説明

ヒト抗CD20抗体のアッセイとその用途

CD20抗体等の治療用抗体に対する中和抗体を検出するための方法が記述される。本アッセイは、免疫治療法における抗体の効果を決定するために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
これは、2003年7月29日に出願された仮出願第60/490678の米国特許法第119条に基づく優先権を主張する非仮出願であり、その全ての開示は出典明示によりここに取り込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、アンタゴニスト又は抗体に対する中和抗体を検出するためのアッセイと、該アッセイの使用に関する。
【0003】
(発明の背景)
リンパ球は造血プロセス中に骨髄で生産される多種類の白血球の一つである。リンパ球には、主として2つの集団:Bリンパ球(B細胞)とTリンパ球(T細胞)がある。ここで特に関心のあるリンパ球はB細胞である。
B細胞は骨髄で成熟し、それらの細胞表面で抗原結合性抗体を発現する骨髄から放出される。まず、未変性B細胞は、その膜結合性抗体が特異的な抗原と遭遇すると、急速に分割し始め、その子孫は記憶B細胞及び「形質細胞」と称されるエフェクター細胞に分化する。記憶B細胞はより長い寿命を持ち、最初の親細胞と同じ特異性を有する膜結合性抗体を発現し続ける。形質細胞は膜結合性抗体を産出しないが、代わりに分泌可能な形態の抗体を産出する。分泌抗体はホルモン免疫の主要なエフェクター分子である。
【0004】
CD20抗原(ヒトBリンパ球制限分化抗原、Bp35とも称される)はプレB細胞と成熟したBリンパ球に局在する、約35kDの分子量を有する疎水性膜貫通タンパク質である(Valentineら, J. Biol. Chem. 264(19):11282-11287(1989)、及びEinfeldら, EMBO J. 7(3):711-717(1988))。また、前記抗原はB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)の90%以上で発現している(Andersonら, Blood 63(6):1424-1433(1984))が、造血幹細胞、プロB細胞、正常な形質細胞又は他の正常な組織においては見出されていない(Tedderら, J. Immunol. 135(2):973-979(1985))。CD20は細胞サイクルの開始及び分化における活性化プロセスの初期段階を調節し(Tedderら, 上掲)、カルシウムイオンチャンネルとして機能する可能性がある(Tedderら, J. Cell. Biochem. 14D:195(1990))。
B細胞リンパ腫でCD20が発現すると、この抗原は、このようなリンパ腫の「ターゲティング」のための候補薬として提供され得る。本質において、このようなターゲティングは以下のようなものが一般的である:B細胞のCD20表面抗原に特異的な抗体を患者に投与する。これらの抗-CD20抗体は正常及び悪性B細胞の双方のCD20抗原(見かけ上)に特異的に結合し:CD20表面抗原に結合した抗体は、新生物B細胞を破壊及び減少に至らしめ得る。さらに、腫瘍を破壊する可能性のある化学剤又は放射活性ラベルを、該薬剤が新生物B細胞に特異的に「送達」されるように、抗-CD20抗体にコンジュゲートさせることもできる。アプローチに関係なく、第1の目的は腫瘍を破壊することであり;特定のアプローチは利用する特定の抗-CD20抗体により決定され、よってCD20抗原をターゲティングするために有用なアプローチはかなり多様である。
【0005】
CD19はB系統の細胞表面で発現する他の抗原である。CD20と同様、CD19は、幹細胞段階から形質細胞における分化が終了する直前まで、該系列の分化中の細胞において見出される(Nadler, L. Lymphocyte Typing II2:3-37と付表, Renlingら, eds.(1986), Springer Verlag)。しかしながら、CD20とは異なり、CD19に結合する抗体はCD19抗原の内部移行を引き起こす。CD19抗原は、特にHD237-CD19抗体(「B4」抗体とも称される)により同定される(Kieselら, Leukemia Research II, 12:1119(1987))。CD19抗原は、末梢血液単核細胞の4-8%、及び末梢血液、脾臓、リンパ節又は扁桃腺から単離されたB細胞の90%以上に存在する。CD19は末梢血液T細胞、単球又は顆粒球においては検出されない。事実上、全ての非T細胞急性リンパ芽球白血病(ALL)、B細胞慢性リンパ球白血病(CLL)及びB細胞リンパ腫では、抗体B4により検出可能なCD19が発現している(Nadlerら, J. Immunol. 131:244(1983);及びNadlerら, Progress in Hematology Vol.XII pp.187-206. Brown, E. ed.(1981), Grune & Stratton, Incによる)。
B細胞系列の細胞により発現した分化段階に特異的な抗原を認識する付加的な抗体が同定されている。これらのなかには、CD21抗原に対するB2抗体;CD22抗原に対するB3抗体;及びCD10抗原(CALLAとも称される)に対するJ5抗体がある。1997年1月21日に公開された米国特許第5,595,721号を参照。
【0006】
リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))抗体は、一般的にCD20抗原に対するキメラマウス/ヒトモノクローナル抗体を設計したものである。リツキシマブは1998年4月7日に公開された米国特許第5,736,137号において「C2B8」と呼称される抗体である(Andersonら)。RITUXAN(登録商標)は、再発性又は抗療性の軽度又は濾胞性、CD20陽性、B細胞非ホジキンリンパ腫を患ってる患者の治療用であることが示されている。インビトロでの作用メカニズムの研究では、RITUXAN(登録商標)はヒト補体に結合し、補体依存性細胞傷害性(CDC)によりリンパ系B細胞系を溶解することが示されている(Reffら, Blood 83(2):435-445(1994))。さらに、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)のアッセイにおいては、有意な活性度を有する。最近では、RITUXAN(登録商標)はトリチウム化チミジン導入アッセイにおいて抗増殖効果を有し直接アポトーシスを誘発するが、他の抗-CD19及び抗-CD20抗体ではこのようなことはないことが示されている(Maloneyら, Blood 88(10):637a(1996))。また、RITUXAN(登録商標)と化学療法と毒素との相乗作用が実験的に観察されている。特にRITUXAN(登録商標)は、ドキソルビシン、CDDP、VP-16、ジフテリア毒素及びリシンの細胞毒性効果に対して薬剤耐性を有するヒトB細胞リンパ腫細胞系に感作する(Demidemら, Cancer Chemotherapy & Radiopharmaceuticals 12(3):177-186(1997))。インビボ前臨床的研究では、RITUXAN(登録商標)は、カニクイザルの末梢血液、リンパ節及び骨髄からのB細胞を、おそらく補体及び細胞媒介性プロセスにより枯渇させることが示されている(Reffら, Blood 83(2):435-445(1994))。
【0007】
