説明

パワースライドドア操作用ワイヤロープ

【課題】外周面に樹脂コーティング層を設けたワイヤロープよりも、さらに屈曲性能と曲げ耐久性を向上させたパワースライドドア操作用ワイヤロープを得る。
【解決手段】複数本の素線を撚り合わせた芯ストランド1の周囲に樹脂コーティング層3を設け、この樹脂コーティング層3を設けた芯ストランド1の周囲に、複数本の素線を撚り合わせた側ストランド2を複数本撚り合わせてパワースライドドア操作用ワイヤロープを形成し、その全体外径(D)が1.2〜3.0mmで、全体外径(D)と樹脂コーティング層の肉厚(T)との肉厚比(P=T/D×100)を、5≦P≦25を満足するように規定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車のパワースライドドアの開閉操作に使用する操作用ワイヤロープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のパワースライドドアの開閉操作に使用するワイヤロープは、屈曲性能と共に、曲げ耐久性が良好でなければならない。
この種の用途に使用されるワイヤロープは、複数本の素線を撚り合わせた芯ストランドの周囲に、複数本の素線を撚り合わせた側ストランドを、複数本撚り合わせて形成されており、通常、芯ストランドと側ストランドを形成する素線としては、硬鋼線が使用されている。
【0003】
このパワースライドドア操作用ワイヤロープの屈曲性能と曲げ耐久性を向上させるために、近年では、このワイヤロープの外周に、樹脂コーティング層を設けることが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、高品質の自動車においては、屈曲性能と曲げ耐久性をより向上させたいという要求がある。
【0005】
そこで、この発明は、外周面に樹脂コーティング層を設けたワイヤロープよりも、さらに屈曲性能と曲げ耐久性を向上させたパワースライドドア操作用ワイヤロープを得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の課題を解決するために、複数本の素線を撚り合わせた芯ストランドの周囲に樹脂コーティング層を設け、この樹脂コーティング層を設けた芯ストランドの周囲に、複数本の素線を撚り合わせた側ストランドを複数本撚り合わせてパワースライドドア操作用ワイヤロープを形成し、その全体外径(D)が1.2〜3.0mmで、全体外径(D)と樹脂コーティング層の肉厚(T)との肉厚比(P=T/D×100)を、5≦P≦25を満足するように規定したものである。
【0007】
この発明において、芯ストランドと側ストランドを形成する素線は、両方とも硬鋼線を使用して形成してもよいが、側ストランドを形成する素線は、ステンレス鋼線で形成してもよい。
【0008】
この発明のパワースライドドア操作用ワイヤロープは、芯ストランドと側ストランドとの間に、樹脂コーティング層が設けられているので、この樹脂コーティング層によって、全体の耐久性能が十分に保たれ、樹脂コーティング層の剥がれという問題が一切ない。
【0009】
そして、この芯ストランドと側ストランドとの間に設ける樹脂コーティング層の肉厚は、薄すぎると当然のことながら、耐久性が悪くなるが、一方、厚ければ厚いほど良いというわけではなく、パワースライドドア操作用ワイヤロープにおいて、屈曲性能と曲げ耐久性を得ることができる厚みは、全体外径(D)と樹脂コーティング層の肉厚(T)との肉厚比(P=T/D×100)で決まるという知見を得て、全体外径(D)が1.2〜3.0mmであって、肉厚比の範囲が、5≦P≦25であるということをこの発明は見出したのである。
【0010】
上記樹脂コーティング層を形成する樹脂としては、熱可塑性樹脂、例えば、ポリアミド樹脂を使用することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、この発明に係るワイヤロープは、パワースライドドア操作用のワイヤロープとして、屈曲性能と曲げ耐久性に特に優れた適性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明に係るパワースライドドア操作用ワイヤロープの一例を図1に示している。
この図1のワイヤロープは、芯ストランド1の素線数が19本、芯ストランド1の周囲の側ストランド2の本数が8本で、各側ストランド2の素線数が7本の19+8×7タイプのワイヤロープあり、芯ストランド1の外周、即ち、芯ストランド1と側ストランド2との間に、樹脂コーティング層3を設けている。
【0013】
この発明は、芯ストランド1の素線数が19本、側ストランド2の本数が7本で、各側ストランド2の素線数が7本の19+7×7タイプのワイヤロープにも適用することができる。
【0014】
このワイヤロープの全体外径は、1.2〜3.0mmである。また、上記芯ストランド1及び側ストランド2の素線は、硬鋼線であり、芯ストランド1の素線径は、0.03〜0.35mm、側ストランド2の素線径は、0.05〜0.35mmであり、側ストランド2はステンレス鋼線を使用してもよい。
樹脂コーティング層3を形成する樹脂としては、ポリアミド樹脂を使用することができる。
【0015】
この発明のワイヤロープの全体外径(D)は、1.2〜3.0mmであり、全体外径(D)と樹脂コーティング層3の肉厚(T)との肉厚比(P=T/D×100)は、5≦P≦25の範囲に規定する。
【0016】
肉厚(T)は、芯ストランド1の外径(D)、樹脂コーティング層3の外径(D)とした場合の、T=D−Dの値である。
【0017】
この発明のワイヤロープの耐久性の評価を、次のような方法で行った。
図2に示すように、試験ワイヤAの一端を固定して、3個のプーリー4、5、6に掛け渡して水平に引き出し、その他端をプーリー7に掛け渡して、垂直方向に垂らし、その先端に荷重20kgfの重り8を付け、プーリー4、5、6の中間プーリー5を水平方向に往復移動させ、試験ワイヤAが全損するまでの中間プーリー5の往復移動回数を測定した。
プーリー4、5、6は、溝底径がφ40.0で、溝形状が平溝で、溝幅が2.0mmのものを使用し、中間プーリー5は、100mmの幅で往復移動させ、その速度は30cpmとした。
【0018】
各種の試験ワイヤAの耐久試験の評価は、表1〜表3に示す通りであり、肉厚比(P=T/D×100)が5≦P≦25の範囲内のものは、その範囲外にあるものよりも、2倍以上の曲げ耐久性能を示した。なお、試験ワイヤAの全体外径(D)は、2.0mmのものを使用した。
【0019】
【表1】

【0020】
【表2】

【0021】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明に係るワイヤロープの一例を示すワイヤ構成図である。
【図2】ワイヤロープの耐久評価の試験方法を示す概略図である。
【符号の説明】
【0023】
1 芯ストランド
2 側ストランド
3 樹脂コーティング層
4、5、6、7 プーリー
8 重り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の素線を撚り合わせた芯ストランドの周囲に樹脂コーティング層を設け、この樹脂コーティング層を設けた芯ストランドの周囲に、複数本の素線を撚り合わせた側ストランドを複数本撚り合わせ、全体外径(D)が1.2〜3.0mmで、全体外径(D)と樹脂コーティング層の肉厚(T)との肉厚比(P=T/D×100)が、下記式を満足するパワースライドドア操作用ワイヤロープ。
5≦P≦25
【請求項2】
芯ストランドの素線数が19本、芯ストランドの周囲の側ストランドの本数が8本で、各側ストランドの素線数が7本の19+8×7タイプであることを特徴とする請求項1記載のパワースライドドア操作用ワイヤロープ。
【請求項3】
芯ストランドの素線数が19本、芯ストランドの周囲の側ストランドの本数が7本で、各側ストランドの素線数が7本の19+7×7タイプであることを特徴とする請求項1記載のパワースライドドア操作用ワイヤロープ。

【図1】
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【図2】
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