説明

ヒトのラミニン5アルファ3鎖のLG4−5ドメインに対するモノクローナル抗体

本発明は、ヒトタンパク質ラミニン5アルファ3鎖のLG4/5ドメインに結合するモノクローナル抗体であって、当該ラミニン5アルファ3鎖LG4/5ドメインへのシンデカン1の結合を阻害するモノクローナル抗体、特に2008年1月8日にC.N.C.M.に、番号1-3890の下に寄託された、1H12と称するハイブリドーマ細胞株により産生された1H12モノクローナル抗体、並びにそのキメラ誘導体、ヒト化誘導体及び断片、並びにそれらをコードする核酸配列、並びにそれらを発現するベクター及び宿主細胞に関する。更に、本発明はそのような抗体の医学的応用、特に癌治療の応用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、モノクローナル抗体を用いた癌治療の分野に関する。より正確には、本発明は、ヒトタンパク質ラミニン5アルファ3鎖のLG4/5ドメインに結合するモノクローナル抗体に関し、当該モノクローナル抗体は、当該ラミニン5アルファ3鎖のLG4/5ドメインへの、シンデカン1の結合を阻害する。特に、本発明は、2008年1月8日にC.N.C.M.に番号I-3890のもとに寄託された1H12と称するハイブリドーマ細胞株により産生されたモノクローナル抗体1H12、2009年12月15日にコレクシオン ナシオナル ド クルチュル ド ミクロオーガニズム(C.N.C.M.、フランス国、Cedex 15パリ F-75724、ドクトル ルー通り25、パスツール研究所)に番号I-4267のもとに寄託された3A11と称するハイブリドーマ細胞株により産生されたモノクローナル抗体3A11、2009年12月15日にコレクシオン ナシオナル ド クルチュル ド ミクロオーガニズム(C.N.C.M.、フランス国、Cedex 15パリ F-75724、ドクトル ルー通り25、パスツール研究所)に番号I-4268のもとに寄託された15G5と称するハイブリドーマ細胞株により産生されたモノクローナル抗体15G5、並びにそれらのキメラ誘導体、ヒト化誘導体及び断片、並びにそれらをコードする核酸配列、並びにそれらを発現するベクター及び宿主細胞に関する。本発明は、更に、そのような抗体の医療、特に癌治療への応用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
癌は先進国における2番目の死因であり、世界保健機関(WHO)によると、世界中で毎年1100万人を上回る人々が癌に罹患していると診断され、毎年700万人の人々が癌により死亡する。従って、癌は先進国における公衆衛生の重大問題であり、年齢別の割合が一定のままだとしても、その集団の高齢化により、これらの数は上昇し続ける。
【0003】
2004年ヨーロッパにおいて、最も一般に生じやすい癌の形態は肺癌(全症例の13.3%)であり、直腸結腸癌(13.2%)及び乳癌(13%)が続いた。肺癌は最も一般的な癌死の原因(死亡341800人)でもあり、直腸結腸癌(死亡203700人)、胃癌(死亡137900人)及び乳癌(死亡129900人)が続いた。癌に対する大きな進展を迅速に遂げるためには、最大死亡要因:肺癌、直腸結腸癌、乳癌及び胃癌に一斉に攻撃する必要があることは明らかである。
【0004】
癌に対する従来の治療としては、外科手術、放射線治療及び化学療法が挙げられる。外科手術は、通常有害な影響を多くは有しないが、常に可能なわけではなく、腫瘍細胞が外科的な除去から逃れ得るので、通常、癌の治癒に十分なわけでもない。従って、外科手術が可能な場合であっても、放射線治療及び化学療法が必要である。
【0005】
しかしながら、たいていの薬物は副作用を有し得るが、抗癌剤はその中でもより悪い副作用をもたらすものである。確かに、抗癌剤は通常、腫瘍細胞にいくらかの優先性を伴った細胞傷害性活性のある薬剤であるが、腫瘍細胞に対する特異性が不十分であるため、他の細胞に対しても毒性を示し、従ってしばしば深刻な副作用をもたらす。放射線治療はより局所的であるが、それも腫瘍細胞に特異的ではなく、従って周囲の健康な細胞に対しても深刻な副作用をもたらす。その結果、これらの治療は限定的な期間内で用いられ得るが、腫瘍の治癒したように見えた後は継続できず、癌の再発がしばしば観察される。
【0006】
更に、一部の患者はその化学療法に対して耐性を生じる。
【0007】
従って、腫瘍細胞に対する特異性が増大し、ひいては副作用が減少した、代替の癌治療には非常に高いニーズがあり、それ故に、それは単独で、或いは化学療法又は放射線治療と組合せて用いられ得、そしてある場合(例えば、再発リスクが高い場合)は、より継続的な治療において用いられる。
【0008】
新たな抗癌分子のうち、モノクローナル抗体は、造血悪性新生物及び固形腫瘍に対する新たなクラスの有効な薬剤として現われており、今や臨床腫瘍学における主要な治療戦略である。
【0009】
モノクローナル抗体は典型的にはIgGクラスであり、一般的には標的腫瘍細胞上に発現した抗原と、高特異性及び高親和性をもって反応する。それらは、癌細胞の機能を妨げて、標的経路を不活性化するか、又は腫瘍細胞に結合して免疫エフェクター(ネイキド抗体)の動員を介して種々の細胞傷害性のメカニズムを活性化させるか、又はIgGにカップリングした放射性同位体又は細胞毒(コンジュゲート抗体)の集中的送達により癌細胞を破壊する。
【0010】
モノクローナル抗体は特定の抗原に特異的であるので、それらは、その特定抗原を発現しない細胞には影響しないであろう。結果として、腫瘍細胞に特異的に発現する標的抗原か、又は腫瘍細胞に特異的に必要とされるメカニズムに関連する標的抗原を選択することにより、それらは腫瘍特異性を示し、従って従来の抗癌分子よりも、生じる副作用が相当少ない。
【0011】
現在のところ、米国食品医薬品局(FDA)及び欧州医薬品庁(EMEA)により、ヒトの癌治療用に承認されたネイキド抗体又は結合抗体は9つある。更に、無数の抗体が後期の臨床試験フェーズにある。
【0012】
モノクローナル抗体(mAb)の腫瘍学への応用における最近の最も重要な進展は、抗血管内皮増殖因子抗体のベバシズマブ(アバスチン)、及び抗上皮増殖因子抗体のセツキシマブ(アービタックス)の導入及び承認であった。標準的な治療計画との組合せにおいて、ベバシズマブは直腸結腸、乳房及び肺の転移性癌の患者の生存を有意に延長する。単独又は救援化学療法とともに用いられるセツキシマブは、化学療法に難治性の結腸癌及び直腸癌の患者において臨床的に意味のある抗腫瘍応答をもたらす。更に、抗HER/neu抗体であるトラスツズマブ(ハーセプチン)は、標準的なアジュバント化学療法との組合せで、乳癌に対する根治的局所治療後の高リスクな患者において、再発を減少させ、疾患無しの生存及び全生存を延長することが示されている。これらの興味深い最近の結果は、癌治療に対するモノクローナル抗体治療の可能性の大きさを強調しており、新規な標的に結合し、新規な作用メカニズムを利用し、又は腫瘍の標的化を向上させたmAbの開発についての楽観論をもたらす。
【0013】
現在開発された抗癌モノクローナル抗体はたいてい、腫瘍特異的抗原を標的としている。これは高い腫瘍特異性と、ひいては低毒性を可能にするが、治療が、この特定の抗原を発現する腫瘍に限られるという欠点がある。結果として、全てのタイプの腫瘍は治療し得ず、特定のタイプの腫瘍のうちでも、腫瘍が標的抗原を発現しない場合には、一部の患者では治療が奏功しないことがあり得る。
【0014】
従って、抗癌モノクローナル抗体の開発のための他のアプローチは、腫瘍そのものではなくその微小環境、特に腫瘍増殖に必要な微小環境の分子を標的にすることである。
【0015】
上皮組織はヒトの癌発生の主要な部位を示し、全体の90%を上回る癌に関係する。これら上皮癌の多くにおいて、無数の遺伝子異常が同定されているが、腫瘍細胞の悪性形質転換及び転移過程に関与する分子メカニズムについての重要な疑問が残っている。
【0016】
腫瘍が増殖して転移するためには、新生物細胞は周囲の組織に浸潤し、移動していかなくてはならない。癌患者の主な死因は、遠位の器官への腫瘍の転移拡散である。転移は複雑な過程であり、癌細胞の増殖、その周囲の環境のリモデリング、新組織を通じた浸潤及び移動を可能にする、いくつかのシグナル伝達経路の協調を包含する。
【0017】
細胞の浸潤及び移動行動は、細胞外及び細胞内の両レベルで支配され、細胞とその細胞外マトリクス(ECM)との微妙なバランスのダイナミックな相互作用に依存する。機能的な多細胞生物への細胞の集合において、ECMタンパク質への接着が鍵となる役割を果たし、そのような接着が、細胞行動及び細胞運命を調節する、膜を介したシグナル伝達過程に関与することが、十分に立証されている。細胞の生存並びに細胞の移動及び浸潤を調節するメカニズムの新規洞察は、高度に調節されたこのメカニズムが、癌細胞において改変されるという結論に至っている。腫瘍発生及び細胞浸潤に特異的に関与する細胞-マトリクス接着タンパク質(又は接着関連タンパク質)の性質は依然未解決の問題である。
【0018】
腫瘍細胞の移動能力及び浸潤能力に関わる細胞接着タンパク質をブロックする能力は悪性疾患の患者の治療への有望なアプローチを提供する。
【0019】
インテグリンは、ECMに対する主要な細胞表面受容体であるが、他の接着系も記載されており、シンデカン等の、細胞外ドメインにグリコサミノグリカン(GAG)分子を有するマトリクス及び膜貫通受容体が挙げられる。
【0020】
これらのECM受容体の発現パターン及びリガンド結合親和性はともに、細胞の接着特性を決定する。インテグリンのリガンド結合親和性は細胞内の手がかりによって調節され得るが、インテグリンは細胞外相互作用を通して細胞機構にシグナル伝達することもでき、それによって遺伝子発現及びいくつかの細胞機能に影響を与える。酵素活性を欠くインテグリン及びシンデカンは、構造分子及びシグナル伝達分子の両方を含む種々のエフェクタータンパク質との相互作用により、それらの細胞内シグナルを伝達する。それらは、リガンド結合の後、ECM構成成分と細胞骨格機構との「統合」を調整するいくつかの特定の種々のアクチン結合タンパク質を含有する接着複合体にクラスター化する。細胞-マトリクス接着受容体は、細胞骨格タンパク質をリン酸化又は脱リン酸化するキナーゼ及びホスファターゼも活性化し、ひいてはストレスファイバー形成、細胞の形状及び移動性を調節する。更に、接着受容体の細胞質側尾部は、ECMへの細胞接着を調節するシグナル伝達タンパク質を動員できる。細胞の動きは、アクチン細胞骨格及びその原形質膜及び接着受容体との相互作用のダイナミックなリモデリングに起因する。
【0021】
ラミニン(LN)は拡大中のヘテロ3量体タンパク質ファミリーに属し、基底膜(BM)に一般的に見出される。この巨大分子は、インテグリン及びプロテオグリカンタイプの受容体を介して、細胞接着及び細胞移動を促進する。細胞特異的及び組織特異的発現が異なる15を超えるLNアイソフォームが知られ、細胞の受容体に差次的に認識される。腫瘍におけるLNアイソフォームの発現は、通常、それらの正常のカウンターパートにおける発現を反映する。しかしながら、腫瘍の浸潤の間にしばしばBMバリアーの喪失が起こる。癌においては、浸潤の前線の腫瘍細胞はLN5アイソフォームを強く発現しており、血管形成の間に血管BMのリモデリングが観察され、腫瘍の播種及び転移の間にいくつかのBMの穿通が起こる。従って、無秩序な細胞-LN相互作用は、悪性疾患の主要な特性である。
【0022】
ラミニン5(LN5、LN332とも略記される)は、上皮BMの主要な構成成分であり、十字形のヘテロ3量体へと会合する3つの鎖(アルファ3、ベータ3、ガンマ2)から構成される(Rousselle et al., 1991、図1を参照のこと)。
【0023】
以前出版された研究及び文献により、LN5のある領域が、抗癌特性を有する抗体の好適な標的を提供し得ることが証明及び示唆されている。例えば、WO 2005/056598、 WO 2005/040219、及び WO 2005/052003により、LN5のガンマ2鎖、特にそのドメイン3に対する抗体が有用な抗癌剤であり得ることが示されている。
【0024】
以前出版された文献により、LN5のアルファ3鎖も同様に、抗癌抗体の有用な標的であり得ることが示唆されている。このように、ヒトLN5(hLN5)アルファ3鎖に対する種々のモノクローナル抗体が記載され、それらのうちいくつかは、癌治療に有用として提示されている。
【0025】
アルファ3鎖は、そのカルボキシル末端領域に巨大な球状ドメイン(Gドメイン、各々が約200アミノ酸を含有する、5つの相同な球状サブドメイン(LG1〜LG5)からなる)を含む。LN5アルファ3鎖の標準的な配列は、UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号Q 16787-1の下で規定され、配列番号1で表されるとおりである(アイソフォームA)。不完全配列を有する別のアイソフォーム(アイソフォームB)が同定されていて、それは配列番号2(UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号Q 16787-2)で表されるとおりである。配列番号1(標準的なアイソフォームA)におけるG1〜G5ドメインの位置は、以下の表1中に表示する:
【0026】
【表1】

【0027】
BMにおける前駆体LN5(プレLN5)の分泌及び沈着の後、あるイベントがアルファ3鎖の球状ドメイン4及び5(LG4/5)の切断をもたらす。結果生じる成熟LN5は、皮膚中のアンカーフィラメントの主要構成成分であり、LG1〜3の三つ組ドメインとアルファ3ベータ1インテグリン及びアルファ6ベータ4インテグリンの両方との相互作用を介して細胞接着を媒介する(Carter et al., 1991; Rousselle and Aumailley, 1994)。
【0028】
従って、LN5アルファ3鎖に対する抗体は、Gドメインに対するものでなくてもよく、或いは、Gドメイン内の場合、プレLN5及び成熟LN5の両方に存在するLG1〜LG3サブドメインに対するものであっても、切断されたLG4〜LG5ドメイン中に対するものであってもよい。
【0029】
5つのLGサブドメインは異なるメカニズム及び異なる機能を伴う複数の細胞結合部位を含有し、従って、LN5に関係する多くの細胞機能に関係すると考えられている。
【0030】
WO 2000/26342には、LN5アルファ3球状ドメインに対する種々の特異的抗体(一般的には、LN5の機能に対して効果が観察された、BM165、CM6、RG13及びP3H9-2と称するヒトLN5アルファ3鎖に対するモノクローナル抗体を含む)の使用が示唆されているが、これらの抗体の具体的な特徴は一切記載されていない。しかしながら、これらの抗体のいくつかは、更に研究され、特徴付けされている。
【0031】
BM165はLN5アルファ3のLG2ドメインに対するものであることが更に示され、やはりLN5アルファ3のLG2ドメインに対する抗体である7B2と比較されており、移動及び接着を阻害し、抗腫瘍活性を示すことが示唆されている(WO2008/005828)。
【0032】
RG13も、LN5アルファ3のLG2ドメインに対するものであることが示され、移動及び増殖をブロックすることが示されている(Gonzales et al, 1999及びGoldfinger et al., 1999)。
【0033】
CM6はプレLN5及び成熟LNの両方を認識し、従ってエピトープはLG4〜LG5ドメイン中に位置しないことが証明されている。これは、アポトーシスを誘導せずに、腫瘍細胞の接着及び増殖をブロックすることが示された(Baker et al, 1996; Gonzales et al, 1999)。
【0034】
P3H9-2は、インテグリンに対する結合部位を認識し、接着及び増殖を阻害することが示されている(Gonzales et al, 1999; Kim et al., 2000; 及びWayner et al., 1993)。
【0035】
