説明

パワーコンディショナ及びその制御方法

【課題】FRT機能を実現できるDC給電機能付きパワーコンディショナを提供する。
【解決手段】DC給電機能付きのPCS2は、PV1の出力電力をDC/DC変換するDC/DC変換回路11と、DC/DC変換回路11の出力電力を少なくともDC/AC変換するDC/AC変換回路13と、DC/DC変換回路11の出力電力を調整してDC負荷4に供給する出力調整回路18と、AC系統3の電圧低下が生じると、DC/AC変換回路13の動作を停止するゲートブロック回路21aと、AC系統3の電圧低下が生じると、DC/DC変換回路11の出力電圧が一定に保たれるように、DC/DC変換回路11及び出力調整回路18を制御する制御部21と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流(DC)電源を交流(AC)系統へ系統連系するパワーコンディショナ及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力の需要家において、商用のAC系統(以下、適宜「系統」と称する)の補助電源として、系統との連系運転により負荷及び系統に電力を供給できる分散型電源システムの導入が進んでいる。
【0003】
系統への逆潮流が可能な太陽光発電システムは、系統の停電時において逆潮流が行われる状態(すなわち、単独運転)を避けるよう義務付けられており、系統の停電を検出して系統からの解列を行う単独運転防止機能を有する。
【0004】
一方で、太陽光発電システムの普及拡大が進み、総発電量における太陽光発電システムの発電量の占める割合が高くなった場合において、系統擾乱により太陽光発電システムが一斉に系統から解列すると、系統内の需給バランスが崩れ、広範囲に停電が及ぶ可能性がある。
【0005】
このため、太陽光発電システムは、系統の瞬時的な電圧低下(「瞬低」と称される)の際に、系統から解列せずに出力を低下(停止を含む)し、系統が瞬低から復帰(復電)した際に直ちに出力を元に戻す機能が求められる。このような機能は、FRT(Fault Ride Throuth)と称される。
【0006】
太陽光発電システムは、太陽電池(PV)と、PVを系統に連系するパワーコンディショナとを有する。パワーコンディショナは、PVの出力をDC/DC変換するDC/DC変換回路(昇圧回路)と、DC/DC変換回路の出力をDC/AC変換するDC/AC変換回路(インバータ回路)と、解列を行うための連系リレーと、を含む。
【0007】
また、PVの出力が最大となる最大動作点を追従制御する最大動作点追従(MPPT)制御を行うパワーコンディショナにおいて、FRT機能を実現するために、停電直前の動作点(すなわち、PVの電圧)を記憶し、停電からの復帰時には、当該記憶されている動作点からMPPT制御を再開する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−101455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、従来のパワーコンディショナは、DC/AC変換回路の出力電力を系統及びAC負荷に供給するものである。
【0010】
これに対し、DC/AC変換回路の出力電力を系統に供給しつつ、DC/DC変換回路の出力電力をDC負荷に供給する構成(すなわち、DC給電機能付きパワーコンディショナ)とすれば、DC/AC変換回路での変換損失による電力の損失を低減できる。
【0011】
したがって、そのようなDC給電機能付きパワーコンディショナにおいても、FRT機能を実現できることが望まれる。
【0012】
そこで、本発明は、FRT機能を実現できるDC給電機能付きパワーコンディショナ及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有している。
【0014】
本発明に係るパワーコンディショナは、DC電源(例えばPV1)をAC系統(例えばAC系統3)へ系統連系すると共に、DC負荷(例えばDC負荷4)への給電が可能なパワーコンディショナ(例えばPCS2)であって、前記DC電源の出力電力をDC/DC変換するDC/DC変換回路(例えばDC/DC変換回路11)と、前記DC/DC変換回路の出力電力を少なくともDC/AC変換するDC/AC変換回路(例えばDC/AC変換回路13)と、前記DC/DC変換回路の出力電力を調整して前記DC負荷に供給する出力調整回路(例えば出力調整回路18)と、前記AC系統の電圧低下が生じると、前記DC/AC変換回路の動作を停止する停止手段(例えばゲートブロック回路21a)と、前記AC系統の電圧低下が生じると、前記DC/DC変換回路の出力電圧が一定に保たれるように、前記DC/DC変換回路及び前記出力調整回路を制御する制御手段(例えば制御部21)と、を有することを特徴とする。
