトなどの伝達機構を介して駆動される場合には、歯数比、プーリ比を考慮して等価慣性モーメントを算出することができる。
【0034】
パルスモータの加速パターンには、静止状態から連続的にパルスレートを増加させるか、有限の値のパルスレートで起動した後で連続的にパルスレートを増加させる方法がある。
【0035】
所定の二地点間の移動時間を短くするためには、平均パルスレートを引き上げることが好ましい。このため、加速開始後に加速度、つまりパルスレートの増加率を、数パルスでモータのプルアウトトルクから求められる上限値まで増加させることが好ましい。
【0036】
パルスレートの増加率の上限値は、プルアウトトルクに安全率を考慮して求めた値から負荷抵抗トルクを引いたトルクを回転子と負荷の慣性モーメントで割ることにより算出される。
【0037】
またパルスレートの増加率が、上限値に達した後は、パルスレートに応じた上限値を維持することが好ましい。具体的には、下記のようにパルスモータの速度を増速する。
【0038】
図2はプルアウトトルクと、搬送アーム12を駆動するために必要なトルク値とプルアウトトルク値との関係を示すトルク―速度線図である。同図において、点1はパルスモータが回転を開始する点を示しており、点2は加速度が最大値に達する点を示しており、点3は加速度が減少を開始する点を示しており、点4は加速が終了する点を示している。
【0039】
ここで、点1〜点4のパルスレートをそれぞれパルスレート1〜4とした場合に、図2は、(パルスレート2−パルスレート1)<(パルスレート4−パルスレート1)/10を満足し、パルスモータのプルアウトトルクが降下するパルスレートと点3のパルスレート3とが同じ値になるように設定している。
【0040】
実際には、パルスレート1=400CPS、パルスレート2=500CPS、パルスレート3=1000CPS、パルスレート4=3600CPSに設定した。
【0041】
次に、点1〜点4におけるパルスレートの変化率をそれぞれ4000CPS/s、24000CPS/s、24000CPS/s、4000CPS/sに設定し、速度変化を示す速度パターンは、点1と点2の間が単調増加で傾きが漸増する第1の速度二次曲線1(第1の速度曲線)、点2と点3との間が単調増加の第2の速度直線2(第2の速度直線)、点3と点4との間が単調増加で傾きが漸減する第3の速度二次曲線3(第3の速度曲線)である。なお、漸増するとは、時間経過に応じて徐々に増えるという意味であり、増加率が一定である場合も、異なる場合も含まれる。漸減についても同様である。
【0042】
ここで、第1の速度二次曲線1、第2の速度直線2、第3の速度二次曲線3は滑らかにつながっている。つまり、第1の速度二次曲線1の終点(第2の速度直線2に合流する点)での傾きは、第2の速度直線2の傾きに等しく、第3の速度二次曲線3の始点(第2の速度直線2に合流する点)での傾きは、第2の速度直線2に等しい。これにより、速度パターンを切り替える際に、機構の振動を効果的に抑制することができる。
【0043】
ここで、第1の速度二次曲線1をf1とおくと、f1=(Pa−Px){(t−tx)/(t1−tx)}2+Pxである。また、第2の速度直線2をf2とおくと、f2=(Pb−Pa){(t−ta)/(tb−ta)}+Paである。また、第3の速度二次曲線3をf3とおくと、f3=(Pb−Py){(ty−t)/(ty−tb)}2+Pyである。
【0044】
ただし、tx及びPxはそれぞれ、第1の速度二次曲線f1の傾きが0であるときの仮想的な時間及びパルスレートを示しており、t0及びP0はそれぞれ、第1の速度曲線の始点での時間(つまり、t=0)及びパルスレートを示しており、ta及びPaはそれぞれ、第1の速度二次曲線f1及び第2の速度直線f2の合流点での時間及びパルスレートを示しており、tb及びPbはそれぞれ、第2の速度直線f2及び第3の速度曲線f3の合流点での時間及びパルスレートを示しており、tc及びPcはそれぞれ、第3の速度曲線f3の終点での時間及びパルスレートを示しており、ty及びPyはそれぞれ、第3の速度曲線f3の傾きが0であるときの仮想的な時間及びパルスレートを示している。
【0045】
f1〜f3の関数を上記のように設定するとともに、第3の速度二次曲線3よりも第1の速度二次曲線1の加速時間(設定時間)を短く設定することにより、パルスモータを図2に図示するように、プルアウトトルクに近い値で駆動制御することができる。これにより、自動分析装置の処理能力を高めることができる。
【0046】
これらの第1の速度二次曲線1、第2の速度直線2及び第3の速度二次曲線3を時間で微分することにより得られるパルスレートの変化率を図3(b)に示す。図3(b)に図示するように、第3の速度二次曲線f3の速度の変化率は、時間経過とともに、一定の割合で漸減する。図3(c)も同様にパルスレートの変化率を示しているが、横軸をパルスレートにしている。
【0047】
この条件で求めた加速トルクとパルスレートとの関係を図4に示す。加速トルクと抵抗負荷トルクの和がパルスモータのプルアウトトルクよりも安全率を見込んで小さく設定されていることがわかる。
【0048】
本実施例では、各点におけるパルスレートの変化率をあらかじめ決定し、その値から加速トルクを算出し、この加速トルクと抵抗負荷トルクとの和がパルスモータのプルアウトトルクよりも小さくなることを確認した。
【0049】
