説明

ヒストン

各プローブ分子がヒストンタンパク質、アイソフォーム、変異体、またはその修飾体由来の配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子で官能化された基板支持体を含むことを特徴とするヒストンマイクロアレイ。プローブ分子が異なるヒストンタンパク質由来の配列を含むことを特徴とするヒストンマイクロアレイ。本発明のヒストンマイクロアレイは、ヒストンおよび特定のヒストン修飾に対して特異性をもつ抗体のスクリーニングおよび評価法に利用できる。また、ヒストン修飾が、ヒストン修飾酵素および結合タンパク質の活性と結合に及ぼす影響のスクリーニングおよび評価法にも利用できる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明はヒストンに関し、特にヒストン特異的抗体およびヒストンの修飾に対する抗体に関する。本発明はそのような抗体をスクリーニングおよび/または同定するための装置、ならびにそのような装置を製造する方法に及ぶ。また本発明は、ヒストンおよびその修飾物に特異性を示す抗体のスクリーニング法と評価法にも及ぶ。本発明はまた、ヒストンの修飾が及ぼす、活性への影響やヒストン特異的酵素や結合タンパク質との結合への影響をスクリーニングし、評価する方法にも及ぶ。
【0002】
ヒストンはDNAのパッケージングに関与するタンパク質の1種で、アルギニンおよび/またはリジンに富む。ヒストンの主要なクラスはH1(‘リジンに富む’),H2A,H2B(‘わずかにリジンに富む’),H3,H4(‘アルギニンに富む’)に分類されている。ヒストンはDNAと相互作用し、アルギニン/リジン残基の正電荷とDNAのリン酸基の負電荷間で形成される塩橋を介してクロマチンを形成する。ヒストンは、遺伝子発現やDNA複製などのDNAへの接近を必要とするすべての分子過程の制御に関与している。したがってヒストンは遺伝子の‘オン‘、‘オフ‘の切り換えに関与する。ヒストンは化学的な目印または’タグ‘(すなわち翻訳後修飾)が付着し、標識されることにより機能していると考えられている。これらのタグはいくつかの理由で複雑である。まず図1に示すように、ヒストンに起こる化学修飾にはアセチル化、メチル化、リン酸化など多くの種類があるからである。次に、化学修飾はヒストンタンパク質の多くの異なる残基上で起こるからである。
【0003】
しかしながら、その修飾が何であるか、またそれがヒストンのどこで起こるのかが遺伝子制御にとって重要であるということは明らかである。ヒストンが介在する遺伝子制御は生物学の基礎知識として重要であり、また遺伝子制御がうまく行われないがんや白血病などの多くの疾病においても重要である。エピジェネティクスは、核内で起こる、DNA配列の変化を必要としないプロセスの制御とそれに関連した治療を研究する分野であるが、場合によっては遺伝子発現をオンまたはオフに戻すことで遺伝子発現の欠陥を修復することを目指している。したがって、エピジェネティクスは加齢、遺伝病、がんなどの病気の治療に新しい方法をもたらすものである。
【0004】
ヒストンとその様々な修飾に関する現在の研究は抗体が利用できるかどうかに大きく依存している。これらの抗体は、理想的には、特別のヒストンタンパク質、既知のヒストン修飾、およびたとえばヒストンH3のセリン10のリン酸化などの特定の修飾部位に対しても高い特異性を有する。しかし、ヒストン抗体に関するひとつの問題は、抗体の性質がほとんどわかっておらず、特異性がないことがしばしばであるということである。たとえばヒストン抗体は、(iii)ヒストンH3のセリン残基10における、すなわち配列AKSTGの関係におけるセリンのリン酸化というよりもむしろ、あらゆる(i)アミノ酸残基のリン酸化、または(ii)セリンのリン酸化を認識し得る。抗体を利用する際さらに問題となるのは、近隣で起こる他の修飾も抗体の特異性に影響し得ることである。たとえば、ヒストンH3において、リジン9のメチル化がセリン10のリン酸化の認識に影響するかもしれない。
【0005】
したがって、エピジェネティク解析などのヒストンとその多様な修飾体を対象とする研究分野において、抗体の特異性が明確に決定されていないことが、学術的、商業的研究の大きな障害となっている。ヒストンタンパク質やその修飾体に対して高い特異性を示す抗体を得ることが困難だからである。したがってヒストン研究分野において、ヒストン抗体を検出し単離する装置と方法を提供することが大いに必要とされている。
【0006】
その他ヒストンとその修飾体に関する研究は、ヒストンタンパク質のアミノ酸残基の修飾反応を触媒する、ヒストンに特異的な酵素の入手と利用に大きく依存している。これらの酵素も抗体と同様、特定のヒストンタンパク質の、既知のヒストン修飾、また、たとえばヒストンH3のセリン10のリン酸化というような特定の修飾部位に対し高い特異性をもつ。
【0007】
したがって本発明の目的は、ここに挙げたものであろうとなかろうと、先行技術の問題点のいくつかを解決または改善することであり、ヒストン特異的抗体や、多様なヒストン修飾に対し特異性を示す抗体を検出、スクリーニング、同定し、および/または単離する装置と方法を改良し提供することである。
【0008】
そこで本発明者らは、多様なヒストンタンパク質(例えばH3,H4,H2AおよびH2B)とそれらの修飾体に対する抗体の特異性を解析した。結果は図1にまとめた。
【0009】
ヒストンタンパク質またはそれらの修飾体由来の一連のペプチドをプローブ分子としてガラススライドに付着させ、ヒストンマイクロアレイを作製した。次にこのマイクロアレイを、ヒストンまたはヒストン修飾体に対し特異性をもつと考えられる多様な抗体を含む溶液にさらした。実施例1、2および図8−13に示すように、このヒストンマイクロアレイは、多様なヒストンタンパク質、ヒストンアイソフォーム、それらの変異体だけでなく、予想外にも、そのようなヒストンタンパク質の翻訳後修飾に対する抗体の検出、単離、および/または評価においても非常に有効であった。
【0010】
したがって、本発明の第1の態様により、少なくとも2つのプローブ分子で官能化された基板支持体を含むヒストンマイクロアレイが提供される。各プローブ分子は、ヒストンタンパク質、またはそのヒストンアイソフォーム、またはその変異体、またはその修飾体由来の配列を含む。
【0011】
好ましくは、少なくとも1つのプローブ分子が、ヒストン抗体標的分子などの、ヒストン免疫グロブリン標的分子の結合するように適合される。しかしながら、各プローブ分子がヒストン抗体標的分子の結合するように適合されることが好ましい。したがって本発明によるマイクロアレイはヒストン抗体マイクロアレイあるいはスクリーンと呼んでよい。本発明によるマイクロアレイは、ヒストンタンパク質、またはそのアイソフォーム、またはその変異体、またはその修飾体由来の少なくとも2つのプローブ分子を含むので、アレイによって少なくとも2つのプローブ分子の抗体結合能を比較できる、ということを本発明者らは示した。したがってこのマイクロアレイは、ヒストンタンパク質およびそのアイソフォーム、変異体または修飾体に対し特異性をもつヒストン抗体を検出、スクリーニング、同定、単離、および/または評価するための、非常に効率よく簡便で安価な方法を提供する。
【0012】
したがって、本発明の第2の態様により、ヒストン抗体の検出法が提供される。その方法は、(i)ヒストン抗体標的分子を、ヒストンタンパク質、またはそのアイソフォーム、またはその変異体、またはその修飾体由来の配列を含む少なくとも2つのプローブ分子で官能化された基板支持体を含むヒストンマイクロアレイと接触させるステップと、(ii)プローブ分子に付着するヒストン抗体が存在するか否かを検出するステップを含む。
【0013】
本方法は、好ましくは、検出ステップ(ii)の後に、検出したヒストン抗体をスクリーニング、同定、単離、および/または評価するステップを有する。したがって本発明は、ヒストンマイクロアレイを提供するとともに、ヒストン特異的抗体、およびヒストン変異体とアイソフォームとを含む、修飾されたヒストン特異的抗体をスクリーニングする方法も提供する。
【0014】
好ましくは、各プローブ分子の配列は、ヒストンタンパク質、またはアイソフォーム、または変異体、またはそれらの修飾体に由来し、各ペプチド、その誘導体、またはそれらのアナログを含む。
【0015】
用語“に由来する”とは、そのペプチド、誘導体またはそれらのアナログが、ヒストンタンパク質、またはアイソフォーム、または変異体、またはそれらの修飾体を構成するアミノ酸配列の誘導体または修飾体を含むか、または誘導体または修飾体そのものであることを意味する。したがって、基板支持体上に官能化される各プローブ分子は、ヒストンタンパク質、またはアイソフォーム、または変異体、またはそれらの修飾体を構成するアミノ酸配列に基づく、ペプチド、誘導体またはそれらのアナログを含む。特に、ヒストンタンパク質、またはアイソフォーム、または変異体、またはそれらの修飾体に由来する、ペプチド、誘導体、またはアナログは、マイクロアレイ上で機能的なプローブ分子として働き、特にヒストン抗体を検出するための有効なプローブとして働くことが示されている。“誘導体またはそれらのアナログ”とは、ヒストンタンパク質、またはアイソフォーム、または変異体、またはそれらの修飾体に由来する配列のアミノ酸残基が、側鎖またはペプチド構造の性質が似ている(天然アミノ酸、非天然アミノ酸またはアミノ酸疑似体いずれかの)残基に置換されることもある、ということである。さらにそのようなペプチドの末端は、アセチル基またはアミド基と似た性質をもつN末端またはC末端保護基で保護されていることもある。また、修飾アミノ酸は、本発明に従ったさらに好ましい誘導体またはアナログを形成する、当業者にとっては既知であるかもしれない多数のアミノ酸変異型を有するヒストン由来のペプチド、または誘導体またはそれらのアナログに置換されることも考えられる。そのような誘導体ペプチドまたはアナログペプチドは、修飾によって化学的性質が大きく変わらなければ、有効なプローブ分子となる。たとえば、アルギニン側鎖またはリジン側鎖のアミンの水素はメチレン基に置き換えられてよい(−NH→−NH(Me)または−N(Me))。さらに、ペプチドのN末端アミノ基は、カルボキシル酸との相互作用により保護されていることもあり、C末端カルボキシル基は、アミンとの相互作用により保護されていることもある。より具体的には、本発明で用いられるペプチドのアナログはD−アミノ酸ペプチドを含む。
【0016】
具体的にヒストン抗体の検出にマイクロアレイを利用する際、ヒストンタンパク質、またはアイソフォーム、または変異体、またはそれらの修飾体に由来する配列をエピトープ配列とよんでよい。“エピトープ配列”とは、抗体が認識し標的とし得る配列である。
【0017】
用語“ヒストンタンパク質”とは、たいていの真核細胞においてクロマチンの主要な成分を構成するタンパク質の1種を意味する。ヒストンタンパク質には、H1,H2A,H2B,H3およびH4など、多様な種類があることは当業者にとって周知のことである。したがって本発明のマイクロアレイは、ヒストン1(H1)、ヒストン2A(H2A)、ヒストン2B(H2B)、ヒストン3(H3)、およびヒストン4(H4)から成るタンパク質の群から別個に選択されるヒストンタンパク質由来の配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子を含むことが好ましい。したがって本マイクロアレイは、H1タンパク質、H2Aタンパク質、H2Bタンパク質、H3タンパク質および/またはH4タンパク質、またはアイソフォーム、または変異体、またはこのようなヒストンタンパク質の修飾体由来の配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子を含んでもよい。
【0018】
好ましくは、本マイクロアレイは、ヒト・ヒストンタンパク質、またはそれらのアイソフォーム、変異体または修飾体由来の配列を含む、プローブ分子を含む。これらのタンパク質のアミノ酸配列は固有のアクセス番号によってもっともよく定義されており、この番号は‘Suissprot/Uniprot’データベース (http://www.ebi.uniprot.org/index.shtml)から簡単に入手できる。ヒストンタンパク質が進化的に最もよく保存されているタンパク質であることは、周知のことであろう。したがって、たいていの哺乳類のヒストンタンパク質は非常に似通っており、互いに同一なこともしばしばある。たとえば、ヒト・ヒストン1はサル・ヒストン1と非常に似ている。しかし、各ヒストンタンパク質の配列間には多少の差異がみられる傾向があり、この差異によりヒストンアイソフォームと各ヒストンタンパク質変異体が形成される。ヒストンアイソフォームは保存性の高いヒストンタンパク質で、すべての’標準的な’ヒストンタンパク質(すなわちH1,H2A,H2B,H3およびH4)はアイソフォームをもつ。ヒストンアイソフォームは、少数(約1−3)のアミノ酸置換を含むことで、互いに異なる。それらは一般的に非常に豊富なタンパク質であるが、これらの異なるアイソフォームがなぜ存在するのか、機能上の理由は不明である。
