説明

パンクシーリング剤の製造方法

【課題】パンクシーリング剤の構成成分の混合にかかる時間を短縮することで製造時間を短縮するとともに、ラテックス粒子の凝集塊に起因するパンクシーリング剤のゲル化を効果的に防止しパンクシーリング剤の劣化を抑制することができる、パンクシーリング剤の製造方法を提供する。
【解決手段】固形分量が10質量%以上70質量%以下のラテックスと、不凍液および粘着剤エマルジョンの一方とを混合した後、さらに他方を混合する工程を有するパンクシーリング剤の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンクシーリング剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」という。)にパンクが発生した際に、バルブ等からタイヤ内に注入されパンク発生箇所を内側からシールするパンクシーリング剤として、ゴムラテックス、不凍液(凍結防止剤)、及び粘着剤を主な成分とするものが広く用いられている。このパンクシーリング剤は、上記成分を攪拌混合して製造するのが一般的であるが、不凍液として好適に用いられるプロピレングリコールが周囲から水分を急激に吸収する特性を有するため、ゴムラテックス粒子の濃度が局部的に高くなり、ゴムラテックス粒子同士が融合して凝集塊が形成され、この凝集塊をコアとしてシーリング剤の一部又は全部が固形化(ゲル化)してしまう現象が生じやすい。
【0003】
この問題に対して種々の提案がなされており、例えば、各成分の混合順序に着目したパンクシーリング剤の製造方法がある。例として、凍結防止剤と水とを混合する第1の混合工程と、前記第1の混合工程を経た混合液とゴムラテックスとを混合する第2の混合工程と、前記第2の混合工程を経た混合液と粘着剤とを混合する第3の混合工程と、を含む製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、ゴムラテックスと水とを混合する第1の混合工程と、凍結防止剤と粘着剤とを混合する第2の混合工程と、前記第1の混合工程を経た混合液と前記第2の混合工程を経た混合液とを混合する第3の混合工程と、前記第3の混合工程後に濾過を行う濾過工程とを含む製造方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
他には、各成分の混合所作に着目したパンクシーリング剤の製造方法も開示されている。このようなものとしては、円筒状容器に収容したゴムラテックスと粘着剤との混合溶液を、先端速度1.0〜10.0m/秒で回転する撹拌羽根の回転により撹拌しながら、凍結防止剤を複数個の注入口から1個の注入口当たり0.01〜0.1リッター/分の注入速度で混合溶液の表面に注入する製造方法が挙げられる(例えば、特許文献3参照)。この製造方法では、凍結防止剤注入攪拌ステップで凍結防止剤(エチレングリコール)の注入が完了した後も、ある程度(例えば、5分以上)の時間にわたって攪拌を継続することが好ましいとされている。これは、エチレングリコールの注入完了後に、シーリング剤原液の撹拌を一定時間にわたって継続することにより、撹拌中にシーリング剤原液中に形成された微小なラテックス凝集塊の凝集、成長を促進できるので、シーリング剤原液中にラテックス凝集塊が微小なまま存在しているよりも、濾過によるラテックス凝集塊の除去が容易になるためとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2008/032765号公報
【特許文献2】特開2008−069253号公報
【特許文献3】特許第4188623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のパンクシーリング剤の製造方法における成分の混合順序では、混合に時間がかかるという問題があった。また、特許文献2のパンクシーリング剤の製造方法では、製造ラインの上流部で第1の混合工程用と第2の混合工程用と2つの撹拌槽を設ける必要がある上、凍結防止剤と粘着剤との混合に時間がかかるため、生産性の点で改善の余地が大きかった。
【0007】
特許文献3に関しては、発明者等がパンクシーリング剤の製造方法の効果等を確認するための実験を行ったところ、シーリング剤原液の撹拌を一定時間にわたって継続した後、このシーリング剤原液を濾過しただけでは、シーリング剤原液中からラテックス凝集塊を十分に除去できず、このシーリング剤原液から製造されたパンクシーリング剤のゲル化を完全に防止できないことが明らかになった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み成されたものであり、パンクシーリング剤の構成成分の混合にかかる時間を短縮することで製造時間を短縮するとともに、ラテックス粒子の凝集塊に起因するパンクシーリング剤のゲル化を効果的に防止しパンクシーリング剤の劣化を抑制することができる、パンクシーリング剤の製造方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
