説明

パワーステアリング装置

【課題】溶接変形によるシリンダチューブ全体としての曲がり量を抑制できるパワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】ブラケット6とシリンダチューブ2とを溶接により接合する溶接部であって、第1バンド部のシリンダチューブ軸方向一端部20aと第2バンド部21の軸方向他端部21bとに設けられ、シリンダチューブ2の中心軸25よりもフランジ部18側に配置されたフランジ側溶接部23と、第1バンド部20の軸方向一端部20aと、第2バンド部の軸方向一端部21aとに設けられ、シリンダチューブ2の中心軸25よりもフランジ部18の反対側に配置され、シリンダチューブ周方向における溶接長さの合計がフランジ側溶接部23の周方向における溶接長さの合計とほぼ等しくなるように設けられたカウンタ溶接部24と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のパワーステアリング装置では、シリンダチューブを車体に固定するブラケットのシリンダチューブ軸方向両端部をシリンダチューブの外周面と溶接している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−18692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術にあっては、ブラケットのシリンダチューブ軸方向両端部の周方向同一位置を溶接しているため、溶接変形によってシリンダチューブが溶接部分を起点とし同一方向へ2段階に折れ曲がる。つまり、溶接変形によるシリンダチューブ全体としての曲がり量を大きいため、ピストンの摺動特性に影響を及ぼす。
本発明の目的は、溶接変形によるシリンダチューブ全体としての曲がり量を抑制できるパワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のパワーステアリング装置は、第1バンド部のシリンダチューブ軸方向両端部および第2バンド部のシリンダチューブ軸方向両端部のうち少なくとも1箇所以上に設けられ、シリンダチューブの中心軸よりもフランジ部側に配置されたフランジ側溶接部と、シリンダチューブ外周に設けられる溶接部であって、第1バンド部のシリンダチューブ軸方向両端部および第2バンド部のシリンダチューブ軸方向両端部のうち少なくとも1箇所以上に設けられ、シリンダチューブの中心軸よりもフランジ部の反対側に配置され、シリンダチューブ周方向における溶接長さの合計がフランジ側溶接部の周方向における溶接長さの合計とほぼ等しくなるように設けられたカウンタ溶接部と、を有し、フランジ側溶接部とカウンタ溶接部は、シリンダチューブ軸方向同一位置における全周溶接箇所が1箇所以下となるように設けられている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、溶接変形によるシリンダチューブ全体としての曲がり量を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は実施例1のパワーステアリング装置のパワーシリンダを車両後方側から見た斜視図である。
【図2】パワーシリンダの一部断面図である。
【図3】(a)は図2のA矢視図、(b)は図2のB-B断面図、(c)は図2のC-C断面図、 (d)は図2のD矢視図である。
【図4】実施例1に対し、フランジ側溶接部23とカウンタ溶接部24の溶接位置範囲を異ならせた変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のパワーステアリング装置を実施するための形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0009】
〔実施例1〕
まず、構成について説明する。
[パワーステアリング装置]
図1は実施例1のパワーステアリング装置のパワーシリンダを車両後方側から見た斜視図、図2はパワーシリンダの一部断面図である。
図1に示すように、パワーシリンダ1は、円筒状のシリンダチューブ2と、シリンダチューブ2の外周側に設けられ、内部にピニオン軸3を収容するピニオンケース4と、ピニオンケース4の外側に設けられたソレノイド弁5と、シリンダチューブ2の外周面2bに溶接によって接合されたブラケット6とを主要な構成としている。
シリンダチューブ2は、例えば鋼管材によって円筒状に形成され、その内部には、図2に示すように、ラック軸7が挿入されている。また、シリンダチューブ2の内部であってシリンダチューブ軸方向両端には、一対の環状シール部材(不図示)が圧入されている。ラック軸7の外周面は、これら環状シール部材の内周面と摺動可能に接触している。