【0019】
たとえば、もっとも豊富なヒト・ヒストン1(H1)アイソフォームのSuissprotアクセス番号は、H1.0 (P16401), H1.1 (Q02539), H1.2 (P16403), H1.3 (P16402), H1.4 (P10412), H1.5 (P16401)である。 ヒト・ヒストン2A(H2A)アイソフォームのSuissprotアクセス番号は、H2A.1 (POCOS8), H2A.2 (Q6FI13), H2A.3 (P20671), H2A.3 (P20671)である。 ヒト・ヒストン2B(H2B)アイソフォームのSuissprotアクセス番号は、H2A.a (P62807), H2A.b (P58876), H2A.c (Q99880), H2A.d (Q99877), H2A.e (QQ99879), H2A.f (P33778)である。 ヒト・ヒストンH3(H3)アイソフォームのSuissprotアクセス番号は、H3.1 (P68431), H3.3 (P84243)である。ヒト・ヒストンH4(H4)アイソフォームのSuissprotアクセス番号はP62805である。
【0020】
したがって、用語“ヒストンアイソフォーム”とは、アミノ酸配列にわずかな差異を含む、ヒストンタンパク質(すなわちH1,H2A,H2B,H3またはH4)の修飾体を意味している。よってヒストンアイソフォームは、対応するヒストンタンパク質(たとえばヒトH3.1とヒトH3.3)と少なくとも約85%の相同性をもつこともある。
【0021】
したがって、好ましいヒストンアイソフォームは、プローブ分子として使用してもよく、H1.0、H1.1、H1.2、H1.3、H1.4、H1.5、H2A.1、H2A.2、H2A.3、H2B.a、H2B.b、H2B.c,H2A.d,H2A.e,H2A.f、H3.1、H3.2、H3.3、およびH4とそれらに関連する異種のホモログから成る、ヒストンアイソフォーム群から別個に選択される。
【0022】
いくつかの標準的なヒストン(たとえばH3およびH2A)には、ヒストンアイソフォームだけでなくヒストン変異体も存在する。ヒストン変異体は少なくとも2つの異なる領域から成る。ひとつは(i)保存性の高い‘コア’領域(またはドメイン)で、実際には標準的なヒストン配列(たとえばH3)中の相当領域と同じである。もうひとつは(ii)タンパク質のN末端またはC末端‘尾部’にある、ひとつか2つの可変領域で、標準的なヒストン配列中の相当領域とは非常に異なっている。最新のデータは、ヒストン変異体がDNAのパッケージングに関与すると示唆している。しかし、変異体タンパク質の配列によって機能的特徴が異なってくる。ヒストン変異体は染色体の機能的に異なる領域と関連している。
【0023】
たとえば、ヒト・ヒストン変異体にはH2A-X (Suissprotアクセス番号P16104), H2A-Z(Suissprotアクセス番号POCOS5), CENP-A(Suissprotアクセス番号P49450)が含まれる。CENP-Aはセントロメアで見出される。
【0024】
よって、“ヒストン変異体”とは、ヒストンアイソフォームよりもアミノ酸配列に大きな差異を含む、たとえば、相当するヒストンタンパク質(たとえばヒトCENP-AとH3.1)との同一性が約85%以下のような、ヒストンタンパク質の修飾体である。
【0025】
したがって、好ましいヒストン変異体は、プローブ分子において用いてもよく、H2A-X、H2A-Z、マクロ- H2A, H2A-Bbd, CENP-A、およびそれらに関連する異種のホモログから成る、変異体群から別個に選択される。
【0026】
また、ヒストンタンパク質またはアイソフォームまたはそれらの変異体は、それらのアミノ酸残基に付加される化学的な‘標識’または‘タグ’ でそれぞれ化学修飾されてもよいと考えられる。これらのタグまたは標識は、アセチル化、メチル化、ユビキチン化、リン酸化から成り、ヒストンタンパク質またはアイソフォームまたはそれらの変異体の異なる多数の部分に付加してもよい。図1に示すように、たとえばヒストンの修飾は、リジンのメチル化、リジンのアセチル化、リジンのユビキチン化、セリンのリン酸化、トレオニンのリン酸化およびアルギニンのメチル化を含んでよい。
【0027】
したがって、用語“ヒストン修飾”は、ヒストンタンパク質、アイソフォームまたはそれらの変異体中の少なくとも1つのアミノ酸残基の、翻訳後の化学修飾、標識化またはタグ化を意味する。好ましいヒストン修飾は、プローブ分子中の配列として利用してもよく、ヒストンのリン酸化、メチル化、アセチル化、およびユビキチン化から別個に選択し得る。特に好ましいヒストン修飾は、プローブ分子中の配列として利用してもよく、アルギニンまたはリジンのメチル化、トレオニンまたはセリンのリン酸化、リジンのアセチル化、リジンのユビキチン化から別個に選択し得る。さらに、リジンはモノメチル化、ジメチル化、またはトリメチル化されてもよく、アルギニンはモノメチル化またはジメチル化されてもよく、これらも好ましいヒストン修飾体を形成し得ることは評価されることであろう。
【0028】
マイクロアレイに用いられるプローブ分子の配列は、プローブ分子をハイブリダイズやスクリーニングする、抗体標的分子の性質や配列に依存すると考えられる。したがって、ペプチドがヒストンタンパク質、アイソフォーム、変異体、またはそれらの修飾体に由来するならば、本発明は特定のペプチド配列に限定されない、と当業者は考えるであろう。しかし、本ペプチド配列は、少なくとも10個のアミノ酸を含むことが好ましく、より好ましくは、少なくとも15アミノ酸残基長の配列を含む。短い(たとえば10アミノ酸またはそれ未満)ペプチド配列ならば選択性と感度が制限される一方、より長い(たとえば10アミノ酸またはそれより多い)ペプチドまたはポリペプチド配列ならば選択性と感度が広がる。さらに、より長い(たとえば15アミノ酸またはそれより多い)ペプチド配列ならばより感度が広がる、と当業者は考えるであろう。したがって、より好ましくは、本ペプチド配列は少なくとも17個のアミノ酸残基を含み、さらに好ましくは、少なくとも20個のアミノ酸残基を含む。好ましくは、本ペプチド配列は、100個未満のアミノ酸を含み、より好ましくは、50個未満のアミノ酸残基を含み、最も好ましくは、35個未満のアミノ酸長を含む。
【0029】
1つの実施形態において、本マイクロアレイは、異なるヒストンタンパク質に由来する配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子で官能化されてよい。たとえば具体的には、マイクロアレイ上の少なくとも1つのプローブ分子は、ヒストンH3由来の配列を含んでもよいし、少なくとも1つのプローブ分子はヒストンH4由来の配列を含んでもよい。別の実施形態において、マイクロアレイ上の少なくとも1つのプローブ分子は、ヒストンH1由来の配列を含んでもよいし、少なくとも1つのプローブ分子はヒストンH2A由来の配列を含んでもよい。ヒストン由来の配列の多種の組み合わせがあり得ると、当業者は考えるであろう。異なるヒストンに由来するプローブ分子を使用することにより、選択した2つのヒストンの比較実験が可能である。
【0030】
しかし、好ましい実施形態では、本マイクロアレイはプローブ分子が同じヒストンタンパク質に由来する配列を含む。たとえば、ヒストンH1,ヒストンH3,ヒストンH4,またはヒストンH2Aおよび/またはヒストンH2Bのいずれかにより、それぞれヒストンH1,H3,H4,H2A,またはH2Bマイクロアレイが形成される。
【0031】
したがって好ましい実施形態では、本マイクロアレイはヒストンH3タンパク質、アイソフォーム、変異体、またはそれらの修飾体由来の配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子を含んでよい。たとえば、図4は、ヒト・ヒストンH3とその修飾体由来の適当な配列を選択したものを示す。ここで配列はSEQ ID No.1からSEQ ID No.103と名付けられている。SEQ ID No.1として識別される配列は、ヒト・ヒストンH3タンパク質の一部の21アミノ酸である。SEQ ID No.2として識別される配列は、最初のアルギニン残基(R)がモノメチル化されている以外はSEQ ID No.1と同一である。SEQ ID No.3として識別される配列は、最初のアルギニン残基(R)がジメチル化されている以外はSEQ ID No.1と同一である。SEQ ID No.4として識別される配列は、最初のアルギニン残基(R)がモノメチル化され、また最初のトレオニン残基(T)がリン酸化されている以外はSEQ ID No.1と同一である、などである。SEQ ID No.39-103として識別される配列は、ヒストンH3タンパク質の異なる領域に由来し、様々に修飾されているものもあり、そうでないものもある。
【0032】
したがって、好ましいマイクロアレイは、SEQ ID No.1からSEQ ID No.103、またはそれらの組合わせとして識別される配列群から別個に選択した配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子を含む。好ましくは、本マイクロアレイは SEQ ID No.1からSEQ ID No.103として識別される実質的にすべての配列を含む、複数のプローブ分子を含む。
【0033】
さらに好ましい実施形態において、本マイクロアレイは、ヒストンH4タンパク質、アイソフォーム、変異体、またはそれらの修飾体由来の配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子を含んでよい。たとえば、図5は、ヒト・ヒストンH4およびその修飾体由来の適当な配列を選択したものを示す。ここで配列はSEQ ID No.104からSEQ ID No.147と名付けられている。SEQ ID No.104として識別される配列は、ヒト・ヒストンH3タンパク質の一部の21アミノ酸である。SEQ ID No.105として識別される配列は、最初のセリン残基(S)がリン酸化されている以外はSEQ ID No.104と同一である。SEQ ID No.106として識別される配列は、最初のアルギニン残基(R)がモノメチル化されている以外はSEQ ID No.104と同一である。SEQ ID No.107として識別される配列は、最初のアルギニン残基(R)がジメチル化されている以外はSEQ ID No.104と同一である、などである。SEQ ID No.123-147として識別される配列は、ヒストンH4タンパク質の異なる領域に由来し、様々に修飾されているものもあり、そうでないものもある。
【0034】
したがって、好ましいマイクロアレイは、SEQ ID No.104からSEQ ID No.147として識別される配列、またはそれらの組合わせの群から別個に選択した配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子を含む。好ましくは、本マイクロアレイはSEQ ID No.104からSEQ ID No.147として識別される実質的にすべての配列を含む、複数のプローブ分子を含む。
【0035】
さらに好ましい実施形態において、本マイクロアレイは、ヒストンH2Aタンパク質、アイソフォーム、変異体、またはそれらの修飾体由来の配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子を含んでよい。たとえば、図6は、ヒト・ヒストンH2Aとその修飾体由来の適当な配列を選択したものを示す。ここでそれらの配列はSEQ ID No.148からSEQ ID No.167と名付けられている。SEQ ID No.148として識別される配列は、ヒト・ヒストンH2Aタンパク質の一部の23アミノ酸である。SEQ ID No.149として識別される配列は、最初のセリン残基(S)がリン酸化されている以外はSEQ ID No.148と同一である。SEQ ID No.150として識別される配列は、最初のセリン残基(S)がリン酸化され、最初のリジン残基(K)がアセチル化されている以外はSEQ ID No.148と同一である。SEQ ID No.151として識別される配列は、最初のリジン残基(K)がアセチル化されている以外はSEQ ID No.148と同一である、などである。SEQ ID No.158-167として識別される配列は、ヒストンH2Aタンパク質の異なる領域に由来し、様々に修飾されているものもあり、そうでないものもある。
【0036】