上記のとおり、LG1〜3の三つ組ドメインはアルファ3ベータ1インテグリン及びアルファ6ベータ4インテグリンの両方と相互作用することが報告されている(Carter et al., 1991 ; Rousselle and Aumailley, 1994)。特に、LG2及びLG3の両方が、インテグリンアルファ3ベータ1に対する結合部位を有することが報告されている(Mizushima et al, 1997及びShang et al, 2001)。結果として、LG1〜LG3ドメインに対する上記モノクローナル抗体がLN5の機能に対する何らかの活性を示すことが示され、癌治療のために提案されていることは、驚くべきことではない。
【0036】
これらの抗体はずっと昔に作製されているが、それらはどれも、臨床試験に至るのに十分に満足のいく結果を生じていないようである。LG1〜3のモジュールは、(1)正常組織のいずれの上皮基底膜でも発現する成熟LN5中に存在し、(2)重要なインテグリン媒介性細胞接着メカニズムに関与するので、これは驚くべきことではない。
【0037】
LN5アルファ3鎖のLG4〜LG5ドメイン中には、これまでのところインテグリンに対する結合部位は規定されていない。しかしながら、この領域中でヘパラン硫酸プロテオグリカンとの相互作用が実証されている。
【0038】
特に、LG4ドメインがシンデカン2及びシンデカン4に対する結合部位を含有することが示されている(Utani et al, 2001)。更に、LG4〜LG5ドメイン(LG4/5とも略記される)がシンデカン1に対する結合部位を含むことが示されている(Okamoto et al., 2003; Bachy et al, 2008)。
【0039】
更に、シンデカン1が、LG4/5ドメインがプレLN5中に存在する場合又は分離した場合に、LG4/5ドメインに結合するとしても、切断されたLG4/5ドメインが特定の機能を有するか否かは知られていない。
【0040】
WO 2005/073254には、LN5アルファ3 LG4/5ドメインが扁平上皮癌(SCC)の腫瘍発生に重要であることが記載されている。確かに、この文書は、LG4/5ドメインを欠く切断型のLN5アルファ3鎖遺伝子のみを発現する形質転換角化細胞は腫瘍浸潤を生じないが、正常LN5アルファ3鎖遺伝子で形質転換された角化細胞は腫瘍浸潤を可能にすることを、最初に記載するものである。次いで、この文書は癌治療のための、LN5アルファ3 LG4/5ドメインに対するモノクローナル抗体の有用性について考察している。しかしながら、そのようなモノクローナル抗体も、そのような抗体を作製するための抗原も、この文献では調製さえされていないので、これは単なる考察にすぎない。
【0041】
Tran et al(2008)は、扁平上皮癌(SCC)の腫瘍発生にとっての、LN5アルファ3 LG4/5ドメインの重要性を確認している。更に、Tran et alでは、SCCに罹患したマウスをLN5アルファ3 LG4/5ドメインに対するポリクローナル抗体で処理すると、SCC腫瘍のアポトーシスが誘導され、SCC腫瘍の増殖が減退し、正常組織の接着には影響なく、in vivoでヒトSCCの腫瘍発生が損なわれることが示されている。
【0042】
しかしながら、シンデカン1、2、又は4との相互作用、或いはそれらのうち2つ又は3つとの相互作用でさえ標的にし得る、LN5アルファ3 LG4/5ドメインの異なる領域に対する多様な特異性の、ポリクローナル抗体が用いられている。従って、この論文からは、LN5アルファ3 LG4/5ドメインのどの領域が、又はシンデカン1、2及び/又は4とのどの特定の相互作用が、抗腫瘍活性を再現するために標的とされるべきかを導き出すことはできない。
【0043】
特に、Tran et alには、ヘパリン並びに抗LN5アルファ3 LG4/5ポリクローナル抗体が、形質転換角化細胞のLN5アルファ3 LG4/5ドメインへの接着を阻害することが示されているが、LN5アルファ3 LG4/5ドメインのシンデカン1、2及び/又は4との相互作用が関係していることが、シンデカン1への優位性を示さずに考察されているにすぎない。
【0044】
更に、ポリクローナル抗体を用いると、多様な抗体特異性がシンデカン1、2及び4との、1を上回る相互作用を標的とすると考えることが合理的であり、ましてや、この論文からは、これらの相互作用のうちの1のみの阻害が、抗癌活性を得るのに十分であり得ることを結論するのは不可能である。
【0045】
LN5アルファ3 LG4/5ドメインに対する2つのモノクローナル抗体:クローン12C4(Goldfinger et al, 1999)及びD2-1(Frank and Carter, 2004, Xia et al, 1996)が記載されている。しかしながら、これらのクローンの活性は一切開示されていない。両方とも数年前に記載されているので、これは、それらがLN5の機能に対して活性を有していないことを明確に示唆している。LN5アルファ3 LG4/5ドメインのいずれの領域もLN5機能に対する活性を得るのに好適でないことを示している。
【0046】
従って、細胞接着及び移動並びに腫瘍発生におけるLG4/5の役割が十分に理解されていないことを考えると、抗癌活性を得るために、LN4/5ドメインのどの領域を標的とすべきか、又はこれらのドメインとヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)のシンデカン1、2及び/又は4とのどの相互作用を標的とすべきかは、なおのこと先行技術から公知ではない。ましてや、抗癌活性を得るために、これらのうち1の相互作用のみの標的化で足り得るかどうかは公知ではない。
【0047】
従って、要約すると、LN5の種々のリガンド分子(インテグリンアルファ3ベータ1及びインテグリンアルファ3ベータ4、及び(HSPG)のシンデカン1、2及び4)は、その接着機能及び移動機能に関与すると思われるので、抗癌治療のために、モノクローナル抗体を用いて潜在的に標的化され得る。
【0048】
しかしながら、LN5とそのリガンドとの相互作用の各々の正確な機能は、依然未解明のままであり、抗癌効果を得るために、どの相互作用が優先的に標的とされるべきかは、現在のところ知られていない。
【0049】
更に、LN5は、その3つの鎖のいくつかでリガンドと相互作用する。例えば、推定インテグリン結合部位は、ガンマ2サブユニットのN末端内にある(Decline and Rousselle, 2001)。LN5は、膜貫通の水疱性類天疱瘡抗原BP180の細胞外ドメインに結合するとも報告されている(Franzke et al., 200)。LN5は、ラミニンのベータ3サブユニットのN末端及び、程度はよりわずかであるが、LNのガンマ2サブユニットのN末端を通して、タイプVIIコラーゲンと直接相互作用する(Rousselle et al., 1997; Chen et al., 1999)。更に、LN5のガンマ2サブユニットは、タイプIVコラーゲン、パールカン、及びフィビュリンと相互作用することが示されている(Sasaki et al., 2001)。LN5は、ベータ3鎖VIドメインとLN5のアルファ3鎖短腕ドメインIIIとの相互作用により、他のLNアイソフォーム、LN6及びLN7にも結合する(Champliaud et al., 1996)。これにより、特定の相互作用及び特定の鎖ドメインを選ぶことがよりいっそう困難となる。
【0050】
従って、抗癌活性が証明された新たな抗LG4/5モノクローナル抗体に対するニーズがある。
【0051】
本発明は、LN5アルファ3鎖LG4/5ドメインとシンデカン1との相互作用を阻害するモノクローナル抗体を提供する。特に、本発明者らは、LN5アルファ3鎖LG4/5ドメインとシンデカン1との相互作用を阻害し、アルファ3鎖LG4/5ドメインを有するプレLN5を発現する細胞、特に結腸癌細胞、乳癌細胞、及び卵巣癌細胞の増殖を阻害する、1H12、3A11及び15G5と称する3つのモノクローナル抗体を作製した。
【発明の概要】
【0052】
発明の要旨
本発明は、ヒトタンパク質ラミニン5アルファ3鎖のLG4/5ドメイン(配列番号3)へ結合できるモノクローナル抗体又はその断片であって、当該ラミニン5アルファ3鎖のLG4/5ドメインへのシンデカン1の結合を阻害する、モノクローナル抗体又はその断片に関する。
【0053】
本発明は、本発明によるモノクローナル抗体又はその断片であって、ヒトタンパク質ラミニン5アルファ3鎖(配列番号1)のLG4/5ドメインへ結合できるモノクローナル抗体又はその断片をコードする核酸配列を含む単離核酸にも関する。
【0054】
本発明は、更に、本発明によるモノクローナル抗体又はその断片であって、ヒトタンパク質ラミニン5アルファ3鎖(配列番号1)のLG4/5ドメインへ結合できるモノクローナル抗体又はその断片をコードする少なくとも1種の核酸配列、及び当該核酸配列の発現に必要な調節配列を含むベクターに関する。
【0055】
本発明は、更に、上記記載のとおりの本発明によるベクターでトランスフェクションされた宿主細胞に関する。
【0056】
本発明は、更に、2008年1月8日にコレクシオン ナシオナル ド クルチュル ド ミクロオーガニズム(C.N.C.M.、フランス国、Cedex 15パリ F-75724、ドクトル ルー通り25、パスツール研究所)に番号I-3890のもとに寄託された1H12と称するハイブリドーマ細胞株に関する。本発明はまた、2009年12月15日にコレクシオン ナシオナル ド クルチュル ド ミクロオーガニズム(C.N.C.M.、フランス国、Cedex 15パリ F-75724、ドクトル ルー通り25、パスツール研究所)に番号I-4267のもとに寄託された3A11と称するハイブリドーマ細胞株にも関する。本発明は更に、2009年12月15日にコレクシオン ナシオナル ド クルチュル ド ミクロオーガニズム(C.N.C.M.、フランス国、Cedex 15パリ F-75724、ドクトル ルー通り25、パスツール研究所)に番号I-4268のもとに寄託された15G5と称するハイブリドーマ細胞株に関する。
【0057】
本発明は、上記のとおりの、本発明によるモノクローナル抗体又はその断片であって、ヒトタンパク質ラミニン5アルファ3鎖(配列番号1)のLG4/5ドメインへ結合できるモノクローナル抗体又はその断片、本発明による単離核酸或いはベクターを含む、医薬又は医薬組成物にも関する。医薬組成物の場合は、医薬的に許容可能な担体を更に含み得る。
【0058】
本発明は、更に:
i)ヒトタンパク質ラミニン5のLG4/5ドメイン(配列番号3)をシンデカン1と接触させる工程;
ii)前記ヒトタンパク質ラミニン5のLG4/5ドメイン(配列番号3)及び前記シンデカン1を、ヒトタンパク質ラミニン5のLG4/5ドメイン(配列番号3)を含むポリペプチドによる非ヒト動物の免疫により得られた、試験すべきモノクローナル抗体又はその断片と更に接触させるか、又は接触させない工程;
iii)試験すべき前記モノクローナル抗体又はその断片の存在下又は非存在下で、前記ヒトタンパク質ラミニン5のLG4/5ドメイン(配列番号3)へのシンデカン1の結合(biding)を決定する工程;及び
iv)前記ヒトタンパク質ラミニン5のLG4/5ドメイン(配列番号3)へのシンデカン1の結合を阻害するモノクローナル抗体又はその断片を選択する工程;
を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体又はその断片の同定方法に関する。
【0059】
本発明は、最後に、上記のとおりの本発明によるモノクローナル抗体又はその断片であって、ヒトタンパク質ラミニン5アルファ3鎖(配列番号1)のLG4/5ドメインへ結合できるモノクローナル抗体又はその断片、本発明による単離核酸或いは本発明によるベクターを含む、有効量の医薬を、治療を必要とする被験体に投与することを含む、当該被験体における癌の治療方法に関する。従って、本発明は、本発明によるモノクローナル抗体又はその断片であって、ヒトタンパク質ラミニン5アルファ3鎖(配列番号1)のLG4/5ドメインへ結合できるモノクローナル抗体、又はその断片の、癌治療用の医薬の製造のための使用にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図面の説明
【図1】ラミニン5(LN5)の構造。
【図2】アルファ3鎖の配列及びLGドメインの組成。ヒトLNアルファ3鎖の配列を示す。鎖内の種々のドメインを列挙し、その位置を示す。SP、シグナルペプチド;LE、ラミニン上皮成長因子様ドメイン;LCC、ラミニンコイルドコイル;LG1-5、ラミニン球状ドメインLG1、LG2、LG3、LG4及びLG5。
【図3】1H12 mAbはプレLN5のアルファ3LG4/5ドメインに特異的である。(A)精製された組換えLG4/5断片のSDS-PAGE及びイムノブロット解析。以前に記載されたとおり(Okamoto et al., 2003)、組換えLG4/5断片をヘパリンカラムでのアフィニティークロマトグラフィーにかけ、2μgの純粋溶出タンパク質を非還元的条件下で12%SDS−PAGEで分離した。タンパク質はCoomassie Brilliant Blue R-250で染色したか、又はニトロセルロースに転写後、注記のように、LG4/5に対するpAb又は1H12 mAbのいずれかで免疫検出した。右側に分子量マーカーの移動位置を示す。(B)角化細胞培養培地から精製されたプレLN5のSDS-PAGE解析及びウェスタンブロット解析。以前に報告されたとおり(Bachy et al., 2008)、角化細胞培養培地からプレLN5及びLN5をアフィニティー精製し、1μgの各タンパク質を還元的条件下、8%SDS-PAGEにより解析した。表示したとおり、抗アルファ3ベータ3ガンマ2 pAb 4101(Rousselle et al, 1991)、抗LG4/5 pAb及び抗LG4/5 mAb 1H12によりイムノブロット解析を行った。LN5及びプレLN5サブユニット及びマーカーの分子量を注記する。
【図4】1H12 mAbは、シンデカン1媒介性の、LG4/5断片への細胞接着を阻害する。(A)用量依存的な、シンデカン1媒介性の、アルファ3LG4/5断片へのHT1080細胞及びNHKの細胞接着。表示したとおり、マルチウェルプレートを組換え発現したLG4/5断片でコーティングした。1%BSAで飽和させた後、EDTAを除去したHT1080細胞及びNHKを播種(8x104細胞/ウェル)し、30分〜1時間インキュベートした。非接着細胞はPBSで洗浄し、接着細胞を固定した後、0.1%クリスタルバイオレットで染色し、570nmでの吸光度測定によって接着の程度を決定した。BSAでコーティングしたウェルに対応するブランクの値を差し引き、各アッセイのポイントを三連の測定から導き出した。PlasDICフィルターを搭載したAxiovert 40 Zeiss顕微鏡により観察した、アルファ3LG4/5にその受容体シンデカン1を通して接着したHT1080細胞及びNHKの伸展パターン。バーは10μm。(B)プレLN5(5nM)、成熟LN5(5nM)及びLG4/5断片(0.3μM)への、EDTAを除去したHT1080細胞及びヒト正常角化細胞の接着に対する可溶性ヘパリンの影響。1%BSAで飽和させた後、室温で1時間、ウェルを表示した濃度のヘパリンとインキュベートし、細胞を同じ濃度のヘパリンの存在下、播種した。(-C)プレLN5(5nM)、成熟LN5(5nM)及びLG4/5断片(0.3μM)への、EDTAを除去したHT1080細胞及びNHKの接着に対する1H12 mAbの影響。1%BSAで飽和させた後、室温で、ウェルを表示した濃度の1H12 mAbとインキュベートした。(B及びC)HT1080細胞及びNHKを8X104の密度で1時間播種した。全ての場合において、細胞接着の程度は上記したとおり決定し、競合物質非存在下での接着の百分率として表した。