CD20抗体に関連する特許及び特許公開には、米国特許第5,776,456号、同5,736,137号、同6,399,061号、及び同5,843,439号、並びに米国特許出願第2002/0197255A1号、及び米国特許出願第2003/0021781A1号 (Andersonら);米国特許第6,455,043B1号及び国際公開第00/09160号(Grillo-Lopez, A.); 国際公開第00/27428号 (Grillo-Lopez及びWhite); 国際公開第00/27433号 (Grillo-Lopez及びLeonard); 国際公開第00/44788号(Braslawskyら); 国際公開第01/10462号(Rastetter, W.); 国際公開第01/10461号(Rastetter及びWhite); 国際公開第01/10460号(White及びGrillo-Lopez); 米国出願第2002/0006404号及び国際公開第02/04021号(Hanna及びHariharan);米国出願第2002/0012665A1号及び国際公開第01/74388号(Hanna, N.); 米国出願第2002/0009444A1号、及び国際公開第01/80884号(Grillo-Lopez, A.); 国際公開第01/97858号(White, C.); 米国特許第2002/0128488A1号及び国際公開第02/34790号(Reff, M.);国際公開第02/060955号(Braslawskyら);国際公開第2/096948 号(Braslawskyら);国際公開第02/079255号(Reff及びDavies); 米国特許第6,171,586B1号、及び国際公開第98/56418号(Lamら); 国際公開第98/58964号(Raju, S.); 国際公開第99/22764号(Raju, S.);国際公開第99/51642号、米国特許第6,194,551B1号、米国特許第6,242,195B1号、米国特許第6,528,624B1号及び米国特許第6,538,124号(Idusogieら); 国際公開第00/42072号(Presta, L.); 国際公開第00/67796号(Curdら); 国際公開第01/03734号(Grillo-Lopezら); 米国出願第2002/0004587A1号及び国際公開第01/77342号(Miller及びPresta);米国特許第2002/0197256号(Grewal, I.); 米国特許第6,090,365B1号、同6,287,537B1号、同6,015,542号、同5,843,398号及び同5,595,721号(Kaminskiら); 米国特許第5,500,362号、同5,677,180号、同5,721,108号及び同6,120,767号(Robinsonら); 米国特許第6,410,391B1号(Raubitschekら); 米国特許第6,224,866B1号及び国際公開第00/20864号(Barbera-Guillem, E.); 国際公開第01/13945号(Barbera-Guillem, E.); 国際公開第00/67795号(Goldenberg); 国際公開第00/74718号(Goldenberg及びHansen); 国際公開第00/76542号(Golayら);国際公開第01/72333号(Wolin及びRosenblatt); 米国特許第6,368,596B1号(Ghetieら); 米国出願第2002/0041847A1号(Goldenberg, D.);米国出願第2003/0026801A1号(Weiner及びHartmann); 国際公開第02/102312号(Engleman, E.)が含まれ、そのそれぞれは、特に出典明示によりここに取り込まれる。また、米国特許第5,849,898号及び欧州出願第330,191号(Seedら); 米国特許第4,861,579号及び欧州特許第332,865A2号(Meyer及びWeiss);及び国際公開第95/03770号(Bhatら)が参照される。
【0008】
リツキシマブを用いた治療に関する刊行物には、Perotta及びAbuel「Response of chronic relapsing ITP of 10 years duration to Rituximab」要約 # 3360 Blood 10(1)(part 1-2): p. 88B (1998); Stashiら「Rituximab chimeric anti-CD20 monoclonal antibody treatment for adults with chronic idopathic thrombocytopenic purpura」Blood 98(4):952-957 (2001); Matthews, R.「Medical Heretics」 New Scientist (2001年, 4月7日); Leandroら「Clinical outcome in 22 patients with rheumatoid arthritis treated with B lymphocyte depletion」 Ann Rheum Dis 61:833-888 (2002); Leandroら「Lymphocyte depletion in rheumatoid arthritis: early evidence for safety, efficacy and dose response. Arthritis及びRheumatism 44(9): S370 (2001); Leandroら「An open study of B lymphocyte depletion in systemic lupus erythematosus」, Arthritis & Rheumatism 46(1):2673-2677 (2002); Edwards及びCambridge「Sustained improvement in rheumatoid arthritis following a protocol designed to deplete B lymphocytes」Rhematology 40:205-211 (2001); Edwardsら「B-lymphocyte depletion therapy in rheumatoid arthritis and other autoimmune disorders」Biochem. Soc. Trans. 30(4):824-828 (2002); Edwardsら「Efficacy及びsafety of Rituximab, a B-cell targeted chimeric monoclonal antibody: A randomized, placebo controlled trial in patients with rheumatoid arthritis. Arthritis及びRheumatism 46(9): S197 (2002); Levine及びPestronk「IgM antibody-related polyneuropathies: B-cell depletion chemotherapy using Rituximab」Neurology 52: 1701-1704 (1999); DeVitaら「Efficacy of selective B cell blockade in the treatment of rheumatoid arthritis」Arthritis & Rheum 46:2029-2033 (2002); Hidashidaら「Treatment of DMARD-Refractory rheumatoid arthritis with rituximab」が含まれる。Annual Scientific Meeting of the American College of Rheumatology; Oct 24-29; Ne Orleans, LA 2002; Tuscano, J.「Successful treatment of Infliximab-refractory rheumatoid arthritis with rituximab」で公開。Annual Scientific Meeting of the American College of Rheumatology; Oct 24-29; New Orleans, LA 2002で公開。
米国特許出願第2003/0068664号(Albitarら)には、リツキシマブに対するヒト抗-キメラ抗体(HACA)を測定するためのELISAアッセイが記載されている。
【0009】
(発明の概要)
