説明

パンチを取扱うためのおよび処理するための装置ならびに方法

本発明は、目的の試料を備えるフィルターまたはその他の基質のパンチの損失を防止し、取扱をより簡便に行うための、上記パンチを取扱うためのおよび処理するための装置ならびに方法を提供する。1つの態様として、本発明は、パンチの上下に貯水槽を有し、第2部材に連結した第1部材を備える装置であって、上記第1部材はパンチを保持し、上記第2部材は第1部材におけるパンチを保持することに貢献する装置を提供する。本発明の装置および方法は、単一のチャネル形態および複数のチャネル形態において手動で用いられることが可能であるか、または、ロボット処理機などの自動処理機において用いられることが可能である。また、キットも提供される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2005年2月11日に出願された、「パンチを取扱うためのおよび処理するための装置ならびに方法」と題された米国仮特許出願第60/652,234号明細書の優先権を主張するものである。なお、この米国仮特許出願第60/652,234号明細書の内容は参照されることによって、本明細書に完全に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、目的の試料を備えるフィルターまたはその他の基質のパンチの損失を防止し、より簡便に取扱うための、上記パンチを取扱うためのおよび処理するための装置ならびに方法を提供する。当該装置および方法は、単一のチャネル形態および複数のチャネル形態において手動で用いられることが可能であるか、または、ロボット処理機などの自動処理機において用いられることが可能である。また、キットも提供される。
【0003】
〔背景技術〕
例えば、フィルター、カード、およびその他の種類の基質に試料を保存することによって、核酸またはタンパク質を保管する方法は、技術的によく知られている。例えば、そのような方法は、国際公開第90/03959号パンフレット(PCT/AU89/00430;1989年10月3日出願)、国際公開第96/39813号パンフレット(PCT/AU96/00344;1996年6月7日出願)、国際公開第00/21973号パンフレット(PCT/GB99/03337;1999年10月8日出願)、国際公開第01/501601号パンフレット(PCT/US01/00640;2001年1月10日出願)、国際公開第03/020924号パンフレット(PCT/GB02/04048;2002年9月5日出願)、PCT/US01/25709(2001年8月17日出願)、PCT/US03/31483(2003年10月3日出願)、米国特許第5,496,562号明細書(1996年3月5日許可)、米国特許第5,756,126号明細書(1998年5月26日許可)、米国特許第5,939,259号明細書(1999年8月17日許可)、米国特許第5,972,386号明細書(1999年10月28日許可)、米国特許第6,168,922号明細書(2001年1月2日許可)、米国特許第6,291,179号明細書(2001年9月18日許可)、米国特許第6,645,717号明細書(2003年11月11日許可)、米国特許第6,670,128号明細書(2003年12月30日許可)、米国特許出願第09/724,060号明細書(2000年11月28日出願)、米国特許出願第09/993,736号明細書(2001年11月14日出願)、米国特許出願第10/326,216号明細書(2002年12月20日出願)、欧州特許第1119576号明細書(2003年6月11日)、欧州特許第0849992号明細書(2004年8月25日)、および、欧州特許出願第04076551.3号明細書(2004年5月20日出願)に記載されている。
【0004】
基質は、セルロース、ガラスおよびその他のシリカ系物質、ならびに、プラスチック材料を含む様々な材料から作製されてもよいし、必要に応じて化学合成品などを用いて処理されてもよい。また、場合によっては、試料を保存している間に基質は数ヶ月間室温において保存されることが可能であってもよい。試料は、物理的、化学的もしくはその他の相互作用によって直接的または間接的に基質に、結合されてもよいし、あるいは、吸着されてもよい。しかしながら、試料を適度な時期に分析することが必要である。一般的に、パンチまたはマイクロパンチは分析用の試料を含む基質の一部に作製されるが、一方、基質における試料が残った部分は引き続き保存される。いくつかの分析では、分離溶出または放出を必ずしも行う必要はない(例えば、米国特許第6,750,059号明細書(2004年6月15日許可)、米国特許第6,746,841号明細書(2004年6月8日許可)、米国特許出願第10/298,255号明細書(2002年11月15日出願)参照)。しかし、その他の分析では、核酸またはタンパク質を単離することが望ましい場合があるし、または、必須である場合がある。単離方法には、(例えば、加熱による、pHの変化または塩濃度の変化による)溶出を用いる単離方法、酵素を用いる方法、光分解方法、および、これらの方法の組合せ、または、その他の手段が含まれる(例えば、国際公開第01/501601号パンフレット(PCT/US01/00640;2001年1月10日出願)、PCT/US01/25709(2001年8月17日出願)、PCT/US02/36483(2002年11月13日出願)、国際公開第03/020924号パンフレット(PCT/GB02/04048;2002年9月5日出願)、米国特許第6,645,717号明細書(2003年11月11日許可)、米国特許第6,670,128号明細書(2003年12月30日許可)参照)。しかしながら、試料の単離の有無に関わらず、パンチの処理が必要になる。
【0005】
例えば、パンチ(例えばFTA(登録商標)パンチ)を処理するための、溶出を必要とする、現在の一般的な方法は次の通りである;
a)関連する試料(例えば、FTA(登録商標)クロンセイバー(CLONESAVER(登録商標))カード)からパンチを採取する;
b)パンチをチューブ(例えば、微小遠心管)に配置する;
c)洗浄緩衝液を加えてパンチを洗浄する;
d)洗浄緩衝液を除去する(なお、必要に応じて(c)および(d)を繰り返す);
e)溶出溶液を加えて、(室温以上で)インキュベートする;
f)溶出物を移し、パンチを廃棄する。
【0006】
手順(f)において単離された溶出物に、目的の物質が含まれている。当該物質は核酸(例えば、ゲノムDNA、プラスミドDNA、ミトコンドリアDNA、全RNA、siRNA、mRNAなど))、タンパク質、またはその他の所望の目的の物質(例えば、ペプチド、オリゴヌクレオチドなど)であってもよい。
【0007】
パンチを取扱うためのこの方法の欠点の1つとして、液体を除去する段階においてパンチを損失することが挙げられる。このことは、濡れたパンチが特に検出されることなくピペットの先に張り付くことがある自動システムにおいて取り分け言えることである。また、小型のパンチは帯電のためにチューブから取り除かれる。
【0008】
これまで、パンチの取扱の問題を解決するという試みがなされ、また、別の手段も講じられてきた。例えば、ミリポアは、生体分子を精製するためのピペットチップに基づくZIPTIP(登録商標)と呼ばれるシステムを所持している。ZIPTIP(登録商標)は、高分子足場を用いてピペットチップ内に固定されたクロマトグラフィー媒体(シリカ系)(例えば、C18、C4、またはキレート樹脂)を備える。ZIPTIP(登録商標)には、チップを10μlのピペッターに装着することによって、チップを用いた取扱および処理を簡便に行うことができるという利点がある。試料は数回、吸引および分注(dispensed)され、目的の物質が結合する。その後チップは洗浄液により洗浄され、不純物が除去される。そして最終的に、目的の物質が適切な溶媒を用いてチップから溶出される。単一のチップが単一のチャネルのピペッターを用いて処理される。8チャネルのピペッターを用いることにより、8チップを同時に処理することができる。また、自動液体取扱システムを使用することもできる。しかしながら、ZIPTIP(登録商標)の使用は、製造業者によって提供されるクロマトグラフィー媒体に限られており、使用者は所望の固体をチップに加えることはできない。このチップはパンチを用いる使用については意図されておらず、ピペッターを使用してチップを処理する。
【0009】
したがって、パンチの取扱および処理を容易に行う装置ならびに方法の開発が望まれている。
【0010】
〔発明の要旨〕
1つの態様として、本発明は、目的の試料を含む基質由来のパンチを処理するための装置であって、(a)分注チップを備える第1部材、ならびに、(b)第2組立筐体を備える第2部材を具備し、上記第1部材は、(i)外開口部を有する空洞の内部柄、および、(ii)分注チップの内部柄と連絡する第1内部貯水槽を規定するために構造化され、且つ、構成される第1組立筐体、を備え、上記第1内部貯水槽の寸法は、挿入されるパンチが第1内部貯水槽を2つの槽に分割するようなものから選択され、第1槽は分注チップの内部柄と連絡し、第2槽は連結開口部を備え、上記第2組立筐体は、(i)空洞の内部、(ii)第2部材を第1部材に連結するための連結部分、および、(iii)第2部材の空洞の内部と第1内部貯水槽との間を第1部材の第1連結開口部を介して連絡するための第2連結開口部、を規定するために構造化され、且つ、構成され、第2組立筐体の寸法は、パンチが第1部材の第1内部貯水槽に位置するときに、第2連結開口部を規定する縁が第1内部貯水槽の内にあるパンチの位置を維持するために貢献し、且つ、第2部材の空洞の内部に第2内部貯水槽を形成するように選択される、装置を提供する。
【0011】
もう1つ別の態様として、本発明は、目的の試料を含む基質由来のパンチを処理するためのキットであって、(a)上記装置、および、(b)処理試薬を含むキットを提供する。
【0012】
さらにもう1つ別の態様として、本発明は、目的の試料を含む基質由来のパンチを処理するための方法であって、(a)目的の試料を含むパンチを得るために基質に穴を開ける穴開け工程、(b)上記請求項の何れか1項に記載の装置を提供する提供工程、(c)当該装置の第1部材の第1組立筐体に基質を挿入する挿入工程、(d)第1部材を第2部材に連結させる連結工程、および、(e)処理試薬を用いてパンチを処理する処理工程を含む方法を提供する。
【0013】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本発明の実施の形態の下側部分を示す概略図である。
【0014】
図2は、本発明の実施の形態の上側部分を示す概略図である。
【0015】
図3は、ピペッターチップに関連する図1および図2の下側部分および上側部分の組合せを示す概略図である。
【0016】
図4は、緩衝液場に関連する図3の組合せを示す概略図である。
【0017】
図5Aおよび5Bはシリンジを用いる本発明の2つの実施の形態を示す概略図である。
【0018】
〔発明の詳細な説明〕
1つの態様として、本発明は、目的の試料を含む基質由来のパンチを処理するための装置であって、(a)分注チップを備える第1部材、ならびに、(b)第2組立筐体を備える第2部材を具備し、上記第1部材は、(i)外開口部を有する内部柄、および、(ii)分注チップの内部柄と連絡する第1内部貯水槽を規定するために構造化され、且つ、構成される第1組立筐体、を備え、上記第1内部貯水槽の寸法は、挿入されるパンチが第1内部貯水槽を2つの槽に分割するようなものから選択され、第1槽は分注チップの内部柄と連絡し、第2槽は連結開口部を備え、上記第2組立筐体は、(i)空洞の内部、(ii)第2部材を第1部材に連結するための連結部分、および、(iii)第2部材の空洞の内部と第1内部貯水槽との間を第1部材の第1連結開口部を介して連絡するための第2連結開口部、を規定するために構造化され、且つ、構成され、第2組立筐体の寸法は、パンチが第1部材の第1内部タンクに位置するときに、第2連結開口部を規定する縁が第1内部貯水槽の内にパンチの位置を維持するために貢献し、且つ、第2部材の空洞の内部に第2内部貯水槽を形成するように選択される、装置を提供する。
