説明

パワーコントロールユニット

【課題】パワーコントロールユニット内の高電圧配線を保護するとともに、軽量化、小型化を図るパワーコントロールユニットを提供する。
【解決手段】ヒートシンク(50)の上下面側にそれぞれ高電圧の電気デバイス(60、62、82、84)が配置されるサンドイッチ型の構造を有するパワーコントロールユニット(30)において、ヒートシンク(50)の下面側に載置される充電器(82)及びDC/DCコンバータ(84)に繋がる高電圧配線を、ヒートシンク(50)の下面側の所定領域内に集中配置し、下方から前記高電圧配線を覆うように絶縁カバー(160)を設け、絶縁カバー(160)の底面(174)と、ヒートシンク(50)の下面側に配置される充電器(82)、DC/DCコンバータ(84)、及び前記絶縁カバー(160)を一括して覆う下ケース(59)の底面である下カバー(58)との間に所定の隙間(186)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換モジュールを有するパワーコントロールユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両前部のモータルーム内に電気部品ユニットとして電力供給装置を配置することが記載されている。このような電気部品ユニットを搭載した車両においては、衝撃から電気部品ユニットを保護するために、電気部品ユニットのカバーを鉄やアルミニウム等で構成して板厚を厚くしたり、電気部品ユニットの前方に他の部品を配置する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−243892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電気部品ユニットのカバーの板厚を厚くすると電気部品ユニットの重量が増大し、電気部品ユニットが大型化してしまう。また、電気部品ユニットの前方に他の部品を配置するとその分スペースが取られ、部品のレイアウトの自由度が制限される。
【0005】
そこで、本発明は、パワーコントロールユニット内の高電圧配線を保護するとともに、軽量化、小型化を図るパワーコントロールユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両に搭載され、ヒートシンクの上下面側にそれぞれ高電圧の電気デバイスが配置されるサンドイッチ型の構造を有するパワーコントロールユニットにおいて、前記ヒートシンクの下面側に載置される前記電気デバイスに繋がる高電圧配線を、前記ヒートシンクの下面側の所定領域内に集中配置し、下方から前記高電圧配線を覆うように絶縁カバーを設け、絶縁カバーの底面と、前記ヒートシンクの下面側に配置される前記電気デバイス及び前記絶縁カバーを一括して下方から覆う下ケースの底面との間に所定の隙間を設けることを特徴とする。
【0007】
このように、前記ヒートシンクの下面側に配置される前記電気デバイスに繋がる前記高電圧配線を、前記ヒートシンクの下面側の前記所定領域内に集中配置し、下方から前記高電圧配線を覆うように前記絶縁カバーを設け、前記ヒートシンクの下面側に配置される前記電気デバイス及び前記絶縁カバーを一括して下ケースが下方から覆うので、前記高電圧配線を保護することができ、前記パワーコントロールユニットを軽量化、小型化することができる。また、前記下ケース内に塵や埃、異物等が混入した場合であっても、前記絶縁カバーによって前記高電圧配線への接触を防止することができる。また、前記絶縁カバーの底面と、前記下ケースの底面との間に所定の隙間を設けるので、混入した塵や埃、異物、結露水等が前記高電圧配線付近に留まることを防止することができる。
【0008】
前記ヒートシンク側に設けられる前記絶縁カバーの開口縁には、樹脂シールが設けられていてもよい。これにより、塵や埃、異物等の前記絶縁カバー内への進入を防ぐことができるとともに、前記樹脂シールが前記絶縁カバーの振動防止となるため、前記絶縁カバーの固定箇所を均一に設けなくてもよい。
【0009】
前記電気デバイスの前記高電圧配線が配置された側の側面と、前記側面と対向する前記絶縁カバーの前記底面の開口縁との間には、クリアランスが設けられていてもよい。これにより、絶縁カバー内に混入した塵や埃、異物等を良好に排出することができる。
【0010】
前記ヒートシンクの下面側には、少なくとも2つの電気デバイスが載置され、前記絶縁カバーは、一方の前記電気デバイスの下面及び前記高電圧配線が配置された側の側面を覆い、且つ、他方の前記電気デバイスの前記高電圧配線が配置された側の側面を覆う形状を有し、前記一方の電気デバイスの下面に固定されていてもよい。これにより、高電圧配線部材を設ける領域を広くすることができる。
【0011】
前記下ケースの凹部によって、前記電気デバイスと前記下ケースの側面との距離が狭まっているところに、絶縁カバーの端部を配置してもよい。これにより、塵や埃、異物等の絶縁カバー内への進入を防止することができる。