したがって、好ましいマイクロアレイは、SEQ ID No.148からSEQ ID No.167として識別される配列、またはそれらの組合わせの群から別個に選択した配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子を含む。好ましくは、マイクロアレイはSEQ ID No.148からSEQ ID No.167として識別される実質的にすべての配列を含む、複数のプローブ分子を含む。
【0037】
さらに好ましい実施形態において、本マイクロアレイは、ヒストンH2Bタンパク質、アイソフォーム、変異体、またはそれらの修飾体由来の配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子を含んでよい。たとえば、図7は、ヒト・ヒストンH2Bおよびその修飾体由来の適当な配列を選択したものを示す。ここでそれらの配列はSEQ ID No.168からSEQ ID No.206と名付けられている。SEQ ID No.168として識別される配列は、ヒト・ヒストンH2Bタンパク質の一部の21アミノ酸である。SEQ ID No.169として識別される配列は、最初のリジン残基(K)がアセチル化されている以外はSEQ ID No.168と同一である。SEQ ID No.170として識別される配列は、最初のリジン残基(K)がモノメチル化されている以外はSEQ ID No.168と同一である。SEQ ID No.171として識別される配列は、最初のリジン残基(K)がジメチル化されている以外はSEQ ID No.168と同一である、などである。 SEQ ID No.178-206として識別される配列は、ヒストンH2Bタンパク質の異なる領域に由来し、様々に修飾されているものもあり、そうでないものもある。
【0038】
したがって、好ましいマイクロアレイは、SEQ ID No.168からSEQ ID No.206として識別される配列、またはそれらの組合わせの群から別個に選択した配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子を含む。好ましくは、本マイクロアレイはSEQ ID No.168からSEQ ID No.206として識別される実質的にすべての配列を含む、複数のプローブ分子を含む。
【0039】
ヒストンH2AとH2Bは類似しているため、ヒストンH2Aタンパク質とH2Bタンパク質、またはアイソフォーム、変異体、またはそれらの修飾体に由来する配列を含む複数のプローブ分子を含むマイクロアレイを得ることが有用であると考えるのは、当然であろう。したがって、そのような具体例として、本マイクロアレイは、SEQ ID No.148からSEQ ID No.206として識別される配列、またはそれらの組合わせの群から別個に選択した配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子を含んでもよい。好ましくは、本マイクロアレイはSEQ ID No.148からSEQ ID No.206として識別される実質的にすべての配列を含む、複数のプローブ分子を含む。
【0040】
さらに好ましい実施形態において、本マイクロアレイは、ヒストンH1タンパク質、アイソフォーム、変異体、またはそれらの修飾体由来の配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子を含んでよい。前述の、または公的に利用可能なデータベースを用いて、当業者は多様なヒストンH1配列のペプチドを考え得るであろう。それらのペプチドは、H1ヒストンマイクロアレイを形成するためのプローブ分子として利用されてもよい。もっとも豊富に存在するヒト・ヒストンH1アイソフォームのSuissprotアクセス番号は、H1.0 (P16401), H1.1 (Q02539), H1.2 (P16403), H1.3 (P16402), H1.4 (P16412)およびH1.5 (P16401)である。
【0041】
本マイクロアレイはヒストン特異的(たとえばH1のみに由来するプローブ、またはH3のみに由来するプローブなど)であってよい。また、本マイクロアレイはすべてのヒストンに由来するプローブ分子を含んでよい。したがって本発明によるマイクロアレイは、SEQ ID No.1からSEQ ID No.206として識別される配列のあらゆる組合わせを有する配列を含む、プローブ配列で官能化されてよいと考えられる。したがって、本発明は、1種だけのヒストンタンパク質、または多種のヒストンタンパク質のいずれかに由来する配列を含むプローブ分子で官能化された一連の多様なマイクロアレイを提供すると考えられる。したがってこれらのマイクロアレイは、たとえばヒストンH1マイクロアレイ、またはヒストンH3マイクロアレイ、などとして、第2の態様による方法を用いてH1またはH3特異的抗体を検出し、さらにそれらの性質を決定するのに利用できる、と考えられる。
【0042】
本発明の実施形態において、マイクロアレイは、ヒストンタンパク質、アイソフォーム、変異体、またはそれらの修飾体由来の配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子を含んでよい。ここで、少なくとも2つの配列は実質的に互いに同じであるが、それらは少なくとも1つのヒストン修飾を含む。好ましくは、それらの修飾は異なっている。一つの例を挙げると、SEQ ID No.2-38として識別される配列は、SEQ ID No.1(ヒストンH3)と同一であるが、少なくともひとつのヒストン修飾を含む。これらの配列のいくつかは、少なくとも2つのヒストン修飾を含むと考えられる。ヒストンH2A,H2B,H1およびH4についても同様である。
【0043】
しかし、別の実施形態において、本マイクロアレイは、ヒストンタンパク質、アイソフォーム、変異体、またはそれらの修飾体由来の配列を含む少なくとも2つのプローブ分子を含んでよく、ここで、少なくとも2つの配列は実質的に互いに異なっており、それらは異なるヒストン修飾を含んでも含まなくてもよい。一つの例を挙げると、SEQ ID No.39-103として識別される配列はSEQ ID No.1(ヒストンH3)とは異なっており、配列には少なくともひとつのヒストン修飾があり、配列にはヒストン修飾がまったくない。ヒストンH2A,H2B,H1およびH4についても同じである。
【0044】
本発明者らは、生細胞で観察されることを反映し、広範囲にわたる一連の配列を構成する複数のプローブ分子によって官能化されたマイクロアレイの作成を試みた。したがって、本マイクロアレイは、複数のプローブ分子によって官能化された基板支持体を含むことが好ましい。各プローブ分子は、(i)ヒストン修飾がまったくない、(ii)少なくともひとつのヒストン修飾を含む、および/または(ii)複数のヒストン修飾を含む、ヒストンタンパク質配列に由来するペプチド配列を含む。
【0045】
したがって、本発明によるマイクロアレイは、系統的なペプチド群を含み、それらを合わせて解析することで、どの抗体がどのペプチドに結合するのかという、抗体の特異性を決定するのに有効である。さらに、本発明による方法は、非修飾および修飾ヒストンプローブ分子の、包括的で系統的なアレイの使用に基づく。したがって、本発明によるマイクロアレイおよび方法は、(i)ヒストン特異的抗体、(ii)本マイクロアレイを、抗体標的分子を含む溶液にさらすことによる特定のヒストン修飾体に対する抗体、および(iii)ある状況の配列中(すなわち、隣接している残基が修飾されていない場合)のヒストン修飾のみ認識する抗体、をスクリーニングおよび/または同定するのに効果的に利用できると本発明者らは考えている。したがって本発明は、ヒストン抗体の特異性を包括的にかつ非常に正確に決定できる、系統的な手法を提供する。
【0046】
したがって、最も好ましい実施形態において、本マイクロアレイは、それぞれがヒストンタンパク質、アイソフォーム、変異体、またはその修飾体由来の配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子で官能化された、基板支持体を含む。ここで少なくとも1つの配列は、1または複数の修飾アミノ酸を含み、また少なくとも別の配列は修飾アミノ酸を含まない。本発明者らは、プローブ分子のこの設定により、わずかに異なる2つまたはそれより多数の配列に対する抗体の結合を比較できることを見出した。
【0047】
マイクロアレイ上の十分な数のプローブ分子は、ヒストンタンパク質、アイソフォーム、変異体、またはその修飾体由来の配列を含むと考えられる。したがって、好適には、本発明によるマイクロアレイは少なくとも3つのプローブ分子、より好ましくは少なくとも4つのプローブ分子、さらに好ましくは少なくとも5つのプローブ分子を含んでよい。各プローブ分子は、ヒストンタンパク質、アイソフォーム、変異体、またはその修飾体由来の配列を含む。本マイクロアレイは少なくとも10個のプローブ分子を含み、より好適には少なくとも20個のプローブ分子、さらに好適には少なくとも30個のプローブ分子を含むと予想される。各プローブ分子は、ヒストンタンパク質、アイソフォーム、変異体、またはその修飾体由来の配列を含む。好ましくは、本マイクロアレイは少なくとも40個のプローブ分子を含み、より好ましくは少なくとも50個のプローブ分子、さらに好ましくは少なくとも60個のプローブ分子を含む。各プローブ分子は、ヒストンタンパク質、アイソフォーム、変異体、またはその修飾体由来の配列を含む。さらに好ましくは、本マイクロアレイは少なくとも80個のプローブ分子を含み、より好ましくは少なくとも100個のプローブ分子、さらに好ましくはは少なくとも120個のプローブ分子を含む。各プローブ分子は、ヒストンタンパク質、アイソフォーム、変異体、またはその修飾体由来の配列を含む。
【0048】
また、ヒストンタンパク質、アイソフォーム、変異体、またはその修飾体由来の配列を含む、マイクロアレイ上のプローブ分子の数は、そのようなヒストン由来プローブの数の、マイクロアレイ上のプローブ分子総数に対する割合から、計算可能である。したがって、本マイクロアレイの好ましい実施形態では、少なくとも10%、より好適には、少なくとも20%、さらに好適には、少なくとも30%、そして最も好適には、少なくとも40%のプローブ分子が、ヒストンタンパク質、アイソフォーム、変異体、またはその修飾体由来の配列を含む。しかし、少なくとも50%、より好適には、少なくとも60%、さらに好適には、少なくとも70%、そして最も好適には、少なくとも80%のプローブ分子が、ヒストンタンパク質、アイソフォーム、変異体、またはその修飾体由来の配列を含むのが好ましい。最も好ましい実施形態では、少なくとも85%、より好適には、少なくとも90%、さらに好適には、少なくとも95%、そして最も好適には、少なくとも98%のプローブ分子が、ヒストンタンパク質、アイソフォーム、変異体、またはその修飾体由来の配列を含む。特に好ましい実施形態では、実質的にすべてのプローブ分子が、ヒストンタンパク質、アイソフォーム、変異体、またはその修飾体由来の配列を含む。
【0049】
したがって最も好ましい実施形態において、本発明はここで定義したようなペプチドプローブ分子を含むマイクロアレイを提供する。これらのプローブ分子により、すべての既知のヒストン修飾がまとめて明確になり、またそれらの修飾が多様なヒストン配列上のどこで起きているのかも明確になる。したがって、有利には、細胞に存在し得るプローブのあり得る組合わせを実質的にすべて含むプローブ分子を含む、本発明による系統的なマイクロアレイの利用は、ヒストン抗体の特異性を決定する3つの重要な因子を同定できる。第一に、その抗体がどの種類の化学修飾を認識しているのか(たとえばリジンのアセチル化、モノ-、ジ-、またはトリ-メチル化)を正確に同定できる。第二に、その抗体が認識する修飾の正確な場所、すなわち修飾されている残基とその周辺のアミノ酸配列を決定できる。第三に、近隣のヒストン修飾が抗体の認識に影響しているかどうかを決定することもできる。
【0050】
したがって、ヒストン抗体を検出する際、第2の態様による方法によって抗体の詳細な特性を明らかにできる。すなわち(i)その抗体がある種のヒストン修飾そのもの(たとえばリン酸化、アセチル化、メチル化など)に対し結合するよう設計されているのか、(ii)ある種のアミノ酸残基のヒストン修飾の種類(たとえばセリン残基のリン酸化)、または(iii)ヒストンタンパク質の特定のアミノ酸残基のヒストン修飾の種類(たとえばH3のセリン10のリン酸化)を認識し結合するのか、などの特性である。
【0051】
本発明者らはまた、第1の態様によるヒストンマイクロアレイの調製法もまた有用であると考えている。
【0052】
したがって、第3の態様では、少なくとも2つのプローブ分子で基板支持体を官能化するステップを含む、ヒストンマイクロアレイの調製法が提供される。各プローブ分子はヒストンタンパク質、アイソフォーム、変異体、またはその修飾体由来の配列を含む。
【0053】