【0019】
1つの実施の形態として、第1内部貯水槽は、パンチ支持体をさらに備えており、当該パンチ支持体の寸法は、パンチがパンチ支持体に配置され第1槽が流動体で満たされたときに、パンチ支持体に配置されたパンチの表面区域の大部分が第1槽に存在する流動体に接近可能であるように選ばれる。パンチ支持体が、O‐リング、または、流動体が流れるための一連の溝を備えるうねのある支持体を具備することが好ましい。
【0020】
もう1つ別の実施の形態として、上記連結部分は、圧力固定または機械式固定機構によって第2部材を第1部材に連結する。上記機械式固定機構は、スナップ式の固定またはルアー固定を備えることが好ましい。
【0021】
もう1つ別の実施の形態として、上記第1内部貯水槽は、第1組立筐体の中に設けられた空洞の内部柄に接触している。
【0022】
さらにもう1つ別の実施の形態として、上記第1部材の分注チップはマイクロ分注ピペットチップを備える。上記マイクロ分注ピペットチップは、キャピラリーマイクロ分注ピペットチップを備えることが好ましい。
【0023】
もう1つ別の実施の形態として、上記第2部材はマイクロ分注ピペットチップを備えることが好ましい。
【0024】
もう1つ別の実施の形態として、上記装置は(a)単一のチャネルマイクロ分注ピペット、(b)複数のチャネルマイクロ分注ピペット、および、(c)自動マイクロ分注ピペット機械またはロボットからなる群より選ばれるマイクロ分注ピペットを一緒に用いるために適合される。
【0025】
代案として、上記第2部材は(a)手動シリンジ、および(b)ロボット式のシリンジからなる群より選ばれるシリンジを備える。
【0026】
好ましくは、上記第1部材はシリンジを取り付けられるように適合され、上記空洞の内部柄はシリンジの針に収容されるか、または、上記第1組立筐体は、シリンジとシリンジの針との間に取り付けられるように適合される。
【0027】
さらにもう1つ別の実施の形態として、上記装置は、(c)加熱部材をさらに備える。
【0028】
もう1つ別の態様として、本発明は、目的の試料を含む基質由来のパンチを処理するためのキットであって、(a)上記装置、および、(b)処理試薬を含むキットを提供する。
【0029】
1つの実施の形態として、処理試薬は溶出緩衝液を含む。溶出緩衝液は、NaOHと、酢酸ナトリウムと、10mM 2‐[N‐モルホリノ]‐エタンスルホン酸(MES)と、10mM 3‐[シクロヘキシルアミノ]‐1‐プロパンスルホン酸(CAPS)と、TEと、TE−1と、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と、ソルビタン・モノ‐9オクタデセノネート・ポリ(オキシ‐1,1‐エタンドリル)、ラウリルドデシル硫酸(LDS)、または、t‐オクチルフェノキシポリエトキシエタノールの水溶液と、10mM トリスと、リン酸緩衝液(PBS)と、水とからなる群より選ばれることが好ましい。
【0030】
もう1つ別の実施の形態として、処理試薬は指示薬を含む。
【0031】
もう1つ別の実施の形態として、処理試薬は酵素または光分解試薬を含む。
【0032】
さらにもう1つ別の実施の形態として、キットは(c)加熱部材をさらに備える。
【0033】
さらにもう1つ別の実施の形態として、キットは(c)目的の試料を具備するパンチをさらに備える。
【0034】
目的の試料は(a)核酸または(b)タンパク質もしくはペプチドを含むことが好ましい。
【0035】
目的の試料は、ゲノムDNA、プラスミドDNA、ミトコンドリアDNA、cDNA、オリゴヌクレオチド、ウィルスのDNAまたはRNA、BAC、mRNA、rRNA、tRNA、siRNA、および、全RNAからなる群より選ばれる核酸を含むことがより好ましい。
【0036】
さらにもう1つ別の態様として、本発明は、目的の試料を含む基質由来のパンチを処理するための方法であって、(a)目的の試料を含むパンチを得るために基質に穴を開ける穴開け工程、(b)上記請求項の何れか1項に記載の装置を提供する提供工程、(c)当該装置の第1部材の第1組立筐体に基質を挿入する挿入工程、(d)第1部材を第2部材に連結させる連結工程、および、(e)処理試薬を用いてパンチを処理する処理工程を含む方法を提供する。
【0037】
1つの実施の形態として、上記処理工程は、(i)処理試薬がパンチと接触するように第1部材に処理試薬を汲み上げる汲み上げ工程、および、(ii)第1部材から処理試薬を除去する除去工程を含む。
【0038】
もう1つ別の実施の形態として、上記処理工程は、(i)処理試薬がパンチと接触し、当該パンチを通過して第2槽に移動するように第1部材に処理試薬を汲み上げる汲み上げ工程、(ii)パンチを介して第1槽に処理試薬を押し進める押し進め工程、および、(iii)第1部材から処理試薬を除去する除去工程を含む。
【0039】
工程(i)は、パンチをインキュベーションすることをさらに含む。
【0040】
好ましい実施の形態では、連結工程は、圧力によってまたは機械式固定によって固定する固定工程を含む。
【0041】
もう1つ別の実施の形態として、上記処理試薬は溶出緩衝液を含む。上記溶出緩衝液は、NaOHと、酢酸ナトリウムと、10mM 2‐[N‐モルホリノ]‐エタンスルホン酸(MES)と、10mM 3‐[シクロヘキシルアミノ]‐1‐プロパンスルホン酸(CAPS)と、TEと、TE−1と、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と、ソルビタン・モノ‐9オクタデセノネート・ポリ(オキシ‐1,1‐エタンドリル)、ラウリルドデシル硫酸(LDS)、または、t‐オクチルフェノキシポリエトキシエタノールの水溶液と、10mM トリスと、リン酸緩衝液(PBS)と、水とからなる群より選ばれることが好ましい。
【0042】
好ましくは、上記溶出緩衝液は、(a)上記溶出緩衝液はパンチと接触する前に、または、(b)上記溶出緩衝液は第1組立筐体内においてパンチと接触している間に、40℃〜125℃の間の温度に加熱される。
【0043】
上記溶出緩衝液は、65℃〜95℃の間の温度に加熱されることがより好ましい。
【0044】
もう1つ別の実施の形態として、上記処理試薬は指示薬を含む。
【0045】
さらにもう1つ別の実施の形態として、上記処理試薬は酵素または光分解試薬を含む。
【0046】
もう1つ別の実施の形態として、上記目的の試料は核酸を含む。上記核酸は、ゲノムDNA、プラスミドDNA、ミトコンドリアDNA、cDNA、オリゴヌクレオチド、ウィルスのDNAまたはRNA、BAC、mRNA、rRNA、tRNA、siRNA、および、全RNAからなる群より選ばれることが好ましい。
【0047】
さらにもう1つ別の実施の形態として、上記目的の試料はタンパク質またはペプチドを含む。
【0048】
さらにもう1つ別の実施の形態として、上記基質は(a)セルロース系基質、(b)シリカ系基質、または、(c)プラスチック系基質を含む。
【0049】
1つの態様として、上記方法によって血液などの試料の抽出に用いられる装置が提供される。そのような装置は、図1〜4に示されている。
【0050】
1つの実施の形態として、本発明の装置は、図1〜3において示されている保持器によって支持される、2つの部材または部分から基本的に構成される。図1には、第1部材(10)、すなわち下側部分が示されている。本実施の形態では、第1部材(10)は、外開口部(24)を有する空洞の内部柄(22)、および、第1組立筐体(12)を備える分注ピペットチップとして描かれている。第1組立筐体(12)は第1内部貯水槽を収容するように設計されている。
【0051】
パンチ(20)は、パンチおよび配置機器によって本発明の装置のこの下側部分に配置される。なお、パンチ(20)は、例えば、FTA(登録商標)クロンセイバー(CLONESAVER(登録商標))アーカイバルカードなどから得られる。本実施の形態では、パンチはO‐リングのようなパンチ支持体(50)に設置される。
【0052】
もう1つ別の実施の形態として、パンチ支持体は、流動体が流れるための一連の溝を備えるうねのある支持体を備える。後者の例として、同心円状または星状の突出部(rib)を有するディスクを基本的に挙げることができる。フィルターは突出部の上端に設置され、フィルターの下部に隙間が作製される。液体はこれらの隙間に流れ込み、ディスクの中央の穴から流出する。類似の装置がシリンジフィルター(ワットマン・イージーディスク(Whatman EASYDISC(登録商標)、GD/X(登録商標)、GD/XP(登録商標))に用いられているが、この類似の装置を本発明用の支持体として適用することができる。
【0053】
もう1つ別の実施の形態として、パンチを、空洞の内部柄(22)の半径を減少させることによって、単に空洞の内部柄(22)の内壁に引っ掛けて設置してもよい。パンチ(20)が第1内部貯水槽(14)に設置されれば、第1内部貯水槽(14)は、空洞の内部柄(22)と連絡する第1槽(16)、および、連結開口部(32)を有する第2槽(18)に分割される。本実施の形態では、連結開口部(32)は、先端または縁(30)によって規定される。
【0054】
図1に描かれている実施の形態において、下側部分(10)の上端(30)とパンチ支持体(50)との間の距離は、パンチ(20)を簡便に配置できるように短く維持されている。本実施の形態において、下側部分(10)のチップ(40)は、チップのホールドアップ体積を最小にする、ゲル装填チップなどのキャピラリーチップとして示されている。
【0055】
チップのホールドアップ体積が小さくなると、目的の物質の回収率が高くなる。このことは、溶出体積が小さいときに(例えば25μl)、特に当てはまる。これらの事実から、例えば10μlのホールドアップ体積が溶出体積の重要な割合である。
【0056】
図1において示されている下側部分(10)は、保持器(60)に保持されている。1つの実施の形態として、保持器は、例えば96ウェル型である。ここで、96ウェル型は96のチップを、標準96ウェルプレートとしての同じ設置場所(footprint)において保持することができる。パンチが下側部分に配置された場合、(保持器に依然として保持されている)これらの部分は手動で用いられるか(例えば、単一のチャネルピペッターまたは複数のチャネルピペッターに用いられる)、または、液体取扱ロボットに移送される。上述の実施の形態において、ロボットを用いた場合は、ロボットは装置の上側部分に装着されてもよい。
【0057】
図2には、保持器(160)にある第2部材、すなわち本実施の形態の装置の上側部分(100)が描かれている。図2において、上側部分(100)は、空洞の内部(120)を規定する第2組立筐体(110)を有する分注ピペットチップとして描かれている。本実施の形態では、この第2分注ピペットチップは下側部分(10)として用いられている第1チップよりも大きい。
【0058】
第2組立筐体(110)は、下側部分(10)の第1連結開口部(32)を介して、上側部分(100)の空洞のある内部(120)と第1内部貯水槽(14)の第2槽(18)との間を連絡するための連結部分(130)を規定するように構造化され、且つ、構成される。本実施の形態において、連結部分(130)の端部は、下側部分(10)と連絡する第2連結開口部(140)を規定する縁または先端(150)を備えている(図2および3参照)。また、一般的に(114)で示されているパンチ保有部位は、開口部(140)の内側において、縁または先端(150)を含む上側部分(100)の末端に位置しているか、あるいは、その末端に実質的に近接して位置している。パンチ保有部位として様々な代替構造を採用することができるが、好ましい実施の形態においては、パンチ保有部位(114)は、棒状または十字状の柔軟性のある部材である。ここで上記十字状の柔軟性のある部材は、縁もしくは先端(150)を含む平面、または、縁もしくは先端(150)を含む平面に実質的に平行な平面において、十字に交わって開口部に達している。さらに、パンチ保有部位(114)は、開口部を通過する液体の流れをほとんど妨害しないが、移動させられる、および/または、下記において詳細に記載されているパンチ処理工程の間、上側部分(100)の空洞の内部(120)に引き込まれるようなパンチの性質に抵抗してパンチを保持する役割をさらに果たすように、開口部(140)に関連する大きさに合わせて作製される。
