説明

パルス駆動発光デバイスおよびそのための組成物

ディスプレイ等のパルス駆動デバイスは、ホスト材料およびブレンドまたは結合されたリン光エミッタを含む有機発光組成物を含む。リン光エミッタはホスト材料中に10wt%を超える濃度で存在し、ホスト材料はリン光エミッタよりも高い三重項エネルギーレベルを有する。リン光エミッタがホスト材料中でピーク効率にある濃度は10wt%を超え、組成物は蛍光エミッタを含まず、したがって使用中の組成物からの発光は実質的にすべてリン光である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパルス駆動条件で駆動される発光デバイス、たとえばパッシブマトリックスディスプレイに関する。本発明はさらに、そのような発光デバイスに用いることができる新規な組成物に関する。本発明はさらに、そのような組成物の耐用性に関し、特にパルス駆動条件で駆動されるデバイスにおける組成物の寿命を延長させることに関する。
【背景技術】
【0002】
多くのディスプレイは、基板上に堆積した行および列の交差点に形成されたピクセルのマトリックスからなっている。各ピクセルは、たとえばポリマーLED(PLED)等の有機発光ダイオード(OLED)である。図1を参照すると、典型的なOLEDの構造は、透明なガラスまたはプラスチックの基板1、アノード2およびカソード4を含む。有機電子発光(放射)層3が、アノード2およびカソード4の間に設けられている。
【0003】
着色ディスプレイは、赤、緑および青のピクセルのマトリックスを互いに非常に近接して配置することによって形成される。ピクセルを制御し、それによって必要な画像を形成するために、「パッシブ」または「アクティブ」なマトリックスドライバ法が用いられる。
【0004】
アクティブマトリックスディスプレイは、各ピクセルに直列にトランジスタ(TFT)を内蔵しており、これが電流を制御し、それによって個別のピクセルの輝度を制御している。電流が小さければ、制御ワイヤはTFTドライバをプログラムしさえすればよいので、制御ワイヤのフローを低減することができ、その結果としてワイヤをより細くすることができる。また、トランジスタは電流設定を保持し、ピクセルが別の制御信号を受けるまでピクセルを必要な輝度に保つことができる。アクティブマトリックスディスプレイには、典型的にはDC駆動条件が用いられる。
【0005】
パッシブマトリックスシステムにおいては、ディスプレイの各行および各列はそれ自身のドライバを有しており、画像を創出するためにマトリックスは迅速にスキャンされ、各ピクセルが必要に応じてスイッチオンまたはスイッチオフされることを可能にする。制御電流は、ピクセルが発光することを要求される際には常に存在しなければならない。
【0006】
Proc.of SPIE、2800巻(2003)「有機発光材料およびデバイス(Organic Light−Emitting Materials and Devices)」に記載されているように、パッシブマトリックスアドレッシングの原理はかなり単純で、発光の迅速な再配置に対して眼が鈍感であることを利用している。画像フレームを表示するために必要なすべてのピクセルを同時にアドレスする代わりに、パッシブマトリックスアプローチにおいては、行から行へスクロールすることによって別々のピクセルを順にアドレスする。短い発光の強度は、すべてのピクセルが全フレーム時間(行の数と必要な平均全輝度との積)で光を発する場合よりもはるかに強い。全フレームのリフレッシュ速度が十分に速ければ(すなわち、臨界融合周波数として知られる周波数より高ければ)、人の眼はスクロールされた画像を平均輝度を有する静止画像として観察する。パッシブマトリックス駆動の利点は、基板の構造が単純で特注生産が容易となり、基板のコストが低くなることである。パッシブマトリックスディスプレイには、典型的にはパルス駆動条件が用いられる。
【0007】
Synthetic Metals、91巻(1997)3〜7頁およびSynthetic Metals、113巻(2000)155〜159頁にはパッシブマトリックス有機LEDの構造に関する情報が提供されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。特にSynthetic Metals、91巻(1997)3〜7頁の図11(c)を参照すると、これには蒸着による有機発光層の堆積およびそれに続くカソードの蒸着が示されている。発光層の溶液堆積(たとえばインクジェット印刷)がこの構造に同様に適用可能である。Synthetic Metals、113巻(2000)155〜159頁の論文の背景の節に、どのようにしてフォトレジスト材料を用いてカソードがストライプ状にパターン化されるかの詳細が提供されている。
【0008】
重要なパラメータはディスプレイの寿命である。
【0009】
Proc.of SPIE、2800巻(2003)「有機発光材料およびデバイス(Organic Light−Emitting Materials and Devices)」によれば、寿命の測定は主としてdc駆動において実施される。しかし、パッシブマトリックス用途のための発光材料の寿命は、フルカラーディスプレイにおいて経験されるパルス駆動条件を用いても試験するべきであると言われている。
【0010】
これまで、半導電層へのリン光材料のブレンドが研究されてきた。リン光ドーパントおよび小分子またはポリビニルカルバゾール等の非共役ポリマーホストを組み込むブレンドに基づくOLEDについて良い結果が得られてきた。共役ポリマーもまた、ホストとして開示されてきた。
【0011】
WO03/091355には、ポリマーまたはオリゴマーが少なくとも部分的に共役しており、有機金属基がポリマーまたはオリゴマーに共有結合していることを特徴とする、ポリマーまたはオリゴマーおよび有機金属基を含む発光可能な材料が開示されている。発光は主にリン光である。一般に有機金属は材料中に0.5〜70wt%、より好ましくは1〜10wt%の範囲の量で存在することが好ましいと述べられている。
