説明

パーセルシェルフ構造

【課題】テールゲート開放時の開口を大きく確保することが可能なパーセルシェルフ構造を提供する。
【解決手段】パーセルシェルフ1は、前端部10sがサイドパネル4に回動可能に支持された前側シェルフ10と、テールゲート2に固定された後側シェルフ20と、前側シェルフ10の前端部10sから後側へ離れた位置と前記テールゲート2とを連結するストラップ30とからなり、テールゲート2が開いた状態では前側シェルフ10と後側シェルフ20とは離れており、テールゲー2トが閉じた状態では、前側シェルフ12と後側シェルフ20とは接触している

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前後に長い荷室を備えた車両に適用されるパーセルシェルフ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、跳ね上げ式のテールゲートからアクセス可能な荷物スペースと、この荷物スペースの前方の乗員スペースとが隔てられていない、いわゆるハッチバックタイプの車両では、荷物スペースの上部開口を覆うシェルフ(棚)を備えたものが種々提案されている。この種のシェルフは、前端部が車体に回動可能に支持され、シェルフの後端部とテールゲートとがストラップで連結されており、テールゲートの開動作に応じてシェルフがストラップによって吊り上げられることでシェルフが開放するように構成されているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−67172号公報(図1および図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、荷物スペースが前後方向に長い車両に前記した従来の技術を適用した場合、テールゲートを開けたときに、シェルフを大きく開放することができないという課題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、テールゲート開放時の開口を大きく確保することが可能なパーセルシェルフ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前後に2分割されたパーセルシェルフであって、前記パーセルシェルフは、前端部が車体に回動可能に支持された前側シェルフと、テールゲートに固定された後側シェルフと、前記前側シェルフの前端部から後側へ離れた位置と前記テールゲートとを接続するストラップとからなり、前記テールゲートが開いた状態では、前記前側シェルフと前記後側シェルフとは離れており、前記テールゲートが閉じた状態では、前記前側シェルフと前記後側シェルフとは接触していることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、パーセルシェルフを前側シェルフと後側シェルフの二分割にして、前側シェルフについては、テールゲートの開放動作に追従してストラップによって前端部の軸を支点にして回動させ、後側シェルフについては、テールゲートに固定することによって、テールゲートを開放したときの荷室に臨む開口を大きくすることが可能になる。
【0008】
つまり、テールゲートに固定された後側シェルフは、テールゲートの開動作に連動して(開動作と同時に)開放するので、荷室に対して大きな開口部を得ることが可能になる。これにより、テールゲートの操作時の圧迫感を低減することが可能になる。また、後側シェルフが上方に大きく開放することで、例えば荷室の奥側に収納された荷物などの出し入れが容易になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、テールゲート開放時の開口を大きく確保することが可能なパーセルシェルフ構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態のパーセルシェルフ構造を備えた車両後部を示し、テールゲートを開放した状態の透視斜視図である。
【図2】本実施形態のパーセルシェルフ構造を備えた車両後部を示し、テールゲートを閉じた状態の透視斜視図である。
【図3】本実施形態のパーセルシェルフ構造を備えた車両後部における開閉状態を説明する図である。
【図4】比較例としてのパーセルシェルフ構造を備えた車両後部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図1ないし図3を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態のパーセルシェルフ構造は、いわゆるハッチバックタイプの車両Vの中でも荷室が前後方向に奥行きのある車両に適用するのに好適である。また、ハッチバックタイプに限定されず、いわゆるステーションワゴンタイプのような前後方向に奥行きのある車両に適用することも可能である。なお、本実施形態では、「前」は車両のフロント側、「後」は車両のリア側、「上」は鉛直上方側、「下」は鉛直下方側、「左右」は車幅方向側とする。
【0012】
本実施形態のパーセルシェルフ構造は、前側シェルフ10、後側シェルフ20、ストラップ30,30からなるパーセルシェルフ1を備えており、テールゲート2を閉じたときに、前側シェルフ10と後側シェルフ20とで車室内のシートバック3の後方の荷室Qの開口Q1を覆うことができるようになっている(図2参照)。ここでの荷室Qの開口Q1とは、シートバック3と、車両後部の左右両側に設けられたサイドパネル4(右側のみ図示)とで囲まれる領域であり、サイドパネル4の上端縁部4aの高さに位置する領域である。