“官能化する”とは、プローブ分子を基板支持体に付着またはカップリングさせることを意味する。“スポッティング”という用語が、官能化する作用を定義するために使用されることもある。当業者にとって、マイクロアレイの利用はよく知られており(たとえば、Schena, M., Microarray Biochp Technology, Eaton Publishing, Sunnyvale, CA, 87-187,2000)、マイクロアレイ技術で用いられる多様な基板支持体もまたよく知られている。よって基板支持体は、シリコン、ガラス、もしくはポリマーなど、またはナイロン膜、またはマイクロタイタープレートを含んでもよく、基板はプローブ分子で官能化される。
【0054】
支持体の表面にプローブ分子を付着またはカップリングさせる技術もまた、当業者に知られており、プローブ分子と、支持体の表面にある、(WO95/35505に記載されているような)ポリL-リジンなどのポリカチオン性ポリマーのコーティングフィルムとの間の静電気的相互作用の利用を含む。また、支持体に共有結合させる手法もよく確立されている。また、表面が金属性の基板は、チオール結合が関与する自己集合によって、プローブ分子で官能化されてもよい。
【0055】
しかし、第3の態様の好ましい方法は、自己集合した単層、あるいはアビジンまたはストレプトアビジンと、ビオチンとの反応による、共有化学的な付着法の利用を含む。したがって、各プローブ分子はビオチン分子を含み、基板はストレプトアビジンと、好ましくはストレプトアビジンでコーティングされたものを含んでもよい。図2と3に示すように、本基板はストレプトアビジン層であらかじめコートされたガラススライドを含む。ストレプトアビジン層はプローブ分子のアミノ末端に付加されたビオチンと非可逆的に結合し、マイクロアレイを形成する。
【0056】
実験の過程で本発明者らは、もし、ヒストンタンパク質由来の(エピトープ)配列を基板表面に接近しすぎて置いた場合、本マイクロアレイは多様な抗体を明確に区別できるとは限らないことを見出した。そこで発明者らは、エピトープ配列と基板間に必要な正確な距離を決定するため一連の実験を行った。
【0057】
その結果、実施の形態としてエピトープ配列が十分に基板表面から離れている場合に、マイクロアレイの特異性が大きく上がることがわかった。本発明者らは、いずれの仮説にも結び付けたくはないが、間隔を取ることでエピトープ配列が基板から十分に露出し、立体障害を避けることにより、抗体がプローブ分子とハイブリダイズできるようになると考えている。
【0058】
したがって、本プローブ分子は間隔手段を含むことが好ましく、その手段は、ヒストンタンパク質、アイソフォーム、変異体、またはその修飾体由来の配列を基板支持体に結合させる際、支持体から離れて結合させるような手段である。好ましくは、間隔手段(またはスペーサー)は、ヒストン由来の配列と、プローブ分子と基板支持体間にある付加部位との間に置かれる。好ましくは、実施の形態としてプローブを基板へ付加させるのにビオチンが用いられる場合、間隔手段は配列とビオチン分子の間に置かれる。
【0059】
当業者であれば、どんな種類の鎖が間隔手段またはスペーサーとして、プローブ配列に取り込まれてよいかを考えるであろう。たとえば、間隔手段は、アルキル鎖、またはアミノ、エステル、アミドもしくはカルボニル基を含むアルキル鎖を含んでもよく、それらの鎖はプローブ配列中へ取り込まれるよう末端が適当に官能化されている。間隔手段のプローブ配列中への取り込みは、たとえば、エステルまたはアミド結合による。
【0060】
間隔手段は少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの、より好ましくは少なくとも3つの原子を鎖中に含んでよい。実際の原子種は、原子の数や大きさほど重要ではなく、エピトープ配列を基板支持体から離す効果を与える。したがって、一例を挙げると、間隔手段の原子は、炭素、酸素、またはそれらの組合わせでもよい。間隔手段は分岐鎖を含んでもよい。しかし、好ましくは、直鎖である。間隔手段またはスペーサーは、少なくとも5,10,15,20,25または30あるいはそれ以上の原子を含むことが予想される。スペーサーの化学式と長さは、プローブ分子中のエピトープ配列の種類と長さにより決まると考えられる。
【0061】
間隔手段は、複数のアミノ酸が結合したものを含んでもよい。エピトープ配列を基板支持体から離すための好適なスペーサーとするため、どのようにアミノ酸を結合させるかを当業者は考えるであろう。一例を挙げると、間隔手段は、ベータアラニン(x3),GlySerGlySerまたはGlyGlyGlyGlyGlyを含んでもよい。
【0062】
間隔手段は、反復ユニット、または鎖を含んでもよい。たとえば、[-CH2- ]nを含んでもよく、ここでnの値は少なくとも1である整数である。しかし、nは整数であり、1より大きいこともあり、したがって実際は[-CH2- ]nの反復ユニットである。間隔手段の別の好適な例では、[-CH2- O-CH2-]nを含み、ここでnの値は少なくとも1である整数である。しかし、nは整数であり、1より大きいこともあり、したがって実際は[-CH2- O-CH2-]nの反復ユニットである。
【0063】
間隔手段は、少なくとも1つのアミノヘキサン酸(HN(CHCOH)分子を含むことが最も好ましい。これは7原子長の鎖を構成すると考えられる。しかし、図2と3に示すように、本発明者らは最適な間隔手段が2分子のアミノヘキサン酸を含むことを見出した。したがって、各テストペプチドのビオチン残基が、連続する2つのアミノヘキサン酸(HN(CHCOH)スペーサー分子により、ヒストンまたはヒストン修飾体に相当するペプチド配列から隔てられていることが好ましい。これらのスペーサーは、分子の固定部からテストペプチド配列を移動させ、または隔てるために含まれる。
【0064】
わずか2分子のアミノヘキサン酸スペーサーにより、より迅速な合成が可能となり、マイクロアレイでスクリーニングされる抗体にスペーサーが認識される頻度を低下させることができる。
【0065】
本マイクロアレイは、各プローブ分子溶液を基板支持体上にスポットし、各プローブ分子を単層状に基板に結合させ、適切なグリッド様の形態となるようにする、第三の態様の方法によって作製できる。したがって、プローブ分子は、好ましくは、溶液で調製し、たとえば、60%アセトニトリル、40%水および0.05%トリフルオロ酢酸溶液で濃度約5nanomoles/mlに希釈する。本発明者らは、第2の態様の方法の検出段階で、かなり高濃度のプローブ分子がスメアリングを引き起こし、それが判定の支障となることを見出した。したがって、基板の官能化に使用されるプローブ分子の濃度は5nanomoles/mlより低いことが好ましい。
【0066】
好ましい実施の形態では、本マイクロアレイは、同一群のものがお互いに近接するようマイクロアレイ上に順序よく配置された、プローブ分子のライブラリーまたは集団を含んでもよい。プローブ分子は、たとえば、グリッドの各列が同一または類似の特性をもつ群に相当するよう基板上のグリッドパターンに沿って配置される。たとえば、同一のヒストンタンパク質(たとえばH1)、または同一のヒストン修飾体の種類に由来する群などである。一例を挙げると、グリッドの最初の列は、ヒストンタンパク質、アイソフォーム、変異体、またはその修飾体に特異的な抗体とハイブリダイズするようなプローブ分子を含んでもよい。そしてグリッドの2番目の列には、別のヒストンタンパク質、アイソフォーム、変異体、またはその修飾体に特異的な抗体とハイブリダイズするようなプローブ分子を含んでもよい。
【0067】
特に好ましい実施の形態では、本マイクロアレイは、ガラススライドが、抗体結合のいずれかのパターンの少なくとも2つの独立したコピーをもつような、196スポットのグリッドの少なくとも2つのコピーを含む、1集団のプローブ分子を含む。グリッドは、1つまたはそれより多いヒストン(たとえばヒストンH2AおよびH2B)に由来するペプチドの混合物を含んでよく、列であろうと行であろうと近接するスポットは好ましくは、同一のペプチドプローブ分子である。有利には、近接するペプチドの‘反復スポッティング’およびグリッド配置の複製のいずれによっても、明確で再現的な抗体結合のパターンを確実に得られる。
【0068】
プローブ分子によって官能化される基板の位置を、センサー部位、プローブ部位、またはスポット部位と称する。マイクロアレイ基板上の特定のセンサー部位において、抗体とプローブ分子とのハイブリダイゼーションを検出することが重要である。また抗体そのものが存在するのか否かを検出することも重要である。したがって、本発明による方法は、第2の態様の方法のステップ(ii)に、抗体とプローブ分子のハイブリッドが形成された場所を検出することを含むのが好ましい。
【0069】
したがって、基板上のプローブ分子の位置は、パターン化された金属層により各部位が決定されるようになっている。金などの金属層には、たとえば、自己集合する単層の化学反応を利用して、複数のプローブ分子が固定化されているが、固定化には位置を制御するためのスポッティング技術を含む場合も、含まない場合もある。したがって、基板は、少なくとも1集団の、固定化されたプローブ分子を含んでよい。しかし、基板上の異なるプローブ分子の集団が別の部位に固定化され、各部位が異なるプローブ分子の集団を維持することもある。各群は、主に単一種のプローブを含む。しかし、同じプローブがセンサー表面の別の部位で繰り返されることもある。この複製手法を利用することで、本方法の分析の信頼性を上げるためである。さらに、同じ基板上で異なる種類のプローブ分子を混合するのも好ましい。異なる抗体をきちんと識別しつつ、基板の表面積を縮小するためである。
【0070】
好ましくは、基板支持体は少なくとも2つ以上のプローブ部位を含む。感度の高い用途には、プローブ部位の総数は少ないほうがよい。基板支持体の面積はできるだけ小さいほうがよく、各プローブ部位面積は直径約10−1000μmで、より好ましくは直径約50−750μm、さらに好ましくは直径約200−500μmである。好ましくは、各プローブ部位は直径/幅約300−400μmまたはそれより小さく、互いにごくわずかに離れている。好ましくは、各プローブ部位間の距離(すなわちスペース距離)は、できるだけ小さいが、各部位間で配列のクロスコンタミネーションが起こらない程度に大きい。またこの距離は、プローブ分子の配置法の空間的操作に依存する。好ましくは、プローブ部位の間隙は約500μm以下で、より好ましくは約300μm以下、最も好ましくは約200μm以下である。
【0071】
本マイクロアレイはさらに、対照標準を含んでよい。たとえば、基板支持体に官能化されたビオチン結合抗体(たとえばウサギ抗体)である。対照標準はマイクロアレイ基板の各四隅にスポットされてよい。これにより、実施例に記載されたように、テスト抗体の分布を検出するため標準的な抗ウサギ‘2次抗体’を使用した場合、マイクロアレイの限界を自動的に決定できる。
【0072】
好ましくは、第2の態様による方法のステップ(i)に先立ち、本マイクロアレイはブロッキング試薬にさらす。たとえば好適なブロッキング試薬は、PBSに溶解した10%ウシ血清アルブミン溶液を含む。次に本方法のステップ(i)に進む。ステップ(i)は、ヒストンマイクロアレイが少なくとも1つの抗体(すなわちここでは‘標的’と呼ばれる)と接触することを含み、これは好ましくは溶液中で行われる。本アレイは好ましくは、スクリーニングされる抗体(一般にはウサギで免疫される)を含む溶液をPBSで適当に希釈し、0.1%Tween存在下で約1時間反応させる。
【0073】
好ましくは、第2の態様による方法は少なくとも1つの、より好ましくは少なくとも2つの洗浄ステップを含む。たとえば、本アレイは1M NaCl,1x PBS.0.1% Tween中で約5分間洗浄され、それからPBS,0.1% Tween中で3X15分間再度洗浄される。洗浄ステップの後、第2の態様による方法の検出ステップ(ii)に進む。ステップ(ii)はマイクロアレイと検出抗体との接触を含んでよい。検出抗体は標的抗体に対する特異性をもち、適切な方法により検出される。たとえば、検出抗体は市販で入手可能な抗ウサギ抗体、または他のいくつかの適当な‘2次抗体’である。好ましくは、検出抗体は標識、たとえばセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、を含む。しかし、本抗体はLi−cor蛍光タグなどの蛍光タグを含むことが好ましい。マイクロアレイに結合している標的抗体の分布は、標的抗体に結合する2次抗体を、たとえば市販のスキャナー技術(Li−cor)で検出することで、検出できる。
【0074】