その一方で、図4において、点1、点2、点3及び点4のパルスレートと、モータの使用時のトルク上限値を求め、その値から安全率と抵抗負荷トルクを考慮して加速トルクを求め、さらにパルスモータの回転子と負荷となる機構部の慣性モーメントから点1〜点4におけるパルスレートの変化率を求めることができる。
【0050】
減速するときのパターンは、減速時には減速トルクと摩擦などによる抵抗負荷トルクが逆向きに働くため、加速時より迅速に減速することができ、また、停止時の振動を減らすために、停止前の減速度を小さくすることが有効であるので、上述の加速するときのパターンと異なっていてもよいが、本実施例では図5に図示するように加速パターンと対称になるように設定している。
(実施例2)
実施例1と同様に、図2に図示するように、点1はパルスモータが回転を開始する点を示しており、点2は加速度が最大値に達する点を示しており、点3は加速度が減少を開始する点を示しており、点4は加速が終了する点を示している。
【0051】
ここで、点1〜点4のパルスレートをそれぞれパルスレート1〜4とした場合に、図2は、(パルスレート2−パルスレート1)<(パルスレート4−パルスレート1)/10を満足し、パルスモータのプルアウトトルクが降下するパルスレートと点3のパルスレート3とが同じになるように設定している。
【0052】
実施例1と異なり、本実施例では、パルスレート1=400CPS、パルスレート2=500CPS、パルスレート3=1000CPS、パルスレート4=4000CPSに設定した。
次に、点1〜点4におけるパルスレートの変化率をそれぞれ4000CPS/s、24000CPS/s、24000CPS/s、4000CPS/sに設定する。、実施例1の第3の速度二次曲線f3に代えて、第3の速度指数関数曲線fsを用いた。第1の速度曲線1及び第2の速度直線2は実施例1と同様である。
【0053】
f1〜f3の関数を上記のように設定するとともに、第3の指数関数曲線4よりも第1の速度二次曲線1の加速時間(設定時間)を短く設定することにより、プルアウトトルクに近い値で駆動制御することができる。
【0054】
これらの第1の速度二次曲線1、第2の速度直線2及び第3の指数関数曲線4を微分することにより得られるパルスレートの変化率を図6(b)に示す。図6(c)も同様にパルスレートの変化率を示しているが、横軸をパルスレートにしている。図6(c)に図示するように、本実施例では、第3の速度指数関数曲線f3の速度の変化率を、パルスレートの増加に応じて、一定の割合で降下させている。
【0055】
この条件で求めた加速トルクとパルスレートとの関係を図7に示す。加速トルクと抵抗負荷トルクの和がパルスモータのプルアウトトルクよりもほぼ一定の幅だけ小さく設定されていることがわかる。
【0056】
本実施例では、各点におけるパルスレートの変化率をあらかじめ決定し、その値から加速トルクを算出し、この加速トルクと抵抗負荷トルクとの和がパルスモータのプルアウトトルクよりも小さくなることを確認した。
【0057】
その一方で、図2において、点1、点2、点3及び点4のパルスレートと、モータの使用時のトルク上限値(プルアウトトルク)を求め、その値から安全率と抵抗負荷トルクを考慮して加速トルクを求め、さらにパルスモータの回転子と負荷となる機構部の慣性モーメントから点1〜点4におけるパルスレートの変化率を求めることができる。
【0058】
実施例1では、点4の速度を4000CPSとすると安全率が小さくなる速度域が存在したため3600CPSに設定した。そのため、モータのトルクを最大限に利用することができなかったが、本実施例では、図7からわかるように、加速トルクと抵抗負荷トルクの和の曲線が点3と点4の二地点間で直線に近いため点4の速度を4000CPSに設定することができた。
【0059】
減速するときのパターンは、上述の加速するときのパターンと異なっていてもよいが、本実施例では図5に図示するように加速パターンと対称になるように設定している。
(他の実施例)
上述のパルスモータは、分注シリンジ、分注ノズル移送機構、反応容器移送機構、反応テーブルの駆動源として用いることもできる。特に、移動部分の質量や慣性モーメントが大きく、一定の時間内に何回も移動を繰り返す必要のある用途に適する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】速度(パルスレート)とプルアウトトルクとの関係を示した速度―トルク図である。
【図2】プルアウトトルクと、加速トルク及び慣性負荷トルクの和との関係を示した速度−トルク図である。
【図3a】モータの速度(パルスレート)と時間との関係を示した速度―時間図である。
【図3b】モータの加速度(パルスレートの変化率)と時間との関係を示した加速度―時間図である。
【図3c】モータの加速度と速度との関係を示した加速度―速度図である。
【図4】パルスレートとトルクとの関係を図示したパルスレート―トルク図である。
【図5】加速パターンと減速パターンを示すパターン図である。
【図6a】実施例2のモータの速度(パルスレート)と時間との関係を図示した速度―時間図である。
【図6b】実施例2のモータの加速度(パルスレートの変化率)と時間との関係を示した加速度―時間図である。
【図6c】実施例2のモータの加速度(パルスレートの変化率)と速度との関係を示した加速度―速度図である。
