説明

ヒアルロン酸、及びグルタミン酸のN−誘導体を有する抗増殖性のコンジュゲート

ヒアルロン酸と、グルタミン酸のN−誘導体とのコンジュゲートは、ヒアルロン酸の残存する一級水酸基を、アミノ酸、ペプチド、脂肪酸、アリール脂肪酸及び/又はアリール酸でさらにエステル化され、抗増殖活性の有意且つ予期しない増加、及び毒性の低下が観察される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗増殖活性を有するヒアルロン酸のエステル化されたコンジュゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の有機分子が試験され、抗増殖剤として有用であることが知られているが、これらの多くは、高い毒性、低い溶解性及び/又は不適当な薬物動態パラメーター故、限定された治療的用途を有する。
【0003】
これらの化合物のうち、親物質としてメトトレキサートを有する抗増殖剤のファミリーを構成するジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)に対して阻害活性を有するグルタミン酸のN−誘導体がある。
【0004】
これらの薬物は、新生物、乾癬及び関節リューマチなどの複数の病態に有効である。しかしながら、全身性の毒性により、その治療用途は、非常に限定されている。
【0005】
特許文献1において、上記のDHFRの阻害剤の毒性に関する問題が多糖類とのコンジュゲートにより解決され得ることが、見出された。事実、このようにして得たコンジュゲートは、抗増殖活性を未だ有しているが、同時に、驚くべきことに、低い毒性を示すという利点を有する。
【特許文献1】国際公開第01/68105号パンフレット
【非特許文献1】メトトレキサートの公的なモノグラフ(USP23)、p.984
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、特許文献1に記載のヒアルロン酸とグルタミン酸のN−誘導体との間のコンジュゲートは、ヒアルロン酸の残存する一級水酸基を、アミノ酸、ペプチド、脂肪酸、アリール脂肪酸及び/又はアリール酸でさらにエステル化すると、有意且つ予期しない抗増殖活性の増加と、毒性の低下とが観察されることを、見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の目的は、ヒアルロン酸の新規のコンジュゲートであって、ヒアルロン酸のN−アセチル−D−グルコサミン単位の第一級水酸基は、アミノ酸、ペプチド、脂肪酸、アリール脂肪酸及びアリール酸からなる群から選択される化合物Aのカルボキシル基と、下記式(I)のグルタミン酸のN−誘導体のα−又はγ−カルボキシル基との両方でエステル化される。
【0008】
【化3】

【0009】
ここで、R及びRは、互いに独立に、−NH、−OH、−OCH、C1〜C5のアルキル、=Oを示し;
X及びYは、−C(R)=、−CH(R)−、−NH−、−N=を示し、Rは、−H、C1〜C5のアルキルを示し;
Zは、−CH(R10)−、−N(R10)−、−O−を示し、R10は、−H、C1〜C5のアルキル、C1〜C5のアルケニル、若しくはC1〜C5のアルキニル、又は窒素、硫黄及び酸素からなる群から選択された1〜3のヘテロ原子を有する5若しくは6員の複素環を示し;
Arは、1,4−フェニル基、1つ以上の5又は6員の芳香族環で縮合された1,4−フェニル基、1つ以上の5又は6員の複素環で縮合された1,4−フェニル基を示し、この置換基は、上記のRで可能に置換され;
環A及びBは、芳香性を有しても、芳香性を有していなくてもよい。
【0010】
これらの化合物は、既に、特許文献1に述べられている。
【0011】
好ましくは、式(I)の化合物は、式(I)で示すメトトレキサート(MTX)であって、R及びRは、−NHであり、環Aは、芳香性を有し、環Bは、芳香性を有し、X及びYは、−N=であり、Zは、−N(CH)−であり、Arは、1,4−フェニル基である。
【0012】
式(I)のさらに好ましい化合物は、下記のサブクラスに属するものである。
【0013】
−サブクラス1は、式(I)に示す化合物であって、R及びRが、−NH又は−OHであり、Rが、存在する場合、−H、−CHを示し、環Aが、芳香性を有し、Zが、−CH(R10)−、−N(R10)−からなる群から選択され、R10が、−H、C1〜5のアルキル、C1〜C5のアルケニル、C1〜C5のアルキニルを示すものである。
【0014】
−サブクラス2は、式(I)に示す化合物であって、Rが、=Oであり、Rが、−NHであり、環Aが、芳香性を有さず、環Bが、芳香性を有し、X及びYが、−N=であり、Zが、−N(R10)−であり、R10が、−H、−CHであり、Arが、1,4−フェニルであるものである。
【0015】
−サブクラス3は、式(I)に示す化合物であって、R及びRが、−NHであり、環Aが、芳香性を有し、環Bが、芳香性を有し、X及びYが、−N=であり、Zが、−N(R10)−であり、R10が、−CH又は−Hであり、Arが、1,4−フェニルであるものである。
【0016】
−サブクラス4は、式(I)に示す化合物であって、R及びRが、−NHであり、環Aが、芳香性を有し、環Bが、芳香性を有し、X及びYが、−N=であり、Zが、−CH−(C)−であり、R10が、−CH又は−Hであり、Arが、1,4−フェニルであるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
式(I)の化合物は、?又はカルボン酸基のいずれかを介してヒアルロン酸にリンク(link)される。化合物Aは、アミノ酸、ペプチド、脂肪酸、アリール脂肪酸及びアリール酸からなる群から選択され、そのカルボキシル基を介してヒアルロン酸にリンクされる。この化合物は、対応するカルボン酸に由来するアシル求核試薬を用いることにより、多糖類に導入される。
【0018】
脂肪酸、アリール脂肪酸及びアリール酸は、直鎖でも分岐でもよく、また飽和でも不飽和でもよく、また、複素環を有してもよい。
【0019】
本発明における脂肪酸は、24を限度とした炭素原子を有し、モノカルボン酸若しくはポリカルボン酸、又は飽和のもの若しくは不飽和のものである。また、脂肪酸は、直鎖又は不飽和のC1〜C5のアルキル、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、メトキシル基、カルボニル基、チオール基及びカルボキシル基からなる群から選択される置換基で可能に置換されてもよい。本発明による脂肪酸は、脂環式の酸、又は脂肪族の脂環式の酸であってもよい。
【0020】
本発明における好適な脂肪酸は、酢酸、ブチル酸、プロピオン酸、レチノイン酸、n−プロピル酢酸、コハク酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンアセチル基の酸及びシクロプロパンカルボン酸からなる群から選択される。
【0021】
本発明における好適なアミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、グリシン、セリン、システイン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンからなる群から選択される。本発明における好適なペプチドは、上記のアミノ酸の異なる組み合わせからなるペプチドである。
【0022】
本発明におけるアリール脂肪酸は、C1〜C4の脂肪族鎖を有し、そのアリール残基は、直鎖又は分岐のC1〜C5のアルキル、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、メトキシル基で可能に置換されてもよい。
【0023】
本発明における好適なアリール脂肪酸は、フェニル酢酸、フェノキシ酢酸、ナフチル酢酸、2−(4−イソブチルフェニル)プロピオン酸、2−(6−メトキシ−2−ナフチル)プロピオン酸及び桂皮酸からなる群から選択される。