ここでの実施例1には、B細胞表面マーカー、つまりCD20抗原と結合する抗体に対する中和抗体を検出するための補体依存性細胞傷害性(CDC)アッセイの開発について記載されている。CDC活性は、種々の濃度のCD20抗体の存在下又は不在下において、ヒト補体と共にCD20陽性細胞をインキュベートすることにより測定した。ついで、生存細胞を定量化することにより細胞傷害性度を測定した。アッセイの性能に対する血清マトリックス効果を試験した。血清は、EC50値に有意なシフトを示さないで40%までの耐容性を示すことができた。ついで、CD20抗体で治療された全身性エリテマトーデス(SLE)の患者の血清サンプルを、抗体反応(HACA)を用いてテストした。CD20抗体のCDC活性は、HACA血清を用いて完全に又は部分的にブロックすることができ、これはテストされたサンプルにおける中和活性を示している。これに対して、CD20抗体で治療する前の血清サンプルでは、何の中和活性も示されなかった。このアッセイは、抗-薬剤抗体反応の性質を特徴付けるものである;よって、薬剤の安全性及び効果を評価するのに有用である。
【0010】
従って、本発明は、CD20に結合する抗体の効果を評価する方法において、CD20抗体で治療された患者からの生体サンプルの、CD20抗体の生物活性をブロックする能力を測定することを含む、方法を提供するものである。
さらに本発明は、患者にCD20に結合する抗体を投与し;CD20抗体の生物活性をブロックするための、患者からの生体サンプルの能力を測定することを含む、免疫治療法を提供するものである。
他の側面では、本発明は、治療抗体で治療された患者からの生体サンプルと治療抗体の存在下、治療用抗体が結合する抗原を発現する細胞を補体に暴露し;治療用抗体の細胞傷害アッセイ(CDC)活性を測定することを含み、CDC活性の低下により、生体サンプルにおける中和抗体の存在が示される、治療用抗体に対して中和抗体を検出する方法に関する。
さらに、アンタゴニストの生物活性をブロックするための、アンタゴニストで治療された患者からの生体サンプルの能力を測定することを含む、B細胞マーカーに結合するアンタゴニストの効果を評価するための方法を提供する。
さらなる実施態様では、本発明は、患者に、B細胞表面マーカーに結合する抗体を投与し;抗体の生物活性をブロックするための、患者からの生体サンプルの能力を測定することを含む、免疫治療法に関する。
【0011】
好ましい実施態様の詳細な記載
1.定義
特に定義しない限り、ここで「生体サンプル」とは、患者から得られたサンプルを意味する。サンプルは、ヒト抗-マウス抗体(HAMA)、ヒト抗-キメラ抗体(HACA)又はヒト抗-ヒト抗体(HAHA)等の、患者を治療する薬剤又は抗体に結合する抗体を含む。生体サンプルは、例えば血清、患者から回収された抗体、血漿、細胞溶解物、ミルク、唾液、及び他の分泌物、好ましくは血清であってよい。
「生物活性」なる表現は、ここで、抗体又はアンタゴニストの測定可能な機能を称する。種々の活性が考慮され、限定するものではないが、補体依存性細胞傷害性(CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、アポトーシス、細胞(例えば腫瘍細胞)の成長阻害等が含まれる。
抗体又はアンタゴニストの生物活性を「ブロックする」ための、生体サンプル(又は、当該問題における薬剤に対し、患者に産生される抗体)の能力は、活性の部分的な及び完全なブロックの双方を称する。
【0012】
ここで「B細胞表面マーカー」とは、そこに結合する抗体又はアンタゴニストで標的可能なB細胞表面で発現する抗原である。B細胞表面マーカーの例には、CD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD40、CD53、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CDw78、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85及びCD86白血球表面マーカーが含まれる。特に関心あるB細胞表面マーカーは、哺乳動物の他の非B細胞組織と比較してB細胞で優先的に発現しており、B細胞前駆体及び成熟B細胞の双方で発現し得る。一実施態様において、マーカーはCD20又はCD19と同様、幹細胞段階から形質細胞における分化が終了する直前まで、系列の分化中のB細胞において見出されるものである。ここで好ましいB細胞表面マーカーはCD20である。
「CD20」抗原は、〜35kDa、末梢血液又はリンパ系器官の90%以上のB細胞の表面で見出される非グルコシル化リンタンパク質である。CD20は初期のプレB細胞発育中に発現し、形質細胞分化まで残る。CD20は正常なB細胞及び悪性のB細胞の双方に存在する。文献におけるCD20の他の名称には「Bリンパ球制限抗原」及び「Bp35」が含まれる。CD20抗原は、例えばClarkら, PNAS(USA)82:1766(1985)に記載されている。
【0013】
ここで使用される場合、「B細胞枯渇」とは、一般的に、治療前のレベルに対する、薬剤又は抗体治療後の、動物又はヒトにおけるB細胞レベルの低減度合いを称する。B細胞枯渇は、部分的又は完全なものであってよい。B細胞レベルは公知の技術、例えばReffら, Blood 83:435-445(1994)、又は米国特許第5,736,137号(Andersonら)に記載されているものを使用して測定可能である。例えば哺乳動物(例えば正常な霊長類)を、種々の用量の抗体又はアンタゴニストで治療し、末梢B細胞濃度を、B細胞を計測するFACS法により測定してもよい。
【0014】
「B細胞悪性腫瘍」は、B細胞に係る悪性腫瘍である。具体例には、リンパ球優位型ホジキン病(LPHD)を含むホジキン病;非ホジキンリンパ腫(NHL);濾胞中心細胞(FCC)リンパ腫;急性リンパ性白血病(ALL);慢性リンパ性白血病(CLL);ヘアリー細胞白血病;形質細胞様リンパ性リンパ腫(plasmacytoid lymphocytic lymphoma);マントル細胞リンパ腫; AIDS又はHIV-関連リンパ腫;多発性骨髄腫;中枢神経系(CNS)リンパ腫;移植後リンパ増殖症候群(PTLD);ヴァルデンストレームマクログロブリン血症(リンパ形質細胞性リンパ腫);粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫;及び辺縁帯リンパ腫/白血病が含まれる。
【0015】
非ホジキンリンパ腫(NHL)には、限定されるものではないが、下級/濾胞性NHL、再発性又は難治性NHL、前線下級(front line low grade)NHL、III/IV段階のNHL、化学療法耐性NHL、小リンパ球性(SL)NHL、中級/濾胞性NHL、中級びまん性(intermediate grade diffuse)NHL、びまん性大細胞型リンパ腫、攻撃型NHL(攻撃型前線NHL及び攻撃型再発性NHLを含む)、自家幹細胞移植後の再発性又は難治性NHL、高級免疫芽細胞性NHL、高級リンパ芽球NHL、高級小型非開裂細胞性NHL、巨大病変NHL等が含まれる。
【0016】
ここで「自己免疫疾患」とは、個々の所有する組織から生じる、またこれに対する疾病又は疾患のことである。ここで自己免疫疾患又は疾病の例には、限定されるものではないが、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節症炎)、乾癬、皮膚炎、 多発性筋炎/皮膚筋炎、中毒性表皮剥離症、全身性強皮症及び全身性硬化症、炎症性大腸炎に関連した反応、クローン病、潰瘍性大腸炎、呼吸窮迫症候群、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、髄膜炎、脳炎、ブドウ膜炎、大腸炎、糸球体腎炎、アレルギーによる病状、湿疹、喘息、T細胞の浸潤に関連した病状及び慢性炎症反応、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性心筋炎、白血球付着欠損症、全身性エリテマトーデス(SLE)、若年発症糖尿病、多発性硬化症、アレルギー性脳脊髄炎、Tリンパ球及びサイトカインにより媒介される急性及び遅延過敏性に関連した免疫反応、結核、サルコイドーシス、ヴェグナー肉芽腫症を含む肉芽種症、 顆粒球減少症、脈管炎(ANCAを含む)、再生不良性貧血、Diamond Blackfan 