【0012】
前記高電圧配線が集中配置される前記所定領域は、前記電気デバイスの車両後方側に位置してもよい。これにより、塵や埃、異物等の絶縁カバー内への進入を防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るパワーコントロールユニットによれば、ヒートシンクの下面側に配置される電気デバイスに繋がる高電圧配線を、ヒートシンクの下面側の所定領域内に集中配置し、下方から高電圧配線を覆うように絶縁カバーを設け、ヒートシンクの下面側に配置される電気デバイス及び絶縁カバーを一括して下方から覆うので、前記高電圧配線を保護することができ、前記パワーコントロールユニットを軽量化、小型化することができる。また、下ケース内に塵や埃、異物等が混入した場合であっても、絶縁カバーにより高電圧配線への接触を防止することができる。また、絶縁カバーの底面と下ケースの底面との間に所定の隙間を設けるので、混入した塵や埃、異物、結露水が高電圧配線付近に留まることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態の電気自動車の概略構成を模式化した概略構成斜視図である。
【図2】実施の形態の電気自動車の概略構成を模式化した概略構成側面図である。
【図3】図1に示すパワーコントロールユニットの外観斜視図である。
【図4】図3に示すパワーコントロールユニットの分解斜視図である。
【図5】図4に示すヒートシンクの上面図である。
【図6】図4に示すロアケースの底面図である。
【図7】パワーコントロールユニットの回路図である。
【図8】図5のヒートシンクの上部にアッパーケースを配置したときの上面図である。
【図9】図6に示すロアケースの底面に絶縁カバーを設けたときの底面図である。
【図10】図9のX−X線矢視断面図である。
【図11】図9のXI−XI線矢視断面図である。
【図12】図9に示す絶縁カバーを所定方向から見た斜視図である。
【図13】図12の所定方向とは反対側の方向から見た図9に示す絶縁カバーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るパワーコントロールユニットを有する電気自動車について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0016】
図1は、電気自動車(車両)10の概略構成を模式化した概略構成斜視図、図2は、電気自動車10の概略構成を模式化した概略構成側面図である。なお、本実施の形態では、車体12の鉛直方向を上下方向とし、該鉛直方向に垂直な方向を水平方向とする。また、電気自動車10の進行方向を前、後退方向を後、進行方向に向かって左方向を左、右方向を右とする。
【0017】
電気自動車10は、車体12内部に、前輪14L、14Rと後輪16L、16Rとの間で、且つ、車体12の底部に設けられた高電圧を出力するバッテリ18と、フロアパネル20を介してバッテリ18の上方に設けられる車室22と、該車室22とは隔てられて車体12の前方に区画されたモータルーム24と、該モータルーム24を覆うダッシュパネル26と、ダッシュパネル26の下方で、且つ、該モータルーム24に設けられた回転電機の一種である走行用モータ(外部電気機器)28の上方に載置されたパワーコントロールユニット(Power Control Unit)30とを備える。ダッシュパネル26は、ダッシュパネルロア26aとダッシュパネルアッパー26bとを有する。ダッシュパネル26は、モータルーム24と車室22とを仕切るものであり、モータルーム24からの汚れ、水、臭い等の浸入を防ぐ構造を有する。また、ダッシュパネル26は、外部からの水の浸入に対して、A/C(エアコンディショナー)配管内に流入させない水排出機能を有する。
【0018】
電源ケーブル34は、バッテリ18に蓄積された電力をパワーコントロールユニット30に伝達するためのものであり、電源ケーブル34の一端はバッテリ18の電源コネクタ36に接続され、他端はパワーコントロールユニット30の電源コネクタ94(図7参照)に接続される。パワーコントロールユニット30は、バッテリ18から供給される直流電力を三相(U、V、W相)の交流電力に変換し、該変換した三相の交流電力を走行用モータ28に供給することで走行用モータ28を駆動制御する。
【0019】
パワーコントロールユニット30は、直流電力を三相交流に変換する電力変換モジュール60(図4、図5、図7参照)と電力変換モジュール60を制御することで走行用モータ28を駆動させるECU70(図4、図7参照)とを有する。走行用モータ28とパワーコントロールユニット30とは、三相交流電力ケーブル(電力供給線)38を介して接続されており、三相交流電力ケーブル38の一端は走行用モータ28の電力コネクタ40に接続され、三相交流電力ケーブル38の他端はパワーコントロールユニット30の電力コネクタ42(電力コネクタ42a、42b、42c)に接続される。パワーコントロールユニット30を走行用モータ28の上方に配置させるので、高電圧の三相交流電力ケーブル38を短くすることができる。