<1> 本発明は、固形分量が10質量%以上70質量%以下のラテックスと、不凍液および粘着剤エマルジョンの一方とを混合した後、さらに他方を混合する工程を有するパンクシーリング剤の製造方法である。
【0010】
前記<1>記載の発明によれば、パンクシーリング剤の構成成分の混合にかかる時間を短縮しながら、ラテックス凝集塊に起因するシーリング剤のゲル化を効果的に防止することが可能となる。
【0011】
<2> 本発明は、前記工程が、前記ラテックスと前記不凍液とを混合した後、さらに前記粘着剤エマルジョンを混合する工程である<1>に記載のパンクシーリング剤の製造方法である。
【0012】
前記<2>記載の発明によれば、ラテックス粒子の凝集をより効果的に防止することができ、ラテックス凝集塊に起因するパンクシーリング剤のゲル化が抑制される。
【0013】
<3> 本発明は、前記不凍液を混合する際の、前記ラテックスまたは前記ラテックスと前記粘着剤エマルジョンの混合液の撹拌速度が50rpm以上500rpm以下で、前記不凍液の滴下速度が0.5kg/min以上500kg/min以下である<1>又は<2>に記載のパンクシーリング剤の製造方法である。
【0014】
前記<3>記載の発明によれば、不凍液の周囲で局部的にラテックス粒子の濃度が高くなることが効果的に抑えられ、ラテックス粒子の凝集をより効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、パンクシーリング剤の構成成分の混合にかかる時間を短縮することで製造時間を短縮するとともに、ラテックス粒子の凝集塊に起因するパンクシーリング剤のゲル化を効果的に防止しパンクシーリング剤の劣化を抑制することができる、パンクシーリング剤の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】パンクシーリング剤をタイヤに充填するために用いられるシーリング・ポンプアップ装置の一例を示す概略図である。
【図2】パンクシーリング剤をタイヤに充填するために用いられるシーリング・ポンプアップ装置の他の例を示す概略図であり、(A)はパンクシーリング剤の収納容器であるボトルの使用例を示す概略図であり、(B)はエアコンプレッサの使用例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のパンクシーリング剤の製造方法は、固形分量が10質量%〜70質量%のラテックス(以下、「本発明のラテックス」、または単に「ラテックス」ということがある。)と、不凍液および粘着剤エマルジョンの一方とを混合した後、さら他方を混合する工程を有するものである。主として、不凍液と混合された際にラテックスの凝集、引いては混合後のゲル化を生じない程度に、所定の固形分量に調製されたラテックスと、不凍液および粘着剤エマルジョンとを順次混合することで、混合にかかる全時間を短縮しながら、シール性を発現する上で重要なラテックスを水性媒体中で安定に保ち、ラテックス凝集塊に起因するシーリング剤のゲル化を効果的に防止することが可能となる。
【0018】
本発明のパンクシーリング剤の製造方法においては、不凍液および粘着剤エマルジョンのうち、いずれを先にラテックスと混合してもよいが、ラテックスと不凍液とを先に混合し、その後、ラテックスと不凍液との混合液に、さらに粘着剤エマルジョンを混合することが好ましい。ラテックスと不凍液とを先に混合することで、ラテックス粒子の凝集をより効果的に防止することができ、ラテックス凝集塊に起因するパンクシーリング剤のゲル化が抑制されるので、パンクシーリング剤の保存安定性が増す。
【0019】
また、不凍液を混合する際は、ラテックス粒子の凝集が起きないように不凍液の投入速度を調節する必要があるが、ラテックスと粘着剤エマルジョンとの混合液に不凍液を混合する場合よりも、ラテックスに不凍液を混合する場合の方が、不凍液の投入速度を速くすることができるので、不凍液の混合にかかる時間を短縮することができ、結果、パンクシーリング剤の製造時間を短縮することができる。
【0020】
本発明のパンクシーリング剤の製造方法においては、ラテックスと不凍液との混合方法は、特に制限されないが、ラテックスを撹拌しながら、そこへ不凍液を滴下することが好ましい。このようにすることで、不凍液の周囲で局部的にラテックス粒子の濃度が高くなることが抑えられ、ラテックス粒子の凝集を効果的に防止することができる。混合にかかる時間を短縮するとともに、ラテックス粒子の凝集を効果的に防止する観点から、ラテックスの攪拌速度は、50rpm〜500rpmとすることが好ましい。不凍液の滴下速度は、ラテックスの固形分量や撹拌速度、その他の混合条件に応じて設定することができ、例えば、上記の撹拌速度においては、0.5kg/min〜500kg/minが好ましく、ラテックス粒子の凝集を効果的に防止する観点から、0.5kg/min〜100kg/minがより好ましい。
【0021】
また上記において、ラテックスの攪拌速度は、ラテックス粒子の凝集を効果的に防止する観点や生産性の観点から、混合液の液深さ〔mm〕が増すにしたがって上昇させることが好ましい。攪拌速度の変化量は、0.1rpm/mm〜6.0rpm/mmが好ましく、0.2rpm/mm〜1.5rpm/mmがより好ましい。攪拌速度の変化量は一定であることが好ましい。