貧血、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を含む免疫性溶血性貧血、悪性貧血、赤芽球癆(PRCA)、第VIII因子欠損症、血友病A、自己免疫性好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球漏出を含む疾病、中枢神経系(CNS)炎症疾病、多臓器傷害症候群、重症筋無力症、抗原-抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、ランベルト-イートン筋無力症症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、固形臓器移植拒絶反応、移植片対宿主拒絶反応(GVHD)、水疱性類天疱瘡、天疱瘡、自己免疫多腺性内分泌障害、ライター病、スティフマン症候群、巨細胞性動脈炎、免疫複合体腎炎、IgA腎症、IgM多発性神経障害、IgM媒介性神経障害、フルダラビン関連性ITP、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)を含む突発性血小板減少性紫斑病(ITP)、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性精巣炎及び卵巣炎を含む精巣及び卵巣の自己免疫疾患、原発性甲状腺機能低下症、 自己免疫性甲状腺炎、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、亜急性甲状腺炎を含む自己免疫性内分泌疾患、突発性甲状腺機能低下症
、アジソン病、クレーブス病、自己免疫多腺性症候群(又は多腺性内分泌症候群)、インシュリン依存性真性糖尿病(IDDM)とも称されるI型糖尿病、及びシーハン症候群;自己免疫性肝炎、リンパ球様間質性肺炎(HIV)、閉塞性細気管支炎(非移植)対NSIP、ギラン・バレー症候群、大血管脈管炎(リウマチ性多発性筋痛及び巨細胞(高安)動脈炎を含む)、中血管脈管炎(川崎病及び結節性多発性動脈炎)、強直性脊椎炎、バーガー病( Berger's disease)(IgA腎症)、急速進行性糸球体腎炎、原発性胆汁性肝硬変、セリアック病(グルテン性腸症)、クリオグロブリン血症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、冠動脈疾患、寒冷凝集素症、獲得第VIII因子阻害、ループス腎炎等が含まれる。
【0017】
ここで、「アンタゴニスト」は、B細胞表面マーカーに結合する分子であり、B細胞表面マーカーへの結合時に、哺乳動物のB細胞を破壊又は枯渇させ、及び/又は例えばB細胞により誘導されるホルモン反応を低減又は防止することにより、一又は複数のB細胞機能に干渉する。アンタゴニストは、好ましくはそれで治療される哺乳動物において、B細胞を枯渇させることができる。
このような枯渇は、種々のメカニズム、例えば抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)及び/又は補体依存性細胞傷害性(CDC)、B細胞増殖阻害、及び/又はB細胞死の誘発(例えばアポトーシス)を介して達成される。本発明の範囲内に含まれるアンタゴニストには、抗体、合成又は天然配列ペプチド、イムノアドヘシン、通常は細胞傷害剤とコンジュゲート又は融合してB細胞表面マーカーに結合する小分子アンタゴニストが含まれる。好ましいアンタゴニストには抗体が含まれる。
【0018】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性」及び「ADCC」は、細胞媒介反応を称し、この反応において、Fcレセプター(FcRs)を発現している非特異的細胞傷害細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が、標的細胞に結合した抗体を認識してその結果、標的細胞の溶解を引き起こす。ADCCを媒介する主要な細胞うち、NK細胞はFcγRIIIのみを発現するのに対し、単球は、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcRの発現は、Ravetch及びKinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991) の464ページの表3に要約されている。関心ある分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号又は同5,821,337号に記述されているようなインビトロADCCアッセイを実施することができる。このようなアッセイにおいて有用なエフェクター細胞には、末梢血液単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー細胞(NK細胞)が含まれる。代わりとして、もしくは付加的に、関心ある分子のADCC活性は、例えば、Clynesら, PNAS (USA) 95:652-656 (1998)において開示されているような動物モデルにおいて、インビボで評価してもよい。
「ヒトエフェクター細胞」とは、一又は複数のFcRsを発現し、エフェクター機能を実行する白血球のことである。その細胞が少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行することが望ましい。ADCCを媒介するヒト白血球の例には、末梢血液単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞及び好中球が含まれるが、PBMCsとNK細胞が好適である。
【0019】
「Fcレセプター」もしくは「FcR」なる用語は、抗体のFc領域に結合するレセプターを記載するために使用される。好適なFcRは天然配列ヒトFcRである。さらに、好適なFcRは、IgG抗体(ガンマレセプター)と結合するもので、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含み、これらのレセプターの対立遺伝子変異体、選択的にスプライシングされた形態のものも含まれる。FcγRIIレセプターには、FcγRIIA(「活性型レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害型レセプター」)が含まれ、主としてその細胞質ドメインは異なるが、類似のアミノ酸配列を有するものである。活性型レセプターFcγRIIAは、細胞質ドメインにチロシン依存性免疫レセプター活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif ;ITAM)を含んでいる。阻害型レセプターFcγRIIBは、細胞質ドメインにチロシン依存性免疫レセプター阻害性モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based inhibition motif ;ITIM)を含んでいる(Daeron, Annu. Rev. immunol. 15:203-234 (1997)を参照)。FcRsに関しては、 Ravetch及びKinet, Annu.Rev. Immunol. 9:457-92 (1991); Capelら, Immunomethods 4:25-34 (1994); 及びde Haasら, J.Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995) に総説されている。他のFcRs、ここでは、将来的に同定されるものも含めて、「FcR」という言葉によって包含される。また、前記言葉は、母性IgGsが胎児に受け継がれる要因となっている新生児性レセプター「FcRn」(Guyerら, J. Immunol. 117:587 (1976) Kimら, J. Immunol.24:249 (1994))も含まれる。ここで、FcRsには、IgG1に結合するレセプター領域に位置する、アミノ酸位置158でフェニルアラニン(F)又はバリン(V)のいずれかに至るFcγRIIIaをコードする遺伝子において、遺伝的二形等の多型が含まれる。ホモ接合性バリンFcγRIIIa (FcγRIIIa-158V)は、ホモ接合性フェニルアラニンFcγRIIIa (FcγRIIIa-158F)又はヘテロ接合性(FcγRIIIa-158F/V)レセプターと比べて、インビトロにて増加ADCCを媒介し、ヒトIgG1に対してより高い親和性を有することが示されている。