【0024】
本発明におけるアリール酸は、直鎖又は分岐のC1〜C5のアルキル、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、水酸基及びメトキシル基で置換されたアリール残基を有してもよい。
【0025】
好適なアリール酸は、無置換又は置換の安息香酸から選択される。
【0026】
好ましくは、上記の置換の安息香酸は、ハロ安息香酸、アルキル安息香酸、ニトロ安息香酸及び2−アセトキシ安息香酸からなる群から選択される。
【0027】
脂肪酸、アリール脂肪酸又はアリール酸は、芳香環又は非芳香族性の環で可能に縮合された、芳香性又は非芳香性のいずれかの複素環で置換されてもよく、この複素環基は、好ましくは3〜20の炭素原子を有し、直鎖又は分岐のC1〜C5のアルキル、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、メトキシル基で可能に置換されてもよい。
【0028】
本発明の特に好適な実施例によると、化合物Aは、酢酸、ブチル酸、アラニン、グリシン、並びにアラニン及び/又はグリシンを有するペプチドからなる群から選択される。
【0029】
ヒアルロン酸(本願においてHAとも示す)は、D−グルクロン酸と、β(1→3)グリコシド結合により結合された2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコース(N−アセチル−D−グルコサミン)とからなる二糖の繰り返し単位からなる;D−グルクロン酸残基は、酸の形態又は塩の形態であってもよい。各繰り返し単位は、直鎖のポリマーを形成するβ(1→4)グリコシド結合により、次のものに結合される。
【0030】
本願において使用する用語「ヒアルロン酸」は、酸の形態又は塩の形態の両方を包含する。
【0031】
用語ヒアルロン酸は、種々の分子量を有するHAの一般的な群の分子量の画分、又はこの化合物の加水分解画分をいうのに一般的に用いられる。本発明の目的に関して、ヒアルロン酸は、5000〜100000の平均分子量を好ましく有し、さらに好ましくは10000〜50000である。
【0032】
本発明のヒアルロン酸の好適なコンジュゲートは、6−O−アセチル−6−O−メトトレキシル−ヒアルロン酸、及び6−O−ブチリル−6−O−メトトレキシルヒアルロン酸並びにこれらの塩である。
【0033】
本発明のコンジュゲートは、酸の形態又は塩の形態である。
【0034】
塩の形態の場合、アルカリ金属(好ましくは、Na又はK)、アルカリ土類金属(好ましくは、Ca又はMg)、遷移金属(好ましくは、Cu、Zn、Ag、Au、Co、Ag)で塩化されてもよい。この塩化は、公知の方法により得られる。
【0035】
任意に、本発明のコンジュゲートにおける第2級の水酸基は、下記の置換基を形成するように、誘導体化されてもよい:−OR、−OCOR、−SOH、−OPO,−O−CO−(CH−COOH、−O−(CH−OCORであって、nは、1〜4であり、Rは、C1〜C10のアルキルである。
【0036】
また、上記の第2級水酸基は、−NH又はNHCOCHで置換されてもよい。
【0037】
これらの置換基は、当業者公知の方法により容易に得られてもよく、コンジュゲートの親水特性を調節するように、選択されてもよい。
【0038】
コンジュゲートにおける、式(I)の化合物及び化合物Aの全量は、「置換度」(DS%)と定義し、これは、コンジュゲートの全重量に対する、式(I)の化合物の重量及び化合物Aの重量の百分率(%)を示す。
【0039】
特に、本発明のコンジュゲートにおいて、式(I)の化合物及び化合物Aの量(DS%)は、コンジュゲートの全重量に対して、0.1〜60%w/wから好ましくなる。さらに、好ましくは、コンジュゲートの全重量に対して、式(I)の化合物は、1〜40%w/wの範囲の量で存在する一方、化合物Aは、0.1〜30%w/wの範囲の量で存在する。
【0040】
化合物Aが酢酸である場合、コンジュゲートの全重量に対して、0.1〜10%w/wの範囲の量で、本発明のコンジュゲートに好ましく存在する。
【0041】
本発明によるコンジュゲートは、ヒアルロン酸のN−アセチル−D−グルコサミンの第一級水酸基に直接結合された2つの異なるエステル基が存在することを特徴とする。
【0042】
HAのその他の水酸基は、薬物との化学結合に関連せず、有効性を確保するのに非常に重要な化学構造における規則性を提供する。
【0043】
提供される実験事実に示されるように、本発明のコンジュゲートは、細胞増殖を阻害する式(I)の化合物の能力を保持する。さらに、予期せず、上記の誘導体には、特許文献1開示の対応するコンジュゲートと比較して、さらに大きな抗増殖活性及びより低い毒性が付与される。
【0044】
従って、細胞の過増殖を特徴全ての病態に首尾よく使用されてもよい。
【0045】
よって、本発明のさらなる目的は、細胞の過増殖を特徴とする病態の処置のための医薬の製造への、上記のコンジュゲートの使用である。好ましくは、この病態は、腫瘍、皮膚病、乾癬、炎症及び関節リューマチからなる群から選択される。
【0046】
好ましくは、上記の腫瘍は、白血病、癌腫(腺癌、結腸直腸癌、膵臓癌)、乳癌、卵巣癌及び胃腸の腫瘍から選択される。
【0047】
また、本発明の目的は、本発明のコンジュゲートと、医薬的に許容な賦形剤及び/又は希釈剤と混合して含有する医薬組成物である。この医薬組成物は、液体の形態又は固体の形態であってもよい;経口、非経口、経直腸又は局所で、投与されてもよい。
【0048】
本発明のさらなる目的は、上記のコンジュゲートの調製方法である。
【0049】
特に、本発明者は、医薬用途に適当でないハロゲン化副産物及びその他の副産物の除く本発明のコンジュゲートを得ることを可能とする特定の方法を開発した。
【0050】
この方法は、下記に示す順序で、下記の各ステップを有する。つまり:
(a)フリーの形態又は塩の形態のヒアルロン酸のN−アセチル−D−グルコサミン単位の第一級水酸基を塩素化するステップと;
(b)塩素原子を置き換えることにより、塩素化されたヒアルロン酸と、式(I)の化合物のカルボキシル基との間にエステル結合を形成するステップと;
(c)適当なアシル求核試薬による残存する塩素原子を置き換えることにより、ステップ(b)の生成物と、化合物Aのカルボキシル基との間にエステル結合を形成するステップと;
を有する。
【0051】
出発物質であるHAは、フリーの形態であっても、塩の形態であってもよく、その対イオンは、好ましくはアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属であり、又は窒素を含有する対イオンである。後者の場合、対イオンは、複素環を含んでもよい。窒素を含有する対イオンの好適な例としては、アンモニウム、テトラブチルアンモニウム(TBA)、ピリジニウム又はsym−コリジニウムイオン(sym−collidinium ion)である。
【0052】
ステップ(a)は、HAを非プロトン性有機溶媒中で混合した後実行される選択的な塩素化反応である。本質的には、ステップ(a)は、一般的なハロゲン化反応に代わる塩素化反応である。
【0053】
事実、実験部に示すように、塩素化反応により、安定であり、且つ実用的な医薬用途に有害であり得る所望しない副産物や不純物がない、最終的なコンジュゲートを得ることが可能となる。
【0054】
好適な塩素化試薬は、メタンスルフォニルクロライドを有するジメチルホルムアミド(Vilsmeir Reagent)である。
【0055】
塩素化反応は、下記の方法に従って、好ましく実行される。
【0056】
塩素化試薬は、塩の形態(ナトリウムの形態、又はTBAなどの有機塩基の形態)、好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のナトリウムの形態のHAの溶液又は懸濁液に、−20〜−10℃の範囲、好ましくは−10℃で、添加される。この反応温度は、−10℃から、40〜65℃、好ましくは60℃に、2時間かけて、昇温される。