【0015】
このような特徴によれば、AC系統の電圧低下が生じると、DC/AC変換回路の動作を停止し、DC/DC変換回路の出力電圧が一定に保たれるようにDC/DC変換回路及び出力調整回路を制御する。AC系統の電圧低下時にDC/DC変換回路の出力電圧が大幅に低下又は上昇すると、AC系統の復電時にパワーコンディショナのAC出力を元に戻すまでに要する時間が長くなってしまう。これに対し、DC/DC変換回路の出力電圧が一定に保たれるように制御することで、AC系統の復電時に直ちにパワーコンディショナのAC出力を元に戻すことができる。よって、DC給電機能付きのパワーコンディショナにおいてFRT機能を実現できる。
【0016】
本発明に係るパワーコンディショナの他の特徴によれば、前記制御手段は、前記AC系統の電圧低下が発生した際に、前記DC/DC変換回路の出力電力が前記DC負荷の消費電力よりも少ない場合に、前記DC/DC変換回路の出力電力に合わせて前記DC負荷への供給電力を低下させるように、前記出力調整回路を制御する。
【0017】
本発明に係るパワーコンディショナの他の特徴によれば、前記制御手段は、前記AC系統の電圧低下が発生した際に、前記DC/DC変換回路の出力電力が前記DC負荷の消費電力よりも少ない場合に、前記DC/DC変換回路に対する最大動作点追従制御を継続する。
【0018】
本発明に係るパワーコンディショナの他の特徴によれば、前記DC/AC変換回路は、前記AC系統からの電力をAC/DC変換して前記DC/DC変換回路側へ出力可能な双方向インバータであり、前記停止手段は、前記AC系統が電圧低下から所定時間内に復帰すると、前記DC/AC変換回路の動作停止を解除し、前記制御手段は、前記DC/AC変換回路の動作停止が解除されると、前記DC/DC変換回路側への 前記DC/AC変換回路の出力電力を上昇させるように前記DC/AC変換回路を制御しながら、前記DC負荷への供給電力を前記AC系統の電圧低下が生じる前の供給電力まで上昇させるように前記出力調整回路を制御する。
【0019】
本発明に係るパワーコンディショナの他の特徴によれば、前記制御手段は、前記AC系統の電圧低下が生じる前に、前記DC/DC変換回路の出力電力が前記DC負荷の消費電力よりも少ない場合に、前記AC系統の電力をAC/DC変換する逆方向動作を行うように、前記DC/AC変換回路を制御する。
【0020】
本発明に係るパワーコンディショナの他の特徴によれば、前記制御手段は、前記AC系統の電圧低下が発生した際に、前記DC/DC変換回路の出力電力が前記DC負荷の消費電力よりも多い場合に、前記DC負荷の消費電力に合わせて前記DC/DC変換回路の出力電力を低下させるように、前記DC/DC変換回路を制御する。
【0021】
本発明に係るパワーコンディショナの他の特徴によれば、前記制御手段は、前記AC系統の電圧低下が発生した際に、前記DC/DC変換回路の出力電力が前記DC負荷の消費電力よりも多い場合に、前記DC/DC変換回路に対する制御を最大動作点追従制御から定出力制御に切り替える。
【0022】
本発明に係るパワーコンディショナの他の特徴によれば、前記停止手段は、前記AC系統が電圧低下から所定時間内に復帰すると、前記DC/AC変換回路の動作停止を解除し、前記制御手段は、前記DC/AC変換回路の動作停止が解除されると、前記DC/DC変換回路に対する制御を前記定出力制御から前記最大動作点追従制御に切り替え、前記制御手段は、前記最大動作点追従制御に切り替えた後、前記DC/AC変換回路の出力電力を上昇させるように前記DC/AC変換回路を制御しながら、前記最大動作点追従制御での動作点を前記AC系統の電圧低下が生じる前の状態まで戻すように前記DC/DC変換回路を制御する。
【0023】
本発明に係る制御方法は、DC電源の出力電力をDC/DC変換するDC/DC変換回路と、前記DC/DC変換回路の出力電力を少なくともDC/AC変換するDC/AC変換回路と、前記DC/DC変換回路の出力電力を調整してDC負荷に供給する出力調整回路と、を有し、前記DC電源をAC系統へ系統連系すると共に、前記DC負荷への給電が可能なパワーコンディショナの制御方法であって、前記AC系統の電圧低下が生じると、前記DC/AC変換回路の動作を停止するステップAと、前記AC系統の電圧低下が生じると、前記DC/DC変換回路の出力電圧が一定に保たれるように、前記DC/DC変換回路及び前記出力調整回路を制御するステップBと