【0020】
図3はパワーコントロールユニット30の外観斜視図、図4はパワーコントロールユニット30の分解斜視図を示す。パワーコントロールユニット30は、ヒートシンク50と、ヒートシンク50の上部に設けられるアッパーケース52と、アッパーケース52の上部を覆う上カバー54と、ヒートシンク50の下部に設けられるロアケース56と、ロアケース56の下部を覆う下カバー58とを有する。ヒートシンク50、アッパーケース52、上カバー54、ロアケース56、及び下カバー58は、アルミ等の金属で構成されている。ヒートシンク50、アッパーケース52、上カバー54、ロアケース56、及び下カバー58は、パワーコントロールユニット30の筐体を構成する。また、アッパーケース52及び上カバー54は、パワーコントロールユニット30の上ケース57を構成し、ロアケース56及び下カバー58は、パワーコントロールユニット30の下ケース59を構成する。
【0021】
ヒートシンク50の上面略中央には電力変換モジュール(電気デバイス)60が、ヒートシンク50の上面右側には、外部からバッテリ18を充電する際に用いられる急速充電用デバイス(充電用デバイス、電気デバイス)62、ヒューズ98a、98b(図5、図7参照)等が設けられ、ヒートシンク50の左側上方には、電力変換モジュール60とアッパーケース52の電力コネクタ42a、42b、42cとを接続する三相端子64a、64b、64cが設けられている。電力変換モジュール60は、バッテリ18の直流電力を三相(U、V、W相)の交流電力に変換し、該変換した各相の交流電力を三相端子64a、64b、64cに出力する。三相端子64a、64b、64cは、その中間部がヒートシンク50の上面左側に設けられた三相端子台66に支持される。
【0022】
電力変換モジュール60は、複数のスイッチング素子を有するスイッチングモジュールを筐体内に内蔵する。この複数のスイッチング素子がオンオフされることで、電力変換モジュール60は、バッテリ18からの直流電力を三相の交流電力に、又は、走行用モータ28から三相の交流電力を直流電力に変換する。
【0023】
ヒートシンク50とアッパーケース52とで、急速充電用デバイス62を収納する充電デバイス室72と、ヒューズ98a、98bを収納するヒューズ室74、電力変換モジュール60を収納する電力変換室76、三相端子64a、64b、64cを収納する三相端子室78とが形成される。充電デバイス室72は、充電デバイス室72内へのアクセスを可能にするアッパーケース52の上面に形成された第1開口部(充電デバイス室開口部)72aを有し、ヒューズ室74は、ヒューズ室74内へのアクセスを可能にするアッパーケース52の上面に形成された第2開口部(ヒューズ室開口部)74aを有し、電力変換室76は、電力変換室76内へのアクセスを可能にするアッパーケース52の上面に形成された第3開口部(電力変換室開口部)76aを有し、三相端子室78は、三相端子室78内へのアクセスを可能にするアッパーケース52の上面に形成された第4開口部(三相端子室開口部)78aを有する(図4、図8参照)。電力変換モジュール60を制御するECU(制御装置)70は、急速充電用デバイス62の上方であって、充電デバイス室72内に設けられている。
【0024】
上カバー54は、第1開口部72aを覆う第1上カバー54aと、第2開口部74aを覆う第2上カバー54bと、第3開口部76aを覆う第3上カバー54cと、第4開口部78aを覆う第4上カバー54dとを有する。充電デバイス室72は、ヒューズ室74、電力変換室76、及び三相端子室78より高く形成されているので、第1開口部72aは、第2開口部74a〜第4開口部78aに比べ、高い位置に形成されている。
【0025】
電力変換モジュール60の上方、且つ、第3開口部76aの下方で、平滑コンデンサ96(図7参照)を有するコンデンサモジュール80がアッパーケース52の内壁に吊り下げられるように取り付けられている。平滑コンデンサ96は、電力変換モジュール60と電気的に接続され、バッテリ18からの電力を平滑化するものである。コンデンサモジュール80は、平滑コンデンサ96を筐体で収納したものである。
【0026】
ロアケース56の底面には、バッテリ18を充電する充電器(電気デバイス)82と、電気自動車10に搭載された低電圧系のデバイス(電装品)に低電圧の電力を供給するためにバッテリ18の電圧を降圧させるDC/DCコンバータ(電気デバイス)84とが設けられている。このように、パワーコントロールユニット30は、ヒートシンク50の上面側に、電力変換モジュール60及び急速充電用デバイス62等の電気デバイスが配置され、ヒートシンク50の下面側には、充電器82及びDC/DCコンバータ84等の電気デバイスが配置されるサンドイッチ構造を有する。DC/DCコンバータ84及び充電器82は、長方形の筐体に収納されたものであり、DC/DCコンバータ84より部品数が多く大きくなり易い充電器82の筐体は、DC/DCコンバータ84の筐体よりも大きい。