検出ステップ(ii)に続き、本方法は、検出されたヒストン抗体をスクリーニング、同定、単離、および/または評価するステップを含んでよい。したがって、本発明は、ヒストン特異的抗体、およびヒストン変異体とアイソフォームを含むヒストン修飾体に特異的な抗体のスクリーニング法、すなわちヒストン抗体スクリーンを提供する。本発明による方法は、標的抗体が、(i)ヒストン修飾自体(たとえばリン酸化、アセチル化、ユビキチン化、またはメチル化など)、(ii)ある種類のアミノ酸残基のヒストン修飾(たとえばセリン残基のリン酸化など)、または(iii)特定のヒストンタンパク質中の特定のアミノ酸残基のヒストン修飾(たとえばH3のセリン10のリン酸化)、に対して特異的かどうかを同定または識別するのに利用できる。
【0075】
別の実施形態では、第2の態様による方法は、少なくとも2以上の異なる抗体を検出または識別するのに利用できる。したがって、本方法のステップ(i)はマイクロアレイと少なくとも2つ以上の標的抗体との接触を含んでよく、それは同じ溶液中であってもなくてもよい。本発明者らは、異なる種で免疫された抗体を用い、続いて各々が異種の抗体に特異性をもち異なる標識を含む、種々の検出(‘2次’)抗体を用いることによって、各標的抗体と、種々のヒストン修飾自体、または上記にまとめたような各種の修飾に対するそれらの特異性を識別することが可能と考えている。例を挙げると、検出抗体はLi-cor CR800タグを含んでよく、また別の検出抗体はセイヨウワサビペルオキシダーゼタグを含んでよい。したがって、適切な検出器を用いて各検出抗体上の種々の標識を検出し、それによりマイクロアレイ上の種々の標的抗体の結合を検出、識別できる。
【0076】
したがって、前述のことから、第1の態様による本マイクロアレイは、ヒストン特異的抗体の検出および評価に非常に有用であると考えられる。さらに、ここで述べたように、ヒストンは、標識、または、リン酸化、メチル化、アセチル化、もしくはユビキチン化などの修飾によって化学的に修飾され、これらの修飾のそれぞれはヒストン特異的酵素によって実施される。たとえば、ヒストンアセチルトランスフェラーゼは、ヒストンのアセチル化、たとえばH3のリジン9、を触媒する酵素である。また、これらのヒストン特異的酵素の反応性および特異性を評価できることは、研究者らに大いに必要とされているとも考えられる。したがって、第1の態様による本マイクロアレイは、そのようなヒストン特異的酵素の特異性を検出または評価するのに利用できると、本発明者らは考える。
【0077】
したがって、本発明の第四の態様により、ヒストン特異的タンパク質の検出方法が提供される。本方法は、(i)ヒストン特異的タンパク質の標的分子と、ヒストンタンパク質、アイソフォーム、変異体、またはそれらの修飾体に由来する配列をそれぞれ含む、少なくとも2つのプローブ分子で官能化された基板支持体を含むヒストンマイクロアレイとを接触させること、および(ii)プローブ分子へ結合または酵素的に反応しているヒストン特異的タンパク質が存在するか否かを検出することとを含む。
【0078】
‘ヒストン特異的タンパク質’とは、ヒストンタンパク質に対し特異性をもつ、アミノ酸配列のことで、すなわち、ヒストン特異的結合タンパク質のことである。たとえば、抗体がこの定義に当てはまる。しかし、好ましくは、本マイクロアレイと接触し、検出されるべきヒストン特異的タンパク質は、ヒストン特異的酵素を含む。当業者は、多様なヒストン特異的酵素が存在すると考えるであろう。したがってヒストン特異的酵素は、ヒストンアセチルトランスフェラーゼおよびデアセチラーゼ、ヒストンメチルトランスフェラーゼおよびデメチラーゼ、ヒストンE3ユビキチンリガーゼ、ならびにヒストンキナーゼおよびホスファターゼ、またはそれらの組合わせを含む酵素群から別個に選択されることが好ましい。以下の実験例3では、ヒストン修飾がヒストン修飾酵素の酵素活性に及ぼす影響を解析するために、本発明のヒストンマイクロアレイの利用を示している。
【0079】
好ましいヒストン修飾は、酵素によって行うことが可能であるが、ヒストンのリン酸化、メチル化、アセチル化、もしくはユビキチン化、またはこれらの修飾の除去を含む。特に好ましいヒストン修飾は、酵素によって行うことが可能であるが、アルギニンまたはリジンのメチル化、トレオニンまたはセリンのリン酸化、リジンのアセチル化、あるいはリジンのユビキチン化を含む。
【0080】
ヒストン特異的酵素が、たとえばリジンのメチル化、リジンのアセチル化もしくはユビキチン化、またはセリンのリン酸化のような、プローブ分子の修飾反応を触媒するために、本方法は、好ましくは、酵素へのたとえば、S−アデノシルメチオニン、アセチルCo-A、またはATPのような適当な基質の供給を含むと考えられる。好ましくは、基質分子は、たとえば放射標識(たとえばP32,S35およびH)または適当な蛍光色素で標識されている。基質分子の標識により、マイクロアレイを使用する際、本方法のステップ(ii)で、酵素によるヒストン修飾反応が起こっているかどうか、もし反応が起きているならどのプローブ分子が修飾されたのかを検出できる。
【0081】
より好ましくは、酵素による基質分子の修飾や修飾の除去は、特定のヒストン残基の特定の修飾に特異的な抗体を利用して検出する。このことで、特定の残基の修飾や修飾の除去をどちらも感度よく検出できる。また、異なるヒストンペプチドにおいて活性の程度を比較することで、どの配列や修飾が酵素活性に寄与しているのかを同定できる。
【0082】
本発明の様態の方法はヒストン由来のアミノ酸配列に対する、ヒストン特異的結合タンパク質の結合の検出にも利用できる。本発明の実施の形態では、マイクロアレイはヒストン特異的タンパク質にさらされて、その結合タンパク質とプローブ分子との結合の有無、結合量または特異性が測定される。当業者は、多様なヒストン特異的結合タンパク質が存在すると考えるであろう。したがってヒストン特異的結合タンパク質は、HP1、ヒストンH1、HMGD、ポリコームタンパク質を含む、結合タンパク質群から別個に選択されることが好ましい。
【0083】
本発明のこのような実施の形態は、ヒストン修飾がヒストン特異的結合タンパク質の結合能に及ぼす影響を調べるのに用いられる。本発明の方法によって、たとえば、結合タンパク質のヒストン結合部位またはその近くのヒストン修飾の変化による影響を調べられる。さらに、本発明の様態の実施形態は、様々な反応条件下でのヒストン特異的結合タンパク質の活性測定に応用できる。たとえば、反応が核抽出物存在下で行われた場合の、本発明のヒストンマイクロアレイに対するヒストン特異的結合タンパク質(たとえばHP1)の結合能を測定できる。本発明の方法を応用し、タンパク質を時間をかけて精製せずに、ヒストン特異的結合タンパク質の結合能を測定できる。さらに、このようなアッセイは、核抽出物中に存在するかもしれない新たなまたは未同定の生化学的活性の役割の同定または研究に利用できる。
【0084】
当業者が考え得るように、本発明のヒストンマイクロアレイ上の1つまたはそれより多いプローブ分子に対する、ヒストン特異的結合タンパク質の結合は、ヒストン特異的結合タンパク質に特異的な抗体を利用して評価できる。
【0085】
基板支持体上の少なくとも2つのプローブ分子は、ヒストンH1タンパク質、ヒストンH2Aタンパク質、ヒストンH2Bタンパク質、ヒストン3タンパク質、および/またはヒストン4タンパク質、アイソフォーム、変異体、またはそのようなヒストンタンパク質の修飾体に由来する配列を含んでよい。これらのプローブ分子はいずれも、たとえばアセチル化リジン、リン酸化トレオニン、リン酸化セリン、ユビキチン化リジンなどの、ヒストン修飾を行ったり、除去したりするヒストン特異的修飾酵素による触媒反応により修飾されてよい。
【0086】
ここに記載したすべての特徴(付随するいずれの請求項、要約および図を含む)、および/または開示されたいずれかの方法または過程のすべてのステップは、上記のいずれの様態とどのように組合わせてもよいが、そのような特徴および/またはステップの少なくともいくつかが互いに矛盾するような組合わせの場合は例外である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】ヒストンの概図である。H3,H4,H2AおよびH2Bと、それらの既知の修飾体を示す。修飾体にはアセチル化(A)、メチル化(Me)、リン酸化(P)、およびユビキチン化(U)(AbCam Ltd,UKの宣伝用文献より引用)を含む。
【図2】本発明によるマイクロアレイを形成する、‘テスト’ペプチドプローブ分子とガラス基板表面の模式図である。基板表面にペプチドプローブが結合する前の構成要素を示す。
【図3】本発明によるマイクロアレイを形成する、基板表面に結合したペプチドプローブの模式図である。
【図4】本発明によるアレイで、ヒストンH3とその修飾体を検出するためのプローブとして用いられる1連のペプチドを示す。
【図5】本発明によるアレイで、ヒストンH4とその修飾体を検出するためのプローブとして用いられる1連のペプチドを示す。
【図6】本発明によるアレイで、ヒストンH2Aとその修飾体を検出するためのプローブとして用いられる1連のペプチドを示す。
【図7】本発明によるアレイで、ヒストンH2Bとその修飾体を検出するためのプローブとして用いられる1連のペプチドを示す。
【図8】ヒストンH4リジン5のアセチル化に特異的な抗体(1)のスクリーニングアッセイの結果を示す。
【図9】ヒストンH4リジン16のアセチル化に特異的な抗体(2)のスクリーニングアッセイの結果を示す。
【図10】ヒストンH4リジン8のアセチル化に特異的な抗体(3)のスクリーニングアッセイの結果を示す。
【図11】ヒストンH3セリン10のリン酸化(H3ser10phosp)に特異的な抗体のスクリーニングアッセイの結果を示す。
【図12】ヒストンH3リジン4のトリメチル化(H3K4me3)に特異的な抗体のスクリーニングアッセイの結果を示す。
【図13】ヒストンH3リジン4のトジメチル化(H2K4me2)に特異的な抗体のスクリーニングアッセイの結果を示す。
【図14】ヒストン尾部は、多数の対立するヒストン修飾酵素ファミリーに対する基質である。修飾酵素は表面上の‘標識’を付加または除去するもので、ヒストンデアセチラーゼ(HDACs)、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HATs)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMTs)とヒストンデメチラーゼ(HDMs)を含む。
【図15】マイクロアレイに結合したペプチドのSET7/9依存的メチル化。48個の異なるヒストンH3ペプチドの2連のアレイ(破線ボックス)を含むマイクロアレイスライド。ペプチドは、特定残基の様々なヒストン修飾を含む。これらのスライドをメチルトランスフェラーゼSET7/9(下図)またはバッファー(酵素を含まない)(コントロール、上図)とインキュベートし、その後抗H3K4me1抗体で検出した。
【0088】
本発明をより良く理解し実施するために、例として添付の概略図を参照して説明する。
実験
本発明者らは、図1に示すような多様なヒストンタンパク質とヒストン修飾に対する抗体の特異性を調べ、(i)ヒストン特異的抗体、および(ii)特定のヒストン修飾に対する抗体をスクリーニングおよび/または同定するためのマイクロアレイシステムを開発した。
【0089】
本アレイは、一連のペプチド配列またはエピトープ(すなわちここでは‘プローブ’とよぶ)で‘官能化された’または覆われている支持体表面または基板から成る。一連の配列は図1に示すように、多様なヒストンタンパク質(H3,H4,H2AおよびH2B)とヒストン修飾体に相当する。本マイクロアレイを抗体(すなわちここでは‘標的’とよぶ)を含む溶液にさらし、その標的抗体が、(i)ある種のヒストン修飾そのもの(たとえばリン酸化、アセチル化、メチル化など)、(ii)ある種のアミノ酸残基のヒストン修飾の種類(たとえばセリン残基のリン酸化)、または(iii)ヒストンタンパク質の特定のアミノ酸残基のヒストン修飾の種類(たとえばH3のセリン10のリン酸化)に対し大別される特異性をもつかどうかを、同定または選別した。
【0090】
材料と方法
(A) ペプチド合成
ヒストンタンパク質またはその修飾体に相当し、基板表面の被覆に用いた’テスト‘ペプチドまたはプローブは、すべて固相合成法で合成した。ChanとWhiteの概説(W.C.Chan., P.D.White.,(2000)“Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis,A Practical Approach”,Oxford University Press) のように、合成レジンを含む従来のFmoc保護法を用いた。ただしペプチド合成機はどんなものを使ってもよい。
【0091】