【0013】
テールゲート2は、跳ね上げ式のものであり、その前側の端部が車両Vのルーフ側に図示しないヒンジおよびダンパを介して回動自在(開閉自在)に取り付けられている。なお、テールゲート2の回動支点となる軸S1は、例えば、車内のシートバック3の上方に位置している。また、テールゲート2は、前側の端部から後側下方へ傾斜する傾斜部2aと、傾斜部2aの後端から略鉛直下方へ延びる鉛直部2bとを有し、傾斜部2aには、リアウインドウガラス(不図示)が取り付けられ、鉛直部2bの外面には、各種ランプ類(不図示)などが取り付けられている。
【0014】
前側シェルフ10は、四角板状に形成され、荷室Qの開口Q1の前側半分を覆う面積を有し、その前端部10sが左右のサイドパネル4(車体)に対して軸S2を支点として回動自在に支持されている。この軸S2は、前記した軸S1に対して鉛直方向(上下方向)下方に位置している。
【0015】
なお、前側シェルフ10を回動自在に支持する構成は特に限定されるものではないが、例えば、前側シェルフ10の前端部10sの左右両端に軸突起(不図示)が形成され、各軸突起が回動自在に挿入される軸受部(不図示)がサイドパネル4に形成されることで、前側シェルフ10を車体側に回動自在に支持することができる。
【0016】
なお、サイドパネル4の上端縁部4aには、テールゲート2を閉じて前側シェルフ10が水平状態となったときに、前側シェルフ10の左右両端の縁部10a,10aが当接して支持される段差状の支持部4b(右側のみ図示)が形成されている。これにより、テールゲート2を閉じたときに、前側シェルフ10が上端縁部4aよりも下方に回動しないようになっている。
【0017】
後側シェルフ20は、略四角板状に形成され、テールゲート2に固定されている。すなわち、後側シェルフ20の後端部20bがテールゲート2の内壁に図示しないボルトなどを介して固定され、前端部20aの左右両端が板状の支持プレート21(左側のみ図示)を介してテールゲート2の傾斜部2aに固定されている。つまり、後側シェルフ20は、テールゲート2に対して固定されており、テールゲート2の回動動作(開閉動作)に連動して(回動動作と同時に)動作するようになっている。なお、後側シェルフ20のテールゲート2に対する取り付け角度θ(図1参照)は、テールゲート2を全閉したときに水平状態となる角度に設定されている。
【0018】
なお、前側シェルフ10および/または後側シェルフ20は、全体が板状のもので形成されていてもよいが、これに限定されるものではなく、周縁部が剛性の高い合成樹脂などで形成され、周縁部を除く部分がメッシュ素材などのシート状のもので構成されたものでもよい。
【0019】
また、前側シェルフ10および/または後側シェルフ20の周縁部を除く部分に巻取可能(または、カーテンのように折畳み可能)なシートを設けて、シートが巻き取られて(折畳まれて)いるときにはパーセルシェルフ1(前側シェルフ10および/または後側シェルフ20)を挟んで上下の空間が連通するように構成してもよい。これにより、シートが巻き取られていないときはその上に荷物を載せることができ、シートが巻き取られているときは前側シェルフ10や後側シェルフ20の高さを越える荷物などを搭載することが可能になる。なお、前側シェルフ10は、サイドパネル4に対して着脱可能に構成されていてもよく、同様に後側シェルフ20は、テールゲート2に対して着脱可能に構成されていてもよい。
【0020】
図2に示すように、前側シェルフ10の後端部10bと、後側シェルフ20の前端部20aとは、それぞれの端面が鉛直方向(上下方向)に沿って平面状に形成されて、テールゲート2が閉じた(全閉した)ときに、後端部10bと前端部20aとが面接触した状態で、前側シェルフ10と後側シェルフ20とが面一になるように構成されている。なお、このような構成に限定されるものではなく、例えば、テールゲート2を閉じたときに、後端部10bの端面と、前端部20aの端面とが互いに上下に重なるように凸状に形成されて、前側シェルフ10と後側シェルフ20とが面一になるような構成であってもよい。
【0021】
ストラップ30は、前側シェルフ10の左右両側に一対設けられ、上端がテールゲート2に接続(連結)され、下端が前側シェルフ10の軸S2よりも後側に取り付けられている。なお、ストラップ30のテールゲート2側の固定位置と前側シェルフ10側の固定位置は、テールゲート2を開放したときの前側シェルフ10の開き角度に応じて適宜設定することができる。また、ストラップ30は、合成繊維などで形成された紐状のものであってもよく、あるいは金属製のワイヤ状のものであってもよい。
【0022】
なお、ストラップ30は、テールゲート2を全閉にしたときのたるみ(弛み)を防止するために、前側シェルフ10にストラップ30が挿通される挿通孔(不図示)を形成するとともに、ストラップ30の下端部に錘(不図示)などを取り付けて、テールゲート2の全閉時にストラップ30の下端が錘の重さによって前側シェルフ10の下方に垂れ下がるように構成してもよい(図示せず)。
【0023】
これにより、テールゲート2を全閉状態から開放する際に、テールゲート2の開き始めにおいては、テールゲート2の回動動作によってストラップ30が挿通孔(不図示)内を移動し、ストラップ30の端部の錘が前側シェルフ10の貫通孔に突き当たった後に、ストラップ30によって吊り上げられて、前側シェルフ10が軸S2を支点として回動する。
