説明

パンチ穴位置ずれ検知装置及び製袋機

【課題】底材のパンチ穴の位置ずれを検知して不良品の発生を抑制するパンチ穴位置ずれ検知装置を提供する。
【解決手段】軟包装袋スタンディンパウチの胴材と底材のフィルムを間欠送りの停止時にシールする際に、底材に穿孔されたパンチ穴の位置のずれを検知するパンチ穴位置ずれ検知装置において、胴材と底材を積層したフィルムを挟持するフィルム挟持手段と、前記フィルム挟持手段に備えられ、てこの原理を有するフィルム厚みを増幅する手段と、前記フィルム厚みを増幅する手段の先端に備えられた光路遮断検知手段と、を備えたことを特徴とするパンチ穴位置ずれ検知装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟包装袋の1つであるスタンディングパウチの製袋工程で胴材に印刷された絵柄に対する、底材に穿孔されたパンチ穴の位置のずれをインラインで検知する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明において対象とされるのはスタンディングパウチにおける製袋工程である。ロール状に巻かれた軟包装フィルム基材から製袋機によって製作される軟包装袋の基本的な形態としては、二方シールタイプ、ピロータイプ(背貼合掌)、三方シールタイプ、底部ガゼットタイプ、側部ガゼットタイプ、スタンディングパウチ等があり、用途により適宜選択されている。
【0003】
スタンディングパウチの1例を図1に示す。胴材1と底材2により構成され、底材は半分に折り重ねられ、胴材の底部分に挿入され、パウチの両サイドと底部分がシールされている。両サイドは表裏の胴材同士が、底部分は胴材と底材がシールされている。また底部分の両サイドには、底材にパンチ穴3が穿孔されており、そのパンチ穴を通して胴材同士がシールされ、底部分の両サイドはパンチ穴を通して閉じられており、これにより自立性が付与されている。しかしながら、印刷絵柄に対してパンチ穴がずれることによりシール部分がずれ、この場合、印刷絵柄に沿ってカッティングした後に、スタンディングパウチに自立性を付与することができなく、不良品となってしまう。
【0004】
スタンディングパウチの製袋工程の1つとして、図2に示す方式が挙げられる。2面取り用に表、裏の絵柄の印刷された胴材の原反4が巻き出され、加工工程5で、表、裏にスリットされ、それぞれ表の胴材と裏の胴材が上下に向かい合わせに方向転換されて送り出される。またこの加工工程5では、連続的に巻き出される胴材原反と、その後のフィルムの間欠送りによるシール工程の間のアキュームレータも兼ねている。また胴材とは別に底材原反7が巻き出され、パンチ6により等ピッチに穿孔される。なお、この工程は2面取りであり、底材が2面取り用に絵柄の印刷された胴材に対してそれぞれの絵柄用に左右2つ送り出される。その後、図3に示すように、表、裏の胴材と底材は重ね合わされる。この時、底材は2つ折りにされている。また、胴材に印刷された絵柄に対して、底材に穿孔されたパンチ穴が所定場所に位置するように重ねあわされて、送られる。次に底シール8がなされ、二つ折にされた底シールのそれぞれの部分が表と裏の胴材にそれぞれシールされる。またこの時、底材のパンチ穴を通して表と裏の胴材同士もシールされる。そして、横シール9により、パウチの両サイドの、表と裏の胴材同士がシールされる。最後に外周抜き機10により、製品形状にカットされ、デリバリ装置11により搬出される。なお、加工工程5以降の各工程は、フィルム間欠送りの停止時に行われる。
【0005】
このような、スタンディングパウチの製袋工程において、等ピッチに穿孔された底材と胴材は重ねあわされてニップされ、同時に送られる。この時、図3に示す様に、底材に穿孔されたパンチ穴3は、胴材に印刷された絵柄に対して、位置決めされて、送られることとなる。胴材の送りに関しては、光電管等を用いて、胴材の絵柄に対して送り停止時のライン上の位置をフィードバックして、フィルム送り用のモータ等を制御することにより、正確にフィルムを送る方式が採用されているのが一般的である。しかしながら、底材は胴材に上下に挟まれた状態で送られており、外部から視認することができない。そのため、底材に対しては、そのような対策が採られておらず、例えばフィルムの蛇行防止用ガイドに、底材が引っかかり、間欠送りの送り過程のたびに、底材が引き伸ばされ、その底材の伸びが積算され、結果として、胴材に印刷された絵柄に対して、底材のパンチ穴がずれた
