説明

ヒアルロナンの産生のための方法および手段

本発明は、ヒアルロナンを合成する真菌細胞および真菌、ならびにこのような真菌を調製するための方法に関し、そしてこれらの真菌細胞または真菌の助けによりヒアルロナンを調製するための方法にも関する。更に、本発明は、ヒアルロナンを調製するための真菌の使用ならびにヒアルロナンを含む食品または飼料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロナンを合成する真菌細胞および真菌ならびにこのような真菌を調製するための方法に関しそしてこれらの真菌細胞または真菌の助けによりヒアルロナンを調製するための方法にも関する。更に、本発明は、ヒアルロナンおよびヒアルロナン含有食品または飼料を調製するための真菌の使用に関する。
【0002】
ヒアルロナンは、グルクロン酸とN−アセチル−グルコサミンの交互する分子からなる天然に存在する非分岐状の、線状ムコ多糖(グルコサミノグルカン)である。ヒアルロナンの基本的構築ブロックは、二糖グルクロン酸−β−1,3−N−アセチル−グルコサミンからなる。ヒアルロナンにおいて、これらの反復単位は互いにβ−1,4結合により結合している。
【0003】
薬学では、ヒアルロン酸という用語がしばしば使用される。ヒアルロナンは大抵の場合にポリアニオンとして存在しそして遊離酸とし存在しないので、以下において、好ましくはヒアルロナンという用語が使用されるが、各用語は両方の分子形態を包含するものと理解されるべきである。
【0004】
ヒアルロナンは、ヒアルロナンの更なる性質に加えて、Lapcik等(1998, Chemical Reviewa 98(8), 2663-2684)による概説論文に記載されている、例えば、高分子電解質の性質、粘弾性、水に結合する高い能力、ゲル形成の性質などの格別の物理化学的性質を有する。ヒアルロナンの特定の性質は、とりわけ問題のヒアルロナンの分子量および分子量分布により決定される。
【0005】
ヒアルロナンは、脊椎動物の細胞外連結組織および体液の成分である。ヒトでは、ヒアルロン酸は、すべての体細胞、特に間充織細胞の細胞膜により合成され、そして結合組織、細胞外マトリックス、臍帯、関節液、軟骨組織、皮膚および眼のガラス体に特に高い濃度で身体において遍在している(Bernhard Gebauer, 1998, Inaugural-Dissertation, Virchow- Klinikum Medizinische Fakultat Chartite der Humboldt Universitat zu Berlin; Fraser et al., 1997, Journal of Internal Medicine 242, 27-33)。
【0006】
最近、ヒアルロナンは、動物非脊椎生物(軟体動物)にも見出された(Volpi and Maccari, 2003, Biochimie 85, 619-625)。
【0007】
更に、ある病原性グラム陽性菌(Streptococcus groupAおよびC)およびグラム陰性菌(Pasteurella)は、これらのバクテリアをそれらのホストの免疫系による攻撃に対して保護するエキソ多糖(exopolysaccharides)としてヒアルロナンを合成する。何故ならば、ヒアルロナンは非免疫原性物質であるからである。
【0008】
Chlorella属の単細胞緑藻類に感染するウイルスであって、そのいくらかのParamecium種における内部共生物として存在するウイルスは、単細胞緑藻類に対して該ウイルスによる感染後ヒアルロナンを合成する能力を与える(Graves et al., 1999, Virology 257, 15-23)。これまでに、これは、ヒアルロナンの合成が証明された植物の分類界(systematic realm)からの唯一の例である。
【0009】
ヒアルロナンを合成する真菌の界(realm of the fungi)(菌類界(mycota))からの生物は、これまでに記載されていない。WO03060063はリコンビナントに発現されたヒアルロナンシンターゼを調製するためのSaccharomyces cerevisiaeの使用を記載しているが、トランスジェニック酵母の助けによるヒアルロナンの調製は記載されていない。遺伝子的に変化させたSaccharomyces cerevisiae細胞の助けによるヒアルロナンの合成は、不可能とさえ思われる。何故ならば、それらはヒアルロナンシンターゼの基質(UDP―グルクロン酸)の調製のために必用な酵素UDP−グルコース6−デヒドロゲナーゼを明らかに欠いているからである(Deangelis and Achyuthan, 1996, J Biological Chemistry 271(39), 23657-23660)。
【0010】
ヒアルロナン合成の触媒作用は、単一膜結合酵素(single membrane-integrated enzyme)または膜会合酵素(membrane-associated enzyme)、ヒアルロナンシンターゼにより行なわれる。これまでに研究されたヒアルロナンシンターゼは、2つのグループ:クラスIのヒアルロナンシンターゼおよびクラスIIのヒアルロナンシンターゼに分類することができる(DeAngelis, and CMLS, Cellular and Molecular Life Sciences 56, 670-682)。
【0011】
脊椎動物のヒアルロナンシンターゼは、同定されたアイソザイムにより更に区別される。異なるアイソザイムは、アラビア数字を使用してそれらの同定の順に表される(例えば、hsHAS1、hsHAS2、hsHAS3)。
【0012】
細胞を取り囲んでいる培地への細胞膜を横切る合成ヒアルロナン分子の移動の機構は、まだ十分に解明されていない。以前の仮説は、細胞膜を横切る輸送はヒアルロナンシンターゼ自体により行なわれるであろうということを仮定している。しかしながら、より最近の結果は、細胞膜を経由するヒアルロナン分子の輸送は、関連した輸送タンパク質によってエネルギー依存性輸送によって行なわれることを示している。したがって、能動輸送タンパク質の合成が阻害されているStreptococcus株を突然変異誘発により発生させた。これらの株は、対応する野生型バクテリア株より少ないヒアルロナンを合成した(Ouskova et al., 2004, Glycobiology 14(10), 931-938)。ヒト繊維芽細胞における既知の輸送タンパク質に対して特異的阻害方式で作用する作用物質の助けにより、産生されるヒアルロナンの量およびヒアルロナンシンターゼの活性の両方を減少させることが可能であることが示された(Prehm and Schumacher, 2004, Biochemical Pharmacology 68, 1401-1410)。
【0013】
ヒアルロナンの格別の性質は、種々の分野の用途、例えば薬学、化粧品工業、食品および飼料の製造、技術的用途(例えば滑剤として)等の如き用途における多数の可能性を与える。ヒアルロナンが最近使用されている最も重要な用途は、医薬および化粧品分野にある(例えば、Lapcik et al., 1998, Chemical Reviews 98(8), 2663-2684, Goe and Benfield, 1994, Drugs 47(3), 536-566)。
【0014】
医薬分野では、ヒアルロナン含有製品は、最近は関節症の関節内処置のために使用されそして眼科では眼の手術のために使用される。誘導体化されたいわゆる架橋されたヒアルロナンは、関節疾患を処置するために使用される(Fong Chong et al., 2005), Appl Microbial Biotechnol 66, 341-351)。ヒアルロナンは競走馬の関節障害を処置するためにも使用される。更に、ヒアルロン酸は、例えば点眼薬およびナサリア(nasalia)の形態で、乾燥した粘膜を湿らすのに役立ついくらかの鼻科学(rhinologics)の成分である。ヒアルロナン含有注射剤は、鎮痛薬および抗リウマチ薬として使用される。ヒアルロナンまたは誘導体化されたヒアルロナンを含むパッチは、傷の治癒に使用される。皮膚薬として、ヒアルロナン含有ゲルイムフンジ(hyaluronane-containing gel imfungi)は形成外科における皮膚変形を矯正するために使用される。
【0015】
薬理学的用途では、高分子量のヒアルロナンを使用することが好ましい。
【0016】
化粧品医薬では、ヒアルロナン製剤は、なかでも最も適当な皮膚充填材である。限定された期間、ヒアルロナンを注射することにより、しわを滑らかにしたり唇の容積を増加させることが可能である。
【0017】
化粧品製品、特に皮膚クリームおよびローションでは、ヒアルロナンは、その高い水結合能力のためモイスチャーライザーとしてしばしば使用される。
【0018】
例えば長期間にわたる有効化合物のコントロールされた放出を保証する有効化合物のための担体として、有効化合物をリンパ系にターゲティングされた方式で輸送する有効化合物のための担体として、または軟膏として塗布された後、有効化合物が相対的に長期間皮膚に残存することを保証する有効化合物として、などの医薬および化粧品分野での用途の更なる可能性が、Lapcik et al.(1998, Chemical Reviews 98(8), 2663-2684)に記載されている。医薬分野でのヒアルロナン誘導体の使用は、更なる研究努力を必用とするが、最初の結果は、大きな潜在力を既に示した(Lapcik et al. 1998, Chemical Reviews 98(8), 2663-2684 )。
【0019】
更に、ヒアルロナン含有製剤は、関節症の予防および軽減のために動物(例えば、イヌ、ウマ)においても使用されうるいわゆるニュートラシューティカルズ(nutraceauticals)(食品補助剤)として販売されている。
【0020】
商業的目的で使用されるヒアルロナンは、最近動物組織(とさか)から単離されまたはバクテリア培養物を使用して発酵により調製される。US4,141,973は、とさか
からまたは臍の緒からヒアルロナンを単離するための方法を記載している。動物組織(例えばとさか、臍の緒)は、ヒアルロナンのほかに、ヒアルロナンに関連した更なるムコ多糖、例えばコンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパラン硫酸およびヘパリンも含有する。更に、動物生物は、ヒアルロナンに特異的に結合しそして生物における最も広い範囲の機能のために必要な、例えば肝臓におけるヒアルロナンの分解、細胞移動のためのリード構造体としてのヒアルロナンの機能、エンドサイトーシスの調節、細胞表面でのヒアルロナンの固着もしくはヒアルロナンネットワークの形成のために必要なタンパク質(ヒアラドヘリン(hyaladherins))を含有する(Turley, 1991, Adv Drug Delivery Rev 7, 257 ff.; Laurent and Fraser, 1992, FASEB J. 6, 183 ff.; Stamenkovic and Aruffo, 1993, Methods Enzymol. 245, 195 ff; Knudson and Knudson, 1993, FASEB 7, 1233 ff.)。
【0021】
ヒアルロナンのバクテリアによる産生のために使用されるStreptococcus株はもっぱら病原性バクテリアである。培養期間中、これらのバクテリアは、培養培地中に放出される(発熱性)外毒素および溶血素(ストレプトリシン、(特にα−およびβ−溶血素)も産生する(Kilian, M.; Streptococcus and Enterococcus. In: Medical Microbiology. Greenwood, D.; Slack, RCA; Peutherer, J. F. (Eds.) Chapter 16. Churchill Livingstone, Edinburgh, UK: pp. 174-188, 2002, ISBN 0443070776)。これはStreptococcus株の助けにより調製されたヒアルロナンの精製および単離をより困難にする。特に医薬用途では、製剤における外毒素および溶血素の存在は問題である。
【0022】
US4,801,539は、突然変異を起こしたバクテリア株(Streptococcus zooedemicus)の発酵によるヒアルロナンの調製を記載する。使用される突然変異を起こしたバクテリア株はβ溶血素をもはや合成しない。達成された収率は、培養物リットル当たりヒアルロナン3.6gであった。
【0023】
EP4,0694616は、使用される培養条件下に、ストレプトリシンは全く合成されないが、増加した量のヒアルロナンが合成される、Streptococcus zooedemicusまたはStreptococcus equiを培養するための方法を記載している。達成された収率は、培養物リットル当たりヒアルロナン3.5gであった。
【0024】
培養期間中、Streptococcus株は、酵素ヒアルロニダーゼを培養培地に放出し、その結果として、この産生系では、分子量も精製期間中に減少する。ヒアルロニダーゼネガティブStreptococcus株の使用または培養期間中ヒアルロニダーゼの産生が阻害されるヒアルロナンの製造方法の使用が、US4,782,046に記載されている。達成された収率は、培養物リットル当たりヒアルロナン2.5g以下であり、達成された最大平均分子量は3.8×10Daであり、分子量分布は2.4×106〜4.0×106であった。
【0025】
US20030175902およびWO03054163は、Bacillus subtilisにおけるStreptococcus equisimilisからのヒアルロナンシンターゼの異種発現の助けによるヒアルロナンの調製を記載する。十分な量のヒアルロナンの産生を達成するために、ヒアルロナンシンターゼの異種発現のほかに、Bacillus細胞におけるUDP−グルコースデヒドロゲナーゼの同時的発現も必要である。US20030175902およびWO03054163は、Bacillus subtilisの助けによる産生で得られたヒアルロナンの絶対量を述べていない。しかしながら、達成されたヒアルロナンの量は、Streptococcusの株の発酵によって得られる量より高くない。(Fong Chong et al., 2005), Appl Microbiol Biotechnol 66, 341-351)。Bacillus subtilisの助けによるヒアルロナンの産生において、約4.2×106Daの最大平均分子量が達成される。しかしながら、この平均分子量は、Streptococcus equisimilisからのヒアルロナンシンターゼ遺伝子をコードする遺伝子とBacillus subtilisからのUDP−グルコースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子がamyQプロモーターのコントロール下にBacillus subtilisゲノムに組み込まれていると共に、同時にBacillus subtilis内在性cxpY遺伝子(P450シトクロームオキシダーゼをコードする)が不活性化されている、リコンビナントBacillus 株についてのみ達成された。Bacillus 株の助けにより産生されたヒアルロナンの分子量も、Streptococcus株によって産生されたヒアルロナンに比べて増加することができなかった(Fong Chong et al., 2005), Appl Microbiol Biotechnol 66, 341-351)。