【0022】
ラテックスと粘着剤エマルジョンとの混合も、上記のラテックスと不凍液との混合方法と同様の所作で行うことができ、好ましい態様も同様である。更に後から混合する粘着剤エマルジョンまたは不凍液との混合も、上記のラテックスと不凍液との混合方法と同様の所作で行うことができ、好ましい態様も同様である。
【0023】
<ラテックス>
本発明のラテックスは、水性媒体の中にポリマーが分散した懸濁液で、固形分量が10質量%〜70質量%である。該ラテックスは、パンクシーリング剤の製造に合わせて、新たに製造あるいは稀釈する等して、固形分量が10質量%〜70質量%になるように調製したものであってよく、予め固形分量10質量%〜70質量%に調製しておいたものであってもよい。本発明のラテックスを、所定量を超える固形分量のラテックスと水とを混合して得る場合、例えば、該ラテックスを撹拌しながら、そこに水を投入し混合して得ることができる。
【0024】
ここで、ラテックスの固形分量は、以下のようにして求めることができる。まず、ラテックス10gを4時間、140℃の状態で放置する。放置後の残留分の質量を測定し、当該残留分の質量をラテックスの質量で除する(残留分の質量/放置前のラテックスの質量)ことで求めることができる。
【0025】
本発明のラテックスは、固形分量が10質量%〜70質量%である。ラテックスの固形分量が70質量%超であると、不凍液と混合したときに、不凍液の周囲の局部的なラテックス粒子濃度がラテックスの凝集を発生させるほどに高まってしまい、ラテックスを水系中で安定に保つことができない。また、固形分量が70質量%以下であると、水性媒体中でポリマーが安定しやすく、固形分の沈降を抑えることができるので、ラテックスの保存性に優れる。固形分量が10質量%未満では、パンクシーリング剤のシール性の発現が期待できない。
【0026】
本発明のラテックスの固形分量は、パンクシーリング剤としたときのシール性を向上させる観点、及び、不凍液と混合したときにラテックス粒子の凝集を効果的に防止する観点から、好ましくは20質量%〜70質量%、より好ましくは25質量%〜50質量%である。
【0027】
ここで、ラテックスとしては、種類は特に制限されず、例えば、天然ゴム(NR)ラテックス、合成ゴムラテックス、又は合成樹脂ラテックスを適宜選択して用いることができる。
【0028】
前記合成ゴムラテックスとしては、例えば、SBR(スチレンブタジエンゴム)ラテックス、NBR(ニトリルゴム)ラテックス、MBR(アクリルゴム)ラテックス、BR(ポリブタジエンゴム)ラテックス、IIR(ブチルゴム)ラテックス、CRラテックス、IRラテックス、及び多硫化ゴムラテックス等が挙げられる。
【0029】
前記合成樹脂ラテックスとしては、カルボキシ変性NBRラテックス、カルボキシ変性SBRラテックス、アクリルエステル系ラテックス、スチレン・ブタジエン・レジンラテックス、酢酸ビニルラテックス、ポリ酢酸ビニルラテックス、塩化ビニルラテックス、ポリ塩化ビニルラテックス、塩化ビニリデンラテックス、ポリ塩化ビニリデンラテックス、及びポリスチレンラテックス等が挙げられる。
【0030】
上記の中でも、タイヤなどへの腐食性を考慮すると、合成ゴムラテックス又は合成樹脂ラテックスを用いることがより好ましく、SBRラテックス、NBRラテックス、MBRラテックス、BRラテックス、カルボキシル変性NBRラテックス、及びカルボキシル変性SBRラテックスからなる群より選択される1種または2種以上を用いることがより好ましい。
【0031】
ラテックスは単独種のみ用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
ラテックスの含有量は、パンクシーリング剤の全質量に対して、1質量%〜70質量%とすることが好ましく、5質量%〜50質量%とすることがより好ましく、5質量%〜25質量%とすることがさらに好ましい。
【0032】
<不凍液>
不凍液は、パンクシーリング剤を寒冷地で用いたときに、パンクシーリング剤の凍結を防止する機能を有するものであれば特に制限されない。
例えば、1価のアルコールや、2価のアルコールを用いることができ、エタノール、1−プロパノール、エチレングリコール(EG)、及びプロピレングリコール(PG)等を挙げることができる。アルコールは、直鎖でも分岐でも環状でもよく、中でも、安全性の観点からはプロピレングリコール(PG)を用いることが好ましく、パンクシーリング剤の低粘度化の観点からは炭素数1〜5の1価のアルコールを用いることが好ましい。
【0033】
不凍液の含有量は特に制限されないが、低温時の凍結防止性の観点から、パンクシーリング剤の全質量に対して5質量%〜90質量%であることが好ましい。より好ましくは20質量%〜60質量%である。
【0034】
<粘着剤エマルジョン>