【図5】1H12 mAbはLG4/5ドメイン中のシンデカン1結合部位をブロックする。NHK(3X10細胞)を、250μMフッ化フェニルメチルスルホニル及び1mM n-エチルマレイミドを含有するRIPA溶解緩衝液、pH7.4(Okamoto et al., 2003)で抽出した。遠心後、ライセートのタンパク質濃度を決定し、20μgのLG4/5で共有結合的に被覆されたビーズを用いたプルダウン実験のために等量のタンパク質を処理した。ビーズを、細胞ライセートとの2時間のインキュベートに先立ち、PBS(レーン1)、100pmole/mlの可溶性ヘパリン(レーン2)又は10pmole/mlのmAb 1H12のいずれかとプレインキュベートした。洗浄後、結合物質を消化緩衝液(20mM酢酸ナトリウム、5mM CaC12、pH7.0)中でインキュベートし、25℃で2時間、8mU/mlヘパリチナーゼI及び50mU/mlコンドロイチナーゼABCで処理した。タンパク質を8%SDS-PAGEゲルで分離し、ニトロセルロースに転写し、そしてシンデカン1の免疫検出を行った。右側に分子マーカーを注記した。
【図6】1H12 mAbは正常角化細胞の移動を阻害する。機能阻害モノクローナル抗体1H12による上皮の創癒合の阻害。(D)創掻き取りアッセイに用いられるNHKのLG4/5断片への接着に対する1H12 mAbの効果。マルチウェルプレートを0.3μM LG4/5でコーティングした。1%BSAで飽和させた後、細胞接着前に、ウェルを20pmole/mlのmAb 1H12と1時間インキュベートした。細胞接着の程度を測定し、抗体非存在下での接着の百分率として表した(A、B、C)。NHKを24ウェル組織培養プレート上でコンフルエントで増殖させた。培地を除去し、ピペットマンのチップで細胞層を掻き取った。掻き取り創のついた表面をPBSで洗浄し、プレLN5のLG4/5ドメイン中のシンデカン1結合部位を阻害する1H12 mAb 20pmole/mlの非存在下(A)又は存在下(B)、培養培地中37℃で16時間インキュベートした。以前示されたとおり(Goldfinger et al., 1999)、アルファ3インテグリンサブユニットに対するP1B5機能阻害mAb 20pmole/mlを、阻害コントロールとして我々のアッセイで用いた(D)。バーは100μm。
【図7】結腸癌細胞株HT29の細胞外マトリクスにおけるプレLN5及びLG4/5断片の発現。(A)結腸癌細胞HT29(American Type Culture Collection, HTB-38)の細胞外マトリクスに局在するプレLN5のSDS-PAGE解析及びウェスタンブロット解析。我々は以前、結腸癌細胞HT29がLN5を産生することを示している(Remy et al., 2006)。HT29をコンフルエントにまで増殖させた後、培地を除去し、細胞を無菌PBS中で洗浄した。無菌の20mM NH4OH中で5分間の処理により、細胞を除去した。マトリクスを無菌水で3回洗浄し、次いで0.325M Tris-HCl(pH6.9)、25%グリセロール、5%β-メルカプトエタノール含有10% SDS中での可溶化によって基層から除去し、8% SDS-PAGEで解析した。表示したとおり、抗アルファ3ベータ3ガンマ2 pAb 4101、抗LG4/5 pAb及び抗LG4/5 mAb 1H12によりイムノブロット解析を行った。精製LN5をコントロールとして用いた。左側にそのサブユニットの分子量を注記する。右側に分子マーカーを注記する。(B)精製LG4/5断片(2μg、レーン1)及びHT29マトリクス(レーン2)を還元的条件下12%SDS-PAGEで分離し、ニトロセルロースに転写した後、注記のとおり、LG4/5に対するpAb又は1H12mAbのいずれかで免疫検出した。分子量マーカーの移動位置を右側に示す。
【図8】結腸癌細胞HT29由来のシンデカン1はLG4/5断片に結合する。(A)結腸癌細胞HT29は大量のシンデカン1を発現し、これはLG4/5断片に結合する。NHK(レーン1)及びHT29細胞(レーン2)から、RIPA緩衝液により図5のようにライセートを調製した。3X106細胞に対応するライセートを、20μgのLG4/5で共有結合的に被覆されたビーズを用いるプルダウン実験用とした。洗浄後、結合物質を消化緩衝液(20mM 酢酸ナトリウム、5mM CaC12, pH7.0)中でインキュベートし、25℃で2時間、8mU/mlヘパリチナーゼI及び50mU/mlコンドロイチナーゼABCで処理した。タンパク質を8%SDS-PAGEゲルで分離し、ニトロセルロースに転写した後、シンデカン1の免疫検出を行った。右側に分子マーカーを注記した。(B)1H12 mAbは、HT29細胞由来シンデカン1のLG4/5断片への結合を阻害する。上記に記載のとおり、HT29細胞ライセートをLG4/5のプルダウン実験に用いた。ビーズを、細胞ライセートとの2時間のインキュベートに先立ち、PBS(レーン1)又は10pmole/mlの1H12 mAb(レーン2)のいずれかとプレインキュベートした。洗浄後、結合物質を消化緩衝液中でインキュベートし、タンパク質を8%SDS-PAGEゲルで分離し、ニトロセルロースに転写した後、シンデカン1の免疫検出を行った。右側に分子マーカーを注記した。(C)共焦点顕微鏡で解析した、培養結腸癌細胞HT29におけるシンデカン1及びプレLN5の分布。培養したHT29細胞を固定し、透過処理し、免疫蛍光解析のために処理した。シンデカン1の分布はDL101 mAbを用いて研究し、LG4/5ドメインの分布はLG4/5に対するpAbで研究した。HT29コロニー全体の概観を示す。シンデカン1はコロニーの全細胞中で発現するが、プレLN5の強い染色はもっぱら周縁の細胞中に見られることに留意のこと。細胞のマージ画像により、細胞における2つの特異的染色の並置が、細胞が分裂及び移動する位置におけるコロニーのへりに局在することが示される。この特定の染色の拡大図を示す。バーは20μm。
【図9】in vitroでのHT29直腸癌細胞増殖に対する1H12mABの効果。HT29細胞を、96ウェルプレート(8X103細胞/ウェル)中、10%FCSと2mM Glutamax(Gibco, Invitrogen, Cergy Pontoise, France)を含む添加剤とを含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中にプレーティングした。2日後、培地を除去し、1H12 mAb又はLN5ベータ3鎖に対する6F12 mAbコントロールのいずれかを濃度を増加させて含有するDMEM 2% FCS、2mM Glutamaxで置換した。この工程を3回繰り返し、2日間の培養後、培地を除去し、Cell proliferation kit II(XTT, Roche Molecular Biomedicals)を用い、生細胞の量を決定した。
【図10】1H12のVドメイン遺伝子のクローニング。RNeasy Plus(Qiagen, Courtaboeuf, France)を製造業者の推奨に従って用い、1H12ハイブリドーマ細胞から全RNAを単離した。マウス免疫グロブリン重鎖(VH)遺伝子及びκ軽鎖(VL)遺伝子のVドメインのクローニングは、VHドメイン及びVLドメインをコードするcDNA配列の各末端の保存領域に由来するオリゴヌクレオチドプライマーを用い、RT-PCR(Titan one tube RT-PCR kit, Roche Diagnostics, Meylan, France)により行った(Orlandi et al., 1988)。VHドメインについては、VH-FOR(5'-TGAGGAGACGGTGACCGTGGTCCCTTGGCCCCAG、配列番号13)及びVH-BACK(5'-AGGTSMARCTGCAGSAGTCWGG(S=C又はG、M =A又はC、R=A又はG、及びW=A又はTである);配列番号14)プライマーを用いた。VLドメインについては、VL-FORプライマー(5'-GTTAGATCTCCAGCTTGGTCCC、配列番号15)及びVL-BACK(5'-GACATTCAGCTGACCCAGTCTCCA、配列番号16)を利用した。RT-PCRは以下のとおりであった:42℃、30分;94℃、2分;及び94℃、30秒;50℃、30秒;68℃、1分で40サイクル。PCR断片を2%アガロースゲルで精製し、アガロースから抽出し(QUIAquick; Qiagen)、TAクローニング(Invitrogen, Cergy Pontoise, France)によりpCRII-TOPO中にクローニングした。各PCR断片について、独立クローンを少なくとも3つシークエンスし(Genome Express, Meylan, France)、cDNA配列をIMGTマウス免疫グロブリンデータベース(http://imgt.cines.fr/)と比較した。VH遺伝子及びVL遺伝子についてのBLASTの結果を表2及び表3にそれぞれ要約する。VHドメイン及びVLドメインを構成するフレームワーク領域(FR)及び相補性決定領域(CDR)を図10及び図11にそれぞれ示す。
【図11】1H12のVドメイン遺伝子のクローニング。RNeasy Plus(Qiagen, Courtaboeuf, France)を製造業者の推奨に従って用い、1H12ハイブリドーマ細胞から全RNAを単離した。マウス免疫グロブリン重鎖(VH)遺伝子及びκ軽鎖(VL)遺伝子のVドメインのクローニングは、VHドメイン及びVLドメインをコードするcDNA配列の各末端の保存領域に由来するオリゴヌクレオチドプライマーを用い、RT-PCR(Titan one tube RT-PCR kit, Roche Diagnostics, Meylan, France)により行った(Orlandi et al., 1988)。VHドメインについては、VH-FOR(5'-TGAGGAGACGGTGACCGTGGTCCCTTGGCCCCAG、配列番号13)及びVH-BACK(5'-AGGTSMARCTGCAGSAGTCWGG(S=C又はG、M =A又はC、R=A又はG、及びW=A又はTである);配列番号14)プライマーを用いた。VLドメインについては、VL-FORプライマー(5'-GTTAGATCTCCAGCTTGGTCCC、配列番号15)及びVL-BACK(5'-GACATTCAGCTGACCCAGTCTCCA、配列番号16)を利用した。RT-PCRは以下のとおりであった:42℃、30分;94℃、2分;及び94℃、30秒;50℃、30秒;68℃、1分で40サイクル。PCR断片を2%アガロースゲルで精製し、アガロースから抽出し(QUIAquick; Qiagen)、TAクローニング(Invitrogen, Cergy Pontoise, France)によりpCRII-TOPO中にクローニングした。各PCR断片について、独立クローンを少なくとも3つシークエンスし(Genome Express, Meylan, France)、cDNA配列をIMGTマウス免疫グロブリンデータベース(http://imgt.cines.fr/)と比較した。VH遺伝子及びVL遺伝子についてのBLASTの結果を表2及び表3にそれぞれ要約する。VHドメイン及びVLドメインを構成するフレームワーク領域(FR)及び相補性決定領域(CDR)を図10及び図11にそれぞれ示す。
【図12】ヒト正常結腸におけるプレLN5のLG4/5ドメインの発現。ヒト成体正常結腸組織切片を、BioChain(Clinisciences, Montrouge, France)から購入した。外科手術の後、即、組織を液体窒素中で凍結した。凍結切片を7μmの厚さで切り、冷アセトンにより固定して、PBS中10%ヤギ血清で再水和した。洗浄後、切片を45分間、1H12 mAb抗体とインキュベートし、PBSで洗浄し、更に45分間、プロセッシングされたLN5 3量体を認識する抗LN5 pAb L132とインキュベートした。Alexa Fluor 488抗体及びAlexa Fluor 546抗体を一緒に、30分間適用した。Alexa Fluor 488により、LG4/5ドメインに対する1H12 mAbの染色を明らかにし、Alexa Fluor 546により、成熟LN5に対するL132 pAbの染色を明らかにした。Syto 59 Redとの5分間のインキュベーションにより、核を染色した。レーザー走査共焦点顕微鏡(Zeiss LSM 510)により切片を観察した。バーは100μm。LN5は上皮細胞の基底膜に局在し、陰窩軸(crypte axis)の頂部から基部まで強度が低下していくグラジエントとして発現するのに留意のこと。1H12 mAbによるLG4/5ドメインのかすかな染色は、もっぱら、陰窩軸のへりに沿って位置する上皮細胞において見られたが、細胞外レベルでは全く発現していなかった。マージ画像により、LG4/5染色は、細胞がプレLN5を合成している領域において、もっぱら細胞内レベルでLN5染色と共局在することが明らかになった。LG4/5ドメイン染色は、成熟LN5が見出される基底膜においては全く見出されなかった。
【図13】ヒト結腸癌におけるプレLN5のLG4/5ドメインの発現。ヒト直腸結腸腺癌は、外科手術を受けた患者から切除し、BioChain(Clinisciences, Montrouge, France)より購入した。外科手術の後、即、組織を液体窒素中で凍結した。凍結切片を7μmの厚さで切り、冷アセトンにより固定して、図12において記載したとおり処理した。Alexa Fluor 488により、LG4/5ドメインに対する1H12 mAbの染色を明らかにし、Alexa Fluor 546により、成熟LN5に対するL132 pAbの染色を明らかにした。Syto 59 Redとの5分間のインキュベーションにより、核を染色した。レーザー走査共焦点顕微鏡(Zeiss LSM 510)により切片を観察した。バーは100μm。基底膜の染色は無秩序化しており、成熟LN5染色及びLG4/5染色の両方について顕著な反応性が見出されたことに留意のこと。マージ画像により、LG4/5染色はしばしば、細胞内及び細胞外レベルの両方で、成熟LN5染色と共局在することが明らかになった。マージ画像により、高倍率では、LG4/5染色及び成熟LN5染色の両方が上皮細胞のすぐ近くにおいて強く現れ、共局在することが明らかになった。
【図14】3A11のVドメイン遺伝子のクローニング。RNeasy Plus(Qiagen, Courtaboeuf, France)を製造業者の推奨に従って用い、3A11ハイブリドーマ細胞から全RNAを単離した。マウス免疫グロブリン重鎖(VH)遺伝子及びκ軽鎖(VL)遺伝子のVドメインのクローニングは、VHドメイン及びVLドメインをコードするcDNA配列の各末端の保存領域に由来するオリゴヌクレオチドプライマーを用い、RT-PCR(Titan one tube RT-PCR kit, Roche Diagnostics, Meylan, France)により行った(Orlandi et al., 1988)。VHドメインについては、VH-FOR(5'-TGAGGAGACGGTGACCGTGGTCCCTTGGCCCCAG、配列番号13)及びVH-BACK(5'-AGGTSMARCTGCAGSAGTCWGG(S=C又はG、M=A又はC、R=A又はG、及びW=A又はTである);配列番号14)プライマーを用いた。VLドメインについては、VL-FORプライマー(5'-GTTAGATCTCCAGCTTGGTCCC、配列番号15)及びVL-BACK(5'-GACATTCAGCTGACCCAGTCTCCA、配列番号16)を利用した。RT-PCRは以下のとおりであった:42℃、30分;94℃、2分;及び94℃、30秒;50℃、30秒;68℃、1分で40サイクル。PCR断片を2%アガロースゲルで精製し、アガロースから抽出し(QUIAquick; Qiagen)、TAクローニング(Invitrogen, Cergy Pontoise, France)によりpCRII-TOPO中にクローニングした。各PCR断片について、独立クローンを少なくとも3つシークエンスし(Genome Express, Meylan, France)、cDNA配列をIMGTマウス免疫グロブリンデータベース(http://imgt.cines.fr/)と比較した。VH遺伝子及びVL遺伝子についてのBLASTの結果を表4及び表5にそれぞれ要約する。VHドメイン及びVLドメインを構成するフレームワーク領域(FR)及び相補性決定領域(CDR)を図14及び図15にそれぞれ示す。