ほとんどのペプチドプローブは約21アミノ酸長で、図2に示すように各ペプチドはビオチン残基を含む。ビオチン残基はペプチドの基板表面への付着を助ける。各テストペプチドのビオチン残基は、連続する2つのアミノヘキサン酸(HN(CH2)5COH)スペーサー分子によって、ヒストンまたはヒストン修飾体に相当するペプチド配列から隔てられている。これらのスペーサーは、分子の固定部からテストペプチド配列を移動させ、または隔てるために含まれる。 ペプチドは、ChanとWhiteの方法のように、標準的な酸処理と適当なスカベンジャー分子を利用して合成レジンから切り離される。
【0092】
(B)ペプチドプローブ
図4に示すのは、基板官能化用のプローブ配列の一覧である。配列はヒト・ヒストン3(H3)とその修飾体に相当する。図中の略語は、ヒストンH3の多様な修飾を表す。全部で103のペプチド配列をヒストンH3のプローブとして用いた。
【0093】
図5に示すのは、ヒストンH4(H4)とその修飾体のプローブとして用いたペプチド配列の一覧である。全部で44の配列をヒストンH4のプローブとして用いた。
【0094】
図6に示すのは、ヒト・ヒストン2A(H2A)とその修飾体に相当するペプチド配列の一覧である。全部で20の配列をヒストンH2Aのプローブとして用いた。
【0095】
図7に示すのは、ヒト・ヒストン2B(H2B)とその修飾体に相当するペプチドの一覧である。全部で39の配列をヒストンH2Aのエピトープとして用いた。
【0096】
したがって、図4−7に示すペプチド配列は4つのヒト・ヒストンタンパク質H2A,H2B,H3およびH4に対するプローブの、包括的で系統的なアレイを構成する。しかし、図4−7が異なるヒストン変異体、アイソフォームおよび異種のアミノ酸配列の差異を網羅しているわけではないと考えられる。したがって、ここに示したペプチドプローブの一覧は、ヒストン抗体の特異性を決定するための包括的/系統的なプローブアレイの作成するための、考え方の一例を提示するものである。
【0097】
(C)ペプチドマイクロアレイの作成
図2と3に示すように、ペプチドプローブ配列(21アミノ酸長)を、基板表面となる顕微鏡用スガラスライド上に固定した。したがって本マイクロアレイは、一連のテストペプチドプローブに覆われたガラス基板から成る。図2と3に示すように、スライドはストレプトアビジン層であらかじめ覆われている。ストレプトアビジンはタンパク質の1種で、テストペプチド上に存在するビオチン化合物と非可逆的に結合する。すべてのペプチドは、アミノ末端に付加されたビオチン分子を含み、ストレプトアビジン層と接触するとビオチン分子が基板上に結合し、マイクロアレイを形成する。本アレイは、処理済みの顕微鏡スライド上に各テストペプチドの溶液をスポットして作成した。各ペプチドプローブは、単層として被覆スライド基板上に結合し、適切なグリッド様に配列された。
【0098】
(D)アレイプリンティング
テストペプチドを基板スライド上にスポットできるものであれば、どんな装置でもアレイのプリンティングに使える。本アレイのスポットの大きさは、直径約200から500ミクロンで、いずれの検出器によっても読み取り可能な大きさであった。合成したペプチドは、60%アセトニトリル、40%水、および0.05%トリフルオロ酢酸溶液で濃度約5 nanomoles/mlに希釈した。ペプチドプローブの濃度がより高いと分析ステップ中にスメアになりやすく、判定の際問題を生じると考えられる。したがって、濃度は5 nmole/ml以下とした。典型的には0.1−0.2マイクロリットルの十分なペプチドプローブ溶液を用い、スライド上に2連で、直径約200から500ミクロンのスポットを形成した。分析データの信頼性を高めるために2連で実験を行うことが重要であることが見出された。
【0099】
対照実験として、ビオチン結合ウサギ抗体をマイクロアレイ基板の4隅にスポットした。このスポットにより、標準的な抗ウサギ‘2次抗体’を用いてテスト抗体の分布を検出する際のアレイの限界を自動的に決定できた。スポット後、スライドは窒素またはアルゴン置換したスライドコンテナ中に保存した。
【0100】
(E)抗体スクリーニング
抗体のスクリーニングは、Sambrook,Fritsch&Maniatis(Sambrook,Fritsch&Maniatis(1989)-“Molecular Cloning;A Laboratory Manual”,Cold Spring Harbor laboratory Press)に従い、広く用いられている‘ELISA’または‘ウェスタンブロッティング’法と基本的には同様に行った。本発明の方法に必要な溶液量が最小となるよう、スクリーニングは密閉したバッグ中で行った。本ペプチドマイクロアレイを10%ウシ血清アルブミン溶液(Sigma)、リン酸緩衝食塩水(PBS:リン酸ナトリウムNaCl pH8)中で1時間インキュベーションすることにより、まず‘ブロック’した。それからアレイを、スクリーニングする抗体(一般にはウサギで免疫した)を含む溶液をPBS,0.1%Tweenで適当に希釈したものと1時間インキュベートした。その後アレイを1M NaCl,1x PBS,0.1% Tween中で5分間洗浄し、さらにPBS.0.1% Tween中で3x15分、再度洗浄した。
【0101】
洗浄ステップ後、アレイを市販の抗ウサギ抗体、または他の適当な‘2次抗体’(たとえば、Li−cor蛍光タグの抗ウサギ抗体、IRDye 800 CW ヤギ抗ウサギ抗体)とインキュベートした。抗ウサギ抗体を10%ウシ血清アルブミン、PBS,0.1% Tweenで適当な濃度(1:3000)に希釈し、1時間インキュベートし、スライドをPBS,0.1% Tween中で短時間洗浄(5分)した。最後に、結合した抗体の分布を、市販のスキャナー技術(Odyssey System,Li−cor Biotechnology,4308 Progressive Avenue,PO Box 4000,Lincoln Nebraska,USA 68504−5000)によりマイクロアレイ基板上で検出した。
【0102】
実施例
本発明者らは多数の異なる種類の抗体をスクリーニングした。抗体は、(i)別々の部位で起こっている同一のヒストン修飾(すなわち特定のヒストン残基での修飾)、または(ii)異なる種類の翻訳後ヒストン修飾、のいずれかに対するものである。
【0103】
実施例1−ヒストンアセチル化抗体
最初のテストでは、ヒストン(H4)アミノ酸配列中の特定のアセチル化残基に対する、多数の抗体を用いた。特定のアセチル化残基は図1にまとめて示した。特異性の異なる3種類のヒストンアセチル化修飾抗体について調べた。
(1) ヒストンH4リジン5のアセチル化(H4K5ac)、
(2) ヒストンH4リジン16のアセチル化(H4K16ac)、および
(3) ヒストンH4リジン8のアセチル化(H4K8ac)
図8−10に、それぞれ抗体(1)、(2)、(3)のマイクロアレイ基板上での結合実験結果を示す。プローブアレイをグリッド様にスポットし、ガラススライド基板当たり、一続きの10カラム5列で2連に配置されるようにした。対照マーカーカラム(M)(すなわちビオチン化ウサギ抗体)はカラム11に(すなわち略図中の黒丸)スポットした。図中にみられる同一の2連スポットは、左側が最初の11カラムセット(すなわちカラム1−10とM)、右側が第2の11カラムセット(すなわちカラム1−10とM)である。
【0104】
ガラス基板上にスポットされたプローブはヒストンH4配列の最初の24アミノ酸残基(図5に示すSEQ ID No.104)から成るビオチン化ペプチドを含む。ペプチドのアセチル化リジンは以下の残基である。
カラム:
【0105】
【表1】

【0106】
図8−10中の列は、希釈限界を調べるために同一のペプチドプローブを連続的に希釈したものを含む(すなわち最上列200μg/mlから最下列12.5μg/mlまで)。
【0107】
結果
図8に示すように、抗体(1)、すなわちヒストンH4K5のアセチル化特異的抗体は、予想通りK5acを含むスポット(すなわちカラム2,6,8−10)に強く結合した。しかし予想外に、弱い‘非特異的’結合もK12ac(2,3と7)で検出された。
【0108】
図9に示すように、抗体(2)、すなわちヒストンH4リジン16のアセチル化(H4K16ac)特異的抗体は、予想通りK16acを含むスポット(すなわちカラム5,6,7,8,9)に強く結合した。しかしK5acを含むスポット(2と10列)、K8acを含むスポット(3と10列)またはK12acを含むスポット(2−4と10列)では、‘非特異的’結合は検出されなかった。
【0109】
図10に示すように、抗体(3)、すなわちヒストンH4リジン8のアセチル化(H4K8ac)特異的抗体は、カラム3と7のスポットに強く結合した。このことはリジン8のアセチル化が認識されたことを示す。しかし興味深いことに、リジン5がアセチル化されている場合、この結合はブロックされる(すなわちカラム9と10)。
【0110】
まとめ
したがって、以上のように、本発明者らが作成したマイクロアレイを用いたELISA法により次のことが示された。抗体(1)は、リジン残基5だけでなく、リジン8と12のアセチル化も認識するので非特異的である。しかし抗体(2)と(3)は、修飾、残基および前後配列の組合わせに対して特異性が高い。また、これらの結果は、抗体(3)が、近隣の残基の修飾により、プローブ配列との結合を立体的にブロックまたは障害されることを示唆している。
【0111】
実施例2−その他の種類の抗体をプローブとするマイクロアレイ
これらのアレイは実施例1に示したものより複雑で、24個のペプチドが隣り合う一対となるようスポットされた4つのグリッドを含む。すなわち12カラム(1−12)、6対の隣り合うペプチドx4列(A,B,C,Dで表示)を含んでいる。基板にスポットされたペプチドは、ヒストンH3に由来し、1つまたは複数箇所が修飾されている。文字は標準のアミノ酸コードを表し、以下の文字は修飾アミノ酸を表す。
【0112】
Z リン酸化トレオニン
X リン酸化セリン
J ジメチル化リジン
O トリメチル化リジン
C アセチル化リジン
W モノメチル化リジン

A1/2 ARZKQTARKSTGGKAPRKQLA
A3/4 ARZOQTARKSTGGKAPRKQLA
A5/6 ARTWQTARKSTGGKAPRKQLA
A7/8 ARTJQTARKSTGGKAPRKQLA
A9/10 ARTOQTARKSTGGKAPRKQLA
A11/12 ARTOQTARCSTGGKAPRKQLA

B1/2 ARTOQTAROSTGGKAPRKQLA
B3/4 ARTKQTARCSTGGKAPRKQLA
B5/6 ARTKQTARCXTGGKAPRKQLA
B7/8 ARTKQTARC SZGGKAPRKQLA
B9/10 ARTKQTARCXZGGKAPRKQLA
B11/12 ARTKQTARWSTGGKAPRKQLA

C1/2 ARTKQTARJSTGGKAPRKQLA
C3/4 ARTKQTAROSTGGKAPRKQLA
C5/6 ARTKQTAROSZGGKAPRKQLA
C7/8 ARTKQTAROXTGGKAPRKQLA
C9/10 ARTKQTAROXZGGKAPRKQLA
C11/12 ARTKQTARKXTGGKAPRKQLA

D1/2 KAPRKQLATKAARWSAPATGG
D3/4 KAPRKQLATKAARJSAPATGG
D5/6 KAPRKQLATKAAROSAPATGG
D7/8 KAPRKQLATKAARKSAPATGG
D9/10 KAPRKQLATKAAROXAPATGG
D11/12 KAPRKQLATKAARKSAPATGG
【0113】
ヒストンアセチル化修飾に特異的な異なる3種類の抗体について調べた。
(a) ヒストンH3セリン10のリン酸化(H3ser10phos)、
(b) ヒストンH3リジン4のトリメチル化(H3K4me3)、および
(c) ヒストンH3のジメチル化K4(H2K4me2)
【0114】
(a) ヒストンH3セリン10のリン酸化(H3ser10phos)
図11に示すように、この抗体はスポットC11−C12に結合することからH3S10phosに対して高い特異性をもつ。しかしこの部位での結合は、アセチル化(スポットB5/B6)やトリメチル化(スポットC7/C8)などの隣接するリジン9の修飾によりブロックされる。
【0115】
(b) ヒストンH3リジン4のトリメチル化(H3K4me3)
図12に示すように、この抗体は、(H3K4me3)由来の修飾ペプチドに特異的であるだけでなく、よく似たエピトープ(H3K4me2)にも結合する。この抗体は、リジン4のトリメチル化体(B1/B2)およびこの残基のジメチル化体(A7/A8)に結合するが、この残基のモノメチル化体(A5/A6)やヒストンH3の他のリジン残基のトリメチル化体(リジン9−C3/C4)には結合しない。抗体の結合は隣接部位の修飾(トレオニン3のリン酸化―A3/A4参照)によってブロックされるが、より離れた部位の修飾(リジン9のアセチル化―A11/A12参照)ではブロックされない。
【0116】
(c) ヒストンH3のジメチル化K4(H2K4me2)