粘着剤エマルジョンは、粘着剤を界面活性剤を用いて乳化させたものである。粘着剤は、主としてラテックスの固形分である合成ゴムや天然ゴムのタイヤへの接着力を向上させるもので、本発明の効果を損なうものでなければ特に制限されず、例えば、樹脂系粘着剤を好適に用いることができる。
【0035】
前記樹脂系粘着剤としては、例えば、天然樹脂、変性ロジン及び変性ロジンの誘導体、テルペン系樹脂及びテルペン変性体、脂肪族系炭化水素樹脂、シクロペンタジエン樹脂;芳香族系石油樹脂、フェノール系樹脂、アルキルフェノールアセチレン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂、及びビニルトルエン−αメチルスチレン共重合体を挙げることができる。
【0036】
前記天然樹脂としては、ロジン、ダンマル等が挙げられる。
前記変性ロジン及び変性ロジンの誘導体としては、重合ロジン(例えば、ロジン酸エステル樹脂等)、部分水添ロジン等が挙げられる。
前記テルペン系樹脂及びテルペン変性体としては、ピネン、α−ピネンフェノール樹脂、ジペンテンフェノール樹脂、テルペンビスフェノール樹脂等のテルペンフェノール樹脂、またはこれらを水素添化したものなどが挙げられる。
前記脂肪族系炭化水素樹脂としては、オレフィン、オレフィン重合体等が挙げられる。
【0037】
また、アクリル系粘着剤、水溶性粘着剤等を用いることもできる。
【0038】
中でも、ラテックスを凝固しにくく、ラテックス固形分とタイヤとの接着性に優れるとの観点から、テルペンフェノール樹脂またはロジン酸エステル樹脂を用いることが好ましい。
【0039】
前記乳化剤としては、公知の界面活性剤(好ましくは、非イオン系界面活性剤)を使用し、樹脂成分にロジン酸エステル樹脂、テルペンフェノール樹脂等のテルペン樹脂、又はポリイソブチレン等のブチルゴム系材料を使用することができる。
【0040】
粘着剤エマルジョンは、ラテックスとの混和性やパンクシール性の向上を考慮して、ラテックスに適合するものを使用することが好ましい。ここで、粘着剤エマルジョンがラテックスに「適合」するということは、粘着剤エマルジョンがラテックスを少しも凝固させるものではないことを意味し、粘着剤エマルジョンが、ラテックスのタイヤへの接着力を向上するものとして用いられることを示す。例えば樹脂が、ゴム皮膜の粘着性付与剤としてのエラストマーに加えられて用いられ得る。
【0041】
パンクシーリング剤中の粘着剤エマルジョンの含有量は、パンクシーリング剤の全質量に対して、1質量%〜15質量%であることが好ましく、2質量%〜12質量%であることがより好ましく、3質量%〜9質量%であることがさらに好ましい。1質量%〜15質量%とすることで、実用的で良好なシール性を発揮することができる。
【0042】
<その他の成分>
本発明のパンクシーリング剤は、本発明のパンクシーリング剤の効果を損なわない限りにおいて、さらに、短繊維や界面活性剤等の他の成分を含有することができる。
以下、他の成分について説明する。
【0043】
(短繊維)
本発明のパンクシーリング剤は、前記粘着剤に代えて、または、さらに追加して短繊維を含有してもよい。短繊維は、パンクによりタイヤに発生した穴や孔(欠陥部)に入り込んで目詰まりを生じさせて、これらの穴や孔を迅速、かつ確実に塞ぐ役割を果たす。
【0044】
短繊維の含有量は、パンクシーリング剤の全質量に対して、0.1質量%〜5質量%であることが好ましい。0.1質量%以上あれば、短繊維を添加したことによるシール性を十分に発揮することができ、5質量%以下であれば、短繊維の絡み合いを防ぐことができ、粘性が増加しにくく、パンクシーリング剤の注入容易性が向上すると共に、既述のパンクシーリング剤の役割を十分に発揮し易い。
短繊維の含有量は、パンクシーリング剤の全質量に対して、0.3質量%〜4質量%とすることが好ましく、0.5質量%〜3質量%とすることがより好ましい。
【0045】
パンクシーリング剤について既述のような役割を十分に発揮させるため、短繊維についても種々の設計をする必要がある。そこで、短繊維の比重(S)、長さ(L)、直径(D)、および長さと直径との比(L/D)は、それぞれ、下記の範囲とすることが好ましい。
【0046】
(1)比重(S):0.8≦S≦1.4(より好ましくは、0.9≦S≦1.3、さらに好ましくは、1.0≦S≦1.2)。比重が0.8以上1.4以下であると、短繊維が浮いたり沈んだりせず、長期の分散安定性が良好になる。
【0047】
(2)長さ(L):0.05≦L≦10mm(より好ましくは、0.08≦L≦8mm、さらに好ましくは、0.1≦L≦6mm)。長さが0.05mm以上だと、短繊維がパンクによる欠陥部に目詰まりを生じさせてシール性を向上させる効果が良好に発揮され、10mm以下だと、短繊維の相対的な数が増えるためシール性が良好である。
【0048】
(3)直径(D):1≦D≦100μm(より好ましくは、3≦D≦80μm、さらに好ましくは、5≦D≦50μm)。直径(太さ)が1μm以上だと、上記目詰まりを生じさせてシール性を向上させる短繊維の役割が良好に発揮され、100μm以下だと、短繊維の相対的な数が増えるためシール性が良好である。
【0049】