【0024】
また、ストラップ30は、テールゲート2に固定する構成に限定されるものではなく、例えば、ストラップ30の上端部に輪やフック(不図示)を形成して、テールゲート2に形成された係止部(不図示)に引っ掛けるようにしてストラップ30を着脱可能に構成してもよい。ストラップ30をテールゲート2から取り外すことで、テールゲート2を開放したときに、前側シェルフ10が可動しない構成にできる。
【0025】
次に、本実施形態のパーセルシェルフ構造におけるパーセルシェルフ1の動作について図3を参照して説明する。まず、図3において実線で示すように、テールゲート2が全閉の状態では、前側シェルフ10の左右の両縁部10a(図1参照)が支持部4bに当接して前側シェルフ10が水平状態となり(図2参照)、後側シェルフ20も水平状態となり、後側シェルフ20の前端部20aが前側シェルフ10の後端部10bと接触して、前側シェルフ10と後側シェルフ20とが同一平面上に位置するようになっている。これにより、荷室Qの開口Q1の全体が前側シェルフ10と後側シェルフ20とで覆われた状態となる(図2参照)。
【0026】
そして、テールゲート2を全閉した状態から開放させると、テールゲート2が軸S1を支点として図中反時計回り方向に回動することにより、後側シェルフ20がテールゲート2と同様に軸S1を支点として図中反時計回り方向に回動する。一方、前側シェルフ10は、テールゲート2が所定角度開いた後にストラップ30が緊張した状態となり、ストラップ30によって吊り上げられ、その後テールゲート2が全開状態となるまでテールゲート2の動作とともに軸S2を支点として反時計回り方向に回動する。
【0027】
このようにしてテールゲート2が図3の破線で示すように全開した状態になると、前側シェルフ10の開放角度がθ1となるように開放し、後側シェルフ20が前側シェルフ10から離れて開放角度θ1よりも大きい角度θ2となるように開放する。
【0028】
ところで、図4において比較例で示すように、パーセルシェルフ100を分割せずに一枚もので形成して前端部に回動支点として軸S2を設けたものでは、パーセルシェルフ100がストラップ101によって吊り上げられるように構成した場合、テールゲート2を前記した実施形態と同様な全開状態まで開放させるには、テールゲート2の回動開始から遅れて(テールゲート2が所定角度開いてから)パーセルシェルフ100を吊り上げるように構成する必要がある。このため、図4に示すように、テールゲート2を全開にしたとしてもパーセルシェルフ100の開放角度θ3を大きくすることができない。
【0029】
そこで、前記したように、本実施形態のパーセルシェルフ構造によれば、パーセルシェルフ1を前側シェルフ10と後側シェルフ20の2分割で構成し、前側シェルフ10の前端部10sに回動支点としての軸S2を設けるとともに、後側シェルフ20をテールゲート2に固定して構成したことにより、図3において領域Rで示すように、図4に示すパーセルシェルフ構造におけるパーセルシェルフ100よりも、テールゲート2を開放したときの荷室Qに臨む上方向への開口を拡大することが可能になる。これにより、荷物の出し入れなどの操作時に操作者に対する圧迫感(パーセルシェルフが邪魔になるなど)を低減することが可能になる。また、領域Rで示すように大きく開放できることにより、荷室Qの奥側(シートバック3側)での荷物(物品)の出し入れが容易になる。
【0030】
なお、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、例えば、本実施形態では前側シェルフ10の前端部10sに回動支点としての軸S2を形成したが、前側シェルフ10の前端部10sより後側にヒンジ部による回動支点としての軸S2を設けたものでもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 パーセルシェルフ
2 テールゲート
2a 傾斜部
2b 鉛直部
3 シートバック
4 サイドパネル
4b 支持部
10 前側シェルフ
10a 縁部
10s 前端部
20 後側シェルフ
30 ストラップ
Q 荷室
Q1 開口
S1,S2 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に2分割されたパーセルシェルフであって、
前記パーセルシェルフは、前端部が車体に回動可能に支持された前側シェルフと、テールゲートに固定された後側シェルフと、前記前側シェルフの前端部から後側へ離れた位置と前記テールゲートとを接続するストラップとからなり、
前記テールゲートが開いた状態では、前記前側シェルフと前記後側シェルフとは離れており、
前記テールゲートが閉じた状態では、前記前側シェルフと前記後側シェルフとは接触していることを特徴とするパーセルシェルフ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−57008(P2011−57008A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206702(P2009−206702)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】