【図15】3A11のVドメイン遺伝子のクローニング。RNeasy Plus(Qiagen, Courtaboeuf, France)を製造業者の推奨に従って用い、3A11ハイブリドーマ細胞から全RNAを単離した。マウス免疫グロブリン重鎖(VH)遺伝子及びκ軽鎖(VL)遺伝子のVドメインのクローニングは、VHドメイン及びVLドメインをコードするcDNA配列の各末端の保存領域に由来するオリゴヌクレオチドプライマーを用い、RT-PCR(Titan one tube RT-PCR kit, Roche Diagnostics, Meylan, France)により行った(Orlandi et al., 1988)。VHドメインについては、VH-FOR(5'-TGAGGAGACGGTGACCGTGGTCCCTTGGCCCCAG、配列番号13)及びVH-BACK(5'-AGGTSMARCTGCAGSAGTCWGG(S=C又はG、M=A又はC、R=A又はG、及びW=A又はTである);配列番号14)プライマーを用いた。VLドメインについては、VL-FORプライマー(5'-GTTAGATCTCCAGCTTGGTCCC、配列番号15)及びVL-BACK(5'-GACATTCAGCTGACCCAGTCTCCA、配列番号16)を利用した。RT-PCRは以下のとおりであった:42℃、30分;94℃、2分;及び94℃、30秒;50℃、30秒;68℃、1分で40サイクル。PCR断片を2%アガロースゲルで精製し、アガロースから抽出し(QUIAquick; Qiagen)、TAクローニング(Invitrogen, Cergy Pontoise, France)によりpCRII-TOPO中にクローニングした。各PCR断片について、独立クローンを少なくとも3つシークエンスし(Genome Express, Meylan, France)、cDNA配列をIMGTマウス免疫グロブリンデータベース(http://imgt.cines.fr/)と比較した。VH遺伝子及びVL遺伝子についてのBLASTの結果を表4及び表5にそれぞれ要約する。VHドメイン及びVLドメインを構成するフレームワーク領域(FR)及び相補性決定領域(CDR)を図14及び図15にそれぞれ示す。
【図16】15G5のVドメイン遺伝子のクローニング。RNeasy Plus(Qiagen, Courtaboeuf, France)を製造業者の推奨に従って用い、3A11ハイブリドーマ細胞から全RNAを単離した。マウス免疫グロブリン重鎖(VH)遺伝子及びκ軽鎖(VL)遺伝子のVドメインのクローニングは、VHドメイン及びVLドメインをコードするcDNA配列の各末端の保存領域に由来するオリゴヌクレオチドプライマーを用い、RT-PCR(Titan one tube RT-PCR kit, Roche Diagnostics, Meylan, France)により行った(Orlandi et al., 1988)。VHドメインについては、VH-FOR(5'-TGAGGAGACGGTGACCGTGGTCCCTTGGCCCCAG、配列番号13)及びVH-BACK(5'-AGGTSMARCTGCAGSAGTCWGG(S=C又はG、M=A又はC、R=A又はG、及びW=A又はTである);配列番号14)プライマーを用いた。VLドメインについては、VL-FORプライマー(5'-GTTAGATCTCCAGCTTGGTCCC、配列番号15)及びVL-BACK(5'-GACATTCAGCTGACCCAGTCTCCA、配列番号16)を利用した。RT-PCRは以下のとおりであった:42℃、30分;94℃、2分;及び94℃、30秒;50℃、30秒;68℃、1分で40サイクル。PCR断片を2%アガロースゲルで精製し、アガロースから抽出し(QUIAquick; Qiagen)、TAクローニング(Invitrogen, Cergy Pontoise, France)によりpCRII-TOPO中にクローニングした。各PCR断片について、独立クローンを少なくとも3つシークエンスし(Genome Express, Meylan, France)、cDNA配列をIMGTマウス免疫グロブリンデータベース(http://imgt.cines.fr/)と比較した。VH及びVL遺伝子についてのBLASTの結果を表6及び表7にそれぞれ要約する。VHドメイン及びVLドメインを構成するフレームワーク領域(FR)及び相補性決定領域(CDR)を図16及び図17にそれぞれ示す。
【図17】15G5のVドメイン遺伝子のクローニング。RNeasy Plus(Qiagen, Courtaboeuf, France)を製造業者の推奨に従って用い、3A11ハイブリドーマ細胞から全RNAを単離した。マウス免疫グロブリン重鎖(VH)遺伝子及びκ軽鎖(VL)遺伝子のVドメインのクローニングは、VHドメイン及びVLドメインをコードするcDNA配列の各末端の保存領域に由来するオリゴヌクレオチドプライマーを用い、RT-PCR(Titan one tube RT-PCR kit, Roche Diagnostics, Meylan, France)により行った(Orlandi et al., 1988)。VHドメインについては、VH-FOR(5'-TGAGGAGACGGTGACCGTGGTCCCTTGGCCCCAG、配列番号13)及びVH-BACK(5'-AGGTSMARCTGCAGSAGTCWGG(S=C又はG、M=A又はC、R=A又はG、及びW=A又はTである);配列番号14)プライマーを用いた。VLドメインについては、VL-FORプライマー(5'-GTTAGATCTCCAGCTTGGTCCC、配列番号15)及びVL-BACK(5'-GACATTCAGCTGACCCAGTCTCCA、配列番号16)を利用した。RT-PCRは以下のとおりであった:42℃、30分;94℃、2分;及び94℃、30秒;50℃、30秒;68℃、1分で40サイクル。PCR断片を2%アガロースゲルで精製し、アガロースから抽出し(QUIAquick; Qiagen)、TAクローニング(Invitrogen, Cergy Pontoise, France)によりpCRII-TOPO中にクローニングした。各PCR断片について、独立クローンを少なくとも3つシークエンスし(Genome Express, Meylan, France)、cDNA配列をIMGTマウス免疫グロブリンデータベース(http://imgt.cines.fr/)と比較した。VH及びVL遺伝子についてのBLASTの結果を表6及び表7にそれぞれ要約する。VHドメイン及びVLドメインを構成するフレームワーク領域(FR)及び相補性決定領域(CDR)を図16及び図17にそれぞれ示す。
【図18】1H12 mAbのエピトープマッピング。(A)1H12 mAbのエピトープマッピング。1H12 mAbのエピトープを決定するために、M13ファージのマイナーコートタンパク質(pIII)に融合させた12マーのランダムペプチドのコンビナトリアルライブラリに基づく、市販のファージディスプレイペプチドライブラリ(Ph.D-12 phage display peptide library; New England Biolabs, Ipswich, MA, USA)を、製造業者の推奨に従ってスクリーニングした。簡単に言うと、1.5x1011のファージをTBST緩衝液(50mM Tris-HCl pH8.5, 150mM NaCl, 0.1% Tween 20)中、1.5μlの1H12 mAb腹水液と20分間インキュベートし、次いで50μlのプロテインA又はプロテインGセファロースビーズを加えた。15分のインキュベーションの後、ビーズをTBST緩衝液中で10回洗浄し、結合ファージを0.2M Glycine-HCl(pH2.2)で溶出した。1M Tris-HCl(pH9.1)で中和した後、ファージを増幅しファージ捕捉の手順を繰り返した。4回のファージ選択の後、少なくとも20の個別のファージをシークエンスし、コンセンサス配列を決定した。LG4/5配列との比較により、1H12 mAbエピトープを同定した。(B)1H12 mAbエピトープを、LG4/5配列全体の中で示す。(C)1H12 mAbはLDSKPLYTPSSSFエピトープを認識する。配列LDSKPLYTPSSSF(配列番号25)を有する1H12 mAbエピトープを包含する合成ペプチド(■)及びLG4/5ドメイン中の他の配列に対応するが、エピトープとは異なるコントロールペプチド(●)を合成し(Eurogentec, Anger, France)、ELISAアッセイに用いた。マルチウェルプレート(Greiner, Dutscher, Brumath, France)を、4℃一晩の吸着により、表示した量のペプチドでコーティングした。ウェルを1%BSAで飽和させた後、ウェルを1H12 mAb(50μg/ml)と22℃で1時間インキュベートした後、ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウス免疫グロブリン抗体を2次抗体とし、2,2'−アジノ−ビス(3−エチルベンチアゾリン−6−スルホン酸)を発色基質として、典型的な酵素-イムノアッセイ反応を行った。ELISAリーダー(MR 5000, Dynatech Labs., UK)において405nmで決定された発色収量により、1H12 mAbが用量依存的且つ特異的様式でLDSKPLYTPSSSFペプチドに結合することが明らかとなった。各点は、1H12 mAbの非特異的結合に対応するブランクの値が差し引かれた、三連の平均を表す。(D)LDSKPLYTPSSSFペプチドは1H12 mAbのLG4/5断片への結合を阻害する。マルチウェルプレートを4℃一晩の吸着により、0.1μg(■)又は0.05μg(▲)のいずれかのLG4/5でコーティングした。ウェルを1%BSAで飽和させた後、表示した濃度のペプチド100μlを、50μg/mlの1H12 mAb溶液の1時間のインキュベーションに先立って、ウェルに添加した。洗浄後、上記のとおり行った酵素-イムノアッセイ反応により、LDSKPLYTPSSSFペプチドが、LG4/5断片中の1H12結合部位と用量依存的様式で競合できることが明らかとなった。
【図19】HT29結腸癌培養細胞に対する1H12 mAbの効果。結腸癌細胞HT29(8X103)を、24ウェルプレート中、10%FCSを含有するDMEM中にプレーティングした。37℃で2時間後、培地及び非接着細胞を除去し、無血清DMEM(A)又は100pmole/mlの1H12 mAbを含有する無血清DMEM(B)のいずれかで置換した。細胞の挙動を、CCDカメラ搭載のAxiovert 100M Zeiss顕微鏡を用い、5% CO2を含有する加湿雰囲気中37℃で、30分間隔で40時間にわたりモニターした。記録終了時の各条件における1視野の画像により、抗体の存在又は非存在に依存して細胞の挙動が相違したことが示される。抗体非存在下(A)においては、細胞は様々な距離にわたって伸展又は移動し、常に独立したままであった。1H12 mAbの存在下(B)においては、細胞は即座にプレートから剥離し死亡するか、又は他の細胞及び凝集体に向かって短距離を移動する傾向を有するかのいずれかであった。この実験を、フィブロネクチン及びコラーゲンI等の細胞外マトリクス基質上に細胞をプレーティングして繰り返したが、同様の結果が得られた(データ示さず)。このことは、この効果が基質非依存的であることを示唆している。各条件について1視野中の10細胞についての位置を示す細胞のプロットを、追跡ソフトウェアMetaview(Roper Scientific, Princeton Instruments, Evry, France)を用いて達成した。プロット上に移動距離をμmで示す。バーは50μm。
【図20】結腸癌HT29細胞の創癒合アッセイにおける1H12、3A11及び15G5 mAbの効果。ヒト結腸腺癌HT29細胞を、24ウェル組織培養プレート中、10%FCSを含有するDMEM中でコンフルエントで増殖させた。培地を除去し、ピペットマンのチップで細胞層を掻き取った。掻き取り創のついた表面をPBSで洗浄し、2%FCSを含むDMEM中、37℃で、100pmole/mlのmAb、1H12、3A11及び15G5 mAbの存在下又は非存在下(mAb無し)でインキュベートした。細胞の挙動を、CCDカメラ搭載のAxiovert 100M Zeiss顕微鏡を用い、5% CO2を含有する加湿雰囲気中37℃で、2時間間隔で46時間にわたりモニターした。(A)各ウェルにおいて、記録の開始時と終了時に撮影した画像により、割り当てられた時間中に細胞により被覆された総表面を規定した(黒線は記録開始時の創のふちを表す)。バーは100μm。(B)各ウェルについて、種々の時点の表面積をAdobe Photoshop CS3 Extended(version 10.0)ソフトウェアを用いて定量した。最終的な創癒合を総創領域の百分率として表す。各アッセイポイントは三連の測定から誘導した(アッセイポイントあたり3ウェル)。独立した3実験の代表例であるデータにより、3つのmAbが、HT29癌細胞の移動及び癒合を阻害する能力を有することが示される。
【図21】in vitroの結腸癌細胞増殖に対する1H12、3A11及び15G5 mAbの効果。ヒト結腸腺癌細胞HT29(American Type Culture Collection, HTB-38)を、96ウェルプレート(8X103細胞/ウェル)中、10%FCS及び2mM Glutamax(Gibco, Invitrogen, Cergy Pontoise, France)を含む添加剤を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中にプレーティングした。2日後、培地を除去し、1H12 mAb(●)、3A11 mAb(△)、15G5 mAb(□)又はLN5ベータ3鎖に対する6F12 mAbコントロール(■)のいずれかを濃度を増加させて含有するDMEM 2% FCS、2mM Glutamaxで置換した。この工程を3回繰り返し、更に2日培養後、培地を除去し、Cell proliferation kit II(XTT, Roche Molecular Biomedicals)を用い、生細胞の量を決定した。
【図22】in vitroの乳癌細胞増殖に対する1H12、3A11及び15G5 mAbの効果。(A)乳腺癌細胞MCF7(American Type Culture Collection, HTB-22)を、96ウェルプレート(8X103細胞/ウェル)中、10%FCS及び2mM Glutamax(Gibco, Invitrogen, Cergy Pontoise, France)を含む添加剤を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中にプレーティングした。2日後、培地を除去し、1H12 mAb(●)、3A11mAb(△)、15G5 mAb(□)又はLN5ベータ3鎖に対する6F12 mAbコントロール(■)のいずれかを濃度を増加させて含有するDMEM 2% FCS、2mM Glutamaxで置換した。この工程を3回繰り返し、更に2日培養後、培地を除去し、Cell proliferation kit II(XTT, Roche Molecular Biomedicals)を用い、生細胞の量を決定した。(B)乳腺癌MDA-MB-231(American Type Culture Collection, HTB-26)を、96ウェルプレート(8X103細胞/ウェル)中、10%FCS及び2mM Glutamax(Gibco, Invitrogen, Cergy Pontoise, France)を含む添加剤を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中にプレーティングした。2日後、培地を除去し、1H12 mAb(●)、3A11mAb(△)、15G5 mAb(□)又はLN5ベータ3鎖に対する6F12 mAbコントロール(■)のいずれかを濃度を増加させて含有するDMEM 2% FCS、2mM Glutamaxで置換した。この工程を3回繰り返し、更に2日培養後、培地を除去し、Cell proliferation kit II(XTT, Roche Molecular Biomedicals)を用い、生細胞の量を決定した。