【0059】
1つの実施の形態として、この部分は使用者によって、または、標準の液体取扱ロボットによって、直接的にまたは間接的に、持ち上げられ、且つ、図3に示されるものと同様の様式で下側部分に押し込められるように設計されている。
【0060】
図3には連結した2つの部材(部分)が描かれている。図2に示されるように、第2組立筐体(110)の寸法は、パンチ(20)が下側部分(10)の第1内部貯水槽(14)に位置するときに、第2連結開口部(140)を規定する縁または先端(150)が、(i)第1内部貯水槽(14)内にあるパンチ(20)の位置を維持することに貢献し、(ii)第2組立筐体(110)の空洞の内部(120)の中に収容される第2内部貯水槽(200)を形成するように選択される。ここで、第2内部貯水槽(200)は下側部分(10)の第2槽(18)の内側に存在する。
【0061】
好ましくは、2つの部分が連結された場合に、2つの部分は一緒に固定され(例えば、圧力によって、または、スナップ式の固定もしくはルアー固定などの固定機構もしくは固定部材によって固定され)、本発明の装置は1体成形のように動くことができる。上側部分は3つの機能を行う。第1の機能は、処理工程の間、パンチを所定の位置に保持することである。第2の機能は、処理工程の間、液体がパンチを通して吸入されるときに液体用の貯水槽としての役割を果たすことである。第3の機能は、装置全体が、ピペッターを用いるなどの、使用者または液体ピペッティングロボットによって取扱われることを可能にすることである(図4参照)。上記ピペッターは、上側部分(100)の開口部(170)を通り、空洞の内部(120)に入り、そして、第2内部貯水槽(200)を通過する力を伝達することができる。
【0062】
上側部分および下側部分が一緒に固定されれば、使用者または液体取扱ロボットは、本発明の装置を持ち上げて、図4に示されるように装置を緩衝液場に運ぶ。なお、ロボットは複数の本発明の装置を同時に扱うことができる。代わりに、ロボットではない使用者は、複数のチャネルピペッターを用いて複数の本発明の装置を扱うことができる。(必要に応じて)液体を本発明の装置の中に吸引し、パンチを通して液体を律動的に行ったり来たりさせることによって、または、吸引し本発明の装置から液体を分注することによって、パンチ(20)を洗浄することができる。上記液体として、例えば、高温のまたは低温の水溶液、アルコール、有機溶媒などが挙げられる。洗浄後、溶出緩衝液を本発明の装置に吸引して、インキュベートする。緩衝液をチップに汲み上げて、パンチを通して行ったり来たりさせることにより、洗浄と溶出とが行われる。溶出段階において加熱が必要であれば、チップ全体を加熱ブロックに配置する。インキュベーションの後、本発明の装置からの液体を回収容器に分注して、本発明の装置を処分する。本発明の装置は、洗浄の段階では比較的多量(例えば200μl)の緩衝液を使用することができ、溶出の段階では少量の溶液を使用することができるように設計されている。
【0063】
顧客が穴開けを行って、パンチを配置する代案として、装置の製造業者に対して、パンチが予め装填された装置が提供される。例えば、FTA(登録商標)パンチが予め装填された下側部分が提供される。そのときは、顧客は当該下側部分を液体取扱ロボットに取り付けて、このロボットを用いて目的の試料をパンチにスポットする。その後、上側部分を所定の位置に押し込める。すなわち、上側部分と下側部分とを一緒に取り付ける。スポットを乾燥して、それから装置は必要になるまで保管される。必要になったときに、本発明の装置は上述したように処理されて目的の物質(例えば、DNA、RNA、タンパク質など)が得られる。
【0064】
図1〜4に示される本発明の装置の別の態様として、上述した下側部分に類似する第1部材(例えば図5参照)、または、改良型針のどちらかが適合された改良型シリンジ装置が用いられてもよい。針の大きさはパンチの損失を防ぐように選択される。またもう1つの選択肢として、パンチの大きさが特定の大きさの針を用いたときに、パンチの損失を防ぐように選択される。さらに、針の長さおよび口径は、単離される目的の試料を参照して選択される。例えば、口径が狭ければせん断力によって鎖が千切れてしまうという理由から、目的の試料に長鎖DNAが含まれているときには広い口径の針が用いられる。
【0065】
図1〜4における第1部材の類似体である、図5Aにおける第1部材(下側部分)はシリンジ(300)に装着されており、シリンジ(300)の組立筐体(310)は、シリンジ(300)の空洞の内部(320)を規定するように構造化され、且つ、構成される。シリンジ(300)の連結部位(330)は、シリンジ(300)の開口部(340)が第1内部貯水槽と連絡するように、シリンジ(300)を第1部材の連結開口部に連結している。開口部の縁または先端(350)はパンチ(440)の位置を維持するのに貢献している。なお、パンチはパンチ支持体(450)に位置することが好ましい。2つの部分は、例えば、圧力によって、あるいは、スナップ式の固定もしくはルアー固定などの固定機構または固定部材によって、一緒に固定される。シリンジのピストン(380)は液体を内側に吸い込むことおよび外側に吸い出すことに用いられる。
【0066】
図5Bにおける第1部材(下側部分)(400)は、シリンジまたはその他の針(420)に連結した組立筐体(410)を備える。開口部の縁または先端(350)は、パンチ(460)の位置を維持することに貢献している。なお、パンチはパンチ支持体(470)に位置することが好ましい。
【0067】
図5Aおよび5Bに示される装置の別の態様として、シリンジ針が、針の上部端をシリンジの下部端に連結する余分な長い連結器領域を有するように改良されている。当該連結器領域は、シリンジを装着する前にパンチが配置されるパンチ支持体を備える。
【0068】
図5Aおよび5Bに示される装置のもう1つ別の態様として、パンチが内壁に引っ掛かって配置され、当該パンチの下にパンチの下面と針の末口との間に、緩衝液またはその他の液体用の場所を維持するための空間が形成されるように、上記連結器領域は内部半径を減少している。パンチの上面はシリンジが装着されるときにシリンジのノズルによって押しつけられる。また、その代わりに、シリンジが装着される前に、上側O‐リングがパンチの最上部に挿入される。
【0069】
図5Bに示される装置のさらに別の態様として、アダプターが設けられており、当該アダプターはシリンジ針とシリンジとの間に配置されている。アダプターは、好ましくは市販のシリンジおよび針が用いられるような標準の方法を利用して、その上端においてシリンジのノズルを、そして、その下端において針の連結器領域を締め付けることができる。必要に応じて、アダプターはシリンジが装着される前にパンチを配置するパンチ支持体を備える。パンチの上面はシリンジが装着されたときにシリンジのノズルによって下に押される。また、代案として、上側O‐リングをシリンジが装着される前にパンチの最上部に挿入される。1つの実施の形態では、アダプターは目的の試料を有するかまたは有さない、予め備えられたパンチを具備する。
【0070】
適切な材料には、ガラスファイバーあるいは任意のシリカ系フィルター、シリカ由来のフィルター、セルロース系フィルター、ならびに、ポリエステル系およびポリプロピレン系フィルターなどのプラスチック系フィルターが含まれる。そのような例として、国際公開第90/03959号パンフレット(PCT/AU89/00430;1989年10月3日出願)、国際公開第96/39813号パンフレット(PCT/AU96/00344;1996年6月7日出願)、国際公開第00/21973号パンフレット(PCT/GB99/03337;1999年10月8日出願)、国際公開第01/501601号パンフレット(PCT/US01/00640;2001年1月10日出願)、国際公開第03/020924号パンフレット(PCT/GB02/04048;2002年9月5日出願)、PCT/US01/25709(2001年8月17日出願)、PCT/US03/31483(2003年10月3日出願)、米国特許第5,496,562号明細書(1996年3月5日許可)、米国特許第5,756,126号明細書(1998年5月26日許可)、米国特許第5,939,259号明細書(1999年8月17日許可)、米国特許第5,972,386号明細書(1999年10月28日許可)、米国特許第6,168,922号明細書(2001年1月2日許可)、米国特許第6,291,179号明細書(2001年9月18日許可)、米国特許第6,645,717号明細書(2003年11月11日許可)、米国特許第6,670,128号明細書(2003年12月30日許可)、米国特許出願第09/724,060号明細書(2000年11月28日出願)、米国特許出願第09/993,736号明細書(2001年11月14日出願)、米国特許出願第10/326,216号明細書(2002年12月20日出願)、欧州特許第1119576号明細書(2003年6月11日)、欧州特許第0849992号明細書(2004年8月25日)、および欧州特許出願第04076551.3号明細書(2004年5月20日出願)に記載されているものが挙げられる。これらに開示されている全てが参照によって本明細書に組み込まれる。
【0071】
核酸の試料を洗浄することが望ましい場合は、様々な種類の緩衝液を用いて様々な洗浄を行うことができる。そのような緩衝液には、高温もしくは低温の水溶液、アルコールおよび有機溶媒が含まれるが、これらに限定されない。洗浄緩衝液は、トリス/EDTA;70%エタノール;STET(0.1M NaCl;10mM トリス/HCl、pH8.0;1mM EDTA、pH8.0;5% TritonX‐100);SSC(20×SSC=3M NaCl;0.3M クエン酸ナトリウム;pH7.0(NaOHを用いて調節));SSPE(20×SSPE=3M NaCl;0.2M NaHPO‐HO;0.02M EDTA;pH7.4)などを含む群より選ばれることが好ましい。
【0072】
溶出緩衝液およびプロトコールは、何が溶出されるかということ(例えば、プラスミドDNA、ゲノムDNA、mRNA、タンパク質など)、および、どの種類のフィルター材料が用いられているかということ(例えば、セルロース系、ガラスまたはシリカ系、プラスチック系など)に依存する。
【0073】
また、フィルターの組成および寸法は、溶出の間に核酸がpH5〜11、または、好ましくはpH5.8〜11において溶出されるように選択されることも好ましい。このことは、より高いアルカリ性の溶媒を用いて生産物である核酸を溶出すると、生産物は分解されることがあるという理由から、本発明の方法における利点である。したがって、溶出における好ましいpHの1つは7〜9である。
【0074】
核酸の溶出、すなわちフィルターからの核酸の放出は、いくつかの方法に影響される。溶出効率は、溶出の前に行う核酸を放出するためのインキュベーション工程の間に、システムにエネルギーを与えることによって改善される。このことは、物理的エネルギーの形態(例えば、攪拌)であってもよいし、熱エネルギーの形態であってもよい。インキュベーション時間または放出時間は、システムに与えられるエネルギー量の増加によって短縮されてもよい。
【0075】
溶出前に核酸がフィルターよって保持されている間に、核酸を所定の時間の間高温になるように加熱することによって、熱エネルギーがシステムに与えられることが好ましいが、このときの核酸の温度は非常に高温ではないか、あるいは、核酸を加熱する時間は核酸に損傷を与えるような時間ではない。なお、溶出の前に核酸が高温に加熱されないとき、または、核酸が低温(4℃ほどの低温)において保持されるときでさえも、核酸は溶出される。核酸が40℃〜125℃、より好ましくは80℃〜95℃の範囲の高温になるように加熱されることがより好ましい。核酸が約90℃の高温になるように加熱されることが最も好ましく、直径が6mmのフィルターに対して約10分間加熱されることが有利である。フィルターの直径が増加すれば、任意の既定の加熱温度におけるDNAの収率も増加する。ゲノムDNAについて加熱は必須であってもよいが、RNAおよびプラスミドについて加熱は必須ではない。