(4)長さと直径との比(L/D):5≦L/D≦2000(より好ましくは、20≦L/D≦1600、さらに好ましくは、50≦L/D≦1200、特に好ましくは、100≦L/D≦300)。L/Dが5以上だと、上記目詰まりを生じさせてシール性を向上させる短繊維の役割が良好に発揮され、2000以下だと、短繊維の絡み合いによるダマが発生しにくく、シール性および注入容易性が良好である。
【0050】
なお、短繊維は、一の材質からなるものを一定の形状で使用することができるが、既述の範囲で複数の材質からなるものを種々の形状で使用することもできる。
【0051】
短繊維は、その材質に特に制限はないが、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、ポリプロピレン、およびこれら2以上の複合体のいずれかからなることが好ましく、ポリエチレン、ナイロン、ポリプロピレン、およびこれら2以上の複合体のいずれかからなることがより好ましい。かかる短繊維を使用することで、より良好な分離安定性が得られる。
【0052】
短繊維は、その全量若しくはその一部(好ましくは全量)を、高級アルコール系誘導体および/またはベタイン系活性剤等の溶剤で処理しておくことが好ましい。かかる処理により、溶剤が活剤として作用し、短繊維の分散性を向上させることができる。
当該処理は、パンクシーリング剤に含有させる前でも後でもよい。処理方法としては、短繊維を上記溶剤に含浸したり、上記溶剤を吹き付けたりして行うことができる。高級アルコール誘導体としては、ポリグリコール系ポリエステル等が好適である。
【0053】
溶剤の添加量(上記処理により短繊維に吸収される量)としては、短繊維質量の0.2質量%〜20質量%であることが好ましく、0.5質量%〜10質量%であることがより好ましく、1質量%〜6質量%であることがさらに好ましい。上記範囲であれば、短繊維の十分な分散効果が得られ、当該処理が良好で、効果の向上が期待できる。
【0054】
(フィラー)
また迅速にシールしかつ大きな孔でも確実にシールできるように、パンクシーリング剤に1種又はそれ以上のフィラーを混合してもよい。安定したフィラーとしては、例えばケイ酸、チョーク、カーボンブラック、グラスファイバーで補強された合成樹脂、ポリスチレン粒子、タイヤ等の加硫成品の粉砕による粉末ゴム、おがくず、モスラバー粒子、カットフラワー用の発泡粒子等が採用できる。この中でも特に好ましいフィラーは、ケイ酸と結合したゴム粉末、およびグラスファイバーで補強された合成樹脂である。
【0055】
前記フィラーは、パンクシーリング剤に直接添加され得る。しかしながら、フィラーが、バルブサイズを変更することなくバルブをへてパンクシーリング剤を導くのを困難または不可能にする大きさを有する限りにおいては、これらのフィラーは、一般的にタイヤをリム組みするときにタイヤの内部に導入され、タイヤにパンクが発生した際にパンクシーリング剤が注入されることによってシーリングを成し遂げる。
【0056】
前記フィラーは、パンクシーリング剤中に、好ましくは約20g/リットル〜200g/リットル、より好ましくは60g/リットル〜100g/リットル加えられ、あるいはタイヤのリム組においてタイヤ内部に配される。
【0057】
(水)
本発明のパンクシーリング剤は水を含有することができる。
水は、前記粘着剤を粘着剤エマルジョンとして用いる場合の各々の分散媒として用いることができるが、パンクシーリング剤の希薄化のために用いることもできる。
【0058】
(他の添加剤)
本発明のパンクシーリング剤には、通常の分散剤、乳化剤、発泡安定剤、苛性ソーダ等のpH調整剤を添加してもよく、必要により液状樹脂系エマルジョンを用いてもよい。
【0059】
<その他の工程>
本発明では、ラテックスと不凍液および粘着剤エマルジョンとを混合した後に、必要に応じて濾過工程や凝集塊成長工程を設けてもよい。以下、各工程について説明する。
【0060】
(濾過工程)
濾過工程は、少なくともラテックスと不凍液と粘着剤エマルジョンとを含む混合液を、必要に応じて濾過する工程である。濾過方法としては公知の方法を採用することができる。製造条件によっては、上記の成分を混合した後に、ラテックス粒子の凝集によるゲル化が進行して、微粒子状の凝集物が生成する場合がある。そして、当該凝集物を放置しておくと、これを核としてゲル化がより進行してしまう場合がある。そこで、濾過工程により核となる微粒子状の凝集物を除去し、最終的にラテックス凝集塊に起因するパンクシーリング剤のゲル化を効果的に防止することが好ましい。その結果、パンクシーリング剤の貯蔵安定性をも向上させることができる。
【0061】
濾過に使用する濾過器のフィルタ部材としては、金網状に形成された金属製のメッシュフィルタを用いることが好ましい。この場合、そのメッシュ数は50メッシュ(網目の開口径が約300μm)〜400メッシュ(網目の開口径が約30μm)のものを用いることが好ましい。メッシュフィルタの材質としては、ステンレス、アルミ合金等の耐腐食性が高い金属材料を好適に用いることができる。
【0062】