【0026】
バクテリア株の発酵によるヒアルロナンの産生は、高いコストと関連している。何故ならば、バクテリアは、高価なコントロールされた培養条件下にシールされた無菌の容器中で発酵されなければならないからである(例えば、US4,897,349参照)。更に、バクテリア株の発酵により産生されうるヒアルロナンの量は、各場合に存在する製造設備により限定される。ここでは、発酵槽は、物理的法則の結果として、過度に大きな培養容積で建造することができないことも考慮されなければならない。十分な産生のために必用な培養培地と、外側から供給された物質(例えば、バクテリアのための必須の栄養ソース、pHを調節するための試薬、酸素)との均一な混合を特に挙げることができ、これは、大きな発酵槽では、できるとしとも、まったく高い技術的費用によってのみ確保することができる。
【0027】
動物生物からのヒアルロナンの精製は、動物組織において、ヒアルロナンに特定的に結合する他のムコ多糖およびタンパク質の存在により複雑化される。患者では、動物タンパク質により汚染されたヒアルロナン含有医薬製剤の使用は、特にもし患者が動物タンパク質(例えばニワトリ卵白)に対してアレルギー性であるならば、身体の望まれない免疫学的反応をもたらすことがある(US4,141,973)。更に、満足すべき量および純度で動物組織から得ることができるヒアルロナンの量(収率)は、低く(とさか0.079%重量/重量、EP0144019、US4,782,048)、これは大量の動物組織の処理を必要とする。動物組織からのヒアルロナンの単離における更なる問題は、精製期間中ヒアルロナンの分子量が減少するということにある。何故ならば、動物組織はヒアルロナン分解性酵素(ヒアルロニダーゼ)も含有するからである。
【0028】
既に述べたヒアルロニダーゼおよび外毒素の他に、Streptococcus株は、薬理学的製品中に存在するとき、患者の健康の危険を有する外毒素も産生する。科学的研究では、市販のヒアルロナン含有医薬製品すら検出可能な量のバクテリア外毒素を含有することが示された(Dick et al., 2003, Eur J Opthalmol. 13(2), 176-184)。Streptococcus株の助けにより産生されたヒアルロナンの更なる欠点は、単離されたヒアルロナンがとさかから単離されたヒアルロナンよりも低い分子量を有するということである(Lapcik et al.1998, Chemical Reviews 98(8), 2663-2684) 。US20030134393は、特に明白なヒアルロナンカプセル(スーパーカプセル化された)を合成するヒアルロナンを産生するためのStreptococcus株の使用を記載している。発酵後に単離されたヒアルロナンは、9.1×106Daの分子量を有していた。しかしながら、収率は、リットル当たり350mgにすぎなかった。
【0029】
ヒアルロナンは格別の性質を有するけれども、それは、その欠乏および高価格により、工業的用途には使用されるとしても、まれにしか使用されない。
【0030】
従って、本発明の目的は、十分な量および品質でヒアルロナンの提供を可能としそして工業的用途ならびに食品および飼料の分野での用途にすらヒアルロナンを提供することを可能とする手段および方法を提供することである。
【0031】
この目的は、特許請求の範囲に記載の態様により達成される。
【0032】
従って、本発明は、真菌細胞または真菌、特に分類Basidiomycota門(the systematic division Basidiomycota)の真菌細胞または真菌であって、それらがヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子を含むことを特徴とする真菌細胞または真菌に関する。
【0033】
好ましい態様では、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸は、本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌のゲノムに組み込まれる。
【0034】
本発明は、ヒアルロナンを合成する真菌細胞または真菌、特に分類Basidiomycota門の真菌細胞または真菌も提供する。好ましい態様は、ヒアルロナンを合成する本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌である。
【0035】
ヒアルロナンは、本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌から単離されうる。従って、本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌は、先行技術と比較して、それらは少ない費用でヒアルロナンを産生するために大きな面積で培養することができるという利点を与える。これは、ヒアルロナンがその不足および高価格により最近使用されていない工業的用途にすら十分な量でヒアルロナンを提供する可能性をもたらす。
【0036】
本発明の更なる利点は、相対的に合理的な価格のそしてしばしば例えば農業および/または林業における廃棄物として存在する基質上で真菌を培養することができるということにある。
【0037】
本発明の文脈では、用語「ヒアルロナン」は、互いにβ−1,4結合により結合した二糖グルクロン酸β−1,3−N−アセチル−グルコサミンの複数の基本的構築ブロックを含む遊離酸(ヒアルロン酸)および線状グルコサミンのポリアニオンの形態の両方を意味するものと理解されるべきである。
【0038】
本発明の文脈では、用語「ヒアルロナンシンターゼ」(EC2.4.1.212)は、基質UDP−グルクロン酸(UDP−GlcA)およびN−アセチル−グルコサミン(UDP−GlcNAc)からヒアルロナンを合成するタンパク質を意味するものと理解されるべきである。ヒアルロナン合成は、下記の反応スキームに従って触媒される:
nUDP−GlcA + nUDP−GlcNAc→[GlcA−β−1,3−GlcNAc]+2nUDP
【0039】
ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子および対応するタンパク質配列は、なかでも下記の生物について記載されている:ウサギ(Oryctolagus cuniculus)ocHas2(EMBL AB055978.1, US20030235893)、ocHas3(EMBL AB055979.1, US20030235893);ヒヒ(Papio anubis)paHas1(EMBL AY463695.1);カエル(Xenopus laevis)xlHas1(DG42)(EMBL M22249.1, US200302335893)、xlHas2(EMBL AF168465.1)、xlHas3(EMBL AY302252.1);ヒト(Homo sapiens)hsHAS1(EMBL D84424.1, US 20030235893)、hsHAS2(EMBL U54804.1, US 20030235893)、hsHAS3(EMBL AF232772.1, US 20030235893);マウス(Mus musculus)、mmHas1(EMBL D82964.1, US 20030235893)、mmHAS2(EMBL U52524.2, US 20030235893) 、mmHas3(EMBL U86408.2, US 20030235893);ウシ(Bos taurus)btHas2(EMBL. AJ004951.1、US 20030235893);ニワトリ(Gallus gallus) ggHas2 (EMBL. AF106940.1, US 20030235893);ラット(Rattus norvegicus)mHas1(EMBL AB097568.1, Itano et al., 2004, J. Biol. Chem. 279(18) 18679-18678)、rnHas2 (EMBL AF008201.1);rnHas3 (NCBI NM_172319.1, Itano et al., 2004, J. Biol. Chem. 279(18) 18679-18678);ウマ(Equus caballus) ecHAS2(EMBL AY056582.1, GI:23428486)、ブタ(Sus scrofa) sscHAS2 (NCBI NM_214053.1, GI: 47522921)、sscHas 3(EMBLAB159675)、ゼブラフィッシュ(Danio rerio) brHas1 (EMBL AY437407)、brHas2 (EMBL AF190742.1) brHas2 (EMBL AF190743.1) ;Pasteurella multocida pmHas (EMBL AF036004.2);Streptococcus pyogenes spHas(EMBL, L20853.1, L21187.1, US6,455,304, US 20030235893);Streptococcus equis seHas (EMBL AF347022.1, AY173078.1)、Streptococcus uberis suHasA (EMBL AJ242946.2, US 20030235893) 、Streptococcus equisimilis seqHas (EMBL AF023876.1, US 20030235893)、Sulfolobus solfataricus ssHAS(US 20030235893)、Sulfolobus tokodaii stHas(AP000988.1)、Paramecium bursaria Chlorella virus 1, cvHAS (EMBL U42580.3, PB42580, US 20030235893) 。
【0040】
本発明の文脈では、用語「ゲノム」は、真菌細胞中に存在する全体の遺伝子物質を意味するものと理解されるべきである。核のほかに、他の区画(例えばミトコンドリア)も遺伝子物質を含有することは当業者に知られている。
【0041】
本発明の文脈では、用語「安定に組み込まれた核酸分子」は、真菌のゲノムへの核酸分子の組み込みを意味するものと理解されるべきである。安定に組み込まれた核酸分子は、対応する組み込み部位の複製期間中、それは組み込み部位に隣接するホストの核酸配列と共に倍増され、その結果、複製されたDNA鎖における組み込み部位は、複製のためのマトリックスとして役立つ読み取り鎖(read strand)におけると同じ核酸配列により取り囲まれている。好ましくは、核酸分子は、核ゲノムに安定に組みこまれる。
【0042】
真菌細胞または真菌のゲノムへの核酸分子の安定な組み込みは、遺伝的方法および/または分子生物学の方法により証明され得る。真菌細胞のゲノムまたは真菌のゲノムへの核酸分子の安定な組み込みは、該核酸分子を受け継いだ子孫において、安定に組み込まれた核酸分子が、親の世代におけると同じゲノム環境において存在することを特徴とする。真菌細胞のゲノムまたは真菌のゲノムにおける核酸配列の安定な組み込みの存在は、当業者に知られている方法を使用して、とりわけサザーンブロット分析の助けによりまたはRFLP分析(制限断片長多型)の助けにより(Nam et al., 1989, The Plant cell 1, 699-705; Leister and Dean, 1993, The Plant Jouenal 4(4), 745-750)、PCRに基づく方法、例えば増幅されたフラグメントの長さの差の分析(増幅断片長多型、AFLP)(Castiglioni et al., 1998, Genetics 149, 2039-2056; Meksem et al., 2001, Molecular Genetics and Genomics 265, 207-214; Meyer et al., 1998, Molecular and General Genetics 259, 150-160) により、または制限エンドヌクレアーゼを使用して開裂された増幅したフラグメント(Cleaved Amplified Polymorphic Sequences, CAPS)(Konieczny and Ausubel, 1993, The Plant Journal 4, 403-410; Jarvis et al.,1994, Plant Molecular Biology 24, 685-687; Bachem et al., 1996, The Plant Journal 9(5), 745-753)を使用して証明されうる。
【0043】
更なる好ましい態様では、本発明は、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子が、それがヒアルロナンシンターゼクラスIをコードすることを特徴とする、本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌に関する。
【0044】
これまでに研究されたヒアルロナンシンターゼは、2つのグループに分類することができる:クラスIのヒアルロナンシンターゼおよびクラスIIのヒアルロナンシンターゼ(DeAngelis, 1999, CMLS, Cellular and Molecular Life Science 56, 670-682)。この分類は、反応機構の生化学的研究および問題のヒアルロナンシンターゼをコードするアミノ酸配列の分析に本質的に基づいている。クラスIは、とりわけStreptococcus pyogenesからのヒアルロナンシンターゼ(spHas)、Streptococcus equisimilis からのヒアルロナンシンターゼ(seHas)、 Paramecium bursaria Chlorella virus 1からのヒアルロナンシンターゼ(cvHas) および脊椎動物の既知のヒアルロナンシンターゼ(Xenopus laevis, xlHas; Homo sapiens; hsHAS, Mus musculus, mmHas) を含む。