【0012】
Adv.Funct.Mater.、2006、16巻、611〜617頁は、イリジウム錯体系の白色発光ダイオードに関する。「BlueJ」:PVK:Ir(PBPP):Ir(PIQ)のブレンドが開示されている。Ir(PBPP)はブレンド中に9.7wt%のレベルで存在する。Ir(PIQ)はブレンド中に0.3wt%のレベルで存在する。
【0013】
Applied Physics Letters、88巻、251110頁(2006)には、青色蛍光および橙色リン光材料を含むPVK系白色発光ダイオードが開示されている。青色蛍光発光は小分子DPAVBiから得られる。橙色リン光発光はOs(bpftz)から得られる。PVK−PBDはホストとして用いられる。Os(bpftz)は、PVKモノマー単位に対して0.1mol%(=0.58wt%)および0.04mol%(=0.23wt%)のレベルで用いられる。
【0014】
Adv.Mater.、2007、19巻、739〜743頁には、赤色発光ポリマーリン光発光ダイオードが開示されている。ドーパントからの純赤色発光は、ポリフルオレンホストポリマー中ドーパント4〜6wt%で得られたとされている。8〜10wt%のドーパント濃度は「高濃度」と称されている。8wt%を超える濃度は試験されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
リン光エミッタを用いるOLEDに関連し、本発明者らは前記リン光エミッタを含む改善された組成物、特にデバイス中で用いる際に改善された寿命を有する組成物を提供する問題を確定した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは予想外にも、リン光エミッタがホスト材料中に7.5wt%を超える濃度で存在することを特徴とする、ホスト材料およびリン光エミッタを含む有機発光組成物を含むパルス駆動発光デバイスを提供することによって、この問題を解決した。
【0017】
本発明によれば、ホスト材料中のリン光エミッタの濃度は、ホスト材料のみのwt%に対して測定される。組成物が他の成分、たとえば第2のエミッタをさらに含む場合には、前記他の成分は計算の部分を形成しない。
【0018】
本発明者らは、パルス駆動ディスプレイまたは他の発光デバイスについて、リン光エミッタがホスト材料中に7.5wt%を超える濃度で存在する場合には、寿命が顕著に改善されることを見出した。「濃度消光」の現象のため高濃度のエミッタは望ましくないと一般にはみなされているので、これは驚くべきことである。たとえば、Kawamuraら(Appl.Phys.Lett.、86巻、071104頁、2005)は、赤色、緑色および青色リン光エミッタについての濃度消光効果を記載している。赤色および緑色エミッタについては、ηPLの最大値はCBPホスト中エミッタ濃度2wt%で得られた。CBPホスト中の青色エミッタについては、異なったηPL曲線が得られた。これは、青色エミッタのTエネルギーレベルからCBPのTエネルギーレベルへの逆エネルギー移動に言及することによって説明された。これを確認するため、Tエネルギーレベルが高いホスト(mCP)中の青色エミッタのさらなる組成物が調製された。これらにより、mCPホスト中エミッタ濃度2wt%で最大ηPLが確認された。
【0019】
従来技術においては、寿命の測定はdc駆動条件下で行われてきた。dc駆動条件下での最適寿命は、ずっと低い濃度で得られると広く信じられている。パルス駆動条件下においてリン光エミッタのより高い濃度で観察された寿命の延長はまったく予知されないものであった。
【0020】
本発明によれば、リン光エミッタはホスト材料中に好ましくは10wt%を超え、より好ましくは10〜25wt%の範囲、さらにより好ましくは14〜25wt%の範囲、さらにより好ましくは15〜25wt%の範囲、さらにより好ましくは20〜25wt%の範囲、最も好ましくは約20wt%の濃度で存在する。
【0021】
リン光エミッタは好ましくは赤色エミッタまたは緑色エミッタである。「赤色エミッタ」は、リン光により600〜750nm、好ましくは600〜700nm、より好ましくは610〜650nmの範囲の波長を有し、最も好ましくは約650〜660nmに発光ピークを有する放射を発する材料を意味する。「緑色エミッタ」は、リン光により510〜580nm、好ましくは510〜570nmの範囲の波長を有する放射を発する材料を意味する。
【0022】
リン光エミッタは、好ましくはPt、Pd、Os、Au、Ru、Re、RuまたはIrの錯体、最も好ましくはIrの錯体を含む。
【0023】
ホスト材料は、好ましくはリン光エミッタとブレンドされる。しかし、これは本質的ではなく、ホスト材料はたとえばWO03/091355に記載された方法でリン光エミッタに結合されてもよい。
【0024】
ホスト材料はポリマーまたは小分子であってよく、好ましくはポリマーである。前記ポリマーは共役していても共役していなくてもよい。
【0025】
好ましくは、パルス駆動デバイスにおいてホスト材料は青色ホスト材料である。「青色ホスト材料」は電子発光によって400〜500nm、好ましくは430〜500nmの範囲の波長を有する放射を発することができるホスト材料を意味する。しかし、青色ホスト材料は、好ましくは、青色ホスト材料の励起状態エネルギーのほとんどまたはすべてがリン光エミッタに移動した結果として、青色光をほとんどまたはまったく放射しないことを認識されたい。
【0026】
ホストからエミッタへのエネルギーの逆移動を避けるため、好ましくは、ホスト材料はリン光エミッタのTエネルギーレベルより高いTエネルギーレベルを有する。特に、ホストはエミッタのTエネルギーレベルより少なくとも100meV高いTエネルギーレベルを有することが好ましい。
【0027】