【図7】実施例2のトルクとモータの速度(パルスレート)との関係を示したトルク−速度図である。
【図8】自動分析装置の平面図である(反応容器の捕捉前)。
【図9】自動分析装置の平面図である(反応容器の捕捉時)。
【図10】ピックアップ装置及び搬送アームの駆動制御を行うためのブロック図である。
【符号の説明】
【0061】
3 容器ストレージラック
11 ピックアップ装置
12 搬送アーム
16 搬送レーン
16a 容器載置予定位置
21 容器ピックアップ装置
22 チップピックアップ装置
31 反応容器
51 CPU
52 Y軸用搬送アーム駆動モータユニット
53 ピックアップ装置搬送モータユニット
54 Z軸用搬送アーム駆動モータユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスモータの駆動方法であって、
パルスモータの速度を第1の速度から第2の速度に増速させるまでの速度パターンを、曲線の傾きが漸増する単調増加の第1の速度曲線f1、一定の傾きをもつ単調増加の第2の速度直線f2、曲線の傾きが漸減する単調増加の第3の速度曲線f3の順で変化させ、前記第1の速度曲線f1は、前記第3の速度曲線f3よりも設定時間が短いことを特徴とするパルスモータの駆動方法。
【請求項2】
前記第1の速度曲線f1の終点の傾き及び前記第3の速度曲線f3の始点の傾きは、前記第2の速度直線f2の傾きに等しいことを特徴とする請求項1に記載のパルスモータの駆動方法。
【請求項3】
加速トルクと抵抗負荷トルクの和が、パルスモータのプルアウトトルクよりも低くなるように、前記パルスモータを駆動することを特徴とする請求項1又は2に記載のパルスモータの駆動方法。
【請求項4】
前記第3の速度曲線f3の傾きは、時間経過に応じて、一定の割合で漸減することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載のパルスモータの駆動方法。
【請求項5】
前記第3の速度曲線f3の傾きは、速度の増加に応じて、一定の割合で漸減することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載のパルスモータの駆動方法。
【請求項6】
パルスモータにより駆動される駆動装置であって、
パルスモータと、
前記パルスモータの駆動を制御する駆動制御回路とを有し、
前記駆動制御回路は、前記パルスモータの速度を第1の速度から第2の速度に増加させるまでの速度パターンを、曲線の傾きが漸増する単調増加の第1の速度曲線f1、一定の傾きをもつ単調増加の第2の速度直線f2、曲線の傾きが漸減する単調増加の第3の速度曲線f3の順で変化させ、前記第1の速度曲線f1が、前記第3の速度曲線f3よりも設定時間が短くなるように、前記パルスモータを制御することを特徴とする駆動装置。
【請求項1】
パルスモータの駆動方法であって、
パルスモータの速度を第1の速度から第2の速度に増速させるまでの速度パターンを、曲線の傾きが漸増する単調増加の第1の速度曲線f1、一定の傾きをもつ単調増加の第2の速度直線f2、曲線の傾きが漸減する単調増加の第3の速度曲線f3の順で変化させ、前記第1の速度曲線f1は、前記第3の速度曲線f3よりも設定時間が短いことを特徴とするパルスモータの駆動方法。
【請求項2】
前記第1の速度曲線f1の終点の傾き及び前記第3の速度曲線f3の始点の傾きは、前記第2の速度直線f2の傾きに等しいことを特徴とする請求項1に記載のパルスモータの駆動方法。
【請求項3】
加速トルクと抵抗負荷トルクの和が、パルスモータのプルアウトトルクよりも低くなるように、前記パルスモータを駆動することを特徴とする請求項1又は2に記載のパルスモータの駆動方法。
【請求項4】
前記第3の速度曲線f3の傾きは、時間経過に応じて、一定の割合で漸減することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載のパルスモータの駆動方法。
【請求項5】
前記第3の速度曲線f3の傾きは、速度の増加に応じて、一定の割合で漸減することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載のパルスモータの駆動方法。
【請求項6】
パルスモータにより駆動される駆動装置であって、
パルスモータと、
前記パルスモータの駆動を制御する駆動制御回路とを有し、
前記駆動制御回路は、前記パルスモータの速度を第1の速度から第2の速度に増加させるまでの速度パターンを、曲線の傾きが漸増する単調増加の第1の速度曲線f1、一定の傾きをもつ単調増加の第2の速度直線f2、曲線の傾きが漸減する単調増加の第3の速度曲線f3の順で変化させ、前記第1の速度曲線f1が、前記第3の速度曲線f3よりも設定時間が短くなるように、前記パルスモータを制御することを特徴とする駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−81922(P2009−81922A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248268(P2007−248268)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】
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