説明

ヒトおよびペットを保護するための殺虫性のシート状成形体

家屋内における害虫を撲滅するために、ヒトおよび/またはペットをこのような害虫から保護するために、ならびにこのような害虫により媒介されるベクター媒介性疾患から保護するために適した、a)クロロフェナピルおよびb)α−シペルメトリン(b1)、デルタメトリン(b2)、ペルメトリン(b3)およびλ−シハロトリン(b4)からなる群からの1種またはそれ以上のピレスロイドを、a)クロロフェナピル50〜150mg/m;b1)α−シペルメトリン50〜150mg/m;b2)デルタメトリン15〜45mg/m;b3)ペルメトリン50〜750mg/m;b4)λ−シハロトリン5〜30mg/m;の(それぞれシート状成形体に対する)量で含有する殺虫剤混合物により含浸されたシート状成形体、特に網状物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫、特に蚊からヒトおよびペットを保護するために、ピレスロイド含有作用物質混合物で被覆されたシート状成形体、特に網状物、ならびにヒトおよびペットを害虫および害虫によって媒介される疾病から保護するための方法に関する。
【0002】
ベクター媒介性疾病、たとえばマラリア、黄熱病、デング熱、リンパ性フィラリア症およびリーシュマニア症を撲滅するために、殺虫剤を含浸させた蚊とりネットがよく知られている。家の内壁に殺虫剤を噴霧する他、このようなネットの使用は、たとえばグローバルな"Roll back Malaria Partnership"プロジェクトの要であって、WHO(世界保健機関)により推奨されている。長時間に亘る効果的な保護を保証するために、ネットを、殺虫剤の作用が複数回に亘る洗浄によってもその殺虫性作用を失われない程度に加工することが必要である。したがって、特定の殺虫剤−結合剤−組合せ物で処理されたネットを、さらにLLINs(長時間持続型殺虫性網状物)と呼称する。
【0003】
これに関して殺虫剤としては現在のところ、ほぼピレスロイドのみが使用されており、それというのもこのクラスの殺虫剤は、昆虫に対する高い致死作用と同時に哺乳類に対する少ない毒性を示すばかりでなく、さらに刺し、かつそれによって疾病の媒介をもたらしうる前に急速に昆虫を麻痺させることによって行動不能とするためである(いわゆるノックダウン効果)。
【0004】
しかしながら、ピレスロイドの長期に亘る増大する使用は、とりわけ、この殺虫剤を、農場における害虫駆除のために使用する場合には、耐性発現のリスクを高める。したがって、たとえば西アフリカおよび東アフリカではAnopheles gambiaeによる、ならびに南アフリカではAnopheles funestusによるピレスロイド耐性が広がった。
【0005】
耐性の形成を克服および回避するために、代替的な殺虫剤を、場合によってはピレスロイドとの混合物の形で使用することが議論されている。これに関して考えられる候補化合物はクロロフェナピルであり、これはハマダラカ(Anopheles-Mucken)に対する良好な効果を示し、ヒトに対しては専らその毒性は少なく、かつピレスロイドとは異なる作用機序(Entkoppelung der oxidativen Phosphorylierung in Mitochondrien, mitochondrial electron transport inhibitor, METI)を示すものである(たとえば、R. N'Guessanら、Acta Tropica 102 (2007) 69-78; F.W. Moshaら、Tropical Medicine and International Health 13(5) 2008 644-652;R. N'Guessanら、Tropical Medicine and International Health 14(4) (2009) 1-7参照)。前記文献では、さらにクロロフェナピルとピレスロイドとの組合せが提案されている。
【0006】
作用物質の組合せを使用する場合に問題となるのは、使用される殺虫剤の全量が概して顕著に増加することであり、これは経済的、環境的および毒性学的理由から一般には望ましくない。
【0007】
クロロフェナピルと特定のピレスロイドとの組合せの場合には、クロロフェナピルと同様に使用されるピレスロイドの量も、ピレスロイド耐性の害虫に対する作用を減少させることなく顕著に減少させることができる(単一の作用物質の使用と比較して)ことが見出された。
【0008】
これは予測されるものではなく、それというのもクロロフェナピルは、特にマラリア保護のために重要な、ノックダウン効果がわずかであるためである。急速な麻痺によってのみ、蚊がもはや刺し、それによって疾病の考えられる媒介をもたらすものでないことが保証される。驚くべきことに、これらの効果は、単独使用に対してピレスロイド量を顕著に減少させる場合に常に得られる。これはそれどころか、ピレスロイド耐性を示す昆虫の場合であってもみられる。
【0009】
したがって本発明の対象は、
a)クロロフェナピルおよび
b)α−シペルメトリン(b1)、デルタメトリン(b2)、ペルメトリン(b3)およびλ−シハロトリン(b4)からなる群からの1種またはそれ以上のピレスロイドを、
a)クロロフェナピル50〜150mg/m
b1)α−シペルメトリン50〜150mg/m
b2)デルタメトリン15〜45mg/m
b3)ペルメトリン50〜750mg/m
b4)λ−シハロトリン5〜30mg/m
の量で(それぞれシート状成形体に対する)含有する、殺虫剤混合物を用いて加工されたシート状成形体である。
【0010】
さらに本発明の対象は、ヒトおよびペットを害虫およびベクター媒介性疾患から保護するための、本発明によるシート状成形体の使用である。
【0011】
本発明の対象は、同様に、害虫を撲滅させるための方法、ならびにヒトおよびペットを害虫および/またはベクター媒介性疾患から保護するための方法であり、その際、本発明によるシート状成形体は、家屋内に取り付けられる。
【0012】
本発明によるシート状成形体は、簡単な製造によって、かつ特に網状物の形での簡単な適用によって傑出している。本発明による網状物は、さらに複数回の洗浄後であっても、それどころかピレスロイド耐性の害虫に対してさえも良好な殺虫性作用を示す。この殺虫剤シート状成形体は少ない毒性値を示し、かつピレスロイド耐性の害虫であっても効果的な撲滅を可能にする。
【0013】
殺虫剤
本発明によれば、クロロフェナピルおよび前記ピレスロイドの少なくとも1種を含有すする混合物、好ましくは、本質的にクロロフェナピルおよび前記ピレスロイドの少なくとも1種からなる混合物、特にクロロフェナピルおよび前記ピレスロイドの少なくとも1種からなる混合物を使用する。
クロロフェナピル(1)
【化1】

(IUPAC名称:4−ブロム−2−(4−クロロフェニル)−1−エトキシメチル(−5−トリフルオロメチルピロール−3−カルボニトリル))はBASF SEから商業的に入手可能であり、かつたとえば C.D.S. Tomlin (Hrsg.), The Pesticide Manual, 14. Aufl., British Crop Protection Council, Alton (UK) 2006中に記載されている。
【0014】
ピレスロイドとして、α−シペルメトリン、デルタメトリン、ペルメトリンおよび/またはλ−シハロトリンを使用する。
【0015】
特に好ましくは、α−シペルメトリン、デルタメトリンおよびペルメトリンである。
【0016】
とりわけ好ましくは、α−シペルメトリンである。
【0017】
好ましくは、クロロフェナピルと前記ピレスロイドとからなる2成分系混合物の使用であるが、しかしながらさらに、クロロフェナピルを複数種の、好ましくは2種のピレスロイドとの混合物の形で使用することも可能である。
