説明

パーソナル加湿機

【課題】本発明は使用者の周辺の湿度を上昇させる個人使用の加湿機に関するもので、風速および吹出し湿度の調節を容易に設計することができるものである。
【解決手段】そしてこの目的を達成するために本発明は、下方に吸込み口と上面に吹出し口を有する本体ケースと、この本体ケース3内で、吸込み口2から吹出し口に送風される通風路6に加湿手段4と送風手段5と加を備え、吹出し口1には、吹出し口1の上方から本体ケース3における前方へ風向を変化させる風向調節手段8を設け、風向調節手段8の風下側で風向方向に開口を有する筒状のノズル10を着脱自在に備え、ノズル10の本体ケース3における正面側の下端部から本体ケース3における背面側へ突出した第1の突出部11を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、使用者の近くに置いて運転するパーソナルユースに適したパーソナル加湿機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の加湿機の構成は以下のようになっていた。
【0003】
従来より、事務所等の広い空間では、湿度の低い乾燥した時期に大型の加湿機を複数台設置して適度な加湿をおこなっていたが、設置スペースや水の補給等の運転管理の関係から設置台数に限度があり、快適な湿度状態にまでは至っていないこともあった。
【0004】
また、勉強部屋のように在室者が一箇所に長時間座っている所では、その在室者のまわりのごく限られた空間が快適な湿度状態になれば目的が達成される。
【0005】
このようなことから、使用者の周囲を効率よく加湿して、使用者のまわりを快適な湿度状態にするパーソナル加湿機が提案されている。
【0006】
特許文献1に記載の加湿機は、吹き出し部に旋回及び着脱の可能な吹出口構造を有し、任意の方向へ吹出しや、吹出し口を交換することで吹出し噴流を拡散状態や収束状態に切り替えて吹き出す構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−213632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来例における課題は、特許文献1に記載の加湿機では、筐体の正面に備えた着脱可能なノズルより吹き出された高湿度の加湿空気を使用者へ向けて吹き出すことで、使用者の周辺の湿度を上昇させる構成のものが知られている。しかし、前記構成の加湿機では、風量と風速および吹出し湿度の設計が困難であり、風量が高い場合は風速も高くなるため使用者にドラフト感を与え、さらに吹出し湿度が低くなるため適度な加湿が行えないという問題があった。また、風量が低い場合は風速も低くなるため使用者に無風感を与え、さらに吹出し直後の空気に含まれる高い湿度が使用者に到達するまでに蒸散しやすくなり、結果として適度な加湿をおこなえない問題があった。これらを解決するためには、送風手段、加湿手段、ノズル形状を調節し、適切な風速と吹出し湿度の設計が必要であるが、パーソナル加湿をおこなうためには騒音や本体サイズの調節も同時におこなう必要があり、多岐にわたる調節が必要になるという課題があった。
【0009】
さらにドラフト感や無風感は個人の感性によるもののため、設計者の意図した風速設定が必ずしも使用者の満足する風速ではないという課題があった。
【0010】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決して、ノズル形状の設計をおこなうのみで使用者にドラフト感もしくは無風感を与えず適切な加湿をおこなえるパーソナル加湿機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そしてこの目的を達成するために本発明は、下方に吸込み口と上面に吹出し口を有する本体ケースと、この本体ケース内で、前記吸込み口から前記吹出し口に送風される風路に送風手段と加湿手段とを備え、前記吹出し口には、前記吹出し口の上方から本体ケースにおける前方へ風向を変化させる風向調節手段を設け、この風向調節手段の風下側で風向方向に開口を有する筒状のノズルを着脱自在に備え、このノズルの本体ケースにおける正面側の下端部から本体ケースにおける背面側へ突出した第1の突出部を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
これにより、初期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明は、下方に吸込み口と上面に吹出し口を有する本体ケースと、この本体ケース内で、前記吸込み口から前記吹出し口に送風される風路に送風手段と加湿手段とを備え、前記吹出し口には、前記吹出し口の上方から本体ケースにおける前方へ風向を変化させる風向調節手段を設け、この風向調節手段の風下側で風向方向に開口を有する筒状のノズルを着脱自在に備え、このノズルの本体ケースにおける正面側の下端部から本体ケースにおける背面側へ突出した第1の突出部を設けたものである。