また、フィルタ部材としては、50メッシュ〜400メッシュのメッシュフィルタの網目と略同等の開口径の微小開口が多数、穿設された多孔質フィルタを用いてもよく、またメッシュフィルタや多孔質フィルタが積層された積層フィルタを用いてもよい。
【0063】
(凝集塊成長工程)
濾過工程に先立ち、凝集塊成長工程を設けることが好ましい。この凝集塊成長工程では、構成成分の混合により調液されたシーリング剤原液を少なくとも24時間以上、好ましくは48時間以上の静置時間に亘って撹拌することなく容器内に保持(静置)する。静置時間の下限値は、濾過工程で用いられるメッシュフィルタのメッシュ数等に応じて24時間〜48時間の範囲で適宜、変更することができる。
【0064】
また、静置時間の上限値は特に制限されないが、パンクシーリング剤を製造する際の工程時間(タクト時間)の制約、製造されたパンクシーリング剤をストックするためのストック量の制限等を考慮すると共に、また保管環境に応じてパンクシーリング剤に含まれる水分量が蒸発又は吸湿により徐々に変化することから、保管時の水分量の変化を考慮すると、静置時間の上限値は480時間以下に設定することが好ましい。
【0065】
<パンクシーリング剤>
パンクシーリング剤の製造時にラテックス粒子の凝集を効果的に防止することができれば、ラテックス凝集塊に起因するパンクシーリング剤のゲル化が抑制されるので、パンクシーリング剤の保存安定性は増し、劣化が長期化にわたって抑えられ、パンクシーリング剤は長寿命化する。
【0066】
本発明のパンクシーリング剤は、既述の材料を記述の順序で混合して製造するところ、パンクシーリング剤の製造、保管、充填は、酸化等を避けるため、好ましくは窒素又は希ガスの雰囲気で行われる。
【0067】
(パンクシーリング剤の固形分)
本発明のパンクシーリング剤中の全固形分量は、パンクシーリング剤の全質量に対して、5〜70質量%であることが好ましい。全固形分量がパンクシーリング剤の全質量に対して、5質量%以上あれば十分なシール性を確保することが可能となる。また、70質量%以下であればシール性以外の特性を十分に確保することができる。
上記範囲内での全固形分量のより好ましい上限は60質量%であり、さらに好ましくは50質量%であり、特に好ましくは40質量%である。また、上記範囲内で全固形分量のより好ましい下限は8質量%である。
【0068】
「全固形分量」は、以下のようにして求めることができる。まず、パンクシーリング剤10gを4時間、140℃の状態で放置する。放置後の残留分の質量を測定し、当該残留分の質量をパンクシーリング剤の質量で除する(残留分の質量/放置前のパンクシーリング剤の質量)ことで求めることができる。
【0069】
(パンクシーリング剤の粘度)
パンクシーリング剤の粘度は、実際の使用条件として想定される条件(少なくとも、タイヤへの充填前であって60℃〜−60℃の範囲)において、3mPa・s〜20,000mPa・sであることが好ましく、5mPa・s〜4,500mPa・sであることがより好ましく、8mPa・s〜3,000mPa・sであることがさらに好ましく、10〜3,000mPa・sであることが特に好ましく、15〜1,500mPa・sであることが最も好ましい。
【0070】
パンクシーリング剤の粘度が3mPa・s以上あれば、バルブへの注入時における液漏れを防止することができる。20,000mPa・s以下であれば、注入時の抵抗を抑えることができるため、注入容易性の低下を防止することができ、また、タイヤ内面への広がりを充分にすることができることから、高いシール性が得られる。
【0071】
また、本発明のパンクシーリング剤は、1価のアルコールの含有量を増加することによりさらに凝固点を下げることができ、−40℃以下のような極寒地でも低粘度で好適に用いることができる。−40℃におけるパンクシーリング剤の粘度は、3mPa・s〜5,000mPa・sであることが好ましく、10mPa・s〜3,000mPa・sであることがより好ましく、10mPa・s〜2,000mPa・sであることが特に好ましい。
パンクシーリング剤の粘度は、B型粘度計等により測定することができる。
【0072】
(パンクシーリング剤によるパンクの修理方法)
本発明のパンクシーリング剤によるパンクの修理方法としては、公知の方法を適用することができる。すなわち、まず、パンクシーリング剤が充填された容器をタイヤのバルブ口に接続し、適量を注入する。その後、パンクシーリング剤がタイヤ内面に広がりパンク孔をシールできるようにタイヤを回転させればよい。
【0073】
このようなパンクシーリング剤そのものは、種々のポンプアップ装置、例えば燃料ガスとしてプロパン・ブタン混合ガスを含むスプレー缶を用いてタイヤの内部に導入されてタイヤを再膨張させうるが、図1に示されるポンプアップ装置20によってより好ましく使用できる。
【0074】
図1に示されるポンプアップ装置20では、前記圧力源として小型のエアコンプレッサ1を用いている。このエアコンプレッサ1は、ホース2を介して耐圧容器4のガス導入部3に接続されている。前記ガス導入部3は、栓バルブ5で閉止できかつ耐圧容器4に収納されたパンクシーリング剤6の液面上までのびるライザーチューブとして形成されている。