【0018】
前記作用物質は公知であり、かつクロロフェナピルおよびα−シペルメトリンは、たとえばBASF SE(Ludwigshafen, Deutschland)から商業的に入手可能である。作用物質は、たとえば"The Pesticide Manual"(前記参照)中に記載されている。
【0019】
シート状成形体の平方メートルあたりの殺虫剤の量は、一般におよび好ましくは以下のとおりである:
クロロフェナピル(a):50〜150mg/m、好ましくは70〜130mg/m、特に好ましくは90〜110mg/mであり、
α−シペルメトリン:50〜150mg/m、好ましくは70〜130mg/m、特に好ましくは90〜110mg/mであり、
デルタメトリン:15〜45mg/m、好ましくは20〜40mg/m、特に好ましくは25〜35mg/mであり、
ペルメトリン:50〜750mg/m、好ましくは75〜650mg/m、特に好ましくは100〜550mg/m
λ−シハロトリン:5〜30mg/m、好ましくは7.5〜25mg/m、特に好ましくは10〜20mg/mである。
【0020】
したがって、クロロフェナピル:ピレスロイドの量比は、作用物質に応じて、一般には0.06〜30:1、好ましくは0.1〜10:1、特に好ましくは0.1〜5:1である。
【0021】
水性配合物中の殺虫剤の粒度は、一般には50nm〜20μm、好ましくは50nm〜8μm、特に好ましくは50nm〜4μm、特に50nm〜500nmである。
【0022】
シート状成形体
シート状成形体としては、たとえば織物材料、非織物プラスチック材料、紙、天然皮革、人造皮革、金属薄片等、好ましくは可とう性材料である。
【0023】
使用されたシート状成形体は、好ましくは織物材料、特に織物繊維から成る網状物である。これに関して、網状物は、天然繊維または合成繊維からなっていてもよい。当然のことながら、2種またはそれ以上の異なる繊維の混合物であってもよい。天然繊維に関する例は、綿、黄麻または亜麻の繊維を含む。好ましくは、適したポリマーから成る合成繊維である。例としてはポリアミド、ポリエステル、ポリアクリルニトリルまたはポリオレフィンを含む。好ましくはポリアミド、ポリオレフィンおよびポリエステル、特に好ましくはポリオレフィン、特にポリプロピレンまたはポリエチレン、およびポリエステルである。とりわけ好ましくはポリエステル繊維、特にポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0024】
繊維は、モノフィラメント、オリゴフィラメントまたはマルチフィラメントであってもよく、これは平滑であるか、あるいは表面模様が施されていてもよい。
【0025】
ポリプロピレンおよびポリエチレンは、ポリプロピレンホモポリマーまたはポリエチレンホモポリマーであってもよい。しかしながらさらに、エチレンまたはプロピレン以外の少ない量の他のコモノマーを含む、コポリマーであってもよい。適したコモノマーは、たとえば他のオレフィン、たとえばエチレンまたはプロピレンならびに1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、スチレンまたはα−メチルスチレン、ジエンおよび/またはポリエンであってもよい。ポリエチレンまたはポリプロピレン中のコモノマーの割合は、一般には最大20質量%、好ましくは最大10質量%である。コモノマーの種類および量は、繊維の好ましい性質に応じて当業者により選択される。
【0026】
繊維製造に関して特に好ましくは、相対的に高い分子量の粘性の生成物であって、これは、通常の種類および方法で、その溶融指数(ISO1133によって測定される)によって特徴付けられる。好ましくは、溶融指数MFR(230℃、2.16kg)0.1〜60g/10分を有する少なくとも1種のポリプロピレンまたはポリエチレンであってもよい。好ましくは、溶融指数MFR(230℃、2.16kg)1〜50g/10分、好ましくは10〜45g/10分であり、かつ、たとえば30〜40g/10分であるポリプロピレンである。このようなポリプロピレンの種は、特に繊維を製造するのに適している。当然のことながら、複数種の異なるポリプロピレンからなる混合物を使用することもできる。
【0027】
織物繊維は、網状物の種類に応じて、0.05〜0.6mmの厚さ、好ましくは0.1〜0.4mmの厚さ、特に好ましくは0.12〜0.35mmの厚さ、およびとりわけ好ましくは0.2〜0.3mmの厚さを示す。
【0028】
織物材料は、たとえばカバーまたはシーツの形で使用され、たとえば布団カバー、マットレス、まくら、カーテン、壁紙、カーペット、窓カーテン、戸棚カーテンおよびドアカーテン、テーブルクロス、防水シートおよびテント用布地である。好ましくは網状物、特に蚊とりネット、たとえば蚊およびその他の害虫から保護するためのベッド用ネットである。
【0029】
好ましくは使用される網状物は、好ましくは偶数の角を有するメッシュパターンを示す。これに関して網状物は、好ましくは一の種類のメッシュのみからなってもよく、たとえば4角のメッシュのみまたは6角のメッシュのみからなるか、あるいは、さらに2種またはそれ以上の異なるメッシュを含むもの、たとえば8角と4角のメッシュからなる組合せであってもよい。
【0030】
これに関して網状物のメッシュは、好ましくは本質的に同じ種類であることが望ましく、すなわち、この網状物はさらに、メッシュの形および大きさに関して十分に小さい相違を示すものであってもよいが、この値は、その平均値を過度に強くばらつかせるものではない。
【0031】
適したメッシュの大きさ(正方形メッシュの横の長さ)は上限5mm、好ましくは2.5mm、特に好ましくは1.5mm、および下限0.1mm、好ましくは0.25mm、特に好ましくは0.5mm、特に0.7mmの範囲である。
【0032】
網状物のメッシュは、好ましくは4角、6角または8角のメッシュからなる群から選択される。
【0033】
4角のメッシュは、aおよびbの辺を有する平行四辺形のメッシュである。用語「平行四辺形」とは、当然のことながら用語「長方形」および「正方形」を含む。平行四辺形の2つの辺の間の小さい角は、一般には60〜90゜である。90゜の特殊な場合には、平行四辺形は長方形となる。a=bであって、かつ90゜の特殊な場合には、正方形となる。さらに、平行四辺形は高さhを有する。長方形または正方形の場合には、この高さhがa辺の長さに相当する正方形メッシュが特に好ましい。
【0034】
6角のメッシュの場合には、それぞれ互いに平行の辺a、bおよびcからなる3個の対を、h、hおよびhの距離で配置する。8角形のメッシュの場合には、それぞれ互いに平行の辺a、b、cおよびdからなる4個の対を、h、h、hおよびhの距離で配置する。8角からは、平面全体をおおうパターンを提供できないことは当業者にしられている。したがって、8角形のメッシュを含む網状物の場合には、追加的に少なくとも1種の第2のメッシュの種類を含む。これに関して4角のメッシュであってもよい。 本発明の特別な実施態様において、高さhは、平行四辺形、6角形および8角形の場合も同様に0.1〜0.99mm、好ましくは0.12〜0.8mmおよび特に好ましくは0.25〜0.7mmである。
【0035】
平行四辺形の場合には、長さと高さとの比b/hは1:1〜5:1であり、好ましくは1:1〜4:1であり、かつ、特に好ましくは2:1〜4:1である。さらにメッシュは、比b/hが1:1である場合には、0.1〜0.99mmの横の長さを有する正方形であってもよい。b/haのより大きい比は、一の方向に長く伸びた成形体である。最大0.99mmの距離hによって、さらにより小さい昆虫が網状物を通り抜けるのを十分に防止する一方で、0.99mmよりも小さい場合には、網状物の通気性は悪くなる。