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、FRT機能を実現できるDC給電機能付きパワーコンディショナ及びその制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係るPCSを含む全体システム構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るPCSの動作フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の実施形態に係る図面において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付す。
【0027】
(全体構成)
図1は、本実施形態に係るパワーコンディショナ(Power Conditioning System:PCS)2を含む全体システム構成図である。図1において、破線は制御ラインを示す。
【0028】
図1に示すように、PCS2は、太陽光エネルギーを電流に変換する太陽電池(PV)1と、商用のAC系統3との間に設けられる。PV1は、直列接続されたモジュールからなるフォトダイオード部を含み、発電時は200v程度の高電圧を発生する。
【0029】
PCS2は、PV1をAC系統3へ系統連系する。詳細には、PCS2は、PV1からのDC電力を商用周波数(例えば50又は60Hz)のAC電力に変換してAC系統3へ出力できる。また、PCS2は、DC電力をDC負荷4に供給するDC給電機能を有する。
【0030】
(PCSの構成)
図1に示すように、PCS2は、ノイズフィルタ10、DC/DC変換回路11、電力測定器12、DC/AC変換回路13、電圧測定器(VT)14a、電流測定器(CT)14b、ノイズフィルタ15、連系リレー16、電力測定器17、出力調整回路18、ノイズフィルタ19、CT20、及び制御部21を有する。
【0031】
ノイズフィルタ10は、落雷その他外部からの外乱の進入を防ぐためのものである。ノイズフィルタ10は、PV1の出力に含まれるノイズを除去してDC/DC変換回路11に出力する。
【0032】
DC/DC変換回路11は、ノイズフィルタ10の出力を電圧変換(昇圧)する。DC/DC変換回路11は、ノイズフィルタ10の出力をDC/AC変換で使える電圧(例えば200vのACならば300〜370v。以下「リンク電圧」と称する)に変換する。DC/DC変換回路11は、リアクタL1、スイッチング素子Q1、ダイオードD1、及びコンデンサC1を含む。スイッチング素子Q1は例えばパワーMOSFETである。スイッチング素子Q1は、制御部21からゲートに印加されるパルス信号により高周波スイッチングを行う。
【0033】
電力測定器12は、DC/DC変換回路11の出力電力Pを測定する。電力測定器12は、測定した出力電力Pを制御部21に出力する。電力測定器12の出力は2つに分岐しており、一方はAC系統3との間の電力経路であり、他方はDC負荷4との間の電力経路である。本実施形態では、DC/DC変換回路11の出力電力Pは優先的にDC負荷4へ出力(給電)され、余剰分がAC系統3に出力(逆潮流)される。
【0034】
DC/AC変換回路13、VT14a、CT14b、ノイズフィルタ15、及び連系リレー16は、電力測定器12とAC系統3との間の電力経路上に設けられる。
【0035】
DC/AC変換回路13は、DC/DC変換回路11の出力を電力測定器12を介して入力する。DC/AC変換回路13は、DCのリンク電圧から商用の50Hzや60Hzに変換して出力する。また、本実施形態では、DC/AC変換回路13は、AC系統3からのAC電力をAC/DC変換してDC/DC変換回路11側へ出力可能な双方向インバータである。
【0036】
DC/AC変換回路13は、フルブリッジ接続された4つのスイッチング素子Q2〜Q5と、フィルタ回路を構成するリアクタL2,L3及びコンデンサC2と、を含む。スイッチング素子Q2〜Q5は例えばIGBTである。スイッチング素子Q2〜Q5は、制御部21からゲートに印加されるパルス信号により高周波スイッチングを行う。
【0037】
VT14a及びCT14bは、電圧測定器や電流測定器であり、測定値を制御部21に出力する。VT14a及びCT14bにより得られた測定値は、制御部21において例えばDC/AC変換回路13の制御に使用される。
【0038】
ノイズフィルタ15は、AC系統3へのノイズ出力を無くすためのものである。ノイズフィルタ15は、DC/AC変換回路13の出力をVT14a及びCT14bを介して入力し、ノイズを除去して出力する。
【0039】