状態で、胴材と底材が底シールされて、その後印刷絵柄に合わしてカッティングされた後に、製品形状に対してシール部分がずれた状態となり、パウチに自立性を付与できなく、不良品が発生するという問題が生じている。このパンチ穴の位置ずれをインラインで検知して、検知後すぐに対策を行うことにより、収率を改善することができる。
【0006】
そこで底材のパンチ穴を、積層されたフィルムの厚みを検知して行う方法が考えられる。
【0007】
厚みを測定することは以下に説明するように多々行われている。例えば特許文献1では、画像読み取り装置において、枚葉のシート材の重送を検知するための厚み検知装置として、レバーを介してシート材の厚みをフォトインタラプタの設置部分へと伝える機構に関する発明について述べられている。
【0008】
また特許文献2では、印字装置における印字ヘッドと印字媒体のギャップを適切に管理するために印字媒体の厚さを検知する印字媒体を挟持するローラ機構に関する発明について述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−296945号公報
【特許文献2】特開平7−101589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記に発明の様に、フィルムの厚みを測定するためにフィルムを上下からローラで挟持して、それをてこの原理を用いて機械的に増幅してセンサ部に伝える機構は一般的である。しかしながら、上記方法では、フィルムの厚みを検知することは出来ても、底材のパンチ穴の位置を正確に検出する課題は解決されない。
【0011】
そこで本発明は、底材のパンチ穴の位置ずれを検知して不良品の発生を抑制するパンチ穴位置ずれ検知装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、軟包装袋スタンディンパウチの胴材と底材のフィルムを間欠送りの停止時にシールする際に、底材に穿孔されたパンチ穴の位置のずれを検知するパンチ穴位置ずれ検知装置において、
胴材と底材を積層したフィルムを挟持するフィルム挟持手段と、
前記フィルム挟持手段に備えられ、てこの原理を有するフィルム厚みを増幅する手段と、
前記フィルム厚みを増幅する手段の先端に備えられた光路遮断検知手段と、を備えたことを特徴とするパンチ穴位置ずれ検知装置である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、軟包装袋スタンディンパウチの胴材と底材のフィルムを間欠送りの停止時にシールする際に、底材に穿孔されたパンチ穴の位置のずれを検知するパンチ穴位置ずれ検知装置において、
胴材と底材を積層したフィルムを挟持するフィルム挟持手段と、
前記フィルム挟持手段に備えられ、てこの原理を有するフィルム厚みを増幅する手段と、
前記フィルム厚みを増幅する手段の先端に備えられた変位検出手段と、
前記フィルムの搬送情報を取得するフィルム搬送情報取得手段と、を備えたことを特徴
とするパンチ穴位置ずれ検知装置である。
【0014】
請求項3に記載の発明は、フィルム挟持手段は検知ローラを備え、その外周部がR形状を有することを特徴とする請求項1または2記載のパンチ穴位置ずれ検知装置である。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載のパンチ穴位置ずれ検知装置を具備した製袋機である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のパンチ穴位置ずれ検知装置及び製袋機により、軟包装材スタンディングパウチの製袋工程において、フィルムの搬送情報を取得しながら厚み計測することによって製袋機上でパンチ穴の位置ずれを精度良く検出することができ、パンチ穴の位置ずれを検出した場合には製袋機を停止することによって、パンチ穴位置ずれによる不良の発生を抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】スタンディングパウチの説明図。
【図2】スタンディングパウチ製袋工程の一例を示す図。
【図3】スタンディングパウチ製袋工程におけるフィルムの説明図。