【0036】
6角形の場合には、比((h+h)/2)/hは1:1〜5:1であり、好ましくは1:1〜4:1であり、かつ特に好ましくは2:1〜4:1である。ここで平行四辺形に対しての同様の状態である。比が1:1の場合には、3個の同じ辺を有する正6角形であり、この辺は、それぞれ互いにもう一方の辺に対して0.99mm以下の同じ距離を示す。より大きい比((h+h)/2)/hの場合には、一の方向に伸長された6角形である。殺虫性または通気性に関する効果については、平行四辺形のものと同様である。
【0037】
8角形の場合には、比((h+h+h)/3)/hは1:1〜5:1であり、好ましくは1:1〜4:1であり、かつ特に好ましくは2:1〜4:1である。ここで、この状態は平行四辺形と同じである。比が1:1の場合には、4個の同一の辺を有する正8角形であり、これはそれぞれもう一方の辺に対して0.99mm以下の同じ距離を示す。より大きい比((h+h+h)/3)/hの場合には、一の方向に伸長された8角形である。殺虫性または通気性に関する効果については、平行四辺形のものと同様である。
【0038】
4角および6角のメッシュの他に、これらの実施態様において、たとえば4角形のメッシュと8角形のメッシュとの組合せを使用することができるか、あるいは網状物の部分におけるメッシュの形状および大きさは可変であってもよい。たとえば、網状物の縁は密に編まれるか、あるいは他のポリマーから製造されていてもよい密な織物繊維を安定化のために間隔を空けて編み込むこともできる。
【0039】
用語「高さ」および「長さ」は、繊維であるか、あるいは被覆繊維であるかと無関係に、それぞれのメッシュの開放面に関する。同様に、本発明の範囲内において「メッシュの大きさ」とは、すなわち、繊維であるか、あるいは被覆繊維であるかと無関係に、それぞれのメッシュの開放面を意味する。
【0040】
本発明のこれらの実施態様による織物の網状材料は、欧州特許出願08161456.2中に記載されている。
【0041】
本発明による織物材料、特に本発明による網状物を製造するために使用される繊維の厚さは、網状物の望ましい性質に応じて当業者が選択する。繊維が厚ければ厚いほど、一般に網状物の機械的安定性は大きくなり、他方、メッシュの大きさが小さくなるにつれて、繊維によりおおわれた面の割合に対する開放面の割合が常に小さくなる。一般に、繊維の厚さは、網状物は少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%および特に少なくとも50%の開放面を示すように見積もることは望ましい。詳説した種類のネットは商業的に入手可能である。
【0042】
使用された網状物は、好ましくは単層の網状物である。しかしながらさらに、いわゆるスペーサーファブリックであってもよく、その際、2個の網状物は、単糸を用いて互いに結合させて複層にする。
【0043】
含浸
用語「含浸」とは、シート状成形体を殺虫剤混合物で処理するにあたっての本発明によるすべての手段を意味し、これによって、この混合物のシート状成形体上、あるいはシート状成形体中での均一な分散が達成される。これに関して均一とは、面のあらゆる箇所において、定められた殺虫剤の濃度が本質的に同一であることを意味する。
【0044】
一の実施形態において、含浸は、シート状成形体であるか、あるいは、好ましくは、前記シート状成形体を製造するモノフィラメント、マルチフィラメントまたは繊維を、殺虫剤混合物で、結合剤と一緒に被覆することにより実施する(変法A)。
【0045】
他の実施態様において、含浸は、殺虫剤混合物をポリマーに対して混合し、かつポリマーおよび殺虫剤混合物を、本発明によるシート状成形体に加工されるモノフィラメントに一緒に押し出すことによって実施する(変法B)。
【0046】
結合剤を含有する殺虫剤混合物で被覆することによる含浸(変法A)
結合剤は、シート状成形体に製造されるモノフィラメント、マルチフィラメントまたは繊維上であるか、あるいは予め製造されたシート状成形体上に殺虫剤混合物を固定するのに役立つ(「ラインコーティングの最後」)(以下、網状物の例において記載する)。これによって、作用物質は洗浄除去されないか、あるいは少なくとも専らゆっくりと洗浄除去されうる。
【0047】
ポリマー結合剤は、原則、任意の結合剤であり、この場合、この結合剤は、殺虫剤混合物を、特に織物材料上に固定できることを前提とする。したがって好ましくは、織物含浸および織物被覆の分野においてよく知られた結合剤である。当然のことながら、さらに混合物は、複数種の異なる結合剤を使用することができる。
【0048】
例としては、ホモポリマーまたはコポリマーを含む(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリイソシアヌレート、またはワックス、たとえばポリエチレンワックスを含む。
【0049】
たとえば、エチレン性不飽和モノマー、好ましくは(メタ)アクリレート、特に(メタ)アクリル酸のC〜C12−エステル、架橋基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、マレイン酸またはマレイン酸エステル、アクリルニトリル、スチレン、ビニルアセテート、ビニルアルコール、エチレン、プロピレン、アルキルアルコールまたは塩化ビニルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーの重合によって得ることができる結合剤である。
【0050】
本発明の好ましい実施態様においては、モノマーとして、一般式HC=CHR−COOR[式中、RはHまたはメチルであり、かつRは、1〜12個の炭素原子、好ましくは2〜10個の炭素原子を有する脂肪族の、直鎖または分枝の炭化水素基である]の少なくとも1種の(メタ)アクリレート(A)を50〜95質量%含む、エチレン性不飽和モノマーからなるコポリマーである。Rは好ましくはHである。適した基Rの例は、特にメチル基、エチル基、n−ブチル基または2−エチルヘキシル基、好ましくはエチル基、n−ブチル基または2−エチルヘキシル基を含む。さらにコポリマーは、1〜20質量%の(メタ)アクリル酸または付加的な官能性基を有する(メタ)アクリル酸誘導体(B)を含む。これに関して、特に(メタ)アクリル酸エステルおよび/または(メタ)アクリルアミドであってもよい。官能性基は、網状物上に結合剤を結合させ、かつさらに、架橋させるのに役立ちうる。たとえば、ω−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ基含有(メタ)アクリルエステル、たとえばグリシジルエステル、(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体、たとえば(メタ)アクリル酸メチロールアミドHC=CH(CH)−CO−NH−CH−OHである。その他、さらにAおよびBとは異なるエチレン性不飽和の、好ましくはモノエチレン性不飽和のモノマー(C)を使用することができ、これはたとえば、アクリルニトリルまたはスチレンである。さらなるモノマーの量は、一般に0〜30質量%である。特に好ましくは、70〜90質量%のアクリル酸エステルHC=CH−COOR[式中Rは4〜8個の炭素原子を含有し、かつ好ましくはn−ブチル−および/または2−エチルヘキシル−である]を含み、さらに10〜20質量%のアクリルニトリル、1〜10質量%の(メタ)アクリル酸または官能性基含有(メタ)アクリル酸誘導体、特に(メタ)アクリル酸メチロールアミドを含む、結合剤である。
【0051】
前記の好ましい結合剤は、当業者に公知の方法により、好ましくはエマルション重合によって製造することができる。
【0052】
