説明

ヒト化ターゲティングモノクローナル抗体と複合体を形成する複数の可変抗原

本発明は、コヒーシン−ドッケリン対の半分を有し、それにより多価抗原コンジュゲートの迅速な会合を可能にするモジュール組換え抗体又はその断片を設計、作製及び使用するための組成物及び方法を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的に新規なワクチンの分野に関し、より具体的には、ヒト化ターゲティングモノクローナル抗体と複合体を形成する複数の可変(multivariable)抗原の設計、製造及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の範囲を限定せずに、ワクチン開発に関してその背景を説明する。
【0003】
モノクローナル抗体に関わるタンパク質工学技術は、ヒト化(即ち、例えばげっ歯類mAb配列を、その元のmAbの特定の抗原結合部位を保持しながら、ヒトmAb配列に翻訳すること)及び産生(通常、哺乳動物細胞系から分泌される)に関して非常に進歩している。ワクチン接種に関わるrAbの新たな応用が、研究開発中であり、現在のところ、組換え(engineered)rAb−抗原融合タンパク質に基づいている(通常、rAb重鎖即ちH鎖のC末端コドンとインフレームに配置した抗原コード領域を用いて)。この技術に対する障害は、完全に機能するrAb−抗原の発現及び産生を成功させることである。多くの場合、おそらく大抵の場合、所望の抗原は、組換えrAb−抗原の分泌を交絡(confound)させる。所望の構成体が複数の抗原コード領域を含む場合、不良な発現又は発現皆無の確率も増加する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、成分同士の単なる混合により、制御した様式でrAb抗原複合体を構築する方法を提供し、個々のrAb及び特定の抗原に最も適した異なる発現−産生系において、rAb及び抗原(複数可)を発現し、産生する能力を提供する。それに加え、本発明は、分泌される哺乳動物発現系に対する、高親和性及び高特異性のコヒーシン(cohesin)−ドッケリン(dockerin)相互作用の新たな応用を示し、したがってタンパク質工学の独自方式の開発、並びに研究及び臨床応用のための新たなタンパク質ツールの産生を可能にする。
【0005】
より特定すれば、本発明は、コヒーシン−ドッケリンタンパク質のドメイン及びその周辺リンカーを使用する。例えば、本発明は、抗原、毒素又は細胞性活性化剤と複合体を形成する組換えモノクローナル抗体(rAb)の制御された構築を可能にする。本発明は、ワクチン接種及び癌治療において広い潜在的用途を有する。また、他のタンパク質に対して特異的な親和性を有する新規なタンパク質の産生を可能にする、この技術の派生技術の保護も主張する。
【0006】
本発明は、セルロソームと呼ばれる十分に研究されたセルロース分解性細菌タンパク質複合体の特定成分に基づいている。具体的には、2種のタンパク質ドメイン(コヒーシン及びドッケリン)並びに天然のタンパク質リンカー配列が、本発明を介して新たな状況及び応用において利用される。
【0007】
本発明は、特定のコヒーシン及びドッケリンドメインが、特異的で高親和性のコヒーシン−ドッケリンタンパク質間相互作用を維持しながら、融合タンパク質として哺乳動物細胞から首尾よく、効率的に分泌できるという発見に基づいている。コヒーシン及びドッケリンに関する広範な文献から、このような融合タンパク質がこの機能性を有するはずであるとの予想は教示されるが、このような融合タンパク質の哺乳動物分泌系における産生については記載がない。科学的知識の現状からすれば、首尾よい分泌の法則(シグナルペプチドなどの特徴以外に)が十分には確立されていないので、この発見の予測は不可能である。更に、コヒーシンリンカー領域は、天然細菌ではグリコシル化されていることが知られており、コヒーシン及びドッケリンドメインは、予測されるグリコシル化部位を含有している。このことは、哺乳動物細胞からの分泌を実際に促進し得るが、「非天然」のグリコシル化が、コヒーシン−ドッケリン相互作用を混乱させるか否かは不明確である。
【0008】
様々な商業用途を対象としたコヒーシン−ドッケリン相互作用が公表されてきたが、本発明は、特異的なタンパク質複合体の構築を中心として構成されたこの相互作用について、従来未実現であった可能性に基づいており、構築が制御された酵素の利用とは関係がない。
【0009】
本発明は、多様なセルロース分解微生物由来のすべてのコヒーシン−ドッケリン配列の使用を包含するが、微生物クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)由来の特異的なコヒーシン及びドッケリン並びにリンカー配列の応用について説明する。例えば、本明細書に記載の配列は、クロストリジウム・サーモセラムのドッケリン配列にC末端コドンで連結したヒトIgG4のH鎖をコードする(rAb.docと呼ぶ)。rAb.docタンパク質の他の実施形態も、DNA断片としてのドッケリンコード領域を異なるH鎖構成体をコードするベクターへ移入するだけで作製される例を用いて、同様に説明される。
【0010】
より特定すれば、本発明は、1又は複数の抗原担体ドメインに連結した抗原特異的結合ドメイン、及びコヒーシン−ドッケリン結合対の半分を含むモジュールrAb担体を包含する。抗原特異的結合ドメインは、抗体の少なくとも一部分になり得るものであり、その抗体は、融合タンパク質中にコヒーシン−ドッケリン結合対の半分を有する結合対との融合タンパク質である。該rAbは、モジュールrAb担体と複合体を形成する抗原に結合した、コヒーシン−ドッケリン結合対の相補的半分も含む。コヒーシン−ドッケリン結合対の相補的半分は、それ自体が、複合体の一部として担持される抗原との融合タンパク質でもよい(モジュールrAb担体(コヒーシン/ドッケリン)抗原複合体)。抗原特異ドメインの例には、全長抗体、抗体可変領域ドメイン、Fab断片、Fab’断片、F(ab)断片及びFv断片、並びにFabc断片及び/又はFcドメインの部分を伴うFab断片が挙げられる。コヒーシン−ドッケリン結合対の供給源の非限定例には、クロストリジウム・サーモセラム、クロストリジウム・ジョスイ(Clostridium josui)、クロストリジウム・セルロリティクム(Clostridium cellulolyticum)及びバクテロイデス・セルロソルベンス(Bacteroides cellulosolvens)、並びにそれらの組合せが挙げられる。
【0011】
抗原特異的結合ドメインによるターゲティングの非限定例には、MHCクラスI、MHCクラスII、CD1、CD2、CD3、CD4、CD8、CD11b、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD29、CD31、CD40、CD43、CD44、CD45、CD54、CD56、CD57、CD58、CD83、CD86、CMRF−44、CMRF−56、DCIR、DC−ASPGR、CLEC−6、CD40、BDCA−2、MARCO、DEC−205、マンノース受容体、ランゲリン、DECTIN−1、B7−1、B7−2、IFN−γ受容体及びIL−2受容体、ICAM−1、Fcγ受容体、又は抗原提示細胞が比較的特異的に発現する他の受容体から選択される、細胞表面マーカーが挙げられる。
【0012】
本発明のrAbは、rAb.Doc、rAb.Coh、rAb.(Coh)、rAb.(Doc)、rAb.(Coh.Doc)、又はrAb.(Coh)(Doc)(式中、xは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれより大)と特定されるドメインの組合せも包含し得る。複合体におけるモジュールrAb担体の例には、
rAb.Doc:Coh.抗原、
rAb.Coh:Doc.抗原、
rAb.(Coh):(Doc.抗原)
rAb.(Doc):(Coh.抗原)
rAb.(Coh.Doc):(Doc.抗原)(Coh.抗原)、又は
rAb.(Coh)(Doc):(Doc.抗原(Coh.抗原
(式中、xは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)
が挙げられる。
【0013】
本発明は、コヒーシン−ドッケリン結合対の、抗原に結合した相補的半分に結合している、コヒーシン−ドッケリン結合対の半分を含んだ1又は複数のドメインに連結した抗原特異ドメインを含む、モジュールrAb担体のワクチンも包含する。rAb抗体をターゲティングするための非限定例には、MHCクラスI、MHCクラスII、CD1、CD2、CD3、CD4、CD8、CD11b、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD29、CD31、CD40、CD43、CD44、CD45、CD54、CD56、CD57、CD58、CD83、CD86、CMRF−44、CMRF−56、DCIR、DC−ASPGR、CLEC−6、CD40、BDCA−2、MARCO、DEC−205、マンノース受容体、ランゲリン、DECTIN−1、B7−1、B7−2、IFN−γ受容体及びIL−2受容体、ICAM−1、Fcγ受容体、又は抗原提示細胞がかなり特異的に発現する他の受容体から選択される、免疫細胞表面タンパク質が挙げられる。rAb抗原担体によるワクチン接種の標的には、例えば、細菌、ウイルス、真菌、原虫又は癌のタンパク質、及びその断片が挙げられる。請求項11に記載のワクチンでは、モジュールrAb担体が、rAb.Doc:Coh.抗原、rAb.Coh:Doc.抗原、rAb.(Coh):(Doc.抗原)、rAb.(Doc):(Coh.抗原)、rAb.(Coh.Doc):(Doc.抗原)(Coh.抗原)、又はrAb.(Coh)(Doc):(Doc.抗原(Coh.抗原(式中、xは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)と更に特定される。
【0014】
本発明は、標的特異ドメイン並びに1又は複数のドメイン及びコヒーシン−ドッケリン結合対の半分に対するコードセグメントを含む単離核酸も包含する。例えば、標的は抗原の場合もあり、標的特異ドメインは、抗体の少なくとも一部分をコードし得る。1又は複数の該ドメインは、1又は複数のコヒーシンドメイン、1又は複数のドッケリンドメイン、或いはコヒーシン及びドッケリンの1又は複数のドメインの組合せをコードすることができる。そのrAbは、rAb.Doc、rAb.Coh、rAb.(Coh)、rAb.(Doc)、rAb.(Coh.Doc)、又はrAb.(Coh)(Doc)(式中、xは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)と更に規定される。
【0015】
本発明は、抗原特異ドメインと、コヒーシン−ドッケリン結合対の半分、タンパク質分子を担持するコヒーシン−ドッケリン結合対の半分、及びそれらの組合せを含む1又は複数のドメインとをコードする核酸を含むベクターも包含する。コヒーシン−ドッケリン結合対の半分、タンパク質分子を担持するコヒーシン−ドッケリン結合対の半分、及びそれらの組合せは、同じプロモーター、異なるプロモーターの制御下にあり、一連となって転写され、逆方向に転写される。
【0016】
本発明は、抗原特異ドメインと、1又は複数のドメイン及びコヒーシン−ドッケリン結合対の半分とをコードする核酸を含んだベクターを含む、宿主細胞も包含する。
【0017】
コヒーシン−ドッケリン結合対の半分の1又は複数のドメインに連結する抗原特異ドメインを組み合わせることによる、モジュールrAb担体を作製する方法。前記rAbは、rAb.Doc、rAb.Coh、rAb.(Coh)、rAb.(Doc)、rAb.(Coh.Doc)、又はrAb.(Coh)(Doc)(式中、xは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)と更に特定される。前記rAbの例は、抗原に結合したコヒーシン:ドッケリン対の相補的半分と複合し、rAb.Doc:Coh.抗原、rAb.Coh:Doc.抗原、rAb.(Coh):(Doc.抗原)、rAb.(Doc):(Coh.抗原)、rAb.(Coh.Doc):(Doc.抗原)(Coh.抗原)、又はrAb.(Coh)(Doc):(Doc.抗原(Coh.抗原(式中、xは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)から選択される。
【0018】
本発明は、rAbが細胞標的に特異的であるrAb.Doc:Coh.毒素の自己組織化(self-assembly)コンジュゲートを含む免疫毒素の場合もある。毒素の例には、放射性同位体、金属、酵素、ボツリヌス、破傷風、リシン、コレラ、ジフテリア、アフラトキシン、パーフリンゲンス毒素、マイコトキシン、シガトキシン、ブドウ球菌エンテロトキシンB、T2、セグイトキシン、サキシトキシン、アブリン、シアノギノシン、アルファトキシン、テトロドトキシン、アコノトキシン、蛇毒及びクモ毒が挙げられる。免疫毒素の細胞標的には、疾患又は感染細胞が含まれる。ターゲティングをする疾患細胞の例には、例えば、白血病、リンパ腫などの血液癌、星状細胞種やグリア芽腫などの神経腫瘍、メラノーマ、乳癌、肺癌、頭頚部癌、胃癌や結腸癌などの消化器腫瘍、肝癌、膵臓癌、子宮頚部癌、子宮癌、卵巣癌、膣癌、睾丸癌、前立腺癌若しくは陰茎癌などの泌尿生殖器腫瘍、骨腫瘍、血管腫瘍、又は口唇、鼻咽頭、咽頭及び口腔、食道、直腸、胆嚢、胆道系、喉頭、肺及び気管支、膀胱、腎臓、脳及び他の神経系部分、甲状腺の癌、ホジキン病、非ホジキン病リンパ腫、多発性骨髄腫及び白血病が挙げられる。免疫毒素は、病原体、例えば細菌、原虫、蠕虫、ウイルス感染細胞又は真菌を直接、標的とし得る。
【0019】
本発明は、基材に結合した相補的なコヒーシン又はドッケリンにコンジュゲートしているrAbとコヒーシン又はドッケリン融合タンパク質とを相互作用させることにより、該融合タンパク質を分離する、タンパク質を精製する方法も包含する。本発明は、活性なコヒーシン・毒素融合タンパク質の容易な精製を促進する有益な生化学的性質を付与するために、毒素の融合相手としてコヒーシンを使用することもなし得る。本発明は、治療用途でDCを除去する場合にDCを標的として抗DC rAb.Docを使用することもなし得る。本発明は、樹状細胞の生存促進に十分な量で与えられる抗DC−SIGN/L抗体であって、免疫のために樹状細胞を成熟させ、活性化する抗体も包含する。該抗体は、ワクチンのアジュバントとして、インビボでの細胞、例えば樹状細胞を標的としてもよい。
【0020】
2価及び多価(rAb.Doc:Coh.rAb)の自己組織化コンジュゲートも、治療剤、診断剤及び工業用作用剤として発明した。或いは、本発明は、治療剤、細胞増殖剤又は成熟化剤としての2価及び多価(rAb.Doc:Coh.サイトカイン)、(rAb.Coh:Doc.サイトカイン)又は(サイトカイン.Coh:サイトカイン.Doc)の自己組織化コンジュゲートである。モジュールrAb担体は、標的細胞に特異的に結合し、サイトカインを標的細胞に作用するように送達できる、多価rAb及び/又はrAb.サイトカイン及び/又はサイトカイン.サイトカインの1又は複数の組合せをスクリーニングすることを含む方法によって、作製し得る。本発明で使用するサイトカインには、インターロイキン、形質転換成長因子(TGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、上皮成長因子(EGF)、結合組織活性化ペプチド(CTAP)、造骨因子、並びにこのような成長因子の生物活性な類縁体、断片及び誘導体、B/T細胞分化因子、B/T細胞増殖因子、マイトジェンサイトカイン、走化性サイトカイン、コロニー刺激因子、血管形成因子、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL11、IL12、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL18等、レプチン、ミオスタチン、マクロファージ刺激タンパク質、血小板由来成長因子、TNF−α、TNF−β、NGF、CD40L、CD137L/4−1BBL、ヒトリンホトキシンβ、G−CSF、M−CSF、GM−CSF、PDGF、IL−1α、IL1−β、IP−10、PF4、GRO、9E3、エリスロポエチン、エンドスタチン、アンジオスタチン、VEGF、β形質転換成長因子(例えば、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3)、骨形成タンパク質(例えば、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9)、ヘパリン結合成長因子(線維芽細胞成長因子(FGF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン様成長因子(IGF))、インヒビン(例えば、インヒビンA、インヒビンB)、増殖分化因子(例えば、GDF−1)、及びアクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB)を含めた形質転換成長因子(TGF)スーパー遺伝子ファミリーが挙げられる。
【0021】
本発明の特徴及び利点をより完全に理解するために、以下に、添付した図と共に、本発明の詳細な説明に言及する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来技術(上部)と、操作・作製した同じヒト化mAbと同時に複合体中で標的指向化した多重抗原(MATCHMAB)の例(下部)とを比較する図である。
【図2】二重特異性mAbを形成するために、本発明の使用を示す図である。
【図3】還元的SDS.PAGE及びクーマシーブリリアントブルー染色で分析した、プロテインGアフィニティ精製後の分泌rAbタンパク質を示す図である。レーンは左から右へ進む。
【図4】各種rAb.融合タンパク質の分泌量に関する抗ヒトIgFc ELISAによる測定を示す図である(図4A及び4B)。
【図5】分泌タンパク質の抗LOX1_15C4 rAb(青色記号)及び抗LOX1_15C4.doc rAb(赤色記号)に関する、抗ヒトIgFc ELISA(HRP活性)及びLOX−1.アルカリホスファターゼ結合(AP活性)による測定を示す図である。
【図6】mIgGκ発現プラスミドと共に同時トランスフェクションした際、rAB−pCMV(mIgG2bH−ドッケリン)プラスミドがrAB−mIgG2b.ドッケリン融合タンパク質の効率的な分泌を指示することを示す図である。
【図7】分泌coh.アルカリホスファターゼ(coh.AP)は、プラスチック上に固定化したrAb.Docに効率的で特異的に結合するが、APはそのように結合しないことを示す図である(図7A及び7B)。
【図8】固定化したmIgG2a及びmIgG2bに結合するが、rAb.docには結合しない分泌G.APを含有する上清の各種希釈液を示す一方、coh.APは特異的にrAb.docに結合したことを示す図である(図8A及び8B)。
【図9】proG.AP又はcoh.AP又はcoh2.APの所定量(0.1μg)と、固定化したmIgG2b又はrAb.doc(0.25μg)との間で、マイクロタイタープレート中、1時間インキュベーションすることにより会合した複合体の差次的安定性を示す図である。
【図10】proG.AP又はcoh.APの所定量(0.1μg)と、固定化したmIgG2b又はrAb.doc(0.25μg)との間で、マイクロタイタープレート中、1時間インキュベーションすることにより会合した複合体の、ヒト血清中における差次的安定性を示す図である。
【図11】rAb.doc上清及びcoh.AP上清を同じプロテインGアフィニティカラムへ逐次適用することにより生成した、rAb.doc:Coh2.AP複合体の還元的対非還元的なSDS.PAGE分析を示したゲルを示す図である。
【図12】rAb.doc上清及びcoh.Flu HA5−1上清を同じプロテインGアフィニティカラムへ逐次適用することにより生成した、rAb.doc:Coh.Flu HA5−1複合体の非還元的なSDS.PAGE分析を示す図である。
【図13】個々の精製成分の混合により形成された抗DC_rAb.doc:coh.Flu M1複合体は、Flu M1特異的T細胞の増殖にインビトロで有効であったことを示す図である。
【図14】個々の精製成分の混合により形成された複合体のうち、抗DC_rAb.doc:coh.Flu M1は、Flu M1特異的T細胞の増殖にインビトロで有効であったが、mIgG2b.doc:coh.Flu M1は有効でなかったことを示す図である。
【図15】CD34ヒトDCをCD1a及びCD14の各サブタイプに選別し、3nMの抗DC_rAb.Flu M1 PEP又は抗DC_rAbと共に及びそれなしで培養したことを示す図である。
【図16】coh.pepタンパク質の合成を指示する発現プラスミドを保持した大腸菌を増殖させ、特異タンパク質の産生を誘発させたことを示す図である。細胞を採集し、超音波で破壊した。
【図17】DCIR.Doc rAbだけではDCの生存に効果がなかったが、DC−SIGN/L.Doc rAbはその生存を促進することを示す図である。
【図18】Coh.PE38だけでは、7−AADスコアによるアポトーシス細胞数を僅かに増加させるが(22.1〜29.8%から)、DCIR又はDC−SIGN/L.Doc rAbに連結すると、Coh.PE38は7−AADスコアによるアポトーシス細胞数を著しく増加させたことを示す図である。
【図19】抗DC−SIGN/L性及び抗DC−ASPGR性のrAb.Coh及びrAb.Docの発現が、効率的に分泌されたことを示す図である。
【図20】ヒトB細胞の増殖に対するIL−21及びCoh.IL−21の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の多様な実施形態の作出及び使用を以下に詳細に考察するが、本発明が、多種多様な特定の状況で具体化できる多くの適用可能な発明概念を提供することは理解されたい。本明細書で考察する特定の実施形態は、本発明を作出し、使用する特定の方法を単に例示するだけであって、本発明の範囲を制限するものではない。
【0024】
本発明の理解を深めるために、各種の用語を以下に定義する。本明細書に定義する用語は、本発明関連の分野の当業者が通常理解している意味を有する。単数で記載されている用語は、単一体だけを指すことを意図しているのではなく、例示のために具体例で使用し得る部類一般を包含する。本発明における専門用語は、本発明の特定の実施形態を説明するために使用するが、その用法は、特許請求の範囲で概説される場合を除き、本発明を制限するものではない。
【0025】
現在では、タンパク質工学技術によって、組換えmAb(H又はL、普通HのC末端を使用することが多い)へ1つの抗原(又は、連鎖の1本へ異なる抗原)を容易に、制御して付加することが可能である。異なる抗原又は異なる抗原セットをmAbに連結する必要がある場合は、mAbを再組換えして発現させ、異なる構成体として精製する必要がある。
【0026】
本発明は、複数の抗原又はタンパク質(一次mAbとは独立に組換え、発現、精製したもの)を、制御された、複数の可変形式で、単一の一次組換えmAbに、複合化することを提供する。現在、部位特異的なビオチニル化部位を組換え、単一の一次mAbに異なるタンパク質を付加する(各々が別々にストレプトアビジンに連結されるように組み換える)方法が存在する。しかし、本発明は、別々の組換えによるタンパク質の複数の組合せを、所定の等モル比及び箇所において一次mAbに付加することを提供する。