【図4】パンチ穴位置ずれ検知装置の概略図。
【図5】製袋中の、フィルム送り用モータに設置したエンコーダ信号の時間波形と、各種パンチ穴位置ずれの状態における変位センサの信号の時間波形との比較図。
【図6】本発明に係るパンチ穴位置ずれ検知装置を設置した製袋機ラインの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
図4は、本発明に係るパンチ穴位置ずれ検知装置の概略図である。胴材と底材を積層したフィルムを挟持するフィルム挟持手段を説明する。固定ローラ14にはボールベアリングを利用して、検知ローラ13には、フィルム18に傷がつかないよう材料にエンジニアリングプラスチックを採用した削り出しのローラを利用する。フィルム厚みを増幅する手段について説明する。検知ローラ13を回転自由に片端に固定したレバー15においては、支点12を中心として例えばレバー比1:7に設定する。底材は厚さが例えば0.3mmのフィルムを使用し、パンチ穴が有る場合と無い場合のレバーの他端の揺動の差は2.1mmである。このレバーは、引っ張りばね17を用いて反時計方向に力を加えられている。光遮断検知手段である光路遮断型検知器16には、安価なマイクロフォトセンサを利用する。レバー他端部にはスリットが入っており、パンチ穴が有る場合はこのスリットを通してセンサの光軸が透過するが、パンチ穴が無い場合には、ローラ間に底材1層分の厚さが加えられ、レバーが支点を中心に揺動し、センサの光軸はレバー他端のスリットが無い部分によって遮光される。センサは遮光時OFFとなるよう配線した。センサはシーケンサに接続されており、このON、OFF信号とフィルムの送り信号から、フィルムの間欠送りの停止時にセンサの出力がOFFの時に、製袋機を非常停止して、警報を鳴らす様にプログラミングしてある。
【0020】
本発明に係る別のパンチ穴位置ずれ検知装置は、上記光遮断検知手段である光路遮断型検知器16に換えて変位検出手段である変位センサを用いるものである。また、フィルムの搬送情報を取得するフィルム搬送情報取得手段を備えている。例えばフィルム送り用モータにロータリーエンコーダを設置する。この時、パンチ穴の各種ずれ状態による変位信号の時間波形とエンコーダによるフィルム送りの時間波形を比較したものを図5に示す。Aはエンコーダによるフィルム送りの時間波形である。パルス信号が送られていない破線部が、フィルムの間欠送りの停止時を示している。Bは、パンチ穴が正常な位置の時の変位センサの信号の時間波形である。Cは、パンチ穴が微小にずれた状態の変位センサの信号の時間波形を示している。このパンチ穴が微小にずれた状態とは、パンチ穴はフィルム流れ方向に幅があり、その流れ方向に微小にずれたとしても、検知ローラ13と固定ローラ14で挟まれたフィルムの厚みは変わらなく、このような状態のことを指す。Dは、パンチ穴が完全にずれた状態の変位センサの信号の時間波形を示している。パンチ穴が完全にずれた状態とは、パンチ穴の幅以上ずれて、検知ローラと固定ローラで挟まれたフィルムの厚みが変化した状態のことを指す。
【0021】
光遮断検知手段である光路遮断型検知器16を使用した場合には、即ち、フィルム送り停止時にパンチ穴部のフィルムの厚みを計測するというような方法によると、上記パンチ穴が完全にずれた状態においては、計測される厚みに変化が生じパンチ穴ずれを検知できる。しかし上記パンチ穴が微小にずれた状態においては、計測される厚みに変化はなく、パンチ穴位置ずれを検知することができない。そこで請求項2に関する発明では、フィルム送りの時間波形と変位センサの時間波形を比較する。BとCの波形を比較すると、信号の波形自体は変わらず、時間軸に対してずれた状態となっている。そこでエンコーダによるフィルム送りの時間波形と比較して、フィルム停止時等、変位センサの時間波形に対する時間軸の基準を設けて、BとCの波形の違いを検出する。例えば、エンコーダ信号によるフィルム送り開始の信号とフィルム送り停止の信号をトリガーとして、フィルム間欠送りの1送り時の変位信号をロギングする。そして、データ処理により例えば図5におけるt2の時間を算出して基準値t1の時間と比較する。これによりBとCの波形の違い、つまりパンチ穴の微小位置ずれを検出することができる。また本発明では、このパンチ穴位置ずれ検知に対して警報を鳴らす、警報機構も具備する。パンチ穴の微小位置ずれの状態では、最終製品は不良品とはならない可能性があるが、底材の送り不良の兆候を未然に検知することにより、不良品の生産を防止でき、より収率を改善することができる。