連系リレー16は、連系及び解列を切り替えるためのものである。連系リレー16が導通(以下、「オン」)状態のときは通常状態(連系状態)であり、連系リレー16が非導通(以下、「オフ」)状態のときは解列状態である。連系リレー16のオン・オフは制御部21によって制御される。
【0040】
一方、電力測定器17、出力調整回路18、ノイズフィルタ19、及びCT20は、電力測定器12とDC負荷4との間の電力経路上に設けられる。
【0041】
電力測定器17は、DC/DC変換回路11の出力電力Pのうち、DC負荷4へ供給される電力(R)を測定し、測定値を制御部21に出力する。
【0042】
出力調整回路18は、DC/DC変換回路11の出力を電力測定器12及び17を介して入力し、DC負荷4へ供給される電力(R)を調整して出力するためのものである。出力調整回路18は、条件によって動作が異なる。発電量(電力P)>DC負荷消費量(電力R)の場合、出力調整回路18は特に調整を行わず、定電圧出力そのままで負荷を駆動する。これに対し、発電量(電力P)≦DC負荷消費量(電力R)の場合、DC負荷消費量を制限するために出力調整回路18が作動し、例えばリンク電圧が一定になるように定電流出力を行う。
【0043】
ノイズフィルタ19は、出力調整回路18の出力に含まれるノイズを除去して出力する。
【0044】
CT20は、ノイズフィルタ19の出力電流を測定し、測定値を制御部21に出力する。
【0045】
制御部21は、電力測定器12、VT14a、CT14b、電力測定器17、及びCT20のそれぞれからの測定値に基づいて、DC/DC変換回路11、DC/AC変換回路13、連系リレー16、及び出力調整回路18を制御する。
【0046】
通常時には、制御部21は、DC/DC変換回路11に対して、PV1の出力が最大となる最大動作点にPV1の電圧を追従制御する最大動作点追従(MPPT)制御を行う。詳細には、スイッチング素子Q1に印加するパルス信号のデューティー比を調整するPWM制御によってDC/DC変換回路11を制御する。
【0047】
また、制御部21は、通常時において、DC/DC変換回路11の出力電力(P)がDC負荷4の消費電力(R)よりも多い場合に、DC/AC変換を行うようにDC/AC変換回路11を制御する。これに対し、通常時において、DC/DC変換回路11の出力電力(P)がDC負荷4の消費電力(R)よりも少ない場合に、その不足分をAC系統3の電力で賄うために、逆方向動作(すなわち、AC/DC変換)を行うようにDC/AC変換回路11を制御する。このような逆方向制御を行うモードはコンバータモードと称される。DC/AC変換回路11に対する制御は、スイッチング素子Q2〜Q5に印加するパルス信号のデューティー比を調整するPWM制御によって行われる。
【0048】
制御部21は、DC/AC変換回路11の動作を停止させるためのゲートブロック回路21aを含む。制御部21は、VT14aにより測定されるAC系統3の電圧値の低下、特に、0vまでの電圧低下を検出すると、ゲートブロック回路21aによってDC/AC変換回路11の動作を停止させる。例えば、スイッチング素子Q2〜Q5をオフに固定することで、DC/AC変換回路11の動作を停止させる。
【0049】
そして、制御部21は、系統3の電圧低下が発生した際に、DC/DC変換回路11の出力電力(P)がDC負荷4の消費電力(R)よりも少ない場合に、DC/DC変換回路11の出力電力に合わせてDC負荷4への供給電力を低下させるように、出力調整回路18を制御する。このように、出力調整回路18によってDC負荷4への給電制限を行うことで、リンク電圧の大幅な低下を防ぐ。
【0050】
なお、系統3の電圧低下が発生した際にコンバータモードであれば、DC/DC変換回路11の出力電力(P)がDC負荷4の消費電力(R)よりも少ないと見なしてもよい。
【0051】
また、制御部21は、系統3の電圧低下が発生した際に、DC/DC変換回路11の出力電力(P)がDC負荷4の消費電力(R)よりも少ない場合に、DC/DC変換回路11に対するMPPT制御を継続する。これにより、DC/DC変換回路11の出力電力(P)をできる限り大きい状態に維持する。
【0052】
その後、制御部21は、系統3が電圧低下から所定時間内(例えば1秒以内)に復帰すると、ゲートブロック回路21aによるDC/AC変換回路13の動作停止を解除する。そして、制御部21は、DC/AC変換回路13の動作停止を解除すると、DC/DC変換回路11側へのDC/AC変換回路13の出力電力を上昇させるようにDC/AC変換回路13を制御(すなわち、コンバータモードでの制御)しながら、DC負荷4への供給電力(R)を系統3の電圧低下が発生する前の状態まで上昇させるように出力調整回路18を制御する。ここで、復帰時のリンク電圧の変動を防止するために、DC/DC変換回路11側へのDC/AC変換回路13の出力電力を上昇させるレートと、DC負荷4への供給電力(R)を上昇させるレートと、を合わせることが好ましい。