【0057】
この塩素化反応は、その後、40〜65℃、好ましくは、60℃の温度で、10〜24時間、好ましくは16時間、行われる。
【0058】
この反応は、pH8とするように、飽和NaHCO水溶液で処理し、その後pH9とするようにNaOH水溶液で処理することにより、行われる;このステップにより、HA分子の第二級水酸基における反応中に形成されたギ酸のエステル基を除去することが可能となる。この反応混合物を、その後、希HClを添加することにより、中和する。その後、標準的な方法により、所望の6−クロロ−6−デオキシヒアルロン酸(HA−6−Cl又はHA−Clとも称する。)を回収する。
【0059】
これらの条件において、N−アセチル−D−グルコサミン残基のC−6の位置における塩素化の度合いは、1.0〜8.3%w/wの範囲であってもよく、好ましくは、1.4〜5.0%w/wの範囲である。
【0060】
ステップ(b)は、下記の方法に従って、通常実行される。
【0061】
HA−6−Clは、TBA又はナトリウム塩の形態のいずれか、好ましくはTBAの形態で、非プロトン性溶媒又はこの混合物中で懸濁され、その後、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩、例えば、炭酸セシウムの存在下、式(I)の化合物を有する上記と同様の溶媒に添加する。
【0062】
この反応は、一定の攪拌下、50〜80℃の範囲、好ましくは、70℃で、24〜52時間の範囲、好ましくは40時間、行われる。その後、所望の生成物を、標準的な方法で、回収する。
【0063】
式(I)の化合物がMTXである場合、コンジュゲートは、6−デオキシ−6−O−メトトレキシル−ヒアルロン酸(HA−6−MTX又はHA−MTX)と称される。
【0064】
このステップで得た生成物は、式(I)の化合物及び塩素の両方を含有するHAの中間コンジュゲートである。このコンジュゲートにおいて、式(I)の化合物の量は、40%w/w未満であり、残存する塩素(このステップ中で置換されない塩素)の量は、3%w/w未満である。
【0065】
ステップ(c)により、ステップ(b)で得られる生成物において、化合物Aのアシル求核試薬により、残存する塩素を完全に置換することが可能である。
【0066】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩の形態の種々の適当なアシル求核試薬を使用し得る。酢酸、ブチル酸又はアミノ酸の場合、ナトリウム塩又はセシウム塩が好ましい。酢酸ナトリウムは、ステップ(b)の生成物がナトリウム塩の場合、好ましく使用されるが;酢酸セシウムは、sym−コリジウム塩又はTBA塩、好ましくはTBAの形態などの有機塩基の形態のステップ(b)の生成物から、塩素を置換するのに、好適である。
【0067】
得られるコンジュゲートは、沈殿、限外濾過、乾燥又は凍結乾燥などの標準的な方法により、その後、回収されてもよい。
【0068】
このコンジュゲートは、種々の残存する塩素を有さない。
【0069】
式(I)の化合物がメトトレキサートである場合、コンジュゲートは、6−O−アシル−6−O−メトトレキシル−ヒアルロン酸(HA−6−MTX−アシル又はHA−MTX−アシル)である。
【0070】
実験部に示すように、本発明者は、上記の方法により、残存する塩素が3%未満の特許文献1のコンジュゲートを得ることが可能となり、従って、先行技術に述べる方法で調製したものと比較して、向上した特性が付与されることを驚くべきことに見出した。
【0071】
従って、本発明は、HAのポリマー鎖に化学的に結合した残存する塩素が3%w/w未満、好ましくは0.1%w/w未満である、ヒアルロン酸と式(I)の化合物とのコンジュゲートをも参照する。
【0072】
本発明は、3%w/w未満のハロゲン化副産物を含有する上記のコンジュゲートを得る方法にも関し、下記のステップを有する。つまり:
(a)フリーの形態又は塩の形態のヒアルロン酸のN−アセチル−D−グルコサミン単位の第一級水酸基を塩素化するステップと;
(b)塩素原子を置き換えることにより、塩素化されたヒアルロン酸と、式(I)のカルボキシル基との間にエステル結合を形成するステップと;
を有し、ステップ(a)及び(b)は、上記の通りのものである。
【0073】
本発明のその他の目的は、HAのポリマー鎖に化学的に結合した残存する塩素が0.1%w/w未満である、ヒアルロン酸と式(I)の化合物とのコンジュゲートを取得する方法であり、下記のステップを有する。つまり:
(a)フリーの形態又は塩の形態のヒアルロン酸のN−アセチル−D−グルコサミン単位の第一級水酸基を塩素化するステップと;
(b)塩素原子を置き換えることにより、塩素化されたヒアルロン酸と、式(I)の化合物のカルボキシル基との間にエステル結合を形成するステップと;
(c)適当なアシル求核試薬によるステップ(b)の残存する生成物にエステル結合を形成することにより、残存する塩素原子を置き換えるステップと;
(d)ステップ(c)で得たコンジュゲートの選択的な脱アセチル化を行うステップと;
を有する。
【0074】
この反応は、公知の化学的な脱アセチル化反応、又は酵素的な脱アセチル化反応により、行われてもよい。
【実施例】
【0075】
下記の実験例の通り、本発明について、非限定的に述べる。
【0076】
(実験部)
(例1)
HA−Cl及びHAコンジュゲートにおける塩素含量の同定
コンジュゲートにおける塩素含量の同定は、13C−スペクトルの取得に関する標準化シークエンス(std13Cシークエンス)を適合した13CNMR(Spectrometer Varian Mercury 200)により、行った。20mgのコンジュゲートのサンプルを、650μLのDOを有する5mm試験管中で室温にて溶解した。この溶液中の気泡を消去するように、緩徐に加熱した(50℃)。30℃で24時間後、スペクトルを収集し、HA−Clについて、OHシグナル(61ppm)及びClシグナル(44ppm)を積分することにより、分析した。HA−MTX−Clについては、これらの2つのシグナルに加えて、OMTXシグナル(64ppm)についての積分も行った。塩素含量は、6−塩素基を含有するHAの繰り返し単位の数と、HAの繰り返し単位の全数との比率として、同定した。この比率は、塩素の単位重量%当たりに変換した。
【0077】
(例2)
HPLCによるメトトレキサートの同定
HAコンジュゲートのメトトレキサートの含量は、非特許文献1により、アルカリ加水分解の前後のサンプルを分析することにより、HPLCで同定した。分析の条件は、下記の通りである。
【0078】
クロマトグラフ:Dionex DX−600
カラム:カラムPhenomenex Synergi 4μHydro−RP80
カラムの寸法:150×460mm
カラムの粒子径:4μ
温度:40℃
溶離液:90%の0.2M第二リン酸ナトリウム/0.1Mクエン酸(630:270)、10%のCHCN
定常的条件:0.5mL/分
検出器:ダイオードアレイ(範囲200〜780nm)
定量的同定に関して選択した波長:302nm
注入容量:25μL
実行時間:30分
【0079】
フリーのメトトレキサートの同定用の溶液は、HA−MTXを、適当な濃度で、ミリQ水に直接溶解することにより、調製した。メトトレキサートの全量は、室温で2時間、0.1MのNaOH中でアルカリ加水分解を行った後に同定した。1Mの塩酸で中和した後、HPLC系に注入する前に、溶液を、0.45μmのフィルター(Sartorius Minisart社製のRC25 17795Q)で濾過した。既知のメトトレキサートの濃度の標準溶液を用いて、較正曲線を同定した。この方法により、上記のサンプル溶液中のMTXの濃度を得て、サンプル濃度で標準化することにより、上記のDSMTX%w/wを得る。
【0080】