【0045】
クラスIヒアルロナンシンターゼは、417〜588アミノ酸のアミノ酸配列を有する。クラスIヒアルロナンシンターゼは、細胞膜に組み込まれている且つ多数の(5〜7)膜会合領域を有するタンパク質である。更なる分子構築ブロックによるヒアルロナンの伸長は、ポリマーの還元末端で起こる。クラスIのヒアルロナンシンターゼにより使用される適当なアクセプター分子はこれまで開示されていない。
【0046】
今日まで、Pasteurellaからのヒアルロナンシンターゼは、クラスIIヒアルロナンシンターゼの唯一の知られた代表である。そのタンパク質配列は、972アミノ酸を有する。それは、そのC末端に、細胞膜における局在化の責任を担うアミノ酸配列を含有する可溶性タンパク質である(Jing and DeAngelis, 2000, Glycobiology 10, 883-889)。相互作用は、多分細胞膜と会合した分子を介して起こる。クラスIIの酵素の場合に、ヒアルロナンは、非還元末端での延長により合成される(DeAngelis, 1999, J. Biol. Chem 274, 26557-26562)。クラスII酵素によるヒアルロナンの合成は、アクセプター分子を必要としないが;しかしながら、ヒアルロナンオリゴマー(DP4)がアクセブターとして使用されそして合成の速度はアクセプターを加えることにより増加することが示された(DeAngelis, 1999, J. Biol. Chem 274, 26557-26562)。
【0047】
好ましい態様では、本発明は、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子が、それが脊椎動物からのヒアルロナンシンターゼまたはウイルスヒアルロナンシンターゼをコードすることを特徴とする、本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌に関する。好ましくは、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子は、両生類からのヒアルロナンシンターゼまたは藻類に感染するウイルスのヒアルロナンシンターゼをコードする。
【0048】
藻類に感染するウイルスに関しては、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子は、特に好ましくは、Chlorella感染性ウイルスのヒアルロナンシンターゼ、特に好ましくは、Paramecium bursaria Chlorella virus1のヒアルロナンシンターゼをコードする。
【0049】
両生類からのヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子に関しては、カエルヒアルロナンシンターゼ、特にXenopus laevisからのヒアルロナンシンターゼ1が好ましい。
【0050】
更なる好ましい態様では、本発明は、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子が、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子のコドンはヒアルロナンシンターゼの親生物のヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子のコドンに比べて改変されている、ことにより特徴付けられている、本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌に関する。特に好ましくは、真菌細胞または真菌であってそのゲノムに組みこまれているかまたは組みこまれるであろう真菌細胞または真菌のコドンの使用の頻度に適合するように、該ヒアルロナンシンターゼのコドンが改変されている。特に好ましくは、ヒアルロナンシンターゼのコドンは、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸配列がいかなるATに富んだ領域も有していないように改変される。コード核酸配列内に存在するATに富んだ領域が真菌における発現の減少した速度をもたらすことがあることを当業者は知っている(Scholtmeijer et al., 2001, Applied and Environmental Microbiology 67(1), 481-483)。
【0051】
遺伝子コードの縮重により、アミノ酸は、1つ以上のコドンによりコードされうる。異なる生物では、それぞれのアミノ酸をコードするコドンは、異なる頻度で使用される。コード核酸配列のコドンを、真菌細胞または真菌であってそのゲノムに発現されるべき配列が組み込まれるべき真菌細胞または真菌における該コドンの使用の頻度に適合させることは、翻訳されたタンパク質の増加した量および/または特定の真菌細胞または真菌における問題のmRNAの安定性に寄与することができる。問題の真菌細胞または真菌におけるコドンの使用の頻度は、ある種のコドンがある種のアミノ酸をコードするために使用される頻度についてできる限り多くの問題の生物のコード核酸配列を検査することにより当業者によって決定されうる。ある種の生物のコドンの使用の頻度は、当業者に知られておりそしてコンピュータープログラムを使用して簡単且つ迅速な方法で決定することができる。適当なコンピュータープログラムは、公的にアクセス可能であり、そしてとりわけインターネット上で無料で与えられる(例えば、http://gcua.schoedl.de/; http://www.kazusa.or.jp/codon/; http://www.entelechon.com/eng/cutanalysis.html)。
【0052】
コード核酸配列のコドンを、真菌細胞または真菌であってそのゲノムに発現されるべき配列が組み込まれるべき真菌細胞または真菌における該コドンの使用の頻度に適合させることは、in vitro突然変異誘発または好ましくは遺伝子配列のde novo合成により行われうる。核酸配列のde novo合成のための方法は、当業者に知られている。de novo合成は、例えば、最初に個々の核酸オリゴヌクレオチドを合成し、該オリゴヌクレオチドをそれに相補性のオリゴヌクレオチドとハイブリダイゼーションさせ、それによりそれらはDNA二本鎖を形成し、次いで個々の二本鎖オリゴヌクレオチドを、所望の核酸配列が得られるように、互いにライゲーションすることにより行うことができる。コドンが使用される頻度のある種のターゲット生物への適合を含む核酸配列のde novo合成は、このサービスを提供する会社に頼むこともできる(例えば、Entelechon GmbH, Regensburg, Germany)。
【0053】
更なる好ましい態様では、本発明は、本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌であって、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子は、それが、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64に示されたアミノ酸配列を有するヒアルロナンシンターゼをコードすることを特徴とする、本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌に関する。特に好ましくは、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子は、それが、配列番号2または配列番号42に示されたアミノ酸配列を有するヒアルロナンシンターゼをコードすることを特徴とする。
【0054】
更なる好ましい態様では、本発明は、本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌であって、アルロナンシンターゼをコードする核酸分子は、それが、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63に示された核酸配列を含むことを特徴とする、本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌に関する。特に好ましくは、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子は、それが、配列番号1または配列番号41に示された核酸配列を含み、特に好ましくはヒアルロナンシンターゼが配列番号3または配列番号63に示された核酸配列を有することを特徴とする。
【0055】
Paramecium bursaria Chlorella virusヒアルロナンシンターゼをコードする合成核酸分子を含むプラスミドIC341−222は、ブダペスト条約に従って番号DSM16664の下に2004年8月25日にDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH, Mascheroder Weg 1b, 38214 Brunswick, Germanyに寄託された。配列番号4に示されたアミノ酸配列は、プラスミドIC341−222に組み込まれた核酸配列のコード領域に由来することができそしてParamecium bursaria Chlorella virusヒアルロナンシンターゼをコードする。
【0056】
従って、本発明は、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子は、それがタンパク質をコードし、該タンパク質のアミノ酸配列はプラスミドDSM1664に挿入された核酸配列のコード領域に由来することができる、ことを特徴とする、本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌にも関する。
【0057】
核酸を真菌細胞に(安定に)組み込むために多数の方法が利用可能である(概説:Olmedo-Monfil et al., 2004, Methods in MolecularBiology Series 267, 297-314 and Casas-Flores et al., 2004, Methods in Molecular Biology Series 267, 315-326 in “Recombinant Gene Expression”, 2nd Edition, 2004, Balbas and Lorenz eds, Human Press, ISSBN: 1-59259-774-2)。当業者に知られた方法の例は、外来DNAを真菌細胞に導入することを含む、即ち、問題の真菌細胞中に存在する核酸配列のほかに、プロトプラストエレクトロポレーション(WO9502691; Agaricus bisporus; Van de Rhee et al., 1996, Mol Gen Gent 250, 252-258, Agaricus bisporus; Noel and Labarere, 1994, Current Genetics 25(5), 432-437, Agrocybe aegerita)、ポリエチレングリコールの助けによるプロトプラストトランスフォーメーション(Ogawa et al., 1998, Appl Microbiol Biotechnol 49, 285-289, Coprinus cinereus; Shuren and Wessels, 1994, Curr Genet 26(2), 179-183, Schizophyllum commune)、制限酵素の添加を伴うポリエチレングリコールの助けによるプロトプラストトランスフォーメーション(REMI=制限酵素媒介DNA組み込み(Restriction enzyme-mediated DNA integration), Sato et al., 1998, Biosci. Biotechnol. Biochem. 62(12), 2346-2350, Lentinus eodes)、塩化カルシウムの添加を伴うポリエチレングリコールの助けによるプロトプラストトランスフォーメーション(Yanai et al., 1996, Biosci. Biotechnol. Biochem 60(3), 472-475, Pleurotus ostreatus; Honda et al., 2000, Curr Genet 37, 209. 212, Pleurotus ostreatus)およびDNAが相同性組換えによる真菌ゲノムに組み込まれるプロトプラストトランスフォーメーション(van de Rhee et al., 1996, Curr genet 30, 166-173, Agaricus bisporus)、の助けにより導入される核酸配列、を含む。Agrobacterium媒介遺伝子トランスファーの助けにより真菌を成功的にトランスフォーメーションすることも可能であった(Godio et al., 2004 Curr Genet 46, 287-294, Hypholoma sublateritium; Mikosch et al., 2001, Curr Genet 39, 35-39, Agaricus bisporus; Chen et al., 2000, Applied and Environmental Microbiology 66(10), 4510-4513; US2002 0016982; WO02 00896, Agaricus bisporus, WO98 45455; US6,436,643, Agaricus bisporus, Pleurotus ostreatus; Hanif et al., 2002, Curr Genet 41(3), 183-188 Suillus bovinus)。
【0058】
本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌のゲノムに安定に組み込まれたヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子を有する本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌は、中でも、それらがそれらのゲノムに安定に組み込まれたヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子の少なくとも1つのコピーを有することにより同定されうる。これは、例えばサザーンブロット分析によりチェックすることができる。