図13に示すように、この抗体はジメチル化K4体(A7/A8)に結合し、この残基のモノ(A5/A6)またはトリ(A9/A10)メチル化体には結合しないことから、高い特異性をもつ。
【0117】
まとめ
要約すると、本発明者らは、ヒストンタンパク質由来の約206ペプチドの2つの複製コピーを含むマイクロアレイを合成した。これらのペプチドは、1つのヒストン配列に由来する21アミノ酸ペプチドから成り、細胞内で観察されることを反映して(i)非修飾、 (ii)1つの修飾、 または(iii)多数の修飾を含んでいる。マイクロアレイを、抗体(すなわちここでは’標的‘とよばれる)を含む溶液にさらし、標的抗体が特異性をもつかどうかを同定または識別した。抗体の特異性は大別して、(i)ヒストン修飾自体(たとえばリン酸化、アセチル化、またはメチル化など)、 (ii)ある種類のアミノ酸残基のヒストン修飾(たとえばセリン残基のリン酸化など)、 または(iii)特定のヒストンタンパク質中の特定のアミノ酸残基のヒストン修飾(たとえばH3のセリン10のリン酸化)に対するものである。
【0118】
このように本発明は、非常に類似した多数のプローブの系統的かつ包括的なアレイを提供する。抗体の結合(または非結合)を調べることで、抗体の特異性を包括的かつ正確に決定できる。本マイクロアレイと方法は、ヒトだけでなくすべての生物種のヒストン、ヒストンアイソフォームおよびヒストン変異体タンパク質に起こる、多種類の翻訳後修飾のスクリーニングを可能にすると考えられる。
【0119】
実施例3−修飾酵素とタンパク質の結合特異性に対するマイクロアレイアッセイ
ヒストン尾部と相互作用する多数の異なるクラスのタンパク質によって、エピジェネティック制御を解析できる。最大のクラスは多様なヒストン修飾酵素で、標識の付加(または除去)を触媒することにより、ヒストン標識のターゲティングとターンオーバーを制御している(図14)。これらの酵素は、引き続いて機能的な‘エフェクター’タンパク質を動員することにより、転写制御において重要な役割をしており、特に、ヒストンアセチルトランスフェラーゼとメチルトランスフェラーゼの不適切な制御がある種の白血病と関連していることから、生物学的にも臨床的にも広く興味がもたれている。多数の‘エフェクター’タンパク質もまた、クロマチン再モデリング複合体、リンカーヒストン、およびヘテロクロマチン(HP1)の安定化に関わるタンパク質を含む、ヒストン標的と結合する。
【0120】
そのような酵素は“ヒストン修飾酵素”とよばれている。ヒストンのアセチル化についてはよく研究されており、多数のヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HATs)、およびヒストンデアセチラーゼ(HDACs)が同定されている。同様に、ヒストンのリン酸化、およびメチル化は、他のクラスの酵素により制御されている。しかしヒストンリジンデメチラーゼ(HDMs)の多くは未だ同定されていない。
【0121】
今や、多数のエフェクタータンパク質が異なるヒストン修飾に応答して結合したり活性を調節したりすることが知られている。このことは、構造クロマチン結合タンパク質HP1も、ヒストン修飾酵素LSD1も 近隣のヒストン残基の標識に応答して‘制御されて’いる、または結合アフィニティーを変化させる、という最近の知見と一致する。このように、クロマチンの結合とタンパク質の修飾を解析することが、相互作用の相手または基質となり得るヒストンペプチド修飾体を広く調べる理想的な方法であろう。しかし、実際に、1つのヒストン尾部に存在しうる無数の修飾の組合わせを実験的に確かめるには、費用も時間もかかるのが現実である。
【0122】
したがって我々は、ヒストン修飾が、(1)ヒストン修飾酵素の活性と、(2)多数のクロマチン結合タンパク質のヒストンとの結合、に及ぼす影響を解析するのにヒストンペプチドマイクロアレイが利用できるかどうかを調べた。現在のデータ(図15)は、これらの手法が実験的に有効であることを示唆している。
【0123】
ヒストンペプチドマイクロアレイに基づくメチル化アッセイ(SET7/9)
メチル化アッセイは、組み換えヒト・ヒストンメチルトランスフェラーゼSET7/9を用い、標準的なメチル化条件下で行った。本発明のマイクロアレイ上でのアッセイは、カバースリップ下で行い、アッセイ当たりの試薬量が少量(70μl)で済むようにした。酵素によるメチル化は、メチル化ヒストン特異的抗体(すなわち抗ヒストンH3モノメチルK4)にり、標準的なウェスタンブロッティング条件で検出する。
【0124】
図15に示すデータは、対照実験のインキュベーション条件下(12時間、30℃メチル化バッファー)または高濃度(100μM,70μl)のSET7/9酵素存在下で、マイクロアレイ上に検出されたメチル化標識の分布を示す。抗体は、対照実験条件下でこのエピトープ(*)を含むスポットを検出するが、HMTaseとインキュベーション後に新たに出現した、このエピトープを含む多数の部位も検出する。重要なのは、異なるペプチドに、再現的な修飾パターンが現れる(破線のボックスは、48個のエピトープスポットの2連のアレイを含む)ことで、同定した修飾のメチル化転移酵素への影響が解析できることである。
【0125】
示したデータは、ガラスに結合したヒストンペプチドが、効率的な酵素反応のために接近可能でかつ十分な濃度であることを示唆する。また酵素産物(すなわちメチル化リジンK4)が、特異的抗体で検出されるのに十分量存在することを示唆する。したがって、これによって、様々なヒストン修飾が酵素反応に及ぼす影響を解析でき、多数の実験手法が開発できる。
【0126】
結合実験
同定されたヒストン修飾がヒストンまたはクロマチン結合タンパク質の結合に及ぼす影響を調べ得ることは、広い関心を集める可能性もある。図15に示すデータは、ガラスに結合したヒストンペプチドが結合可能なことを示唆している。この手法は、特異性の高い抗体が入手可能ならば、すべての高アフィニティーのヒストン結合タンパク質を調べるのに有効であろう。この技術は、高度に精製したタンパク質、または核抽出物(すなわちHeLaまたは他の組織培養系統由来)中でのタンパク質いずれの結合解析にも有効であろう。これにより、時間をかけて精製することなく天然のタンパク質複合体のまま、推定ヒストン結合タンパク質(または実験による変異体)の解析実験が容易にできるので、この技術は特に有効である。
【0127】
まとめ
本発明者らは、エピジェネティック制御を解析する研究ツールとして本マイクロアレイの応用例を説明し、本発明のヒストンマイクロアレイが、ヒストン修飾酵素の活性検出に利用できるという成果を示した。ヒストン修飾がヒストンやクロマチン結合タンパク質の結合能に及ぼす影響の解析を含め、さらに本マイクロアレイの応用が考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのプローブ分子で官能化される基板支持体を有し、各プローブ分子は、ヒストンタンパク質、アイソフォーム、変異体、またはその修飾体由来の配列を含むことを特徴とするヒストンマイクロアレイ。
【請求項2】
プローブ分子の少なくとも1つがヒストン免疫グロブリン標的分子への結合に適することを特徴とする、請求項1に記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項3】
各プローブ分子が、ペプチド、誘導体またはそのアナログを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項4】
プローブ分子が、ヒストン1(H1)、ヒストン2A(H2A)、ヒストン2B(H2B)、ヒストン3(H3B)、ヒストン4(H4)から成るヒストンタンパク質群から別個に選択される、1または複数のヒストンタンパク質に由来する配列を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項5】
ヒストンタンパク質が、ヒトのヒストンタンパク質であることを特徴とする、請求項4に記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項6】
プローブ分子が、H1.0、 H1.1、 H1.2、 H1.3、 H1.4、 H1.5、 H2A.1、 H2A.2、 H2A.3、 H2B.a、 H2B.b、 H2B.c, H2A.d, H2A.e, H2A.f、 H3.1、 H3.2、 H3.3、 H4、およびそれらに関連した他種のホモログから成る、ヒストンアイソフォーム群から別個に選択される、1または複数のヒストンアイソフォームに由来する配列を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項7】
プローブ分子が、H2A−X、H2A−Z、マクロ- H2A, H2A−Bbd, CENP-A、およびそれらに関連した他種のホモログから成る、ヒストン変異体群から別個に選択される、1または複数のヒストン変異体に由来する配列を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項8】
プローブ分子の配列が、ヒストンのリン酸化、メチル化、アセチル化、およびユビキチン化から成る、ヒストン修飾群から別個に選択される、1または複数のヒストン修飾を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項9】
前記ヒストン修飾は、アルギニンもしくはリジンのメチル化、トレオニンもしくはセリンのリン酸化、リジンのアセチル化、またはリジンのユビキチン化から別個に選択されることを特徴とする、請求項8に記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項10】
リジンはモノメチル化、ジメチル化、またはトリメチル化されていることを特徴とする、請求項9に記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項11】
アルギニンはモノメチル化、またはジメチル化されていることを特徴とする、請求項9に記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項12】
前記プローブ分子は、少なくとも10のアミノ酸の配列を含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1つに記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項13】
前記プローブ分子は、100未満のアミノ酸の配列を含むことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1つに記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項14】
プローブ分子は、異なるヒストンタンパク質、アイソフォーム、変異体またはそれらの修飾体に由来することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1つに記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項15】
プローブ分子は、同一のヒストンタンパク質、アイソフォーム、変異体またはそれらの修飾体に由来することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1つに記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項16】
ヒストンH3タンパク質、アイソフォーム、変異体またはそれらの修飾体に由来する配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子を含むことを特徴とする、請求項15に記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項17】
SEQ ID No.1〜SEQ ID No.103として識別される配列、またはそれらの組合わせの群から別個に選択される配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子を含むことを特徴とする、請求項16に記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項18】
SEQ ID No.1〜SEQ ID No.103として識別される配列の実質的にすべて、またはそれらの組合わせ、を含む複数のプローブ分子を有することを特徴とする、請求項16または17に記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項19】
ヒストンH4タンパク質、アイソフォーム、変異体またはそれらの修飾体に由来する配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子を含むことを特徴とする、請求項15に記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項20】