HA−MTXコンジュゲートの構造は、NMRにより、支持された:H−NMR及びH−DOESY NMRスペクトルにより、調製した全てのコンジュゲートに関するC6の位置のN−アセチル−D−グルコサミンのMTX分子の共有結合を確認された。
【0081】
(例3)
平均分子量(Mw)の同定
ヒアルロン酸コンジュゲートの分子量は、HP−SEC(高速サイズ排除クロマトグラフィー)により、測定した。分析条件は、下記の通りである。
【0082】
クロマトグラフ:Rheodyne社製9125インジェクターを有するHPLCポンプ 980−PU(Jasco社製製造番号B3901325)
カラム:TSK PWxl(TosoBioscience社製)G6000+G5000+G3000 6、10及び13μmの粒子径
温度:40℃
移動相:0.15MのNaCl+0.01%のNaN
流速:0.8mL/分
検出器:MALLS(WYATT DAWN EOS−WYATT,米国)
λ=690nm(dn/dc=0.167mL/g)UV分光光度検出器875−UV(Jasco社製製造番号D3693916)
?=305nm、Interferometric Refractive Index OPTILAB REX(WYATT社製、米国)
λ=690nm
感度:128×
温度:35℃
注入容量:100μL
実行時間:60分
【0083】
分析されるべきHA−Cl及びHA−MTXのサンプルを、約1.0mg/mLの濃度で、0.9%のNaClに溶解し、12時間、攪拌しながら保持した。その後、この溶液を、0.45μmの空隙率のフィルター(Sartorius Minisart社製RC25 17795Q)上で濾過し、最終的に、クロマトグラフィーに注入した。この分析により、Mw(重量平均分子量)、Mn(数平均分子量)、PI(多分散性)を測定した。ポリマーのサンプル溶液の濃度は、屈折率の積分(integral of the refractive index)により、調節した。
【0084】
(例4)
6−ブロモ−6−デオキシ−ヒアルロン酸(HA−Br)
1gのヒアルロン酸のテトラブチルアンモニウム塩(MW120000)を、80℃で50mLの無水DMFに懸濁し、攪拌下、窒素下で、約1時間保持した。この混合物を室温に冷却し、1.28gのメタンスルフォニルブロマイドを0℃で添加した。この反応混合物を、さらに30分間、攪拌下で保持し、その後、80℃で16時間加熱した。この混合物を、室温に冷却し、約10mLのミリQ水を添加してこの反応を停止した。この混合物を、0.1のNaOHで中和し、減圧下で濃縮し、200mLのアセトンに注入した。その産物を、濾過により収集し、アセトンで洗浄し、水に懸濁し、その後、蒸留水に対して透析し、且つ凍結乾燥した。固体物の重量:480mg。
【0085】
60ppmにおけるピーク(OH)及び33ppmのピーク(Br)を積分することにより、13C−NMR(図1)から、Brの含量を同定した結果、14%w/wであり、MW:11800;PI:1.4であった。13C−NMRスペクトルが示すように、例えば51、53、91、93ppmにおいて、HA又は臭素化HAのいずれにも同定し得ない多くの小さなピークが存在した。このNMRのシグナルのパターンは、臭素化反応に由来する副産物の存在を示唆するものである。
【0086】
(例5)
6−クロロ−6−デオキシ−ヒアルロン酸(HA−6−Cl又はHA−Cl)
10gのHAのナトリウム塩(MW20,000)を有する180mLのジメチルホルムアミドの懸濁液に、攪拌しながら、メシルクロライド(10当量)を、Nブランケット下で、−10℃において30分間で滴下して添加した。この混合物を、この温度で30分間保持し、2時間かけて60℃とした。その後、この反応を、攪拌しながら、16時間、60℃で保持した。その後、室温に冷却し、氷及び飽和NaHCOの混合物に注入し、その後、NaOH溶液で処理して、pH9とした。この温度において1日後、この懸濁液を、希HClで中和した溶液とした。その後、この溶液を、限外濾過し、濃縮し、凍結乾燥して、白色の固形物(6g)を得た。
【0087】
産物の13C−NMRのスペクトル(図2)で明らかとなったように、44ppm(Cl)におけるシグナルが存在し、61ppm及び44ppmにおけるピークを積分したところ、3.4%w/wの塩素置換度であった。
【0088】
図2のスペクトルと、図1のスペクトル(HA−Br)とを比較して示されるように、塩素化反応は、清浄な産物を生じる。事実、21のピークのみ可視であり、HA−Brスペクトルに可視のピークの最も大きい数に対して、誘導体化されていないHAの繰り返し単位(14の炭素原子)、又は6−Cl−(N−アセチル−D−グルコサミン)糖単位(7の炭素原子)を指定され得るものである。
【0089】
(例6)
HA−Cl
15当量のメシルクロライドを使用したことを除いては、例5と同様に反応を行った。4.4gを回収した。
【0090】
13C−NMRのスペクトルは、例5と同様であって、4.3%w/wの塩素置換度であった。
【0091】
(例7)
HA−Cl
50gのHAのナトリウム塩を使用したことを除いては、例5と同様に反応を行った。36gの白色の固体物を回収した。13C−NMRのデータは、例5で調製した化合物と同様であって、3.4%w/wの塩素置換度であった(13C−NMR)。
【0092】
(例8)
HA−Cl
反応混合物を、60℃で20.5時間保持したことを除いては、例5と同様に反応を行った。36gの白色の固体物を回収した。
【0093】
13C−NMRのデータは、例5で調製した化合物と同様であって、4.9%w/wの塩素置換度であった(13C−NMR)。
【0094】
(例9)
HA−Cl
反応混合物を、60℃で24.5時間保持したことを除いては、例5と同様に反応を行った。36gの白色の固体物を回収した。
【0095】
13C−NMRのデータは、例5で調製した化合物と同様であって、5.8%w/wの塩素置換度であった(13C−NMR)。
【0096】
(例10)
HA−Cl
HAのTBA(2g、MW70,000)を有する40mLの乾ジメチルホルムアミドの攪拌下の溶液に、N流入下、メシルクロライド(5当量)を、−10℃で30分、滴下で添加した。この混合物を、−10℃で30分間保持し、室温で1時間保持し、その後、60℃で16時間加熱した。この反応をその後、室温で行い、10%のTBAOHの溶液を添加してpH9〜10とし、懸濁液が茶色の溶液となるまで、このpHを4日間保持した。10kDのカットオフ分子量のメンブレンを用いた限外濾過により、精製した。その溶液を、その後、凍結乾燥して、1gの所望の産物を得た。
【0097】
13C−NMRのデータは、例5で調製した化合物と同様であって、1.75%w/wの塩素置換度であった(13C−NMR)。
【0098】
(例11)
HA−Cl
反応温度を、50℃とし、時間を18時間とし、8当量のメシルクロライドを使用したことを除いては、例10と同様に反応を行った。1.4gの所望の産物を回収し、13C−NMRのデータは、例5で調製した化合物と同様であって、3.1%w/wの塩素置換度であった(13C−NMR)。
【0099】
(例12)
HA−Cl
10gのHAを使用し、反応温度を、55℃とし、時間を6時間とし、10当量のメシルクロライドを使用したことを除いては、例10と同様に反応を行った。8.9gの所望の産物を回収した。13C−NMRのデータは、例5で調製した化合物と同様であって、1.4%w/wの塩素置換度であった(13C−NMR)。
【0100】
(例13)
HA−Cl
20gのHAを使用し、反応温度を、50℃とし、8当量のメシルクロライドを使用したことを除いては、例10と同様に反応を行った。16gの所望の産物を回収し、13C−NMRのデータは、例5で調製した化合物と同様であって、2.6%w/wの塩素置換度であった(13C−NMR)。
【0101】
(例14)
HA−ClのTBA塩