【0059】
更に、本発明に従う真菌細胞および本発明に従う真菌は、好ましくは、下記の識別特徴の少なくとも1つを有する:本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌は、ゲノムに安定に組み込まれそしてヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子の転写物を含む。これらは、例えば、ノーザンブロット分析またはRT−PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)により同定されうる。好ましくは、本発明に従う真菌細胞および本発明に従う真菌は、ヒアルロナンシンターゼをコードするゲノムに安定に組み込まれた核酸分子によりコードされるタンパク質を含む。これは、例えば、免疫学的方法により、特にウエスタンブロット分析によりチェックすることができる。本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌が、活性なヒアルロナンシンターゼを含むという事実は、好ましくは、本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌から単離された膜画分から調製される再構成された膜におけるヒアルロナンシンターゼの活性を検出することにより検出されうる。ヒアルロナンシンターゼの活性を検出するための適当な方法は、DeAngelis and Achyuthan (1996, J Biol. Chem. 271(39), 23657-23660) に記載されている。
【0060】
ある種のタンパク質と特異的に反応する、即ち、該タンパク質に特異的に結合する抗体を調製するための方法は、当業者に知られている(例えば、Lottspeich and Zorbas(Eds), 1998, Bioanalytik [bioanalysis], Spektrum akad. Verlag, Heidelberg, Berlin, ISBN3-8274-0041-4)。ある会社(例えばEurogentec, Belgium)は、サービスとしてこのような抗体の調製を提供する。ヒアルロナンシンターゼを特異的に認識する抗体は、例えば、Jacobson et al.(2000, Biochem J. 348, 29-35) に記載されている。
【0061】
ヒアルロナンを合成する本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌は、それらにより合成されるヒアルロナンを単離しそしてその構造を与えることにより同定されうる。
【0062】
真菌組織は、それがヒアルロニダーゼを含有しないという利点を有するので、簡単且つ迅速な単離方法を、本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌中のヒアルロナンの存在を確めるために使用することができる。このために、検査されるべき真菌組織に水を加え、次いで真菌組織を機械的に粉砕する(例えばビーズミル、ワーリングブレンダー等の助けにより)。必要ならば、次いでより多くの水を懸濁液に加えることができ、そして細胞デブリスおよび水に不溶性の成分を次いで遠心により除去する。次いで遠心後に得られた上清中のヒアルロナンの存在は、例えば、ヒアルロナンに特異的に結合するタンパク質を使用して証明することができる。ヒアルロナンに特異的に結合するタンパク質の助けによりヒアルロナンを検出するための方法は、例えばUS5019498に記載されている。US5019498に記載の方法を行うためのテストキット(例えば、Corgenix, Inc., Colorado, USA, Prod. No. 029-001からのヒアルロン酸(HA)テストキット)は市販されている(例えば、Corgenix, Inc., Colorado, USA, Prod. No. 029-001からのヒアルロン酸(HA)テストキット、一般的方法項目6も参照)。平行して、ヒアルロニダーゼで得られた遠心上清のアリクォートを最初に消化し、次いで上記したようにヒアルロナンに特異的に結合するタンパク質の助けによりヒアルロナンの存在を確めることが可能である。平行なバッチにおけるヒアルロニダーゼの作用によって、その中に存在するヒアルロナンは分解され、その結果完全な消化の後に、有意な量のヒアルロナンを検出することはもはや可能ではない。
【0063】
遠心上清におけるヒアルロナンの存在は、例えばIR、NMRまたは質量分析法などの他の分析方法を使用して更に確めることもできる。
【0064】
本発明は、真菌細胞または真菌のゲノムに安定に組み込まれそしてヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子が、真菌細胞における転写を開始する調節エレメント(プロモーター)に連結されていることを特徴とする本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌を更に提供する。好ましい態様では、プロモーターは、組織特異的プロモーター、特に好ましくは子実体において転写を開始するプロモーターである。
【0065】
ヒアルロナンシンターゼをコードする本発明に従う核酸分子の発現のために、これらは、好ましくは真菌細胞における転写を確実にする調節DNA配列に連結される。これらは、特にプロモーターを含む。発現のために適当なのは、一般に真菌細胞において活性なすべてのプロモーターである。
【0066】
プロモーターは、真菌の発達のある時点でまたは外部因子により決定された時点で構成的にまたはある組織においてのみ発現が行われるように選ばれうる。プロモーターは、真菌に対しておよびヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子に対して、相同性または異種であることができる。
【0067】
真菌細胞における転写を開始するための適当なプロモーターの例は、Agaricus bisporusからの(Van de Rhee et al., 1996, Mol Gen Genet 250, 252-258; Chen et al., 2000; Applied and Environmental Microbiology 66(10), 4510-4513; US20020016982)およびLentinus edodesからの(Hirano et al., 2000, Mol Gen Genet 263, 1047-1052)からグリセルアルデヒド3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーター、priA遺伝子Lentinus edodesのプロモーター(Yanai et al., 1996, Biosci. Biotech. Biochem 60(3), 472-475; Kajiwara et al., 1992, Gene 114(2), 173-178)またはLentinus edodes ras遺伝子のプロモーター(Yanai et al., 1996, Biosci. Biotech. Biochem 60(3), 472-475 )である。植物における外来核酸の発現のためにしばしば使用されるカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターも、真菌細胞における転写を開始することが示された(Sun et al., 2002, Molecular Biotechnology 20(3), 239-244)。真菌細胞における転写の開始を媒介する更なるプロモーターに対する概説は、Burns et alに記載されている(2005, Fungal Genetics and Biology, in Press, prepublished online at www. Sciencedirect, com, 05.01.2005, doi: 10. 1016/j.fgb. 2004. 11. 005)。
【0068】
真菌における外からの影響により誘導可能なプロモーターの例は、Phanerochaete chrysosporium manganese peroxidase 1(mnp 1)遺伝子のプロモーターである(Mab et al., Applied and Environmental Microbiology 67(2), 948-955; Godfrey et al., 1990, Gene93(1), 119-124)。
【0069】
子実体特異的プロモーターの例は、例えば、Agararicus bisporusからのハイドロフォビンA(Hydrophobin A)(hypA)、ハイドロフォビンB(hypB)およびハイドロフォビンC(hypC)遺伝子のプロモーター(De Groot et al., 1999, Microbiology 145, 1105-1113)、Flammulina velutipes ハイドロフォビン遺伝子(fvh1)プロモーター(Ando et al., 2001, Curr Genet 39(3), 190-197)、Schizophyllum communeハイドロフォビン遺伝子Sc1およびSc4のプロモーター(Schuren and Wessels, 1990, Gene 90(2), 199-205)、Pleurotus ostreatusハイドロフォビン遺伝子fbh1およびpoh1のプロモーター(Penas et al., 2004, Mycologica 96(1), 75-82)、Agaricus bisporus abst1遺伝子(mag1遺伝子とも呼ばれる)のプロモーター(WO04039985, EMBL. Acc. No.: AJ299400.1)またはAgaricus bisporus rafe遺伝子のプロモーター(WO04039985, EMBL. Acc. No.:AJ853495.1)である。子実体特異的プロモーターを有する他の遺伝子および該遺伝子を同定および単離する可能性は、例えば、De Groot et al.(1997, Microbiology 143, 1993-2001)またはHirano et al.(2004, Biosci. Biotech. Biochem. 68, 468-472)に記載されている。
【0070】
本発明の文脈では、用語「組織特異的」は、主として或る組織に特徴(例えば転写の開始)が制限されることを意味するものと理解されるべきである。更に詳しくは、下記の組織:菌糸体および子実体は、Basidiomycota門の真菌において区別され得、菌糸体がハプロイド菌糸体および二核菌糸体に更に分類されそして子実体が柄(stipe)、ピレウス(pireus)、しゅう(lamellae)および担子器(basidia)に更に分類されることが可能である。
【0071】
転写物にポリAテイルを付加するのに役立つターミネーション配列が存在することが更に可能である。
【0072】
本発明の文脈では、用語「ターミネーション配列」は、RNA転写物のポリアデニル化のための1つ以上の認識配列を有する核酸配列(ポリアデニル化シグナル)および/または転写ブロッカーの機能を有する1つ以上の核酸配列(転写中断シグナル)を意味するものと理解されるべきである。
【0073】
ポリアデニル化シグナルは、転写物を安定化することにおいて機能を有すると考えられる。更に、ポリアデニル化シグナルは、転写物があまりにも長くなりすぎることを防止する、即ち、第2遺伝子の配列(例えばプロモーター配列)を追加的に含有する第1遺伝子の転写物が産生されるのを防止するのに役立つ(Eggermont and Proudfoot, 1993, EMBO J. 12(5), 2539-2548)。この種のエレメントは、文献に記載されている(例えば、Schuren and Wessels, 1990, Gene 90, 199-205; Penas et al., 2004, Mycologica 96(1), 75-82; Ando et al., 2001, Curr Genet 39(2), 190-197; Sirand-Pugnet et al., 2003, Curr Genet 44, 124-131; Sirand-Pugnet and Labarele, 2002, Curr Genet 44, 31-42; Yanai et al., 1996, Biosci. Biotech. Biochem. 60(3), 472-475; Godio et al., 2004, Curr Genet 46, 287-294; Hirano et al., 2000, Mol Gen Genet 263, 1047-1052; Chen et al., 2000, Applied and Environmental Microbiology 66(10), 4510-4513)。
【0074】
ターミネーションブロッカーは、ポリアデニル化シグナルの有効な効能の機能に帰される、即ち、転写ブロッカーの存在は、もしも第2のより強いポリアデニル化シグナルが転写ブロッカーの下流に更に存在としても、第1のより弱いポリアデニル化シグナルが使用されるという結果をもたらす(Enriquez-Harris et al., 1991, EMBO J. 10(7), 1833-1842)。
【0075】
転写されたRNAを安定化するために、転写されるべき外来核酸分子がイントロン配列を有することが必要なことがある(Lugones et al., 1999, Molecular Microbiology 32(4), 681-689; Scholtmeijer et al; 2001, Applied and Environmental Microbiology 67(1), 481-483; Ma et al., Applied and Environmental Microbiology 67(2), 948-955, Burns et al. (2005, Fungal Genetics and Biology, in Press, prepublished online at www.sciencedirect.com, 05.01.2005, doi:120.1016/j.fgb.2004.11.005)。従って、イントロン配列がプロモーターとコード領域との間および/またはターミネーション配列とコード領域との間および/または外来核酸分子のコード領域内に位置することも可能である。単一イントロン配列または複数のイントロン配列が存在することがここでは可能である。対応する天然に存在する真菌遺伝子のイントロンを使用することが好ましい。