【0027】
本明細書で使用する場合、用語「モジュールrAb担体」とは、単一の組換えモノクローナル抗体(mAb)に対して、多様な抗原、活性化タンパク質又は他の抗体の制御されたモジュール式付加を行うように組み換えられた、組換え抗体系を記述するために使用される。該rAbは、標準的なハイブリドーマ技法、組換え抗体ディスプレーを用いて作製したモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体などでよい。モジュールrAb担体は、例えば、多重抗原、及び/又は抗原と活性化サイトカインが、(細胞内取込性受容体、例えばヒト樹状細胞受容体に対する1つの一次組換え抗体を介して)樹状細胞(DC)を標的とするように使用することができる。モジュールrAb担体は、制御及び特定された方法で、異なる2種の組換えmAbを末端間で結合するためにも使用し得る。
【0028】
「モジュールrAb担体」の抗原結合部分は、1又は複数の可変ドメイン、1又は複数の可変ドメインと第1定常ドメイン、Fab断片、Fab’断片、F(ab)断片及びFv断片、並びにFabc断片及び/又はFcドメインの部分を伴うFab断片でもよく、Fcドメインの前記部分に対しては、同族性のモジュール結合部分が、アミノ酸配列に付加しており、及び/又は結合している。モジュールrAb担体に使用する抗体は、任意のイソ型若しくはクラス、サブクラスでもよく、又は任意の供給源でもよい(動物及び/又は組換え)。
【0029】
非限定的な一例では、モジュールrAb担体は、操作組換えmAbに関し、特異的で規定されたタンパク質複合体を作製するために、1又は複数のモジュールコヒーシン−ドッケリンタンパク質ドメインを有するように操作されている。該mAbは、該mAbの抗原結合ドメイン由来のカルボキシと共に、1又は複数のモジュールコヒーシン−ドッケリンタンパク質ドメインを含む融合タンパク質の一部分である。コヒーシン−ドッケリンタンパク質ドメインは、翻訳後に、例えば、化学的な架橋剤及び/又はジスルフィド結合の使用によって結合してもよい。
【0030】
モジュールrAb担体は、異なる分子、例えばペプチド、タンパク質、脂質、炭水化物、核酸(塩基若しくは主鎖の修飾の有無に関係なく、オリゴヌクレオチド、アプタマー、ベクター)又はそれらの組合せを、コヒーシン−ドッケリン対の相補的半分にその異なる分子を結合することにより担持するのに使用される。例えば、ドッケリン、コヒーシンのどちらか一方は、抗原、ペプチド、タンパク質、毒素、サイトカイン、酵素、構造タンパク質、細胞外マトリックスタンパク質、別の抗体、細胞、又はその断片との融合タンパク質にされるか、又化学的に結合される。モジュールrAb担体は、1又は複数のコヒーシンドメイン若しくはドッケリンドメイン、又はコヒーシン及びドッケリンの両ドメインを有する場合があり、これにより、1又は複数の相補的コヒーシン/ドッケリン分子との複合体形成が可能になり、モジュールrAb担体の抗原認識ドメインを介した送達ができる。
【0031】
本明細書で使用する場合の用語「抗原」とは、抗原のレシピエントにおいて体液性及び/又は細胞性の免疫応答を開始できる分子を指す。抗原は、本発明を用いた異なる2つの状況で、即ち、抗体又はrAbの他の抗原認識ドメインに対する標的として、或いはモジュールrAb担体に対するドッケリン/コヒーシン−分子相補体の一部として、rAbにより細胞又は標的へ及び/又はその中へ運搬される当該分子として、使用し得る。抗原は、普通、ワクチン接種が有利な治療になると思われる疾患を起こす作用剤である。抗原がMHC上に提示されるとき、そのペプチドは約8〜約25アミノ酸であることが多い。抗原には、例えば、単純な中間代謝物、糖類、脂質及びホルモン、並びに複合炭水化物、リン脂質、核酸、タンパク質などの高分子を含めた、任意種の生体分子が含まれる。抗原の一般的種類には、それだけに限らないが、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、原虫及び他の寄生虫抗原、腫瘍抗原、自己免疫疾患、アレルギー及び移植片拒絶に関わる抗原、並びに他の種々の抗原が挙げられる。
【0032】
モジュールrAb担体は、任意数の活性剤、例えば、抗生物質、感染症治療剤、抗ウイルス剤、抗腫瘍剤、解熱剤、鎮痛剤、抗炎症剤、骨粗鬆症用治療剤、酵素、サイトカイン、抗凝固剤、多糖類、コラーゲン、細胞、及び前記活性剤の2種以上の組合せを運搬することができる。本発明を用いて送達する抗生物質の例には、限定はしないが、テトラサイクリン、アミノ糖、ペニシリン、セファロスポリン、スルホンアミド薬、コハク酸クロラムフェニコールナトリウム、エリスロマイシン、バンコマイシン、リンコマイシン、クリンダマイシン、ナイスタチン、アンホテリシンB、アマンチジン、イドクスウリジン、p−アミノサリチル酸、イソニアジド、リファンピン、アクチノマイシンD、ミトラマイシン、ダウノマイシン、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、イミダゾールカルボキサミドなどが挙げられる。
【0033】
本発明を用いて送達する抗腫瘍剤の例には、限定はしないが、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、メソトレキセートなどが挙げられる。解熱剤及び鎮痛剤の例には、アスピリン、Motrin(登録商標)、Ibuprofen(登録商標)、ナプロシン、アセトアミノフェンなどが挙げられる。
【0034】
本発明を用いて送達する抗炎症剤の例には、限定はしないが、NSAID、アスピリン、ステロイド、デキサメタゾン、ヒドロコーチゾン、プレドニゾロン、ジクロフェナックNaなどが挙げられる。
【0035】
本発明を用いて送達する、骨粗鬆症治療の治療剤並びに骨及び骨格に作用する他の因子の例には、限定はしないが、カルシウム、アレンドロネート、骨GLaペプチド、甲状腺ホルモン及びその活性断片、ヒストンH4関連骨形成増殖ペプチド、並びにそれらの変異体、誘導体及び類縁体が挙げられる。
【0036】
本発明を用いて送達する酵素及び酵素補因子の例には、限定はしないが、パンクレアーゼ、L−アスパラギナーゼ、ヒアルロニダーゼ、キモトリプシン、トリプシン、tPA、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、パンクレアチン、コラゲナーゼ、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、プラスミノーゲン、ストレプトキナーゼ、アデニルシクラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)などが挙げられる。
【0037】
本発明を用いて送達するサイトカインの例には、限定はしないが、インターロイキン、形質転換成長因子(TGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、上皮成長因子(EGF)、結合組織活性化ペプチド(CTAP)、造骨因子、並びに前記成長因子の生物活性な類縁体、断片及び誘導体が挙げられる。サイトカインは、B/T細胞分化因子、B/T細胞増殖因子、マイトジェンサイトカイン、走化性サイトカイン、コロニー刺激因子、血管形成因子、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL11、IL12、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL18等、レプチン、ミオスタチン、マクロファージ刺激タンパク質、血小板由来成長因子、TNF−α、TNF−β、NGF、CD40L、CD137L/4−1BBL、ヒトリンホトキシンβ、G−CSF、M−CSF、GM−CSF、PDGF、IL−1α、IL1−β、IP−10、PF4、GRO、9E3、エリスロポエチン、エンドスタチン、アンジオスタチン、VEGF、又はそれらの任意の断片若しくは組合せでもよい。他のサイトカインには、β形質転換成長因子(例えば、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3)、骨形成タンパク質(例えば、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9)、ヘパリン結合成長因子(例えば、線維芽細胞成長因子(FGF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン様成長因子(IGF))、インヒビン(例えば、インヒビンA、インヒビンB)、増殖分化因子(例えば、GDF−1)、及びアクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB)を含めた、形質転換成長因子(TGF)スーパー遺伝子ファミリーの構成員が挙げられる。
【0038】
本発明を用いて送達する成長因子の例には、限定はしないが、哺乳動物細胞などの自然源若しくは天然源から単離できる成長因子、又は組換えDNA技法若しくは各種化学法などにより合成で調製できる成長因子が挙げられる。それに加え、こうした因子の類縁体、断片又は誘導体も、その自然分子の生物活性の少なくとも一部を示す限り、使用することができる。例えば、部位特異的変異誘発又は他の遺伝子工学技法で改変した遺伝子の発現により、類縁体を調製することができる。
【0039】
本発明を用いて送達する抗凝固剤の例には、限定はしないが、ワルファリン、ヘパリン、ヒルジンなどが挙げられる。本発明を用いて送達する、免疫系に作用する因子の例には、限定はしないが、化学走性ペプチド、ブラジキニンなど、炎症及び悪性新生物を抑制する因子、並びに感染性微生物を攻撃する因子が挙げられる。
【0040】
ウイルス抗原及び/又はウイルス抗原性標的の例には、それだけに限らないが、例えば、gag、pol及びenv遺伝子の遺伝子産物、Nefタンパク質、逆転写酵素、並びに他のHIV成分などのヒト免疫不全ウイルス(HIV)由来レトロウイルス抗原などのレトロウイルス抗原;B型肝炎ウイルスのS、M及びLプロテイン、B型肝炎ウイルスのプレS抗原、並びにC型肝炎ウイルスRNAなどの他の肝炎、例えばA型、B型及びC型肝炎のウイルス成分などの肝炎ウイルス抗原;ヘマグルチニン及びノイラミニダーゼ並びに他のインフルエンザウイルス成分などのインフルエンザウイルス抗原;麻疹ウイルス融合タンパク質及び他の麻疹ウイルス成分などの麻疹ウイルス抗原;プロテインE1及びE2並びに他の風疹ウイルス成分などの風疹ウイルス抗原;VP7sc及び他のロタウイルス成分などのロタウイルス抗原;エンベロープ糖タンパク質B及び他のサイトメガロウイルス抗原成分などのサイトメガロウイルス抗原;RSV融合タンパク質、M2プロテイン、及び他の呼吸器合胞体ウイルス抗原成分などの呼吸器合胞体ウイルス抗原;前初期タンパク質、糖タンパク質D、及び他の単純疱疹ウイルス抗原成分などの単純疱疹ウイルス抗原;gpI、gpII及び他の水疱瘡ウイルス抗原成分などの水疱瘡ウイルス抗原;プロテインE、M−E、M−E−NS1、NS1、NS1−NS2A、80%E及び他の日本脳炎ウイルス抗原成分などの日本脳炎ウイルス抗原;狂犬病糖タンパク質、狂犬病核タンパク質及び他の狂犬病ウイルス抗原成分などの狂犬病ウイルス抗原が挙げられる。ウイルス抗原の追加例については、Fundamental Virology, Second Edition, eds. Fields, B. N. and Knipe, D. M. (Raven Press, New York, 1991) を参照されたい。
【0041】
本発明のrAb−DC/DC−抗原ワクチンを用いて送達し得る抗原及び/又は抗原性標的には、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原又は寄生虫抗原などの抗原をコードする遺伝子が含まれる。ウイルスには、ピコルナウイルス、コロナウイルス、トガウイルス、フラビルウイルス、ラブドウイルス、パラミクソウイルス、オルトミクソウイルス、ブンヤウイルス、アレナウイルス、レオウイルス、レトロウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、ヘパドナウイルス、及び海綿状ウイルスが挙げられる。他のウイルス標的には、インフルエンザ、1型及び2型単純疱疹ウイルス、麻疹、デング熱、天然痘、ポリオ又はHIVが挙げられる。病原体には、トリパノゾーマ、サナダムシ、回虫、蠕虫、マラリアが挙げられる。胎児抗原や前立腺特異抗原などの腫瘍マーカーは、このようにして標的とし得る。他の例には、HIVのenvタンパク質及びB型肝炎表面抗原が含まれる。ワクチン接種用に本発明によるベクターを投与するには、強い免疫応答が望ましいと思われる移入遺伝子の長期発現を可能とするに十分に、ベクター関連抗原が非免疫原性である必要があろう。いくつかの事例では、個人へのワクチン接種は、毎年又は2年毎など、まれにしか必要とされずに、感染体から長期の免疫防御を与え得る。本発明と共にベクター中に使用し、最終的には抗原として使用する微生物、アレルゲン、並びに核酸及びアミノ酸の配列の具体例は、米国特許第6541011号明細書に見出し得るが、その関連部分、特に、本発明と共に使用し得る微生物及び特定の配列に適合する各表が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
本明細書で開示するrAbワクチンと共に使用する細菌抗原には、それだけに限らないが、例えば、百日咳毒素、線維状ヘマグルチニン、パータクチン、FIM2、FIM3、アデニル酸シクラーゼ、及び他の百日咳菌抗原成分などの細菌抗原;ジフテリア毒素又はトキソイド、及び他のジフテリア菌抗原成分などのジフテリア菌抗原;破傷風毒素又はトキソイド、及び他の破傷風菌抗原成分などの破傷風菌抗原;Mプロテイン及び他の連鎖球菌抗原成分などの連鎖球菌抗原;リポ多糖類及び他のグラム陰性細菌抗原成分などのグラム陰性バチルス菌抗原;ミコール酸、熱ショックタンパク質65(HSP65)、30kDa主要分泌タンパク質、抗原85A、及び他のマイコバクテリア抗原成分などの結核菌(Mycobacterium tuberculosis)抗原;ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)菌抗原成分;ニューモリシン、肺炎球菌莢膜多糖類、及び他の肺炎球菌抗原成分などの肺炎球菌抗原;莢膜多糖類、及び他のインフルエンザ菌(haemophilus influenza)抗原成分などのインフルエンザ菌抗原;炭疽菌防御抗原、及び他の炭疽菌抗原成分などの炭疽菌抗原;ロンプA及び他のリケッチア細菌抗原成分などのリケッチア細菌抗原が挙げられる。他の任意の細菌、マイコバクテリア、マイコプラズマ、リケッチア又はクラミジアの抗原も、本明細書に記載の細菌抗原と共に含まれる。部分又は完全病原体としては、インフルエンザ菌、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、髄膜炎菌(neisseria meningitidis)、肺炎連鎖球菌(streptococcus pneumoniae)、淋菌(neisseria gonorrhoeae)、サルモネラ血清型チフス菌(salmonella serotype typhi)、赤痢菌(shigella)、コレラ菌(vibrio cholerae)、デング熱、脳炎、日本脳炎、ライム病、ペスト菌(Yersinia pestis)、西ナイルウイルス、黄熱病、野兎病(tularemia)、肝炎(ウイルス性、細菌性)、RSV(呼吸器合胞体ウイルス)、HPIV1及びHPIV3、アデノウイルス、天然痘、アレルギー並びに癌も該当し得る。
【0043】
本発明の組成物及び方法と共に使用する真菌抗原には、それだけに限らないが、例えば、カンジダ真菌抗原成分;熱ショックタンパク質60(HSP60)及び他のヒストプラズマ真菌抗原成分などのヒストプラズマ真菌抗原;莢膜多糖類及び他のクリプトコッカス真菌抗原成分などのクリプトコッカス真菌抗原;小球抗原及び他のコクシジオデス(coccidiodes)真菌抗原成分などのコクシジオデス真菌抗原;並びにトリコフィチン及び他のコクシジオデス真菌抗原成分などの白癬真菌抗原が挙げられる。
【0044】
原虫抗原及び他の寄生虫抗原の例には、それだけに限らないが、例えば、メロゾイト表面抗原、スポロゾイト表面抗原、スポロゾイト周囲抗原、生殖母細胞/配偶子表面抗原、血液期抗原pf155/RESA、及び他のプラスモジウム抗原成分などの熱帯熱マラリア原虫抗原;SAG−1、p30及び他のトキソプラズマ抗原成分などのトキソプラズマ抗原;グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、パラミオシン、及び他の住血吸虫抗原成分などの住血吸虫抗原;gp63、リン脂質グリカン及びその付随タンパク質、並びに他のリーシュマニア抗原成分などのリーシュマニア主要抗原及び他のリーシュマニア抗原;更に75〜77kDa抗原、56kDa抗原及び他のトリパノゾーマ抗原成分などのトリパノゾーマ・クルージ(trypanosoma cruzi)抗原が挙げられる。
【0045】
本発明のrAbの抗体部分の抗原認識部位を用いて標的にできる、免疫細胞上の標的抗原は、細胞内取込の見込み、免疫細胞の特異性レベル、標的とする免疫細胞の型、免疫細胞の成熟度及び/又は活性化度などを含めた多数の要因に基づいて、一般に選択されよう。樹状細胞にとっての細胞表面マーカーの例には、それだけに限らないが、MHCクラスI、MHCクラスII、CD1、CD2、CD3、CD4、CD8、CD11b、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD29、CD31、CD40、CD43、CD44、CD45、CD54、CD56、CD57、CD58、CD83、CD86、CMRF−44、CMRF−56、DCIR、DC−ASPGR、CLEC−6、CD40、BDCA−2、MARCO、DEC−205、マンノース受容体、ランゲリン、DECTIN−1、B7−1、B7−2、IFN−γ受容体及びIL−2受容体、ICAM−1、Fcγ受容体、又は抗原提示細胞がかなり特異的に発現する他の受容体が挙げられる。抗原提示細胞にとっての細胞表面マーカーの例には、それだけに限らないが、MHCクラスI、MHCクラスII、CD1、CD2、CD3、CD4、CD8、CD11b、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD29、CD31、CD40、CD43、CD44、CD45、CD54、CD56、CD57、CD58、CD83、CD86、CMRF−44、CMRF−56、DCIR、DC−ASPGR、CLEC−6、CD40、BDCA−2、MARCO、DEC−205、マンノース受容体、ランゲリン、DECTIN−1、B7−1、B7−2、IFN−γ受容体及びIL−2受容体、ICAM−1、Fcγ受容体、又は抗原提示細胞がかなり特異的に発現する他の受容体が挙げられる。T細胞にとっての細胞表面マーカーの例には、それだけに限らないが、CD3、CD4、CD8、CD14、CD11b、CD16、CD45及びHLA−DRが挙げられる。
【0046】
腫瘍抗原に特徴的な標的抗原を含む、送達対象となる細胞表面上の標的抗原は、腫瘍組織細胞の細胞表面、細胞質、核、細胞小器官などに由来することになろう。本発明の抗体部分に対する腫瘍標的の例には、限定はしないが、白血病、リンパ腫などの血液癌、星状細胞種やグリア芽腫などの神経腫瘍、メラノーマ、乳癌、肺癌、頭頚部癌、胃癌や結腸癌などの消化器腫瘍、肝癌、膵臓癌、子宮頚部癌、子宮癌、卵巣癌、膣癌、睾丸癌、前立腺癌若しくは陰茎癌などの泌尿生殖器腫瘍、骨腫瘍、血管腫瘍、又は口唇、鼻咽頭、咽頭及び口腔、食道、直腸、胆嚢、胆道系、喉頭、肺及び気管支、膀胱、腎臓、脳及び他の神経系部分、甲状腺の癌、ホジキン病、非ホジキン病リンパ腫、多発性骨髄腫及び白血病が挙げられる。
【0047】
本発明を用いた抗原提示のために免疫細胞へ、単独又は組み合わせて送達し得る抗原の例には、腫瘍タンパク質、例えば変異した癌遺伝子;腫瘍に付随するウイルスタンパク質;並びに腫瘍のムチン及び糖脂質が挙げられる。腫瘍に付随するウイルスタンパク質とし得る抗原は、上記した部類のウイルスに由来するものとなろう。ある種の抗原は、腫瘍に特徴的なこともあり(腫瘍前駆細胞が普通発現しないタンパク質の1サブセット)、又は、腫瘍前駆細胞中で通常発現するが、腫瘍に特徴的な変異を有するタンパク質のこともある。他の抗原には、変化した活性又は細胞内分布、例えば、腫瘍抗原を生じる遺伝子の変異を有する、正常タンパク質の変異体(複数も)が含まれる。
【0048】
腫瘍抗原の非限定的な具体例には、CEA、前立腺特異抗原(PSA)、HER−2/neu、BAGE、GAGE、MAGE1〜4、6及び12、MUC(ムチン)(例えば、MUC−1、MUC−2など)、GM2及びGD2ガングリオシド、ras、myc、チロシナーゼ、MART(メラノーマ抗原)、Pmel17(gp100)、GnT−VのイントロンV配列(N−アセチルグルコアミニルトランスフェラーゼVのイントロンV配列)、前立腺Ca psm、PRAME(メラノーマ抗原)、β−カテニン、MUM−1−B(メラノーマの遍在性変異遺伝子産物)、GAGE(メラノーマ抗原)1、BAGE(メラノーマ抗原)2〜10、c−ERB2(Her2/neu)、EBNA(エプスタイン・バーウイルス核抗原)1〜6、gp75、ヒトパピローマウイルス(HPV)E6及びE7、p53、肺耐性タンパク質(LRP)、Bcl−2、並びにKi−67が挙げられる。それに加え、免疫原性分子には、自己免疫疾患の開始及び/又は展開に関与する自己抗原がなることができ、その病状は、関連する標的の器官、組織又は細胞、例えばSLE若しくはMGが発現する分子に特異的な抗体の活性に起因するところが大きい。このような疾患では、当該自己抗原に対する進行中の抗体媒介(即ち、Th2型)免疫応答を、細胞性(即ち、Th1型)免疫応答へ誘導することが望ましいこともある。或いは、当該自己免疫疾患に罹ってはいないが、罹り易いと疑われる対象において、適当な自己抗原に対してTh1応答を予防的に誘発することにより、自己抗原に対するTh2応答の開始を予防し、又はその応答レベルを低下させることが望ましいこともある。所望の自己抗原には、限定はしないが、(a)SLEに関しては、Smithタンパク質、RNPリボ核タンパク質、並びにSS−A及びSS−Bタンパク質と、(b)MGに関しては、アセチルコリン受容体とが挙げられる。1又は複数種の自己免疫応答に関与する他の種々の抗原の例には、例えば、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、テストステロン、成長ホルモン、プロラクチン及び他のホルモンなどの内因性ホルモンが挙げられる。
【0049】