【0020】
「補体依存性細胞傷害性」もしくは「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解する分子の能力を称する。補体活性化経路は補体系(Clq)の第1成分が同族抗原と複合した分子(例えば抗体)に結合することにより開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを、例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されているように実施されてもよい。
「成長阻害」アンタゴニスト又は抗体は、アンタゴニストが結合する抗原を発現する細胞の増殖を防止又は低減するものである。例えば、アンタゴニスト又は抗体はインビトロ及び/又はインビボでB細胞の増殖を防止又は低減可能である。
「アポトーシスを誘発する」アンタゴニスト又は抗体は、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞断片化、及び/又は膜小胞の形成(アポトーシス体と呼ばれる)等の標準的なアポトーシスアッセイにより決定されるような、例えばB細胞のプログラム細胞死を誘発するものである。
【0021】
ここで「抗体」なる用語は最も広い意味において使用され、特に無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成される多重特異的抗体(例えば、二重特異的抗体)、及びそれらが所望の生物活性を示す限りは抗体断片を包含している。
「抗体断片」は無傷の抗体の一部、好ましくはその抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')及びFv断片;ダイアボディー;線状抗体;単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多重特異的抗体が含まれる。
【0022】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖とからなり、約150,000ダルトンの異種四量体糖タンパク質である。各軽鎖は1つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に結合するが、ジスルフィド結合の数は異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変化する。また各重鎖及び軽鎖も規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は一端に可変ドメイン(V)、それに続いて多数の定常ドメインを有する。各軽鎖は一端に可変ドメイン(V)、他端に定常ドメインを有し;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメインと並び、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと並んでいる。特定のアミノ酸残基が軽鎖と重鎖の可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。
【0023】
「可変」なる用語は、可変ドメインの或る部分が抗体間で配列が広範囲に相違し、各特定の抗体のその特定抗原への結合及び特異性に使用されるという事実を意味する。しかしながら、可変性は抗体の可変領域に均一に分布しているのではない。それは、軽鎖及び重鎖の可変ドメインの両方において高頻度可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存される部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメイン各々は、大きなβ-シート配置をとり、3つの高頻度可変領域に接続された4つのFR領域を含み、それはループ状の接続を形成し、β-シート構造の一部を形成することもある。各鎖の高頻度可変領域はFRにより他の鎖からの高頻度可変領域とともに極近傍に保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ED. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。定常ドメインは抗体の抗原への結合に直接は関係ないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞媒介性障害(ADCC)における抗体の寄与を示す。
抗体のパパイン消化により、各々が単一の抗原結合部位を有する「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片と、その名称が容易に結晶化する能力を表す、残りの「Fc」断片が産生される。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、さらに抗原を架橋させ得るF(ab')断片が生じる。
【0024】
「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を含む最小抗体断片である。この領域は、堅固な非共有結合をなした一つの重鎖及び一つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。この配置において、各可変ドメインの3つの高頻度可変領域は相互に作用してV-V二量体表面に抗原結合部位を形成する。集合的に、6つの高頻度可変領域が抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な3つの高頻度可変領域のみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも親和性が低くなるが、抗原を認識して結合する能力を有している。
またFab断片は、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常領域(CH1)を含む。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加されていることによりFab断片とは異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基(類)が少なくとも1つの遊離チオール基を担持しているFab'に対するここでの命名である。F(ab')抗体断片は、間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として生産された。抗体断片の他の化学結合も知られている。
【0025】
任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」には、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別される型の一つが割り当てられる。
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体は異なるクラスに割り当てることができる。無傷の抗体には5つの主たるクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、それらのいくつかはさらにサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgA2に分割される。異なるクラスの抗体に対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び3次元構造はよく知られている。
【0026】
「単鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のV及びVドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。好ましくは、FvポリペプチドはV及びVドメイン間にポリペプチドリンカーをさらに含み、それはscFVが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。scFvの概説については、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)のPluckthunを参照のこと。