シリンダチューブ2の内部であって、各環状シール部材の間にはピストン10が設けられている。ピストン10は、内周面がラック軸7の外周面に固定され、外周面がシリンダチューブ2の内周面2aと摺動可能に接触している。ピストン10により、シリンダチューブ2内に一対の油圧室(液圧室)11,12が形成されている。また、各油圧室11,12と連通するようにシリンダチューブ2の外周に一対のポート13,14が設けられ、各ポート13,14には図外のコントロールバルブへつながる各油路15,16がそれぞれ接続されている。
ピニオン軸3は、図外のステアリングホイールと連結され、ピニオンケース4の内部に収容されている。ピニオン軸3は、ラック軸7とシリンダチューブ2内にてヘリカル歯車のように噛み合い、ラックアンドピニオン(転舵機構)8を構成する。ドライバのステアリングホイール操作に応じてピニオン軸3が回転することにより、ラック軸7がシリンダチューブ軸方向に沿って移動し、転舵輪(不図示)を転舵させる。このとき、ピストン10がラック軸7と一体に移動し、各油圧室11,12の油量を変化させる。
ソレノイド弁5には、各油圧室11,12に各ポート13,14を介して接続された各油路15,16と、車両の速度などの電気信号が送信されるハーネス(不図示)がそれぞれ接続されている。ソレノイド弁5には、ハーネスを介して図外のコントロールユニットから送信された電気信号を受信し、各油圧室11,12への作動油の流量を制御することによって、ラック軸7の移動をアシストしている。
【0010】
[ブラケット]
図3を加えて実施例1のブラケット6の構成を説明する。
図3(a)は図2のA矢視図、図3(b)は図2のB-B断面図、図3(c)は図2のC-C断面図、図3(d)は図2のD矢視図である。
ブラケット6は、シリンダチューブ2を車体に接続固定するもので、例えば、鉄系金属によって形成されている。ブラケット6は、バンド部17と、一対のフランジ部18,18と、接続部19とを有する。
バンド部17は、略C字状(円弧状)に形成され、互いにシリンダチューブ軸方向に離間して配置された第1バンド部20および第2バンド部21を有する。第1バンド部20と第2バンド部21との間には、略長穴状の肉抜き部22が設けられている。肉抜き部22のシリンダチューブ周方向両端は、シリンダチューブ2の中心軸25よりも僅かにフランジ部18寄りに位置する。
一対のフランジ部18,18は、バンド部17の周方向両端部17a,17bにそれぞれ一体成形され、シリンダチューブ軸方向に対し径方向外側に突出している。
接続部19は、円筒状に形成され、一対のフランジ部18,18に形成された開口18a,18aをそれぞれ貫通した状態で、外周19aが2つの開口18a,18aの周縁部と溶接されている。接続部19の内周19bには、円筒状の弾性部材(不図示)が圧入固定される。
【0011】
[溶接部]
実施例1では、ブラケット6とシリンダチューブ2とを溶接により接合する溶接部として、フランジ側溶接部23を有し、シリンダチューブ2の外周面2bに設けられる溶接部としてカウンタ溶接部24を有する。フランジ側溶接部23は、シリンダチューブ2の中心軸25よりもフランジ部18側に配置された溶接部である。また、カウンタ溶接部24は、シリンダチューブ2の中心軸25よりもフランジ部18の反対側に配置された溶接部である。フランジ側溶接部23は、バンド部17における溶接箇所に限らず、例えば、一対のフランジ部18,18間に溶接箇所が設けられる場合も含む。また、カウンタ溶接部24は、溶接変形によるシリンダチューブ全体としての曲がり量を抑制することを主目的として設けられるものであるため、必ずしもブラケット6とシリンダチューブ2とを接合しなくてもよいが、接合してもよい。
フランジ側溶接部23は、図3(a)および図3(d)に示すように、第1バンド部20の軸方向一端部20aと、第2バンド部21の軸方向他端部21bとにそれぞれ設けられている。また、カウンタ溶接部24は、図3(a)および図3(c)に示すように、第1バンド部20の軸方向一端部20aと、第2バンド部21の軸方向一端部21aとにそれぞれ設けられている。2つのフランジ側溶接部23と2つのカウンタ溶接部24は、いずれもシリンダチューブ半周分の長さであり、フランジ側溶接部23とカウンタ溶接部24の溶接範囲の合計は、シリンダチューブ2周分となる。また、フランジ側溶接部23とカウンタ溶接部24は、シリンダチューブ周方向における溶接長さがほぼ等しい。さらに、第1バンド部20の軸方向一端部21aにおけるフランジ側溶接部23とカウンタ溶接部24は、シリンダチューブ2の中心軸25に対し対称形状である。