HAのTBA(50g、MW70,000)を有する1000mLの乾DMFの攪拌下の溶液に、N流入下、メシルクロライド(10当量)を、−10℃で1時間、滴下で添加した。この混合物を、1時間、室温で保持し、その後、60℃で16時間加熱した。例10と同様に検討を行い、46.9gのものを得た。13C−NMRのデータは、例5で調製した化合物と同様であって、4.2%w/wの塩素置換度であった(13C−NMR)。
【0102】
(例15)
HA−Cl
Amberlite社製のIR−120樹脂を充填した陽イオン交換カラムにより、HA−ClのTBA塩を調製した。このカラム(72cm×4cm)に、温度自動調節可能な外部ジャケットを設け、200gの乾燥樹脂を、700mLの1Mの塩酸で、1時間、緩徐に攪拌しながら、条件付けし、蒸留水で洗浄し、カラムに注入した。このカラムを、より多くの蒸留水でリンスした。200mLのTBA−OH(40%)を、カラムに添加し、TBAOHを、再循環下で、室温において、72時間、30mL/分の流率で、40℃において保持した。最終的なpHが8.5〜9となるまで、最終的に、樹脂を、数リットルの水でリンスした。5.65gのHA−Clのナトリウムを、160mLのミリQ水に溶解した。この溶液を、その後、前もって水を排出し、再循環させたカラムに、ペリスタポンプにより、4mL/分の流率で24時間かけて、注入した。その後、カラムをリンスすることにより、HA−ClのTBAを回収し、7.7gのHA−ClのTBAを得た。
【0103】
(例16)
6−デオキシ−6−O−メトトレキシル−ヒアルロン酸(HA−6−MTX又はHA−MTX)
例12からの3.5gのHA−ClのTBA塩を有する175mLの無水DMSOの攪拌下、窒素下の溶液に、2当量(HAの骨格の繰り返し単位当たり)のメトトレキサート(5.14g)を有するDMSO(51mL)の溶液を添加した;その後、2当量(繰り返し単位当たり)の固形の炭酸セシウム(3.68g)を添加した。得た混合物を攪拌し、40時間、65℃に加熱した。その後、この混合物を、室温に冷却し、氷水に注入した。希HClでpHを7に調節し、室温で4時間攪拌した。その後、1MのNaCl(2×2.5L)に対して透析し、焼結ガラスフィルター(クラスIV)を介して、不溶性物質を濾過し、その溶液を、10KDaのメンブレンに対して限外濾過し、その後、1.2μm、0.45μm及び0.22μmのポアサイズのフィルターを介して濾過した。吸引下で黄色の溶液を濃縮し、凍結乾燥して、黄色のふわふわした固形物(0.8g)を得た。
【0104】
13C−NMRのスペクトルにより、D−グルコサミン残基の6位の位置の結合があることを確認した:64ppmのピークを、O−MTXと同定し、その強度は、元の塩素の誘導体と比較して、44ppmのピーク(Cl)の減少と対応するものである。MTXの含量は、4.2%w/w(HPLC)であり;フリーのMTXの含量は、0.5%w/w(HPLC)未満であり;水の含量は、10.5%w/wであり、MWは、63,000であり、PIは、2.8であり、残存する塩素は、0.8%w/wであった。
【0105】
(例17)
HA−MTX
HA−ClのTBA塩(1g、例10に由来のもの)を有する50mLの無水DMSOの溶液を、メトトレキサート(1.65g)及び炭酸セシウム(1.13g)で、70℃において40時間処理したことを除いては、例16と同様にコンジュゲートを調製し、例12と同様の検討を行った後、黄色の固形物(0.7g)を得た。
【0106】
H−NMRのDOESY及び13C−NMRのデータは、例16で調製した化合物と同様であって、HAのC−6に共有結合したMTXが存在することを確認した。MTXの含量は、10%w/w(HPLC)であり;フリーのMTXは、0.17%w/w(HPLC)であり;水分含量は、10%w/wであり;MWは、94,000であり;PIは、5.2であった。
【0107】
(例18)
HA−MTX
例11に由来する1.52gのHA−ClのTBA塩を有するDMSO(75mL)の溶液を、2.4gのMTX及び1.63gの炭酸セシウムで、70℃において40時間処理したことを除いては、例16と同様にコンジュゲートを調製し、通常の検討を行った後、450mgの黄色の固形物を得た。
【0108】
H−NMRのDOESY及び13C−NMRにより、その構造を確認した。MTXの含量は、16%w/w(HPLC)であり;フリーのMTXは、0.5%(HPLC)未満であり;水分含量は、12%w/wであり;MWは、63,000であり;PIは、3.2であった。
【0109】
(例19)
HA−MTX
HA−ClのTBA塩(20g、例14に由来するもの)を有するDMSO(1.25L)の溶液を、MTX(29.3g)及び炭酸セシウム(21g)で、80℃において40時間処理したことを除いては、例16と同様にコンジュゲートを調製し、5.6gの黄色の固形物を得た。
【0110】
このコンジュゲートの構造を、NMRにより支持した。13C−NMRのスペクトル(図3)により、N−アセチル−D−グルコサミンの6位に結合が生じていることを、確認した:64ppmのピークを、O−MTXと同定し、その強度は、元の塩素の誘導体と比較して、44ppmのピーク(Cl)の減少と対応するものである。MTXの含量は、18.8%w/w(HPLC)であり;フリーのMTXの含量は、0.1%w/w(HPLC)であり;水の含量は、8.2%w/wであり、MWは、11,000であり、PIは、1.4であり、残存する塩素は、1.76%w/w(NMR)であった。
【0111】
(例20)
HA−MTX
例5に由来する5gのHA−ClのTBAを有する150mLの無水DMSOの攪拌下、窒素下の溶液に、9gのMTXを有する100mLのDMSOの溶液を添加した;その後、6.43gの固形の炭酸セシウムを添加した。得た混合物を、攪拌し、70℃で40時間加熱した。その後、この混合物を室温に冷却し、200mLの氷水に注入した。1NのHClにより、pHを4.75とし、飽和NaHCO溶液(終容量500mL)を用いて、pHを7に調節した。その後、1MのNaCl(2×2.5L)に対して透析し、焼結ガラスフィルター(クラスII、III及びIV)を介して、不溶性物質を濾過し、その溶液を、10KDaのメンブレンに対して限外濾過し、その後、1.2μm、0.45μm及び0.22μmのポアサイズのフィルターを介して濾過した。吸引下で黄色の溶液を濃縮し、凍結乾燥して、黄色のふわふわした固形物(0.8g)を得た。
【0112】
H−NMRのDOSY及び13C−NMRのスペクトルにより、D−グルコサミン残基の6位の位置にMTXの結合があることを確認した。MTXの含量は、20%w/w(HPLC)であり;フリーのMTXの含量は、0.5%w/w(HPLC)未満であり;水の含量は、11.7%w/wであり、MWは、39,000であり、PIは、3.3であった。
【0113】
(例21)
6−O−アセチル−6−O−メトトレキシル−ヒアルロン酸(HA−6−MTX−6−Ac又はHA−MTX−Ac)
50gのHAのTBAを有する1LのDMF、8当量のメシルクロライドから始めて、50℃において、例10と同様にHA−Clを得た。2%w/wの塩素含量を有する36gのHA−Clを得た。例19と同様に、30gのこのHA−Clを、MTXと反応した。得た15gのHA−MTX誘導体は、7.5%w/wのMTX及び1.25%w/wの残存する塩素基を含有した。1gのHA−MTX−Clのナトリウム塩を有する100mLの無水DMSOの懸濁液を、1時間、60℃で加熱した。この均一な懸濁液を、攪拌下、100℃において、10当量の固形の無水酢酸セシウム(CsAcO)で24時間処理した。室温に冷却した後、この混合物を、限外濾過により精製し、凍結乾燥して、0.63gのHA−MTX−Acのナトリウム塩を得た。
【0114】
MTXの含量は、5%w/w(HPLC)であり;MWは、31,000であり、PIは、2.2であり、水の含量は、17%w/wであった。酢酸のメチル基に対応する20.8ppmのピーク、及びHAのアセタミド基のCHに対応する23ppmのピークを積分することで、酢酸含量を算出し、その結果、1%w/wであった。
