説明

パルプモールド製たこ焼き容器及びその製造方法

【課題】容器が融けたり、食味が落ちたり、容器に蒸気を逃がすための穴や隙間を設ける必要がなく、容器ごと電子レンジで再加熱することができるパルプモールド製たこ焼き容器の提供。
【解決手段】図1において、本発明のパルプモールド製たこ焼き容器は、蓋が一体に接続された有低容器1からなり、この底面13には8個の凹部14が並列されており、この凹部14にたこ焼きが収納される。凹部14は曲率半径25mm、深さ5mmからなる球形凹部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプモールド製たこ焼き容器及びその製造方法に関するもので、更に詳しくは、防水及び防油効果を持たせたパルプモールド製たこ焼き容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テイクアウトのたこ焼き屋で用いるたこ焼き容器としては、ポリスチレン、発砲ポリスチレン、紙、経木、可食材料などの材質で製造されたものが広く用いられている。このポリスチレン製容器は、もっとも周知の材料の一つであり、また発砲ポリスチレンは、通常、発砲ポリスチレンペーパーシートで製作し、容器本体に対して蓋体を開閉自在に設けたものが用いられており、容器本体の底面の外側の周囲には突条が形成されている(例えば、特許文献1参照)。また可食材料製のものは、エビ煎餅を製造する際に使用する材料と同様の可食材料を用いてプレス成形したものであり、たこ焼きが収容された食品包装容器をそのまま口にまで運び、食品包装容器と共にたこ焼きをたべることができ、食べ終わった後にゴミにならないという利点がある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平10−77021号公報(段落0002、段落0003、図8)
【特許文献2】特開2001−270582(要約書)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述の如き特許文献1に記載されている如き発砲ポリスチレンペーパーシートで形成された容器は、焼きたてのたこ焼きを入れると、容器がたこ焼きの熱によって熱せられて熔けてしまうという問題があった。またたこ焼きを入れた容器を複数個積み重ねると、たこ焼きの約100℃の蒸気により容器本体の内部が蒸れて高温となり、また突条内が密閉状態に保持されて熱が蓄積されて高温状態となり、該容器の耐熱温度が約85℃であるところから、容器の底面が大きく湾曲してしまうという問題があった。
【0004】
またポリスチレン、紙、経木などでは、以下のごとき問題がある。
・ 素材上の問題
(1)ポリスチレン製のフードパック
イ.前述の如く耐熱性、耐油性が低く、焼きたてのたこ焼きを入れると、容器が融ける怖れがある。
【0005】
ロ.容器が水蒸気を通さないため、たこ焼きが冷めるにしたがい、たこ焼きから出る水蒸気が容器に結露し、その結果、水分がたこ焼きの上に落ちてたこ焼きがふやけ、食味が落ちる。
【0006】
ハ.容器に蒸気を逃がすための穴や隙間を設ける必要があり、そのためたこ焼きのにかけたソースが漏れる怖れがある。
【0007】
ニ.容器の耐熱性が低いため、容器ごと電子レンジで再加熱することができない。
【0008】
(2)紙製の箱(または容器)
イ.耐水性が低いため、時間と共にたこ焼きの水分が吸収された容器からしみ出す。
【0009】
ロ.糊代に接着剤を用いて容器形状に加工しているため、たこ焼きを入れると熱で接着力が弱まり、接着が剥がれる恐れがある。
【0010】
ハ.加工が複雑かつ難しく、コスト増となる。
【0011】
(3)経木製
イ.蓋がないため使用し難い。
ロ.成形し難く、形状が限られる。
・ 形状における問題
上記のポリスチレン製のフードパック、紙製の箱(または容器)及び経木製のいずれにおいても
イ.持ち帰りの際に、たこ焼きが容器の一方にずれ易い。
ロ.ソースがたこ焼きの表面以外の容器にもついてしまって、たこ焼きに効率的につかない。
【0012】