「ダイアボディ(diabodies)」なる用語は、二つの抗原結合部位を持つ小型の抗体断片を称し、その断片は同じポリペプチド鎖(V-V)内で軽鎖可変ドメイン(V)に結合した重鎖可変ドメイン(V)を含む。同じ鎖の二つのドメイン間に対形成するには短すぎるリンカーを用いることにより、ドメインは強制的に他の鎖の相補的ドメインと対形成して二つの抗原結合部位を生成する。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404,097号;国際公開第93/11161号;及びHollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6444-6448 (1993)により十分に記載されている。
【0027】
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を称す、すなわち、集団に含まれる個々の抗体が、少量で存在しうる自然に生じる可能な突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、一つの抗原部位に対している。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含む従来からの(ポリクローナル)抗体と比べて、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンによって汚染されていないハイブリドーマ培養から合成される点で有利である。「モノクローナル」との修飾詞は、実質的に均一な抗体集団から得られているという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で生産する必要があると解釈されるものではない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature 256, 495 (1975)により記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作ることもできる(例えば、米国特許第4,816,567号参照)。また「モノクローナル抗体」は、例えばClackson等, Nature 352:624-628(1991)、及びMarks等, J. Mol. Biol. 222:581-597(1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリから単離することもできる。
【0028】
ここで、モノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種由来の抗体あるいは特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか相同であり、鎖の残りの部分が他の種由来の抗体あるいは他の抗体クラスあるいはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、並びにそれが所望の生物的活性を有する限りそれら抗体の断片を特に含む(米国特許第4,816,567号; Morrisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855(1984))。ここで関心あるキメラ抗体は、非ヒト霊長類(例えば旧世界ザル、例えばヒヒ、アカゲザル又はカニクイザル)から誘導された可変ドメイン抗原結合配列、及びヒト定常領域配列を含む「プリマタイズした(primatized)」抗体を含む(米国特許第5,693,780号)。
【0029】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。大部分においてヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでもよい。これらの修飾は抗体の特性をさらに洗練するためになされる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、全てあるいはほとんど全ての高度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFRがヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、任意には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。さらなる詳細は、Jones等, Nature 321, 522-525(1986);Reichmann等, Nature 332, 323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2, 593-596(1992)を参照のこと。
【0030】
ここで使用される場合、「高頻度可変領域」なる用語は、抗原結合性の原因となる抗体のアミノ酸残基を称する。高頻度可変領域は「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメインの残基24-34(L1)、50-56(L2)及び89-97(L3)及び重鎖可変ドメインの31-35(H1)、50-65(H2)及び95-102(H3);Kabatら, Sequences of Proteins of Immunological Interest,5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.(1991))及び/又は「高度可変ループ」からの残基(すなわち、軽鎖可変ドメインの残基26-32(L1)、50-52(L2)及び91-96(L3)及び重鎖可変ドメインの残基26-32(H1)、53-55(H2)及び96-101(H3);Chothia及びLesk J.Mol.Biol. 196:901-917 (1987))を含む。「フレームワーク」又は「FR」残基はここに定義した高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0031】
CD20又はB細胞表面マーカー等、関心ある抗原に「結合する」アンタゴニスト又は抗体は、該アンタゴニスト又は抗体が抗原を発現する細胞をターゲティングするための治療剤として有用であるように、十分な親和性及び/又は結合活性を有する抗原に結合可能なものである。
ここでの目的において、「免疫療法」とは、抗体を用いた哺乳動物(好ましくはヒト患者)の治療方法を称するものであって、抗体は「コンジュゲートしない」又は「裸」抗体であってよく、又は抗体は、一又は複数の細胞傷害剤(類)等の、非相同分子(類)又は薬剤とコンジュゲート又は融合してもよく、よって「免疫コンジュゲート」が生じる。
【0032】
ここで使用される場合、「治療用抗体」とは、疾病又は疾患を煩う又はかかりやすい哺乳動物において、疾病又は疾患を治療するのに効果的な抗体のことである。例示的な治療用抗体には、 rhuMAb 4D5(HERCEPTIN(登録商標))を含む抗-HER2抗体(Carterら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285-4289 (1992), 米国特許第5,725,856号);抗-CD20抗体(以下参照);抗-IL-8 (St Johnら, Chest, 103:932 (1993)、及び国際公開第95/23865号);ヒト化及び/又は親和性成熟抗-VEGF抗体、例えばヒト化抗-VEGF抗体huA4.6.1 AVASTINTMを含む抗-VEGF抗体(Kimら, Growth Factors, 7:53-64 (1992), 国際公開第96/30046号、及び国際公開第98/45331号, 1998年10月15日に公開);抗-PSCA抗体(国際公開第01/40309号);S2C6及びそのヒト化変異体を含む抗-CD40抗体(国際公開第00/75348号);RaptivaTMを含む抗-CD11a抗体(米国特許第5,622,700号, 国際公開第98/23761号, Steppeら, Transplant Intl. 4:3-7 (1991)、及びHourmantら, Transplantation 58:377-380 (1994));抗-IgE抗体(Prestaら, J. Immunol. 