【0076】
DNAの単離について言えば、2本鎖DNAの1本鎖DNAに対する割合は実験条件に依存し、さらに、実験条件によって制御されうる。時間および温度のパラメーターを用いるインキュベーションの形態を変更することによって、この割合を変えることができ、より長い時間より低い温度で溶出することにより、2本鎖DNAの割合を高くすることができる。また、より短い時間より高い温度で溶出することによっても、2本鎖DNAの割合をより高くすることができる。また、タンパク質を用いてDNAの変性を抑制してもよい(例えば、国際公開第01/96351号パンフレット(PCT/GB01/02564;2001年6月11日出願)および国際公開第03/050278号パンフレット(PCT/GB02/05617;2002年12月11日出願、参照)。
【0077】
フィルターに保持されている間に、核酸が高温になるまで加熱されれば、溶出の間は核酸を高温に維持する必要はない。溶出はそれ自体どのような温度であってもよい。処理を簡便に行うため、フィルターに保持されている間に核酸が高温になるまで加熱される場合は、溶出をその核酸の温度よりも低い温度で行うことが好ましい。これは、加熱をやめたときに、核酸の温度が、時間が経過するに連れて下がるからであり、また任意の周囲温度の溶出溶液をフィルターに適用する結果として下がるからでもある。また、別の方法として、(例えば自動装置またはロボットにある)加熱ブロックなどの加熱部材において、処理を行ってもよい。
【0078】
現在のところ用いられているフィルターから核酸を溶出するための適切な任意のpHであればどのような溶液を用いてもよい。好ましい溶出溶液には、1mM〜1M NaOH、1mM〜1M 酢酸ナトリウム,10mM 2‐[N‐モルホリノ]‐エタンスルホン酸(MES)(pH5.6)、10mM 3‐[シクロヘキシルアミノ]‐1‐プロパンスルホン酸(CAPS)(pH10.4)、TE(10mM トリス HCL(pH8)+1mM EDTA)、TE−1(10mM トリス;0.1mM EDTA;pH8)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)(特に、0.5%SDS)、TWEEN(登録商標)20(特に、1%TWEEN(登録商標)20)、LDS(特に1%ラウリルドデシル硫酸(LDS))あるいはTRITON(登録商標)あるいはTRITON(登録商標)‐X‐100(特に1%TRITON(登録商標))、水および10mM トリスが含まれる。なお、TWEEN(登録商標)20は、ソルビタンモノ‐9オクタデセノネート・ポリ(オキシ‐1,1‐エタンドリル)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、および、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの名前で知られている。化学物質のCAS番号は、9005‐64‐5である。TRITON(登録商標)‐X‐100は、t‐オクリルフェノキシポリエトキシエタノールの名前で知られている。t‐オクリルフェノキシポリエトキシエタノールのCAS番号は9002‐93‐1である。溶出のプロトコールは、例えば、PCT/US01/25709(2001年8月17日出願)、PCT/US02/36483(2002年11月13日出願)、米国特許第6,645,717号明細書(2003年11月11日許可)、および米国特許第6,670,128号明細書(2003年12月30日許可)を参照のこと。これらの開示の全ては、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0079】
本発明の装置は、DNAの溶出に制限される訳ではないし、または、FTA(登録商標)パンチに制限する訳ではない。本発明の装置を、任意の種類のパンチから溶出されることが可能であり、そのパンチに沈着した任意の目的の物質に適用することができる。ここで、任意の種類のパンチとしては、例えば、紙またはその他のセルロース系基質、ガラスおよびその他のシリカ系基質、プラスチック基質、その他のメンブレンなどが挙げられる。目的の物資としては、例えば、核酸(例えば、ゲノムDNA、プラスミドDNA、ミトコンドリアDNA、cDNA、BAC、オリゴヌクレオチド、ウィルスのDNAまたはRNA、mRNA、rRNA、tRNA、siRNA、および、全RNAなど)、タンパク質、または、その他の任意の目的の物質(例えば、ペプチド、オリゴヌクレオチドなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
FTA(登録商標)パンチの処理において、RNAは、ゲノムDNAとは異なり、TE−1を用いて室温で5分間の洗浄を2回行う処理の間に、FTA(登録商標)紙に残らないことが観察された。なお、TE−1の組成は、10mM トリス‐HCl pH8および0.1mM EDTAである。事実上、RNAの全ては最初の洗浄で溶出され、この溶出された細胞のRNAは直接第1鎖逆転写反応を行うことができるし、または、分析を行う前に洗浄溶液からエタノール沈殿を行って滅菌水もしくはTEに再懸濁することができる。国際公開第01/501601号パンフレット(PCT/US01/00640;2001年1月10日出願)の開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。道具および試薬は、RNAを扱うためにRNAseフリーでなければならない(Sambrook、et al.,1989)。
【0081】
同様の条件を用いてタンパク質またはペプチド試料を抽出してもよい。例えば、タンパク質またはペプチド試料を、任意の適切なタンパク質緩衝液を用いて溶出してもよい。1つの実施の形態においては、タンパク質は、リン酸緩衝液(PBS)(10×PBS:137mM NaCl;2.7mM KCl;5.4mM NaHPO;1.8mM KHPO;pH 7.4)を用いて例えば30〜45分間インキュベーションすることによって抽出される(国際公開第03/020924号パンフレット(PCT/GB02/04048))。PBSの代わりに、高塩濃度緩衝液(例えば、0.1Mトリス‐酢酸塩、2.0M NaCl、(pH7.7))、低塩濃度緩衝液(例えば、0.01Mトリス‐HCl緩衝液(pH8.0))、高pH緩衝液(例えば0.1グリシン‐NaOH(pH10.0)、または、低pH緩衝液(例えば0.1Mグリシン‐HCl(pH2.3))を用いてもよい。
【0082】
目的の試料が溶出されない場合は、目的の試料を、PCT/US02/36978(2002年11月15日出願)、米国特許第6,746,841号明細書(2004年6月8日許可)および米国特許出願第10/298,255号明細書(2002年11月15日出願)に記載されている検出などの分析を行うために、本発明の装置を用いてインサイチューにおいて目的の試料を処理してもよい。なお、上記文献の開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。例えば、検出処理において、指示薬が用いられてもよい。本発明では、指示薬によって発生するシグナルによって、基質上の既定の核酸またはタンパク質の存在を肯定的に同定できるようになる。例えば、核酸は、特異的なもしくは非特異的な核酸プローブまたはその他のシグナル発生器および免疫測定の1種を用いて検出(さらに、好ましくは定量)されることが可能である。タンパク質は、免疫測定を用いて検出(さらに、好ましくは定量)されることが可能である。指示薬は、蛍光指示薬、呈色指示薬、または測光指示薬を含むことが好ましい。代案として、先行技術において知られている、ビオチンが接合した抗体とポリアビジン‐西洋ワサビパーオキシダーゼ(HRP)を用いてもよいし、DNAと相互作用するポリエチレンイミン‐パーオキシダーゼ(PEI‐PO)接合体を利用する分析を用いてもよい。また、その他の検出方法を当業者は思いつくであろう。
【0083】
いくつかの実施の形態、特に感光性の実施の形態において、一般的な光またはある特定の波長の光の露光を抑制する筐体が備えられることが必要であってもよい。指示薬が予めフィルターに存在しない場合は、指示薬を添加してもよい。さらに、必要であれば、指示薬を上記筐体においてフィルター材料とインキュベートしてもよい。指示薬は、フィルター材料を通して容易に汲み上げられ処分される。ブロッキング試薬および洗浄を同じようにフィルター材料を通して循環させてもよいが、好ましい実施の形態では、ブロッキングは不要である。調製工程が完了したとき、光がない状態で(または、指示薬と反応する波長の光がない状態で)筐体を開き、フィルター材料を所望の波長の光に露光して測光反応を引き起こす。
【0084】
その他の分析方法には、当業者が思いつく、目的の試料に核酸もしくはタンパク質をハイブリダイズさせる方法、目的の試料を検出する方法、目的の試料を定量する方法、目的の試料を同定する方法またはその他の試験をする方法、およびその他の方法が含まれる。
【0085】
さらに、試料が様々な処理工程を通して移動するときに、処理された物質、用いられた器具、および処理結果の記録を維持することは重要である。手動でパンチを処理する場合、一般的には手動によって記録保存と追跡とが行われれば十分である。しかしながら、自動で処理する場合、処理された物質(パンチおよびそれらのそれぞれの出所となるカード(ソースカード;source card))、各試料のための様々な処理工程に利用された器具部材、および各試料の処理結果の全てを追跡する手段は、煩雑になるが、依然として非常に重要である。自動処理機能と一緒に用いるための適切な追跡手段の例として、本発明者らは、少なくとも(i)様々なパンチが採取されるカード、(ii)それぞれのパンチを処理するために利用される各パンチの処理に利用される器具部材、および(iii)各パンチのための処理結果に関連する、バーコード読取装置およびバーコード識別子を用いることにより追跡と記録保存との機能が促進されることを発見した。しかしながら、本発明から逸脱することなくその他の自動の追跡および記録保存の手段も上記目的に用いられることを理解される。
【0086】
システムには以下の(a)〜(g)の利点が含まれている;
(a)パンチの取扱が容易で且つ安全であること;
(b)パンチ支持体部分が浅くなるように設計されているために、パンチの配置が簡便であること;
(c)洗浄時に必要とされる多量の緩衝液、および、溶出時に必要とされる少量の緩衝液を効率よく扱うことができること;
(d)洗浄と溶出とを標準の液体取扱ロボットによって取扱われることが可能であること;
(e)異なるパンチの大きさに適合すように寸法を変えることができること;
(f)パンチに対してより穏やかであること。処理の間に生じるパンチの層間剥離が解消され、線維の脱落が最小限になること;
(g)自動取扱および手動取扱に用いられることができること。
【0087】
〔定義〕
以下のさらなる定義が、記載された明細書に用いられている特定の用語のために提供される。
【0088】
本明細書および請求項に用いられているような、単数形の「a」、「an」、および「the」には、文脈が明らかに別のものを指示する場合を除いて複数形の参照が含まれる。例えば、用語「1分子(a molecule)」には、複数の分子も含まれる。
【0089】