【0053】
一方、制御部21は、系統3の電圧低下が発生した際に、DC/DC変換回路11の出力電力(P)がDC負荷4の消費電力(R)よりも多い場合には、DC負荷4の消費電力(R)に合わせてDC/DC変換回路11の出力電力を低下させるように、DC/DC変換回路11を制御する。詳細には、制御部21は、出力調整回路18による給電制限を行うことなく、DC/DC変換回路11に対する制御をMPPT制御から定出力制御に切り替える。このようにしてDC/DC変換回路11の出力電力を低下させることで、リンク電圧の大幅な上昇を防ぐ。
【0054】
なお、系統3の電圧低下が発生した際にコンバータモードでなければ、DC/DC変換回路11の出力電力(P)がDC負荷4の消費電力(R)よりも多いと見なしてもよい。
【0055】
その後、制御部21は、系統3が電圧低下から所定時間内(例えば1秒以内)に復帰すると、ゲートブロック回路21aによるDC/AC変換回路13の動作停止を解除する。また、制御部21は、DC/AC変換回路13の動作停止を解除すると、DC/DC変換回路11に対する制御を定出力制御からMPPT制御に切り替える。そして、制御部21は、MPPT制御に切り替えた後、DC/AC変換回路13の出力電力を上昇させるようにDC/AC変換回路13を制御しながら、MPPT制御での動作点(PV1の電圧)を系統3の電圧低下が発生する前の状態まで戻すようにDC/DC変換回路11を制御する。ここで、復帰時のリンク電圧の変動を防止するために、DC/AC変換回路13の出力電力を上昇させるレートと、MPPT制御での動作点(PV1の電圧)を元に戻すレートと、を合わせることが好ましい。
【0056】
(PCSの動作)
次に、PCS2の動作を説明する。図2は、PCS2の動作フロー図である。図2の初期状態では、制御部21はMPPT制御を行っている。
【0057】
図2に示すように、ステップS11において、制御部21は、VT14aにより測定されるAC系統3の電圧値を監視する。
【0058】
ステップS12において、制御部21は、VT14aにより測定されるAC系統3の電圧値の低下、特に、0vまでの電圧低下を検出したか否かを確認する。AC系統3の電圧低下を検出しない場合(ステップS12;NO)には処理がステップS11に戻る。
【0059】
AC系統3の電圧低下を検出した場合(ステップS12;YES)、ステップS13において、制御部21は、ゲートブロック回路21aによってDC/AC変換回路11の動作を停止させる。なお、制御部21は、上述したFRT機能を実現するために、この時点では連系リレー16をオフ(解列)しない。
【0060】
ステップS14において、制御部21は、DC負荷4の消費電力(R)がDC/DC変換回路11の出力電力(P)よりも多いか否かを判定する。なお、DC負荷4の消費電力(R)とDC/DC変換回路11の出力電力(P)との比較により判定してもよく、コンバータモードであるか否かにより判定してもよい。
【0061】
DC負荷4の消費電力(R)がDC/DC変換回路11の出力電力(P)よりも多い場合(ステップS14;YES)、ステップS15において、制御部21は、DC/DC変換回路11の出力電力(P)に合わせてDC負荷4への供給電力(R)を低下させるように、出力調整回路18を制御する。なお、出力調整回路18に対する制御としては、リンク電圧値が目標値になるように出力調整回路18を定電流制御する方法がある。また、制御部21は、DC/DC変換回路11に対するMPPT制御を継続する。
【0062】
これに対し、DC負荷4の消費電力(R)がDC/DC変換回路11の出力電力(P)以下である場合(ステップS14;NO)、ステップS16において、制御部21は、出力調整回路18による給電制限を行うことなく、DC/DC変換回路11に対する制御をMPPT制御から定出力制御に切り替えて、DC/DC変換回路11の出力電力(P)をDC負荷4の消費電力(R)に合わせる。
【0063】
次に、ステップS17において、制御部21は、VT14aにより測定されるAC系統3の電圧値を監視する。
【0064】
ステップS18において、制御部21は、VT14aにより測定されるAC系統3の電圧値の復帰を検出したか否かを確認する。系統電圧の復帰を検出しない場合(ステップS17;NO)、ステップS19において、制御部21は、系統電圧の低下を検出(ステップS12でYESと判定)してからの経過時間(以下、「低電圧時間」と称する)が1秒を超えたか否かを確認する。