【0022】
本発明に係るパンチ穴位置ずれ検知装置では、検知ローラ13の外周部を平坦ではなくRのついた形状とする。検知ローラの外周部が平坦である場合には、フィルムにローラの角があたることになり、フィルムに傷をつける恐れがある。そこで、本発明ではフィルムの外周部をRのついた形状とすることで、フィルムに傷をつけることを防止している。
【0023】
図6は、上記本発明に係るパンチ穴位置ずれ検知装置を設置した製袋機ラインの説明図である。パンチ穴位置ずれ検知装置20は、縦シール8後方の製袋機フレームに固定した。またパンチ穴位置ずれ検知装置20には、ラインの流れ方向と幅方向に図示しないリニアガイドを設置して位置調整可能とし、製袋品の品種変更に対応できるようにした。
【0024】
パンチユニットを、正常な位置からそれぞれ上流方向、下流方向に場所を振ってずらしていき、製袋機ラインにフィルムを流してパンチ穴をずらして製袋を行い、パンチ穴ずれを検知可能かどうか、検証を行った。その結果、パンチ穴の流れ方向幅以上、パンチ穴がずれた場合には、パンチ穴位置ずれを検知することができた。
【0025】
このように、本発明のパンチ穴位置ずれ検知装置及び製袋機により、従来は監視する方法がなかった底材のパンチ穴の位置不良を、軟包装材スタンディングパウチの製袋工程においてフィルムの厚み計測を行い、かつ、同時にフィルムの搬送長さを検出することによって、底材のパンチ穴の微小な位置ずれを検出することが可能となり、位置ずれを検出した場合には、製袋機を停止し、不良原因を取り除くことによって、底材のパンチ穴の位置ずれ不良を抑制することが出来る。
【符号の説明】
【0026】
1…胴材
2…底材
3…パンチ穴
4…胴材原反
5…加工工程
6…パンチ
7…底材原反
8…縦シール
9…横シール
10…外周抜き機
11…デリバリ装置
12…支点
13…検知ローラ
14…固定ローラ
15…レバー
16…光路遮断型検知器
17…バネ
18…フィルム
20…パンチ穴位置ずれ検知装置
A…エンコーダの信号
B…パンチ穴が正常位置の時の変位センサの信号
C…パンチ穴微小ずれの時の変位センサの信号
D…パンチ穴完全ずれの時の変位センサの信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟包装袋スタンディンパウチの胴材と底材のフィルムを間欠送りの停止時にシールする際に、底材に穿孔されたパンチ穴の位置のずれを検知するパンチ穴位置ずれ検知装置において、
胴材と底材を積層したフィルムを挟持するフィルム挟持手段と、
前記フィルム挟持手段に備えられ、てこの原理を有するフィルム厚みを増幅する手段と、
前記フィルム厚みを増幅する手段の先端に備えられた光路遮断検知手段と、を備えたことを特徴とするパンチ穴位置ずれ検知装置。
【請求項2】
軟包装袋スタンディンパウチの胴材と底材のフィルムを間欠送りの停止時にシールする際に、底材に穿孔されたパンチ穴の位置のずれを検知するパンチ穴位置ずれ検知装置において、
胴材と底材を積層したフィルムを挟持するフィルム挟持手段と、
前記フィルム挟持手段に備えられ、てこの原理を有するフィルム厚みを増幅する手段と、
前記フィルム厚みを増幅する手段の先端に備えられた変位検出手段と、
前記フィルムの搬送情報を取得するフィルム搬送情報取得手段と、を備えたことを特徴とするパンチ穴位置ずれ検知装置。
【請求項3】
フィルム挟持手段は検知ローラを備え、その外周部がR形状を有することを特徴とする請求項1または2記載のパンチ穴位置ずれ検知装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のパンチ穴位置ずれ検知装置を具備した製袋機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−189607(P2011−189607A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57189(P2010−57189)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】