ピストン10は、車庫入れ等の据え切り時、転舵輪がストッパと当接する限界位置までステアリングホイールが操舵されたとき、シリンダチューブ2の軸方向において、第1バンド部20の軸方向一端部20aよりも外側(図2の軸方向一端部20aよりも左側)の位置まで移動可能である。なお、市街地走行時の操舵常用域において、ピストン10の最大移動位置は、第2バンド部21の軸方向他端部21bよりも外側(図2の軸方向他端部21bよりも左側)、かつ、第1バンド部20の軸方向一端部20aよりも内側(図2の軸方向一端部20aよりも右側)の位置となる。
【0012】
次に、作用を説明する。
[シリンダチューブの曲がり抑制作用]
従来のパワーステアリング装置では、シリンダチューブを車体に固定するブラケットのシリンダチューブ軸方向両端部の周方向同一位置をシリンダチューブの外周面と溶接している。このため、溶接変形によってシリンダチューブが溶接部分を起点とし同一方向へ2段階に折れ曲がる。つまり、溶接変形によるシリンダチューブ全体としての曲がり量を大きいため、ピストンの摺動特性に影響を及ぼす。
これに対し、実施例1のパワーステアリング装置では、ブラケット6とシリンダチューブ2とを溶接により接合する溶接部として、シリンダチューブ2の中心軸25よりもフランジ部18側にフランジ側溶接部23を設ける一方、シリンダチューブ2の外周面2bに設けられる溶接部として、シリンダチューブ2の中心軸25よりもフランジ部18と反対側にカウンタ溶接部24を設けた。つまり、フランジ側溶接部23による溶接変形をカウンタ溶接部24によって逆方向に矯正することで、溶接変形によるシリンダチューブ全体としての曲がり量を抑制できる。
【0013】
詳述すると、実施例1では、フランジ側溶接部23を第1バンド部20の軸方向一端部20aと、第2バンド部21の軸方向他端部21bとにそれぞれ設け、カウンタ溶接部24を第1バンド部20の軸方向一端部20aと、第2バンド部21の軸方向一端部21aとにそれぞれ設けている。このため、シリンダチューブ2における第1バンド部20の軸方向一端部20aとの溶接箇所では、フランジ側溶接部23によりシリンダチューブ2をフランジ部18側に曲げようとする溶接変形が発生するのに対し、カウンタ溶接部24によりシリンダチューブ2をフランジ部18と反対側に曲げようとする溶接変形を発生させることで、変形量を抑制できる。また、シリンダチューブ2における第2バンド部21の軸方向他端部21bとの溶接箇所では、フランジ側溶接部23によりシリンダチューブ2をフランジ部18側に曲げようとする溶接変形が発生するのに対し、シリンダチューブ2における第2バンド部21の軸方向一端部21aにおいて、カウンタ溶接部24によりシリンダチューブ2をフランジ部18と反対側に曲げようとする溶接変形を発生させることで、シリンダチューブ全体としての曲がり量を小さくできる。
特に、実施例1では、フランジ側溶接部23とその反対側に設けられたカウンタ溶接部24のシリンダチューブ周方向の溶接長さをほぼ等しくしたことで、フランジ部18側への曲がり量とフランジ部18と反対側への曲がり量との均一化を図ることができ、よりまっすぐなシリンダチューブ2を得ることができる。
また、実施例1では、第1バンド部20の軸方向一端部21aにおけるフランジ側溶接部23とカウンタ溶接部24とをシリンダチューブ2の中心軸25に対し対称形状としたことで、シリンダチューブ軸方向同一位置におけるフランジ部18側への曲がり量とフランジ部18と反対側への曲がり量との均一化を図ることができ、よりまっすぐなシリンダチューブ2を得ることができる。
さらに、実施例1では、フランジ側溶接部23とカウンタ溶接部24の溶接範囲の合計を、シリンダチューブ1周分の整数倍(2倍)となるようにしたため、フランジ部18側への曲がり量とフランジ部18と反対側への曲がり量との均一化を図ることができ、よりまっすぐなシリンダチューブ2を得ることができる。
【0014】
[全周溶接箇所を1箇所としたことの効果]
実施例1では、全周溶接箇所はブラケット6のシリンダチューブ軸方向一端部(第1バンド部20の軸方向一端部20a)の1箇所のみであり、ブラケット6のシリンダチューブ軸方向他端部(第2バンド部21の軸方向他端部21b)には全周溶接を施していない。これによる作用効果を説明する。
ブラケット6とシリンダチューブ2とを溶接する場合には、シリンダチューブ2の軸方向同一位置を全周溶接とすることで、溶接による変形量を最も小さくできる。ここで、シリンダチューブ2の外周面2bに溶接部を設けると、その内周面2aが塑性変形して凸部が生じる。この凸部は、内周面2aを摺動するピストン10の抵抗となり、全周溶接を行った場合には、環状の凸部が生じるため、抵抗が最も大きくなる。このため、実施例1では、全周溶接箇所を1箇所とすることで、ピストン10の摺動抵抗が最も大きくなる位置が2つ発生するのを防止している。