【図23】in vitroの卵巣腺癌細胞増殖に対する1H12、3A11及び15G5 mAbの効果。ヒト卵巣腺癌NIH-OVCAR-3細胞(American Type Culture Collection, HTB-161)を、96ウェルプレート(8X103細胞/ウェル)中、10%FCS及び2mM Glutamax(Gibco, Invitrogen, Cergy Pontoise, France)を含む添加剤を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中にプレーティングした。2日後、培地を除去し、1H12 mAb(●)、3A11mAb(△)、15G5 mAb(□)又はLN5ベータ3鎖に対する6F12 mAbコントロール(■)のいずれかを濃度を増加させて含有するDMEM 2% FCS、2mM Glutamaxで置換した。この工程を3回繰り返し、更に2日培養後、培地を除去し、Cell proliferation kit II(XTT, Roche Molecular Biomedicals)を用い、生細胞の量を決定した。
【図24】皮下ヒト乳房腫瘍を有するマウスにおける、1H12 mAbの抗腫瘍活性。 200万個の乳腺癌細胞MDA-MB-231を免疫不全SCIDマウス(Paine-Murrieta et al., 1997)の側面背側に皮下注射した。治療群は、ビヒクル(生理食塩緩衝液)を受容するマウス10匹の対照群及び1H12 mAbによる治療(腫瘍細胞の注射の後当日に1回、及び以降毎週1度の治療で10mg/kg/注射の濃度で注射)を受容するマウス10匹の第2の群を含んだ。各群について、腫瘍体積を毎週1回、(長さx(幅)2)/2として評価し、算出した。マウスはフランス農業省の現行規則及び基準に従い、実験動物愛護認定機関(Accreditation of Laboratory Animal Care)により承認された設備内で病原体フリーの条件下維持した。認容性試験は予め、連続する2週間にわたり1週二度のビヒクル或いは10mg/kg/注射の1H12 mAb又は50 mg/kg/注射の1H12 mAbのいずれかのIP注射を1回受ける10匹の健康なマウスの群3群で行った。0日目〜17日目の体重測定では、いかなる毒性の兆候も認めなかったことが明らかとなった。
【発明を実施するための形態】
【0061】
発明の詳細な説明
従って、本発明の第一の目的は、ヒトタンパク質ラミニン5アルファ3鎖のLG4/5ドメイン(配列番号3)へ結合できるモノクローナル抗体又はその断片であって、当該ラミニン5アルファ3鎖のLG4/5ドメインへのシンデカン1の結合を阻害する、モノクローナル抗体又はその断片に関する。
【0062】
本明細書で用いる場合、「ヒトタンパク質ラミニン5アルファ3鎖のLG4/5ドメイン」は、それぞれ配列番号1の1366〜1530位及び1537〜1710位に対応するヒトタンパク質ラミニン5アルファ3鎖のLG4ドメイン及びLG5ドメインを指す。
【0063】
ヒトタンパク質ラミニン5α3鎖のLG4/5ドメイン(配列番号3)へ結合でき、当該ラミニン5アルファ3鎖のLG4/5ドメインへのシンデカン1の結合を阻害できるモノクローナル抗体又はその断片の同定方法は、当業者により、本願を考慮して簡単に決定され得る。そのような方法の例としては、実施例中に開示された方法が挙げられる。
【0064】
好ましい実施形態においては、本発明の抗体はLG4/5ドメイン中のエピトープを認識し、それに結合する。従って、本発明の抗体は、アルファ3鎖の前駆体型には結合できるが、LG4/5ドメインを欠くアルファ3の成熟型には結合できない。更なる好ましい実施形態においては、本発明の抗体は、配列:LDSKPLYTPSSSF(配列番号25)のエピトープを認識し、結合する。
【0065】
抗体は、ジスルフィド結合により相互に結合された2つの同一の重(H)鎖(全長の場合約50〜70kDa)及び2つの同一の軽(L)鎖(全長の場合約25kDa)の4つのポリペプチド鎖を含む4量体に対応する、免疫グロブリン分子である。軽鎖はカッパ及びラムダに分類される。重鎖はガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、又はイプシロンに分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれ、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEと規定する。各重鎖は、N末端の重鎖可変領域(本明細書中、HCVRと略記される)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、IgG、IgD、及びIgAについては3つの領域(CH1、CH2、及びCH3)から;IgM及びIgEについては4つの領域(CH1、CH2、CH3、及びCH4)から構成される。各軽鎖は、N末端の軽鎖可変領域(本明細書中、LCVRと略記される)及び軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は1つのドメイン、CLから構成される。HCVR及びLCVR領域は、相補性決定領域(CDR)と称する超可変性の領域に更に細分されるが、それらは、フレームワーク領域(FR)と称するより保存的な領域内に散在する。各HCVR及びLCVRは、3つのCDR及び4つのFRから構成され、これらは、アミノ末端からカルボキシル末端に向けて以下の順序:FRl、CDRl、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置されている。
【0066】
4つの「フレームワーク領域」(FRl、FR2、FR3及びFR4)は、可変ドメインの構造的フレームワークを形成するβシートの形成に関与するが、抗体間で示す可変性はより小さい。また、各βシートのへりの折りたたまれた可変領域中の並置された3つのループに相当する3つの「相補性決定領域」(CDRl、CDR2、CDR3)は、抗体又は抗体断片の特異性の決定に重要である。なぜならそれらは、可変ドメインの、主に抗原と接触する部分であり、特に各鎖のCDR3領域は、重鎖及び軽鎖の再構成領域に対応し、よりいっそう可変的であり、より直接的に特定抗原に接触するからである。
【0067】
各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、周知の慣例に従い、現在はTHE INTERNATIONAL IMMUNOGENETICS INFORMATION SYSTEM(登録商標)(http://imgt.cines.fr)で入手可能なツールに基づいて決定されている。
【0068】
用語「抗体」は、本明細書で用いる場合、モノクローナル抗体自体を指す。モノクローナル抗体はヒト抗体、キメラ抗体及び/又はヒト化抗体であり得る。
【0069】
「モノクローナル抗体」は、本明細書で用いる場合、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体である。即ち、この集団を形成する抗体は、少量存在し得る、自然に起き得る突然変異は別として、本質的に同一である。従って、「モノクローナル抗体」により、規定された特異性を持つ一種類の特定の抗体のみが存在することが意味され、異なった配列及び特異性を有する数種の抗体の混合物は意味されない。これらの抗体は単一のエピトープに対するものであり、従って特異性が高い。
【0070】
「エピトープ」は、抗体が結合する、抗原上の部位である。エピトープは、連続する残基群又は抗原タンパク質のフォールディングにより接近するようになった非連続の残基群により形成され得る。連続するアミノ酸により形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒に曝露させても保持されるが、非連続のアミノ酸により形成されるエピトープは、典型的には、当該曝露の下では消失する。
【0071】
「モノクローナル抗体断片」により、標的に結合する免疫グロブリン分子の可変領域、即ち抗原結合領域、の少なくとも一部を含むポリペプチドが意味される。周知の「抗体断片」としては:
(i)Fab断片:VL、VH、CL及びCHIドメインからなる一価の断片;
(ii)F(ab’)2断片:ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む二価の断片;
(iii)抗体の一本の腕のVL及びVHドメインからなるFv断片:
(iv)scFv断片:リンカー分子を通して連結された抗体のVHドメイン及びVLドメインを含む、折りたたまれた単一ポリペプチドを指す単鎖可変フラグメント。そのようなscFv断片においては、VHドメイン及びVLドメインは、VH−リンカー−VL又はVL−リンカー−VHのいずれかの順であり得る。その産生の促進に加えて、scFv断片は、scFvにスペーサーを介して結合するタグ分子を含有し得る。従って、scFv断片は、抗原認識に関係するVHドメイン及びVLドメインを含むが、対応する抗体の免疫原性定常ドメインは含まない。
(v)単離された相補性決定領域(CDR)
が挙げられる。
【0072】
好ましくは、前記断片は、Fab、F(ab’)2、Fv及びscFv断片を含む群において選択される。
【0073】
表現「ヒトタンパク質ラミニン5アルファ3鎖のLG4/5ドメイン(配列番号3)へ結合できる」は、ヒトタンパク質ラミニン5アルファ3鎖のLG4/5ドメイン(配列番号3)に対する、10-7M未満のKD、好ましくは10-8M未満のKD、より好ましくは10-9M未満のKDを指す。
【0074】
本明細書で用いる場合、用語「KD」は特定の抗原/抗体相互作用の解離定数を指す。一般的に、「結合親和性」は、分子(例、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例、抗原)との非共有結合的相互作用の強度の総和を指す。本明細書で用いる場合、「結合親和性」は、別途表示されない限り、結合ペア(例、抗体及び抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。一般的に、分子Xの、そのパートナーYへの親和性が、KDによって表され得る。親和性は、当該技術分野で公知の一般的方法(本明細書に記載されたものを含む)により測定され得る。一般的に、低親和性抗体は、緩慢に抗原に結合し、容易に解離する傾向がある。しかし一般的に、高親和性抗体は、より速く抗原に結合し、より長く結合したままの傾向がある。結合親和性を測定する種々の方法が当該技術分野で公知であり、それらのいずれかが、本発明の目的のために用いられ得る。
【0075】
より具体的には、本発明者らは、モノクローナル抗体1H12(2008年1月8日にコレクシオン ナシオナル ド クルチュル ド ミクロオーガニズム(C.N.C.M.、フランス国、Cedex 15パリ F-75724、ドクトル ルー通り25、パスツール研究所)に番号I-3890のもとに寄託された1H12と称するハイブリドーマ細胞株により産生された。1H12 mAbともいう)、3A11(2009年12月15日にコレクシオン ナシオナル ド クルチュル ド ミクロオーガニズム(C.N.C.M.、フランス国、Cedex 15パリ F-75724、ドクトル ルー通り25、パスツール研究所)に番号I-4267のもとに寄託された3A11と称するハイブリドーマ細胞株により産生された)及び15G5(2009年12月15日にコレクシオン ナシオナル ド クルチュル ド ミクロオーガニズム(C.N.C.M.、フランス国、Cedex 15パリ F-75724、ドクトル ルー通り25、パスツール研究所)に番号I-4268のもとに寄託された15G5と称するハイブリドーマ細胞株により産生された)が、シンデカン1とラミニン5アルファ3鎖LG4/5ドメインとの相互作用を特異的に標的とし、抗移動活性及び/又は抗癌活性を有することを見出している。
【0076】
FR領域は、比較的保存された領域であり、抗原認識において重要な役割を有していないので、FR領域が異なる変異抗体は、おそらく1H12、3A11又は15G5抗体の特異性及び機能性を保持しているであろう。対照的に、CDR領域は抗原認識に関与することが知られており、1H12、3A11又は15G5抗体由来の変異抗体は、その特異性及び機能性を保持するためには、元の1H12、3A11又は15G5抗体と、高いパーセンテージの同一性を有していなくてはならない。
【0077】
従って、好ましい実施形態においては、本発明のモノクローナル抗体は:
a)以下のアミノ酸配列:
i)軽鎖CDR1:QSLLDSTGRTY(配列番号4);
ii)軽鎖CDR2:LVS;
iii)軽鎖CDR3:WQGTHFPHT(配列番号5)
を有する3つの軽鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン軽鎖由来の軽鎖フレームワーク配列を含む軽鎖;及び
b)以下のアミノ酸配列:
i)重鎖CDR1:GYTFTEYT(配列番号6);
ii)重鎖CDR2:INPKNGDT(配列番号7);
iii)重鎖CDR3:ASPDLPPMDY(配列番号8)
を有する3つの重鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン重鎖由来の重鎖フレームワーク配列を含む重鎖
を含む。
【0078】
このように、本発明の抗体は、1H12抗体の重鎖及び軽鎖のCDR領域を含み、当該CDR領域は、ヒトタンパク質ラミニン5アルファ3鎖(配列番号1)のLG4/5ドメインへの結合に関与する。
【0079】
他の好ましい実施形態においては、本発明のモノクローナル抗体は:
a)以下のアミノ酸配列:
i)軽鎖CDR1:ESVEYYGTSL(配列番号32);
ii)軽鎖CDR2:TAS(配列番号33);
iii)軽鎖CDR3:QQSRKVPYT(配列番号34)
を有する3つの軽鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン軽鎖由来の軽鎖フレームワーク配列を含む軽鎖;及び
b)以下のアミノ酸配列:
i)重鎖CDR1:GFTFSDYY(配列番号29);
ii)重鎖CDR2:ITNIGGNT(配列番号30);
iii)重鎖CDR3:ARPPSYGNYGYFNV(配列番号31)
を有する3つの重鎖相性補領域(CDR);及び
免疫グロブリン重鎖由来の重鎖フレームワーク配列を含む重鎖
を含む。
【0080】
このように、本発明の抗体は、3A11抗体の重鎖及び軽鎖のCDR領域を含み、当該CDR領域は、ヒトタンパク質ラミニン5アルファ3鎖(配列番号1)のLG4/5ドメインへの結合に関与する。
【0081】
なお他の好ましい実施形態においては、本発明のモノクローナル抗体は:
a)以下のアミノ酸配列:
i)軽鎖CDR1:SSIAH(配列番号38);
ii)軽鎖CDR2:STS(配列番号39);
iii)軽鎖CDR3:HQRSSYPFT(配列番号40)
を有する3つの軽鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン軽鎖由来の軽鎖フレームワーク配列を含む軽鎖;及び
b)以下のアミノ酸配列:
i)重鎖CDR1:GYSLATYW(配列番号35);
ii)重鎖CDR2:IYPGNGET(配列番号36);
iii)重鎖CDR3:TRERADVYYYGMDY(配列番号37)
を有する3つの重鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン重鎖由来の重鎖フレームワーク配列を含む重鎖
を含む。
【0082】
このように、本発明の抗体は、15G5抗体の重鎖及び軽鎖のCDR領域を含み、当該CDR領域は、ヒトタンパク質ラミニン5アルファ3鎖(配列番号1)のLG4/5ドメインへの結合に関与する。
【0083】
本明細書の趣旨においては、本発明の抗体には、各鎖(重鎖及び軽鎖)の3つのCDR領域が、上記に開示されたCDRと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%までものパーセンテージのアミノ酸配列同一性を共有する抗体も含まれる。
【0084】
CDR3領域は、抗原認識のための、最も重量な領域と考えられているので、VHドメイン及びVLドメインの当該CDR3領域における配列同一性のパーセンテージは、できるだけ高くなくてはならず、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%ですらある。