【0065】
低電圧時間が1秒を超えた場合(ステップS19;YES)、瞬低に該当しないため、ステップS20において制御部21は、AC系統3からの解列を行うように連系リレー16をオフする。これに対し、低電圧時間が1秒を超えていない場合(ステップS19;NO)、処理がステップS14に戻る。
【0066】
一方、低電圧時間が1秒を超える前に復電した場合(ステップS18;YES)、瞬低からの復帰に該当し、ステップS21において制御部21は、ゲートブロック回路21aによるDC/AC変換回路11の動作停止を解除する。
【0067】
ステップS22において、制御部21は、DC負荷4の消費電力(R)がDC/DC変換回路11の出力電力(P)よりも多いか否かを判定する。
【0068】
DC負荷4の消費電力(R)がDC/DC変換回路11の出力電力(P)よりも多い場合(ステップS22;YES)、ステップS23において、制御部21は、DC/DC変換回路11側へのDC/AC変換回路13の出力電力を上昇させるようにDC/AC変換回路13を制御(コンバータモードでの制御)しながら、DC負荷4への供給電力(R)を系統3の電圧低下が発生する前の状態まで上昇させるように出力調整回路18を制御する。ここで、復帰時のリンク電圧の変動を防止するために、DC/DC変換回路11側へのDC/AC変換回路13の出力電力を上昇させるレートと、DC負荷4への供給電力(R)を上昇させるレートと、を合わせることが好ましい。
【0069】
これに対し、DC負荷4の消費電力(R)がDC/DC変換回路11の出力電力(P)以下である場合(ステップS22;NO)、ステップS24において、制御部21は、DC/AC変換回路13の出力電力を上昇させるようにDC/AC変換回路13を制御しながら、MPPT制御での動作点(PV1の電圧)を系統3の電圧低下が発生する前の状態まで戻すようにDC/DC変換回路11を制御する。ここで、復帰時のリンク電圧の変動を防止するために、DC/AC変換回路13の出力電力を上昇させるレートと、MPPT制御での動作点(PV1の電圧)を元に戻すレートと、を合わせることが好ましい。
【0070】
(まとめ)
以上説明したように、PCS2は、PV1の出力電力をDC/DC変換するDC/DC変換回路11と、DC/DC変換回路11の出力電力を少なくともDC/AC変換するDC/AC変換回路13と、DC/DC変換回路11の出力電力を調整してDC負荷4に供給する出力調整回路18と、AC系統3の瞬低が発生すると、DC/AC変換回路13の動作を停止するゲートブロック回路21aと、AC系統3の瞬低が発生すると、DC/DC変換回路11の出力電圧(すなわち、リンク電圧)が一定に保たれるように、DC/DC変換回路11及び出力調整回路18を制御する制御部21と、を有する。
【0071】
瞬低時にリンク電圧が大幅に低下又は上昇すると、復電時にAC出力を元に戻すまでに要する時間が長くなってしまう。これに対し、瞬低時にリンク電圧が一定に保たれるように制御することで、復電時に直ちにAC出力を元に戻すことができる。また、瞬低時にリンク電圧が大幅に上昇すると、素子の故障が生じる可能性があるが、本実施形態によればそのような問題も解決できる。
【0072】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0073】
例えば、上述した実施形態では、DC電源の一種であるPV1を例に挙げて説明したが、PV1に限らず、燃料電池等の他のDC電源に対して本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…PV、2…PCS、3…AC系統、4…DC負荷、10…ノイズフィルタ、11…DC/DC変換回路、12,17…電力測定器、13…DC/AC変換回路、14a…VT、14b…CT、15…ノイズフィルタ、16…連系リレー、17…電力測定器、18…出力調整回路、19…ノイズフィルタ、20…CT、21…制御部、21a…ゲートブロック回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DC電源をAC系統へ系統連系すると共に、DC負荷への給電が可能なパワーコンディショナであって、
前記DC電源の出力電力を少なくともDC/DC変換するDC/DC変換回路と、
前記DC/DC変換回路の出力電力をDC/AC変換するDC/AC変換回路と、
前記DC/DC変換回路の出力電力を調整して前記DC負荷に供給する出力調整回路と、