そこで、本発明者は、前記問題点につき、種々、検討したところ、防水剤と防油剤を添加したパルプ分散液で容器をパルプモールドにより形成し、かつ容器内部において、底面の形状を湾曲状の凹部を形成し、そこにたこ焼きに一部が収納される形態としたところ、上記の問題点が解決され、主として、(1)防水及び防油効果が得られ、容器が融ける怖れがない。(2)結露した水分がたこ焼きの上に落ちてたこ焼きがふやけ、食味が落ちることがない。(3)容器に蒸気を逃がすための穴や隙間を設ける必要がない。(4)材質がパルプであるから、容器ごと電子レンジで再加熱することができる。(5)持ち帰りの際に、たこ焼きが容器の一方にずれる恐れがないという優れた効果を奏することができることを見出し、ここに本発明を成すに至った。
【0013】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、容器が融ける怖れがなく、食味が落ちることがなく、容器に蒸気を逃がすための穴や隙間を設ける必要がなく、容器ごと電子レンジで再加熱することができるパルプモールド製たこ焼き容器及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記各課題は、以下の各発明によってそれぞれ達成される。
(1)本体の開口部に第1のフランジを有し、その一端に該フランジに対応した第2のフランジを有する蓋体が一体に接続され、開閉自在とした有底の容器からなり、前記蓋体には本体容器の係合用スリットに対向して係合用突起を有するパルプモールド容器において、該パルプモールド容器は、漉き上げ前に防水剤及び防油剤が添加されたパルプ分散液を用いて成型されたことを特徴とするパルプモールド製たこ焼き容器。
(2)本体の開口部に第1のフランジを有し、その一端に該フランジに対応した第2のフランジを有する蓋体が一体に接続され、開閉自在とした有底の容器からなり、該本体の底面に外方向に複数の凸曲面部を配列して有し、該凸曲面部の内部はたこ焼き収納用凹部が形成され、また前記蓋体には本体容器の係合用スリットに対向して係合用突起を有するパルプモールド製たこ焼き容器において、該パルプモールド製たこ焼き容器は、漉き上げ前に防水剤及び防油剤が添加されたパルプ分散液を用いて成型されたことを特徴とするパルプモールド製たこ焼き容器。
(3)前記底面の内側に、たこ焼き固定用仕切りを有することを特徴とする前記第1項に記載のパルプモールド製たこ焼き容器。
(4)パルプ分散水溶液に防水剤及び防油剤を添加し、得られたパルプ分散水溶液を用いて有低容器と蓋とが接続部で一体に接続される同形の網型で漉き上げ、漉き上げられたモールドパルプを網型と同形の加熱プレス装置に網型と一緒に設置した後、加熱・加圧することを特徴とするパルプモールド製たこ焼き容器の製造方法。
(5)防水剤の添加量がパルプ分散水溶液に対して0.01〜10重量%であることを特徴とする前記第4項に記載のパルプモールド製たこ焼き容器の製造方法。
(6)防油剤の添加量がパルプ分散水溶液に対して0.01〜10重量%であることを特徴とする前記第4項に記載のパルプモールド製たこ焼き容器の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1項に記載のパルプモールド製たこ焼き容器によれば、該パルプモールド容器は、漉き上げ前に防水剤及び防油剤が添加されたパルプ分散液を用いて成型されたことにより、(1)防水及び防油効果が得られ、容器が融ける怖れがない。(2)パルプモールド製であることにより通気性があるので、たこ焼きから出る水蒸気は、結露することなく、容器外へ発散することができる。したがって、食味が落ちることがない。(3)容器は通気性があるばかりでなく、紙容器のように接着の必要がなく、したがって、接着部が剥がれるような不都合がなく、コストも低減できるという優れた効果を奏するものである。(4)材質がパルプであるから、容器ごと電子レンジで再加熱することができるという優れた効果を奏するものである。
【0016】
また上記の本発明の第2項に記載のパルプモールド製たこ焼き容器によれば、該本体の底面に外方向に複数の凸曲面部を配列して有し、該凸曲面部の内部はたこ焼き収納用凹部が形成され、また前記蓋体には本体容器の係合用スリットに対向して係合用突起を有するパルプモールド製たこ焼き容器であって、該パルプモールド製たこ焼き容器は、漉き上げ前に防水剤及び防油剤が添加されたパルプ分散液を用いて成型されたことにより、(1)防水及び防油効果が得られ、容器が融ける怖れがない。(2)パルプモールド製であることにより通気性があるので、たこ焼きから出る水蒸気は、結露することなく、容器外へ発散することができる。したがって、食味が落ちることがない。(3)容器は通気性があるばかりでなく、紙容器のように接着の必要がなく、したがって、接着部が剥がれるような不都合がなく、コストも低減できるという優れた効果を奏するものである。(4)材質がパルプであるから、容器ごと電子レンジで再加熱することができるという優れた効果を奏するものである。更に(5)持ち帰りの際に、たこ焼きが容器の一方にずれる恐れがないという優れた効果を奏するものである。更にまた、たこ焼きのソースが容器の底の湾曲部に溜まり易いので、該ソースの量を減らすことができ、経済的に節約できるという優れた効果を奏するものである。