SEQ ID No.104〜SEQ ID No.147として識別される配列、またはそれらの組合わせの群から別個に選択される配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子を有することを特徴とする、請求項19に記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項21】
SEQ ID No.104〜SEQ ID No.147として識別される実質的にすべての配列、またはそれらの組合わせ、を含む複数のプローブ分子を有することを特徴とする、請求項19または20に記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項22】
ヒストンH2Aタンパク質、アイソフォーム、変異体またはそれらの修飾体に由来する配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子を有することを特徴とする、請求項15に記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項23】
SEQ ID No.148〜SEQ ID No.167として識別される配列、またはそれらの組合わせの群から別個に選択される配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子を有することを特徴とする、請求項22に記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項24】
SEQ ID No.148〜SEQ ID No.167として識別される実質的にすべての配列、またはそれらの組合わせ、を含む複数のプローブ分子を有することを特徴とする、請求項22または23に記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項25】
ヒストンH2Bタンパク質、アイソフォーム、変異体またはそれらの修飾体に由来する配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子を有することを特徴とする、請求項15に記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項26】
SEQ ID No.168〜SEQ ID No.206として識別される配列、またはそれらの組合わせの群から別個に選択される配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子を有することを特徴とする、請求項25に記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項27】
SEQ ID No.168〜SEQ ID No.206として識別される実質的にすべての配列、またはそれらの組合わせ、を含む複数のプローブ分子を有することを特徴とする、請求項26または27に記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項28】
ヒストンH2Aタンパク質およびヒストン2Bタンパク質、アイソフォーム、変異体またはそれらの修飾体に由来する配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子を有することを特徴とする、請求項14に記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項29】
SEQ ID No.148〜SEQ ID No.206として識別される配列、またはそれらの組合わせの群から別個に選択される配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子を有することを特徴とする、請求項28に記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項30】
SEQ ID No.148〜SEQ ID No.206として識別される実質的にすべての配列、またはそれらの組合わせ、を含む複数のプローブ分子を有することを特徴とする、請求項28または29に記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項31】
ヒストンH1タンパク質、アイソフォーム、変異体またはそれらの修飾体に由来する配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子を有することを特徴とする、請求項15に記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項32】
SEQ ID No.1〜SEQ ID No.206として識別される配列、またはそれらの組合わせの群から別個に選択した配列を含む、少なくとも2つのプローブ分子を有することを特徴とする、請求項14に記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項33】
SEQ ID No.1〜SEQ ID No.206として識別される実質的にすべての配列、またはそれらの組合わせ、を含む複数のプローブ分子を有することを特徴とする、請求項32に記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項34】
少なくとも2つのプローブ分子は、実質的に互いに同じ配列であるが少なくとも1つのヒストン修飾を含むことを特徴とする、請求項1〜33のいずれか1つに記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項35】
少なくとも2つのプローブ分子は、実質的に互いに異なる配列であり、異なるヒストン修飾を含んでも含まなくてもよいことを特徴とする、請求項1〜33のいずれか1つに記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項36】
各プローブ分子が、(i)ヒストン修飾がまったくない、(ii)少なくとも1つのヒストン修飾を含む、および/または(ii)複数のヒストン修飾を含む、ヒストンタンパク質配列に由来するペプチド配列を含む、複数のプローブ分子を有することを特徴とする、請求項1〜35のいずれか1つに記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項37】
少なくとも1つのプローブ分子が、1または複数の修飾アミノ酸を含む配列を有し、少なくとも別のプローブ分子は修飾アミノ酸を含まない配列を有することを特徴とする、請求項1〜36のいずれか1つに記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項38】
プローブ分子は、ヒストンタンパク質、アイソフォーム、変異体、またはその修飾体由来の配列を、基板支持体に結合させる際支持体から隔離するような間隔手段を含むことを特徴とする、請求項1〜37のいずれか1つに記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項39】
間隔手段は、少なくとも1つのアミノヘキサン酸(HN(CHCOH)分子を含むことを特徴とする、請求項38に記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項40】
基板支持体が各プローブ分子の少なくとも2つの独立したコピーを有するような、196スポットのグリッドの少なくとも2つのコピーを含む、プローブ分子の集団を有することを特徴とする、前記請求項のいずれか1つに記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項41】
グリッド上の列または行の近接する位置に同一のプローブ分子があることを特徴とする、請求項40に記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項42】
少なくとも1つのコントロールプローブ分子をさらに有することを特徴とする、請求項1〜41のいずれか1つに記載のヒストンマイクロアレイ。
【請求項43】
(i)ヒストン抗体の標的分子と、請求項1〜42のいずれか1つにより規定されたヒストンマイクロアレイとの接触、 および
(ii)プローブ分子に付着しているヒストン抗体が存在するか否かの検出、を有することを特徴とする、ヒストン抗体の検出方法。
【請求項44】
検出されたヒストン抗体の、スクリーニング、同定、単離、および/または評価をさらに有することを特徴とする、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
プローブ分子に付着するヒストン抗体の位置の検出をさらに有することを特徴とする、請求項43または44に記載の方法。
【請求項46】
ステップ(i)に先立ち、マイクロアレイがブロッキング試薬にさらされることを特徴とする、請求項43〜45のいずれか1つに記載の方法。
【請求項47】
ステップ(i)に続き、マイクロアレイの少なくとも1つの洗浄ステップを有することを特徴とする、請求項43〜46のいずれか1つに記載の方法。
【請求項48】
ステップ(ii)は、マイクロアレイと検出抗体との接触を含むことを特徴とする、請求項43〜47のいずれか1つに記載の方法。
【請求項49】
ステップ(i)は、マイクロアレイと少なくとも2つの異なる標的抗体との接触を含むことを特徴とする、請求項43〜48のいずれか1つに記載の方法。
【請求項50】
少なくとも2つのプローブ分子で基板支持体を官能化するステップを含み、各プローブ分子はヒストンタンパク質、アイソフォーム、変異体、またはその修飾体由来の配列を含むことを特徴とする、請求項1〜42のいずれか1つによるヒストンマイクロアレイの調製法。
【請求項51】
プローブ分子は基板支持体に共有結合していることを特徴とする、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
プローブ分子はそれぞれビオチンを含み、基板支持体はストレプトアビジンを含むことを特徴とする、請求項50または51に記載の方法。
【請求項53】
基板の官能化に用いられるプローブ分子濃度が5nmole/ml未満であることを特徴とする、請求項50〜52のいずれか1つに記載の方法。
【請求項54】
(i)ヒストン特異的タンパク質の標的分子と、請求項1〜42のいずれか1つによるヒストンマイクロアレイとの接触、 および
(ii)プローブ分子に結合または酵素的に反応するヒストン特異的タンパク質が存在するか否かの検出、を有することを特徴とする、ヒストン特異的タンパク質の検出方法。
【請求項55】
ヒストン特異的タンパク質の標的分子はヒストン特異的酵素であることを特徴とする、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
ヒストン特異的酵素が、ヒストンアセチルトランスフェラーゼおよびデアセチラーゼ、ヒストンメチルトランスフェラーゼおよびデメチラーゼ、ヒストンE3ユビキチンリガーゼ、ならびにヒストンキナーゼおよびホスファターゼ、またはそれらの組合わせ、を含む酵素群から別個に選択されることを特徴とする、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
酵素に適当な基質分子を供給することを特徴とする、請求項55または56に記載の方法。
【請求項58】
ヒストン特異的タンパク質の標的分子はヒストン特異的結合タンパク質であることを特徴とする、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
ヒストン特異的結合タンパク質は、HP1、ヒストンH1、HMGD、ポリコームタンパク質、を含む結合タンパク質群から別個に選択されることを特徴とする、請求項58に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図4−4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2009−536336(P2009−536336A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508474(P2009−508474)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001670
【国際公開番号】WO2007/132177
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(305031567)ザ ユニバーシティ オブ バーミンガム (12)
【Fターム(参考)】