【0014】
すなわち、吹出し口の一部がノズルの第1の突出部によって塞がれているため、ノズルの装着前に比べて加湿空気の風量が減少することになる。このように、風量が減少すると室内空気が加湿手段を通過する時間が長くなる、つまり室内空気が加湿手段から発湿された湿度を吸収する時間が長くなるため、加湿空気の単位体積あたりの水分量が増えて、高湿度に加湿されることになる。結果として、ノズル形状の設計をおこなうのみで、ドラフト感もしくは無風感のない好みの風速でお肌に対して潤いのある加湿をおこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1のパーソナル加湿機の概略図
【図2】同パーソナル加湿機の概略断面を示す図
【図3】同パーソナル加湿機のノズル装着部分の詳細断面を示す図
【図4】同パーソナル加湿機のノズルの外観形状を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態の添付図面を用いて説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1および図2に示すように、本発明のパーソナル加湿機は、天面に吹出し口1を形成し、後部側面の下部に吸込み口2を形成した略円筒形状の本体ケース3と、本体ケース3内に配設された加湿手段4および送風手段5とからなる。
【0018】
本体ケース3内には、加湿手段4と送風手段5を介して吸込み口2と吹出し口1とを結ぶ通風路6を形成している。この通風路6の内側であり、本体ケース3における背面側にイオンを発生するイオン発生手段9を備えている。
【0019】
加湿手段4は、吸込み口2の下流側の通風路6に位置し、送風手段5は、加湿手段4と吹出し口1との間の通風路6に位置している。この送風手段5は操作スイッチ(図示せず)によって風量を強ノッチもしくは弱ノッチに切り替えることができる。
【0020】
吹出し口1の上部には、仰角方向に回動自在な風向調節手段8を設けている。この風向調節手段8は、略平面状の平板7とその両端部に下方へ伸びる突壁7aを備えることでコの字形状を形成している。平板7は通風路6の延長線上から見た吹出し口1の投影面の形状を覆う形状をしている。突壁7aの下方側面には、外周側へ突出する円筒形の突起をそれぞれ備えることで一本の軸となす回動軸(図示せず)を備えている。この回動軸が、吹出し口1の内側の両側面に備えた回動軸受け(図示せず)と回動可能に嵌合している。これにより、風向調節手段8は、吹出し口1で仰角方向に回動自在なものである。
【0021】
風向調節手段8には、着脱可能なノズル10が装着されている。このノズル10は、開口が長方形の筒形状であり、ノズル10の一方側の開口部を本体ケース3における正面側から風向調節手段8の内側へ挿入することで装着でき、ノズル10の他方側の開口部から加湿空気14が吹出るものである。
【0022】
本実施形態における特徴は、ノズル10の本体ケース3における正面側の下端部から本体ケース3における背面側へ突出した第1の突出部11を設けた点である。具体的には、図2から図4に示すように、ノズル10の本体ケース3における正面側の下端部、つまりノズル10の一方側の開口部の下端部から本体ケース3における背面側へ、斜め下に向けて曲板形状に突出した第1の突出部11を備えている。この第1の突出部11は、吹出し口1の本体ケース3における正面側の一部を塞ぐ位置関係で設けている。さらに、第1の突出部11の下面には下方向に伸びると共に本体ケース3の通風路6の内壁と接面する第2の突出部12を備えている。
【0023】
このような構成において、送風手段5によって、本体ケース3の吸込み口2から吸込まれた室内空気13が加湿手段4を通過し、この加湿手段4で加湿された加湿空気14は、本体ケース3の吹出し口1から上方向へ吹出される。この時、加湿空気14が風向調節手段8の平板7に当たることで風向を平板7の角度方向、つまり使用者によって任意に設定された角度の方向に変更される。その後に、ノズル10の一方側の開口部へ流入して、他方側の開口部から室内へ送風される。ここで、吹出し口1から吹き出された加湿空気14の一部は、風向調節手段8へ流入する際に、第1の突出部11に衝突し、加湿空気14の風量が減少するものである。すなわち、吹出し口1の一部がノズル10の第1の突出部11によって塞がれているため、ノズル10の装着前に比べて加湿空気14の風量が減少することになる。このように、風量が減少すると室内空気13が加湿手段4を通過する時間が長くなる、つまり室内空気13が加湿手段4から発湿された湿度を吸収する時間が長くなるため、加湿空気14の単位体積あたりの水分量が増えて、高湿度に加湿されることになる。結果として、ノズル形状の設計をおこなうのみで、ドラフト感もしくは無風感のない好みの風速でお肌に対して潤いのある加湿をおこなうことができる。