【0115】
HA−MTXコンジュゲートの構造は、13C−NMRのスペクトルにより、支持された:44ppmのシグナルが消失し、これにより、塩素基が完全に置換されたことが確認され、63.8ppmのシグナル(−OAc)が存在し、20.8ppmのシグナル(酢酸基の)のシグナルが存在することで、グルコサミンの6位に酢酸基が存在することが確認された。
【0116】
(例22)
HA−MTX−Ac
例20に由来の2gのHA−MTXのナトリウム塩を有する200mLの無水DMSOの懸濁液を、攪拌下、100℃において、10当量の固形の無水酢酸セシウム(CsAcO)で、19時間処理した。この反応を例21と同様に行い、1.46gのHA−MTX−Acのナトリウム塩を得た。
【0117】
MTXの含量は、13%w/w(HPLC)であり;MWは、27,600であり、PIは、2.9であり、水の含量は、13%w/wであり、酢酸含量は、0.3%w/wである(例21の通り同定した)。13C−NMRのスペクトルは、例21で調製した化合物と同様である。
【0118】
(例23)
HA−MTX−Ac
例19に由来の2.5gのHA−MTXのナトリウム塩を有する250mLの無水DMSOの懸濁液を、攪拌下、100℃において、10当量の固形の無水酢酸セシウム(CsAcO)で、19時間処理した。この反応を例21と同様に行い、MTXの含量が11%w/w(HPLC)の1.6gのHA−MTX−Acのナトリウム塩を得た。水の含量は、12.6%w/wであり、酢酸含量は、1.3%w/wである(例21の通り同定した)。
【0119】
13C−NMRのスペクトルは、例21で調製した化合物と同様である。
【0120】
(例24)
6−O−ブチリル−6−O−メトトレキシル−ヒアルロン酸(HA−6−MTX−6−But又はHA−MTX−But)
例14に由来の21gのHA−Clを、80℃において、2.67当量のMTX及び2.67gのCsCOと、40時間、反応した。30%w/wのMTX含量を有する200mgの得たHA−MTX−Clを、5当量のブチル酸セシウム(CsBut)の存在下、80℃で21時間、20mLのDMSOに懸濁した。この反応を、例22と同様に検討して、20%w/wのMTX含量の0.195gのHA−MTX−Butを得た。MWは、13000であり、PIは、1.5であり、水分含量は、11.5%w/wであった。23ppmのシグナル(アセタミド基のCH)及び13.3ppm(ブチル基のCH)のシグナルを積分することにより、ブチル酸の含量を同定し、その結果、3.5%w/wであった。
【0121】
HA−MTX−Butのナトリウム塩の構造を、13C−NMRスペクトルで支持した。44ppmのシグナルが消失し、これにより、塩素基が完全に置換したことが確認され、63.8ppmのシグナル(−OBut)及び13.3ppm(ブチル酸基の)が存在することにより、グルコサミンの6位にブチル酸基が存在することが確認された。
【0122】
(例25)
HA−MTX−But
例8に由来の10gのHA−Clを、80℃において、2当量のMTX及び2当量のCsCOと、40時間、反応した。24%w/wのMTX含量を有する1.7gの得たHA−MTX−Clを、2.5当量のCsButの存在下、85℃で21時間、150mLの乾DMSOに懸濁した。この反応を、例22と同様に検討して、1.2gのHA−MTX−Butを得た。MTXの含量は、12.7%w/w(HPLC)であった。水分含量は、11.5%w/wであった。23ppmのシグナル(アセタミド基のCH)及び13.3ppm(ブチル基のCH)のシグナルを積分することにより、ブチル酸の含量を
同定し、その結果、1.7%w/wであった。
【0123】
(例26)
in vitroでの抗増殖活性
ヒトの乳癌腫の2株(MCF−7、MDA−MB−231)について、異なる還元型葉酸キャリアを発現する、ヒト卵巣癌腫(SK−OV−3、IGR−OV1)について、及び健常な乳管上皮細胞(HBL−100株)について、コンジュゲートの抗増殖活性を同定した。MCF−7、IGROV−1及びMDA−MB−231については、完全培地中(DMEM/F12、10%FBS(ウシ胎仔血清)、1%L−グルタミン(100×、200mM)及び1%ペニシリン−ストレプトマイシン(Euroclone社製)からなる)で、SKOV−1については、10%FBS(ウシ胎仔血清)、1%L−グルタミン(100×、200mM)及び1%ペニシリン−ストレプトマイシン(Euroclone社製)を有するRPMI−1640中で、HBL−100については、10%FBS(ウシ胎仔血清)、1%L−グルタミン(100×、200mM)及び1%ペニシリン−ストレプトマイシン(Sigma社製)を有するMaccoyの培地中で、MTX−ナトリウム又はコンジュゲートと、それぞれ5日間、37℃で、制御された雰囲気下(5%CO)でインキュベートした;1〜30nMのMTX−ナトリウムと同等の投与量で、コンジュゲートについて、検討した。
【0124】
6日目(5日の処理の後)の細胞毒性について、MTT試験、つまり、ミトコンドリアの脱水素酵素によってMTTのテトラゾリウム塩が青色のフォルマザンに変換し得る細胞代謝能として細胞のバイアビリティーを測定することにより、同定した;この青色を、570nmの分光光度計で測定した。下記のコンジュゲートについて、試験した。
【0125】
例 コンジュゲート コンジュゲートのタイプ
例21 HA−MTX−Ac MTX5%、Ac1%
例22 HA−MTX−Ac MTX13%、Ac0.3%
例24 HA−MTX−But MTX20%、But3.5%
例16 HA−MTX MTX4.2%
例17 HA−MTX MTX10%
例18 HA−MTX MTX16%
【0126】
種々の腫瘍細胞に対する本発明のコンジュゲートの抗腫瘍効果について、下記の表A及びBに示す;これらのコンジュゲートの効果は、本発明のコンジュゲートの調製に使用される中間コンジュゲートである例16乃至18のHA−MTXと比較した。乳癌の成長がコントロールの成長と比較して50%に低下するのに必要なコンジュゲートの濃度(IC50、μM)を、表Aに示す。
【0127】
表A
化合物 MDA−MB−231
MXT 1.80
例21 2.7
例24 2.18
例22 3.03
例17 12.0
例18 12.0
例16 18.8
【0128】
上記のデータが示すように、ヒアルロン酸とメトトレキサートとのコンジュゲートは、コンジュゲートされていない同濃度のメトトレキサートと比較して、10倍高い阻害率を生じた。さらに、データが示すように、驚くべきことに、ヒアルロン酸の第一級水酸基をコンジュゲートとさらにエステル化すると、抗増殖活性が有意に増加する。事実、例21、22及び24のコンジュゲートは、例16乃至18のコンジュゲートよりも4〜5倍低いコンジュゲートされていないメトトレキサートと同程度の阻害率を生じる。
【0129】
表Bは、種々の腫瘍細胞株の細胞成長がコントロールの成長の50%となるのに必要なコンジュゲート及びMTXの濃度(IC50、μM)を示す。
【0130】
表B
細胞株 MTX 例21 例24 例22
MCF−7 0.081 1.97 1.70 1.23
IGR−OV1 0.14 2.74 2.16 1.98
SK−OV−3 0.041 1.82 1.67 1.57
HBL−100 0.50 2.05 2.11 2.19
【0131】
これらのデータが示すように、コンジュゲートは、幅広い腫瘍細胞株に対して有意な活性を有する。事実、IC50値は、非常に低く、表Aの細胞株に対して得た本発明のコンジュゲートの値に匹敵するものである。
【0132】
(例27)
in vivoでの抗増殖活性