【0085】
この好ましい実施形態の特定の実施形態においては、本発明のモノクローナル抗体はキメラ抗体である。
【0086】
「キメラ抗体」により、所定の種の基準抗体に関して、当該基準抗体のフレームワーク領域(又はより基本的な場合においては定常ドメインのみ)が、他種の対応するフレームワーク領域(又は定常ドメインのみ)により置換されている抗体が意味される。
【0087】
好都合には、前記キメラ抗体は、ヒト免疫グロブリン軽鎖及び重鎖の定常領域を含む。
【0088】
好ましくは、前記キメラ抗体は、
DIQLTQSPLTLSVTIGQPASISCKSSQSLLDSTGRTYLNWLLQRPGQSPKRLIYLVSKLDSGVPDRFTGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGLYYCWQGTHFPHTFGGGTKLEIK(配列番号9)、DIVVIQSPASLAVSLGQRATISCRASESVEYYGTSLMQWYQQKPGQPPKLLIYTASNVESGVPARFSGSGSGTDFSLNIHPVEEDDIAMYFCQQSRKVPYTFGGGTKLEIKRADAAPTVSIFPP(配列番号20)、及びQIVLTQSPAIMSASPGEKVSITCSASSSIHMYWFQQKPDTSPKLWIYSTSNLASGVPSRFSGSGSGTSYSLTISRMEAEDAATYYCHQRSSYPFTFGSGTKLEVKRADAAPTVSIFPP(配列番号24)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LVCR)を含む。
【0089】
また好都合には、前記キメラ抗体は、
VKLQQSGPELVKPGASVKISCKTSGYTFTEYTIHWVKQSHGKTLEWIGGINPKNGDTSYNQKFKGKATLTVDKSSNTAYMEFRSLTSEDSAVYYCASPDLPPMDYWGQGTTVTVSS(配列番号10)、EVQLQQSGGGLVQPGGSLKLSCATSGFTFSDYYMFWVRQTPEKRLEWVAHITNIGGNTYYPDTVKGRFTISRDNDKNTLYLQMSRLKSEDTAMYYCARPPSYGNYGYFNVWGQGTTVTVS(配列番号18)、及びSGTVLARPGASVRMSCKASGYSLATYWMHWVKQRPGQGLEWIGSIYPGNGETTYNQKFKDKARLTAVTSASTAYMEFSSLTIEDSAVYYCTRERADVYYYGMDYWGQGTTVTVSSKG(配列番号22)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HVCR)を含む。
【0090】
この特定の実施形態の特定の実施形態においては、前記キメラ抗体はヒト化抗体である。
【0091】
ヒト化の目標は、ヒトへの導入のために、マウスの抗体等の異種抗体の免疫原性を低減させ、その一方で抗体の抗原結合親和性及び抗原特異性を完全に維持することである。従って、「ヒト化」抗体により、所定の種の基準抗体に関して、当該基準抗体のフレームワーク領域がヒト抗体のフレームワーク領域により置換されているが、CDR領域がキメラ抗体と基準抗体とで同一である、キメラ抗体が意味される。
【0092】
従って、前記ヒト化抗体は、ヒト化軽鎖及び重鎖の可変領域(それぞれLVCR及びHVCR)を更に含み、ヒト免疫グロブリン軽鎖及び重鎖由来の定常領域を更に含む。
【0093】
そのようなヒト化抗体を作製するため、いくつかの周知の技術が使用され得、そのような技術としては以下が挙げられる:
− いわゆる設計段階に頼る論理的方法。これは、抗体構造及び/又は配列情報に基づいて設計された少数の変異体を作製すること、及びそれらの結合又は目的とする他の任意の特徴を評価することから成る。論理的方法としては、CDRグラフティング、リサーフェイシング(Resurfacing)、超ヒト化及びヒトストリングコンテント(string content)最適化が挙げられる。
CDRグラフティングは、ドナーの抗体又は抗原結合断片から相補性決定領域(CDR)を選択すること、及びそれらを、公知の3次元構造のヒト抗体又は抗原結合断片のフレームワークに移植することを包含する。コンピューターモデリング及びヒト生殖系列配列との比較で支援される、最良のヒト抗体候補を選ぶための典型的な方法においては、ヒト化すべきモノクローナル抗体の抗原結合ループは、ベストフィットのフレームワーク上に重ね合わせられる。
− 大きなコンビナトリアルライブラリを作製すること、及びファージディスプレイ、リボソームディスプレイ又は酵母ディスプレイ等の濃縮技術により、又はハイスループットスクリーニング技術により、所望の変異体を選択すること、に基づく経験的方法。後者の方法は、抗体構造に対する変異の影響に関する仮定をつくることではなく、選択に基礎を置く。これらの方法としては、フレームワークライブラリー、ガイド選択(Guided Selection)、フレームワークシャッフリング及びヒューマニアリングが挙げられる。
【0094】
抗体をヒト化するための戦略及び方法は、例えば、US 5,639,641; EP 0 239 400; WO 91/09967; U.S. 5,530,101; U.S. 5,585,089; EP 0 592 106; EP 0 519 596; Padlan E. A., 1991, Molecular Immunology 28(4/5): 489-498; Studnicka G. M. et al., 1994, Protein Engineering 7(6): 805-814; Roguska M. A. et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 91:969-973; Tsurushita N. et al., 2005, Methods, 36(l):69-83;及びU.S. Pat. No. 5,565,332に開示されている。
【0095】
例として、1H12のHCVR及びLVCRとヒト免疫グロブリンの対応する領域の(BLASTアルゴリズムによる)比較により、可能性のあるヒト化HCVR及びLVCRの配列を確立することが可能であった。
【0096】
例として、本発明のヒト化抗体の好ましい軽鎖可変領域(LVCR)は、アミノ酸配列DI(Q/V/E)LTQSPL(T/S)L(S/P)VT(I/L)GQPASISC(K/R)SSQSLLSTGRTYLNW(L/F)(L/Q/H)QRPGQSP(K/R)RLIYLVS(K/N/D/H)(L/R/W)DSGVPDRF(T/S)GSGSGTDFTLKISRVEAED(L/V)G(L/V)YYCWQGTHFPHTFGGGTKLEIK(配列番号11)を有し得、当該アミノ酸配列、配列番号11は、配列番号9と比較して少なくとも1アミノ酸相違する。
【0097】
他の例として、本発明のヒト化抗体の好ましい重鎖可変領域(HVCR)は、アミノ酸配列VKLQQSGPELVKPGASVKISCK(T/A/V)SGYTFTEYT(I/M/V)HWVKQSHGKTLEWIG(G/D/Y/M/W/E/I)INPKNGDTSYNQKFKGKATLTVDKSSNTAYME(F/L)RSLTSEDSAVYYCASPDLPPMDYWGQGTTVTVSS(配列番号12)を有し得、当該アミノ酸配列、配列番号12は、配列番号10と比較して少なくとも1アミノ酸相違する。
【0098】
この好ましい実施形態の、他の特定の実施形態においては、本発明のモノクローナル抗体は、2008年1月8日にコレクシオン ナシオナル ド クルチュル ド ミクロオーガニズム(C.N.C.M.、フランス国、Cedex 15パリ F-75724、ドクトル ルー通り25、パスツール研究所)に番号I-3890のもとに寄託された1H12と称するハイブリドーマ細胞株により産生されたモノクローナル抗体1H12である。
【0099】
この好ましい実施形態の、他の特定の実施形態においては、本発明のモノクローナル抗体は、2009年12月15日にコレクシオン ナシオナル ド クルチュル ド ミクロオーガニズム(C.N.C.M.、フランス国、Cedex 15パリ F-75724、ドクトル ルー通り25、パスツール研究所)に番号I-4267のもとに寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生された3A11と称するモノクローナル抗体3A11である。
【0100】
この好ましい実施形態の、なお他の特定の実施形態においては、本発明のモノクローナル抗体は、2009年12月15日にコレクシオン ナシオナル ド クルチュル ド ミクロオーガニズム(C.N.C.M.、フランス国、Cedex 15パリ F-75724、ドクトル ルー通り25、パスツール研究所)に番号I-4268のもとに寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生された15G5と称するモノクローナル抗体15G5である。
【0101】
本発明の第2の目的は、本発明によるモノクローナル抗体又はその断片であって、ヒトタンパク質ラミニン5アルファ3鎖(配列番号1)のLG4/5ドメインへ結合できるモノクローナル抗体又はその断片をコードする核酸配列を含む単離核酸である。
【0102】
遺伝暗号の縮重により、多くの異なった核酸配列(nucleic sequence)が同一アミノ酸配列をコードし得、これら核酸配列のいずれもが、本発明の範囲に含まれる。
【0103】
本発明の第3の目的は、本発明によるモノクローナル抗体又はその断片であって、ヒトタンパク質ラミニン5アルファ3鎖(配列番号1)のLG4/5ドメインへ結合できるモノクローナル抗体、又はその断片をコードする少なくとも1種の核酸配列、及び当該核酸配列の発現に必要な調節配列を含むベクターである。
【0104】
本明細書で用いる場合、用語「調節配列」は、所定の宿主細胞における核酸分子の発現(複製(replication)、複製(duplication)、転写、スプライシング、翻訳、安定性及び/又は宿主細胞への当該核酸若しくはその誘導体(即ち、mRNA)の1つの輸送を含む)を可能にし、発現に寄与し、又は発現を調節する、任意の配列を指す。このような調節配列としては、特に、プロモーター、エンハンサー、シグナル配列、及び当業者に周知の多数の他の配列が挙げられる。
【0105】
種々のタイプのベクター(細菌プラスミド、YAC、コスミド、レトロウイルス及びEBV由来のエピソーム等のウイルスベクター、並びに当業者が、本発明の抗体の重鎖及び/又は軽鎖を確実に発現させるのに簡便だと知るであろう、他のすべてのベクターを含む)が、本発明の範囲に含まれる。当業者は、重鎖及び軽鎖をコードするポリヌクレオチドが、異なるベクター中又は同じベクター中にクローニングされ得ることを理解するであろう。好ましい実施形態においては、当該ポリヌクレオチドは、同じベクター中にクローニングされる。
【0106】
本発明の第4の目的は、上記記載のとおりの、本発明によるベクターでトランスフェクションされた宿主細胞である。
【0107】
従って、用語「組換え宿主細胞」(又は単純に「宿主細胞」)は、本明細書で用いる場合、組換え発現ベクターが導入されている細胞を指すことが意図される。用語「宿主細胞」は、単離細胞、一群の細胞、及び例えば、組織又は器官中の特定の細胞構成を包含するように、幅広く理解されなければならない。そのような細胞は初代細胞、形質転換細胞、又は培養細胞であり得る。それらは原核生物(例、Escherichia coli)、酵母(例、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces pombe又はPichia pastoris)、真核生物(例、昆虫、植物及びヒトを含む哺乳動物の細胞)であり得る。用語「宿主細胞」には、本発明において用いる核酸分子又はベクターのレシピエントであり得るか、又はレシピエントであった細胞、及びそのような細胞の子孫が含まれる。
【0108】
本発明の第5の目的は、2008年1月8日、2009年12月15日及び2009年12月15日に、コレクシオン ナシオナル ド クルチュル ド ミクロオーガニズム(C.N.C.M.、フランス国、Cedex 15パリ F-75724、ドクトル ルー通り25、パスツール研究所)に番号I-3890、I-4267、及びI-4268のもとにそれぞれ寄託された、1H12、3A11、及び15G5と称するハイブリドーマ細胞株である。
【0109】
本発明の第6の目的は、上記のとおりの、本発明によるモノクローナル抗体又はその断片であって、ヒトタンパク質ラミニン5アルファ3鎖(配列番号1)のLG4/5ドメインへ結合できるモノクローナル抗体又はその断片、本発明による単離核酸又はベクターを含む医薬又は医薬組成物である。医薬組成物の場合は、医薬的に許容可能な担体を更に含み得る。
【0110】
前記医薬又は医薬組成物は、第一治療として、単独で又は他の任意の抗癌治療と組み合わせて用いられ得るか、或いは腫瘍体積の減少を意図した癌の第一治療の後のいずれかに、再発及び/又は転移を予防するために用いられ得る。
【0111】
本発明による医薬又は医薬組成物は、治療される特定の癌に依存して、好適な任意の経路により投与され得、最良の用量は任意の当業者により決定され得る。
【0112】
本発明による、そのような医薬又は医薬組成物は、特に、癌、特に上皮癌の治療のために意図され得る。これらとしては、特に、前駆体LN5又はそのLG4/5ドメインを産生する癌(carcinoma)及び任意の癌(cancer)が挙げられる。癌の中では、本発明による医薬又は医薬組成物は、特に、結腸、乳房、卵巣、膵臓及び肺の癌、並びに扁平上皮癌の治療のために意図され得る。好ましい実施形態においては、結腸癌が治療される。他の好ましい実施形態においては、本発明の医薬又は医薬組成物は、乳癌の治療のために意図される。なお他の好ましい実施形態においては、本発明の医薬又は医薬組成物は、卵巣癌の治療のために意図される。
【0113】
本発明の第7の目的は:
i)ヒトタンパク質ラミニン5のLG4/5ドメイン(配列番号3)をシンデカン1と接触させる工程;
ii)前記ヒトタンパク質ラミニン5のLG4/5ドメイン(配列番号3)及び前記シンデカン1を、ヒトタンパク質ラミニン5のLG4/5ドメイン(配列番号3)を含むポリペプチドによる非ヒト動物の免疫により得られた、試験すべきモノクローナル抗体又はその断片とを更に接触させるか、又は接触させない工程;
iii)試験すべき前記モノクローナル抗体又はその断片の存在下又は非存在下で、前記ヒトタンパク質ラミニン5のLG4/5ドメイン(配列番号3)へのシンデカン1の結合を決定する工程;及び
iv)前記ヒトタンパク質ラミニン5のLG4/5ドメイン(配列番号3)へのシンデカン1の結合を阻害するモノクローナル抗体又はその断片を選択する工程;
を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体又はその断片の同定方法である。
【0114】
そのような方法の例として、実施例中に開示された、細胞接着が標的細胞の表面に発現したシンデカン1によるLG4/5断片の認識にのみ起因する、特異的なシンデカン1媒介性の細胞接着アッセイに基づく方法が挙げられる。
【0115】
本発明の更なる他の目的は、上記のとおりの本発明によるモノクローナル抗体又はその断片であって、ヒトタンパク質ラミニン5アルファ3鎖(配列番号1)のLG4/5ドメインへ結合できるモノクローナル抗体又はその断片、本発明による単離核酸又は本発明によるベクターを含む、有効量の医薬を、治療を必要とする被験体に投与することを含む、当該被験体における癌の治療方法である。
【0116】
本明細書で用いる場合、「被験体」は、哺乳動物、好ましくはヒトを指す。
【0117】
好ましくは、治療を必要とする患者は、癌に罹患した患者、特に上皮癌に罹患した患者に対応する。これらとしては、特に、前駆体LN5又はそのLG4/5ドメインを産生する癌(carcinoma)及び任意の癌(cancer)が挙げられる。癌の例としては、結腸、乳房、卵巣、膵臓及び肺の癌、並びに扁平上皮癌が挙げられる。好ましい実施形態においては、当該癌は、結腸、乳房又は卵巣の癌である。