自己免疫疾患、アレルギー及び移植片拒絶に関与する抗原は、本発明の組成物及び方法において使用することができる。以下の自己免疫疾患又は障害のいずれか1又は複数に関与する抗原は、本発明において使用することができる。即ち、糖尿病、真性糖尿病、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎を含む)、多発性硬化症、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎及び湿疹性皮膚炎を含む)、乾癬症、ショーグレン症候群に続発する乾性角結膜炎を含むショーグレン症候群、円形脱毛症、節足動物虫刺され反応によるアレルギー応答、クローン病、アフター性潰瘍、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、潰瘍性大腸炎、喘息、アレルギー性喘息、皮膚エリテマトーデス、強皮症、膣炎、直腸炎、薬疹、ハンセン病反転反応、癩性結節性紅斑、自己免疫性ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳症、特発性両側性進行性感音難聴、再生不良性貧血、真正赤血球性貧血、特発性血小板減少、多発軟骨炎、ウェゲナー肉芽腫症、慢性活動性肝炎、スティーブンス・ジョンソン症候群、特発性スプルー、扁平苔癬、クローン病、グレーブス眼球症、サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変、後部ブドウ膜炎、及び間質性肺線維症である。自己免疫疾患に関与する抗原の例には、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65)、自然DNA、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、アセチルコリン受容体成分、サイログロブリン、及び甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体が挙げられる。アレルギーに関与する抗原の例には、杉花粉抗原、ブタクサ花粉抗原、ホソムギ花粉抗原などの花粉抗原、チリダニ抗原及びネコ抗原などの動物由来抗原、組織適合性抗原、並びにペニシリン及び他の治療薬が挙げられる。移植片拒絶に関与する抗原の例には、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓、及び神経の移植片成分などの、移植片受容者に移植される移植片の抗原性成分が挙げられる。この抗原は、自己免疫疾患の治療に有用な改変ペプチドリガンドの場合もある。
【0050】
本明細書で使用する場合、用語「エピトープ(複数可)」とは、病原性DNA又はRNAがコードする多数の病原性ポリペプチドのいずれか内にあるエピトープに類似の一次、二次又は三次構造を含む、ペプチド前記又はタンパク質抗原を指す。それらは一般的に、前記ポリペプチドに対するモノクローナル又はポリクローナル抗体が、前記ペプチド抗原又はタンパク質抗原に結合、反応するか、又はそれ以外の方法でその抗原を認識する程度に類似している。各種の免疫アッセイ法、例えば、すべて当業者に公知のウェスタンブロット、ELISA、RIAなどが、このような抗体と共に使用し得る。ワクチンでの使用に適した病原性エピトープ及び/又はそれらの機能的等価物の同定は、本発明の一部である。分離し、同定後は、機能的等価物を容易に取得し得る。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4554101号明細書中で教示され、心親水性に基づいてアミノ酸配列からのエピトープの同定及び調製を教示するHoppの方法を採用してもよい。エピトープコア配列を同定するために、他の数件の論文に記載の方法、及びそれらに基づくソフトウェアプログラムも使用することができる(例えば、Jameson and Wolf, 1988;Wolf et al., 1988;米国特許第4554101号明細書を参照されたい)。次いで、こうした「エピトープコア配列」のアミノ酸配列は、ペプチド合成、組換え技術のいずれかを適用することにより、ペプチド中に容易に取り込み得る。
【0051】
本明細書で使用する場合、用語「プロモーター」とは、転写の開始及び速度を制御する核酸配列の一領域をなす制御配列を指す。プロモーターは、RNAポリメラーゼ及び他の転写因子等の、調節性のタンパク質及び分子が結合し得る遺伝要素を含有することもある。「作動的に配置された」、「作動的に連結した」及び「転写制御下にある」という語句は、プロモーターが、核酸配列(即ちORF)に関して、その配列の転写開始及び/又は発現を制御するために、適正な機能的位置及び/又は方向性を取っていることを意味する。プロモーターは、核酸配列の転写活性化に関与するシス作用性調節配列を指す「エンハンサー」とコンジュゲートして使用されることも、そうでないこともある。本発明と共に使用し得るプロモーター及び/又はエンハンサーのリストは、例えば、関連する記述及び各表が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6410241号明細書に記載されている。
【0052】
本明細書で使用する場合、用語「細胞」、「細胞系」及び「細胞培養物」は、互換的に使用し得る。こうした用語はすべて、インビボ、エクスビボ又はインビトロのあらゆる後世代である子孫も包含する。すべての子孫は、意図的又は偶発的な変異のために同一ではないこともあることが理解される。異種の核酸配列の発現に関しては、「宿主細胞」とは、原核又は真核細胞を指し、本発明のrAbタンパク質ベクターを用いて送達されるようなベクターがコードする、異種遺伝子を発現できる任意の形質転換可能な生物を包含する。宿主細胞は、ベクターの受容細胞として使用でき、これまでそのように使用されてきた。宿主細胞は、本明細書に開示するような抗原を発現する外因性核酸を、宿主細胞に移入又は導入する過程を指す「トランスフェクション」又は「形質転換」を受け得る。形質転換された細胞には、一次対象細胞及びその子孫が含まれる。
【0053】
活性成分として本発明の抗原をコードする核酸を含んだワクチン組成物の製剤は、溶液、懸濁液いずれかの注射剤として調製し得るが、感染前の液中溶解又は懸濁に適した固形も、調製することができる。該製剤は、乳化してもよく、リポソーム中に封入してもよい。免疫原性活性成分は、薬学的に許容され、その活性成分と適合する担体と混合することがしばしばある。
【0054】
用語「薬学的に許容される担体」とは、投与される対象においてアレルギー反応又は他の有害作用を起こさない担体を指す。薬学的に許容される適切な担体には、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、及びそれらの組合せが挙げられる。それに加え、所望であれば、ワクチンは、湿潤剤若しくは乳化剤、pH緩衝剤、及び/又はワクチンの有効性を高めるアジュバントなどの少量の補助物質を含有することができる。有効になり得るアジュバントの例には、それだけに限らないが、水酸化アルミニウム、N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチルノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン、MTP−PE、並びに細菌から抽出した3成分、モノホスホリルリピドA、トレハロースジミコレート及び細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を2%スクワレン/Tween 80乳濁液中に含有するRIBIが挙げられる。アジュバントの他の例には、DDA(臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム)、フロイントの完全及び不完全アジュバント、並びにQuilAが挙げられる。それに加え、リンホカイン(例えば、IFN−γ、IL−2及びIL−12)又はポリI:Cなどの合成IFN−γ誘導因子などの免疫調節物質も、本明細書に記載のアジュバントと併用することができる。
【0055】
医薬品は、本発明中に記載するように、血漿リポタンパク質上に存在するアポリポタンパク質の特異的なDNA結合部位に結合する、特定のヌクレオチド配列を単一又は複数のコピーで有する裸ポリヌクレオチドを含み得る。このポリヌクレオチドは、生物活性ペプチド、アンチセンスRNA又はリボザイムをコードすることもあり、生理学的に許容される投与形態で与えられる。本発明から生じ得る別の医薬品は、本明細書に記載の手順に従って、患者の血液又は他の供給源から単離した高精製度の血漿リポタンパク質分画と、血漿リポタンパク質上に存在するアポリポタンパク質の特異的なDNA結合部位に結合する、特定のヌクレオチド配列を単一又は複数のコピーで含有する、該精製リポタンパク質分画に予め結合させたポリヌクレオチドとを生理学的に許容される投与形態で含み得る。
【0056】
さらに別の医薬品は、特定のヌクレオチド配列を単一又は複数のコピーで含有するポリヌクレオチドに予め結合させた、特異的なDNA結合モチーフを単一又は複数のコピーで含有する組換えアポリポタンパク質断片を含んだ、高精製度の血漿リポタンパク質分画を生理学的に許容される投与形態で含み得る。更に別の医薬品は、特定のヌクレオチド配列を単一又は複数のコピーで含有するポリヌクレオチドに予め結合させた、特異的なDNA結合モチーフを単一又は複数のコピーで含有する組換えアポリポタンパク質断片を含んだ、高精製度の血漿リポタンパク質分画を生理学的に許容される投与形態で含み得る。
【0057】
投与すべき用量は、治療する対象の体重及び健康状態、並びに投与経路及び治療頻度に大いに依存する。高精製度のリポタンパク質分画に予め結合させた該裸ポリヌクレオチドを含む医薬組成物は、ポリヌクレオチド1μg〜1mg及びタンパク質1μg〜100mgの範囲の量で投与し得る。
【0058】
患者に対する治療用ウイルス粒子の投与は、そのベクターの毒性が仮にあればそれを考慮して、化学療法剤を投与するための一般手順に従うことになろう。必要な場合、治療サイクルを繰り返すことになると予想される。各種の標準療法並びに外科的介入を、上記遺伝子療法と組み合わせて適用し得ることも想定される。
【0059】
遺伝子療法の臨床的適用を想定する場合、意図した適用に適した医薬組成物として、該複合体を調製することが必要となろう。一般に、これには、発熱物質、並びに人間や動物に有害な恐れがある他の任意の不純物を本質的に含まない医薬組成物が伴われる。複合体を安定化させ、複合体の標的細胞による取込みを可能とするために、適当な塩及び緩衝剤を使用することも一般に望まれる。
【0060】
本発明の水性組成物は、薬学的に許容される担体又は水性媒体中に溶解又は分散された有効量の化合物を含み得る。このような組成物は、接種液と呼ぶこともできる。医薬活性物質に対するこのような媒体及び作用剤の使用は、当技術分野で周知である。従来の任意の媒体又は作用剤が、活性成分と適合しない場合を除き、治療組成物におけるその使用が想定される。補助的な活性成分も、組成物中に取り込むことができる。本発明の組成物は、古典的な医薬製剤を包含し得る。分散液は、グリセロール、液状ポリエチレングリコール及びそれらの混合物、並びに油中でも調製することができる。保存及び使用の通常の条件下で、これらの製剤は、微生物の増殖を防止するために防腐剤を含有している。
【0061】
疾患状態
治療する特定の疾患に応じて、本発明による治療組成物の投与は、最大の(又は、いくつかの症例では最小の)免疫応答を受ける部位へ抗原の送達量を最大化させるために、標的組織がその経路を介して利用できる限り、任意の経路を介してよい。投与は、一般に、同所的な皮内、皮下、筋肉内、腹腔内又は静脈内の注射によるものとなる。他の送達域には、経口、鼻腔、口腔、直腸、膣又は局所が挙げられる。局所投与は、皮膚癌の治療には特に有利となる。このような組成物は、生理学的に許容される担体、緩衝剤又は他の賦形剤を含んだ、薬学的に許容される組成物として通常投与される。
【0062】
本発明のワクチン又は治療組成物は、非経口的に、例えば、皮下又は筋肉内いずれかの注射により投与し得る。他の投与方式に適した追加の製剤には、坐剤、及び一部の症例では、経口製剤、又はエアロゾルとしての分配に適した製剤が含まれる。経口製剤の場合、アジュバントを用いたT細胞サブセットの操作、抗原パッケージング、又は個々のサイトカインの各種製剤への添加により、免疫応答が最適化された改良型経口ワクチンを生じる。坐剤の場合、従来の結合剤及び担体には、例えば、ポリアルキレングリコール又はトリグリセリドを含み得る。このような坐剤は、活性成分を0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の範囲で含有する混合物から形成し得る。経口製剤は、例えば、各医薬等級のマンニトール、ラクトース、澱粉ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの通常使用される賦形剤を含む。こうした組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放製剤又は散剤の形態を取り、活性成分を10%〜95%、好ましくは25%〜70%含有する。
【0063】
本発明の抗原コード核酸は、中性又は塩形態としてワクチン又は治療組成物に製剤化し得る。薬学的に許容される塩には、酸付加塩(ペプチドの遊離アミノ基と形成される)が含まれ、それらは、例えば塩酸やリン酸などの無機酸、又は酢酸、蓚酸、酒石酸、マレイン酸などの有機酸で形成される。遊離カルボキシル基と形成される塩も、例えば、水酸化ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム又は第二鉄の各水酸化物などの無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から誘導することができる。
【0064】
ワクチン又は治療組成物は、投与製剤に合致した方法、並びに予防的及び/又は治療的に有効と見込まれるような量で投与される。投与すべき量は、例えば、対象の免疫系の抗体合成能を含めた治療される対象、及び所望する防御又は治療の程度に依存する。適切な用量範囲は、約1mg〜300mgの範囲、好ましくは約10mg〜50mgの範囲などの約0.1mg〜1000mgの範囲のワクチン接種当たり、活性成分がほぼ数百μg程度である。初回投与及び追加抗原注射に対する適切な投与計画も変化し得るが、初回投与に続き、後続の接種又は他の投与を行うのが代表的である。投与が必要な活性成分の厳密な量は、担当医の判断次第であり、対象毎に特異な量となり得る。本発明の核酸分子又は融合ポリペプチドの有効量が、とりわけ、投与スケジュール、投与する抗原の単位用量、核酸分子又は融合ポリペプチドを他の治療剤と組み合わせて投与するか否か、受容者の免疫状態及び健康状態、並びに特定の核酸分子又は融合ポリペプチドの治療活性に依存することは、当業者には明らかであろう。
【0065】
該組成物は、単回用量スケジュール又は多回用量スケジュールで投与することができる。多回用量スケジュールは、ワクチン接種の一次クールが、例えば1〜10回の個別用量を含み、続いて免疫応答の維持及び/又は強化に必要なその後の間隔で、例えば第2用量に対して1〜4カ月に、必要であれば数カ月後にその後の用量(複数も)に対して、他の用量を投与し得るスケジュールである。1〜5年、普通は3年の間隔での周期的な追加抗原注射が、防御免疫の所望レベルを維持するために望ましい。免疫接種の期間後、末梢血リンパ球(PBL)をESAT6又はST−CFと共培養するインビトロ増殖アッセイ、及び初回抗原刺激を受けたリンパ球から放出されるIFN−γ量の測定を行うことができる。該アッセイは、放射性核種、酵素、蛍光標識などの従来の標識を用いて行い得る。こうした技法は、当業者に公知であり、関連部分が参照により組み込まれる米国特許第3791932号、第4174384号及び第3949064号の各明細書に見出すことができる。
【0066】
モジュールrAb担体、並びに/或いはコンジュゲートrAb担体−(コヘション/ドッケリン及び/又はドッケリン−コヒーシン)−抗原複合体(rAb−DC/DC−抗原ワクチン)は、核酸ベクターが使用されるか否か、最終的な精製済みタンパク質又は最終的なワクチン形態が使用されるか否かに応じて、1又は複数の「単位用量」で与え得る。単位用量は、投与、即ち適当な経路及び治療計画に伴って所望の応答を生じると計算された、治療組成物の所定量を含有するものと定義される。投与すべき量、並びに特定の経路及び製剤は、臨床技術者の技術に入る。治療を受ける対象も、特に、対象の免疫系の状態及び所望の防御について評価を受け得る。単位用量は、単回注射として投与する必要はなく、設定した期間に亘る連続注入を包含し得る。本発明の単位用量は、DNA/kg(又はタンパク質/kg)体重に換算して都合よく表現し得るが、DNA又はタンパク質/kg体重で約0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.5、1、10、50、100、1000mg、又はそれより多量の間の範囲が投与される。同様に、rAb−DC/DC−抗原ワクチンの送達量は、約0.2〜約8.0mg/kg体重で変化することができる。したがって、特定の実施形態では、ワクチン0.4mg、0.5mg、0.8mg、1.0mg、1.5mg、2.0mg、2.5mg、3.0mg、4.0mg、5.0mg、5.5mg、6.0mg、6.5mg、7.0mg及び7.5mgをインビボで個体へ送達し得る。投与すべきrAb−DC/DC−抗原ワクチンの用量は、治療される対象の体重及び体調、並びに投与経路及び治療頻度に大いに左右される。リポソーム又はウイルス送達ベクターに予め結合した裸ポリヌクレオチドを含む医薬組成物は、ポリヌクレオチド1μg〜1mg乃至タンパク質1μg〜100mgの範囲の量で投与し得る。したがって、特定の組成物は、ポリヌクレオチド又はタンパク質約1μg、5μg、10μg、20μg、30μg、40μg、50μg、60μg、70μg、80μg、100μg、150μg、200μg、250μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μg又は1000μgの間を、独立に1μg、5μg、10μg、20μg、30μg、40μg、50μg、60μg、70μg、80μg、100μg、150μg、200μg、250μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μg、1mg、1.5mg、5mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg又は100mgのベクターに結合させた状態で含む。
【0067】
本発明を、Flu抗原の標的となった樹状細胞によるヒトFlu特異的T細胞の免疫刺激を測定するインビトロ細胞系で試験した。本明細書に示す結果は、この系でそれ自体は無効である抗原の用量における、このような抗原特異細胞の特異的増殖を示している。
【0068】
本発明は、例えば、リシン、炭疽毒素及びブドウ球菌B型エンテロトキシン由来の防御抗原と複合した組換えヒト化mAb(ヒト樹状細胞の特異的受容体へ導かれる)である、モジュールrAb担体を作製するためにも使用し得る。この構成体の潜在的市場は、全軍人のワクチン接種、及びこうした作用剤が関連する任意の生物性脅威に応じて人口密集地へ投与するために蓄えられる貯蔵ワクチンである。本発明は、人間、動物双方で使用するためのワクチン一般の設計に対して、広い用途を有する。
【0069】
本発明の商業的一用途は、防御抗原をコードすることが知られている、又は推測されている抗原に、Ab重鎖を介して融合された組換えヒト化mAb(ヒト樹状細胞の特異的受容体DCIRへ導かれる)である。こうしたものには、各種の作用剤、即ちインフルエンザH5N1からのヘマグルチニン;リシン、炭疽毒素及びブドウ球菌B型エンテロトキシン由来の弱毒化毒素からのHIV gag;メラノーマ抗原からの抗原ペプチドの「連鎖(string)」などに対する、例えばワクチン接種が挙げられる。この構成体の潜在的市場は、危険に瀕している、又は感染している人々の予防的又は治療的ワクチン接種である。本発明は、人間、動物双方で使用するための、多くの疾患及び癌に対するワクチン接種に対して、広い用途を有する。所望の産業は、医薬及び生物工学の産業である。それに加え、本発明は、組換え抗体の分泌を増強するために特に好ましい配列を同定する方法を記載しているので、抗DCIR抗体の用途を超えた意味を有する。
【0070】
潜在的な治療的又は予防的ワクチン接種剤としての、抗原に融合した操作組換えモノクローナル抗体を作製するための抗DCIR抗体結合領域の適用。H鎖C末端に連結した抗原又は他のタンパク質配列の効率的発現に最も適合するV領域配列を見出すための、同じ結合特異性に対する異なるV領域配列の使用。
【実施例1】
【0071】
同じ組換えヒト化mAbとの複合体中で同時に標的化した多重抗原(MATCHMAB)
想定される治療(この場合はワクチン接種)構成体の1種は、DCターゲティング用ヒト化mAb−抗原融合タンパク質であり、その中の抗体可変領域特異性は、細胞内取込性ヒト樹状細胞受容体に対している。その現状技術は、mAb H鎖のC末端との所望する抗原の融合を操作することである。このパラダイムは、異なる抗原(A1、A2、A3)を同じ証明済みターゲティングmAb主鎖(下図におけるY)に操作し、したがって異なる病原体に対する免疫に1つのmAbの利用を拡張することを可能にすることが明らかである。この概念は、IgGFcのC末端コード領域に末端間で融合した、例えばA1、A2、A3コード領域を操作することにより、更に拡張することができる。
【0072】
本発明は、抗原をターゲティング用mAbに連結するための新たなパラダイムであって、操作した同じヒト化mAbと同時に複合体中で標的指向化した多重抗原(MATCHMAB)へと初めてその概念を拡張するパラダイムを開示した。
【0073】
図1は、従来技術(上部)と、操作・作製した同じヒト化mAbとの複合体中で同時に標的化した多重抗原(MATCHMAB)の例(下部)とを比較している。Yは、抗DCターゲティング用ヒト化mAbを表し、A1、A2、A3は、独立した防御抗原、又は他の任意の所望するタンパク質ドメインであり、C1、C2、C3は、ドッキングドメインD1、D2、D3各々のための特異的な高親和性捕捉ドメインであり、DnAnは、対応するドッキング−抗原融合タンパク質である。各種ドメインは、寸法どおりに描かれてないことに留意されたい。mAb自体は約150kDaであり、Cは約17Daであり、Dは約8kDaであり、Aは変動するが、普通>20kDaである。
【0074】
MATCHMABは、セルロソーム集合体のコヒーシン−ドッケリン配列を使用して、モジュールで非共有結合性のターゲティングmAb−抗原複合体を形成することに基づいている。相対的に小さく、特異的なコヒーシン−ドッケリンタンパク質間の相互作用ドメインは、ターゲティングmAb−抗原複合体の単純でカスタム化された作製を実現することができる。したがって、製造した単一のヒト化mAb(上の表記ではY.C1.C2.C3.Cn)を、多様であるが、厳密に規定された組合せの多重抗原を送達する基礎として、使用することができる。
【0075】
C1.C2.C3.Cnをコードする配列の例は、セルロソームのアンカー用スキャフォルディン(scaffoldin)B前駆体(バクテロイデス・セルロソルベンス(Bacteroides cellulosolvens))の公表配列>gi|50656899|gb|AAT79550.1|から採用される。以下では、青色でリーダー分泌配列を示し、黄色及び灰色が各種のコヒーシンドメインを強調している。赤色領域は、コヒーシンドメインのいくつかを隔てるリンカーである。
【0076】
【表1】