151:2623-2632 (1993)、及び国際公開第 95/19181号;1998年2月3日に公開された米国特許第5,714,338号、又は1992年2月25日に公開された米国特許第5,091,313号、1993年3月4日に公開された国際公開第93/04173号、又は1998年6月30日に公開された国際出願第PCT/US98/13410、米国特許第5,714,338号);抗-CD18抗体(1997年4月22日に公開された米国特許第5,622,700号、又は1997年7月31日に公開された国際公開第97/26912号);抗-Apo-2レセプター抗体抗体(1998年11月19日に公開された国際公開第98/51793);cA2 (REMICADE(登録商標))、CDP571及びMAK-195を含む抗-TNF-α抗体(1997年9月30日に公開された米国特許第5,672,347号、Lorenzら J. Immunol. 156(4):1646-1653 (1996)、及びDhainautら Crit. Care Med. 23(9):1461-1469 (1995)を参照);抗-組織因子(TF)抗体(1994年11月9日に許諾された欧州特許第0420937B1号); 抗-ヒトαインテグリン抗体(1998年2月19日に公開された国際公開第98/06248号);抗-EGFR抗体(1996年12月19日に公開された国際公開第96/40210号にあるようなキメラ化又はヒト化225抗体;抗-CD3抗体、例えばOKT3(1985年5月7日に公開された米国特許第4,515,893号);抗-CD25又は抗-Tac抗体、例えばCHI-621 (SIMULECT(登録商標))及びZENAPAX(登録商標)(1997年12月2日に公開された米国特許第5,693,762号を参照); 抗-CD4抗体、例えばcM-7412抗体(Choyら, Arthritis Rheum 39(1):52-56 (1996));抗-CD52抗体、例えばCAMPATH-1H(Riechmannら Nature 332:323-337 (1988);抗-Fcレセプター抗体、例えばGrazianoら J. Immunol. 155(10):4996-5002 (1995)にあるような、FcγRIに対するM22抗体;抗-癌胎児性抗原(CEA)抗体、例えばhMN-14 (Sharkeyら Cancer Res. 55(23Suppl):5935s-5945s (1995);huBrE-3、hu-Mc 3及びCHL6を含む乳房上皮細胞に対する抗体(Cerianiら Cancer Res. 55(23): 5852s-5856s(1995);及びRichmanら Cancer Res. 55(23 Supp): 5916s-5920s (1995));C242等の、結腸癌細胞に結合する抗体(Littonら Eur J. Immunol. 26(1):1-9 (1996));抗-CD38抗体、例えばAT 13/5(Ellisら J. Immunol. 155(2):925-937 (1995));抗-CD33抗体
、例えばHu M195(Jurcicら Cancer Res 55(23 Suppl):5908s-5910s (1995)及びCMA-676又はCDP771;抗-CD22抗体、例えばLL2又はLymphoCide(Juweidら Cancer Res 55(23 Suppl):5899s-5907s (1995);抗-EpCAM抗体、例えば17-1A(PANOREX(登録商標));抗-GpIIb/IIIa抗体、例えばabciximab又はc7E3 Fab (REOPRO(登録商標));抗-RSV抗体、例えばMEDI-493(SYNAGIS(登録商標));抗-CMV抗体、例えばPROTOVIR(登録商標);抗-HIV抗体、例えばPRO542;抗-肝炎抗体、例えば抗-Hep B抗体 OSTAVIR(登録商標);抗-CA 125抗体 OvaRex; 抗-イディオタイプGD3エピトープ抗体BEC2;抗-αvβ3抗体VITAXIN(登録商標);抗-ヒト腎細胞癌抗体、例えばch-G250;ING-1;抗-ヒト 17-1A抗体(3622W94); 抗-ヒト大腸腫瘍抗体(A33);GD3ガングリオシドに対する抗-ヒトメラノーマ抗体R24;抗-ヒト扁平上皮癌(SF-25);及び抗-ヒト白血球抗原(HLA)抗体、例えばSmart ID10及び抗-HLA DR抗体Oncolym(Lym-1)が含まれる。
【0033】
CD20抗原に結合する抗体の例には、「リツキシマブ」(「RITUXAN(登録商標)」)と称される「C2B8」(特に出典明示によりここに取り込まれる米国特許第5,736,137号)、「Y2B8」と呼称されるイッテリウム-[90]-ラベル2B8マウス抗体、又は「イブリツモマブ・チウキセタン」ZEVALIN(登録商標)(特に出典明示によりここに取り込まれる米国特許第5,736,137号);131Iでラベルされて「131I-B1」抗体を生じる「トシツモマズ」と呼称されるマウスIgG2a「B1」(ヨウ素I131 トシツモマブ、BEXXARTM)(特に出典明示によりここに取り込まれる米国特許第5,595,721号);マウスモノクローナル抗体「1F5」(Pressら, Blood 69(2):584-591(1987));マウス2H7及びキメラ2H7抗体(特に出典明示によりここに取り込まれる米国特許第5,677,180号);ヒト化2H7 v16を含むヒト化2H7(以下参照);huMax-CD20 (Genmab, Denmark);AME-133 (Applied Molecular Evolution);及びインターナショナル・ロイコサイト・タイピング・ワークショップから入手可能なモノクローナル抗体L27、G28-2、93-1B3、B-C1又はNU-B2(Valentineら, In: Leukocyte Typing III (McMichael, Ed., p. 440, Oxford University Press (1987))が含まれる。
【0034】
CD19抗原に結合する抗体の例には、Hekmanら, Cancer Immunol. Immunother. 32:364-372(1991)及びVlasveldら, Cancer Immunol. Immunother. 40:37-47(1995)の抗-CD19抗体;及びKieselら, Leukemia Research II, 12:1119(1987)のB4抗体が含まれる。
ここで、用語「リツキシマブ」又は「RITUXAN(登録商標)」は、一般的に、ここで特に出典明示により取り込まれる米国特許第5,736,137号において「C2B8」と呼称され、CD20抗原に対するキメラマウス/ヒトモノクローナル抗体に設計されたものを称する。抗体はマウス軽鎖及び重鎖可変領域配列、及びヒト定常領域配列を含むIgGカッパ免疫グロブリンである。リツキシマブは約8.0nMのCD20抗原に対する結合親和性を有する。
【0035】
純粋にここでの目的において、「ヒト化2H7 v16」は、以下に示す可変軽配列及び可変重配列を含む抗体を称する。
hu2H7 v16の可変軽鎖ドメイン:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASSSVSYMHWYQQKPGKAPKPLIYAPSNLASGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQWSFNPPTFGQGTKVEIKR (配列同定番号:1)
hu2H7 v16の可変重鎖ドメイン:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYNMHWVRQAPGKGLEWVGAIYPGNGDTSYNQKFKGRFTISVDKSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVVYYSNSYWYFDVWGQGTLVTVSS( 配列同定番号:2).