好ましくは、ホスト材料は電荷輸送材料、すなわち正孔および/または電子を輸送することができる材料である。電荷輸送材料は、デバイス中において、そのデバイスに用いられるリン光エミッタよりも高い電荷移動度を有する材料である。正孔および電子輸送材料は、当業者にはよく知られている。電荷移動度はシングルキャリアデバイスを用いて測定することができる。
【0028】
OLEDは典型的にはアノード、カソード、およびアノードとカソードとの間に位置する発光層を含む。
【0029】
有機発光デバイスは一般に透明なガラスまたはプラスチックの基板、アノードおよびカソードを含むことになる。この場合、ホスト材料およびリン光エミッタを含む組成物は、アノードとカソードとの間に位置する発光層中に存在することになる。
【0030】
実用的なデバイスにおいては、光を吸収するため(光応答性デバイスの場合)または発光するため(OLEDの場合)には、電極の少なくとも1つは半透明である。アノードが透明な場合、それは典型的にはインジウムスズ酸化物を含む。
【0031】
特に、アノードからの正孔注入を助けるため、アノードと発光層との間に設けられる導電性有機または無機材料から形成され得る導電性正孔注入層を設けることが望ましい。ドープされた有機正孔注入材料の例には、ドープされたポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDT)、特にEP0901176およびEP0947123に開示されたようなポリスチレンスルホネート(PSS)等の電荷バランスポリ酸でドープされたPEDT、ポリアクリル酸またはフッ素化スルホン酸、たとえばNafion(登録商標);US5723873およびUS5798170に開示されたようなポリアニリン;およびポリ(チエノチオフェン)が含まれる。導電性無機材料の例には、Journal of Physics D:Applied Physics(1996)、29巻(11)、2750〜2753頁に開示されたようなVOx、MoOxおよびRuOx等の遷移金属酸化物が含まれる。
【0032】
存在する場合には、アノードと発光層との間に位置する正孔輸送層は、好ましくは5.5eV以下、より好ましくは約4.8〜5.5eVのHOMOレベルを有する。HOMOレベルはたとえばサイクリックボルタムメトリーによって測定することができる。
【0033】
存在する場合には、発光層とカソードとの間に位置する電子輸送層は、好ましくは約3〜3.5eVのLUMOレベルを有する。
【0034】
発光層はホスト材料およびリン光エミッタのみからなっていてもよく、1種または複数のさらなる材料と組み合わせてこれらを含んでもよい。特に、ホスト材料およびリン光エミッタは、たとえばWO99/48160に開示されたような正孔および/または電子輸送材料と、および/またはさらなる発光材料とブレンドしてもよい。
【0035】
アノードとカソードとの間にさらなる層、たとえば電荷輸送、電荷注入または電荷遮蔽層を位置させてもよい。
【0036】
典型的には、本発明の第1の態様においては、発光層はパターン化されることになる。
【0037】
本発明の第1の態様によれば、請求項1〜9において特定される組成物が提供される。
【0038】
上述のように、組成物中において、リン光エミッタがホスト材料中でそのピーク効率にある濃度は10wt%より高い。ホスト材料中のリン光エミッタのピーク効率は、cd/Aの単位で測定することができる。当業者はどのようにこれを測定するかを了解するであろう。リン光エミッタはホスト材料中にピーク効率を与える濃度で存在している必要はない。リン光エミッタはホスト材料中に10wt%より高い濃度で存在していればよい。
【0039】
ホストは、エミッタのTエネルギーレベルよりも少なくとも100meV高いTエネルギーレベルを有していることが好ましい。
【0040】
好ましくは、ホスト材料は電荷輸送材料、すなわち正孔および/または電子を輸送することができる材料である。電荷輸送材料は、デバイス中において、そのデバイスに用いられるリン光エミッタよりも高い電荷移動度を有する材料である。正孔および電子輸送材料は、当業者にはよく知られている。電荷移動度はシングルキャリアデバイスを用いて測定することができる。
【0041】
好ましくは、第2の態様による組成物においては、リン光エミッタはホスト材料中に10〜25wt%の範囲、さらにより好ましくは14〜25wt%の範囲、さらにより好ましくは15〜25wt%の範囲、さらにより好ましくは20〜25wt%の範囲、最も好ましくは約20wt%の濃度で存在する。
【0042】
第2の態様による組成物において、好ましくは、ホスト材料はリン光エミッタとブレンドされる。しかし、これは本質的ではなく、ホスト材料はたとえばWO03/091355に記載された方法でリン光エミッタに結合されてもよい。
【0043】
好ましくは、リン光エミッタは赤色エミッタまたは緑色エミッタである。
【0044】
好ましくは、リン光エミッタはPt、Pd、Os、Au、Ru、Re、RuまたはIrの錯体、最も好ましくはIrの錯体を含む。
【0045】
好ましくは、ホスト材料は青色ホスト材料である。
【0046】
好ましくは、ホスト材料はポリマーである。前記ポリマーは共役していても共役していなくてもよい。
【0047】
本発明のさらなる態様は、請求項1〜9に定義されたような組成物を含む有機発光デバイス(OLED)を提供する。
【0048】
本発明による有機発光デバイスは、典型的にはアノード、カソード、およびアノードとカソードとの間に位置する発光層を含む。
【0049】
本発明による有機発光デバイスは、一般に透明なガラスまたはプラスチックの基板、アノードおよびカソードを含むことになる。この場合、ホスト材料およびリン光エミッタを含む組成物は、アノードとカソードとの間に位置する発光層中に存在することになる。
【0050】