18〜20gの重量のBD2F1マウスを、滅菌条件下で、Zoletil(登録商標(70mg/kg)の麻酔下で、腹膜を切開し、脾臓を固定化して、100,000個のB16/F10メラノーマ細胞を脾臓内(intraspleen;i.s.)に0日目に移植した。希釈したMatrigel(登録商標)(150μg/mL)に懸濁した腫瘍細胞を、0.05mLの容量で、i.s.で注入した。B16F10メラノーマ細胞を、改変イーグル培地で培養した。細胞を、37℃で5%CO雰囲気で保持した。その後、動物を、ランダムに5つの群(それぞれ7〜8匹のメス)に分け、0日目において、100,000個のB16/F10メラノーマ細胞を、i.s.で移植し、2、1及び0.50mg/kg/日でHA−MTXを、8.5、6及び3mg/kg/日でMTX−ナトリウムを、それぞれi.v.(3、6及び9日目)で処理した。容量は、MTXと等価である。データは、4つの異なる実験に由来するものである。
【0133】
較正グリッドを装着した低出力の実体顕微鏡下での肝臓の評価、及び肝臓の転移の計数は、21日目に行った。その後、光学顕微鏡による観察用に、肝臓を、ホルムアルデヒド中で保存した。
【0134】
例18のHA−MTXの投与は、i.v.及びi.p.のいずれの投与形態の後であっても、肝臓の転移の形成を阻害するのに、効果的であった。
【0135】
表10にその結果を示す。
【0136】
処理 脾臓重量† 肝転移
(単位死亡数当たり (mg) 関連する転移 無しの動物††
単位kg当たり)
コントロール 194±69 +++++ 0/25
84%^;32%°
3、6及び9日における 149±24 + 8/16**
MTX−Na(8.5) 13%^;0%°
3、6及び9日における 159±7 ++ 7/14**
MTX−Na(6) 21%^;0%°
3、6及び9日における 227±36 +++ 6/16
MTX−Na(3) 38%^;19%°
3、6及び9日における 150±37 − 14/14***§
HA−MTX(例18)(2) 0%^;0%°
3、6及び9日における 199±27 ++ 9/16***
HA−MTX(例18)(1) 31%^;0%°
3、6及び9日における 155±16 +++ 6/15**
HA−MTX(例18)(0.5) 27%^;13%°
【0137】
^印は、肝臓に3つ以上の可視な腫瘍の塊を有するマウスが存在することを示し;
°印は、3mm以上の転移を有するマウスが存在することを示し;
†印は、21日目の脾臓の重量(同じ種の健常なマウスの脾臓であって、重量が117±11mgのものとの比較用)を示し、
††印は、群当たりマウスの総数に対する、顕微鏡で検知可能な肝臓の転移がないマウスの数を示す。
【0138】
コントロールに対する統計学差異:*p<0.01;**p<0.001;***p<0.0001及び§は、他の全てに対して異なることを示す(フィッシャーの検定)。
【0139】
上記のデータが示すように、HA−MTXは、腫瘍の移植後、3、6及び9日目に2mg/kg/日の容量(MTXと等価なもの)でi.v.処理した後に、B16/F10メラノーマ細胞の肝臓への転移を完全に消失させた。さらに、1及び0.5mg/kg/日というより低い容量での肝臓の転移の低下は、6及び3mg/kg/日のMTX−ナトリウムのものに匹敵するものであって、MTX−ナトリウムの容量の1/6に対応するものである。
【0140】
(例28)
亜急性毒性
3又は7のCBA/Lacのオスのマウスの各群に、5日間連続して、コンジュゲートを繰り返しi.p.投与した。容量は、1.5及び3.0mg/kg/日のMTXの量を動物に与えるように、算出した。250μL/動物を越えない容量で溶解した各容量で、処理を行った。処理終了後、21日の追跡期間について、致死率を評価した。同じ動物について、処理前の日と4日目のそれぞれの体重変化を測定した。
【0141】
表C
化合物 投与量 致死率 体重
(mg/kg MTX) (死亡数/全数) (g)
例19 3(mg/kg)*5死亡 7/7 −0.40
例19 1.5(mg/kg)*5死亡 0/3 −0.10
例23 3(mg/kg)*5死亡 0/3 +0.10
例23 1.5(mg/kg)*5死亡 0/3 +0.20
例25 3(mg/kg)*5死亡 0/3 +0.10
例25 1.5(mg/kg)*5死亡 0/3 +0.20
【0142】
亜急性毒性のデータから明らかなように、さらにエステル化されたコンジュゲート(例23及び25)は、さらにエステル化していないコンジュゲート(例19)よりも毒性が低い。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】例4で得たHA−6−Brの13C−NMRのスペクトルを示す。
【図2】例5で得たHA−Clの13C−NMRのスペクトルを示す。
【図3】例19で得たHA−MTXの13C−NMRのスペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸および塩の形態のいずれかのヒアルロン酸のコンジュゲートであって、
前記ヒアルロン酸のN−アセチル−D−グルコサミン単位の第一級水酸基は、化合物Aのカルボキシル基、及び下記式(I)のa−又は?−のカルボキシル基の両方でエステル化されており、
【化1】


ここで、R及びRは、互いに独立に、−NH、−OH、−OCH、C1〜C5のアルキル、=Oから選択され;
X及びYは、−C(R)=、−CH(R)−、−NH−、−N=を示し、ここで、Rは、−H、C1〜C5のアルキルであり;
Zは、−CH(R10)−、−N(R10)−、−O−を示し;
10は、−H、C1〜C5のアルキル、C1〜C5のアルケニル、若しくはC1〜C5のアルキニル、又は窒素、硫黄及び酸素からなる群から選択された1〜3のヘテロ原子を有する5若しくは6員の複素環を示し;
Arは、1,4−フェニル基、1つ以上の5若しくは6員の芳香族環で縮合された1,4−フェニル基、又は1つ以上の5若しくは6員の複素環で縮合された1,4−フェニル基を示し、この置換基は、上記のRで可能に置換され、
環A及びBは、互いに独立に、芳香族又は非芳香族であってもよいことを特徴とするコンジュゲート。
【請求項2】
前記式(I)の化合物は、メトトレキサートであることを特徴とする請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項3】
式(I)及び化合物Aの全量は、コンジュゲートの全重量に対して、0.1〜60%w/wであることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンジュゲート。
【請求項4】
コンジュゲートの全重量に対して、
前記の式(I)の化合物は、1〜40%w/wの範囲の量で、
前記化合物Aは、0.1〜30%w/wの範囲の量で、存在することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
前記化合物Aは、酢酸であり、
コンジュゲートの全重量に対して、0.1〜10%w/wの範囲の量で存在することを特徴とする請求項4に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
前記脂肪酸は、直鎖又は分岐のC1〜C5のアルキル、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、メトキシル基、カルボニル基、チオール基及びカルボキシル基からなる群から選択される置換基で置換されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
前記化合物Aは、酢酸、ブチル酸、プロピオン酸、レチノイン酸、n−プロピル酢酸、コハク酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンアセチル酸及びシクロプロパンカルボン酸からなる群から選択される脂肪酸であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