上記の本発明の第3項に記載のパルプモールド製たこ焼き容器によれば、前記第2項に記載の(1)乃至(5)の発明の効果を奏するものである。上記の本発明の第4項に記載のパルプモールド製たこ焼き容器の製造方法によれば、パルプ分散水溶液に防水剤及び防油剤を添加し、得られたパルプ分散水溶液を用いて有低容器と蓋とが接続部で一体に接続される同形の網型で漉き上げ、漉き上げられたモールドパルプを網型と同形の加熱プレス装置に網型と一緒に設置した後、加熱・加圧することにより、防水性及び防油性に優れ、容器が融ける怖れがない。しかも通気性があるので、たこ焼きから出る水蒸気は、結露することなく、容器外へ発散することができる。したがって、食味が落ちることがないという優れた効果を奏するものである。本発明の第5項に記載の発明は、前記第4項の発明において、防水剤の添加量がパルプ分散水溶液に対して0.01〜10重量%であることにより、防水性に優れかつ通気性に優れたものが得られる。
本発明の第6項に記載の発明は、前記第4項の発明において、防油剤の添加量がパルプ分散水溶液に対して0.01〜10重量%であることにより、防油性に優れかつ通気性があるので、たこ焼きから出る水蒸気は、結露することなく、容器外へ発散することができる。したがって、食味が落ちることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態を図面で説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。図1は、本発明のパルプモールド製たこ焼き容器の形状を示す断面図である。図2は、その断面図である。図2のaは、長手方向の断面図であり、図2のbは、奥行き方向の断面図である。図1乃至図2において、たこやき容器1は、有底容器11からなり、その開口部の長手方向の端部には蓋12が接続部2で接続されている。有底容器11の底13には、複数の凹部14が併列されている。例えば、底面13には1列4個の凹部14が2列配列されている。この凹部14の形状は、球状からなり、たこやきのボールが入る曲率半径(例えば、25mm)を有することが好ましい。底面13に曲率半径が25mm、前後、深さ5mm前後の凹部14を設けることが好ましい。この凹部14を設けることにより持ち帰りの際に、たこ焼きが容器の一方にずれる恐れがないばかりかソースが容器の底の湾曲部に溜まり易く、しかも容器の底の平面部に付着することが極めて少ないので、該ソースの量を減らすことができ、経済的に節約できるという優れた効果を奏するものである。
【0018】
有底容器11の開口部の周囲にはフランジ4を有し、またこれと対向して蓋12の周囲にもフランジ3を有している。これらのフランジ3、4は容器の開口部が変形するのを防止すると共に蓋をしたときに安定して保持するためである。更に蓋12の接続部2と反対側にはつば部5を有し、これと対向した位置であって、有底容器のフランジ4には、係合部7を有している。この係合部7は、スリットの場合を図示しているが、つば部5を折り曲げて引っかけてもよい。本発明のたこ焼き容器1の原料は、パルプが用いられるが、好ましくはバガス(サトウキビの搾りかす)、葦、竹などの非木質系のパルプがよい。また加熱プレス装置において、加熱温度は、120℃〜200℃であり、好ましくは40℃〜160℃である。圧力は0.01〜10kgf/cm2 である。本発明のたこ焼き容器1の製造に際し、パルプ水分散液の濃度は、0.5重量%〜10重量%であり、好ましくは1重量%〜5重量%である。また防水剤は、例えば、ポリアクリル酸エステルなどの食品用の防水剤が用いられる。防水剤の添加量は、パルプ分散水溶液に対して0.01〜10重量%であり、好ましくは、0.1〜0.5重量%である。また防油剤は、例えば、フッ素変成ポリアクリル酸エステルなどの食品用の防油剤が用いられ、加熱により架橋して防油性となる。防油剤の添加量は、パルプ分散水溶液に対して0.01〜10重量%であり、好ましくは、0.1〜0.5重量%である。