実用的なデバイスにおいては、光を吸収するため(光応答性デバイスの場合)または発光するため(OLEDの場合)には、電極の少なくとも1つは半透明である。アノードが透明な場合、それは典型的にはインジウムスズ酸化物を含む。
【0051】
特に、アノードからの正孔注入を助けるため、アノードと発光層との間に設けられる導電性有機または無機材料から形成され得る導電性正孔注入層を設けることが望ましい。ドープされた有機正孔注入材料の例には、ドープされたポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDT)、特にEP0901176およびEP0947123に開示されたようなポリスチレンスルホネート(PSS)等の電荷バランスポリ酸でドープされたPEDT、ポリアクリル酸またはフッ素化スルホン酸、たとえばNafion(登録商標);US5723873およびUS5798170に開示されたようなポリアニリン;およびポリ(チエノチオフェン)が含まれる。導電性無機材料の例には、Journal of Physics D:Applied Physics(1996)、29巻(11)、2750〜2753頁に開示されたようなVOx、MoOxおよびRuOx等の遷移金属酸化物が含まれる。
【0052】
存在する場合には、アノードと発光層との間に位置する正孔輸送層は、好ましくは5.5eV以下、より好ましくは約4.8〜5.5eVのHOMOレベルを有する。HOMOレベルはたとえばサイクリックボルタムメトリーによって測定することができる。
【0053】
存在する場合には、発光層とカソードとの間に位置する電子輸送層は、好ましくは約3〜3.5eVのLUMOレベルを有する。
【0054】
本発明によるOLEDにおける発光層はホスト材料およびリン光エミッタのみからなっていてもよく、1種または複数のさらなる材料と組み合わせてこれらを含んでもよい。特に、ホスト材料およびリン光エミッタは、たとえばWO99/48160に開示されたような正孔および/または電子輸送材料と、および/またはさらなる発光材料とブレンドしてもよい。
【0055】
アノードとカソードとの間にさらなる層、たとえば電荷輸送、電荷注入または電荷遮蔽層を位置させてもよい。
【0056】
本発明のさらなる態様は、請求項12または13に特定されるような有機発光デバイスを含むディスプレイを提供する。本態様によるディスプレイは、パッシブマトリックスデバイス等のパルス駆動デバイスでもよく、または任意の他の形態のディスプレイ、たとえばアクティブマトリックスデバイスでもよい。
【0057】
本発明によるディスプレイにおけるOLEDの発光層は、パターン化されていてもパターン化されていなくてもよい。
【0058】
パターン化されていない層を含むデバイスは、たとえば照明光源として用いることができる。この目的には白色発光デバイスが特に適している。
【0059】
パターン化された層を含むデバイスは、たとえばアクティブマトリックスディスプレイまたはフルカラーパッシブマトリックスディスプレイであってよい。アクティブマトリックスディスプレイの場合には、パターン化された電子発光層は、典型的にはパターン化されたアノード層およびパターン化されていないカソードと組み合わせて用いられる。パッシブマトリックスディスプレイの場合には、アノード層はアノード材料の平行な縞から形成され、電子発光材料およびカソード材料の平行な縞がアノード材料に垂直に配置され、電子発光材料およびカソード材料の縞は典型的にはフォトリソグラフィーによって形成された絶縁材料(「カソードセパレータ」)の縞によって分離されている。
【0060】
本発明によるパルス駆動発光デバイスは、ディスプレイであってもよく、または印刷ヘッドであってもよく、またはスキャナ、プリンタまたはフォトコピア等の画像デバイスにおける使用のための光源であってもよい。
【0061】
ここで添付の図面を参照して、例示のためのみに本発明の実施形態を記述する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】OLEDの構造を示す図である。
【図2】本発明による4種の異なった組成物についての輝度対時間のプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
リン光エミッタ用の数多くのホストが従来技術に記載されている。ホスト材料は、励起状態エネルギーがホストのTエネルギーレベルからエミッタのTレベルに移動するために十分高いTエネルギーレベルを有する必要がある。好ましくは、ホストは、エミッタのTエネルギーレベルからのエネルギーの逆移動を防止するために十分高いTエネルギーレベル、特にエミッタのTエネルギーレベルよりも高いTエネルギーレベルを有する。しかしある場合には、ホストのTエネルギーレベルはエミッタのTエネルギーレベルと同じか、もっと低いことすらある。ホスト材料の例には、Ikaiら、Appl.Phys.Lett.、79巻、第2号、2001、156頁に開示された、CBPとして知られる4,4’−ビス((カルバゾール−9−イル)ビフェニル)およびTCTAとして知られる(4,4’,4”−トリス((カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン)等の「小分子」ホスト;ならびにMTDATAとして知られるトリス−4−(N−3−メチルフェニル−N−フェニル)フェニルアミン等のトリアリールアミンが含まれる。ポリマー、特にたとえばAppl.Phys.Lett.、2000、77巻(15)、2280頁に開示されたポリ(ビニルカルバゾール);Synth.Met.、2001、116巻、379頁、Phys.Rev.B、2001、63巻、235206頁およびAppl.Phys.Lett.、2003、82巻(7)、1006頁のポリフルオレン;Adv.Mater.、1999、11巻(4)、285頁のポリ[4−(N−4−ビニルベンジルオキシエチル,N−メチルアミノ)−N−(2,5−ジ−tert−ブチルフェニルナフタルイミド];およびJ.Mater.Chem.、2003、13巻、50〜55頁のポリ(パラフェニレン)等のホモポリマーもホストとして知られている。コポリマーもホストとして知られている。