【0077】
コヒーシンドメイン(C)は、ドッケリン(D)と呼ばれる小さなドメイン(例えば56残基)と相互作用をする。こうしたドメインは、二重対称性を有するCa++含有構造であり、様々な親和性(例えば、6E6M、2E7M)で同族性コヒーシンと結合することができる。ドッケリンと多重コヒーシン(スキャフォルディン上に見出されるようなもの)との親和性は、はるかに高くなることができる(例えば、>E9M)。この相互作用は、非共役結合性であり、少なくとも1つのC−D対について明確になっている(構造解析による)。ドッケリンは、異なるドメイン(性質上は酵素)に連結するドメインとなるように設計されており、コヒーシン同士は、線状配列を取って(直接末端間で、又はサイズ多様な(例えば、12、17、25、28、36)柔軟な多PTリンカーで結合されて)機能するように設計されている。特定のドッケリンは、特定のコヒーシンに対して特異性を有することができる(例えば、1細菌種のC−D対は、異種のC−D対と互換し得ないこともある)ことは知られている。この特徴のために、各種D−抗原融合タンパク質と、特異性様々なコヒーシンを含有する組換えmAbとの特異的で厳密な相互作用を保証することが可能になる。
【0078】
実際には、本発明は、文献既知の、自然から新たに閃いた、又はファージディスプレイ技術を用いて新たな特異性を伴って発展した、C−D対を適合させることを含む。後者の技術は、C−D相互作用の親和性を強化する(「成熟させる」)ことが所望であれば、そうするために使用することができる。また、C−D相互作用の反対面(公表されたC−D構造からのモデル作成に基づく)にあるシステイン残基の操作を使用すれば、その相互作用を強めるためにC−D間に共有結合を作ることもできる。さらに、mAb(及び、したがって連結Cドメイン)の二量体性を、親和性強化のために有利に使用することもできる。この実施形態では、例えばD−抗原融合タンパク質を操作して、第2の同一ドッケリンドメイン(D−抗原−D若しくはD−D−抗原)、又はホモ二量化ドメインのいずれかと結合させる。この配置は、ドメイン間のリンカーがもし束縛的でなければ、両Dドメインの同じmAbへの好ましい同時結合が起こり、単一相互作用と比較して安定性が大いに強化される。
【0079】
コヒーシン−ドッケリン複合体の結晶構造(例えば、PNAS 2003, 13809-13814, Cellulosome assembly revealed by the crystal structure of the cohesin-dockerin complex, Ana L. Carvalho*, Fernando M. V. Dias, Jose A. M. Prates, Tibor Nagy, Harry J. Gilbert, Gideon J. Davies, Luis M. A. Ferreira, Maria J. Romao and Carlos M. G. A. Fonte を参照されたい)に基づけば、一実施形態が抗原−ドッケリン融合タンパク質(即ち、ドッケリンのN末端に融合した抗原)であることは明白である。しかし、スキャフォルディン内にあるコヒーシンドメインの組織の構造及び性質の双方から、コヒーシン同士は、スペーサー配列がない場合でも末端間で融合できることは明白である。更に、コヒーシン及びドッケリンドメインの小型版を操作するために、十分に説明のなされた技法が利用できることも明白である(例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA Vol. 94, pp. 10080-10085, September 1997. Structural mimicry of a native protein by a minimized binding domain. Melissa A. Starovasnik, Andrew C. Braisted, And James A. Wellsを参照されたい)。
【0080】
本明細書では、リンカー配列は、豊富なSTから生じるO連結グリコシル化の傾向を有することが認識されている。C及びD両ドメインは、潜在的なN連結部位を有することもできる。こうした特徴は、哺乳動物細胞に発現した操作mAbの溶解度を糖鎖で修飾することにより高める上で有利になり得る。当然ながら、Cドメインのグリコシル化の結果は、機能的(同系Dとの結合)に確認し、必要ならば、部位特異的変異誘発によって修正する必要がある。本発明の興味深い特徴は、D−Aが、最良であることが知られている任意の系において発現できることである。例えば、腫瘍抗原MART1は、膜タンパク質であり、大腸菌封入体を介して高収率に最良に調製される。mAbに直接融合した抗原を使用する図式は、哺乳動物細胞での発現に適合した抗原に限定される。
【0081】
本発明の別の実施形態は、尾部間で結合した二重特異性mAbを作製するためのD−C相互作用の使用である。図2は、二重特異性mAbを形成するための本発明の使用を示す。mAb1(黒色)はC1のC末端と共に発現し、mAb2(マゼンタ)はD1のC末端と共に発現している。mAb1及びmAb2を等モル混合すると、二重特異性の1:1複合体が生じることになる。各mAb分子はC又はDを2モル当量含有する(mAb自体は二量体構造である)ので、二重特異性mAbは、同時進行の2つのC−D相互作用によって大いに安定化される。殊に、低い方の(mAb)では、これが最も安定な配置となる。
【実施例2】
【0082】
抗体と、コヒーシン/ドッケリンドメイン及び抗原との組合せ
実施例2は、特定のコヒーシン及びドッケリンドメインが、特異的で高親和性のコヒーシン−ドッケリンタンパク質間相互作用を維持しながら、融合タンパク質として哺乳動物細胞から首尾よく、効率的に分泌できることを示す。広範なコヒーシン−ドッケリン文献は、このような融合タンパク質がこの機能性を有するはずであるとの予想を教示しているが、哺乳動物分泌系におけるこのような融合タンパク質の産生については記載していない。科学知識の現状からすれば、首尾よい分泌の法則(シグナルペプチドなどの特徴以外に)が十分に確立されていないので、この発見を予測することはできない。更に、コヒーシンリンカー領域は、天然の細菌ではグリコシル化されていることが知られており、コヒーシン及びドッケリンドメインは、予測されたグリコシル化部位を含有している。このことは、哺乳動物細胞からの分泌に実際に有利になり得るが、「非天然」グリコシル化が、コヒーシン−ドッケリン相互作用を混乱させるか否かは、不明である。
【0083】
各種商業用途を対象としたコヒーシン−ドッケリン相互作用が公表されてきたが、本発明は、想定された制御構築酵素用途と無関係な特異的タンパク質複合体の構築を中心に構成した、この相互作用に対してこれまで実現されたことのない利用に基づいている。
【0084】
本発明は、多様なセルロース分解微生物からのすべてのコヒーシン−ドッケリン配列の使用を包含するが、微生物クロストリジウム・サーモセラムからの特定のコヒーシン及びドッケリン並びにリンカー配列の適用について記載する。例えば、表1に記載の配列は、クロストリジウム・サーモセラムのドッケリン配列に、C末端コドンで連結されたヒトIgG4のH鎖(rAb.docと呼ぶ)をコードする。rAb.docタンパク質の他の実施形態は、同様に表2に記載されており、こうしたタンパク質は、様々なH鎖構成体をコードするベクターへ、DNA断片としてのドッケリンコード領域を単に移入するだけで作製される。
【0085】
表1は、rAB−pIRES2(hIgG4H−ドッケリン)又はC52の核酸配列及びアミノ酸配列を示す。ヒトIgG4H.doc融合タンパク質のDNA(全コード領域)及びアミノ酸配列(予測される分泌産物)が、以下に示されている。クロストリジウム・サーモセラムのcelDから得たドッケリンドメインは、黄色で強調し、H鎖及びドッケリンの結合配列には下線を引いてある。ドッケリンドメイン内の高度に予測されるN連結グリコシル化部位は、赤色で強調している。
【0086】
【表2】