【0015】
さらに、実施例1のパワーシリンダ1では、市街地走行時の操舵常用域において、ピストン10はシリンダチューブ2の第2バンド部21の軸方向他端部21bよりも外側に移動するため、仮に軸方向他端部21bに全周溶接を施した場合、常用操舵域でピストン10の摺動抵抗が最も大きくなる位置が発生し、操舵感の悪化を招く。そこで、実施例1では、第2バンド部21の軸方向他端部21bを全周溶接とせず、カウンタ溶接部24のみを設け、その近接位置である第2バンド部21の軸方向一端部21aにフランジ側溶接部23を設けている。つまり、第1バンド部20と第2バンド部21との間の肉抜き部22を溶接箇所として利用し、溶接部をシリンダチューブ軸方向に分割して配置することにより、常用操舵域における操舵感の悪化を回避しつつ、溶接変形によるシリンダチューブ全体としての曲がり量を抑制できる。
なお、第1バンド部20の軸方向一端部20aは全周溶接としているが、当該全周溶接部分の内周面2aに生じる凸部は、車庫入れ等の据え切り時にのみピストン10の摺動抵抗となるものであり、据え切り時には大きなアシスト力が付与されるため、操舵感を悪化させるほどのものではない。
【0016】
次に、効果を説明する。
実施例1のパワーステアリング装置にあっては、以下に列挙する効果を奏する。
(1) ステアリングホイール操作に基づき転舵輪を転舵させるラックアンドピニオン8と、シリンダチューブ2と、シリンダチューブ2の内周面2aと摺動しシリンダチューブ2内を一対の油圧室11,12に隔成するピストン10と、を有し、ラックアンドピニオン8に操舵アシスト力を付与するパワーシリンダ1と、シリンダチューブ2の外周面2bに設けられ円弧状に形成されると共に互いにシリンダチューブ軸方向に離間して配置された第1バンド部20および第2バンド部21を有するバンド部17と、バンド部17の周方向両端部17a,17bに一体成形されシリンダチューブ軸方向に対し径方向外側に突出するように設けられたフランジ部18と、フランジ部18に設けられ車体と接続される接続部19と、から構成され、シリンダチューブ2と車体とを接続するブラケット6と、ブラケット6とシリンダチューブ2とを溶接により接合する溶接部であって、第1バンド部20のシリンダチューブ軸方向一端部20aと第2バンド部21の軸方向他端部21bとに設けられ、シリンダチューブ2の中心軸25よりもフランジ部18側に配置されたフランジ側溶接部23と、第1バンド部20の軸方向一端部20aと、第2バンド部21の軸方向一端部21aとに設けられ、シリンダチューブ2の中心軸25よりもフランジ部18の反対側に配置され、シリンダチューブ周方向における溶接長さの合計がフランジ側溶接部23の周方向における溶接長さの合計とほぼ等しくなるように設けられたカウンタ溶接部24と、を有し、フランジ側溶接部23とカウンタ溶接部24は、シリンダチューブ軸方向同一位置における全周溶接箇所が1箇所以下となるように設けられている。これにより、溶接変形によるシリンダチューブ全体としての曲がり量を抑制できる。また、ピストン10の摺動抵抗が最も大きくなる全周溶接箇所が2箇所以上となるのを防止できる。
【0017】
(2) 第1バンド部20の軸方向一端部21aにおけるフランジ側溶接部23とカウンタ溶接部24とは、シリンダチューブ2の中心軸25に対し対称形状となるように設けられるため、シリンダチューブ軸方向同一位置におけるフランジ部18側への曲がり量とフランジ部18と反対側への曲がり量との均一化を図ることができ、よりまっすぐなシリンダチューブ2を得ることができる。
(3) フランジ側溶接部23とカウンタ溶接部24の溶接範囲の合計は、シリンダチューブ1周分の整数倍(2倍)となるように設けられるため、よりまっすぐなシリンダチューブ2を得ることができる。
【0018】
〔変形例〕
図4は、実施例1の変形例であり、フランジ側溶接部23とカウンタ溶接部24の溶接位置範囲を実施例1と異ならせた例である。図4に示した各変形例において、(a),(b),(c),(d)は、図2に示した実施例1の(a),(b),(c),(d)と対応する。すなわち、(a)は図2のA矢視図、(b)は図2のB-B断面図、(c)は図2のC-C断面図、(d)は図2のD矢視図である。
変形例1は、第1バンド部20の軸方向一端部20aと第2バンド部21の軸方向他端部21bにフランジ側溶接部23が設けられ、第1バンド部20の軸方向他端部20bと第2バンド部21の軸方向一端部21aにカウンタ溶接部24が設けられている。各溶接部の溶接範囲はいずれもシリンダチューブ半周分の長さである。全周溶接箇所がゼロであるため、実施例1に対し、ピストン10の摺動抵抗を小さくできる。