【0064】
好ましいリン光金属錯体は、任意選択により置換された式1:
【化1】

[式中、Mは金属であり;L、LおよびLのそれぞれは配位基であり;qは整数であり;rおよびsはそれぞれ独立に0または整数であり;(a.q)+(b.r)+(c.s)の合計はMについて使用可能な配位サイトの数に等しく、ここでaはL上の配位サイトの数であり、bはL上の配位サイトの数であり、cはL上の配位サイトの数である]の錯体を含む。
【0065】
重元素Mは強いスピン軌道結合を誘起し、迅速なシステム間クロッシングおよび三重項またはより高い状態からの発光(リン光)を可能にする。適当な重金属Mには:
− セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、ジスプロシウム、ツリウム、エルビウム、ネオジミウム等のランタニド金属および
− d-ブロック金属、特に2列および3列のもの、すなわち39〜48および72〜80の元素、特にルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金および金
が含まれる。
【0066】
f-ブロック金属について適当な配位基には、カルボン酸、1,3−ジケトネート、ヒドロキシカルボン酸、アシルフェノールおよびイミノアシル基を含むシッフ塩基等の酸素又は窒素ドナー系が含まれる。知られているように、発光ランタニド金属錯体には、金属イオンの第1励起状態よりも高い三重項励起エネルギーレベルを有する増感基(単数または複数)が必要である。発光は金属のf−f遷移から起こり、したがって発光色は金属の選択によって決定される。
【0067】
鋭い発光は一般に幅が狭く、ディスプレイ用途に有用な高純度の発色をもたらす。
【0068】
d-ブロックの金属は三重項励起状態からの発光に特に適している。これらの金属は、ポルフィリンまたは式2:
【化2】

[式中、ArおよびArは同一でも異なっていてもよく、任意選択で置換されたアリールまたはヘテロアリールから独立に選択され;XおよびYは同一でも異なっていてもよく、炭素または窒素から独立に選択され;ArおよびArは一緒になって融合していてもよい]の二座リガンド等の炭素または窒素ドナーを有する有機金属錯体を形成する。Xが炭素、Yが窒素であるリガンドが特に好ましい。
【0069】
二座リガンドの例を下に示す:
【化3】

【0070】
リン光エミッタの発光色は、金属、リガンドおよびそれらの置換基の適切な選択によって調節することができる。たとえば、リン光イリジウム錯体には、Appl.Phys.Letters、2005、86巻、161104頁に開示されたようなチエニルピリジンリガンドまたはTsuboyamaら、J.Am.Chem.Soc.、2003、125巻、12971〜12979頁に開示されたようなフェニルキノリンまたはフェニルイソキノリンリガンドを含む赤色リン光エミッタ;フェニルピリジンリガンドを含む緑色リン光エミッタ;およびWO2004/101707に開示されたようなフェニルトリアゾールリガンドまたはフッ素化フェニルピリジンリガンドを含む青色リン光エミッタが含まれる。
【0071】
ArおよびArのそれぞれは、1個または複数の置換基を有してもよい。2個以上のこれらの置換基は連結して環、たとえば芳香環を形成してもよい。特に好ましい置換基には、WO02/45466、WO02/44189、US2002−117662およびUS2002−182441に開示されたような、錯体の発光をブルーシフトさせるために用いることができるフッ素またはトリフルオロメチル;JP2002−324679に開示されたようなアルキルまたはアルコキシ基;WO02/81448に開示されたような、発光材料として用いた際に錯体への正孔輸送を助けるために用いることができるカルバゾール;WO02/68435およびEP1245659に開示されたような、さらなる基の結合のためリガンドを官能化するために作用することができる臭素、塩素またはヨウ素;およびWO02/66552に開示されたような、金属錯体の溶液処理性を得るまたは高めるために用いることができるデンドロンが含まれる。
【0072】
発光デンドリマーは典型的には1個または複数のデンドロンに結合した発光コアを含み、それぞれのデンドロンは分岐点および2個以上の樹状分岐を含む。好ましくは、デンドロンは少なくとも部分的に共役しており、コアおよび樹状分岐の少なくとも1個はアリールまたはヘテロアリール基を含む。1つの好ましい実施形態においては、分岐基は、ジケトネート、特にアセチルアセトネート(acac);それぞれ置換されていてもよいトリアリールホスフィンおよびピリジンを含む、d-ブロック元素とともに用いるのに適した他のリガンドを含む。
【0073】
主グループの金属錯体は、リガンドに基づく発光、言い換えると電荷移動発光を示す。これらの錯体については、発光色はリガンドならびに金属の選択によって決定される。
【0074】
ホスト材料および金属錯体は、物理的ブレンドの形態で組み合わせることができる。あるいは、金属錯体をホスト材料に化学的に結合してもよい。ポリマー性ホストの場合、金属錯体はポリマー主鎖に結合した置換基として化学結合してもよく、ポリマー主鎖中に繰り返し単位として組み込まれてもよく、またはたとえばEP1245659、WO02/31896、WO03/18653およびWO03/22908に開示されているようなポリマーの末端基として提供されてもよい。
【0075】