【0087】
表2は、rAB−pIRES2(m抗DCIR2C9H−LV−hIgG4H−C−ドッケリン)又はC82の核酸配列及びアミノ酸配列を示す。DNA(全コード領域)及びアミノ酸配列(予測される分泌産物)が、以下に示されている。ドッケリンドメインは、黄色で強調し、H鎖及びドッケリンの結合配列には下線を引いてある。IgG可変領域は、青色で強調している。ドッケリンドメイン内の高度に予測されるN連結グリコシル化部位は、赤色で強調している。
【0088】
【表3】


【0089】
表3は、rAB−(m抗ASGPR_49C11_7H−SLAML−V−hIgG4H−C−ドッケリン)又はC153の核酸配列及びアミノ酸配列を示す。DNA(全コード領域)及びアミノ酸配列(予測される分泌産物)が、以下に示されている。ドッケリンドメインは、黄色で強調し、H鎖及びドッケリンの結合配列には下線を引いてある。IgG可変領域は、青色で強調している。ドッケリンドメイン内の高度に予測されるN連結グリコシル化部位は、赤色で強調している。
【0090】
【表4】


【0091】
表4は、rAB−pIRES2(m抗DC−SIGNL16E7H−LV−hIgG4H−C−ドッケリン)又はC92の核酸配列及びアミノ酸配列を示す。DNA(全コード領域)及びアミノ酸配列(予測される分泌産物)が、以下に示されている。ドッケリンドメインは、黄色で強調し、H鎖及びドッケリンの結合配列には下線を引いてある。IgG可変領域は、青色で強調している。ドッケリンドメイン内の高度に予測されるN連結グリコシル化部位は、赤色で強調している。
【0092】
【表5】


【0093】
このようなrAb.doc IgG H鎖タンパク質をコードする哺乳動物発現プラスミドは、分子生物学の標準技法を用いて創製され、pIRES2−DsRed2(BD Biosciences)などの市販されている発現プラスミドベクターに基づくことができる。分泌rAb.docを産生するために、哺乳動物細胞に、この発現プラスミド、及び相補的なIgG L鎖をコードする発現プラスミドを同時にトランスフェクションする(表3に例示されている)。哺乳動物細胞、トランスフェクション試薬及び培地に関しては、標準的な手順(FreeStyle(商標)293 Expression System, Invitrogen)を用いる。トランスフェクション済み細胞は3〜7日間培養し、培養上清を遠心分離により採集し、ろ過で清澄にし、rAb.docタンパク質を、カラム製造業者(GE Pharmacia)の手順を用いたプロテインGアフィニティクロマトグラフィーで精製する。
【0094】
図3は、クーマシーブリリアントブルーで染色する還元的SDS.PAGEによる、典型的な分泌rAb.doc産物の分析を示す。この分析は、rAb.docが、分泌H+L鎖二量体として効率的に産生されていることを示す。H鎖における不均一性は、ドッケリン配列内の高度に予測される(ポテンシャル0.6426、NetNGlyc 1.0 Server - Technical University of Denmark)部位におけるN連結グリコシル化を恐らく反映している。
【0095】
表5は、rAB−pIRES2(m抗DC−SIGNL16E7K−LV−hIgGK−C)又はC73の核酸配列及びアミノ酸配列を示す。m抗DC−SIGNL16E7ハイブリドーマのV領域(青色で強調)をヒトC領域(黄色で強調)と融合したIgGκタンパク質のDNA(全コード領域)及びアミノ酸配列(予測される分泌産物)。
【0096】
【表6】

【0097】
図3は、還元的SDS.PAGE及びクーマシーブリリアントブルー染色で分析した、プロテインGアフィニティ精製後の分泌rAbタンパク質を示す。レーンは左から右へ進む。
【0098】
本発明は、グリコシル化に伴うことがよく知られている望ましい溶解性及び薬物動態特性を、哺乳動物細胞が分泌するドッケリン融合タンパク質に付与している可能性がある、このグリコシル化部位の意外な存在及び使用を具体化している。図2は、同じIgG H及びL配列を用いたrAb.抗原融合タンパク質が、分泌効率において著しく異なり得ることを示している。配置した両方の例において、rAb.doc構成体は、通常発現が非常に不足するインフルエンザHA5配列融合rAbと比較して、良好に発現している。本発明は、結合しているrAb構成体の分泌をさほど阻害しないドッケリンドメインの意外な能力も具体化している。更に、本発明は、rAb特異抗原結合領域の機能性を阻害しないドッケリンドメインの特性も具体化している。この特性は、抗LOX1_15C4 rAbタンパク質と抗LOX1_15C4.docとの間における、IgFc反応性及びLOX−1反応性間の一致を示す図5に例示されている。
【0099】
図4A及び4Bは、各種rAb.融合タンパク質の分泌量に関する抗ヒトIgFc ELISAによる測定を示す。H鎖及びL鎖発現プラスミドを各々2.5μg、293F細胞中にトランスフェクトし、3日間の培養後に上清試料の2倍希釈液を検定した。Y軸の値は、任意のHRP活性である。
【0100】
図5は、分泌タンパク質の抗LOX1_15C4 rAb(青色記号)及び抗LOX1_15C4.doc rAb(赤色記号)に関する、抗ヒトIgFc ELISA(HRP活性)及びLOX−1.アルカリホスファターゼ結合(AP活性)による測定を示す。H鎖及びL鎖発現プラスミド合計5μgを相異なる比率で293F細胞中にトランスフェクトし、3日間の培養後に上清試料を検定した。
【0101】
本発明は、hIgG4及びその近縁誘導体以外の融合タンパク質に関して、ドッケリンドメインが効率的で機能的に発現される特性を具体化している。例えば、表6は、マウスIgG2b H鎖の融合タンパク質に基づくrAb.doc構成体の配列を示している。
【0102】
表6は、rAB−pCMV(mIgG2bH−ドッケリン)又はC19の核酸配列及びアミノ酸配列を示す。DNA(全コード領域)及びアミノ酸配列(予測される分泌産物)が、示されている。ドッケリンドメインは、黄色で強調し、H鎖及びドッケリンの結合配列には下線を引いてある。ドッケリンドメイン内の高度に予測されるN連結グリコシル化部位は、赤色で強調している。
【0103】
【表7】