【0118】
そのような方法においては、本発明による、モノクローナル抗体、その断片、単離核酸又はベクターが、単独で、又は他の抗癌治療と組み合わせて用いられ得る。
【0119】
本発明の方法は、特に第一治療として、単独で又は他の任意の癌治療と組み合わせて用いられ得るか、或いは腫瘍体積の減少を意図した癌の第一治療の後のいずれかに、再発及び/又は転移を予防するために用いられ得る。
【0120】
本発明の他の実施形態及び利点は、以下の非限定的な実施例中で説明する。
【実施例】
【0121】
実施例1
LN5アルファ3 LG4/5ドメインとシンデカン1との相互作用を阻害する、LN5 アルファ3 LN4/5ドメインに対するモノクローナル抗体の調製方法
本発明者らは、ヒトアルファ3LG4/5断片を組換え発現させた。彼らは、この断片の受容体として、正常ヒト皮膚角化細胞(NHK)及び他の上皮細胞からヘパラン硫酸プロテオグリカン受容体、シンデカン1も同定した(Okamoto et al., 2003)。
【0122】
LN5は、癌細胞、特に悪性の特徴を持つものの移動の促進におけるその役割について知られており、浸潤性に関するリガンドとして作用し得る(Miyazaki K. 2006)。しかしながら、LN5アルファ3 LG4/5ドメインとシンデカン1との相互作用が悪性経過に関与するか否かは知られていない。本発明者らは、この相互作用の特異的阻害剤を提供することにより、この問題に対処することを決意した。
【0123】
本発明者らは、LG4/5ドメインの阻害剤を開発し、プレLN5とのシンデカン1媒介性相互作用を特異的に阻止するために、LG4/5断片に対するマウスモノクローナル抗体を作製した。
【0124】
そのようなモノクローナル抗体の生成のために用いる方法は以下であった:
【0125】
新たな抗腫瘍剤を開発する試みにおいて、LG4/5断片へのシンデカン1媒介性細胞接着を特異的に阻害する抗体を選択する戦略が開発された。この戦略は、細胞接着が標的細胞表面に発現するシンデカン1によるLG4/5断片の認識にのみ起因する、特異的なシンデカン1媒介性細胞接着アッセイに基づく。
【0126】
LG4/5に対するモノクローナル抗体を作製するために、2匹のBALB/c雌性マウスを、完全フロイントアジュバント中に乳化された100μgの精製組換えLG4/5で免疫した。3、6、9及び12週間後、100、50、50及び50μgの免疫原でそれぞれマウスを追加免疫した。試験採血後に酵素結合免疫測定法(ELISA)を行い、最も生産性の高いマウスを選択した。第14週に免疫原10μgの最後の融合前追加免疫を行い、脾臓細胞を、標準的プロトコールに従ってポリエチレングリコールを用い、骨髄腫細胞株SP2/OAG14と融合させた。生存ハイブリドーマを選択し、ELISAにより抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングした。次いで、全ての選択したハイブリドーマの上清を、LG4/5断片へのシンデカン1媒介性接着を阻害するそれらの潜在能力について試験した。ゆえに、特異的細胞接着アッセイを、高レベルの受容体シンデカン1を発現する線維肉腫細胞株HT1080(American Type Culture Collection, CCL-121)を用いて開発した(Okamoto et al., 2003)。実験手順は以下のとおりであった。
【0127】
4℃一晩の吸着により、マルチウェルプレートを0.2μMの精製組換えLG4/5でコーティングした。ウェルを1%ウシ血清アルブミン(BSA)で飽和した後、ハイブリドーマ上清(100μL/ウェル)を2時間適用して、抗体をLG4/5断片に結合させ、細胞結合部位を潜在的にブロックさせた。その期間の間に、培養HT1080細胞を5mM EDTA-PBSで剥離し、直ちに無血清培地中でリンスして計数した。ハイブリドーマ上清を除去し、PBSでウェルをリンスしてウェル当たり8x104細胞を播種した。LG4/5でコーティングしたウェルを、LG4/5断片中のヘパラン硫酸プロテオグリカン、シンデカン1の結合部位に結合することが知られている(Okamoto et al., 2003)ヘパリン(ブタ腸粘膜由来のヘパリン、Sigma, Saint-Quentin Fallavier, France)50pmole/mlとインキュベートすることにより、各プレートで100%阻害コントロールを実施した。37℃で30分〜1時間の後、プレートをPBSで洗浄して非接着細胞を除去し、PBS中1%のグルタルアルデヒドで固定した。接着の程度は、0.1%クリスタルバイオレットで染色し、可溶化後に570nmで吸光度測定した後、測定した。BSAでコーティングしたウェルに対応するブランクの値(最大細胞接着の<5%)を自動的に差し引いた。各点は三連での測定の平均から導き出した。ヘパリン又はハイブリドーマ上清のいずれかの存在下での接着阻害を、阻害剤無しのコントロールの百分率として表した。試験した全てのハイブリドーマ上清のうち、3つのクローン(1H12、3A11及び15G5)が、HT1080細胞のLG4/5断片への接着の完全な阻害をもたらした。更なる細胞接着の解析により、1H12が最も効率的な機能阻害クローンであることがわかった。選択したコロニーを限界希釈によりクローニングし、1H12f1h5クローン、即ちadhesio-mAbを得た。3A11及び15G5クローンから、それぞれ3A11f7e6及び15G5b11e5クローンを得た。抗体は、使用済み組織培養培地の形態で、又はプリスタンでプライムし、少なくとも107のハイブリドーマ細胞を注入したBALB/c x A/Jハイブリッドマウス由来腹水としてのいずれかで、選択したハイブリドーマクローンから回収した。3クローンのアイソタイプを決定した:クローン1H12f1h5はIgG1カッパ、クローン3A11f7e6はIgG1カッパ、クローン15G5b11e5はIgG1カッパである。
各クローンのLVCR及びHVCRをコードするcDNAを単離し、クローニングしてシークエンスした。得られた配列を図1、2、14、15、16及び17中に示す。
【0128】
LN5アルファ3LN4/5ドメインとシンデカン1との相互作用を阻害する、LN5アルファ3LN4/5ドメインに対するモノクローナル抗体の同定
【0129】
予備実験により、実施例1において得られた抗体の1つ(1H12 mAb、2008年1月8日にコレクシオン ナシオナル ド クルチュル ド ミクロオーガニズム(C.N.C.M.、フランス国、Cedex 15パリ F-75724、ドクトル ルー通り25、パスツール研究所)に寄託された1H12と称するハイブリドーマ細胞株によって産生された)は、線維肉腫細胞HT1080のLG4/5断片への接着を、陽性コントロールのヘパリンに匹敵する様式で特異的に阻害することが明らかになっていた(図2)。
【0130】
以前、本発明者らは、アルファ3LG4/5断片への細胞接着はヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)受容体、シンデカン1により媒介され、インテグリンは関与しないことを示している(Okamoto et al., 2003; Bachy et al., 2008;図4A)。実際に、図4Bに示すとおり、HSPGに結合するヘパリンは、アルファ3LG4/5断片単独への、NHK及びHT1080細胞の接着を強力に阻害し(Okamoto et al. 2003)、プレLN5への細胞接着を一部阻害したが、成熟LN5への接着には影響しなかった。
【0131】
更に、抗LG4/5抗体(1H12 mAb)は、アルファ3LG4/5への、NHK及びHT1080細胞の接着を完全に阻止したが、このことは、この抗体がシンデカン1相互作用に関与するエピトープを妨害することを示唆している。プレLN5基材コーティング及び成熟LN5基材コーティングと1H12 mAbとのプレインキュベーションにより、プレLN5への細胞接着が一部妨げられ、成熟LN5への細胞接着には、予想どおり影響が無かった。これらの結果は、1H12 mAbは、成熟LN5へのインテグリン媒介性接着に影響を与えることなく、LG4/5ドメインへのシンデカン1媒介性接着を阻止することを証明する。このことは、1H12抗体がプレLN5中のアルファ3LG4/5ドメインを選択的に標的にして、正常組織における成熟LN5の接着機能を破壊することなく、ヒトの癌腫瘍発生を阻害することを示唆している。
【0132】
1H12 mAbがLG4/5ドメインへのシンデカン1結合を阻止することを更に立証するために、本発明者らは、細胞ライセートからのシンデカン1のプルダウン実験を行った(図5)。NHK又はHT1080細胞のライセートをLG4/5断片で共有結合的に被覆したビーズとインキュベートすることにより、シンデカン1の捕捉を行った。HSPG受容体をヘパリチナーゼI及びコンドイチナーゼABCで処理した後、シンデカン1に対する抗体でイムノブロットを行うことにより、LG4/5に結合した物質中のシンデカン1コアタンパク質に対応するバンドがはっきりと明らかとなった(レーン1)。予想どおり、HSPG結合部位に結合するヘパリンは、LG4/5ビーズへのシンデカン1の結合を妨げた(レーン2)。抗LG4/5 1H12 mAbもシンデカン1の結合を妨げた。従って、これが機能阻害抗体であるという以前の知見が確認された。
【0133】
実施例2
細胞移動及び癌細胞に対する1H12 mAbの影響
【0134】
1H12 mAbを用いたウェスタンブロット実験により、1H12 mAbがLG4/5断片を特異的に認識することが明らかとなった。更に、この抗体はアルファ3鎖の前駆体型に特異的に結合するが、LG4/5ドメインを欠くアルファ3鎖の成熟型への結合は見出されなかった(図3)。実際、エピトープマッピング実験により、モノクローナル抗体1H12はLG4ドメイン中に位置する配列LDSKPLYTPSSSF(配列番号25)のペプチドを特異的に認識することが示された(図18)。これは、合成ペプチド配列:LDSKPLYTPSSSF(配列番号25)が添加された場合に1H12へのLG4/5の結合が消失することを示す競合実験により確認される(図18)。
【0135】
プレLN5は、創癒合のふちに局在する、先導して移動している角化細胞に特異的且つ高度に発現することが示された(Ryan et al. 1994; Goldfinger et al., 1999)ので、プレLN5中のLG4/5断片は移動に関与し得る。
【0136】
この仮説を試験するために、本発明者らはNHKの創アッセイにおいて、LG4/5とシンデカン1との相互作用を阻害する1H12 mAbの効果を評価した。コンフルエントなNHKの培養物中に掻き取り創を導入し、次いで適切な抗体の存在下、16時間治癒させた。抗体無しでインキュベートした細胞集団の創は実験フレーム内で完全に治癒した(図6B)。1H12 mAbを創をつけた培養物に加えると(図6C)、治癒は完全に阻害された。興味深いことに、結腸癌細胞を用いて、1H12、3A11及び15G5抗体により同様の結果が得られた(図20)。従って、LG4/5断片/シンデカン1相互作用が上皮細胞の移動において主要な役割を果たすという見解が強固になった。
【0137】
これらのin vitro及びin celluloの実験は、シンデカン1とプレLN5中のLG4/5ドメインとの相互作用が、細胞移動に役割を果たすことを明確に示す。
【0138】
多くの免疫組織化学的研究により、LN5又はそのサブユニットが、ヒトの多様な型の癌において高度に発現することが示されている。特に、LN5γ2鎖は、結腸、乳房、膵臓及び肺の腺癌、扁平上皮癌及び黒色腫等の多くの型のヒトの癌における浸潤の前線の腫瘍細胞中又は簇出している腫瘍細胞中に発現することが示されている。
【0139】
本発明者らは最近、LN5がヒト直腸結腸腺癌において過剰発現することを示している(Remy et al. 2006)。彼らは、これらの腫瘍においてLG4/5ドメインの発現を更に解析し、予備的な結果は、この断片が癌細胞でも過剰発現することを示している。このことは、LN5がプロセッシングされないままであり得ることを示唆している。
【0140】
LN5は、細胞、特に悪性の特徴を持つものの移動の促進におけるその役割について知られており、浸潤性の癌細胞に関するリガンドとして作用し得る(Hinterman et al., 2004)。LN5の新規発現は癌細胞の増殖活性と関連している。その上、この発現はしばしば癌の浸潤の領域に局在する(Lohi, 2001)。in vivoの観察により、簇出している細胞におけるLN5の過剰発現が報告されているが、簇出している細胞は、続いて、転移カスケードの一部として腫瘍から逃れる(Pyke et al., 1995)。癌におけるLN5の発現上昇は、診断要因としてはふさわしくないと考えられ、子宮頸癌、膵臓癌、下咽頭癌、膀胱尿路上皮癌、小型肺腺癌、悪性神経膠腫、胃癌、舌扁平上皮癌(SCC)、結腸直腸腺腫及び肝細胞癌における腫瘍の浸潤に関連している(Tsuruta et al., 2008)。本発明者らは最近、ヒト直腸結腸腺癌におけるLN5の過剰発現を実証している(Remy et al. 2006)。彼らはこれらの癌でのLG4/5ドメインの発現(expression of the LG4/5 domain these tumors)を、正常結腸での発現と比較して更に解析した。本発明者らは、ヒト正常結腸においては、LG4/5ドメイン染色は基底膜中に全く見出されない(図12)が、むしろ陰窩軸に沿って位置する上皮細胞の細胞内レベルで見出され、これらの細胞による活発なプレLN5の合成を示すことを見出した。予想通り、成熟LN5染色は上皮細胞の基底膜で、陰窩軸の頂部から基部にかけて強度が減少する勾配として見出された(Sordat et al., 1998)。対照的に、本発明者らは、結腸癌(図13)においては細胞内レベル及び細胞外レベルの両方において、LG4/5染色がしばしば成熟LN5染色と共局在することを見出した。両抗原の発現は上皮細胞の近隣で強く見え、このことは過剰発現されたLN5が、癌中でプロセッシングされないままであり得ることを示唆している。
【0141】
本発明者らは、培養結腸癌細胞HT29のECMを生化学的にも解析した。彼らは、LN5が主にその前駆体型で存在することを見出したが、このことはこれらの細胞が、LN5中のアルファ3鎖を成熟させず、常にLG4/5ドメインと相互作用することを示している(図7)。実際、このECM中には切断されたLG4/5は少量しか見出されず、成熟LN5は検出されなかった。このLN5の分子型は通常、分裂中及び移動中の細胞又はサブコンフルエントな培養物と関連しているので、コンフルエントなHT29細胞のECM中にプレLN5が存在するのは驚きであった(Ryan et al., 1999; Decline and Rousselle, 2001)。通常は、LG4/5ドメインの切断は、正常細胞(即ち、NHK)のコンフルエントな層において常に起きており、LG4/5ドメインは正常上皮の基底膜には全く見出されてこなかった(Goldfinger et al., 1999; Tungall et al., 2002)。結腸癌細胞HT29のECMにおけるプレLN5の存在は、これらの癌細胞の悪性の表現型において重要な役割を果たし得る生化学的特徴である、LG4/5切断の減少又は欠如の結果である可能性が最も高い。
【0142】
従って、本発明者らは癌細胞HT29がLG4/5受容体シンデカン1を発現するかどうかを解析した。本発明者らは、HT29細胞のライセートからシンデカン1のプルダウン実験を行い、それをNHKのものと比較した(図8)。NHK又はHT29細胞のライセートをLG4/5断片で共有結合的に被覆されたビーズとインキュベートすることにより、シンデカン1の捕捉を行った。結合したHSPG受容体をヘパリチナーゼI及びコンドイチナーゼABCで処理した後、シンデカン1に対する抗体でイムノブロットを行うことにより、LG4/5に結合したNHK(レーン1)及びHT29(レーン2)の両フラクション中のシンデカン1コアタンパク質に対応するバンドがはっきりと明らかとなった(図8A)。HT29由来のシンデカン1の分子量のわずかな相違は、コアタンパク質のグリコシル化の増大の結果である可能性が最も高い。mAb 1H12がHT29のシンデカン1とLG4/5断片との相互作用を阻害したか否か確認するために、本発明者らは、機能阻害抗体存在下でプルダウン実験を行った。予想どおり、LG4/5中のシンデカン1結合部位に結合する1H12 mAbはシンデカン1の結合を妨げた。