カソードは、電子発光層内への電子の注入を可能にする仕事関数を有する材料から選択される。カソードと電子発光材料との間の不都合な相互作用の可能性等の他の因子がカソードの選択に影響する。カソードは、アルミニウム層等の単一材料からなっていてもよい。あるいは、カソードは複数の金属、たとえばWO98/10621に開示されたようなカルシウムおよびアルミニウム;WO98/57381、Appl.Phys.Lett.、2002、81巻(4)、634頁およびWO02/84759に開示されたようなバリウム元素;または金属化合物の薄層、特に電子注入を助けるためのアルカリまたはアルカリ土類金属の酸化物またはフッ化物、たとえばWO00/48258に開示されたようなフッ化リチウム;Appl.Phys.Lett.、2001、79巻(5)、2001頁に開示されたようなフッ化バリウム;および酸化バリウム等の、仕事関数が低い材料と仕事関数が高い材料の二層を含んでもよい。電子をデバイス中に効率的に注入するため、カソードは好ましくは3.5eV未満、より好ましくは3.2eV未満、最も好ましくは3eV未満の仕事関数を有する。金属の仕事関数は、たとえばMichaelson、J.Appl.Phys.、48巻(11)、4729頁、1977で見出すことができる。
【0076】
カソードは不透明または透明であってよい。透明なカソードはアクティブマトリックスデバイスにおいて特に有利である。なぜなら、そのようなデバイスにおける透明なアノードを通しての発光は、発光ピクセルの下に位置する駆動回路によって少なくとも部分的に遮断されるからである。透明なカソードは、透明であるために十分に薄い電子注入材料の層を含むことになる。典型的には、その薄さの結果として、この層の横方向の電導度は低いことになる。この場合には、電子注入材料の層は、インジウムスズ酸化物等の透明電導材料のより厚い層と組み合わせて用いられる。
【0077】
透明カソードデバイスは(もちろん、完全に透明なデバイスが望まれない場合には)透明アノードを有する必要はなく、したがって底面発光デバイスに用いられる透明アノードは、アルミニウム層等の反射性材料の層で置き換えられ、または補完されてもよいことを理解されたい。透明カソードデバイスの例は、たとえばGB 2348316に開示されている。
【0078】
光学デバイスは湿気および酸素の影響を受けやすい。したがって、基板は好ましくはデバイス中への湿気および酸素の進入を防止するための良好なバリア性を有する。基板は一般的にはガラスであるが、特にデバイスの可撓性が望ましい場合には代替の基板を用いることができる。たとえば、基板はプラスチックおよびバリアの交互の層の基板を開示するUS6268695にあるようなプラスチックまたはEP0949850に開示されたような薄いガラスおよびプラスチックのラミネートを含んでもよい。
【0079】
デバイスは、好ましくは、湿気および酸素の進入を防止するため、カプセル材(示していない)でカプセル化される。適当なカプセル材には、たとえばWO01/81649に開示されたようなポリマーと誘電体との交互積層またはたとえばWO01/19142に開示されたような気密容器等の、適当なバリア性を有するガラス、フィルムのシートが含まれる。基板またはカプセル材を通して浸透する可能性があるいかなる大気中の湿気および/または酸素をも吸収するためのゲッター材料を、基板とカプセル材との間に配置してもよい。
【0080】
図1の実施形態はデバイスを示している。ここでは最初にアノードを基板上に形成し、次いで電子発光層およびカソードを堆積することによってデバイスが形成される。しかし、本発明のデバイスは、最初にカソードを基板上に形成し、次いで電子発光層およびアノードを堆積することによっても形成されることを認識されたい。
【0081】
適当な電子発光および/または電荷輸送ポリマーには、これだけに限らないが、ポリ(p−フェニレンビニレン)等のポリ(アリーレンビニレン)およびポリアリーレンが含まれる。
【0082】
ポリマーは、好ましくはたとえばAdv.Mater.、2000、12巻(23)、1737〜1750頁およびその参考文献に開示されたようなアリーレン繰り返し単位から選択される第1繰り返し単位を含む。例示的な第1繰り返し単位には、J.Appl.Phys.、1996、79巻、934頁に開示されたような1,4−フェニレン繰り返し単位;EP0842208に開示されたようなフルオレン繰り返し単位;たとえばMacromolecules、2000、33巻(6)、2016〜2020頁に開示されたようなインデノフルオレン繰り返し単位;およびたとえばEP0707020に開示されたようなスピロフルオレン繰り返し単位が含まれる。これらの繰り返し単位のそれぞれは、任意選択で置換される。置換基の例には、C1−20アルキルまたはアルコキシ等の可溶化基;フッ素、ニトロまたはシアノ等の電子吸引基;およびポリマーのガラス転移温度(Tg)を上昇させるための置換基が含まれる。
【0083】
特に好ましいポリマーは、任意選択で置換された2,7−連結フルオレン、最も好ましくは式3:
【化4】

[式中、RおよびRは水素または任意選択で置換されたアルキル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアリールアルキルから独立に選択される]の繰り返し単位を含む。より好ましくは、RおよびRの少なくとも1つは、任意選択で置換されたC−C20アルキルまたはアリール基を含む。
【0084】
ポリマーは、それがデバイスのどの層において用いられるかおよび共繰り返し単位の性質に依存して、正孔輸送、電子輸送および発光の1つまたは複数の機能を提供することができる。
【0085】
たとえば、特に:
− 電子輸送を提供するためには、9,9−ジアルキルフルオレン−2,7−ジイルのホモポリマー等のフルオレン繰り返し単位のホモポリマーを用いることができる。
− トリアリールアミン繰り返し単位を含むコポリマーは、正孔輸送または発光を提供することができる。式4:
【化5】