【0076】
本発明は、更に、本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌であって、該真菌細胞のゲノムまたは該真菌のゲノムに安定に組み込まれそしてヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子がイントロン配列を含む、本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌に関する。真菌細胞の遺伝子中に天然に存在するイントロン配列が好ましい。
【0077】
真菌細胞は、当業者に知られている方法によりトランスフォーメーションおよび/または増殖させることができる。
【0078】
従って、本発明は、本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌に由来する真菌細胞であって、それらが由来するそれらの母細胞が含むヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子を含む真菌細胞に関する。
【0079】
真菌はそのライフサイクル期間中種々の発達相を経ることは当業者に知られている。分類Basidiomycota門の真菌は、通常菌糸体と子実体の形態学的に識別可能な組織を有する。菌糸からなる菌糸体は、異なる遺伝子変異体(一倍体または二核体)において存在することができる。二核ライフ相は、通常接合因子に関して遺伝的に異なる一倍体菌糸体細胞の融合(体細胞接合)から出現する。一倍体菌糸体と二核形態において存在する菌糸体の両方とも、無限の方式で成長することができる、即ち、それらは栄養的に増殖することができる。二核菌糸体により形成された子実体は、大抵二核細胞からなる。子実体の特殊化された細胞である担子器では、通常関連した核の融合(核融合)が起こり、次いで減数分裂(性的増殖)が起こる。それから産生された一倍体核は、適当な基質上での発芽後に再び一倍体菌糸体を形成する担子胞子のゲノムを構成する。この基本的ライフサイクルからの逸脱は知られている。従って、例えば、すべての培養されたAgaricus bisporus代表の担子胞子は、通常各場合に2つの一倍体核を含有し、これはその後に発芽して菌糸を与え、この菌糸は直ちに二核菌糸体を形成する。二核菌糸体の存在下では、第2菌糸体との先立つ融合なしに、子実体が直接形成されることが可能である。しかしながら、まれな場合に、単核Agaricus bisporus担子胞子が産生されることも可能である。菌糸体または子実体を形成する細胞が多核である、即ち、それらは2つより多くの核を有することが、Agaricus bisporus代表でしばしば実情である(Kothe, 2001, Appl Microbiol Biotechnol 56, 602-612)。
【0080】
上記したとおり、本発明に従う真菌細胞は再生されて真菌を与えることができる。
【0081】
従って、本発明は、本発明に従う真菌細胞を含む真菌に関する。
【0082】
本発明の文脈では、用語「真菌」は、問題の真菌の種々の発達相のいかなる発現も意味すると理解されるべきである。該発現は一倍体、二核または多核真菌細胞を有する菌糸体および/または二核もしくは多核真菌細胞を有する子実体および/または担子胞子であることができる。
【0083】
従って本発明は、本発明に従う一倍体、二核もしくは多核真菌細胞を有する真菌菌糸体および/または本発明に従う二核もしくは多核真菌細胞を有する子実体にも関する。
【0084】
本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌は、好ましくは、分類Basidiomycetes綱(カラカサタケ(toadstools))の真菌細胞または真菌(カラカサタケ(toadstoola))、好ましくは、分類Hymenomycotidae亜綱(傘のある真菌、より最近の命名法によればAgaricomycotidaeとも呼ばれる)、特に好ましくは、分類Agaricales目の真菌(しゅうを有する(gill-bearing)きのこ)、特に好ましくは、分類Agaricaceae科(きのこ)の真菌である。特に好ましい態様では、本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌は、Agaricus属の真菌細胞または真菌、特に特別に好ましくは、Agaricus bisporus種の真菌細胞または真菌である。本発明に関連して使用された真菌の分類は、より最近の知見に基づいておりそしてAinsworth and Bisby’s Dictionary of the Fungi(9th Edition, Utrecht NL, 2001, ISBN 085199377X)に従う。上記したとおり、真菌は、当業者に知られている方法を使用して、性的および栄養的の両方で増殖することができる。
【0085】
従って、本発明は、本発明に従う真菌の増殖物質であって、それは、本発明に従う真菌が含むヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子を含むことを特徴とする、本発明に従う真菌の増殖物質にも関する。
【0086】
ここで、用語「増殖物質」は、栄養的または性的方式で子孫を産生するために適当な真菌のこれらの成分を包含する。栄養的増殖のために適当なのは、本発明に従う一倍体、二核もしくは多核真菌細胞を有する真菌菌糸体(fungal mycelia)または本発明に従う二核もしくは多核真菌細胞を有する子実体の細胞である。性的増殖物質は、1つ以上の核を有する胞子(担子胞子)に関する。
【0087】
本発明は、本発明に従う真菌細胞を含むおよび/またはヒアルロナンを含む本発明に従う真菌の加工可能な部分または消費可能な部分にも関する。
【0088】
本発明の文脈では、用語「加工可能な部分」は、工業的プロセスのための原料ソースとして、医薬製品を調製するための原料ソースとしてまたは化粧品製品を調製するための原料ソースとして使用される、食品または飼料を調製するために使用される真菌組織を意味すると理解されるべきである。好ましい加工可能な部分は、本発明に従う真菌の子実体である。
【0089】
本発明の文脈では、用語「消費可能な部分」は、ヒト用の食品として役立つまたは動物飼料として使用される真菌組織を意味すると理解されるべきである。好ましい消費可能な部分は、本発明に従う真菌の子実体である。
【0090】
本発明は、好ましくは、ヒアルロナンを含む真菌の増殖物質、加工可能な部分または消費可能な部分に関する。ヒアルロナンを合成する真菌の増殖物質、加工可能な部分または消費可能な部分は、特に好ましい。
【0091】
本発明の更なる利点は、本発明に従う加工可能な部分または消費可能な部分がヒアルロナンを含むということにある。従って、これらは、ヒアルロナンを単離することができる原料として適当であるのみならず、予防的または治療的性質を有する食品/飼料として直接使用することもできまたは予防的または治療的性質を有する食品/飼料の調製のために使用することもできる(例えば骨関節症の予防のため、US6,607,745)。従って、例えば、ニュートラシューティカルを調製するために本発明に従う真菌もしくは本発明に従う真菌の一部を使用するとき、またはそれらを直接食品/飼料として使用するとき、いわゆるニュートラシューティカルとして発酵により調製されたまたは動物組織から単離されたヒアルロナンを加えることはもはや必要ではない。ヒアルロナンの高い水結合能力によって、本発明に従う真菌の加工可能な部分または消費可能な部分は、固化した食品/飼料を調製するとき、より少ない粘稠剤(thickners)が使用されるべきであるという利点を更に有する。従って例えば、パケットスープ(packet soup)などの乾燥した「コンビニエンス食品」の製造のために、本発明に従う真菌の本発明に従う加工可能な部分または消費可能な部分の使用は、より少ない粘稠剤(例えばデンプン)が添加される必要のあることをもたらす。これは、例えばこのような製品の製造コストを低くする。
【0092】
本発明は、更に、
a)ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子を真菌細胞のゲノムに組み込み、
b)真菌を工程a)の真菌細胞から再生し、そして
c)もして適当ならば、工程b)の真菌の助けにより更なる真菌を発生させる、
ヒアルロナンを合成する真菌を調製するための方法を提供する。
【0093】
工程b)に従う真菌の再生は、当業者に知られている方法により行うことができる(例えば、”Plant Cell Culture Protocols”, 1999, edt. By R.D.Hall, Humana Press, ISBN0-89603-549-2に記載されている)。
【0094】
真菌を調製するための本発明に従う方法の工程c)に従う更なる真菌の発生は、例えば、栄養性増殖または性的増殖により行うことができる。ここでは、性的増殖は好ましくはコントロールされた方式で行われ、即ち、或る性質を持つ選ばれた真菌を互いに交雑育種させそして増殖させる。選択は、工程c)に従って発生させた更なる真菌が、真菌のゲノムに組み込まれた、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子を有するおよび/またはそれらがヒアルロナンを合成するような方式で行われる。
【0095】
真菌を調製するための本発明に従う方法の好ましい態様では、プロセス工程b)の後に続く追加のプロセス工程b)−1において、選ばれた真菌は、それらのゲノムに安定に組み込まれた、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子を含む。
【0096】
更なる好ましい態様では、真菌を調製するための本発明に従う方法は、プロセス工程b)またはb)−1の後に続く、ヒアルロナン合成真菌を同定するプロセス工程を有する。
【0097】
更なる態様では、本発明は、工程a)におけるヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子が、
a)ヒアルロナンシンターゼクラスIをコードすることを特徴とする核酸分子、
b)脊椎動物ヒアルロナンシンターゼまたはウイルスヒアルロナンシンターゼをコードすることを特徴とする核酸分子、
c)両生類からのヒアルロナンシンターゼまたは藻類に感染するウイルスのヒアルロナンシンターゼをコードすることを特徴とする核酸分子、
d)クロレラ感染性ウイルスのヒアルロナンシンターゼまたはカエルからのヒアルロナンシンターゼをコードすることを特徴とする核酸分子、
e)Paramecium bursaria Chlorellaウイルス1のヒアルロナンシンターゼまたはXenopus laevisからのヒアルロナンシンターゼ1をコードすることを特徴とする核酸分子、
f)ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子のコドンが、ヒアルロナンシンターゼの親生物のヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子のコドンに比べて改変されていることを特徴とする核酸分子、
g)ヒアルロナンシンターゼのコドンが、真菌細胞であってそのゲノムに該コドンが組み込まれているかもしくは組み込まれるであろう真菌細胞のコドンの使用の頻度に適合するように、該ヒアルロナンシンターゼのコドンが改変されていることを特徴とする、核酸分子、
h)核酸分子が、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64に示されたアミノ酸配列を有するヒアルロナンシンターゼをコードすることを特徴とする、核酸分子、
i)核酸分子がタンパク質をコードしており、該タンパク質のアミノ酸配列がプラスミドDSM16664に挿入された核酸配列のコード領域に由来することができることを特徴とする、核酸分子、
j) 配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61または配列番号63に示された核酸配列を含む核酸分子、
k)プラスミドDSM16664に挿入された核酸配列を含む核酸分子、
l)ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸配列が真菌細胞における転写を開始する調節エレメント(プロモーター)に連結されている、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子、
m)プロモーターが、組織特異的プロモーター、特に好ましくは真菌の子実体において特異的に転写を開始するプロモーターである、j)に従う核酸分子、
からなる群より選ばれる、真菌を調製するための本発明に従う方法に関する。
【0098】
更なる好ましい態様では、真菌を調製するための本発明に従う方法は、本発明に従う真菌を調製するために役立つ。
【0099】
本発明は、真菌を調製するための本発明に従う方法により得ることができる真菌も提供する。
【0100】
本発明は、更に、ヒアルロナンが、本発明に従う真菌細胞から、本発明に従う真菌から、本発明に従う増殖物質から、本発明に従う消費可能な真菌部分から、本発明に従う加工可能な真菌部分からまたは本発明に従う方法により得ることができる真菌から抽出される、工程を含むヒアルロナンを調製するための方法を提供する。好ましくは、このような方法は、本発明に従う培養された真菌細胞、本発明に従う真菌、本発明に従う増殖物質、本発明に従う消費可能な真菌部分、本発明に従う加工可能真菌部分を、ヒアルロナンの抽出の前に回収する、工程、及び特に好ましくは、更に回収の前に本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌の培養の工程も含む。
【0101】
バクテリアまたは動物組織とは対照的に、真菌組織は、ヒアルロニダーゼを持たずそしていかなるヒアラドヘリンも含有しない。従って、既に上記したとおり、真菌組織からのヒアルロナンの抽出は、相対的に簡単な方法の助けにより可能である。必要ならば、ヒアルロナンを含有する真菌細胞または組織の上記した水性抽出物を、例えばエタノールによる反復沈殿などの当業者に知られている方法を使用して更に精製することができる。
【0102】
本発明は、ヒアルロナンを調製するための、本発明に従う真菌細胞、本発明に従う真菌、本発明に従う増殖物質、本発明に従う加工可能な真菌部分、本発明に従う消費可能な真菌部分または本発明に従う方法により得ることができる真菌の使用も提供する。