前記AC系統の電圧低下が生じると、前記DC/AC変換回路の動作を停止する停止手段と、
前記AC系統の電圧低下が生じると、前記DC/DC変換回路の出力電圧が一定に保たれるように、前記DC/DC変換回路及び前記出力調整回路を制御する制御手段と、
を有することを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項2】
前記制御手段は、前記AC系統の電圧低下が発生した際に、前記DC/DC変換回路の出力電力が前記DC負荷の消費電力よりも少ない場合に、前記DC/DC変換回路の出力電力に合わせて前記DC負荷への供給電力を低下させるように、前記出力調整回路を制御することを特徴とする請求項1に記載のパワーコンディショナ。
【請求項3】
前記制御手段は、前記AC系統の電圧低下が発生した際に、前記DC/DC変換回路の出力電力が前記DC負荷の消費電力よりも少ない場合に、前記DC/DC変換回路に対する最大動作点追従制御を継続することを特徴とする請求項2に記載のパワーコンディショナ。
【請求項4】
前記DC/AC変換回路は、前記AC系統からの電力をAC/DC変換して前記DC/DC変換回路側へ出力可能な双方向インバータであり、
前記停止手段は、前記AC系統が電圧低下から所定時間内に復帰すると、前記DC/AC変換回路の動作停止を解除し、
前記制御手段は、前記DC/AC変換回路の動作停止が解除されると、前記DC/DC変換回路側への前記DC/AC変換回路の出力電力を上昇させるように前記DC/AC変換回路を制御しながら、前記DC負荷への供給電力を前記AC系統の電圧低下が生じる前の供給電力まで上昇させるように前記出力調整回路を制御することを特徴とする請求項3に記載のパワーコンディショナ。
【請求項5】
前記制御手段は、前記AC系統の電圧低下が生じる前に、前記DC/DC変換回路の出力電力が前記DC負荷の消費電力よりも少ない場合に、前記AC系統の電力をAC/DC変換する逆方向動作を行うように、前記DC/AC変換回路を制御することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のパワーコンディショナ。
【請求項6】
前記制御手段は、前記AC系統の電圧低下が発生した際に、前記DC/DC変換回路の出力電力が前記DC負荷の消費電力よりも多い場合に、前記DC負荷の消費電力に合わせて前記DC/DC変換回路の出力電力を低下させるように、前記DC/DC変換回路を制御することを特徴とする請求項1に記載のパワーコンディショナ。
【請求項7】
前記制御手段は、前記AC系統の電圧低下が発生した際に、前記DC/DC変換回路の出力電力が前記DC負荷の消費電力よりも多い場合に、前記DC/DC変換回路に対する制御を最大動作点追従制御から定出力制御に切り替えることを特徴とする請求項6に記載のパワーコンディショナ。
【請求項8】
前記停止手段は、前記AC系統が電圧低下から所定時間内に復帰すると、前記DC/AC変換回路の動作停止を解除し、
前記制御手段は、前記DC/AC変換回路の動作停止が解除されると、前記DC/DC変換回路に対する制御を前記定出力制御から前記最大動作点追従制御に切り替え、
前記制御手段は、前記最大動作点追従制御に切り替えた後、前記DC/AC変換回路の出力電力を上昇させるように前記DC/AC変換回路を制御しながら、前記最大動作点追従制御での動作点を前記AC系統の電圧低下が生じる前の動作点まで戻すように前記DC/DC変換回路を制御することを特徴とする請求項7に記載のパワーコンディショナ。
【請求項9】
DC電源の出力電力をDC/DC変換するDC/DC変換回路と、
前記DC/DC変換回路の出力電力を少なくともDC/AC変換するDC/AC変換回路と、
前記DC/DC変換回路の出力電力を調整してDC負荷に供給する出力調整回路と、を有し、
前記DC電源をAC系統へ系統連系すると共に、前記DC負荷への給電が可能なパワーコンディショナの制御方法であって、
前記AC系統の電圧低下が生じると、前記DC/AC変換回路の動作を停止するステップAと、
前記AC系統の電圧低下が生じると、前記DC/DC変換回路の出力電圧が一定に保たれるように、前記DC/DC変換回路及び前記出力調整回路を制御するステップBと、
を有することを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−115914(P2013−115914A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259467(P2011−259467)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】