[式中、ArおよびArは任意選択により置換されたアリールまたはヘテロアリール基であり、nは1以上、好ましくは1または2であり、RはHまたは置換基、好ましくは置換基である]の繰り返し単位が特に好ましい。Rは好ましくはアルキルまたはアリールもしくはヘテロアリールであり、最も好ましくはアリールまたはヘテロアリールである。式1の単位における任意のアリールまたはヘテロアリール基は置換されてもよい。好ましい置換基にはアルキルおよびアルコキシ基が含まれる。式1の繰り返し単位における任意のアリールまたはヘテロアリール基(すなわちAr、ArおよびRがアリールまたはヘテロアリールである場合のR)は、直接結合または二価連結原子もしくは基によって連結されていてもよい。好ましい二価連結原子および基には、O、S;置換N;および置換Cが含まれる。
【0086】
式4を満たす特に好ましい単位には、式5〜7:
【化6】

[式中、ArおよびArは上で定義した通りであり;Arは任意選択で置換されたアリールまたはヘテロアリールである]の単位が含まれる。存在する場合には、Arの好ましい置換基にはアルキルおよびアルコキシ基が含まれる。アリールまたはヘテロアリール基Ar、ArおよびArの任意の2つは任意選択で直接結合または二価連結基もしくは原子によって連結されていてもよい。存在する場合には、連結結合、基または原子は、好ましくは共通のN原子に結合した2つのアリールまたはヘテロアリール基を連結する。
【0087】
この型の特に好ましい正孔輸送ポリマーは、第1繰り返し単位とトリアリールアミン繰り返し単位とのコポリマーである。
【0088】
電子発光コポリマーは、たとえばWO00/55927およびUS6,353,083に開示されたように、電子発光領域ならびに正孔輸送領域および電子輸送領域の少なくとも1つを含んでもよい。正孔輸送領域および電子輸送領域の一方のみが設けられた場合には、電子発光領域は正孔輸送機能および電子輸送機能の他方を提供することもできる。あるいは、電子発光ポリマーを正孔輸送材料および/または電子輸送材料とブレンドすることができる。正孔輸送繰り返し単位、電子輸送繰り返し単位および発光繰り返し単位の1つまたは複数を含むポリマーは、ポリマー主鎖またはポリマー側鎖中に上記ユニットを提供することができる。
【0089】
そのようなポリマーの内部の異なった領域は、US6,353,083のようにポリマー主鎖に沿って提供されてもよく、またはWO01/62869のようにポリマー主鎖から吊り下がった基として提供されてもよい。
【0090】
重合方法
これらのポリマーの調製のための好ましい方法は、たとえばWO00/53656に記載されているようなSuzuki重合およびたとえばT.Yamamoto、「有機金属プロセスによって調製された電導性および熱安定性π共役ポリ(アリーレン)(Electrically Conducting And Thermally Stable π−Conjugated Poly(arylene)s Prepared by Organometallic Processes)」、Progress in Polymer Science、1993、17巻、1153〜1205頁に記載されているようなYamamoto重合である。これらの重合技法はいずれも「金属挿入」を介して行われ、ここで金属錯体触媒の金属原子がアリール基とモノマーの脱離基との間に挿入される。Yamamoto重合の場合にはニッケル錯体触媒が用いられる。Suzuki重合の場合にはパラジウム錯体触媒が用いられる。
【0091】
たとえば、Yamamoto重合による鎖状ポリマーの合成においては、2つの反応性ハロゲン基を有するモノマーが用いられる。同様に、Suzuki重合の方法によれば、少なくとも1つの反応基はボロン酸またはボロン酸エステル等のホウ素誘導基であり、他の反応基はハロゲンである。好ましいハロゲンは塩素、臭素およびヨウ素であり、最も好ましくは臭素である。
【0092】
したがって、本出願を通して説明するように、アリール基を含む繰り返し単位および末端基は、適当な脱離基を有するモノマーから誘導することができることを理解されたい。
【0093】
Suzuki重合は、位置規則的、ブロックおよびランダムコポリマーを調製するために用いることができる。特に、ホモポリマーまたはランダムコポリマーは、1つの反応基がハロゲンで、他の反応基がホウ素誘導基である場合に調製することができる。あるいは、ブロックまたは位置規則的、特にAB型のコポリマーは、第1のモノマーの両方の反応基がホウ素で、第2のモノマーの両方の反応基がハロゲンである場合に調製することができる。
【0094】
ハライドの代替として金属挿入に関与できる他の脱離基には、トシレート、メシレートおよびトリフレートを含む基が含まれる。
【0095】
溶液処理
単一のポリマーまたは複数のポリマーは、溶液から堆積して層5を形成することができる。ポリアリーレン、特にポリフルオレン用の適当な溶媒には、トルエンおよびキシレン等のモノまたはポリアルキルベンゼンが含まれる。
【0096】
特に好ましい溶液堆積法は、スピンコーティングおよびインクジェット印刷である。
【0097】
スピンコーティングは、電子発光材料のパターニングが必要でないデバイス、たとえば照明用途または単純な単色分割ディスプレイに特に適している。
【0098】
インクジェット印刷は、高情報量ディスプレイ、特にフルカラーディスプレイに特に適している。OLEDのインクジェット印刷は、たとえばEP0880303に記載されている。
【0099】
他の溶液堆積法には、たとえばディップコーティング、ロール印刷およびスクリーン印刷が含まれる。
【0100】
デバイスの多層を溶液処理で形成するならば、当業者はたとえば次の層を堆積する前に1層を架橋すること、または隣接する層の材料をこれらの層のうち第1層を形成する材料が第2層を堆積するために用いる溶媒に不溶であるように選択することによって、隣接する層の相互混合を防止する技法を認知するであろう。
【実施例1】
【0101】
比較組成物に加えて、本発明による3つの異なった組成物を調製した。
組成物1(比較):7.5wt%のリン光赤色エミッタをホスト材料にブレンドした。
組成物2:14wt%のリン光赤色エミッタをホスト材料にブレンドした。