【0103】
本発明は、更に、本発明に従う真菌細胞の成分、本発明に従う真菌の成分、本発明に従う増殖物質の成分、本発明に従う加工可能な真菌部分の成分、本発明に従う消費可能な真菌部分の成分または本発明に従う方法により得ることができる真菌の成分を含む組成物を更に提供する。組成物は、好ましくは、食品、食品補助品または飼料、医薬製品または化粧品製品である。
【0104】
既に上記したとおり、本発明に従う真菌部分、本発明に従う真菌、本発明に従う増殖物質、本発明に従う回収可能な真菌部分、本発明に従う加工可能な真菌部分、本発明に従う消費可能な真菌部分または本発明に従う方法により得ることができる真菌を使用して食品または飼料を調製することが可能である。しかしながら、ヒアルロナンを単離する必要なしに、工業的用途様の原料としての使用も可能である。従って、例えば、本発明に従う真菌または本発明に従う真菌の部分は、農業的栽培下の区域に適用して土壌の水の結合の増加を達成することができる。更に、本発明に従う真菌または本発明に従う真菌細胞は、乾燥剤(例えば、水分に感受性の品目を出荷するとき使用するための)を調製するためにまたは液体の吸収剤として(例えば、おむつにおけるまたはこぼれた水性液体を吸収させるための)使用することができる。このような用途では、本発明に従う完全な真菌、本発明に従う真菌の一部または本発明に従う粉砕された(例えば挽いた)真菌または本発明に従う真菌部分を必要に応じて使用することが可能である。
【0105】
本発明は、本発明に従う真菌細胞、本発明に従う真菌、本発明に従う増殖物質、本発明に従う加工可能な真菌部分、本発明に従う消費可能な真菌部分または本発明に従う方法により得ることができる真菌を使用する、本発明に従う組成物を調製するための方法も提供する。本発明に従う組成物を調製するための方法は、好ましくは、食品または飼料を調製するための方法、医薬製品を調製するための方法または化粧品製品を調製するための方法である。
【0106】
食品または飼料を調製するための方法は、当業者に知られている。工業的分野における真菌または真菌部分を使用するための方法も当業者に知られている。食品/飼料を調製するためまたは工業的分野における使用のための本発明に従う主題物質を使用することから生じる利点のいくらかは、既に前記されている。
【0107】
本発明は、本発明に従う組成物を調製するための真菌を調製するための、本発明に従う真菌細胞、本発明に従う真菌、本発明に従う増殖物質、本発明に従う加工可能な真菌部分、本発明に従う消費可能な真菌部分または本発明に従う方法により得ることができる真菌の使用にも関する。食品または飼料を調製するため、医薬を調製するためまたは化粧品製品を調製するための、本発明に従う真菌を調製するための、本発明に従う真菌細胞、本発明に従う真菌、本発明に従う増殖物質、本発明に従う加工可能な真菌部分、本発明に従う消費可能な真菌部分または本発明に従う方法により得ることができる真菌の使用が好ましい。
【0108】
本発明の他の目的は、本発明に従う真菌細胞および本発明に従う真菌を発生させるための手段、例えば、DNA分子を提供することである。
【0109】
従って、本発明は、更に、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸配列および分類Basydiomycota門の真菌細胞における転写を開始する核酸配列(プロモーター)を含む、リコンビナント核酸分子を提供する。
【0110】
本発明の文脈では、用語「リコンビナント核酸分子」は、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子の外に、本発明に従うリコンビナント核酸に存在するとおりの組み合わせにおいて天然には存在しない追加の配列を含有する核酸分子を意味すると理解されるべきである。ここでは、挙げられる追加の配列は、いかなる配列であることもでき;好ましくは、それらは異なる機能的エレメントの配列(プロモーター、ポリアデニル化配列および/または転写ブロッカーからなるターミネーション配列、イントロン配列、エンハンサー)、特に好ましくは真菌細胞において活性な調節配列(プロモーター)、および特に好ましくは、真菌の子実体組織において活性な組織特異的調節配列である。本発明に従うリコンビナント核酸分子を発生するための方法は、当業者に知られておりそして例えば、ライゲーションによる核酸分子の連結、遺伝子組換えまたは核酸分子のde novo合成などの遺伝子工学的方法を含む(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3rd edition(2001) Cold Spring Harbour Laboratory Press, Cold Spring Harbour, NY. ISBN: 0879695773, Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons; 5th edition(2002), ISBN: 0471250929参照)。
【0111】
好ましい態様では、リコンビナント核酸分子は、子実体特異的プロモーターおよび/または少なくとも1つのイントロン配列を含む。
【0112】
更なる好ましい態様では、本発明に従うリコンビナント核酸分子は、ターミネーション配列も含む。ここではターミネーション配列は、RNA転写物のポリアデニル化のための1つ以上の認識配列(ポリアデニル化シグナル)および/または転写ブロツカーの機能を有する1つ以上の核酸配列(転写中断(pause)シグナル)を有する核酸配列を含むことができる。
【0113】
本発明の発明的リコンビナント核酸分子の更なる態様は、ベクター、特にプラスミド、コスミド、ウイルスゲノム、バクテリオファージゲノムおよび本発明に従う核酸分子を含有する遺伝子工学において普通に使用される他のベクターである。これらは、好ましくは、真菌細胞をトランスフォーメーションするために適当なベクター、プラスミド、コスミドまたはウイルスゲノムである。本発明に従うリコンビナント核酸分子の助けによる真菌細胞または真菌のトランスフォーメーションは、特に好ましくは、それぞれ、真菌細胞および真菌のゲノムへのヒアルロナンシンターゼをコードする核酸配列の安定な組み込みをもたらす。
【0114】
本発明に従うリコンビナント核酸分子は、リコンビナント核酸分子を有する真菌細胞または真菌の選択を助けるのに使用することができる「選択マーカー」を含有することもできる。真菌細胞のトランスフォーメーションのための選択マーカーは、当業者に知られている。それらは、規定された培地でのトランスフォーメーションされた真菌細胞または真菌の成長を確実にする「栄養要求性」選択マーカーであることができる(Burns et al.(2005, Fungal Genetics and Biology, in Press, prepublished online at www.sciencedirect.com, 05.01.2005, doi: 10: 1016/j.fgb.2004. 11. 005; Ogawa et al., 1998, Appl Microbiol Biotechnol 49, 285-289; Noel and Labarere, 1994, Curr Genet 25, 432-437)、抗生物質に対する抵抗性を付与する選択マーカー(Schuren and Wessels, 1994, Curr Genet 26, 179-183; Hanif et al., 2002, Curr Genet 41, 183.188; Chen et al., 2000, Applied and Environmental Microbiology 66(10), 4510-4513; Sato et al., 1998, Biosci. Biotechnol. Biochem. 62(12), 2346-2350)、除草剤に対する抵抗性を付与する選択マーカー(Yanai et al., 1996, Biosci. Biotechnol. Biochem. 60(3), 472-475; Sun et al., Plant Molecular Biology Reporter 19, 383a-383j)または殺真菌剤に対する抵抗性を付与する選択マーカー(Honda et al., 2000, Curr Genet 37, 209-212)であることができる。他の使用は、例えば、蛍光タンパク質 (Sun et al., Plant Molecular Biology Reporter 19, 383a-383j; Burns et al( 2005, Fungal Genetics and Biology, in Press, prepublished online at www.sciencedirect.com, 05.01.2005, doi: 10. 1016/j.fgb.2004. 11. 005; MA et al., 2001, Applied and Environmental Microbiology 67(2), 948-955, Lugones et al., Molecular Biology 32(4), 681-689)またはβ−グルコロニダーゼ(Sun et al., 2002, Molecular Biotechnology 20, 239-244; Sun et al., Plant Molecular Biology reporter 19, 383a-383j; Yanai et al., 1996, Biosci. Biotechnol. Biochem. 60(3), 472-475 ) の如き「マーカータンパク質」の使用である。
【0115】
選択マーカーをコードする配列は、問題の真菌細胞における改良された発現(転写および/または翻訳)を達成するように改変を含むこともできる(Scholtmeijer et al., Applied and Environmental Microbiology 67(1), 481-483; Burns et al( 2005, Fungal Genetics and Biology, in Press, prepublished online at www.sciencedirect.com, 05.01.2005, doi: 10. 1016/j.fgb.2004. 11. 005; MA et al., 2001, Applied and Environmental Microbiology 67(2), 948-955, Lugones et al., Molecular Biology 32(4), 681-689) 。
【0116】
更なる態様では、本発明は、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸配列が、
a)ヒアルロナンシンターゼクラスIをコードすることを特徴とする核酸分子、
b)脊椎動物ヒアルロナンシンターゼまたはウイルスヒアルロナンシンターゼをコードすることを特徴とする核酸分子、
c)両生類からのヒアルロナンシンターゼまたは藻類に感染するウイルスのヒアルロナンシンターゼをコードすることを特徴とする核酸分子、
d)クロレラ感染性ウイルスのヒアルロナンシンターゼまたはカエルからのヒアルロナンシンターゼをコードすることを特徴とする核酸分子、
e)Paramecium bursaria Chlorella virus1のヒアルロナンシンターゼまたはXenopus laevisからのヒアルロナンシンターゼをコードすることを特徴とする核酸分子、
f)ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子のコドンが、ヒアルロナンシンターゼの親生物のヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子のコドンに比べて改変されていることを特徴とする核酸分子、
g)真菌細胞であってそのゲノムに組みこまれているかもしくは組み込まれるであろう真菌細胞のコドンの使用の頻度に適合するように、該ヒアルロナンシンターゼのコドンが改変されていることを特徴とする核酸分子、
h)核酸分子が、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64に示されたアミノ酸配列を有するヒアルロナンシンターゼをコードすることを特徴とする、核酸分子、
i)核酸分子がタンパク質をコードし、該タンパク質のアミノ酸配列がプラスミドDSM16664に挿入された核酸配列のコード領域に由来することができることを特徴とする、核酸分子、
j) 配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61または配列番号63に示された核酸配列を含む核酸分子、
k)プラスミドDSM16664に挿入された核酸配列を含む核酸分子、
からなる群より選ばれる、本発明に従うリコンビナント核酸分子に関する。
【0117】
本発明は、本発明に従うリコンビナント核酸分子を含有する真菌細胞または真菌も提供する。
【0118】
本発明は、本発明に従う真菌細胞または本発明に従う真菌を調製するための本発明に従うリコンビナント核酸の使用にも関する。
【0119】
本発明は、更に真菌を調製するための本発明に従う方法を行うための本発明に従うリコンビナント核酸の使用に関する。
【0120】
配列の説明
配列番号1:Paramecium bursaria Chlorella virus1のヒアルロナンシンターゼをコードする核酸配列、
配列番号2:Paramecium bursaria Chlorella virus1のヒアルロナンシンターゼのアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は、配列番号1に由来することができる。
配列番号3:Paramecium bursaria Chlorella virus1のヒアルロナンシンターゼをコードする合成核酸配列、
配列番号4:Paramecium bursaria Chlorella virus1のヒアルロナンシンターゼのアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は、配列番号3に由来することができる。
配列番号5:Homo sapiensからのヒアルロナンシンターゼ3をコードする核酸配列、
配列番号6:Homo sapiensからのヒアルロナンシンターゼ3のアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は、配列番号5に由来することができる。