【0019】
上記の構造のたこ焼き容器1の製造方法は、水中にバガス(サトウキビの搾りかす)から得られたパルプを分散させて、2重量%のパルプ分散水溶液を造り、このパルプ分散水溶液に0.02重量%の防水剤及び0.02重量%の防油剤を添加し、有低容器11と蓋12とが接続部2で一体に接続される同形の網型で漉き上げる。漉き上げられたモールドパルプを網型と同形の加熱プレス装置に網型と一緒に設置し、160℃の温度で加圧する。得られたパルプモールド製たこ焼き容器1は、図1に示されるように、底面13に曲率半径25mm、深さ5mmの凹部14が8個設けられている容器11が蓋12と一体となったフードパックタイプであり、かつ防水性と防油性を備えている。この凹部14にたこ焼き6が収納される。またかけたソースは、容器の凹部14に溜まった。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明では、前述の如き作用効果を発揮するので、防水性と防油性を目的とした食品容器、例えば、たこ焼き容器又はこれと同様の目的に使用できる容器に広く使用される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のたこ焼き容器を示す斜視図である。
【図2】図1のA―B線の断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 パルプモールド製たこ焼き容器
2 接続部
3、4 フランジ
5 つば
6 たこ焼き
7 係合部
11 有低容器
12 蓋
13 底部又は底面
14 凹部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の開口部に第1のフランジを有し、その一端に該フランジに対応した第2のフランジを有する蓋体が一体に接続され、開閉自在とした有底の容器からなり、前記蓋体には本体容器の係合用スリットに対向して係合用突起を有するパルプモールド容器において、該パルプモールド容器は、漉き上げ前に防水剤及び防油剤が添加されたパルプ分散液を用いて成型されたことを特徴とするパルプモールド製たこ焼き容器。
【請求項2】
本体の開口部に第1のフランジを有し、その一端に該フランジに対応した第2のフランジを有する蓋体が一体に接続され、開閉自在とした有底の容器からなり、該本体の底面に外方向に複数の凸曲面部を配列して有し、該凸曲面部の内部はたこ焼き収納用凹部が形成され、また前記蓋体には本体容器の係合用スリットに対向して係合用突起を有するパルプモールド製たこ焼き容器であって、該パルプモールド製たこ焼き容器は、漉き上げ前に防水剤及び防油剤が添加されたパルプ分散液を用いて成型されたことを特徴とするパルプモールド製たこ焼き容器。
【請求項3】
前記底面の内側に、たこ焼き固定用仕切りを有することを特徴とする請求項1に記載のパルプモールド製たこ焼き容器。
【請求項4】
パルプ分散水溶液に防水剤及び防油剤を添加し、得られたパルプ分散水溶液を用いて有低容器と蓋とが接続部で一体に接続される同形の網型で漉き上げ、漉き上げられたモールドパルプを網型と同形の加熱プレス装置に網型と一緒に設置した後、加熱・加圧することを特徴とするパルプモールド製たこ焼き容器の製造方法。
【請求項5】
防水剤の添加量がパルプ分散水溶液に対して0.01〜10重量%であることを特徴とする請求項4に記載のパルプモールド製たこ焼き容器の製造方法。
【請求項6】
防油剤の添加量がパルプ分散水溶液に対して0.01〜10重量%であることを特徴とする請求項4に記載のパルプモールド製たこ焼き容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−206103(P2006−206103A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−20898(P2005−20898)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(505035770)株式会社エコ・アイ (1)
【Fターム(参考)】