【0027】
ヒートシンク50は、流体が流入される流入部86と、流体が流出する流出部88とを有する。ヒートシンク50の底面とロアケース56の上面とで前記流体が流れる流路(図示略)が形成される。流入部86から流入した前記流体は、ヒートシンク50とロアケース56によって形成された前記流路を通って流出部88から流出する。流入部86から流入した流体は、ヒートシンク50とロアケース56によって形成された流路を通って流出部88から流体が流出する。これにより、ヒートシンク50は、ヒートシンク50の上面側に設けられた電力変換モジュール60及び急速充電用デバイス62等、及び、ヒートシンク50の下面側に設けられた充電器82及びDC/DCコンバータ84が発熱した熱量を放熱させて冷却することができる。
【0028】
図5はヒートシンク50の上面図、図6はロアケース56の底面図、図7はパワーコントロールユニット30の回路図である。
【0029】
電力変換モジュール60は、電源コネクタ94(図7参照)に接続され、電源ケーブル34を介してバッテリ18を電源コネクタ94に接続することで、電力変換モジュール60とバッテリ18とが接続される。電力変換モジュール60とバッテリ18との間に、電圧を平滑化するコンデンサモジュール80の平滑コンデンサ96が並列に接続されている。コンデンサモジュール80は、DC/DCコンバータ84、充電器82、及び急速充電用デバイス62、及びヒューズ98a、98bとバスバーによって電気的に接続されている。
【0030】
これにより、DC/DCコンバータ84、充電器82、急速充電用デバイス62、及びヒューズ98a、98bは、バッテリ18と接続される。バスバーは、銅板等の金属板を打ち抜き加工することで形成される。急速充電用デバイス62は、ダイオード(急速充電用ダイオード)100、第1メインコンタクタ(第1急速充電用コンタクタ)102、第2メインコンタクタ(第2急速充電用コンタクタ)104、抵抗R、及びプレコンタクタ106を有する。このように、高電圧部品(電力変換モジュール60、DC/DCコンバータ84、充電器82、急速充電用デバイス62)を1つの筐体に収納することで、高電圧ケーブルを用いることなくバスバーで接続することができ、パワーコントロールユニット30を小型化することができ、更に、コストが低廉になる。
【0031】
コンデンサモジュール80は、図5に示すように、第1正端子110a、第1負端子110b、第2正端子112a、第2負端子112b、第3正端子114a、第3負端子114bとを有し、第1正端子110a、第2正端子112a、及び第3正端子114aは互いに導通しており、第1負端子110b、第2負端子112b、及び第3負端子114bは互いに導通している。第2正端子112a及び第2負端子112bは、バスバー115a、115b、及び、電源ケーブル94a、94b(図6参照)を介して電源コネクタ94に接続されており、これにより、第2正端子112aはバッテリ18の正極側と、第2負端子112bはバッテリ18の負極側とにそれぞれ接続される。
【0032】
なお、電力変換モジュール60は、第2正端子112a及び第2負端子112bに接続される図示しない接続正端子及び接続負端子(接続端子)を有し、電力変換モジュール60の前記接続正端子は、第2正端子112aとバスバー115aの一端とに接続され、電力変換モジュール60の前記接続負端子は、第2負端子112bとバスバー115bの一端とに接続されている。電源ケーブル94a、94bは、ヒートシンク50の下方から貫通孔50a、50bを通ってパワーコントロールユニット30内に挿入され、バスバー115a、115bの他端に接続されている。
【0033】
第1正端子110aと、ヒューズ98a、98bの一端と、及びダイオード100のカソードとは、単一のバスバー116によって接続されており、バスバー116とバッテリ18とは同電位である。第1正端子110aと接続されていないヒューズ98aの他端は、エアコンコンプレッサ(空調用コンプレッサ)118に接続され、第1正端子110aと接続されていないヒューズ98bの他端は、ヒータ120に接続される(図7参照)。
【0034】
ダイオード100のカソードは、抵抗R、プレコンタクタ106を介して、第1メインコンタクタ102の一端に接続され、ダイオード100のアノードは、バスバー122によって第1メインコンタクタ102の前記一端に接続される。第1負端子110bは、バスバー124によって第2メインコンタクタ104の一端に接続される。
【0035】