【0024】
また、ノズル10の風下側の開口部の面積を変えずに風量が減少することでノズル10から送風される加湿空気14の風速も低下することになり、高湿度・低風速の加湿空気14で室内へ吹き出されることになる。
【0025】
また、ノズル10の風下側の開口部の面積を減少させることで風量が減少し、より高湿度な加湿空気14になると共に風速を増すことができるため、これらを調節することで、加湿手段4や送風手段5の特性を変更することなく高湿度を維持したまま設計者の任意の風速の加湿空気14で送風できるパーソナル加湿機を容易に設計することができ、さらには使用者のお肌に対して潤いのある加湿空気14を送風することができる。
【0026】
また、風向調節手段8にノズル10を装着する前後で風速が変化する。例えば使用者が強ノッチで使用した時には風速が強すぎるためドラフト感を感じる、もしくは弱ノッチで使用した時には風速が弱すぎるために感知できずに無風感を感じる。このような場合に、風向調節手段8へノズル10を装着して弱ノッチで加湿空気14を送風する。これにより、ノズル10を未装着の弱ノッチに比べて風速が増加することから、強ノッチと弱ノッチのそれぞれの風速の間の風速で使用することができ、ドラフト感および無風感を感じることがない高湿度の加湿空気14の送風を使用者が好みの応じて任意に選択することができる。
【0027】
なお、使用者が意図的にドラフト感を強く感じたい場合においても、風向調節手段8へノズル10を装着して強ノッチで加湿空気14を送風することで、ノズル10の未装着時の強ノッチで送風する場合に比べて強いドラフト感を感じ、例えば夏季における涼風感を感じることができる。
【0028】
すなわち、機器が備えている既機能の速調ノッチの風速に加えて使用者がノズル装着時の風速を選択できることから、風速に対する使用者の選択幅が広がり、例えばノズル未装着のパーソナル加湿機の使用時にドラフト感もしくは無風感を感じた場合に、好みに応じて風速を選択することが可能にすることができる。
【0029】
また、第1の突出部11により、吹出し口1の本体ケース3における正面側が塞がれることで、加湿空気14が吹出し口1の本体ケース3における背面側より流入してノズル10の風下側の開口部から室内へ送風されることから、吹出し口1の本体ケース3における背面側もしくは側面側が塞がれた場合に比べて、風向調節手段8およびノズル10の内部を長く通過することになる。それによって風向の整流効果が高くなることから、加湿空気14の拡散を抑えて室内へ送風することができる。すなわち、ノズルに第1の突出部を設けることで、最短のノズル長で風向に安定性のある送風を行うことができる。結果として、加湿空気14の蒸散による湿度低下を最低限に抑えて使用者へ送風する効率の高い加湿をおこなうことができる。
【0030】
また、風向調節手段8は使用者が任意の角度に設定することで設定された角度方向へ送風することができ、さらにノズル10は風向調節手段8に挿入するのみで装着されているため、風向調節手段8の送風する角度に関わらず前述のノズル10の効果を有することができる。結果として、ノズル装着時においても風向調節手段で風向角度を設定可能なため、使用者の好みの角度へ加湿空気を送風することができるものである。
【0031】
また、第1の突出部11が斜め下に向けて曲板形状に突出していることで、加湿空気14が吹出し口1から風向調節手段8へ流入して風向を変化させる際に、急激な風路の角度変更や風路面積の縮小・拡大がなく、第1の突出部11で斜めにガイドされながら風向を徐々に変化させるため、通風時の圧力損失の増加を最小限に抑えることができ、ひいては入力・騒音・振動の上昇を抑えることができ、さらには送風手段や本体ケースのサイズを小さくすることができる。
【0032】
また、加湿空気14が吹出し口1から風向調節手段8へ流入する際に、加湿空気14の一部は吹出し口1の一部を塞ぐ第1の突出部11に追突して吹き出しせず、本体内部に駐留する駐留加湿空気15となる。ここで、第1の突出部11の下面には、下方向に伸びると共に本体ケース3の通風路6の内壁と接面する第2の突出部12を備えている。これによって、その後、一方の駐留加湿空気15は通風路6へ戻り、再度吹出し口1からノズル10を介して送風されが、他方の駐留加湿空気15は第1の突出部11の外壁面に沿って移動した後に第2の突出部12に当り、第2の突出部12と第1の突出部11の外壁面の稜線に沿って通風路6へ戻り再度吹出し口1から送風するため、結果的に駐留加湿空気15がノズル10と吹出し口1の間より漏洩することがなく、加湿空気14を高湿度に保つ効果的な加湿送風ができ、使用者のお肌の水分量を上昇することができる。