好ましくは、アクリレート結合剤、特に成分B1〜B4ならびに場合によるB5のエマルション重合によって得ることが可能なコポリマーである。
【0053】
成分B1として、1種またはそれ以上の、好ましくは1、2または3種の、特に好ましくは1種の式(I)
【化2】

[式中、
はHまたはCであり、好ましくはHであり、かつ、
はC〜C10−アルキル、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec.−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、sec.−ペンチル、neo−ペンチル、1,2−ジメチルプロピル、i−アミル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニルまたはn−デシル、特に好ましくはメチル、エチル、n−ブチルまたは2−エチルヘキシル、とりわけ好ましくはエチル、n−ブチルまたは2−エチルヘキシルである]を使用する。
【0054】
成分B1として好ましくはメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよびメチルメタクリレートである。好ましくはさらにブチルアクリレート単独であるか、あるいはメチルメタクリレートまたはエチルアクリレートとの混合物の形である。特に好ましくは、n−ブチルアクリレートである。
【0055】
成分B2として、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N’−ビスメチロールマレイン酸ジアミドおよびN,N’−ビスメチロールフマル酸ジアミドからなる群からの少なくとも1種のモノマーを使用する。
【0056】
好ましくは、N−メチロールアクリルアミドおよびN−メチロールメタクリルアミド、特にN−メチロールメタクリルアミドである。
【0057】
成分B3として、1種またはそれ以上のモノマー、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルスルホン酸、マレイン酸およびフマル酸の群の1種または2種のモノマーを使用する。好ましくはアクリル酸およびメタクリル酸であり、アクリル酸が特に好ましい。
【0058】
成分B4として、1種またはそれ以上のモノマー、好ましくは、B4Aおよび/またはB4Bの群からなる1種または2種のモノマーを使用する。
【0059】
B4Aの群のモノマーは、式(II)および/または(III)
【化3】

[式中、
はHまたはCであり、好ましくはHであり、
XはZ、−CO−NH−CH−NH−CO−CR=CHであるか、あるいはCOO−CH−CO−CH−COORであり、好ましくはZであり、
ZはCONH、CONH−CH−OR、COO−Y−OH、COO−グリシジル、CHO、CO−Y−OHであり、好ましくはCONHであり、
YはC〜C−アルキレン、好ましくはC〜C−アルキレンであり、かつ、
、Rは同じかまたは異なって、直鎖または分枝のC〜C10−アルキル基である]のもの、ならびに(メタ)アクリル変性ベンゾフェノンであって、たとえばEPA-0346734に記載されているもの、である。
【0060】
B4Aの群のモノマーとして好ましくは、アクリル酸アセトアセチルエステル、メタアクリル酸アセトアセチルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸ジアミド、N−メトキシ−メチルアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、アクリル酸−3−ヒドロキシプロピルエステル、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピルエステル、アクリル酸−4−ヒドロキシブチルエステル、メタクリル酸−4−ヒドロキシブチルエステル、アクリル酸−6−ヒドロキシヘキシルエステル、メタクリル酸−6−ヒドロキシヘキシルエステル、アクリル酸−2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルエステル、メタクリル酸−3−ヒドロキシ−3−クロロプロピルエステル、アクリル酸グリシジルエステルおよびメタクリル酸グリシジルエステルである。特に好ましくはアクリルアミド、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピルエステル、ブタンジオールモノアクリレート−アセチルアセテート、メタクリル酸ジグリシジルエステルおよび4−アクリルオキシベンゾフェノンである。
【0061】
B4Bの群のモノマーとして、アクリル酸アリルエステル、アクリル酸メタアリルエステル、メタクリル酸アリルエステル、メタクリル酸メタアリルエステル、マレイン酸ジアリルエステル、マレイン酸ジメチルアリルステル、フマル酸アリルエステル、フマル酸メタアリルエステル、フタル酸ジアリルエステル、フタル酸ジメチルアリルエステル、テレフタル酸ジアリルエステル、テレフタル酸ジメタアリルエステル、p−ジビニルベンゾール、ブタン−1,4−ジオール−ジアリルエーテルおよびブタン−1,4−ジオール−ジメタアリルエーテルを使用する。
【0062】
B4の群の好ましいモノマーはB4Aの群のものであり、その際、この群からの1種または2種のモノマーの使用が好ましい。
【0063】
B5の群の好ましいモノマーは、B5Aの群のもの、ならびにB5Bの群からのビニル芳香族モノマーである。
【0064】
成分B5Aとして好ましくはアクリルニトリルまたはメタクリルニトリル、好ましくはアクリルニトリルを使用する。
【0065】
成分B5Bとして、スチレンおよびα−メチルスチレンが好ましく、特に好ましくはスチレンである。
【0066】
一の好ましい実施態様において、アクリレート結合剤を製造するために、成分B5のモノマーとしてアクリルニトリルを使用する。
【0067】
アクリレート結合剤(B)は、
b1)20〜93質量%、好ましくは50〜90質量%、特に好ましくは60〜90質量%、とりわけ75〜85質量%の成分B1;
b2)1〜5質量%、好ましくは1.5〜3質量%の成分B2;
b3)0.2〜5質量%、好ましくは0.5〜4質量%、特に好ましくは0.75〜4質量%、とりわけ好ましくは1〜3質量%の成分B3;
b4)0〜7質量%、好ましくは0〜5質量%、特に好ましくは0〜4.5質量%、とりわけ好ましくは0または0.2〜4.5質量%の成分B4、および
b5)0〜40質量%、好ましくは5〜40質量%、特に好ましくは5〜30質量%、とりわけ好ましくは0または5〜26質量%の成分B5、
(質量%の表記はそれぞれBの全質量に対する)のエマルション重合によって得られる。
【0068】
適した方法は当業者に公知であり、かつたとえば WO 15 2005/064072(第20頁、第20行〜第23頁、第15行)中に記載されている。
【0069】
得られた架橋されていないエマルションポリマーの質量平均分子量は、一般に40000〜250000である(GPC(ゲル浸透クロマトグラフ分析)によって測定する)。分子量は、一般に連鎖停止剤、たとえば硫黄有機化合物を通常の量で使用することによって調整する。
【0070】
特に好ましいアクリレート結合剤は、一般に水性分散液の形で得られ、かつ本発明による殺虫剤配合物中で、通常、この形で使用する。
【0071】
好ましいアクリレート結合剤は、さらに通常の、当業者によく知られた添加剤を含んでいてもよく、たとえば皮膜形成剤および/または可塑剤、たとえばアジペート、フタレート、ブチルジグリコール、ジカルボン酸と直鎖または分枝のアルコールとの反応によって得られるジエステルの混合物である。好適なジカルボン酸およびアルコールは、当業者に公知である。
【0072】