第3正端子114aは、図5及び図6に示すように、バスバー126、128によって充電器82の第4正端子130aと、バスバー126、132によってDC/DCコンバータ84の第5正端子134aとにそれぞれ接続され、第3負端子114bは、バスバー136、138によって充電器82の第4負端子130bと、バスバー136、140によってDC/DCコンバータ84の第5負端子134bとに接続されている。第4正端子130a、第4負端子130b、第5正端子134a、第5負端子134bは、充電器82、DC/DCコンバータ84の車両後方の所定領域に集中配置される。
【0036】
充電器82の第6正端子142a及び第6負端子142bは、ケーブル92aを介してコネクタ92に接続され、DC/DCコンバータ84の第7正端子144a及び第7負端子144bは、パワーコントロールユニット30の外部に導出したケーブル146に接続されている。これにより、DC/DCコンバータ84によって降圧された電力は、ケーブル146によって電気自動車10に搭載された低電圧系のデバイスに供給可能となる。高電圧配線である第4正端子130a、第4負端子130b、第5正端子134a、第5負端子134b、及びバスバー128、132、138、140は、後述する絶縁カバー160(図9参照)によって覆われて保護される。
【0037】
また、電力変換モジュール60は、図5に示すように、U相端子148a、V相端子148b、W相端子148cを有し、U相端子148aに三相端子64aが接続され、V相端子148bに三相端子64bが接続され、W相端子148cに三相端子64cが接続される。
【0038】
図6に示すようにDC/DCコンバータ84及び充電器82は、長手方向がお互いに直交するように配置され、DC/DCコンバータ84の長辺と充電器82の短辺とが隣り合うように配置されている。
【0039】
コネクタ92に接続されたプラグ93が商業用コンセントに接続されることで、100V又は200Vの交流電力が充電器82に供給され、充電器82は、バッテリ18を普通充電する(図7参照)。
【0040】
図8は、図5のヒートシンク50の上部にアッパーケース52を配置したときの上面図である。なお、図8においては、コンデンサモジュール80の図示を省略している。アッパーケース52には、急速充電用コネクタ152が設けられており、第1メインコンタクタ102の他端及び第2メインコンタクタ104の他端が、バスバー154a、154bを介して急速充電用コネクタ152に接続される。急速充電用コネクタ152には、サービスエリア等や給電ステーションに設けられた図示しない高圧の直流電力を供給する急速充電器の充電器側コネクタ156と接続するコネクタ158が接続される(図7参照)。前記急速充電器の充電器側コネクタ156とコネクタ158とが接続されることで、前記急速充電器はバッテリ18を急速充電する。
【0041】
図9は、図6に示すロアケース56の底面に絶縁カバー160を設けたときの底面図、図10は、図9のX−X線矢視断面図、図11は、図9のXI−XI線矢視断面図、図12は、絶縁カバー160を所定方向から見た斜視図、図13は、前記所定方向とは反対側の方向から見た絶縁カバー160の斜視図である。なお、図10のX−X線矢視断面図及び図11のXI−XI線矢視断面図には、下カバー58を図示している。
【0042】
絶縁カバー160は、クリップ162a、162b、162cによって、DC/DCコンバータ84の下面164及びロアケース56の底面166に固定されることで、第4正端子130a、第4負端子130b、第5正端子134a、第5負端子134b、及びバスバー128、132、138、140を下方から覆う。絶縁カバー160の長手方向の一端部は、ロアケース56の凹部167によってロアケース56の側面と充電器82の第4正端子130a、第4負端子130bが設けられた側の側面168との距離が狭まっているところに配置され、他端部は、DC/DCコンバータ84の充電器82側の側面と反対側の側面169付近まで延びている。絶縁カバー160は、充電器82とロアケース56との間に収まるような形状を有している。
【0043】
絶縁カバー160は、DC/DCコンバータ84の下面164及びDC/DCコンバータ84の第4正端子130a、第4負端子130bが設けられた側の側面170を覆い、且つ、充電器82の側面168を覆う形状を有している。詳しくは、絶縁カバー160は、互いに直交する側面172と底面174とからなり、絶縁カバー160の長手方向と直交する断面が略L字状の形状を有する。側面172がロアケース56の底面166と直交し、且つ、底面174が充電器82及びDC/DCコンバータ84方向に延びるように、絶縁カバー160がロアケース56の底面166側に設けられる。
【0044】