本明細書において用いられている用語「フィルターメンブレン」または「基質」は、多孔性の材料またはフィルター媒体を意味する。本明細書において用いられている「ろ過媒体」、「フィルター媒体」または「多孔性媒体」は均一な孔を有していてもよいし、不均一な孔を有していてもよい。代わりに、それは、例えば、適切なより小さい大きさの物質が通過することができる「線維基質」または「線維ネットワーク」を含んでいてもよい。それは、不規則な組成を有するルーズ物質であってもよいし、あるいは、それはより均一な組成かまたは別々の組成を有していてもよい。それは、本明細書に使われており、形成された多孔性の物質またはフィルター媒体を意味する「フィルター」、「フィルターメンブレン」、および「基質」を含むが、これらに限定されない。それは、「乾燥固体媒体」などの「乾燥媒体」を含むが、これに限定されない。「ろ過媒体」、「フィルター媒体」、もしくは「多孔性媒体」は、完全にまたは部分的に、ガラス、シリカ、シリカゲル、シリカ酸化物(silica oxide)、水晶、それらのファイバー、または、それらの誘導体から形成されてもよいが、それらの材料に限定されない。その他の材料には、ナイロン、セルロース系材料(例えば、セルロース、ニトロセルロース、カルボキシメチルセルロース、硝酸セルロース、酢酸セルロール)、合成親水性高分子(例えば、ポリエステル、ポリアミド、炭化水素高分子)を含む親水性高分子、ポリテトラフルオロエチレン、PET、ポリカーボネート、多孔性セラミックス、および、本明細書に開示されているその他の材料が挙げられるが、これらに限定されない。アルミニウム酸化物メンブレン(ワットマン アノポア;Whatman ANOPORE(登録商標))などの金属酸化物に基づくフィルターも含まれる。ろ過媒体は、1枚のフィルターまたは複数のフィルターを含んでいてもよい。
【0090】
本明細書において用いられている「親水性」物質は吸収する、つまり水を吸収するもののことであり、一方、「疎水性」物質は吸収しない、つまり水を吸収しないもののことである。
【0091】
本明細書において用いられている「水和性」は、フォービックパッチ(phobic patch)なしにその全表面に渡って湿るメンブレンのことを言う。
【0092】
本発明におけるフィルターメンブレンに用いられる媒体には、保存、溶出、および、その媒体に添加された試料物質のその後の分析を阻害しない任意の物質が含まれる。これは、平坦で乾燥した基質または結合剤と結合した基質を含む。1つの態様においては、本発明における支持体は、その後の分析を行うことができる状態の遺伝物質を溶出することができる。
【0093】
媒体は、ファイバーを一緒に保持する「結合剤」と結合されることができる。技術的によく知られている結合剤のいくつかの例として、ポリビニルアクリルアミド、ポリビニルアクリレート、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリスチレン(PS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)およびゼラチンが挙げられる。
【0094】
本明細書において用いられている用語「完全維持物」または「完全に維持するための手段」は、基質の分解および/または損失を防止する密閉可能な部材を意味する。本発明における好ましい完全維持物は、気密性の密封を作り、これにより、空気、細菌またはその他の汚染物質が基質および精製された核酸と接触することが防止される。完全維持物はシールを有するか有しないプラスチックの袋、セロファン、密閉可能な容器、パラフィルムなどの形態である。
【0095】
本明細書において用いられている「保存」は、支持体/核酸を温度つまり目的の温度で一期間維持することを言う。保存温度および保存時間は、メンブレンの種類および試料の性質に依存する。例えば、FTA(登録商標)に保存されたDNAについて言えば、保存は、約20℃〜30℃(好ましくは室温、例えば25℃)において成し遂げられることが好ましいが、必要に応じてより高温またはより低温にて成し遂げられてもよい。本発明において、低温保存の範囲は、約0〜20℃、−20℃〜0℃、および−80℃〜−20℃であってもよい。本発明において、長期間の保存は1年よりも長く、好ましくは2年よりも長く、さらに好ましくは3年よりも長く、さらに好ましくは5年よりも長く、さらに好ましくは10年よりも長く、最も好ましくは15年よりも長い。
【0096】
本明細書において用いられている「検体」は、検出されるかまたは単離される試料の成分である。いくつかの実施の形態において、検体は結合試薬に特異的に結合する。いくつかの実施の形態において、検体が存在するかまたは存在しないことを用いて、試料が得られた組織の生理的状態を決定してもよい。代わりに、検体が存在するかまたは存在しないことを用いて、例えば試料の汚染物質を検出してもよい。また、その他の幅広い使用を、当業者は思いつくであろう。
【0097】
本明細書において用いられている「特異性」は、抗原決定基を区別するための抗体の能力のことを言う。また、それは特定の受容体または抗体によって認識される正確な決定基のことも言う。また、それは薬物などの物質を区別するための受容体の能力のことも言う。核酸に関して言えば、それは競合、もしくは認識/結合のそれぞれに応じて、相補であることまたは同一であることを言う。認識または結合における「特異性」は、認識または結合が起こる条件(例えば、pH、温度、塩濃度、および先行技術において知られているその他の要因)によって影響を受ける。
【0098】
本明細書において用いられている「リガンド」は、もう1つ別の分子または分子複合体によって結合されうる分子または分子複合体のことである。リガンドは特に限定されないが、受容体によって結合される分子または分子複合体であってもよいし、あるいは、核酸の相補的な断片であってもよい。
【0099】
本明細書において用いられている「キメラDNA」は、天然には発見されない結合となっている、少なくとも2つの同定可能なDNAの断片のことを言う。対立遺伝子変異または天然に起こる突然変異事象によって、本明細書において定義されているキメラDNAは生じない。
【0100】
本明細書において用いられている「ヌクレオチド」は、塩基‐糖‐リン酸塩の化合物のことを言う。ヌクレオチドは、核酸配列(DNAおよびRNA)の単量体ユニットである。用語「ヌクレオチド」には、リボヌクレオシド3リン酸塩(ATP、UTP、CTP、GTP)およびデオキシリボヌクレオシド3リン酸塩(dATP、dCTP、dITP、dUTP、dGTP、dTTPなど)、またはそれらの誘導体が含まれる。
【0101】
そのような誘導体には、例えば[αS]dATP、7‐ジアザ‐dGTP、7‐ジアザ‐dATP、および、ビオチン化またはハプテン化ヌクレオチドが含まれる。本明細書において用いられている用語「ヌクレオチド」は、ジデオキシリボヌクレオシド3リン酸塩(ddNTP)およびそれらの誘導体のことも言う。ジデオキシリボヌクレオチドの例を挙げると、ddATP、ddCTP、ddGTP、ddITP、およびddTTPであるが、これらに限定されない。本発明によれば、「ヌクレオチド」は、標識されていなくてもよいし、公知の手法により検出可能に標識されていてもよい。検出可能な標識には、例えば、放射性同位体、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識、および、酵素標識が含まれる。
【0102】
本明細書において用いられている用語「ポリヌクレオチド」および「核酸分子」は同義的に用いられており、任意の3次元構造を有し、公知または非公知の任意の機能を実行する、任意の長さのヌクレオチドの重合体形態のことを言う。ポリヌクレオチドには、デオキシリボヌクレオチド(DNA)、リボヌクレオチド(RNA)、および/または、それらの類似体が含まれている。上記類自体には、特に限定されないが、一本鎖もしくは二本鎖および3重螺旋分子、遺伝子または遺伝子断片、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、アンチセンス分子、相補的DNA(cDNA)、ゲノムDNA(gDNA)、組み換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、アプタマー、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、ペプチド核酸(PNA)、およびプライマーが含まれる。また、核酸分子には、改良型核酸分子(例えば、改良された塩基、糖、および/またはヌクレオチド間リンカー)が含まれていてもよい。
【0103】
本明細書において用いられている「ライブラリー」は、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーのことを言う。ゲノムライブラリーは、生物に含まれるDNAの全ての、一部分の、もしくは重要な部分の標本である、環状または直鎖状の核酸分子の一式のことであり、cDNAライブラリーは、細胞、組織、臓器もしくは生物において発現している遺伝子の全ての、一部分の、または重要な部分の標本である、核酸分子の一式のことである。そのようなライブラリーは、1以上のベクターを含んでいてもよいし、または、含んでいなくてもよい。
【0104】
本明細書において用いられている「ベクター」は、プラスミド、コスミド、ファージミド、またはファージDNA、あるいは、その他のDNA分子のことを言う。その他のDNA分子は、(i)宿主細胞において自己複製可能であり、(ii)DNA配列が決定できる様式でベクターの基本的な生物的機能を損なうことなく切り出され、そして、DNAがその複製されるおよびクローニングされるために挿入される、1または少数のエンドヌクレアーゼ認識部位によって特徴付けられている。さらにベクターは、当該ベクターを用いて形質転換した細胞の同定に用いるために適切な1以上のマーカーを含んでいてもよい。マーカーとしては、例えば、テトラサイクリン耐性またはアンピシリン耐性が挙げられるが、これらに限定されない。また、そのようなベクターには、1以上の組み換え部位、1以上の終結部位、および、1以上の複製開始点などが含まれていてもよい。
【0105】
「ベクター」は、もう1つ別のDNA断片が連結されるプラスミド、ファージまたはコスミドなどのレプリコンであり、連結された断片は複製される。「レプリコン」は、インビボにおいてDNAを自己複製する機能を有する、すなわち、複製を自己制御することができる任意の遺伝因子(例えば、プラスミド、クロモソーム、ウィルス)である。
【0106】
「ベクター」には、例えば、プラスミド、自己複製配列(ARS)、セントロメア、コスミド、および、ファージミドが含まれる。さらにベクターに、PCR、転写および/または翻訳開始、および/または調節部位、組み換えシグナル、レプリコンなどのためのプライマー部位が設けられていてもよい。さらにベクターに、当該ベクターを用いて形質転換またはトランスフェクションされた細胞の同定に用いるための選択マーカーが1以上含まれていてもよい。選択マーカーとしては、例えば、カナマイシン、テトラサイクリン、アンピシリンなどが挙げられる。
【0107】
本明細書において用いられている「プライマー」は、DNA分子が増幅または重合される間に、ヌクレオチド単量体の共有結合によって伸長される1本鎖オリゴヌクレオチドのことを言う。本発明において用いられる好ましいプライマーには、オリゴ(dT)プライマー、またはその誘導体もしくは変異体が含まれる。
【0108】
本明細書において用いられている「オリゴヌクレオチド」は、あるヌクレオチドのデオキシリボースまたはリボースの3’位と、それに隣接するヌクレオチドのデオキシリボースまたはリボースの5’位との間に形成されたホスホジエステル結合によって連結されるヌクレオチドの共有結合配列を備える合成分子あるいは天然分子のことを言う。
【0109】
本明細書において用いられている「鋳型」は、増幅、合成または配列決定される2本鎖あるいは1本鎖の核酸分子のことを言う。2本鎖分子の場合、2本鎖分子を増幅、合成、または配列決定する前に、第1鎖および第2鎖を形成するためにその鎖を変性させることが好ましいし、あるいは、2本鎖分子を鋳型として直接用いてもよい。一本鎖の鋳型の場合、鋳型部分に相補的なプライマーは適切な条件下においてハイブリダイズされるかもしくはアニールされ、その後、1以上のポリメラーゼまたは逆転写酵素によって、上記鋳型の全てもしくは一部に相補的な核酸分子が合成される。本発明において新しく合成された分子は、もとの鋳型と同じ長さか、または、もとの鋳型よりも短い。
【0110】