【0075】
また、耐圧容器4は、パンクシーリング剤6を取出すための出口バルブ7を有し、この出口バルブ7にホース8の一端が接続されるとともに、該ホース8の他端には、タイヤバルブ10にねじ止めされるねじアダプタ9が取付けられている。
【0076】
耐圧容器4は、フィリングスタブ12を有し、かつ水が充填されたジャケット11を具える。必要に応じて加熱源としての塩化カルシウムが前記フィリングスタブ12内に充填されうる。パンクシーリング剤6が低温で凍結すると、この加熱源の水和作用で解放される熱によって、利用できる温度にパンクシーリング剤6が加熱される。
前記エアコンプレッサ1には、電気ケーブル13が接続され、そのプラグ14は、例えば、シガレットライターに差込まれる。
【0077】
タイヤにパンクが発生すると、前記ねじアダプタ9がタイヤバルブ10にねじ止めされ、かつエアコンプレッサ1がシガレットライターに接続されるとともに、耐圧容器4のガス導入部3において前記栓バルブ5が開かれる。そしてエアコンプレッサ1から耐圧容器4内にガス導入部3をへて導入される圧縮空気が、出口バルブ7からパンクシーリング剤6を押出し、タイヤバルブ10をへてタイヤの内部に導入させる。然る後、空気がタイヤの内部に再充填され、タイヤを特定の内圧で膨張させる。これが終わると、ねじアダプタ9をタイヤバルブ10から取外し、エアコンプレッサ1を止める。この直後に、一定距離に亘って予備走行し、タイヤ内部にパンクシーリング剤6を散布しつつパンク孔をシールした後、ポンプアップ装置20が再び接続されてタイヤを要求される内圧まで再度、ポンプアップする。
【0078】
また、本発明のパンクシーリング剤は、図2(A)、(B)に示されるポンプアップ装置によってもより好ましく使用できる。なお、図2(A)、(B)に示されるポンプアップ装置において、図1に示されるポンプアップ装置20と共通の部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0079】
このポンプアップ装置は、図2(A)に示されるパンクシーリング剤6の収納容器である樹脂製のボトル22と、図2(B)に示される圧力源としてのエアコンプレッサ1とを備えている。ボトル22は、1回のパンク修理に必要なパンクシーリング剤6を収容している。ボトル22には、先端部にアダプタ26が配置されたホース24が接続されている。またエアコンプレッサ1に接続されたホース2にも、その先端部にアダプタ9が配置されている。但し、ボトル22のホース24については、タイヤバルブ10に直接接続可能なものであるならばアダプタ26を省略してもよい。
【0080】
パンク発生時に、ボトル22のアダプタ26がタイヤバルブ10にねじ止めされる。これにより、ホース24及びアダプタ26を通してタイヤ内に連通する。この状態で、作業者は、図2(A)で2点鎖線(想像線)により示されるように、ボトル22を握り潰してパンクシーリング剤6をボトル22内から搾り出すことにより、ホース24を通してパンクシーリング剤6をタイヤ内へ注入する。
【0081】
ボトル22内からタイヤ内へのパンクシーリング剤6の注入が完了すると、作業者は、アダプタ26をタイヤバルブ10から取り外してボトル22をタイヤから切り離す。
【0082】
次いで、作業者は、エアコンプレッサ1のアダプタ9をタイヤバルブ10にねじ止めし、アダプタ9及びホース2を通してエアコンプレッサ1をタイヤ内に連通させる。この状態で、作業者は、エアコンプレッサ1を作動させて加圧空気をタイヤ内へ再充填し、タイヤを特定の内圧で膨張させる。これが終わると、作業者は、アダプタ9をタイヤバルブ10から取外し、エアコンプレッサ1を止める。この直後に、一定距離に亘って予備走行し、タイヤ内部にパンクシーリング剤6を散布しつつパンク孔をシールした後、作業者は、ポンプアップ装置のエアコンプレッサ1を再び接続してタイヤを要求される内圧まで再度、ポンプアップする。
【0083】
本発明のパンクシーリング剤は、種々の空気入りタイヤのパンク修理に適用することができる。例えば、自動車用タイヤ、二輪車用タイヤ、一輪車用タイヤ、車いす用タイヤ、農地作業や庭園作業に使用する車両用タイヤ等が挙げられる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお「部」は質量基準である。
【0085】
(実施例1)
SBRラテックス(固形分量40質量%)40部に水5部を投入し攪拌して、固形分量36質量%のラテックスを得た。続いて、該ラテックスを攪拌速度100〜300rpmの範囲で5rpm/mm単位で撹拌速度を上昇させつつ撹拌しながら、プロピレングリコール45部を滴下速度2kg/minで滴下し、混合した。次いで、得られた混合液を撹拌しながら、ロジン酸エステルエマルジョン10部を滴下し、混合した。36時間静置した後、200メッシュのフィルタを使用して濾過を行い、パンクシーリング剤を製造した。
【0086】
(実施例2)