ロアケース56の底面166側に設けられる(ヒートシンク50側に設けられる)絶縁カバー160の第1開口縁(側面172の開口縁)176にはエプト(EPT)シール178が設けられ、エプトシール(樹脂シール)178がロアケース56の底面166と接触する。絶縁カバー160の第2開口縁(底面174の開口縁)180は、充電器82の側面168に沿って、該側面168と対向するように形成されている。充電器82の側面168と第2開口縁180との間には一定のクリアランス182が設けられている。絶縁カバー160の底面174は、前記一端部から段状に下方に延びた後、DC/DCコンバータ84まで略水平に延びており、絶縁カバー160の側面172は、前記一端部から車両後方に屈曲した後、DC/DCコンバータ84の方向に向かって略水平に延びている。
【0045】
DC/DCコンバータ84の厚みは、充電器82より薄く形成されており、DC/DCコンバータ84の側面170は、充電器82の側面168より車両の後方側に位置しているので、絶縁カバー160の底面174は、前記一端部から下方に段状に延びた後、DC/DCコンバータ84に向かって水平に延びることで、DC/DCコンバータ84の下面164を覆うことになる。クリップ162aによって絶縁カバー160の前記一端部がロアケース56の底面166に固定され、クリップ162b、162cによって絶縁カバー160の他端側がDC/DCコンバータ84の下面164に固定される。
【0046】
また、DC/DCコンバータ84の下面164を覆う領域の絶縁カバー160の内面には、エプトシール184が設けられている。このエプトシール178、184は、埃や塵等の異物が絶縁カバー160内に入ることを防止するとともに、絶縁カバー160の振動を吸収する機能も有する。
【0047】
また、図10、図11に示すように、下ケース59は、充電器82、DC/DCコンバータ84、及び絶縁カバー160を一括して下方から覆い、下ケース59の底面である下カバー58と絶縁カバー160の底面174とは、所定の隙間186が設けられている。
【0048】
また、充電器82のDC/DCコンバータ84側の側面188と絶縁カバー160との間には、エプトシール190が設けられている。
【0049】
このように、充電器82の第4正端子130a、第4負端子130bとDC/DCコンバータ84の第5正端子134a、第5負端子134bとを繋ぐバスバー128、132、138、140を、ロアケース56の底面166側の所定領域内に集中配置し、高電圧配線(第4正端子130a、第4負端子130b、第5正端子134a、第5負端子134b、及びバスバー128、132、138、140等)を下方から覆うように絶縁カバー160を設け、ヒートシンク50の下面側に配置される充電器82及びDC/DCコンバータ84及び絶縁カバー160を一括して下ケース59が下方から覆うので、高電圧配線を保護することができ、パワーコントロールユニット30を軽量化、小型化することができる。また、下ケース59内に塵や埃、異物等が混入した場合であっても、絶縁カバー160によって第4正端子130a、第4負端子130b、第5正端子134a、第5負端子134b、及びバスバー128、132、138、140への接触を防止することができる。
【0050】
また、下ケース59の底面である下カバー58と絶縁カバー160の底面174との間に所定の隙間186を設けるので、混入した塵や埃、異物、結露水等が、第4正端子130a、第4負端子130b、第5正端子134a、第5負端子134b、及びバスバー128、132、138、140付近に留まることを防止することができる。
【0051】
ロアケース56の底面166側に設けられる絶縁カバー160の第1開口縁176には、エプトシール178が設けられるので、塵や埃、異物等の絶縁カバー160内への進入を防ぐことができるとともに、エプトシール178が絶縁カバー160の振動防止となるため、絶縁カバー160の固定箇所を均一に設けなくてもよい。
【0052】
充電器82の側面168と、絶縁カバー160の第2開口縁180との間には、クリアランス182が設けられているので、絶縁カバー160内に進入した塵や埃、異物等を良好に排出することができる。
【0053】
絶縁カバー160は、DC/DCコンバータ84の下面164及び側面170を覆い、且つ、充電器82の側面168を覆う形状を有し、DC/DCコンバータ84の下面164にクリップ162b、162cで固定されているので、絶縁カバー160とロアケース56の底面166とをクリップによって固定する固定箇所を少なくする、又は無くすことができ、ロアケース56の底面166にバスバー128、132、138、140を設ける領域を広くすることができる。
【0054】
ロアケース56の凹部167によってロアケース56の側面と充電器82の側面168との距離が狭まっているところに絶縁カバー160の端部を配置するので、塵や埃、異物等の絶縁カバー160内への進入を防止することができる。
【0055】