【0104】
図6は、mIgGκ発現プラスミドと同時トランスフェクションをした際、rAB−pCMV(mIgG2bH−ドッケリン)プラスミドが、rAB−mIgG2b.ドッケリン融合タンパク質の効率的分泌を指示することを示している。図6では、還元的SDS.PAGE及びクーマシーブリリアントブルー染色で分析した、トランスフェクション済み293F細胞から分泌された、プロテインGアフィニティ精製後のrAbタンパク質。レーン11及び12は、mIgG2b.doc産物を示す。
【0105】
上に詳述したrAb.docの使用発明は、ドッケリン−コヒーシン相互作用の特異性及び強靭性によるrAbと抗原、毒素、活性化剤、酵素いずれかとの複合体の会合である。表5は、コヒーシン.アルカリホスファターゼ融合タンパク質(coh.AP)の形態をした本発明の一実施形態を示す。2個のコヒーシンドメインを含有するアルカリホスファターゼ融合タンパク質(coh.coh.AP)などの追加の実施形態も記載しており、他のタンパク質として、ヒト前立腺特異抗原(coh.hPSA)の成熟配列などの他の配列、及びA型インフルエンザHA5のHA1ドメイン(coh.Flu HA5−1)に融合した単一コヒーシンドメインなどは、本発明の一般性の例である。
【0106】
表7は、Mam−pCDM8(コヒーシン−SLAML−AP−6xHis)又はC16の核酸配列及びアミノ酸配列を示す。DNA(全コード領域)及びアミノ酸配列(予測される分泌産物)が、以下に示されている。コヒーシンドメインは、黄色で強調し、コヒーシン及びアルカリホスファターゼの結合配列には下線を引いてある。コヒーシンドメイン内及びコヒーシンドメインに対して末尾にあるリンカー内の高度に予測される(Gスコア>0.5、NetOGlyc 3.1 Server - Technical University of Denmark)O連結グリコシル化部位は、赤色で強調している。灰色で強調した残基は、金属アフィニティクロマトグラフィーによる精製を促進するためのC末端Hisタグである。
【0107】
【表8】


【0108】
表8は、Mam−pCDM8(コヒーシン−コヒーシン−SLAML−AP−6xHis)又はC17の核酸配列及びアミノ酸配列を示す。DNA(全コード領域)及びアミノ酸配列(予測される分泌産物)が、以下に示されている。コヒーシンドメインは、黄色で強調し、コヒーシン及びアルカリホスファターゼの結合配列には下線を引いてある。コヒーシンドメインに対して末尾にあるリンカー内の高度に予測されるO連結グリコシル化部位は、単一の高度に予測されるN連結グリコシル化部位(NPT)同様に赤色で強調している。灰色で強調した残基は、金属アフィニティクロマトグラフィーによる精製を促進するためのC末端Hisタグである。
【0109】
【表9】


【0110】
表9は、Mam−pCDM8(SLAML−コヒーシン−hPSA)又はC149の核酸配列及びアミノ酸配列を示す。DNA(全コード領域)及びアミノ酸配列(予測される分泌産物)が、以下に示されている。コヒーシンドメインは、黄色で強調し、コヒーシン及びhPSAの結合配列には下線を引いてある。コヒーシンドメインに対して末尾にあるリンカー内の高度に予測されるO連結グリコシル化部位、及びコヒーシンドメイン内の単一の高度に予測されるN連結グリコシル化部位(NPT)は、赤色で強調している。
【0111】
【表10】


【0112】
表10は、Mam−pCDM8(SLAML−コヒーシン−FluHA5−1−6xHis)又はC24の核酸配列及びアミノ酸配列を示す。DNA(全コード領域)及びアミノ酸配列(予測される分泌産物)が、以下に示されている。コヒーシンドメインは、黄色で強調し、コヒーシン及びFlu HA5−1の結合配列には下線を引いてある。コヒーシンドメインに対して末尾にあるリンカー内の高度に予測されるO連結グリコシル化部位、及びコヒーシンドメイン内の単一の高度に予測されるN連結グリコシル化部位は、赤色で強調している。灰色で強調した残基は、金属アフィニティクロマトグラフィーによる精製を促進するためのC末端Hisタグである。
【0113】
【表11】


【0114】
上記のrAb.doc構築物と同様に、本発明は、機能的なコヒーシン融合タンパク質(本明細書ではcoh.融合体と呼ぶ)の哺乳動物細胞からの効率的分泌を具体化している。コヒーシンドメインが、ドッケリン結合機能を保持しながら非常に首尾よく分泌できることは明確ではなかった。図5は、分泌coh.アルカリホスファターゼ(coh.AP)を含有する上清が、プラスチック表面上に固定化したrAb.docタンパク質に特異的に結合することを明示している。
【0115】
図7A及び7Bは、分泌されるアルカリホスファターゼ(AP)又はcoh.APをコードする発現プラスミドが、トランスフェクション済み293F細胞からの機能性タンパク質の分泌を指示したことを示している。3日間の培養後、上清を採集した後、96ウェルマイクロタイタープレートに結合したrAb.doc(上部パネル)又はrAB(下部パネル)のいずれか0.25μgに結合する能力について検定した。1時間のインキュベーション後、プレートを洗浄し、発色性AP基質で現像した。
【0116】
本発明は、コヒーシン.ドッケリン相互作用に基づく特異的タンパク質複合体の構築の応用を具体化している。特異的な抗体.抗原複合体は、プロテインA又はプロテインGのIgFc結合ドメインの確立した相互作用を用いて構築することもできる。本発明は、例えば、プロテインGのIgGとの相互作用と比較して、著しく優れた複合体形成を起こすコヒーシン.ドッケリン相互作用の独特な特性を具体化している。図6及び7では、コヒーシン.AP(Coh.APと呼ぶ)タンパク質の相互作用が、rAb.Docタンパク質に特異的であることが示されている。
【0117】
図8A及び8Bは、分泌G.APを含有する上清の各種希釈液を、固定化したmIgG2a、mIgG2b又はmIgG2b系rAb.docを0.25μg含有するマイクロタイターウェル中で、1時間インキュベートしたことを示している。洗浄後、発色性AP基質を用いて結合AP活性を現像した。rAb.docが、proG.AP構築物中に使用されている特定のプロテインGドメインと相互作用しないmIgG2bのアイソタイプ変異体であったので、このproG.APは、rAb.docと結合しなかった。図8Bは、同一であるが、分泌Coh.APを含有する上清の各希釈液を用いた試験を示す。Coh.APはrAb.docだけに結合し、coh.doc相互作用の特異性をやはり示している。
【0118】
図9は、proG.IgGFc相互作用に比較して、coh.doc相互作用に基づいて予め構築した複合体の極めて優れた安定性を示す。図9は、一定量のproG.AP又はcoh.AP又はcoh2.AP(0.1μg)と、固定化したmIgG2b又はrAb.doc(0.25μg)との複合体の形成が、マイクロタイタープレート中で1時間インキュベーションすることにより構築されたことを示している。様々な時間に可溶性のmIgG2b又はrAb.docを20倍過剰に添加し、インキュベーションを様々な時間の間継続した。次いで、プレートを洗浄し、結合AP活性を発色性AP基質の添加によって明らかにした。
【0119】
この例は、血清を含有する環境(例えば、組織培養培地及びインビボでの投与)におけるこのようなcoh.doc複合体の使用を示している。図10は、proG.IgGFc複合体と比較した、このような環境におけるcoh.doc複合体の甚大な優位性を示す。用いた条件下で、結合proG.APを完全に置き換えるのに、Ig約15μg/mlで十分であったが、coh.APは、純粋な血清(15mg/mlのIg)の存在下でも、rAb.docに安定に結合したままであった。
【0120】
図10は、一定量のproG.AP又はcoh.AP(0.1μg)と、固定化したmIgG2b又はrAb.doc(0.25μg)との複合体の形成が、マイクロタイタープレート中で1時間インキュベーションすることにより構築されたことを示している。ヒト血清の様々な希釈液を添加し、インキュベーションを4時間の間継続した。次いで、プレートを洗浄し、結合AP活性を発色性AP基質の添加によって明らかにした。
【0121】
本発明は、完全な複合体形成を保証し、coh.融合タンパク質構成体の精製工程と同時に進めることができる産生工程を可能にする、coh.doc相互作用の特別な利用も具体化している。本発明は、図11及び12に例示され、これらの図は、プロテインGアフィニティクロマトグラフィーによる培養上清からのrAb.docの逐次捕捉、続いてプロテインG:rAb.docカラムによる培養上清からのcoh.抗原の捕捉を経るこのプロセスを例示している。次いで、低pHでの溶出により、純粋なrAb.doc:coh.抗原が放出される。rAb.docよりcoh.抗原が過剰にあれば、十分で完全な複合体が生じるはずである。本発明の関連する実施形態は、過剰の純粋な、又は部分精製されたcoh.融合タンパク質のプロテインG捕捉rAb.docへの適用となる。
【0122】
図11は、rAb.doc上清及びcoh.AP上清を同じプロテインGアフィニティカラムへ逐次適用することにより生成した、rAb.doc:Coh2.AP複合体の還元的対非還元的なSDS.PAGE分析のゲルを示す。レーン2及び4は、Coh2.APがrAb.docで共精製されることを示している。
【0123】
図12は、rAb.doc上清及びcoh.Flu HA5−1上清を同じプロテインGアフィニティカラムへ逐次適用することにより生成した、rAb.doc:Coh.Flu HA5−1複合体の非還元的なSDS.PAGE分析である。左から右へレーン1〜4は、Coh.Flu HA5−1がrAb.docで共精製されることを示している。
【0124】
コヒーシンドメインのよく記載された特徴は、標準的な大腸菌発現系との適合性である。本発明は、哺乳動物分泌系におけるドッケリン融合タンパク質の発現の新規な使用を具体化しており、それは、異なる成分(即ち、coh及びdoc)が異なる系に発現するcoh.doc複合体の形成も包含する。これは、各成分にとって最も好ましい発現系を使用する可能性が得られるので、大きな利点である。例えば、coh.Flu M1発現構築物は、トランスフェクション済み哺乳動物細胞からの分泌産物の合成を効率的に指示することができなかった。しかし、coh.Flu M1は、大腸菌中の可溶タンパク質として非常に効率的に発現された。表6は、この例で用いたcoh.Flu M1の配列を示している。
【0125】
表11は、以下に示す、大腸菌−pET28(コヒーシン−FluM1−6xHis)又はC32の核酸配列及びアミノ酸配列を示す。アミノ酸配列では、コヒーシンドメインが黄色で強調され、コヒーシンとA型インフルエンザM1タンパク質との融合点には下線が引かれている。灰色で強調した残基は、金属アフィニティクロマトグラフィーによる精製を促進するためのC末端Hisタグである。
【0126】
【表12】


【0127】
本発明は、治療又はワクチン接種の多様な目的のために、規則正しく特異的な複合体を会合するためのドッケリン.コヒーシン相互作用の使用を具体化している。一例が、coh.Flu M1タンパク質と複合体を形成した内部移行性のヒト樹状細胞(DC)受容体に対して、結合特異性を有するrAb.docの使用である。図11は、インビトロ試験によるこの利用を示す。DCを抗DC_rAb.doc:coh.Flu M1と培養し、次いで自己T細胞と共培養して、Flu M1を特異的に記憶するT細胞を増殖させた。coh.Flu M1単独の同等な用量では、このような効果はなかった。この試験は、coh.Flu M1単独と比較して、抗DC_rAb.doc:coh.Flu M1によりFlu M1特異T細胞の増殖が少なくとも50倍強化されたことを示す。
【0128】
図13は、個々の精製済み成分の混合により、機能性の抗DC_rAb.doc:coh.Flu M1複合体が形成されたことを示している。様々な量の複合体又はcoh.Flu M1単独を、5E4ヒトDC(HLA201ドナーに由来)及び10E5自己T細胞と共に培地中でインキュベートした。24時間後、DCをCD40Lで活性化し、インキュベーションを更に9日間継続した。細胞を採集し、PE標識Flu M1ペプチドのGILGFVFTL(配列番号24)HLA−A2四量体で染色し、抗原特異的CD8+細胞の頻度について分析した。
【0129】
図14は、ヒトDCに結合性がないアイソタイプ一致mAb.docに複合したcoh.Flu M1の追加対照を組み入れた類似例を示す。図12は、Flu M1 GILGFVFTLエピトープを包含するペプチド断片へH鎖融合により直接連結した抗DC_rAbも、DC標的抗原送達を誘発し、Flu M1特異T細胞の増殖を起こす上で有効であることを示している。しかし、抗DC_rAb.Flu M1 PEP構成体は、哺乳動物細胞からの分泌が非常に不良であったため、このようなワクチンの製造は恐らく除外される。この問題は、(この場合では)ワクチン抗原に適当な発現系の使用により、製造問題の解決を可能にする本発明の実施形態を例示している。
【0130】
図14は、個々の精製済み成分の混合により、抗DC_rAb.doc:coh.Flu M1又はmIgG2b.doc:coh.Flu M1の各複合体が形成されたことを示している。様々な量の複合体又はcoh.Flu M1単独を、5E4ヒトDC(HLA201ドナーに由来)及び10E5自己T細胞と共に培地中でインキュベートした。24時間後、DCをCD40Lで活性化し、インキュベーションを更に9日間継続した。細胞を採集し、PE標識Flu M1ペプチドのGILGFVFTL(配列番号24)HLA−A2四量体で染色し、抗原特異的CD8+細胞の頻度について分析した。mIgG2b.doc複合体の濃度は、抗DC_rAb複合体の濃度と同じであった。
【0131】
図15は、CD34+ヒトDCをCD1a+及びCD14+の各サブタイプに選別し、抗DC_rAb.Flu M1 PEP若しくは抗DC_rAbの3nMと共に、又はそれらなしで培養した。自己T細胞を1日後に添加し、培養を更に8日間継続した。分析は上記の通りであった。CD1a+細胞は、抗DC_rAb.Flu M1 PEPで処理した場合のみ、Flu M1特異CD8+細胞の増殖に非常に効率的であった。
【0132】
本発明の1種の実施形態は抗DC_rAb.doc:coh.抗原複合体からなるワクチンであるが、いくつかの事例では、好ましいDCターゲティングワクチンは、恐らくは一連の防御抗原を抗原とする抗DC_rAb.抗原になると想定される。製造系における効率的発現に適合する、有効な組合せの中のこのような抗原の同定は、極めて問題が多い。本発明の一実施形態は、このようなワクチンを開発するために、抗原エピトープの組合せの試験を合理化する方法を提供する。具体的には、本発明は、所望の抗DC_rAb.抗原の製造に対処する手始めとして、見込みのある抗原エピトープの有効性を単独及び組合せでスクリーニングする方法を教示する。例えば、表13は、大腸菌系を介して容易に発現できる例示的なコヒーシン.ペプチド構築物の配列を示す。図11に表示した技法と類似の技法を用いて、coh.pepタンパク質の多様な集合体に対し、単一の抗DC_rAb.doc構成体との複合体として、有効性の試験を容易に行うことができる。次いで、最も有効なcoh.pep化合物を抗DC_rAb.ペプチド融合タンパク質として直接、操作・作製することができる。図16は、大腸菌中で発現した精製済みのcoh.PEPタンパク質の例を示している。
【0133】
表12は、メラノーマ関連抗原gp100のアミノ酸配列を示す。周知のHLA−A201制限主要ペプチドには、陰影を付け、その配列の下に詳述している。Mと標識したペプチド配列は、HLA−A201に対する親和性が増加した変異体である。C180は、コヒーシンドメインに青色の陰影を付け、gp100ペプチドに灰色の陰影を付けた、下記に示す配列をコードする大腸菌発現構築物である。このペプチドの境界を示す下線付き残基は、gp100に固有である。C末端Hisタグは、金属アフィニティクロマトグラフィーによる精製を促進するためである。
【0134】
上記に言及したgp100配列及び関連ペプチドを下記に示す。
【0135】
【表13】

【0136】
HLA−A0201制限ペプチドの各配列は、次の通りである。
GP100 WT:154〜162:KTWGQYWQV(配列番号26)
GP100 M:209〜217(2M):IMDQVPFSV(配列番号27);209〜217 WT:ITDQVPFSV(配列番号28)
GP100 M:280〜288(9V):YLEPGPVTV(配列番号29);280〜288 WT:YLEPGPVTA(配列番号30)
【0137】
C180は、次の通りの大腸菌−pET28(コヒーシン−hgp100−ペプチドA−6xHis)である。
【0138】
【表14】