「アミノ酸」は、(i)天然アミノ酸および/または非天然アミノ酸か、あるいは(ii)合成アミノ酸のどちらかのことを言い、アミノ酸には、グリシン、および、DもしくはLの光学異性体、ならびに、アミノ酸類似体、ならびに、ペプチド模擬体(peptidomimetic)が含まれる。また、「アミノ酸」には、イミノ酸も含まれる。「ペプチド」は、アミノ酸、アミノ酸類似体、またはペプチド模擬体のサブユニットを2以上含む化合物である。サブユニットはペプチド結合によって連結されていてもよいし、または、例えばエステル結合およびエーテル結合などのその他の結合によって連結されていてもよい。「オリゴペプチド」は、3以上のアミノ酸から構成される短いペプチド鎖のことを言う。「ポリペプチド」または「タンパク質」は、長いペプチド鎖(例えば、約10アミノ酸よりも長いペプチド鎖)のことを言う。
【0111】
用語「タンパク質」に、用語「ポリペプチド」が含まれると同時に、「ポリペプチド」はタンパク質全長よりも短くてもよい。その他の点について言えば、用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、同義であり、ペプチド結合または改良型ペプチド結合を通して連結されるアミノ酸の任意の重合体(ジペプチド以上)のことを言う。したがって、用語「ポリペプチド」および「タンパク質」には、オリゴペプチド、タンパク質断片、および、融合タンパク質などが含まれる。本明細書において用いられている用語「ポリペプチド」および「タンパク質」には、リポタンパク質および糖タンパク質などの成分(moiety)が含まれることを理解するべきである。
【0112】
本明細書において用いられている「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」は、天然には発見されない結合となっている、少なくとも2つの同定可能な断片を有するタンパク質のことを言う。1つの実施の形態において、キメラタンパク質は、例えば次の(i)および(ii)の条件を満足する少なくとも2つのDNA断片を有するキメラDNAから発現される。すなわち、当該キメラDNAは、(i)タンパク質として発現することが可能であり、(ii)各DNA断片の少なくとも1部分が単一のタンパク質として発現できるように実施可能に連結されている。また、その他の実施の形態については、それら自身当業者に示唆されるであろう。
【0113】
「プリオン」は、複製することができるタンパク質またはタンパク質断片のことである。
【0114】
「タグペプチド配列」は、目的のタンパク質に連結される、短いペプチドまたは3以上のアミノ酸から構成されるポリペプチドである。好ましい実施の形態において、ポリペプチド、タンパク質またはキメラタンパク質は、タグペプチド配列を備える。このタグベプチド配列は、抗体に特異的に結合するなどによって、精製、検出またはその他の機能に用いられる。抗体は溶解しているものであってもよいし、例えば、ビーズ、フィルター、その他の物質の表面に結合されているものであってもよい。タグペプチド配列は、ポリペプチド、タンパク質またはキメラタンパク質の残りの部分の機能を妨害するべきではない。本発明に有用なタグペプチド配列としては、例えば、カルボキシル基末端にヒスチジンを6個有する短いc‐Mycタグが挙げられる。その他の例としては、当業者に公知のものを挙げることができる。
【0115】
また、ドメイン配列の「保存的に改良された変異体」も本発明の範囲内に含まれる。特定の核酸配列に関して言えば、保存的に改良された変異体は、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸のことか、あるいは、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合は、本質的に同一の配列のことを言う。具体的には、1以上の選択された(または全ての)コドンの3番目の位置が、混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換される配列を生成することによって、縮重コドンの置換を達成することができる。この代わりに、1以上のアミノ酸を、同様の構造、活性、電荷、その他の性質を有するアミノ酸と置換してもよい。機能的に同様のアミノ酸を表す保存置換表は、当業者に公知である(例えば、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915‐10919(1992)参照)。
【0116】
核酸またはタンパク質の供給源は、全細胞を含む生物試料であってもよい。全細胞は、特に限定されないが、血液、細菌培養物、細菌コロニー、酵母細胞、組織培養細胞、唾液、尿、飲料水、血漿、糞便試料、精液、膣試料、痰、植物細胞試料、あるいは、科学的、医学的、法医学的、または、その他の技術分野において知られているその他の様々な細胞である。試料は、公知の様々な方法によって回収され、フィルターに運ばれて、それに塗布される。
【0117】
「宿主生物」は、生物すなわち生命体であり、原核生物もしくは真核生物、単細胞もしくは多細胞であってもよい。また、当該生物は、外来性の核酸、ポリヌクレオチドおよび/またはタンパク質の受容物であったか、あるいは、その受容物であることが望ましい。好ましくは、「宿主生物」は、細菌、酵母、または真核多細胞生命体(好ましくは動物、より好ましくは哺乳類、さらに好ましくはヒト)である。
【0118】
「抗体(Ab)」は、下記に記載される「抗原(Ag)」として知られている特定の物質に特異的に結合するタンパク質である。「抗体」は、特異的なエピトープに結合する抗体およびそのフラグメントを含む、任意の免疫グロブリンである。用語としては、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、およびキメラ抗体(例えば、多重特異的抗体)が挙げられる。
【0119】
「抗原(Ag)」は、抗体またはTリンパ球と特異的に反応する任意の物質である。「抗原結合部位」は、抗原と特異的に結合する免疫グロブリンの一部分である。
【0120】
「生物試料」には、組織、細胞、血液、流動体、または生物から得られるその他の物質が含まれる。また、生物試料には、生物、細胞、ウィルス、またはその他の複製体(replicative entity)も含まれる。さらに、固体培養物(細菌または組織培養物)も含まれる。また、特に限定されないが、食物、粉末、および、その他の固体を含有する固体試料も含まれる。その他の固体には、生物、細胞、ウィルス、またはその他の複製体を含有する非生物性固体が含まれる。また、上記固体試料の洗浄物、均質化物、超音波破砕物、および同様の処理を施したものも含まれる。同じように、用語「生物試料」には、非固形の生物試料も含まれる。
【0121】
「弱塩基」は、pH8.0〜9.5のアルカリ性を有するか、または、pH8.0〜9.5のアルカリ性を引き起こすものである。
【0122】
本明細書において用いられている「非イオン相互作用」には、イオン相互作用がない任意の相互作用が含まれる。「非イオン相互作用」には、双極子間相互作用、双極子誘起双極子相互作用、分散力、または水素結合が含まれるが、これらに限定されない。
【0123】
他に述べないときには、「実質的に」は、「特定されているものが、完全とまではいかないが、ほとんどを占める」ということを意味する。
【0124】
本発明の様々な態様および実施の形態をより詳細に実施例に記載する。なお、本発明の範囲から逸脱することなく、細部を変更することが理解される。
【0125】
〔実施例〕
〈実施例1‐3〉
本発明の装置は、図1‐3において示される保持器(60、160)によって支持される、2つの部材または部分(10、100)から基本的に構成される。第1部材(10)、ここでは下側部分が、図1に示されている。第1部材(10)は、外開口部(24)を有する空洞の内部柄(22)、および、第1組立筐体(12)を備える分注ピペットチップとして描かれている。第1組立筐体(12)は第1内部貯水槽(14)を収容している。
【0126】
パンチ(20)(例えば、FTA(登録商標)クロンセイバー(CLONESAVER(登録商標))アーカイバルカードなどから得られるパンチ)は、パンチおよび配置機器によって本発明の装置のこの区域に配置される。本実施の形態では、パンチはパンチ支持体(50)に置かれている。パンチ(20)が第1内部貯水槽(14)に設置されれば、第1内部貯水槽(14)は、空洞の内部柄(22)と連絡する第1槽(16)、および、連結開口部(32)を有する第2槽(18)に分割される。
【0127】
図1に描かれている実施の形態において、下側部分(10)の上端(30)とパンチ支持体(50)との間の距離は、パンチ(20)を簡便に配置できるように短く維持されている。本実施の形態において、下側部分(10)のチップ(40)は、チップのホールドアップ体積を最小にする、ゲル装填チップなどのキャピラリーチップとして示されている。
【0128】
第2部材、すなわち本実施の形態の装置の上側部分(100)が図2に描かれている。図2において、上側部分(100)は、空洞の内部(120)を規定する第2組立筐体(110)を有する分注ピペットチップとして描かれている。
【0129】
本実施の形態では、この第2分注ピペットチップは下側部分(10)として用いられている第1チップよりも大きい。第2組立筐体(110)は、下側部分(10)の第1連結開口部(32)を介して、上側部分(100)の空洞のある内部(120)と第1内部貯水槽(14)の第2槽(18)との間を連絡するための連結部分(130)を規定するように構造化され、且つ、構成される。本実施の形態において、連結部分(130)の端部は、下側部分(10)と連絡する第2連結開口部(140)を規定する縁または先端(150)を備えている(図2および3参照)。この部分は使用者によって、または、標準の液体取扱ロボットによって、直接的にまたは間接的に、持ち上げられ、且つ、図3に示されるものと同様の様式で下側部分に押し込められる。
【0130】
図3には連結した2つの部材(部分)が描かれている。図2に示されるように、第2組立筐体(110)の寸法は、パンチ(20)が下側部分(10)の第1内部貯水槽(14)に位置するときに、第2連結開口部(140)を規定する縁または先端(150)が、(i)第1内部貯水槽(14)内にあるパンチ(20)の位置を維持することに貢献し、(ii)第2組立筐体(110)の空洞の内部(120)の中に収容される第2内部貯水槽(200)を形成するように選択される。ここで、第2内部貯水槽(200)は下側部分(10)の第2槽(18)の内側に存在する。ピペッター(220)に装着されたとき、ピペッターから伝達される力は、上側部分(100)の開口部(170)を通り、空洞の内部(120)に入り、そして、第2内部貯水槽(200)を通過する。組立品が所定の位置において固定されれば、この組立品の保持器の外への移動、および、緩衝液場への移動などのためにピペッターが用いられる。
【0131】
2つの部分が連結された場合に、2つの部分は一緒に固定され(例えば、圧力によって、または、固定機構もしくは固定部材によって固定され)、本発明の装置は1体成形のように動くことができる。上側部分および下側部分が一緒に固定されれば、使用者または液体取扱ロボットは、装置を持ち上げて、図4に示されるように装置を緩衝液場に運ぶ。液体を本発明の装置の中に吸引し、パンチを通して液体を律動的に行ったり来たりさせることによって、または、吸引し本発明の装置から液体を分注することによって、パンチ(20)を洗浄することができる。上記液体として、例えば、高温のまたは低温の水溶液、アルコール、有機溶媒などが挙げられる。
【0132】
洗浄後、溶出緩衝液を本発明の装置に吸引して、インキュベートする。緩衝液をチップに汲み上げて、パンチを通して行ったり来たりさせることにより、洗浄と溶出とが行われる。溶出段階において加熱が必要であれば、チップ全体を加熱ブロックに配置する。インキュベーションの後、本発明の装置からの液体を回収容器に分注して、本発明の装置を処分する。本発明の装置は、洗浄の段階では比較的多量(例えば200μl)の緩衝液を使用することができ、溶出の段階では少量の溶液を使用することができるように設計されている。