組成物3:20wt%のリン光赤色エミッタをホスト材料にブレンドした。
組成物4:25wt%のリン光赤色エミッタをホスト材料にブレンドした。
【0102】
リン光赤色エミッタは、WO02/066552に開示されたような、赤色発光イリジウム錯体を含むコアと3,5−ジフェニルベンゼン系のデンドライトとを有するデンドリマーである。
【0103】
ホスト材料は、フルオレン繰り返し単位と式5の繰り返し単位とのコポリマーを含む。
【実施例2】
【0104】
実施例1からの組成物を用いてOLEDを作成した。パルス駆動条件下でOLEDを試験した。結果を図2に示す。
【0105】
Leverkusen、GermanyのH C Starck社からBaytron P(登録商標)として入手可能なポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホネート)(PEDT/PSS)をスピンコーティングにより、ガラス基板(Applied Films社、Colorado、USAから入手可能)上に支持されたインジウムスズ酸化物アノード上に堆積する。フルオレン−トリアリールアミンコポリマーの正孔輸送層をスピンコーティングにより、キシレン溶液から厚み約10nmにPEDT/PSS層上に堆積し、180℃で1時間加熱する。実施例1からの組成物をスピンコーティングにより、キシレン溶液から厚み約65nmに正孔輸送層上に堆積する。バリウムの第1層を厚み約10nmまで、そしてアルミニウムバリウムの第2層を厚み約100nmに半導性ポリマー上に蒸着させることによって、Ba/Alカソードを実施例1の組成物の上に形成させる。最後に、気密シールを形成するため、デバイス上に取り付けられ、基板上に接着されたゲッターを含む金属筺体を用いてデバイスをシールする。
【0106】
以下のようにパルス駆動トレインを用いてデバイスを駆動した。
オフ状態において−9V
周波数=60Hz
マルチプレックス比=64
【0107】
オン状態において、30,000cd/mの初期ピーク輝度を達成するために必要な電流でデバイスを駆動した。
【0108】
結果
図2に示すように、濃度7.5wt%で存在するリン光エミッタは、より高濃度のエミッタを有する組成物よりも実質的に短いパルス寿命を有する。さらに、実施例2〜4の組成物の効率は、比較組成物1の効率と同程度で、ある場合にはこれよりも高い。そのように高いドーパント濃度の組成物は濃度消光に付随する欠点があると予想されると思われるので、これは驚くべきことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト材料およびリン光エミッタを含む組成物であって、前記リン光エミッタは前記ホスト材料中に10wt%を超える濃度で存在し、前記ホスト材料は前記リン光エミッタよりも高い三重項エネルギーレベルを有し、前記組成物は蛍光エミッタを含まず、したがって前記組成物からの発光は実質的にすべてリン光であり、前記リン光エミッタは前記ホスト材料中で10wt%を超える濃度においてピーク効率を有することを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記リン光エミッタが前記ホスト材料中に10〜25wt%の範囲の濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記リン光エミッタが前記ホスト材料中に14〜25wt%の範囲の濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ホスト材料が前記リン光エミッタとブレンドされている、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記ホスト材料が前記リン光エミッタに結合している、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ホスト材料がポリマーである、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記リン光エミッタが赤色エミッタである、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記リン光エミッタがIr錯体を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ホスト材料が青色ホスト材料である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物を含むパルス駆動発光デバイス。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物を含む有機発光デバイス。
【請求項12】
請求項11に記載の有機発光デバイスを含むパルス駆動ディスプレイ。
【請求項13】
観察者の臨界融合周波数を超える周波数でディスプレイを駆動するための駆動手段をさらに含む、請求項12に記載のパルス駆動ディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−510509(P2011−510509A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543559(P2010−543559)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際出願番号】PCT/GB2009/000170
【国際公開番号】WO2009/093025
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(597063048)ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッド (152)
【出願人】(506061668)サメイション株式会社 (51)
【Fターム(参考)】