【0139】
表13は、メラノーマ抗原MART−1のアミノ酸配列を示す。周知のHLA−A201制限主要ペプチドには、陰影を付け、その配列の下に詳述している。Mペプチドは、HLA−A201に対する親和性が増加したペプチド配列変異体を示す。C181は、コヒーシンドメインに黄色の陰影を付け、MART−1ペプチドに灰色の陰影を付けた、下記に示す配列をコードする大腸菌発現構築物である。このペプチドの境界を示す下線付き残基は、MART−1に固有である。C172及びC174は、抗DC_rAb.MART−1ペプチド及び一致対照のrAb.MART−1ペプチドH鎖の発現を指示する2種の構築物である。C末端残基に付加した配列だけが示されている。C末端Hisタグは、金属アフィニティクロマトグラフィーによる精製を促進するためである。
【0140】
MART−1は次の通りである。
【0141】
【表15】

【0142】
HLA−A0201制限ペプチド配列は次の通りである。
【0143】
【表16】

【0144】
C181は、大腸菌−pET28(コヒーシン−hMART−1−ペプチドB−6xHis)である。
【0145】
【表17】

【0146】
C186は、大腸菌−pET28(コヒーシン−Flex−hMART−1−ペプチドA−6xHis)である。
【0147】
【表18】

【0148】
C172は、rAB−pIRES2(m抗ASGPR_49C11_7H−LV−hIgG4H−hMART−1−ペプチドA)である。
C174は、rAB−pIRES2(hIgG4H−hMART−1−ペプチドA)である。
【0149】
【表19】

【0150】
図16は、coh.pepタンパク質の合成を指示する発現プラスミドを保持した大腸菌が、増殖し、特異的タンパク質を産生するように誘導されたことを示している。細胞を採集し、超音波処理で破壊した。上清分画を適用し、金属アフィニティクロマトグラフィーにより精製した。分析は、クーマシーブリリアントブルーで染色した還元的SDS.PAGEゲルによった。図では、左から右へ標識した典型的な産物のcoh.pepタンパク質が示されている。
【0151】
この実施例は、哺乳動物細胞から分泌されるコヒーシン及びドッケリン融合タンパク質の優れた使用を示している。両融合相手が特異性の異なるrAb(即ち、rAb1.doc及びrAb2.coh)であれば、混合するだけで二重特異性抗体のrAb1.doc:rAb2.cohが生じる。二重特異性抗体は、治療的及び技術的に多くの潜在的用途を有する。本発明は、doc:coh相互作用を介してこのような構成体を会合するための単純で予測可能な手段を提供する。或いは、rAb1.doc:rAb1.cohが会合されるのであれば、このような構成体は、潜在的に独特の生物学的特性を有する制御された架橋mAbを表現する。
【0152】
コヒーシン.ドッケリンモジュールは、多様なセルロース分解性生物種の中に存在する。そうしたモジュールは配列類似性を有するが、生物種間で交差しない特異性を有することができる。これによって、特異性の異なるコヒーシンからなる新規な足場を構築し、この足場を用いて、空間的及び個数的に制御しながら高次複合体を構築する機会が得られる。他の人々は、生物工学用途にこの概念を用いるための中核技術について述べている(Fierobe, H.-P., Mechaly, A., Tardif, C., Belaich, A., Lamed, R., Shoham, Y., Belaich, J.-P., and Bayer, E. A. (2001) Design and production of active cellulosome chimeras: Selective incorporation of dockerin-containing enzymes into defined functional complexes. J. Biol. Chem. 276, 21257-21261を参照されたい)。本発明は、rAb.(doc:coh.融合体)n複合体の製造関連の用途のために、この技術の特定の使用を具体化しているが、前式中nは、独特の特異性を有するdoc:coh相互作用の対形成が>1であることを表す。したがって、本発明は、rAb.doc1.doc2.doc3.などと、coh1.融合体A、coh2.融合体B、coh3.融合体3などとの空間的に規則的な複合体の会合(成分同士の単純な混合による)を想定している。coh.融合タンパク質は、異なる抗原、又は抗原とサイトカインのような活性化剤との組合せを表すことができよう。
【0153】
拡張して考えれば、より高次の抗原特異性を有する2価rAbを作製するために、coh:docの多重特異性を使用することもできよる。セルロース分解細菌及び類似の生物は、分解機構を組織するためにセルロース結合ドメイン(CBD)も使用する。クロストリジウム・サーモセラムのCBDの構造は、N及びC末端が、近接しており、CBD機能構造の不可欠な部分ではないことを示している。実際、CBDは、cipAにおけるcoh.CBD.cohのように他のドメインに連結して現れる。本発明は、抗体及び多重サブユニット受容体を模倣した空間的、個数的に規則正しい複合体を構築するための、coh.CBD.cohなどの構成体の使用を包含する。例えば、doc1に融合したIgGκ鎖v領域、及びdoc2に連結したIgGH鎖V領域は、coh1.CBD.coh2と会合して、VL.doc1:coh1.CBD.coh2:VH.doc2を産生し、元のmAbに類似した親和性及び結合特異性を有する構成体を産生することもできる。このような構成体は、特に、VL及びVH成分が、独立に変異させ、混合により様々な組合せに組み合わせることができると思われるので、例えば、変異誘発手順を介したmAb特異性の絞り込みに、非常に有用なスクリーニング手段となるはずである。上記の通り、この技術は、極めて高い特異性及び親和性を有する結合性構成体を潜在的に産生する、制御されたcoh:V.docの多重組合せに容易に拡張することができる。これを拡張することは、cytoR1.doc+cytoR2.doc+cytoR3.doc(式中cytoRは、複合サイトカイン受容体の1サブユニットの外部ドメインを表す)を構築するための鋳型として、例えばcoh1.coh2.CBD.coh3を使用することとなる。このような構成体は、治療のために、及び複雑な上清中のサイトカインを測定する生物工学において、サイトカイン相互作用の阻止に有用となる。
【実施例3】
【0154】
免疫毒素療法に対するコヒーシン−ドッケリン技術の使用
現在、120万人のアメリカ人が毎年癌を発症し、大部分の癌は一旦転移すると治癒できないため、約50万人がこの疾患で死亡する。転移癌の新たな治療法を開発するために、遺伝子工学を用いて、正常細胞を死滅させる代わりに癌細胞を選択的に死滅させるように、強力な細菌毒のシュードモナスエンテロトキシンA(PE)が改変されてきた。PEは、アミノ酸613個からなる3ドメインタンパク質である。抗癌剤は、その結合ドメイン(アミノ酸1〜252)を欠失させ、抗体のFv断片、又は癌細胞上に存在する抗原に結合する成長因子で置き換えることにより、生成される。こうした抗癌剤は、組換え免疫毒素(RIT)と称する。RITとして、結腸癌、乳癌、肺癌及び他の上皮癌上に存在するレイ(Ley)を標的とするもの(B3(Fv)−PE38)、グリア芽腫上に過剰発現するEGF受容体を標的とするもの(TGF−α−PE38)、グリア芽腫上に存在する変異EGF受容体を標的とするもの(MR−1(Fv)−PE38KDEL)、並びに多くのT及びB細胞性白血病及びリンパ腫上に存在するIL−2受容体を標的とするもの、LMB−2又は抗Tac(Fv)−PE38、更に悪性B細胞上のCD22を標的とするもの、更にBL22又はRFB4(dsFv)−PE38の卵巣癌及び中皮腫(SS1P)を標的とするものが作製されてきた。こうした抗癌剤は、大腸菌中で産生されるが、その理由は、この供給源から多量を容易に精製できること、及び毒素自体が、それを発現する哺乳動物細胞を死滅させると思われることである。適当な人癌の異種移植片を有するマウスに投与した際、こうしたRITはすべて、腫瘍の完全な緩解を生じる。こうした抗癌剤の大部分は、人間において臨床試験中であり、数種のものは、癌患者に完全な及び部分的な寛解をもたらした。
【0155】
理想的な免疫毒素は、腫瘍の緩解を起こす投与量がごく少量で済むように非常に活性であり、腫瘍内部への到達に要する5〜10時間の間、機能を維持するように安定であり、繰返し投与できるように非免疫原性であるべきである。当初、組換え免疫毒素は、PEのアミノ酸253〜613(ドメインII及びIII)を含有していた。アミノ酸364〜395は、活性を損なわずに欠失できると判定された。安定性の増加は、長い半減期を有することが周知の抗体全体に毒素を連結することにより、対処することができ、本発明における技術は、この解決法を提供する。
【0156】
rAb.Doc:Coh.毒素の技術は既知の癌抗原に適用できるが、免疫の監視からの腫瘍の逃避を助長すると疑われる腫瘍内DCを死滅させるためにも、この技術を試験することができる。この後者の場合、投与毒素自体に対する免疫の蓄積は抑制されるはずなので、抗DC毒療法は二重に有利となり得よう(即ち、DC自体が、抗原の取込み及びプロセシングを介したこの免疫応答の開始の鍵となるため。この療法では、抗原を取り込むDCは死滅し、免疫毒素応答を開始することができない)。
【0157】
Frankel(Clinical Cancer Research, 8, 942-944, 2002)は、免疫毒素の適用拡大を妨げる問題について記述している。こうした問題には、ミスフォールディング汚染物質が問題となる、大腸菌封入体発現物質の復元(refolding)がしばしば必要な産生問題が挙げられる。また、免疫毒素の標的に対する親和性も、十分な強度で得ることがしばしば困難である。本発明の技術基盤は、こうした問題の双方に対処している。第1に、本発明者等は、コヒーシン.PE38融合タンパク質が、複雑な復元を要しない単純な生化学的手段により、完全に機能的な状態で(コヒーシン、毒素の活性とも損なわれていない)精製できる可溶性タンパク質として大腸菌中に発現されることを見出した。第2に、標的抗原に対する高親和性のモノクローナル抗体は、当業者により日常的に得ることができる。困難なことは、毒素と融合し、標的への結合に完全に機能する形態で、抗体の可変領域を操作することである。普通の操作手段(例えばsFv形態)は、当初のモノクローナル抗体と比較して、標的に対する親和性を必ず相当程度失わせる。rAb.Doc:Coh.毒素の技術は、この問題を回避して、当初のmAbの高親和性結合部位も(マウスmAbのV領域をヒト化すると同時に、高い特異的な結合活性を維持することは、当業者にとって日常的であることに留意されたい)、並びに完全な組換えhIgG状況の長い半減期及び非抗原性という有益な特性も保持する手段を提供する。
【0158】
さらに、コヒーシン.毒素は独自に産生されるので、患者に注射する前に成分を混合するだけで、一製剤の毒素を、別途産生したターゲティング用rAb.Docタンパク質の任意の個数へコンジュゲートすることができる。これにより、製造並びに研究開発時間が著しく簡略化される。本発明に記載の技術は、任意の毒素及び任意のrAb特異性に容易に適用することができる。
【0159】
rAb.Doc:Coh.毒素の技術の詳細。pRB391(Pastan博士の供与品)(Pastan, Chief of the Laboratory of Molecular Biology, Division of Basic Sciences. NCI, NIH)を鋳型として用いて、PE38−N3 (cacggtcaccgtctccaaagcttccggagctagcGAGGGGGGCAGCCTGGCCGCGCT(配列番号39))及びPE38−C3(GGCCGGCTCCTGCGAAGGGAGCCGGCCGGTCGCGGCCGCTTACTTCAGGTCCTCGCGCGGCGGTTTGCCG(配列番号40))のプライマーと共にPCRを行った。
【0160】
クローニングを前に樹立した構築物C21又は大腸菌−pET28(コヒーシン−6xHis)を施して、以下に示すアミノ酸配列に対応するコヒーシン−PE38をコードする融合タンパク質を生成した(灰色残基はコヒーシンであり、黄色残基は、コヒーシンドメインに固有のリンカー配列で隔てられたPE38である)。
【0161】
【表20】

【0162】
組換えCoh.PE38タンパク質の発現及び精製。各発酵液1Lからの大腸菌細胞を50mM Tris、1mM EDTA、pH8.0で、プロテアーゼ阻害剤Cocktail II(Calbiochem)0.1ml入りの氷冷液25ml中に再浮遊させた。その細胞を氷上で2×5分、設定18(Fisher Sonic Dismembrator 60)で休止期間5分を入れて超音波処理し、次いで17000rpm(Sorvall SA-600)で4℃、20分間回転させた。上清を、50mM Tris、1mM EDTA、pH8.0中で平衡化した1mlのANX Sepharoseカラムに通し、Buffer B中の0〜1M NaCl勾配で溶出した。Coh.PE38を含有する分画をSDS.PAGEで同定し、更にプールした分画を、0.1Mグリシン、pH2.7で溶出する抗コヒーシンmAbアフィニティクロマトグラフィーによる精製によって、精製した。
【0163】
rAb.Doc標的指向化Coh.PE38によるヒトDCの選択的死滅。ヒトDCは、血液単球からGM−CSF及びIL−4と共に6日間培養することにより調製した。次いで、DCをCoh.PE38単独、抗DC−SIGN/L 16E7 rAb.Doc単独、抗DCIR 24A5.Doc単独、又はrAb.DocとCoh.PE38との共存のいずれかと培養した(各作用剤1.25μg/mlを添加した)。48時間後、アポトーシス細胞を検出する試薬(7−AAD)で細胞を染色し、前方対側方散乱及び7−AAD蛍光を記録するFACSで分析した。
【0164】
図17は、DCIR.Doc rAb単独ではDCの生存に何ら作用がなかったことを示している。しかし、DC−SIGN/L単独は、DCに対して生存増強作用を有する(散乱分析、7−AAD染色の双方により証明される)。図18は、Coh.PE38単独が、7−AAD記録アポトーシス細胞の数を僅かに増加させる(22.1〜29.8%)ことを示している。しかし、DCIR.Docを介してCoh.PE38毒素を標的指向化すると、7−AAD陽性集団が55.3%に増加した。散乱分析は、生存DCに特徴的な集団のほぼ完全な喪失をはるかに劇的に示した。DC−SIGN/L.Docを介してCoh.PE38毒素を標的指向化すると、7−AAD陽性集団が53.7%に増加し、散乱生存DC集団が同様に失われた。しかし、後者のこの結果は、DC−SIGN/L.Doc rAbの生存作用との関係で見るべきであり、この死滅は、3.1〜53.1%の7−AAD陽性と見なし得ることを意味する。
【0165】
多価抗体を作製するためのコヒーシン−ドッケリン技術の使用。鋳型としてC17(Mam−pCDM8(コヒーシン−コヒーシン−SLAML−AP−6xHis))に基づくPCRを用いて、コヒーシンドメインをrAb H鎖のC末端とインフレームで操作した。生成した分泌H鎖の配列を以下に示す(コヒーシンドメインは灰色で強調し、C末端H鎖は太字にしてある)。
【0166】
【表21】

【0167】
この発現構築物を適当なrAb L鎖と共に293F細胞中に同時トランスフェクトし、分泌rAbの発現を3日目の抗hIgGFc ELISAで評価した。図19は、抗DC−SIGN/L及び抗DC−ASPGR rAb.Cohの発現が、効率的に分泌されたことを示している。
【0168】
したがって、コヒーシン及びドッケリン両ドメインは、rAb融合タンパク質として容易に発現される。この特性は、2価抗体(即ち、1つのタンパク質中に異なる2種の結合特異性を有する)としての(rAb1.Coh:rAb2.Doc)複合体の使用に必須である。2価抗体は、工業的、分析的及び治療的な用途に適した多くの望ましい特徴を有する。しかし、該抗体は開発するのが困難であり、それらの操作に使用される分子ツールは、モノクローナル親抗体に固有の高い親和性及び特異性という望ましい特徴を通常弱めてしまう。(rAb1.Coh:rAb2.Doc)技術は、この障害を回避し、その上、本出願の他所に記載のように、対をなす特異性を有するコヒーシン又はドッケリンの多重連鎖を取り込むことにより、より多い(2より多い)価数の結合力に拡張できる。さらに、この技術は、例えばサイトカインを用いる追加の価数の提供に拡張することができる(即ち、rAb1.Doc:Coh.サイトカイン)。
【0169】
例えば、コヒーシンドメインとIL−21との融合タンパク質を発現構築物として操作し、このCoh.IL−21を一時的にトランスフェクトした293F細胞から効率的に分泌させ、逐次的なQ Sepharose及び抗コヒーシンアフィニティクロマトグラフィーにより容易に精製した。分泌産物の配列は、以下に示してあり、コヒーシンドメインを灰色、IL−21ドメインを黄色で示す。この産物は、ヒトB細胞の増殖を維持する上での効力で決定した場合、完全に機能していた。
【0170】
Mam−pCDM8(SLAML−コヒーシン−hIL−21)
【0171】
【表22】