前記結合剤の他に、さらにシリコーンオイルおよびシリコーンワックス、ポリシロキサン、フッ化炭化水素基を有する樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド−縮合物、メチロール尿素誘導体、および硬化可能なポリエステルが考えられ、その際、シリコーンオイル好ましい。
【0073】
好ましいシリコーンオイルおよびシリコーンワックスは、一般に直鎖または環式のポリオルガノシロキサン、好ましくはポリアルキルシロキサンおよび/またはポリフェニルシロキサンであり、その際、アルキルは、たとえばメチル、エチル、プロピルまたはオクチルであり、好ましくはメチルである。特に好ましくは、ポリジメチルシロキサン、ポリ(メチルフェニルシロキサン)および相当する化合物であり、その際、メチル基の一部分は高級アルキル基によって置換される。
【0074】
分子量は、好ましくは1000〜150000である。場合によっては、粥状または脂肪様のコンシステンシーを獲得するために、シリコーンオイル、および特にシリコーンワックスは、コンシステンシー調整剤、たとえば金属石けん、たとえばステアリン酸リチウム、高分散性シリカ、PTFE、窒化ホウ素または尿素を含有することができる。
【0075】
本発明によるシート状成形体、特に網状物を製造するために、結合剤は、溶剤中の配合物の形で、好ましくは水性配合物として使用することができる。さらに本発明は、溶剤不含の配合物を含む。
【0076】
好ましい実施態様において、55〜99質量%の水、好ましくは85〜98質量%の水および1〜45質量%、好ましくは2〜15質量%の固体を含有する水性配合物を使用し、その際、量の表記は、それぞれ配合物中のすべての成分の合計に対する。適切な濃度は、織物支持材料の吸着能力に応じて定める。
【0077】
固体材料は、少なくとも1種の結合剤、殺虫剤混合物、場合によっては少なくとも1種の架橋剤ならびに場合によっては他の成分である。好ましくは、少なくとも1種の水分散可能な架橋剤を使用する。好ましいアクリレート結合剤の特殊な場合において、好ましくは遊離イソシアネート基含有架橋剤である。これに関して好ましくは、遊離イソシアネート基を有するイソシアヌレートであり、好ましくは4〜12個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式または芳香族ジイソシアネートから導かれるイソシアヌレートである。例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート、2,2’−および2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートまたは2,4−トルイルジイソシアネートである。好ましくは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートをベースとするイソシアヌレートである。特に好ましくは、付加的な親水性基、特にポリエチレンオキシド基を有するイソシアヌレートである。このようなイソシアヌレートの製造は、当業者に公知である。これは、好ましくは極性の非プロトン性溶剤中で溶解され、たとえばエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートを使用する。好ましいイソシアネート基含有架橋剤に対するさらなる単位は、WO 2008/052913、第34頁、第6行〜第35頁、第3行に開示されている。特に好ましくは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)をベースとするイソシアヌレート、この場合、これは付加的なポリエチレンオキシド基を有するもの、を使用し、その際、このイソシアヌテートはプロピレンカーボネート中で溶解する(プロピレンカーボネート中70質量%のHMDI)。遊離イソシアネート基の量は、溶液に対して約11〜12質量%である。架橋剤は、好ましくは、配合物のすべての固体材料の質量に対して1〜10質量%の量で使用する。イソシアヌレートをベースとする架橋剤は、特に前記コポリマーを架橋するのに適している。
【0078】
配合物は、さらに典型的な添加剤および助剤、UV保護剤ならびに着色剤を含有することができる。このような添加剤の例は、WO 2008/052913、第35頁、第17行〜第37頁、第5行に挙げられている。
【0079】
着色剤および顔料は、純粋な装飾目的の他に、たとえば鳥類または哺乳類に警告を与えるか、あるいは昆虫に対して殺虫剤網状物をカモフラージュするために使用される。さらに、暗色の着色は、場合によっては所望の日除け効果を示し、かつUV光の作用物質および織物繊維に対する有害な作用を、野外において排除することができる。
【0080】
湿潤剤および増粘剤を使用することにより、不十分な、したがって均一に湿潤可能でないシート状成形体、たとえばポリオレフィン繊維について、処理溶液の均一な塗布を達成することができる。この目的のために、水と混合可能な溶液を使用することもできるが、しかしながらこれは環境に有害なものではないことが好ましい。当業者には、常用の助剤およびその濃度がよく知られている。
【0081】
好ましくは、配合物は抗酸化剤、ペルオキシド捕捉剤、UV吸収剤および光保護剤を含んでいてもよい。これは、屋外または温室で、高められたUV照射にさらされる網状物の場合には、特に有利である。前記添加剤は、支持体繊維と同様に作用物質についても、照射による分解から保護する。
【0082】
適したUV吸収剤は、たとえばWO 02/46503またはWO25 2007/077101中に記載されている。UV吸収剤は、一方で配合物の成分として含浸のために使用することができる。しかしながらこれはさらに、たとえばポリオレフィンおよびポリエステルの場合には、すでに、繊維の製造過程で添加されていてもよい。さらに、有利な混合物は、異なる保護作用を備えた複数種の安定化剤を使用することができる。未処理の網状物の質量に対して、一般に0.2〜5質量%、好ましくは0.25〜4質量%および特に好ましくは0.5〜3.5質量%の安定化剤を使用する。これに応じて配合物中の量は当業者によって調整される。
【0083】
殺虫剤混合物をモノフィラメント中に添加することによる、変法Bによる含浸
本発明のさらなる実施態様において、含浸は、たとえば繊維に加工されるべきモノフィラメント中に、本発明による混合物を直接添加することによって実施され、これにより本発明によるシート状成形体が構成されるか、あるいはこれを含む。好ましくは、この変法においてシート状成形体は網状物である。
【0084】
本発明による混合物が添加されるモノフィラメントのためのプラスチック材料としては、熱可塑性ポリマー、好ましくはオレフィン性不飽和モノマー、たとえばポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリレート、さらにポリエスステルおよびポリカーボネート、ならびに場合により前記ポリマーの互いの混合物または熱可塑性エラストマーとの混合物が適している。特に好ましくはポリエチレン、たとえば低密度ポリエチレン(LDPE)、たとえば低密度線状ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)および高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリエチレン樹脂、たとえばエチレンおよび少なくとも3個のC原子を有するα−オレフィンとのコポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、プロピレンおよび4個またはそれ以上のC原子を有するα−オレフィンとのランダムコポリマーおよびブロックコポリマー、エチレンと不飽和カルボン酸化合物とのコポリマー、たとえばポリ(エチレン−メチルメタクリレート)、ポリ(エチレン−ビニルアセテート)またはポリ(エチレン−アクリル酸)、ならびにこれらポリマーおよびコポリマーの混合物である。熱可塑性エラストマーのための例は、オレフィンベースおよびスチレンベースの熱可塑性エラストマーを含む。好ましくは、主要成分としてエチレンまたはプロピレンを有するコポリマー、ポリスチレンブロックおよびポリイソプレンブロックおよび/またはポリブタジエンブロックを含有する他のブロックコポリマーならびにこれらコポリマーの水素化誘導体である。