【0133】
実施例1においては、上記装置は単一のチャネルピペッターに用いられている。実施例2においては、上記装置は複数のチャネルピペッターに用いられている。実施例3においては、上記装置は上述したロボットピペッターに用いられている。
【0134】
〈実施例4‐6〉
試料基質に穴開けを行って、装置(例えば、実施例1または2に記載の装置)にパンチを配置する使用者への代案として、装置の製造業者に対して、パンチが予め装填された装置が提供される。例えば、FTA(登録商標)パンチが予め装填された下側部分が提供される。そのときは、使用者は上側部分(実施例4)または部分(実施例5)を所定の位置に押し込める。すなわち、上側部分と下側部分とを一緒に取り付ける。スポットを乾燥して、それから装置は必要になるまで保管される。必要になったときに、実施例4の装置または実施例5の装置は上述したように処理されて目的の物質(例えば、DNA、RNA、タンパク質など)が得られる。
【0135】
同じように、試料基質に穴開けを行って、装置(例えば、実施例3に記載の装置)にパンチを配置する使用者へ代案として、装置の製造業者に対して、パンチが予め装填された装置が提供される。例えば、FTA(登録商標)パンチが予め装填された下側部分が提供される。実施例6においては、その後使用者は、下側部分を液体取扱ロボットに取り付けて、ロボットを用いてパンチに目的の試料をスポットする。
【0136】
その後、上側部分は所定の位置に押し込められる。すなわち、上側部分と下側部分とを一緒に取り付ける。スポットを乾燥して、それから装置は必要になるまで保管される。必要になったときに、装置は上述したように処理されて目的の物質(例えば、DNA、RNA、タンパク質など)が得られる。
【0137】
〈実施例7および8〉
実施例1の装置の代案として、上述した下側部分に類似する第1部材、または、改良型針のどちらかが適合された改良型シリンジ装置が用いられてもよい(例えば図5Aまたは図5B参照)。針の大きさはパンチの損失を防ぐように選択される。またその代わりに、パンチの大きさは特定の大きさの針を用いたときにパンチの損失を防ぐように選択される。さらに、針の長さおよび口径は、単離される目的の試料を参照して選択される。例えば、口径が狭ければせん断力によって鎖が千切れてしまうという理由から、目的の試料に長鎖DNAが含まれているときには広い口径の針が用いられる。
【0138】
図1〜4における第1部材の類似体である、図5Aにおける第1部材(下側部分)はシリンジ(300)に装着されており、シリンジ(300)の組立筐体(310)は、シリンジ(300)の空洞の内部(320)を規定するように構造化され、且つ、構成される。シリンジ(300)の連結部位(330)は、シリンジ(300)の開口部(340)が第1内部貯水槽と連絡するように、シリンジ(300)を第1部材の連結開口部に連結している。開口部の縁または先端(350)は、パンチ支持体(450)に位置するパンチ(440)の位置を維持するのに貢献している。2つの部分は、例えば、圧力によって、あるいは、スナップ式の固定もしくはルアー固定などの固定機構または固定部材によって、一緒に固定されている。シリンジのピストン(380)は液体を内側に吸い込むことおよび外側に吸い出すことに用いられる。
【0139】
図5Bにおける第1部材(下側部分)(400)は、シリンジまたはその他の針(420)に連結した組立筐体(410)を備える。開口部の縁または先端(350)は、パンチ支持体(470)に位置するパンチ(460)の位置を維持することに貢献している。
【0140】
実施例7において、シリンジ針は、針の上部端をシリンジの下部端に連結する余分な長い連結器領域を有するように改良されている。当該連結器領域は、シリンジを装着する前にパンチが配置されるパンチ支持体を備える。その代案として、パンチが内壁に引っ掛かって配置され、当該パンチの下にパンチの下面と針の末口との間に緩衝液またはその他の液体用の場所を維持するための空間が形成されるように、上記連結器領域は内部半径を減少している。パンチの上面はシリンジが装着されるときにシリンジのノズルによって押しつけられる。また、その代わりに、シリンジを装着する前にO‐リングが挿入される。
【0141】
実施例8では、アダプターが設けられており、当該アダプターはシリンジ針とシリンジとの間に配置されている。アダプターは、好ましくは市販のシリンジおよび針が用いられるような標準の方法を利用して、その上端においてシリンジのノズルを、そして、その下端において針の連結器領域を締め付けることができる。必要に応じてアダプターはシリンジが装着される前にパンチを配置するパンチ支持体を備える。パンチの上面はシリンジが装着されたときにシリンジのノズルによって押しつけられる。また、その代わりに、シリンジが装着される前にO‐リングが挿入される。
【0142】
〈実施例9〉
実施例1の装置の代わりに、改良型シリンジ装置が用いられてもよい。本実施の形態では、実施例1に記載されているような下側部分が備えられているが、その下側部分はそれがシリンジに装着されるように改良されているか、または、シリンジが下側部分に装着されるようにシリンジが改良されている。パンチの上面はシリンジが装着されたときにシリンジのノズルによって押しつけられる。また、その代わりに、シリンジが装着される前にO‐リングが挿入される。
【0143】
〈実施例10‐12〉
実施例10‐12は、実施例7‐9の装置を用いること以外は、実施例4と同様である。
【0144】
実施例7の代案としての実施例10では、実施例7の装置の製造業者は、予めパンチが装填された装置を提供する。例えば、FTA(登録商標)パンチが予め装填された余分な長い連結器を有する改良型シリンジ針を提供する。その後使用者は、目的の試料をパンチにスポットして、シリンジを装着する。スポットは乾燥されて、それから装置は必要になるまで保管される。必要になったときに、装置は上述したように処理されて目的の物質(例えば、DNA、RNA、タンパク質など)が得られる。
【0145】
実施例8の代案としての実施例11では、実施例8の装置の製造業者は、予めパンチが装填された装置を提供する。例えば、FTA(登録商標)パンチが予め装填された余分な長い連結器を有する改良型シリンジ針を提供する。その後使用者は、目的の試料をパンチにスポットして、シリンジを装着する。スポットは乾燥されて、それから装置は必要になるまで保管される。必要になったときに、装置は上述したように処理されて目的の物質(例えば、DNA、RNA、タンパク質など)が得られる。
【0146】
実施例9の代案としての実施例12では、実施例9の装置の製造業者は、予めパンチが装填された装置を提供する。例えば、FTA(登録商標)パンチが予め装填された下側部分を提供する。その後使用者は、目的の試料をパンチにスポットして、シリンジを装着する。スポットは乾燥されて、それから装置は必要になるまで保管される。必要になったときに、装置は上述したように処理されて目的の物質(例えば、DNA、RNA、タンパク質など)が得られる。
【0147】
〈実施例13〉
実施例1の装置が、パンチからRNAを単離するために用いられる。しかしながら、RNA試料のパンチを処理する間に用いられる道具および溶液は、従来公知の方法に従って、RNAseフリーである(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(1989)参照)。
【0148】
〈実施例14〉
実施例1の装置が、タンパク質を有するパンチを処理するために用いられる。本実施例において、タンパク質はリン酸緩衝液(PBS)を用いて例えば30分‐45分間インキュべーションすることによって溶出される。PBSの組成は、137mM NaCl、2.7mM KCl、6.3mM NaHPO、および1.47mM KHPOであり、pHは7.4である。
【0149】
〈実施例15〉
上述した装置および方法と同様の装置および方法を用いて、指示薬付きのFTA(登録商標)(indicating FTA)パンチからプラスミドDNAが溶出されることを示す実験を行った。装置の下側部分として200μlのピペット、および、装置の上側部分として1000μlのピペットチップを用いて、装置を組み立てた。
【0150】
プラスミドDNA(pGEM‐luc)が予めスポットされた7mmのFTA(登録商標)パンチを200μlのピペットチップに挿入した。1000μlのピペットチップがパンチの先端部に設置されるまで、1000μlのピペットチップを200μlのチップに挿入した。なお、1000μlのチップは、パンチを200μlのチップ内の所定の位置に保持するための必要な長さになるように、チップの末口において縮められている。
【0151】
プラスミドDNAを次のようにして溶出した;
a)2つのチップの組立品に1000μlのピペッターを装着した;
b)100μlのTE−1をチップに取り込み、液体をパンチと接触させた(TE−1;10mM トリス HCl(pH8)および100μM EDTA(エチレンジアミン4酢酸));
c)TE−1と一緒に室温においてインキュベーションした後、ピペッターを用いて液体を3回、パンチを通して行ったり来たりさせた;
d)その後、液体を微小遠心管に回収し、溶出物の部分標本(2μl)を形質転換に用いた。
【0152】
エレクトロポレーションによる形質転換を次のようにして行った;
1)プラスミドDNA(または、標準としてのpUC19DNAもしくは陰性対照としてのTE−1)を含む溶出物(2μl)を冷却された微小遠心管(1.8ml)に加えた;
2)20μlのコンピテントセル(エレクトロマックス‐DH5α(ElectroMAX‐DH5α)、インビトロジェン)を上記微小遠心管に加えた;
3)試料を極めて穏やかに混合した;
4)生じた混合物を氷上において10分間インキュベートした;
5)混合物の全量を冷却したエレクトロポレーションキュベット(0.1cmの隙間)に移した;
6)上記キュベットをバイオラッド・マイクロパルサー(Bio‐Rad Micropulser)に設置して、パルス(Eclプログラム)を加えた。Eclプログラムでは、0.1cmの隙間のキュベットが用いられているときに、1.8kVの電圧が印加された;
7)直ちに、980μlのS.O.C.培養液を加えた(S.O.C.培養液;2%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0.05% NaCl、2.5mM KCl、10mM MgCl(pH7.0)、および、20mM グルコース);
8)キュベットから液体を14mlのファルコンの丸型ボトム管(BD 製品コード:2059)に移した;
9)試料を225rpmで混合しながら、37℃で1時間インキュベートした;
10)試料をS.O.C.培養液を用いて1:20に希釈した。また、標準として用いたpUCをS.O.C.培養液を用いて1:100に希釈した;
11)各希釈物の100μlをLB/アンピシリン・プレートに薄く塗った(LB/アンピシリン・プレート;ルーリア培地(Luria Broth(LB):1%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0.5% NaCl(pH7.0))、100μg/mlアンピシリン(amp)、12.5g/Lバクト‐アガー(bacto‐agar))。希釈した各試料について、プレートを2つ調製した。;
12)プレートを37℃で一晩インキュベートして、コロニーを計測した。結果は、表1参照のこと。
【0153】
【表1】

上記結果によれば、上述した装置に使用される原理を用いてFTA(登録商標)パンチから、プラスミドDNAが溶出されることが示された。
【0154】
〔参考文献〕
Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual (2d ed.),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(1989)。
【0155】
本出願の至るところに、米国特許を含む様々な刊行物が、著者および年度によって、そして、特許は番号によって参照されている。これらの刊行物および特許の開示は、本発明に関連する最先端技術をより十分に記載するために、参照によって本出願に組み込まれる。