第4正端子130a、第4負端子130b、第5正端子134a、第5負端子134b、及びバスバー128、132、138、140が集中配置される所定領域は、充電器82及びDC/DCコンバータ84の車両後方側に位置するので、塵や埃、異物等の絶縁カバー160内への進入を防止することができる。
【0056】
以上、本発明について好適な実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0057】
10…電気自動車 12…車体
18…バッテリ 28…走行用モータ
30…パワーコントロールユニット 34、94a、94b…電源ケーブル
36、94…電源コネクタ 38…三相交流電力ケーブル
40、42、42a、42b、42c…電力コネクタ
50…ヒートシンク 52…アッパーケース
54…上カバー 56…ロアケース
57…上ケース 58…下カバー
59…下ケース 60…電力変換モジュール
62…急速充電用デバイス 64a、64b、64c…三相端子
66…三相端子台 70…ECU
72…充電デバイス室 72a…第1開口部
74…ヒューズ室 74a…第2開口部
76…電力変換室 76a…第3開口部
78…三相端子室 78a…第4開口部
80…コンデンサモジュール 82…充電器
84…DC/DCコンバータ 98a、98b…ヒューズ
100…ダイオード 102…第1メインコンタクタ
104…第2メインコンタクタ 106…プレコンタクタ
115a、115b、116、122、124、126、128、132、136、138、140、154a、154b…バスバー
118…エアコンコンプレッサ 120…ヒータ
160…絶縁カバー 164…下面
166、174…底面 167…凹部
168、169、170、172、188…側面 176…第1開口縁
178、184、190、192…エプトシール
180…第2開口縁 182…クリアランス
186…隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、ヒートシンクの上下面側にそれぞれ高電圧の電気デバイスが配置されるサンドイッチ型の構造を有するパワーコントロールユニットにおいて、
前記ヒートシンクの下面側に載置される前記電気デバイスに繋がる高電圧配線を、前記ヒートシンクの下面側の所定領域内に集中配置し、下方から前記高電圧配線を覆うように絶縁カバーを設け、絶縁カバーの底面と、前記ヒートシンクの下面側に配置される前記電気デバイス及び前記絶縁カバーを一括して下方から覆う下ケースの底面との間に所定の隙間を設ける
ことを特徴とするパワーコントロールユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のパワーコントロールユニットにおいて、
前記ヒートシンク側に設けられる前記絶縁カバーの開口縁には、樹脂シールが設けられている
ことを特徴とするパワーコントロールユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパワーコントロールユニットにおいて、
前記電気デバイスの前記高電圧配線が配置された側の側面と、前記側面と対向する前記絶縁カバーの前記底面の開口縁との間には、クリアランスが設けられている
ことを特徴とするパワーコントロールユニット。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のパワーコントロールユニットにおいて、
前記ヒートシンクの下面側には、少なくとも2つの電気デバイスが載置され、
前記絶縁カバーは、一方の前記電気デバイスの下面及び前記高電圧配線が配置された側の側面を覆い、且つ、他方の前記電気デバイスの前記高電圧配線が配置された側の側面を覆う形状を有し、前記一方の電気デバイスの下面に固定されている
ことを特徴とするパワーコントロールユニット。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のパワーコントロールユニットにおいて、
前記下ケースの凹部によって、前記電気デバイスと前記下ケースの側面との距離が狭まっているところに、絶縁カバーの端部を配置する
ことを特徴とするパワーコントロールユニット。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載のパワーコントロールユニットにおいて、
前記高電圧配線が集中配置される前記所定領域は、前記電気デバイスの車両後方側に位置にする
ことを特徴とするパワーコントロールユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−115959(P2013−115959A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261249(P2011−261249)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】