【0085】
本発明による殺虫剤混合物を、熱可塑性プラスチックマトリックス中に含有するモノフィラメントを製造するために、殺虫剤混合物およびプラスチック材料を、溶融混練によって混合することができる。これは先ず、相当量の殺虫剤混合物およびプラスチック材料を溶融混練することによってマスターバッチを製造することができ、これは引き続いて、さらなる量のプラスチックと一緒に溶融混練することによって、望ましい濃度に希釈することができる。マスターバッチ方法によって加工する場合には、さらに異なるプラスチック材料をマスターバッチおよび引き続いての希釈のために使用することができ、たとえば、LDPEをマスターバッチのために、およびHDPEをマスターバッチの希釈のために使用することができる。
【0086】
プラスチックおよび本発明による殺虫剤混合物の他に、プラスチック組成物は、場合によっては粉末状の担持材料、好ましくはタルク、カオリン、粘度、微粉末SiO、炭素およびデキストリンからなる群からのものを含有する。粉末状の担持材料の含量は(存在する場合には)、好ましくは0.01〜10質量%である。粉末状の担持材料は、殺虫剤混合物およびプラスチックと一緒に溶融混練によって混合することができ、好ましくは、先ず、殺虫剤混合物および粉末状の材料を混合し、引き続いて、たとえば溶融混練によって、プラスチックと混合させる。特に好ましくは、粉末状の材料と殺虫剤混合物とからなる混合物を、マスターバッチの製造のために使用する。
【0087】
プラスチック、殺虫剤混合物および場合によっては粉末状の担持材料の他に、プラスチック組成物は、場合によっては熱可塑性成形材料のための通常の添加剤、たとえば顔料、抗酸化剤、滑剤等を含有する。
【0088】
本発明のこれらの実施態様によってフィラメントを製造するために、たとえばプラスチック、殺虫剤混合物および場合によってはさらなる添加剤を溶融混練によって、好ましくは高められた温度で混合し、押出し、かつペレットに加工する、このようなペレットは、溶融スピン、さらに押出法によってペレットとして引き出すことができ、これをフィラメントにし、これにより、たとえばラッシェル法によって本発明による網状物にすることができる。
【0089】
本発明のこれらの実施態様のための網材料に対する単位およびその製造は、たとえば WO 2008/004711中で記載されている。
【0090】
本発明によるシート状成形体の性質および使用
本発明によるシート状成形体、特に網状物は、ヒトおよびペットを害虫から保護するのに、ならびにこの害虫により媒介されるベクター媒介性疾患から保護するのに適している。
【0091】
本発明によるシート状成形体は、害虫を撲滅するのに適しており、その際、本発明によるシート状成形体は、好ましくは網状物の形状で家屋に取り付ける。本発明による方法の好ましい実施態様において、可とう性の本発明によるシート状成形体、特に網状物は、害虫に対して栄養源として引きつける生物または生きていない対象物に取り付ける。
【0092】
用語「害虫」は、本発明によれば本来の意味における昆虫以外に、さらに害虫性の特に疾病を媒介するベクターとなりうるクモ類(Arachnida)を含む。
【0093】
本発明によるシート状成形体は、特に、双し目(Diptera)、ノミ目(Siphonaptera)、ゴキブリ目(Blattaria(Blattodea))、革し目(Dermaptera)、半し目(Hemiptera)、膜し目(Hymenoptera)、直し目(Orthoptera)、等し目(Isoptera)、シミ目(Thysanura)、Phthiaraptera目、Araneidaおよびダニ目(Acarina)、ならびに唇脚目(Chilopoda)および倍脚網(Diplopoda)からなる健康上および食料貯蔵上における害虫から保護するか、あるいはこれらを撲滅するのに適している。特に適しているのは、双し目、半し目、膜し目、ダニ目およびノミ目である。
【0094】
特に、双し目、たとえば蚊科(Culicidae)、ブユ科(Simuliidae)、ヌカカ科(Ceratopogpnidae)、アブ科(Tabanidae)、イエバエ科(Muscidae)、クロバエ科(Calliphoridae)、ヒツジバエ科(Oestridae)、ニクバエ科(Sarcophagidae)、シラミバエ科(Hippoboscidae)、ノミ目(Pulicidae, Phopalopsyllidae, Ceratophyllidae)およびダニ目(Ixodidae、Argasidae、Nuttalliellidae)、特に蚊およびハエに対して適している。
【0095】
特に、本発明による支持体は、
ムカデ類(Chilopoda)、たとえばScutigera coleoptrata、ヤスデ類(Diplopoda)、たとえばNarceus種、シロアリモドキ類(Araneae)、たとえばLatrodectus mactans、およびLoxosceles reclusa、ダニ目(Acaridida)、たとえばSarcoptes種、寄生ダニ目(Parasitiformes)、マダニ目(Ixodida)、たとえばIxodes scapularis、Ixodes holocyclus、Ixodes pacificus、Rhiphicephalus sanguineus、Dermacentor andersoni、Dermacentor variabilis、Amblyomma americanum、Ambryomma maculatum、Ornithodorus hermsi、Ornithodorus turicataおよびMesostigmata、たとえばOrnithonyssus bacotiおよびDermanyssus gallinae、シロアリ類(Isoptera)、たとえばCalotermes flavicollis、Leucotermes flavipes、Heterotermes aureus、Reticulitermes flavipes、Reticulitermes virginicus、Reticulitermes lucifugus、Termes natalensisおよびCoptotermes formosanus、ゴキブリ目(Blattaria−Blattodea)、たとえばBlattella germanica、Blattella asahinae、Periplaneta americana、Periplaneta japonica、Periplaneta brunnea、Periplaneta fuligginosa、Periplaneta australasiaeおよびBlatta orientalis、双し目(Diptera)、たとえばハエおよび蚊、たとえばAeotes aegypti、Aedes albopictus、Aedes vexans、Anastrepha ludens、Anopheles maculipennis、Anopheles crucians、Anopheles albimanus、Anopheles gambiae、Anopheles freeborni、Anopheles leucosphyrus、Anopheles minimus、Anopheles quadrimaculatus、Calliphora