配列番号7:Homo sapiensからのヒアルロナンシンターゼ3をコードする合成核酸配列、
配列番号8:Homo sapiensからのヒアルロナンシンターゼ3のアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は、配列番号7に由来することができる。
配列番号9:Homo sapiensからのヒアルロナンシンターゼ1をコードする核酸配列、
配列番号10:Homo sapiensからのヒアルロナンシンターゼ1のアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は、配列番号9に由来することができる。
配列番号11:Homo sapiensからのヒアルロナンシンターゼ2をコードする核酸配列、
配列番号12:Homo sapiensからのヒアルロナンシンターゼ2のアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は、配列番号11に由来することができる。
配列番号13:Papio anubisからのヒアルロナンシンターゼ1をコードする核酸配列。
配列番号14:Papio anubisからのヒアルロナンシンターゼ1のアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は配列番号13に由来することができる。
配列番号15:Mus musculusからのヒアルロナンシンターゼ1をコードする核酸配列。
配列番号16:Mus musculusからのヒアルロナンシンターゼ1のアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は配列番号13に由来することができる。
配列番号17:Mus musculusからのヒアルロナンシンターゼ2をコードする核酸配列。
配列番号18:Mus musculusからのヒアルロナンシンターゼ2のアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は配列番号17に由来することができる。
配列番号19:Mus musculusからのヒアルロナンシンターゼ3をコードする核酸配列。
配列番号20:Mus musculusからのヒアルロナンシンターゼ3のアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は配列番号19に由来することができる。
配列番号21:Rattus norvegicusからのヒアルロナンシンターゼ1をコードする核酸配列。
配列番号22:Rattus norvegicusからのヒアルロナンシンターゼ1のアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は配列番号21に由来することができる。
配列番号23:Rattus norvegicusからのヒアルロナンシンターゼ2をコードする核酸配列。
配列番号24:Rattus norvegicusからのヒアルロナンシンターゼ2のアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は配列番号23に由来することができる。
配列番号25:Rattus norvegicusからのヒアルロナンシンターゼ3をコードする核酸配列。
配列番号26:Rattus norvegicusからのヒアルロナンシンターゼ3のアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は配列番号25に由来することができる。
配列番号27:Oryctolagus cuniculusからのヒアルロナンシンターゼ2をコードする核酸配列。
配列番号28:Oryctolagus cuniculusからのヒアルロナンシンターゼ2のアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は、配列番号27に由来することができる。
配列番号29:Oryctolagus cuniculusからのヒアルロナンシンターゼ3をコードする核酸配列。
配列番号30:Oryctolagus cuniculusからのヒアルロナンシンターゼ3のアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は、配列番号29に由来することができる。
配列番号31:Equus caballusからのヒアルロナンシンターゼ2をコードする核酸配列。
配列番号32:Equus caballus からのヒアルロナンシンターゼ2のアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は、配列番号31に由来することができる。
配列番号33:Sus scrofaからのヒアルロナンシンターゼ2をコードする核酸配列。
配列番号34:Sus scrofaからのヒアルロナンシンターゼ2のアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は、配列番号33に由来することができる。
配列番号35:Sus scrofaからのヒアルロナンシンターゼ3をコードする核酸配列。
配列番号36:Sus scrofaからのヒアルロナンシンターゼ3のアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は、配列番号35に由来することができる。
配列番号37:Bos taurusからのヒアルロナンシンターゼ2をコードする核酸配列。 配列番号38:Bos taurusからのヒアルロナンシンターゼ2のアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は、配列番号37に由来することができる。
配列番号39:Gallus gallusからのヒアルロナンシンターゼ2をコードする核酸配列。 配列番号40:Gallus gallus からのヒアルロナンシンターゼ2のアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は、配列番号39に由来することができる。
配列番号41:Xenopus laevisからのヒアルロナンシンターゼ1をコードする核酸配列。 配列番号42:Xenopus laevisからのヒアルロナンシンターゼ1のアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は、配列番号41に由来することができる。
配列番号43:Xenopus laevisからのヒアルロナンシンターゼ2をコードする核酸配列。 配列番号44:Xenopus laevisからのヒアルロナンシンターゼ2のアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は、配列番号43に由来することができる。
配列番号45:Xenopus laevisからのヒアルロナンシンターゼ3をコードする核酸配列。
配列番号46:Xenopus laevisからのヒアルロナンシンターゼ3のアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は、配列番号45に由来することができる。
配列番号47:Danio rerioからのヒアルロナンシンターゼ2をコードする核酸配列。 配列番号48:Danio rerio からのヒアルロナンシンターゼ2のアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は、配列番号47に由来することができる。
配列番号49:Danio rerioからのヒアルロナンシンターゼ3をコードするゲノム核酸配列。
配列番号50:Danio rerio からのヒアルロナンシンターゼ3のアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は、配列番号49に由来することができる。
配列番号51:Pateurella multocidaからのヒアルロナンシンターゼをコードする核酸配列。
配列番号52:Pateurella multocidaからのヒアルロナンシンターゼのアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は、配列番号51に由来することができる。
配列番号53:Streptococcus pyogenesからのヒアルロナンシンターゼをコードする核酸配列。
配列番号54:Streptococcus pyogenesからのヒアルロナンシンターゼのアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は、配列番号53に由来することができる。
配列番号55:Streptococcus equiからのヒアルロナンシンターゼをコードする核酸配列。
配列番号56:Streptococcus equiからのヒアルロナンシンターゼのアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は、配列番号55に由来することができる。
配列番号57:Streptococcus uberisからのヒアルロナンシンターゼをコードする核酸配列。
配列番号58:Streptococcus uberisからのヒアルロナンシンターゼのアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は、配列番号57に由来することができる。
配列番号59:Streptococcus equisimillisからのヒアルロナンシンターゼをコードする核酸配列。
配列番号60:Streptococcus equisimillisからのヒアルロナンシンターゼのアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は、配列番号59に由来することができる。
配列番号61:Sulfolobus tokodaii株7からのヒアルロナンシンターゼをコードする核酸配列。
配列番号62:Sulfolobus tokodaii株7からのヒアルロナンシンターゼのアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は、配列番号61に由来することができる。
配列番号63:Xenopus laevisからのヒアルロナンシンターゼ1をコードする合成核酸配列。
配列番号64:Xenopus laevisからのヒアルロナンシンターゼ1のアミノ酸配列。示されたアミノ酸配列は、配列番号3に由来することができる。
配列番号65:実施例2に記載されている、機能的エレメントgpd−プロモーター(bp16〜269)、ポリリンカー(PacI、KpnI、SpeI、BamHI;bp271〜296)、イントロン(bp298〜352)、mnpポリアデニル化シグナルI(bp356〜491)、ポリアデニル化シグナルII(bp492〜540)、転写ブロッカー(転写中断、bp541〜632)を含む合成により産生された核酸配列。
【0121】
一般的方法
本発明に関して使用することができる方法を下記する。これらの方法は、特定の態様であるが、本発明はこれらの方法に限定されない。記載された方法を改変することおよび/または個々の方法または方法の一部を替わりの方法または替わりの方法の一部により置き換えることによって本発明を同じ方式で行うことができることは当業者に知られている。
【0122】
1.真菌のトランスフォーメーション
真菌(Agaricus bisporus)を、Chen et al.(2000, Applied and Environmental Microbiology 66(10), 4510-4513)に記載されたとおり、Agrobacteriumの助けによりトランスフォーメーションした。
【0123】
2.真菌の培養
Agaricus bisporusの栄養菌糸体を、24℃で無菌のPDY寒天上で培養した(Romaine and Schlagnhafer, 1992, Appl. Environ. Microbiol. 58(9), 3060-3066)。
【0124】
Agaricus bisporus子実体を、Romaine and Schlagnhafer, 1992, Appl. Environ. Microbiol. 58(9), 3060-3066に記載の方法に従って無菌のコンポスト上で産生させた。
【0125】
3.真菌組織からのヒアルロナンの単離
ヒアルロナンの存在を検出するためおよび真菌組織におけるヒアルロナン含有率を決定するために、真菌物質を下記のとおり処理した:水200μl(脱イオンした、伝道度≧18MΩ)を菌糸体または子実体の組織約0.3gに加えそして混合物を実験室振動ボールミル(Retsch, GermanyからのMM200)(30Hzで30秒)で粉砕した。次いで更なる水800μl(脱イオンした、伝道度≧18MΩ)を加え、そして混合物をよく混合した(例えば、ボルテックスミキサーを使用して)。細胞デブリスおよび不溶性成分を16000xgで5分間遠心することにより上清から分離した。
【0126】
4.ヒアルロナンの検出およびヒアルロナン含有率の決定
製造者の指示に従って商業的試験(Corgenix, Inc., Colorado, USA, Prod. No.029-001からのヒアルロン酸(HA)テストキット)を使用してヒアルロナンを検出する。製造者の指示は、これにより参考のため本説明に主題事項として組み込まれる。試験原理は、ヒアルロナンに特異的に結合するタンパク質(HABP)のアベイラビリティに基づいており、そして、ELISAと同様に行われ、カラー反応が検査されたサンプルにおけるヒアルロナン含有率を示す。従って、ヒアルロナンの定量的決定のために、測定されるべきサンプルは、それが述べられた限定内にあるような濃度で使用されるべきである(例えば、限界を超えたかまたは限界に達していないかどうかに依存して、問題のサンプルの希釈または真菌組織からヒアルロナンを抽出するためのより少ない水の使用)。
【0127】
平行バッチにおいて、決定されるべきサンプルのアリクォートを最初にヒアルロニダーゼ消化に供し、次いで商業的試験(Corgenix, Inc., Colorado, USA, Prod. No.5029-001からのヒアルロン酸(HA)テストキット)を使用して測定する。ヒアルロニダーゼ(SigmaからのIII型ヒアルロニダーゼProd. No. H2251 5μg(〜3単位)を加えそして37℃で30分間インキュベーションすることにより、ヒアルロニダーゼバッファー(0.1Mリン酸カリウムバッファー、pH5.3;150mm NaCl)中の真菌抽出物400μlを使用してヒアルロニダーゼ消化を行う。