【0033】
また、加湿空気14が通風路6を介して吹出し口1から送風する時は、ノズル10の第1の突出部11が吹出し口1の本体ケース3における正面側を塞いでいるため、吹出し口1の本体ケース3における背面側から集中して送風されることになる。つまり、通風路6のイオン発生手段9を備えた側を集中して送風されることになるため、イオン発生手段9から発生したイオンを加湿空気14へ放出しやすくなり、素早く使用者へ送風することができる。それによって、イオンの持つ効果(抗ウイルス、抗菌、脱臭など)を素早く使用者へ供給することから使用者の生活環境の向上を迅速におこなうことができる。また、一般的にイオンは寿命が短いが、パーソナル加湿機内から短時間でイオンを送風することで、送風に到る時間短縮分だけ使用者周辺での有効寿命を延ばすことができ、それにより使用者周辺のイオン濃度が上昇し、より強い前述のイオンの持つ効果を出すことができる。
【0034】
また、吹出し口1から送風される加湿空気14が、通風路6の延長線上から見た吹出し口1の投影面の形状で上方向へ吹き出され、風向調節手段8に受風されて風向変更する際に、風向調節手段8の投影面の形状が吹出し口1の投影面の形状を覆う形状のため、風向調節手段8の受風漏れがなく、吹出し口1から吹き出す全ての加湿空気14の送風方向を変更することができ、効果的に加湿空気14を風向調節手段8を介してノズル10から吹き出すことができ、加湿空気14の湿度の上昇やそれに伴う使用者のお肌の水分量の上昇をおこなうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように本発明は、下方に吸込み口と上面に吹出し口を有する本体ケースと、この本体ケース内で、前記吸込み口から前記吹出し口に送風される風路に送風手段と加湿手段とを備え、前記吹出し口には、前記吹出し口の上方から本体ケースにおける前方へ風向を変化させる風向調節手段を設け、この風向調節手段の風下側で風向方向に開口を有する筒状のノズルを着脱自在に備え、このノズルの本体ケースにおける正面側の下端部から本体ケースにおける背面側へ突出した第1の突出部を設けたことを特徴とするものであり、ノズル形状の設計をおこなうのみで、ドラフト感もしくは無風感のない好みの風速でお肌に対して潤いのある加湿空気を送風することができるものである。
【0036】
従って、家庭用や事務所用などの、パーソナル加湿機として活用が期待されるものである。
【符号の説明】
【0037】
1 吹出し口
2 吸込み口
3 本体ケース
4 加湿手段
5 送風手段
6 通風路
7 平板
7a 突壁
8 風向調節手段
9 イオン発生手段
10 ノズル
11 第1の突出部
12 第2の突出部
13 室内空気
14 加湿空気
15 駐留加湿空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に吸込み口と上面に吹出し口を有する本体ケースと、この本体ケース内で、前記吸込み口から前記吹出し口に送風される風路に送風手段と加湿手段とを備え、前記吹出し口には、前記吹出し口の上方から本体ケースにおける前方へ風向を変化させる風向調節手段を設け、この風向調節手段の風下側で風向方向に開口を有する筒状のノズルを着脱自在に備え、このノズルの本体ケースにおける正面側の下端部から本体ケースにおける背面側へ突出した第1の突出部を設けたことを特徴とするパーソナル加湿機。
【請求項2】
前記第1の突出部は、平板形状または曲面形状で斜め下方向へ突出したことを特徴とする請求項1記載のパーソナル加湿機。
【請求項3】
前記ノズルの前記第1の突出部の下面から下方向に伸びると共に、前記本体ケースの前記風路の内壁と接面する第2の突出部を備えた請求項1または2記載のパーソナル加湿機。
【請求項4】
前記本体ケース内にイオン発生手段を設け、このイオン発生手段は、前記本体ケースにおける背面側の前記風路の内壁からイオンが発生することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のパーソナル加湿機。
【請求項5】
前記風向調節手段は、吹出し口の吹出し方向から見た投影面形状が吹出し口の開口面形状を覆うことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のパーソナル加湿機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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