変形例2は、第1バンド部20の軸方向一端部20aと第2バンド部21の軸方向他端部21bにフランジ側溶接部23が設けられ、第1バンド部20の軸方向一端部20aと軸方向他端部20bにカウンタ溶接部24が設けられている。各溶接部の溶接範囲はいずれもシリンダチューブ半周分の長さである。
【0019】
変形例3は、第1バンド部20の軸方向一端部20aと第2バンド部21の軸方向他端部21bにフランジ側溶接部23が設けられ、第1バンド部20の軸方向一端部20aと第1バンド部20の軸方向他端部20bと第2バンド部21の軸方向一端部21aと第2バンド部21の軸方向他端部21bにカウンタ溶接部24が設けられている。各フランジ側溶接部23の溶接範囲はいずれもシリンダチューブ半周分の長さであり、各カウンタ溶接部24の溶接範囲はいずれもシリンダチューブ1/4周分の長さである。全周溶接箇所がゼロであるため、実施例1に対し、ピストン10の摺動抵抗を小さくできる。
変形例4は、第1バンド部20の軸方向一端部20aにフランジ側溶接部23が設けられ、第1バンド部20の軸方向他端部20bと第2バンド部21の軸方向一端部21aにカウンタ溶接部24が設けられている。各フランジ側溶接部23の溶接範囲はシリンダチューブ半周分であり、各カウンタ溶接部24の溶接範囲はいずれもシリンダチューブ1/4周分の長さである。全周溶接箇所がゼロであるため、実施例1に対し、ピストン10の摺動抵抗を小さくできる。
【符号の説明】
【0020】
1 パワーシリンダ
2 シリンダチューブ
2a 内周面
6 ブラケット
8 ラックアンドピニオン(転舵機構)
10 ピストン
11,12 一対の油圧室
17 バンド部
18 フランジ部
19 接続部
20 第1バンド部
20a 軸方向一端部
20b 軸方向他端部
21 第2バンド部
21a 軸方向一端部
21b 軸方向他端部
23 フランジ側溶接部
24 カウンタ溶接部
25 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイール操作に基づき転舵輪を転舵させる転舵機構と、
シリンダチューブと、前記シリンダチューブの内周面と摺動し前記シリンダチューブ内を一対の液圧室に隔成するピストンと、を有し、前記転舵機構に操舵アシスト力を付与するパワーシリンダと、
前記シリンダチューブの外周に設けられ円弧状に形成されると共に互いに前記シリンダチューブ軸方向に離間して配置された第1バンド部および第2バンド部を有するバンド部と、前記バンド部の周方向端部に一体成形され前記シリンダチューブ軸方向に対し径方向外側に突出するように設けられたフランジ部と、前記フランジ部に設けられ車体と接続される接続部と、から構成され、前記シリンダチューブと車体とを接続するブラケットと、
前記ブラケットと前記シリンダチューブとを溶接により接合する溶接部であって、前記第1バンド部の前記シリンダチューブ軸方向両端部および前記第2バンド部の前記シリンダチューブ軸方向両端部のうち少なくとも1箇所以上に設けられ、前記シリンダチューブの中心軸よりも前記フランジ部側に配置されたフランジ側溶接部と、
前記シリンダチューブ外周に設けられる溶接部であって、前記第1バンド部の前記シリンダチューブ軸方向両端部および前記第2バンド部の前記シリンダチューブ軸方向両端部のうち少なくとも1箇所以上に設けられ、前記シリンダチューブの中心軸よりも前記フランジ部の反対側に配置され、前記シリンダチューブ周方向における溶接長さの合計が前記フランジ側溶接部の前記周方向における溶接長さの合計とほぼ等しくなるように設けられたカウンタ溶接部と、
を有し、
前記フランジ側溶接部と前記カウンタ溶接部は、前記シリンダチューブ軸方向同一位置における全周溶接箇所が1箇所以下となるように設けられていることを特徴とするパワーステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパワーステアリング装置において、
前記フランジ側溶接部と前記カウンタ溶接部とは、前記シリンダチューブの中心軸に対し対称形状となるように設けられていることを特徴とするパワーステアリング装置。
【請求項3】
請求項1に記載のパワーステアリング装置において、
前記フランジ側溶接部と前記カウンタ溶接部の溶接範囲の合計は、前記シリンダチューブ1周分の整数倍となるように設けられることを特徴とするパワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−126453(P2011−126453A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287750(P2009−287750)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】