SBRラテックス(固形分量40質量%)40部に水5部を投入し攪拌して、固形分量36質量%のラテックスを得た。続いて、該ラテックスを撹拌しながら、ロジン酸エステルエマルジョン10部を滴下し、混合した。次いで、得られた混合液を攪拌速度100〜300rpmの範囲で5rpm/mm単位で撹拌速度を上昇させつつ撹拌しながら、プロピレングリコール45部を滴下速度2kg/minで滴下し、混合した。36時間静置した後、200メッシュのフィルタを使用して濾過を行い、パンクシーリング剤を製造した。
【0087】
(実施例3)
実施例1において、SBRラテックス(固形分量17質量%)40部に水5部を投入し攪拌して、固形分量15質量%のラテックスを得たこと以外は実施例1と同様にして、パンクシーリング剤を製造した。
【0088】
(実施例4)
実施例1において、SBRラテックス(固形分量73質量%)40部に水5部を投入し攪拌して、固形分量65質量%のラテックスを得たこと以外は実施例1と同様にして、パンクシーリング剤を製造した。
【0089】
(比較例1)
SBRラテックス(固形分量40質量%)40部に水5部を投入し攪拌して、固形分量36質量%のラテックスを得た。同時に、プロピレングリコール45部にロジン酸エステルエマルジョン10部を投入し、攪拌して混合液を得た。次いで、上記ラテックスを攪拌速度100〜300rpmの範囲で5rpm/mm単位で撹拌速度を上昇させつつ撹拌しながら、プロピレングリコールとロジン酸エステルエマルジョンとの混合液を滴下速度2kg/minで滴下し、混合した。36時間静置した後、200メッシュのフィルタを使用して濾過を行い、パンクシーリング剤を製造した。
【0090】
(比較例2)
実施例1において、SBRラテックス(固形分量6質量%)40部に水5部を投入し攪拌して、固形分量5質量%のラテックスを得たこと以外は実施例1と同様にして、パンクシーリング剤を製造した。
【0091】
<評価>
(混合時間)
SBRラテックス、水、プロピレングリコールおよびロジン酸エステルエマルジョンの混合液1kgの混合にかかる時間を計測した。実施例1〜4および比較例2については、SBRラテックスに水を投入し始めた時点から、静置開始の時点までを混合時間とした。比較例1については、プロピレングリコールにロジン酸エステルエマルジョンを投入し始めた(同時にSBRラテックスに水を投入し始めた)時点から、静置開始の時点までを混合時間とした。結果を下記表1に示す。
【0092】
(シール性能)
パンクシーリング剤の経年による劣化の程度は、孔をあけたタイヤを使った走行試験により評価できる。その際、90℃のオーブン中に一定期間保管したパンクシーリング剤を経年モデルとすることができる。例えば、25日間の保管は市販後8年経過に相当する。
【0093】
実施例1〜4および比較例1〜2で得たパンクシーリング剤を90℃のオーブン中に12日間または25日間保管した。195/65R15のタイヤにφ2.6mmのドリル穴をあけ、保管後のパンクシーリング剤を450ml注入して、タイヤ内圧0.2MPaまで昇圧して車に装着した。その後、60km/h以下で車を走行させた。3km走行以内に内圧低下が0になり完全硬化したものを◎、5km走行以内に内圧低下が0になり完全硬化したものを○、10km走行以内に内圧低下が0になり完全硬化したものを△、内圧が低下し、修理部分から空気漏れがあると判断されるものを×として評価した。結果を下記表1に示す。
【0094】
【表1】



【0095】
実施例のパンクシーリング剤は、比較例に比し、混合に要する時間が極めて短いことから、パンクシーリング剤の製造時間を短縮でき、生産効率に優れることが明らかである。その上、実施例のパンクシーリング剤は、25日保管後でも5km以内の走行でシールが完了していたことから、パンクシーリング剤の劣化が抑制されていたことが明らかである。
【符号の説明】
【0096】
3 ガス導入部
4 耐圧容器
6 シーリング剤
7 出口バルブ
20 ポンプアップ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分量が10質量%以上70質量%以下のラテックスと、不凍液および粘着剤エマルジョンの一方とを混合した後、さらに他方を混合する工程を有するパンクシーリング剤の製造方法。
【請求項2】
前記工程は、前記ラテックスと前記不凍液とを混合した後、さらに前記粘着剤エマルジョンを混合する工程である請求項1に記載のパンクシーリング剤の製造方法。
【請求項3】
前記不凍液を混合する際の、前記ラテックスまたは前記ラテックスと前記粘着剤エマルジョンの混合液の撹拌速度が50rpm以上500rpm以下で、前記不凍液の滴下速度が0.5kg/min以上500kg/min以下である請求項1又は請求項2に記載のパンクシーリング剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−7050(P2012−7050A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143149(P2010−143149)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】