【0128】
次いですべてのサンプルを、ヒアルロナン含有率を決定するために各場合に使用する。
【0129】
5.NMR分光法によるヒアルロナンの検出
NMR分光法による分析は、700MHzにおけるDRX700分光計(Bruker Biospin GMBH D-76287 Rheinstetten/Karisruhe, Germany)を使用して行うことができる。分光計は、TXIサンプルヘッドを備えておりそしてSGIワークステーションを備えており、そしてBruker BiospinソフトウエアXWIN−NMRバージョン3.5を評価のために使用した。サンプル約0.5〜2mgをDO550μlに溶解した。H−NMRスペクトルは、1秒の緩和時間で、1024〜12000スキャンを使用して測定する。H−NMRスペクトルは、4.7ppmで水シグナルを基準とする。
【0130】
ヒアルロナンの分子量分析
a)アガロースゲル電気泳動
真菌から単離されたヒアルロナンのサイズを特徴付けるために、Lee and Cowman(1994, Anal. Biochem. 219, 278-287)またはArmstrong and Bell(2002, Anal. Biochem. 308, 255-264)により記載されたアガロースゲル電気泳動に基づくシステムを使用する。このために、ヒアルロナン含有サンプルを、0.7%TAE(40mM Tris,5mM酢酸ナトリウム、0.8mM EDTA, pH7.9)アガロースゲルに適用し、そして50Vで3時間の期間にわたり1×TAEバッファー中で分離させた。次いでアガロースゲルを、エタノール50%および50%1×TAEバッファー中の0.005%Stains−all(3,3’−ジエチル−9−メチル−4,5,4’,5’−ジベンゾチアカルボシアニン、Fluka, Prod. No. 85663)を使用して一夜染色し、次いでゲルを水中で脱色しそしてスキャンした。
【0131】
b)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
1mg/ml−1の濃度で、サンプルをGPC移動相(0.2M NaNO)に溶解させる。このために、サンプルを磁性攪拌器上で最初に1時間攪拌し、次いで平衡化のために室温で20時間放置する。測定前に、サンプルを5μm膜フィルターを通して濾過する。次いでサンプルをGPCにより分析し、この場合に、屈折率、光散乱および溶離物の粘度を決定する。下記の機器および物質を使用する。
【0132】
GPC条件
機器:Polymer LaboratoriesからのGel Chromatograph PL120、SparkからのMidas Autosampler、
λ=690nmを使用するWyatt Technology Santa BarbaraからのDAWN-EOS光散乱検出器および14.9°〜162.9°の角度範囲における16個の検出器、
K5フローセル
粘度/屈折率組合せ検出器η−1002(WEG Dr.Bures GmbH & Co KG)
【0133】
カラム:PSS,Mainz.GermanyからのSUPREMA Gel
プレカラムおよび分離範囲300〜104;5・104〜2・106および106〜108を有する3つのカラムを直列に接続する。
溶離: 移動相0.2M NaNO、流速0.8ml/分、温度30℃、注入容積500μl。
【0134】
評価
得られたデータを使用して、実施例で与えられた値を計算する。光散乱データは、ソフトウエアASTRA Software 4.90.08を使用して評価することができる。粘度測定値は、PSS Win GPC6を使用して評価することができる。
【0135】
実施例
1.ベクターおよびプラスミドに関する情報
発現ベクターIC400−271の調製
プラスミドIC400−271は、下記のとおり構築されたバイナリーベクタープラスミドpBHg(Chen et al, 2000, Appl. Environ. Microbiol. 66, 4510-4513)の誘導体である:
プラスミドpBGhをBamHI制限エンドヌクレアーゼで切断し、端部をクレノーポリメラーゼで平滑化し、次いで得られたフラグメントをSmaI制限エンドヌクレアーゼで再び切断した。次いで、ベクターを再ライゲーションした。この手順は、pBGHプラスミドのポリリンカーの一部を欠失させ、真菌に適当なIC400−271発現ベクターをもたらす。
【0136】
2.プロモーター、ポリリンカー、イントロン及びターミネーション配列をコードする配列の合成
Agaricus bisporusからのタンパク質グリセルアルデヒド3−ホスフェートデヒドロゲゼ(gpd)のプロモーター(Harmsen et ak., 1992, Curr. Genet. 22, 447-454)、異なる制限エンドヌクレアーゼ開裂部位(PacI、KpnI、SpeI、BamHI)を有するポリリンカー、適当なドナーおよびアクセプター認識配列を有するイントロン(Ma et al., 2001, Appl. Environ. Microbiol. 67, 948-955)ならびにPhanerochaete chrysosporium(Pribnow et al., 1989, J. Biol. Chem. 264, 5036-5040)からのマンガンペルオキシダーゼアイソザイム1 (mnp1,GenBank Acc:J04621)の第一のポリアデニル化シグナル、第2ポリアデニル化シグナル(Levitt et al., Genes & Dev., 1989, 3, 1019-1025)および転写ブロッカー(転写中断シグナル、Enriquez-Harris et al., EMBO Journal, 1991, 10, 1833-1842)を含むターミネーション配列を含む核酸配列を、Entelechon GmbHにより合成しそしてInvitrogenからのpCR4Topoベクター(製品No.K4510−20)にクローニングした。構築物は図2に略図で示されている。得られたプラスミドは、IC401−271と名づけられる。記載されたエレメントの合成核酸配列は配列番号65に示される。
【0137】
3.Paramecium bursaria Chlorella virus1のHASタンパク質をコードする核酸配列の合成
Paramecium bursaria Chlorella virus1からのHAS(ヒアルロナンシンターゼ)タンパク質をコードする核酸配列を、Medigenomix GmbH(Munich, Germany)により合成しそしてInvitrogenからのベクターpCR2.1(Prod.No.K2000−01)にクローニングした。得られたプラスミドはIC−323−215と名づけられた。Paramecium bursaria Chlorella virus1からのHASタンパク質をコードする合成核酸配列は配列番号3に示される。Paramecium bursaria Chlorella virus1から最初に単離された対応する核酸配列は、配列番号1に示される。
【0138】
4.Paramecium bursaria Chlorella virus1からのHASタンパク質のためのコード配列を有する発現ベクターの調製
HASタンパク質のコード配列を、制限エンドヌクレアーゼBamHIおよびPacIによってプラスミドIC323−215から単離しそしてIC401−271のBamHIおよびPacI開裂部位にクローニングした。これは、ベクターIC402−271をもたらした。次いでカセットgpdプロモーター−HASタンパク質−イントロン−ターミネーション配列を、HpalおよびSbflを使用して、IC402−271から、IC400−271ベクターのPvuIIおよびSbfI制限開裂部位にクローニングした。かくして、発現ベクターIC403−271を産生した。
【0139】
5.Xenopus laevis HAS1(DG42)タンパク質をコードする配列の合成
Xenopus laevis xIHAS1(ヒアルロナンシンターゼ1)タンパク質をコードする核酸配列を、Entelechon GmbHにより合成しそしてInvitrogenからのpCR4Topoベクター(製品No.K4510−20)にクローニングした。得られたプラスミドをIC406−271と名づけられた。合成Xenopus laevis HASタンパク質をコードする合成核酸配列は、配列番号63に示される。Xenopus laevisから最初に単離された対応する核酸配列(Genbank M22249)は配列番号41に示される。
【0140】
6.HASタンパク質をコードする核酸分子を含有する発現ベクターによる真菌のトランスフォーメーション
Agaricus bisporus子実体からのしゅう組織(lamellar tissue)を、Paramecium bursaria Chlorella virus1HASタンパク質をコードする核酸配列を含有するIC403−271発現ベクターにより、およびそれぞれ、「一般的方法」節1に述べられた方法に従って、Xenopus laevis HAS−1タンパク質をコードする核酸配列を含有するIC406−271発現ベクターにより、独立のトランスフォーメーション手順においてトランスフォーメーションした。プラスミドIC403−271でトランスフォーメーションされて得られたトランスジェニック真菌はA.b.−cvHASと名づけられた。プラスミドIC406−271でトランスフォーメーションされて得られたトランスジェニック真菌はA.b.−xIHAS1と名づけられた。
【0141】
7.トランスジェニック真菌の分析
A.b.−cvHASおよびA.b.−xIHAS1と名づけられた個々の真菌を、「一般的方法」節2に述べられた方法に従ってPDY寒天上で菌糸体として培養した。各場合に、個々の真菌の菌糸体物質約0.3gを、「一般的方法」節3下に述べられた方法に従って処理した。
【0142】
A.b.−cvHASと名づけられた真菌およびA.b.−xIHAS1と名づけられた真菌の子実体を、「一般的方法」の節2に述べた方法に従って無菌のコンポスト上で産生した。各場合に、個々の真菌の子実体物質約0.3gを、「一般的方法」節3に述べた方法に従って処理した。
【0143】
ヒアルロナンは、「一般的方法」節4に記載の方法により特定の真菌抽出物において決定された。ヒアルロナンを産生する真菌系統(fungi lines)を同定した。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】真菌組織におけるヒアルロナン含有率を計算するために使用された回帰線の検定線および関連した式を示す。検定線は、市販のテストキット (Corgenix, Inc., Colorado, USA, Prod. No.029-001からのヒアルロン酸(HA)テストキット) およびそれに含有された標準溶液を使用して引かれた。
【図2】プロモーター(Promoter)、異なる制限エンドヌクレアーゼ開裂部位を有するポリリンカー、イントロン(Intron)およびターミネーション配列を含む合成により調製された配列の機能的エレメントの配置を略図で示す。発現されるべきタンパク質をコードする所望の核酸配列(GoI)は、ポリリンカーにおいて挿入されうる。本発明に関して、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸配列は、GoIにより示された領域において挿入された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子を含むことおよびヒアルロナンを合成することを特徴とする真菌細胞。
【請求項2】
ヒアルロナンシンターゼをコードする該核酸分子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の真菌細胞から生じる真菌細胞。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載の真菌細胞を含む真菌。
【請求項4】
ヒアルロナンシンターゼをコードする該核酸分子を含むことを特徴とする、請求項3に記載の真菌の増殖物質。
【請求項5】
a)ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子を真菌細胞のゲノムに組み込み、
b)真菌を工程a)の真菌細胞から再生し、そして
c)もして適当ならば、工程b)の真菌の助けにより更なる真菌を発生させる、
ヒアルロナンを合成する真菌を調製するための方法。
【請求項6】
請求項1または2のいずれかに記載の真菌細胞から、請求項3に記載の真菌からまたは請求項5に記載の方法により得ることができる真菌からのヒアルロナンの抽出の工程を含む、ヒアルロナンを調製するための方法。
【請求項7】
ヒアルロナンを調製するための、請求項1または2のいずれかに記載の真菌細胞、請求項3に記載の真菌、請求項4に記載の増殖物質または請求項5に記載の方法により得ることができる真菌の使用。
【請求項8】
請求項1または2のいずれかに記載の真菌細胞の成分、請求項3に記載の真菌の成分または請求項5に記載の方法により得ることができる真菌の成分を含む組成物。
【請求項9】
請求項1または2のいずれかに記載の真菌細胞、請求項3に記載の真菌または請求項5に記載の方法により得ることができる真菌を使用する、請求項8に記載の組成物を調製するための方法。
【請求項10】
請求項8に記載の組成物を調製するための、請求項1または2のいずれかに記載の真菌細胞、請求項3に記載の真菌または請求項5に記載の方法により得ることができる真菌の使用。
【請求項11】
分類Basidiomycota門の真菌細胞における転写を開始する核酸配列およびヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子を含む、リコンビナント核酸分子。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−531003(P2008−531003A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556574(P2007−556574)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/002913
【国際公開番号】WO2006/089808
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(507203353)バイエル・クロップサイエンス・アーゲー (172)
【氏名又は名称原語表記】BAYER CROPSCIENCE AG
【Fターム(参考)】