【0172】
したがって、rAb.Doc:Coh.IL−21は、B細胞に増殖及び活性化のシグナルを同時に送達することができる(即ち、rAb自体が活性化特性を有する場合)。この概念は、特定の細胞型を対象とする生物学的特性を有する任意のrAb、及び同じ細胞型を対象とする活性を有する任意のサイトカインに拡張することができる。図20は、ヒトB細胞の増殖に対するIL−21及びCoh.IL−21の効果を示す。
【0173】
本明細書で考察した任意の実施形態は、本発明の任意の方法、キット、試薬又は組成物に関して実施することができ、その逆もできることを企図している。更に、本発明の組成物は、本発明の方法を実現するために使用することができる。
【0174】
本明細書に記載の特定の実施形態は、例示のために示しており、本発明の限定として示しているのでないことは理解されよう。本発明の主要な特徴は、本発明の範囲から逸脱せずに多様な実施形態で使用することができる。当業者であれば、単なる日常的実験を用いて、本明細書に記載の特定の手順に等価な多数の手順を認識し、又は確認することができよう。このような等価な手順は、本発明の範囲に入り、特許請求の範囲で網羅されると考えられる。
【0175】
本明細書で言及したすべての刊行物及び特許出願は、本発明が関係する当業者の技術水準を示している。すべての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願の各々が、参照により組み込まれると明確に個別に示されている場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0176】
特許請求の範囲及び/又は本明細書において、用語「含む(comprising)」と共に使用される場合の単数の単語の使用は、「1」を意味し得るが、「1又は複数」、「少なくとも1つ」及び「1又は2以上」の意味とも合致する。特許請求の範囲における用語「又は」の使用は、代替物だけを指すことを明確に示していない限り、又は代替物が相互に排他的でない限り、「及び/又は」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物だけ及び「及び/又は」を指す定義を支持する。本出願を通して、用語「約」は、ある値が、その値を決定するために使用されている装置、方法の固有の誤差変化、又は試験対象の間に存在する変動を包含することを示すために、使用される。
【0177】
本明細書及び請求項(複数も)で使用する場合、単語「含む(comprising)」(及び“comprise”、“comprises”などのcomprisingの任意の形態)、「有する(having)」(及び“have”、“has”などのhavingの任意の形態)、「含む(including)」(及び“includes”、“include”などのincludingの任意の形態)、又は「含有する(containing)」(及び“contains”、“contain”などのcontainingの任意の形態)は、包括的又は非制限的であり、挙げられていない追加の要素又は方法ステップを排除しない。
【0178】
本明細書で使用する場合の用語「又はそれらの組合せ」は、その用語に先立つ列挙項目のあらゆる順列及び組合せを指す。例えば、「A、B、C又はそれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BC又はABCの少なくとも1つを含み、特定の文脈において順序が重要な場合、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC又はCABの少なくとも1つを含むことも意図している。この例を続ければ、1又は複数の項目又は用語の繰返しを含有する、BB、AAA、MB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどの組合せも、明らかに含まれる。当業者であれば、文脈からそうではないことが明らかでない限り、任意の組合せにおいて項目又は用語の数に制限が通常ないことは理解されよう。
【0179】
本明細書に開示し、主張する組成物及び/又は方法はすべて、本開示に照らせば過度の実験をせずに作製し、実行することができる。本発明の組成物及び方法は、好ましい実施形態に関して説明してきたが、組成物及び/又は方法に対して、並びに本明細書に記載の方法のステップ又は一連のステップにおいて、本発明の概念、趣旨及び範囲から逸脱せずに変更を加え得ることは、当業者には明らかとなろう。当業者には明らかなそのようなすべての類似した代用及び改変は、付随する特許請求の範囲に規定するような本発明の趣旨、範囲及び概念に入ると見なされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーシンコヘシン−ドッケリン結合対の半分を含んだ1又は複数の抗原担体ドメインに連結した抗原特異的結合ドメインを含む、モジュールrAb担体。
【請求項2】
抗原特異的結合ドメインが抗体の少なくとも一部分を含む、請求項1に記載のrAb。
【請求項3】
抗原特異的結合ドメインが、コヒーシン−ドッケリン結合対の半分との融合タンパク質中に、抗体の少なくとも一部分を含む、請求項1に記載のrAb。
【請求項4】
モジュールrAb担体と複合体を形成する抗原に結合した、コヒーシン−ドッケリン結合対の相補的半分を更に含む、請求項1に記載のrAb。
【請求項5】
抗原との融合タンパク質である、コヒーシン−ドッケリン結合対の相補的半分を更に含む、請求項1に記載のrAb。
【請求項6】
抗原特異的ドメインが、全長抗体、抗体可変領域ドメイン、Fab断片、Fab’断片、F(ab)断片及びFv断片、並びにFabc断片及び/又はFcドメインの部分を伴うFab断片を含む、請求項1に記載のrAb。
【請求項7】
コヒーシン−ドッケリンが、クロストリジウム・サーモセラム、クロストリジウム・ジョスイ、クロストリジウム・セルロリティクム及びバクテロイデス・セルロソルベンス、並びにそれらの組合せから選択される、請求項1に記載のrAb。
【請求項8】
抗原特異的結合ドメインが、MHCクラスI、MHCクラスII、CD1、CD2、CD3、CD4、CD8、CD11b、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD29、CD31、CD40、CD43、CD44、CD45、CD54、CD56、CD57、CD58、CD83、CD86、CMRF−44、CMRF−56、DCIR、DC−ASPGR、CLEC−6、CD40、BDCA−2、MARCO、DEC−205、マンノース受容体、ランゲリン、DECTIN−1、B7−1、B7−2、IFN−γ受容体及びIL−2受容体、ICAM−1、Fcγ受容体、又は抗原提示細胞が比較的特異的に発現する他の受容体から選択される、細胞表面マーカーに結合する、請求項1に記載のrAb。
【請求項9】
rAb.Doc、rAb.Coh、rAb.(Coh)、rAb.(Doc)、rAb.(Coh.Doc)、又はrAb.(Coh)(Doc)(式中、xは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)とさらに特定される、請求項1に記載のrAb。
【請求項10】
以下の複合体:
rAb.Doc:Coh.抗原、
rAb.Coh:Doc.抗原、
rAb.(Coh):(Doc.抗原)
rAb.(Doc):(Coh.抗原)
rAb.(Coh.Doc):(Doc.抗原)(Coh.抗原)、又は
rAb.(Coh)(Doc):(Doc.抗原(Coh.抗原
(式中、xは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)
の一部とさらに特定される、請求項1に記載のrAb。
【請求項11】
抗原に結合したコヒーシン−ドッケリン結合対の相補的半分に結合した、コヒーシン−ドッケリン結合対の半分を含む1又は複数のドメインに連結した抗原特異的ドメインを含むモジュールrAb担体を含むワクチン。
【請求項12】
抗原特異的ドメインが、MHCクラスI、MHCクラスII、CD1、CD2、CD3、CD4、CD8、CD11b、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD29、CD31、CD40、CD43、CD44、CD45、CD54、CD56、CD57、CD58、CD83、CD86、CMRF−44、CMRF−56、DCIR、DC−ASPGR、CLEC−6、CD40、BDCA−2、MARCO、DEC−205、マンノース受容体、ランゲリン、DECTIN−1、B7−1、B7−2、IFN−γ受容体及びIL−2受容体、ICAM−1、Fcγ受容体、又は抗原提示細胞が比較的特異的に発現する他の受容体から選択される、免疫細胞表面タンパク質に対して特異的である、請求項11に記載のワクチン。
【請求項13】
抗原が、細菌、ウイルス、真菌、原虫又は癌のタンパク質を含む、請求項11に記載のワクチン。
【請求項14】
モジュールrAb担体が、
rAb.Doc:Coh.抗原、
rAb.Coh:Doc.抗原、
rAb.(Coh):(Doc.抗原)
rAb.(Doc):(Coh.抗原)
rAb.(Coh.Doc):(Doc.抗原)(Coh.抗原)、又は
rAb.(Coh)(Doc):(Doc.抗原(Coh.抗原
(式中、xは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)
とさらに特定される、請求項11に記載のワクチン。
【請求項15】
標的特異的ドメイン並びに1又は複数のドメイン及びコヒーシン−ドッケリン結合対の半分に対するコードセグメントを含む、単離された核酸。
【請求項16】
標的が抗原であり、特異的ドメインが、抗体の少なくとも一部分をコードする、請求項15に記載の核酸。
【請求項17】
1又は複数のドメインが、1又は複数のコヒーシンドメイン、1又は複数のドッケリンドメイン、或いはコヒーシンドメイン及びドッケリンドメインの1又は複数による組合せをコードする、請求項15に記載の核酸。
【請求項18】
標的特異的ドメインが、rAb.Doc、rAb.Coh、rAb.(Coh)、rAb.(Doc)、rAb.(Coh.Doc)、又はrAb.(Coh)(Doc)(式中、xは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)と更に特定されるrAbを含む、請求項15に記載の核酸。
【請求項19】
抗原特異的ドメインと、コヒーシン−ドッケリン結合対の半分、タンパク質分子を担持するコヒーシン−ドッケリン結合対の半分、及びそれらの組合せを含む1又は複数のドメインとをコードする核酸を含むベクター。
【請求項20】
コヒーシン−ドッケリン結合対の半分、タンパク質分子を担持するコヒーシン−ドッケリン結合対の半分、及びそれらの組合せが、同じプロモーターの制御下にあり、異なるプロモーターの制御下にあり、一連となって転写され、又は、逆方向に転写される、請求項19に記載のベクター。
【請求項21】
抗原特異的ドメインと、1又は複数のドメイン及びコヒーシン−ドッケリン結合対の半分とをコードする核酸を含んだベクターを含む、宿主細胞。
【請求項22】
コヒーシン−ドッケリン結合対の半分を含んだ1又は複数のドメインに連結した抗原特異ドメインを組み合わせること
を含む、モジュールrAb担体を作製する方法。
【請求項23】
rAbが、rAb.Doc、rAb.Coh、rAb.(Coh)、rAb.(Doc)、rAb.(Coh.Doc)、又はrAb.(Coh)(Doc)(式中、xは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)と更に特定される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
rAbが、抗原に結合したコヒーシン:ドッケリン対の相補的半分と複合し、
rAb.Doc:Coh.抗原、
rAb.Coh:Doc.抗原、
rAb.(Coh):(Doc.抗原)
rAb.(Doc):(Coh.抗原)
rAb.(Coh.Doc):(Doc.抗原)(Coh.抗原)、又は
rAb.(Coh)(Doc):(Doc.抗原(Coh.抗原
(式中、xは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)
から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
rAbが細胞標的に対して特異的である、rAb.Doc:Coh.毒素の自己会合コンジュゲートを含む免疫毒素。
【請求項26】
毒素が、放射性同位体、金属、酵素、ボツリヌス、破傷風、リシン、コレラ、ジフテリア、アフラトキシン、パーフリンゲンス毒素、マイコトキシン、シガトキシン、ブドウ球菌エンテロトキシンB、T2、セグイトキシン、サキシトキシン、アブリン、シアノギノシン、アルファトキシン、テトロドトキシン、アコノトキシン、蛇毒及びクモ毒からなる群から選択される、請求項25に記載の免疫毒素。
【請求項27】
細胞標的が、白血病、リンパ腫等の血液癌、星状細胞種若しくはグリア芽腫等の神経腫瘍、メラノーマ、乳癌、肺癌、頭頚部癌、胃癌若しくは結腸癌等の消化器腫瘍、肝癌、膵臓癌、子宮頚部癌、子宮癌、卵巣癌、膣癌、睾丸癌、前立腺癌若しくは陰茎癌等の泌尿生殖器腫瘍、骨腫瘍、血管腫瘍、又は口唇、鼻咽頭、咽頭及び口腔、食道、直腸、胆嚢、胆道系、喉頭、肺及び気管支、膀胱、腎臓、脳及び他の神経系部分の癌、甲状腺癌、ホジキン病、非ホジキン病リンパ腫、多発性骨髄腫並びに白血病から選択される癌細胞を含む、請求項25に記載の免疫毒素。
【請求項28】
細胞標的が、細菌、原虫、蠕虫、ウイルス感染細胞又は真菌から選択される病原体を含む、請求項25に記載の免疫毒素。
【請求項29】
コヒーシン又はドッケリン融合タンパク質を、基材に結合した相補的なコヒーシン又はドッケリンにコンジュゲートしているrAbと相互作用させることにより、前記融合タンパク質を分離すること
を含む、タンパク質を精製する方法。
【請求項30】
移植、自己免疫疾患、感染症又は癌を含む治療用途において、タンパク質を投与するステップを更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
活性なコヒーシン.毒素融合タンパク質の容易な精製を促進する有益な生化学的性質を付与するための、毒素に対する融合相手としてのコヒーシンの使用。
【請求項32】
DCを除去する治療用途のための、DCを標的とする抗DC rAb.Docの使用。
【請求項33】
樹状細胞の生存促進のために十分な量で与えられる抗DC−SIGN/L抗体であって、免疫のために樹状細胞を成熟させ、活性化させる抗体。
【請求項34】
ワクチンのアジュバントとしてインビボで樹状細胞を標的とする、請求項33に記載の抗体。
【請求項35】
治療剤、診断剤及び工業用作用剤としての、2価及び多価(rAb.Doc:Coh.rAb)の自己会合コンジュゲート。
【請求項36】
治療剤、細胞増殖剤又は成熟化剤としての、2価及び多価(rAb.Doc:Coh.サイトカイン)、(rAb.Coh:Doc.サイトカイン)又は(サイトカイン.Coh:サイトカイン.Doc)の自己会合コンジュゲート。
【請求項37】
標的細胞に特異的に結合し、標的細胞に作用するようにサイトカインを送達できる、多価rAb及び/又はrAb.サイトカイン及び/又はサイトカイン.サイトカインの1又は複数の組合せをスクリーニングすること
を含む、モジュールrAbを作製する方法。
【請求項38】
サイトカインが、インターロイキン、形質転換成長因子(TGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、上皮成長因子(EGF)、結合組織活性化ペプチド(CTAP)、造骨因子、並びに前記成長因子の生物活性な類縁体、断片及び誘導体、B/T細胞分化因子、B/T細胞増殖因子、マイトジェンサイトカイン、走化性サイトカイン、コロニー刺激因子、血管形成因子、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL11、IL12、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL18等、レプチン、ミオスタチン、マクロファージ刺激タンパク質、血小板由来成長因子、TNF−α、TNF−β、NGF、CD40L、CD137L/4−1BBL、ヒトリンホトキシンβ、G−CSF、M−CSF、GM−CSF、PDGF、IL−1α、IL1−β、IP−10、PF4、GRO、9E3、エリスロポエチン、エンドスタチン、アンジオスタチン、VEGF、β形質転換成長因子(例えば、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3)、骨形成タンパク質(例えば、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9)、ヘパリン結合成長因子(線維芽細胞成長因子(FGF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン様成長因子(IGF))、インヒビン(例えば、インヒビンA、インヒビンB)、増殖分化因子(例えば、GDF−1)、及びアクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB)を含めた形質転換成長因子(TGF)スーパー遺伝子ファミリーを含む、請求項37に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2010−518020(P2010−518020A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548460(P2009−548460)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/052714
【国際公開番号】WO2008/097817
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(509004712)ベイラー リサーチ インスティテュート (38)
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR RESEARCH INSTITUTE
【Fターム(参考)】