【0156】
本発明は、例示的に記述されている。そして、用いられた専門用語は、限定の性質を持っているというよりも、単語または記述の性質を持っていることを意図されることが理解される。
【0157】
上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改良および変形が可能である。それ故、記載された発明の範囲内において、本発明は具体的に記載された実施の形態のようなものよりも、他の実施の形態で実践されてもよいことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】本発明の実施の形態の下側部分を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態の上側部分を示す概略図である。
【図3】ピペッターチップに関連する図1および図2の下側部分および上側部分の組合せを示す概略図である。
【図4】緩衝液場に関連する図3の組合せを示す概略図である。
【図5A】シリンジを用いる本発明の実施の形態を示す概略図である。
【図5B】シリンジを用いる本発明の実施の形態を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的の試料を含む基質由来のパンチを処理するための装置であって、
(a)分注チップを備える第1部材、ならびに、
(b)第2組立筐体を備える第2部材、
を具備し、
上記第1部材は、
(i)外開口部を有する空洞の内部柄、および、
(ii)分注チップの内部柄と連絡する第1内部貯水槽を規定するために構造化され、且つ、構成される第1組立筐体、
を備え、
上記第1内部貯水槽の寸法は、挿入されるパンチが第1内部貯水槽を2つの槽に分割するようなものから選択され、第1槽は分注チップの内部柄と連絡し、第2槽は連結開口部を備え、
上記第2組立筐体は、
(i)空洞の内部、
(ii)第2部材を第1部材に連結するための連結部分、および、
(iii)第2部材の空洞の内部と第1内部貯水槽との間を第1部材の第1連結開口部を介して連絡するための第2連結開口部、
を規定するために構造化され、且つ、構成され、
第2組立筐体の寸法は、パンチが第1部材の第1内部貯水槽に位置するときに、第2連結開口部を規定する縁が第1内部貯水槽の内にあるパンチの位置を維持するために貢献し、且つ、第2部材の空洞の内部に第2内部貯水槽を形成するように選択される、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、上記第1内部貯水槽はパンチ支持体をさらに備えており、当該パンチ支持体の寸法は、パンチがパンチ支持体に配置され第1槽が流動体で満たされたときに、パンチ支持体に配置されたパンチの表面区域の大部分が第1槽に存在する流動体に接近可能であるように選ばれる、装置。
【請求項3】
上記パンチ支持体がO‐リングを具備する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
上記パンチ支持体が、流動体が流れるための一連の溝を備えるうねのある支持体を具備する、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
上記連結部分は、圧力固定によって第2部材を第1部材に連結する、上記請求項の何れか1項に記載の装置。
【請求項6】
上記連結部分は、機械式固定機構によって第2部材を第1部材に連結する、上記請求項の何れか1項に記載の装置。
【請求項7】
上記機械式固定機構は、スナップ式の固定またはルアー固定を備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
上記第1内部貯水槽は、第1組立筐体の中に設けられた空洞の内部柄に接触している、上記請求項の何れか1項に記載の装置。
【請求項9】
上記第1部材の分注チップはマイクロ分注ピペットチップを備える、上記請求項の何れか1項に記載の装置。
【請求項10】
上記マイクロ分注ピペットチップはキャピラリーマイクロ分注ピペットチップを備える、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
上記第2部材はマイクロ分注ピペットチップを備える、上記請求項の何れか1項に記載の装置。
【請求項12】
上記請求項の何れか1項に記載の装置であって、
(d)単一のチャネルのマイクロ分注ピペット、
(e)複数のチャネルのマイクロ分注ピペット、および、
(f)自動マイクロ分注ピペット機械またはロボット、
からなる群より選ばれるマイクロ分注ピペットを一緒に用いるために適合される、装置。
【請求項13】
上記第2部材は、
(a)手動シリンジ、および
(b)ロボット式のシリンジ、
からなる群より選ばれるシリンジを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
上記第1部材はシリンジを取り付けられるように適合され、上記空洞の内部柄はシリンジの針に収容される、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
上記第1組立筐体は、シリンジとシリンジの針との間に取り付けられるように適合される、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
(c)加熱部材をさらに備える、上記請求項の何れか1項に記載の装置。
【請求項17】
目的の試料を含む基質由来のパンチを処理するためのキットであって、
(b)上記請求項の何れか1項に記載の装置、および、
(b)処理試薬、
を含む、キット。
【請求項18】
上記処理試薬が溶出緩衝液を含む、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
請求項18に記載のキットであって、上記溶出緩衝液は、NaOHと、酢酸ナトリウムと、10mM 2‐[N‐モルホリノ]‐エタンスルホン酸(MES)と、10mM 3‐[シクロヘキシルアミノ]‐1‐プロパンスルホン酸(CAPS)と、TEと、TE−1と、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と、ソルビタン・モノ‐9オクタデセノネート・ポリ(オキシ‐1,1‐エタンドリル)、ラウリルドデシル硫酸(LDS)、または、t‐オクチルフェノキシポリエトキシエタノールの水溶液と、10mM トリスと、リン酸緩衝液(PBS)と、水とからなる群より選ばれる、キット。
【請求項20】
上記処理試薬が指示薬を含む、請求項17に記載のキット。
【請求項21】
上記処理試薬が酵素または光分解試薬を含む、請求項17に記載のキット。
【請求項22】
(c)加熱部材をさらに含む、請求項17に記載のキット。
【請求項23】
目的の試料を含有するパンチをさらに含む、請求項17に記載のキット。
【請求項24】
上記目的の試料が、
(iv)核酸、または、
(v)タンパク質もしくはペプチド、
を含む請求項23に記載のキット。
【請求項25】
請求項24に記載のキットであって、上記目的の試料は、ゲノムDNA、プラスミドDNA、ミトコンドリアDNA、cDNA、オリゴヌクレオチド、ウィルスのDNAまたはRNA、BAC、mRNA、rRNA、tRNA、siRNA、および、全RNAからなる群より選ばれる核酸を含む、キット。
【請求項26】
目的の試料を含む基質由来のパンチを処理するための方法であって、
(vi)目的の試料を含むパンチを得るために基質に穴を開ける穴開け工程、
(vii)上記請求項の何れか1項に記載の装置を提供する提供工程、
(viii)当該装置の第1部材の第1組立筐体に基質を挿入する挿入工程、
(ix)第1部材を第2部材に連結させる連結工程、および、
(x)処理試薬を用いてパンチを処理する処理工程、
を含む方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であって、上記処理工程が、
(xi)処理試薬がパンチと接触するように第1部材に処理試薬を汲み上げる汲み上げ工程、および、
(xii)第1部材から処理試薬を除去する除去工程、
を含む方法。
【請求項28】
請求項26に記載の方法であって、上記処理工程が、
(a)処理試薬がパンチと接触し、当該パンチを通過して第2槽に移動するように第1部材に処理試薬を汲み上げる汲み上げ工程、
(b)パンチを介して第1槽に処理試薬を押し進める押し進め工程、および
(c)第1部材から処理試薬を除去する除去工程、
を含む方法。
【請求項29】
工程(i)が、パンチをインキュベーションするインキュベーション工程をさらに含む、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
上記連結工程は、圧力によってまたは機械式固定によって固定する固定工程を含む、請求項26‐28の何れか1項に記載の方法。
【請求項31】
上記処理試薬が溶出緩衝液を含む、請求項26‐28の何れか1項に記載の方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、上記溶出緩衝液は、NaOHと、酢酸ナトリウムと、10mM 2‐[N‐モルホリノ]‐エタンスルホン酸(MES)と、10mM 3‐[シクロヘキシルアミノ]‐1‐プロパンスルホン酸(CAPS)と、TEと、TE−1と、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と、ソルビタン・モノ‐9オクタデセノネート・ポリ(オキシ‐1,1‐エタンドリル)、ラウリルドデシル硫酸(LDS)、または、t‐オクチルフェノキシポリエトキシエタノールの水溶液と、10mM トリスと、リン酸緩衝液(PBS)と、水とからなる群より選ばれる、方法。
【請求項33】
上記溶出緩衝液が、
(a)パンチと接触する前に、または、
(b)第1組立筐体内においてパンチと接触している間に、
40℃〜125℃の間の温度に加熱される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
上記溶出緩衝液が、65℃〜95℃の間の温度に加熱される、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
上記処理試薬が指示薬を含む、請求項26‐28の何れか1項に記載の方法。
【請求項36】
上記処理試薬が酵素または光分解試薬を含む、請求項26‐28の何れか1項に記載の方法。
【請求項37】
上記目的の試料が核酸を含む、請求項26‐28の何れか1項に記載の方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法であって、上記核酸は、ゲノムDNA、プラスミドDNA、ミトコンドリアDNA、cDNA、オリゴヌクレオチド、BAC、ウィルスのDNAまたはRNA、BAC、mRNA、rRNA、tRNA、siRNA、および、全RNAからなる群より選ばれる、方法。
【請求項39】
上記目的の試料がタンパク質またはペプチドを含む、請求項26‐28の何れか1項に記載の方法。
【請求項40】
上記基質が、
(a)セルロース系基質、
(b)シリカ系基質、または、
(xiii)プラスチック系基質、
を含む、請求項26‐28の何れか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2008−530563(P2008−530563A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555316(P2007−555316)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/005031
【国際公開番号】WO2006/086771
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(502249792)ワットマン インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】