【0143】
この相互作用が細胞中で起きることを確認するため、本発明者らは共焦点顕微鏡(細胞-マトリクス界面で0.8μmの光学スライドを選択した)により培養HT29細胞中のプレLN5及びシンデカン1の分布を解析した。この実験により、両抗原が、細胞が分裂及び移動する位置におけるコロニーのへりに局在する細胞中で強く発現し、共局在することが明らかとなった。細胞中で生じるプレLN5とシンデカン1との相互作用の仮説と一致して、HT29細胞の移動の攪乱が、1H12抗体の存在下で観察されたが、未処理コントロールのHT29細胞は様々な距離にわたって伸展又は移動できた(図19及び20)。
【0144】
プレLN5中のLG4/5ドメインがこれらの結腸癌細胞の増殖及び生存に役割を果たし得るのか否かを試験するために、本発明者らはHT29細胞のサブコンフルエントな培養物の増殖に対する1H12、3A11及び15G5 mAbの影響を試験した(図9及び図21)。非常に興味深いことに、1H12 mAbはHT29細胞の増殖を阻害しただけではなく、25pmole/mlの濃度で繰り返し適用した後は、細胞死も誘導した(図9)。50pmole/mlとより高い濃度ではあったが、3A11及び15G5 mAbも結腸癌細胞の細胞死を誘導できた(図21)。1H12、3A11及び15G5 mAbはすべて、乳腺癌細胞MCF7又はMDA-MB231(図22)及び卵巣腺癌細胞NIH-OVCAR-3のサブコンフルエントな培養物においても細胞死を誘導できたので、この効果は結腸癌細胞に限定されなかった。プレLN5を発現する腫瘍異種移植片の増殖に対する1H12の効果を試験した。MDA-MB-231乳房腫瘍異種移植モデルを用いた研究を図24中に示す。生理食塩水コントロールと比較した腫瘍細胞増殖の顕著な遅延によって明らかなように、MDA-MB-231腫瘍の増殖は、1H12抗体によって阻害された。従って、1H12抗体は、in vivoでプレLN5又はLG4/5を発現する腫瘍に対する強力な増殖阻害活性を有し、in vitroの結果が確認された。
【0145】
上記結果は:
− 癌細胞はアルファ3のLG4/5ドメインを発現する非成熟プレLN5を優先的に発現する。
− 1H12、3A11及び15G5 mAbは、プレLN5発現細胞、特に結腸癌細胞HT29、乳腺癌細胞MCF7及びMDA-MB231、並びに卵巣腺癌細胞NIH-OVCAR-3の増殖(proliferation)及び増殖(growth)を阻害する。
− 1H12 mAbは、異種移植されたマウスにおけるMDA-MB231腫瘍の増殖を阻害する
ことを明確に示す。
【0146】
従って、これらの結果により、LN5アルファ3のLG4/5ドメインに対する、このドメインとシンデカン1との相互作用を特異的に標的化する抗体が、抗腫瘍活性を有することが証明される。
【0147】
結果として、LN5アルファ3のLG4/5ドメインはシンデカン2及びシンデカン4への結合ドメインも含有するが、癌細胞に対して有効であるためには、LN5アルファ3のLG4/5ドメインに対するモノクローナル抗体は、このドメインとシンデカン1との相互作用を標的としなくてはならない。
【0148】
【表2】

【0149】
【表3】

【0150】
【表4】

【0151】
【表5】

【0152】
【表6】

【0153】
【表7】

【0154】
文献目録
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトタンパク質ラミニン5アルファ3鎖のLG4/5ドメイン(配列番号3)へ結合できるモノクローナル抗体又はその断片であって、該ラミニン5アルファ3鎖のLG4/5ドメインへのシンデカン1の結合を阻害する、モノクローナル抗体又はその断片。
【請求項2】
エピトープの配列LDSKPLYTPSSSF(配列番号25)に結合する、請求項1に記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項3】
1)前記モノクローナル抗体が、
a)以下のアミノ酸配列:
i)軽鎖CDR1:QSLLDSTGRTY(配列番号4);
ii)軽鎖CDR2:LVS;
iii)軽鎖CDR3:WQGTHFPHT(配列番号5)
を有する3つの軽鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン軽鎖由来の軽鎖フレームワーク配列を含む軽鎖;及び
b)以下のアミノ酸配列:
i)重鎖CDR1:GYTFTEYT(配列番号6);
ii)重鎖CDR2:INPKNGDT(配列番号7);
iii)重鎖CDR3:ASPDLPPMDY(配列番号8)
を有する3つの重鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン重鎖由来の重鎖フレームワーク配列を含む重鎖
を含むモノクローナル抗体;又は
2)前記モノクローナル抗体が、
a)以下のアミノ酸配列:
i)軽鎖CDR1:ESVEYYGTSL(配列番号32);
ii)軽鎖CDR2:TAS(配列番号33);
iii)軽鎖CDR3:QQSRKVPYT(配列番号34)
を有する3つの軽鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン軽鎖由来の軽鎖フレームワーク配列を含む軽鎖;及び
b)以下のアミノ酸配列:
i)重鎖CDR1:GFTFSDYY(配列番号29);
ii)重鎖CDR2:ITNIGGNT(配列番号30);
iii)重鎖CDR3:ARPPSYGNYGYFNV(配列番号31)
を有する3つの重鎖相性補領域(CDR);及び
免疫グロブリン重鎖由来の重鎖フレームワーク配列を含む重鎖
を含むモノクローナル抗体;又は
3)前記モノクローナル抗体が、
a)以下のアミノ酸配列:
i)軽鎖CDR1:SSIAH(配列番号38);
ii)軽鎖CDR2:STS(配列番号39);
iii)軽鎖CDR3:HQRSSYPFT(配列番号40)
を有する3つの軽鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン軽鎖由来の軽鎖フレームワーク配列を含む軽鎖;及び
b)以下のアミノ酸配列:
i)重鎖CDR1:GYSLATYW(配列番号35);
ii)重鎖CDR2:IYPGNGET(配列番号36);
iii)重鎖CDR3:TRERADVYYYGMDY(配列番号37)
を有する3つの重鎖相補性領域(CDR);及び
免疫グロブリン重鎖由来の重鎖フレームワーク配列を含む重鎖
を含むモノクローナル抗体である、
請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項4】
前記モノクローナル抗体が、キメラ抗体であり、ヒト免疫グロブリン軽鎖及び重鎖由来の定常領域を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体、又はその断片。
【請求項5】
1)前記モノクローナル抗体が:
i) アミノ酸配列DIQLTQSPLTLSVTIGQPASISCKSSQSLLDSTGRTYLNWLLQRPG
QSPKRLIYLVSKLDSGVPDRFTGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGLYYCWQGTHFPHTFGGGTKLEIK(配列番号9)を有する軽鎖可変領域(LVCR);及び
ii) アミノ酸配列VKLQQSGPELVKPGASVKISCKTSGYTFTEYTIHWVKQSHGKTLEWIGGINPKNGDTSYNQKFKGKATLTVDKSSNTAYMEFRSLTSEDSAVYYCASPDLPPMDYWGQGTTVTVSS(配列番号10)を有する重鎖可変領域(HVCR)
を含むか;又は
2)前記モノクローナル抗体が:
i) アミノ酸配列DIVVIQSPASLAVSLGQRATISCRASESVEYYGTSLMQWYQQKPGQPPKLLIYTASNVESGVPARFSGSGSGTDFSLNIHPVEEDDIAMYFCQQSRKVPYTFGGGTKLEIKRADAAPTVSIFPP(配列番号20)を有する軽鎖可変領域(LVCR);及び
ii) アミノ酸配列EVQLQQSGGGLVQPGGSLKLSCATSGFTFSDYYMFWVRQTPEKRLEWVAHITNIGGNTYYPDTVKGRFTISRDNDKNTLYLQMSRLKSEDTAMYYCARPPSYGNYGYFNVWGQGTTVTVS(配列番号18)を有する重鎖可変領域(HVCR)
を含むか;又は
3)前記モノクローナル抗体が:
i) アミノ酸配列QIVLTQSPAIMSASPGEKVSITCSASSSIHMYWFQQKPDTSPKLWIYSTSNLASGVPSRFSGSGSGTSYSLTISRMEAEDAATYYCHQRSSYPFTFGSGTKLEVKRADAAPTVSIFPP(配列番号24)を有する軽鎖可変領域(LVCR);及び
ii) アミノ酸配列SGTVLARPGASVRMSCKASGYSLATYWMHWVKQRPGQGLEWIGSIYPGNGETTYNQKFKDKARLTAVTSASTAYMEFSSLTIEDSAVYYCTRERADVYYYGMDYWGQGTTVTVSSKG(配列番号22)を有する重鎖可変領域(HVCR)
を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項6】
ヒト化抗体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項7】
前記ヒト化抗体が、
i)アミノ酸配列DI(Q/V/E)LTQSPL(T/S)L(S/P)VT(I/L)GQPASISC(K/R)SSQSLLSTGRTYLNW(L/F)(L/Q/H)QRPGQSP(K/R)RLIYLVS(K/N/D/H)(L/R/W)DSGVPDRF(T/S)GSGSGTDFTLKISRVEAED(L/V)G(L/V)YYCWQGTHFPHTFGGGTKLEIK(配列番号11)を有し、該アミノ酸配列、配列番号11が、配列番号9と比較して少なくとも1アミノ酸相違する、軽鎖可変領域(LVCR);及び
ii)アミノ酸配列VKLQQSGPELVKPGASVKISCK(T/A/V)SGYTFTEYT(I/M/V)HWVKQSHGKTLEWIG(G/D/Y/M/W/E/I)INPKNGDTSYNQKFKGKATLTVDKSSNTAYME(F/L)RSLTSEDSAVYYCASPDLPPMDYWGQGTTVTVSS(配列番号12)を有し、該アミノ酸配列、配列番号12が、配列番号10と比較して少なくとも1アミノ酸相違する、重鎖可変領域(HVCR)
を含む、請求項6に記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項8】
モノクローナル抗体が、2008年1月8日にコレクシオン ナシオナル ド クルチュル ド ミクロオーガニズム(C.N.C.M.、フランス国、Cedex 15パリ F-75724、ドクトル ルー通り25、パスツール研究所)に番号I-3890のもとに寄託された1H12と称するハイブリドーマ細胞株により産生されたモノクローナル抗体1H12、2009年12月15日にコレクシオン ナシオナル ド クルチュル ド ミクロオーガニズム(C.N.C.M.、フランス国、Cedex 15パリ F-75724、ドクトル ルー通り25、パスツール研究所)に番号I-4267のもとに寄託された3A11と称するハイブリドーマ細胞株により産生されたモノクローナル抗体3A11、又は2009年12月15日にコレクシオン ナシオナル ド クルチュル ド ミクロオーガニズム(C.N.C.M.、フランス国、Cedex 15パリ F-75724、ドクトル ルー通り25、パスツール研究所)に番号I-4268のもとに寄託された15G5と称するハイブリドーマ細胞株により産生されたモノクローナル抗体15G5である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体又はその断片をコードする核酸配列を含む単離核酸。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体又はその断片をコードする少なくとも1の核酸配列及び該核酸配列の発現に必要な調節配列を含むベクター。
【請求項11】
請求項8に記載のベクターでトランスフェクションされた宿主細胞。
【請求項12】
2008年1月8日にコレクシオン ナシオナル ド クルチュル ド ミクロオーガニズム(C.N.C.M.、フランス国、Cedex 15パリ F-75724、ドクトル ルー通り25、パスツール研究所)に番号I-3890のもとに寄託された名称1H12のハイブリドーマ細胞株、2009年12月15日にコレクシオン ナシオナル ド クルチュル ド ミクロオーガニズム(C.N.C.M.、フランス国、Cedex 15パリ F-75724、ドクトル ルー通り25、パスツール研究所)に番号I-4267のもとに寄託された名称3A11のハイブリドーマ細胞株、又は2009年12月15日にコレクシオン ナシオナル ド クルチュル ド ミクロオーガニズム(C.N.C.M.、フランス国、Cedex 15パリ F-75724、ドクトル ルー通り25、パスツール研究所)に番号I-4268のもとに寄託された名称15G5のハイブリドーマ細胞株からなる群から選択されるハイブリドーマ細胞株。
【請求項13】
請求項1〜8いずれか1項に記載のモノクローナル抗体又はその断片、請求項9に記載の単離核酸、或いは請求項10に記載のベクターを含む、医薬又は医薬組成物。
【請求項14】
癌、特に癌腫等の上皮癌の治療を意図した、請求項13の医薬。
【請求項15】
i)ヒトタンパク質ラミニン5のLG4/5ドメイン(配列番号3)をシンデカン1と接触させる工程;
ii)前記ヒトタンパク質ラミニン5のLG4/5ドメイン(配列番号3)及び前記シンデカン1を、ヒトタンパク質ラミニン5のLG4/5ドメイン(配列番号3)を含むポリペプチドによる、非ヒト動物の免疫により得られた試験すべきモノクローナル抗体又はその断片と更に接触させるか、又は接触させない工程;
iii)試験すべき前記モノクローナル抗体又はその断片の存在下又は非存在下で、前記ヒトタンパク質ラミニン5のLG4/5ドメイン(配列番号3)へのシンデカン1の結合を決定する工程;及び
iv)前記ヒトタンパク質ラミニン5のLG4/5ドメイン(配列番号3)へのシンデカン1の結合を阻害するモノクローナル抗体又はその断片を選択する工程;
を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体又はその断片の同定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図12】
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【図13】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2012−512644(P2012−512644A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541493(P2011−541493)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067597
【国際公開番号】WO2010/070134
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(503466808)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィーク(セーエヌエールエス) (8)
【出願人】(511148776)ユニヴェルシテ クロード ベルナール リヨン 1 (1)
【Fターム(参考)】