前記化合物Aは、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、グリシン、セリン、システイン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンからなる群から選択されるアミノ酸であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
前記化合物Aは、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、グリシン、セリン、システイン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンからなる群から選択されるアミノ酸の組み合わせからなるペプチドであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
前記アリール脂肪酸は、直鎖又は分岐のC1〜C5のアルキル、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、水酸基及びメトキシル基からなる群から選択される置換基でアリール基が置換されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
前記化合物Aは、フェニル酢酸、フェノキシ酢酸、ナフチル酢酸、2−(4−イソブチルフェニル)プロピオン酸、2−(6−メトキシ−2−ナフチル)プロピオン酸及び桂皮酸からなる群から選択されるアリール脂肪酸であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項12】
前記化合物Aは、置換又は無置換の安息香酸であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項13】
前記の置換の安息香酸は、ハロ安息香酸、アルキル安息香酸、ニトロ安息香酸及び2−アセトキシ安息香酸からなる群から選択されることを特徴とする請求項12に記載のコンジュゲート。
【請求項14】
前記化合物Aは、酢酸、ブチル酸、アラニン、グリシン、並びにアラニン及び/又はグリシンを含有するペプチドからなる群から選択されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項15】
アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属からなる群から選択される金属で塩化されたことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項16】
Na、K、Ca++、Mg++、Cu++、Zn++、Ag++、Au++及びCo++からなる群から選択される金属で塩化されたことを特徴とする請求項15に記載のコンジュゲート。
【請求項17】
前記ヒアルロン酸の第二級水酸基は、−OR、−OCOR、−SOH、−OPO、−O−CO−(CH−COOH及び−O−(CH−OCORを形成するように、誘導体化され、
nは、1〜4であり、
Rは、C1〜C10のアルキルであることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項18】
前記ヒアルロン酸の第二級水酸基は、−NH及び−NHCOCHから選択される置換基を形成するように、誘導体化されることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項19】
細胞の過増殖を特徴とする病態を処置する医薬を調製することへの、請求項1乃至18のいずれか一項に記載のコンジュゲートの使用。
【請求項20】
前記病態は、腫瘍、皮膚疾患、乾癬、炎症及び関節リューマチからなる群から選択されることを特徴とする請求項19に記載の使用。
【請求項21】
医薬的に許容な賦形剤及び/又は希釈剤と組み合わせた、請求項1乃至18のいずれか一項に記載のコンジュゲートを含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項22】
請求項1乃至18のいずれか一項に記載のコンジュゲートを調製する方法。
【請求項23】
下記に示す順序で実行される各ステップを有する請求項22に記載の方法であって、
(a)フリーの形態又は塩の形態のヒアルロン酸のN−アセチル−D−グルコサミン単位の第一級水酸基を塩素化するステップと;
(b)塩素原子を置き換えることにより、塩素化されたヒアルロン酸と、式(I)の化合物のカルボキシル基との間にエステル結合を形成するステップと;
(c)適当なアシル求核試薬による残存する塩素原子を置き換えることにより、ステップ(b)の生成物と、化合物Aとの間にエステル結合を形成するステップと;
を有することを特徴とする方法。
【請求項24】
塩素化に使用する試薬は、メタンスルフォニルクロライドを有するN,N−ジメチルホルムアミドであることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ヒアルロン酸と、下記式(I)の化合物
【化2】


とのコンジュゲートであって、
ここで、R及びRは、−NH、−OH、−OCH、C1〜C5のアルキル、=Oを示し;
X及びYは、−C(R)=、−CH(R)−、−NH−、−N=を示し、ここで、Rは、−H、C1〜C5のアルキルを示し;
Zは、−CH(R10)−、−N(R10)−、−O−を示し、ここで、R10は、−H、C1〜C5のアルキル、C1〜C5のアルケニル、若しくはC1〜C5のアルキニル、又は窒素、硫黄及び酸素からなる群から選択された1〜3のヘテロ原子を有する5若しくは6員の複素環を示し;
Arは、1,4−フェニル基、1つ以上の5若しくは6員の芳香族環で縮合された1,4−フェニル基、又は1つ以上の5若しくは6員の複素環で縮合された1,4−フェニル基を示し、この置換基は、上記のRで可能に置換され;
環A及びBは、互いに独立に、芳香族又は非芳香族であり;
ヒアルロン酸のポリマー鎖に化学的に結合された残存する塩素が、3%w/w未満で含有することを特徴とするコンジュゲート。
【請求項26】
残存する塩素が0.1%w/w未満で含有することを特徴とする請求項25に記載のコンジュゲート。
【請求項27】
下記に示す順序で実行される各ステップを有する請求項25に記載のコンジュゲートを取得する方法であって、
(a)フリーの形態又は塩の形態のヒアルロン酸のN−アセチル−D−グルコサミン単位の第一級水酸基を塩素化するステップと;
(b)塩素原子を置き換えることにより、塩素化されたヒアルロン酸と、式(I)の化合物のカルボキシル基との間にエステル結合を形成するステップと;
を有することを特徴とする方法。
【請求項28】
下記に示す順序で実行される各ステップを有する請求項26に記載のコンジュゲートを取得する方法であって、
(a)フリーの形態又は塩の形態のヒアルロン酸のN−アセチル−D−グルコサミン単位の第一級水酸基を塩素化するステップと;
(b)塩素原子を置き換えることにより、塩素化されたヒアルロン酸と、式(I)の化合物のカルボキシル基との間にエステル結合を形成するステップと;
(c)適当なアシル求核試薬によるステップ(b)の残存する生成物にエステル結合を形成することにより、残存する塩素原子を置き換えるステップと;
(d)ステップ(c)で得たコンジュゲートの選択的な脱アセチル化を行うステップと;
を有することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−540790(P2008−540790A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511702(P2008−511702)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062388
【国際公開番号】WO2006/122954
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(507381396)エウランド ファルマチェウティカルズ リミテッド (4)
【Fターム(参考)】