vicina、Chrysomya bezziana、Chrysomya hominivorax、Chrysomya macellaria、Chrysops discalis、Chrysops silacea、Chrysops atlanticus、Cochliomyia hominivorax、Cordylobia anthropophaga、Culicoides furens、Culexpipiens、Culex nigripalpus、Culex quinquefasciatus、Culex tarsalis、Culiseta inornata、Culiseta melanura、Dermatobia hominis、Fannia canicularis、Gasterophilus intestinalis、Glossina morsitans、Glossina palpalis、Glossina fuscipes、Glossina tachinoides、Haematobia irritans、Haplodiplosis equestris、Hippelates種、Hypoderma lineata、Leptoconops torrens、Lucilia caprina、Lucilia cuprina、Lucilia sericata、Lycoria pectoralis、Mansonia種、Musca domestica、Muscina stabulans、Oestrus ovis、Phlebotomus argentipes、Psorophora columbiae、Psorophora discolor、Prosimulium mixtum、Sarcophaga haemorrhoidalis、Sarcophaga種、Simulium vittatum、Stomoxys calcitrans、Tabanus bovinus、Tabanus atratus、Tabanus lineolaおよびTabanus similis、ハサミムシ類(Dermaptera)、たとえばForficula auricularia、Schnabelkerfe(Hemiptera)、たとえばLauseおよびWanzen、たとえばCimex lectularius、Cimex hemipterus、Reduvius senilis、Triatoma種、Rhodnius prolixusおよびArilus critatus、Hautfluegler (Hymenoptera)、たとえばAmeisen、Bienen、WespenおよびPflanzenwespen、たとえばCrematogaster種、Hoplocampa minuta、Hoplocampa testudinea、Monomorium pharaonis、Solenopsis geminata、Solenopsis invicta、Solenopsis richteri、Solenopsis xyloni、Pogonomyrmex barbatus、Pogonomyrmex californicus、Dasymutilla occidentalis、Bombus種、Vespula squamosa、Paravespula vulgaris、Paravespula pennsylvanica、Paravespula germanica、Dolichovespula maculata、Vespa crabro、Polistes rubiginosa、Camponotus floridanusおよびLinepithema humile、Springschrecken (Orthoptera)、たとえばGrillen、GrashuepferおよびHeuschrecken、たとえばAcheta domestica、Gryllotalpa gryllotalpa、Locusta migratoria、Melanoplus bivittatus、Melanoplus femurrubrum、Melanoplus mexicanus、Melanoplus sanguinipes、Melanoplus spretus、Nomadacris septemfasciata、Schistocerca americana、Schistocerca gregaria、Dociostaurus maroccanus、Tachycines asynamorus、Oedaleus senegalensis、Zonozerus variegatus、Hieroglyphus daganensis、Kraussaria angulifera、Calliptamus italicus、Chortoicetes terminifera および Locustana pardalina、ノミ目(Siphonaptera)、たとえばCtenocephalides felis、Ctenocephalides canis、Xenopsylla cheopis、Pulex irritans、Tunga penetransおよびNosopsyllus fasciatus、シミ目(Thysanura)、たとえばSilberfischchenおよびOfenfischchen、たとえばLepisma saccharinaおよびThermobia domestica、シラミ目(Phthiraptera)、たとえばPediculus humanus capitis、Pediculus humanus corporis、Pthirus pubis、Haematopinus eurysternus、Haematopinus suis、Linognathus vituli、Bovicola bovis、Menopon gallinae、Menacanthus stramineusおよびSolenopotes capillatus、に対して適している。
【0096】
特に好ましくは、本発明による支持体は、蚊(Culicidae)、特にAnopheles属の蚊、たとえばAnopheles gambiae、Anopheles Stephensi、Anopheles funestus、Anopheles maculipennis、Anopheles clavigerおよびAnopheles plumbeus; Aedes、たとえばAedes aegypti(Stegomyia aegypti)、Aedes albopictus; Culex、たとえばCulex quinquefasciatus、Culiseta、Haemagoggus、Mansonia、Ochlerotatus、Psorophora、Sabethes、Toxorhynchites、Verralina、WyeomyiaおよびZeugnomyiaから保護するために、あるいはこれらを撲滅するのに適している。
【0097】
さらに本発明によるシート状成形体は、好ましくはノミ目(Floehen)、特にスナノミ科の昆虫(Sandfloehe)、たとえばTunga penetransを保護するために、あるいはこれらを撲滅するのに適している。
【0098】
特に好ましくは、本発明によるシート状成形体、特に網状物は、ピレスロイドまたはクロロフェナピリ、好ましくはピレスロイドに対して耐性を示す害虫を撲滅するのに適している。
【0099】
その媒介を防止することができる疾病は、たとえばマラリア原虫(Plasmodien)によって引き起こされる疾病、たとえばMalaria tropicana、Malaria tertianaおよびMalaria quartana、さらには寄生虫(parasitaere Wuermer)によって引き起こされる疾病、たとえばフィラリア症、Disofilariose、ウイルスによって引き起こされる疾病、たとえば黄熱病、デング熱、ウエストナイル熱、チクングニア熱、リフトバレー熱、細菌によって引き起こされる疾病、たとえばツラレミアおよび単細胞の寄生虫であるTrypanosoma cruzi hervorgerufeneおよびサシガメ科の昆虫によって媒介されるシャーガス病(Shuedamerikanische Trypanosomiasis)である。
【0100】
さらに、本は油名によるシート状成形体、特にネットは、貯蔵されている農作物、すなわち、収穫された植物または植物粒子の、場合によってはさらに加工された形での保護のために適している。
【0101】
これは、たとえば、保護すべき対象物をネットで包むことによって使用することもできる。保護すべき対象物は、たとえば木材、果実、野菜、穀物、カカオ豆、コーヒー豆またはスパイスであってもよい。この対象は、さらに貨物であってもよい。例としては、茶、タバコまたは綿花から成る群からの貨物を含む。
【0102】
本発明は以下の実施例により詳説されるが、しかしながらこれに限定されることはない。
【0103】
実施例
A)アクリレート結合剤
ポリマー分散液の製造
一般的工程
250gの水および3gのスチレン種ラテックス(33質量%)(30nmの平均粒径を有するもの)を85℃に加熱し、これに対して5質量%の供給物2を添加する。10分後に、供給物1および残りの供給物2の添加を開始する。
【0104】
供給物2は、39.9gのNO中に溶解された30gの過酸化硫酸ナトリウムを含む。供給物1の組成については、第1表に示す。供給物1および2を、3時間に亘って添加し、その後に0.5時間に亘って後重合する。
【0105】
【表1】

【0106】
開始剤である過酸化硫酸ナトリウムの量は0.3質量部、乳化剤(Dowfax 2A1 (Dow))の量は0.4質量部であり、かつLumiten IRA (BASF SE)の量は0.6質量部であり、これらは、第1表からのモノマー組成物100質量部に対する。
【0107】
略語
MMA:メチルメタクリレート
S:スチレン
AN:アクリルニトリル
EA:エチルアクリレート
EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
BA:n−ブチルアクリレート
Amol:N−メチロールアクリルアミド
MaMol:N−メチロールメタクリルアミド
AS:アクリル酸
AM:アクリルアミド
【0108】
Dowfax2A1:
【化4】

【0109】
LumitenIRA:
【化5】

【0110】
B)使用された網状物の製造(結合剤を含む変法A):
【表2】

【0111】
試験のためにそれぞれ使用された網状物は、殺虫剤α−シペルメトリン、殺虫剤クロロフェナピル、アクリレート結合剤A8ならびにイソシアネートベースの架橋剤から成る水性配合物で含浸し、乾燥させ、かつ約100℃で1分に亘って架橋した。殺虫剤の量は、第2表に示すように、網状物の液体収容量(場合によっては一定の条件下で押しつぶした後に)を測定することにより調整され、かつ配合物の濃度については、網状物1mあたりの望ましい量が得られるように適合させる。これに応じて結合剤の量を、殺虫剤含量に適合させた。
【0112】
C)網状物の試験
処理された網状物を、第3表に示すように、複数回に亘って洗浄した。洗浄は、文献Montpellier washing procedure(たとえばWHO PVC、3/07/2002に添付の"Evaluation of wash resistance of long-lasting insecticidal nets"に記載されている)にしたがって実施した。これは、WO 2005/064072、第46頁の規定に基づいて実施した。
【0113】
試料は、WO 2005/064072、第47頁で実施したようにして生物学的試験を実施した。この生物学的試験は、WHOの"Cone Test"(WHOPES 96.1)にわずかな変更を加えたものである。60分後に「ノックダウン」および24時間後に死亡率を測定した。
【0114】
その一方で試験に関しては、ピレスロイドに対して耐性ではない系統(Aedes aegypti)ならびにピレスロイドに対して耐性の系統(Anopheles gambiae)を使用した。
【0115】
【表3】

【0116】
この結果は、本発明による網状物がさらにピレスロイド耐性のハマダラカ(Anopheles-Muecken)に対しても良好な効果を示すことを証明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)クロロフェナピルおよび
b)α−シペルメトリン(b1)、デルタメトリン(b2)、ペルメトリン(b3)およびλ−シハロトリン(b4)からなる群からの1種またはそれ以上のピレスロイドを、
a)クロロフェナピル50〜150mg/m
b1)α−シペルメトリン50〜150mg/m
b2)デルタメトリン15〜45mg/m
b3)ペルメトリン50〜750mg/m
b4)λ−シハロトリン5〜30mg/m
の(それぞれシート状成形体に対する)量で含有する殺虫剤混合物により含浸されたシート状成形体。
【請求項2】
クロロフェナピルの量が70〜130mg/mである、請求項1に記載のシート状成形体。
【請求項3】
ピレスロイドが70〜130mg/mの量のα−シペルメトリンである、請求項1または2に記載のシート状成形体。
【請求項4】
ピレスロイドが20〜40mg/mの量のデルタメトリンである、請求項1または2に記載のシート状成形体。
【請求項5】
ピレスロイドが75〜650mg/mの量のペルメトリンである、請求項1または2に記載のシート状成形体。
【請求項6】
ピレスロイドが7.5〜25mg/mの量のλ−シハロトリンである、請求項1または2に記載のシート状成形体。
【請求項7】
含浸が、本発明による殺虫剤混合物と結合剤とからなる混合物による被覆である、請求項1から6までのいずれか1項に記載のシート状成形体。
【請求項8】
含浸のために殺虫剤混合物を、シート状成形体中に含まれるモノフィラメント中に導入する、請求項1から7までのいずれか1項に記載のシート状成形体。
【請求項9】
織物材料の形である、請求項1から8までのいずれか1項に記載のシート状成形体。
【請求項10】
網状物の形である、請求項1から9までのいずれか1項に記載のシート状成形体。
【請求項11】
ヒトおよび/またはペットのための家屋内に請求項1から10に記載のシート状成形体を取り付ける、ヒトおよび/またはペットを害虫から保護するための方法。
【請求項12】
ヒトおよび/またはペットのための家屋内に請求項1から10に記載のシート状成形体を取り付ける、ヒトおよび/またはペットを害虫によって媒介されるベクター媒介性疾患から保護するための方法。
【請求項13】
家屋内に請求項1から10までのいずれか1項に記載のシート状成形体を取り付ける、家屋内の害虫を撲滅する方法。
【請求項14】
家屋内の害虫を撲滅するための、ヒトおよび/またはペットを害虫から保護するための、および/または、ヒトおよび/またはペットを害虫によって媒介されるベクター媒介性疾患から保護するための、請求項1から10までのいずれか1項に記載のシート状成形体の使用。
【請求項15】
害虫がピレスロイド耐性を示す、請求項11から13までのいずれか1項に記載の使用。

【公表番号】特表2012−532841(P2012−532841A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518946(P2012−518946)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059557
【国際公開番号】WO2011/003861
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】