好ましいヒト化2H7 v16は、軽鎖アミノ酸配列:
MGWSCIILFLVATATGVHSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASSSVSYMHWYQQKPGKAPKPLIYAPSNLASGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQWSFNPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC (配列同定番号3);及び
重鎖アミノ酸配列:
MGWSCIILFLVATATGVHSEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYNMHWVRQAPGKGLEWVGAIYPGNGDTSYNQKFKGRFTISVDKSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVVYYSNSYWYFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK (配列同定番号:4)
を含む。
【0036】
「単離された」アンタゴニスト又は抗体とは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたものである。その自然環境の汚染成分とは、そのアンタゴニスト又は抗体の診断又は治療への使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、アンタゴニスト又は抗体は、(1)ローリー法で測定してアンタゴニスト又は抗体の95重量%を越え、最も好ましくは99重量%を越えるまで、(2)スピニングカップシークエネーターを使ったN末端又は内在するアミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、又は(3)クーマシーブルー又は好ましくは銀染色を用いた還元又は非還元状態の下でのSDS-PAGEにより均一になるまで、精製される。単離されたアンタゴニスト又は抗体は、アンタゴニスト又は抗体の自然な環境の少なくとも一成分が存在しないことから、組換え細胞のインサイツアンタゴニスト又は抗体を含む。しかしながら、通常は、単離されたアンタゴニスト又は抗体は少なくとも1つの精製段階によって調製されるであろう。
【0037】
治療の目的とされる「哺乳動物」とは、ヒト、家庭用又は農場用動物、及び動物園、スポーツ又はペット用動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシ等を含む、哺乳動物に分類されるあらゆる動物を称する。好ましくは哺乳動物はヒトである。
「治療」は、治癒的処置、予防的及び防止的措置の両方を称する。治療が必要なものとは、既に疾患又は疾病に罹っているもの、並びに疾患又は疾病が防止されているものを含む。よって、哺乳動物は疾患又は疾病を患っていると診断されるか、又は疾病にかかりやすいか、又はこれの影響を受けやすいものであってよい。
「治療的有効量」なる表現は、当該問題の疾病又は病状を防止、改良又は治療するのに有効なアンタゴニスト又は抗体の量を称する。
【0038】
添加剤療法についてここで用いられる「免疫抑制剤」という用語は、ここで治療される哺乳動物の免疫系を抑制又はマスクするように作用する物質を称する。サイトカイン生成を抑制する、自己抗原発現をダウンレギュレート又は抑制する、あるいはMHC抗原をマスクする物質を含む。このような薬剤の例は、2-アミノ-6-アリール-5-置換ピリミジン類(米国特許第4,665,077号参照、、その開示はここに参考として取り入れるものとする);非ステロール性抗炎症剤(NSAID);アザチオプリン;シクロホスファミド;ブロモクリプチン;ダナゾール;ダプソーン;グルタルアルデヒド(米国特許第4,120,649号に記載されているように、MHC抗原をマスクする);MHC抗原及びMHC断片に対する抗イディオタイプ抗体;シクロスポリンA;グルココルチコステロイド、例えばプレドニゾン、メチルプレドニソロン、デキサメタゾン、及びヒドロコルチゾンなどのステロイド類;メトトレキサート(経口又は皮下);ヒドロキシクロロキン(hydroxycloroquine);スルファサラジン;レフルノミド(leflunomide);抗-インターフェロン-γ、-β又は-α抗体を含むサイトカイン又はサイトカインレセプターアンタゴニスト、抗-腫瘍壊死因子-α抗体(インフリキシマブ又はアダリムマブ(adalimumab))、抗-TNFαイムノアドヘシン(エタネルセプト(etanercept))、抗-腫瘍壊死因子-β抗体、抗-インターロイキン-2抗体及び抗-IL-2レセプター抗体;抗-CD11a及び抗-CD18抗体を含む抗-LFA-1抗体;抗-L3T4抗体;異種抗-リンパ球グロブリン;汎T抗体、好ましくは抗-CD3又は抗-CD4/CD4a抗体;LFA-3結合ドメインを持つ可溶性ペプチド(7/26/90に公開された国際公開第90/08187号);ストレプトキナーゼ;TGF-β;ストレプトドルナーゼ;宿主からのRNA又はDNA;FK506;RS-61443;デオキシスペルグアリン(deoxyspergualin);ラパマイシン(rapamycin);T細胞レセプター(Cohen等, 米国特許第5,114,721号);T細胞レセプター断片(Offner等, Science, 251: 430-432 (1991); 国際公開第90/11294号; Ianeway, Nature, 341: 482 (1989); 及び国際公開第91/01133号);及びT10B9等のT細胞レセプター抗体(欧州特許第340,109号)を含む。
【0039】
ここで用いられる「細胞傷害剤」なる用語は、細胞の機能を阻害又は防止する及び/又は細胞破壊を生ずる物質を称する。この用語は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位体)、化学療法剤、及び細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素的活性毒素又は小分子毒素等の毒素、又はその断片を含むとされる。
【0040】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学化合物である。化学療法剤の例には、アルキル化剤、例えばチオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXANTM);スルホン酸アルキル、例えばブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン(piposulfan);アジリジン類、例えばベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa);アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;ナイトロジェンマスタード、例えばクロランブシル、クロロナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン(melphalan)、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード;ニトロ尿素類、例えばカルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えばアクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カリケアマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン(idarubicin)、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);抗-代謝生成物、例えばメトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン(denopterin)、メトトレキサート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキサート(trimetrexate);プリン類似体、例えばフルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine)、5-FU;アンドロゲン類、例えばカルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone);抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸リプレニッシャー(replenisher)、例えばフロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine):ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン(razoxane);シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカーバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド類、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標), Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)及びドキセタキセル(TAXOTERE(登録商標), Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;ゲンシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;プラチナ類似体、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン(vinorelbine);ナベルビン(navelbine);ノバントロン(novantron);テニポシド(teniposide);ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ(xeloda);イバンドロナート(ibandronate);CPT-11;トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン類(esperamicins);カペシタビン(capecitabine);並びに上述したものの製薬的に許容可能な塩、酸又は誘導体が含まれる。この定義にさらに含まれるものは、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように働くホルモン剤、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン(raloxifene)、4(5)-イミダゾール類を阻害するアロマターゼ、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン、及びトレミフェン(toremifene)(Fareston)を含む抗エストロゲン;及び抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、ロイプロリド(leuprolide)、及びゴセレリン;並びに上記のものの製薬的に許容可能な塩、酸又は誘導体である。
【0041】
「サイトカイン」なる用語は、1つの細胞集団から放出され、他の細胞に細胞間メディエータとして作用するタンパク質の一般用語である。このようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンである。サイトカインに含まれるのは、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インシュリン;プロインシュリン;レラキシン;プロレラキシン;糖タンパク質ホルモン、例えば濾胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体化ホルモン(LH);肝臓成長因子;線維芽成長因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子-α及び-β;ミューラー阻害物質;マウス生殖腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF-β等の神経成長因子;血小板成長因子;TGF-α及びTGF-β等のトランスフォーミング成長因子(TGF);インシュリン様成長因子-I及びII;エリスロポエチン(EPO);骨誘発因子;インターフェロン-α、-β、及び-γ等のインターフェロン;コロニー刺激因子(CSFs)、例えばマクロファージ-CSF(M-CSF);顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF);及び顆粒球-CSF(G-CSF);インターロイキン(ILs)、例えばIL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12、IL-15;腫瘍壊死因子、例えばTNF-α及びTNF-β;及びLIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子である。ここで用いられる際、サイトカインなる用語は、天然供給源から、又は組換え細胞培養からのタンパク質を含み、天然配列サイトカインの生物活性等価物である。
【0042】
本出願で使用される「プロドラッグ」という用語は、親薬物に比べて、腫瘍細胞に対する細胞毒性が低く、より活性な親形態に、酵素的に活性化又は転換され得る製薬的に活性な物質の先駆体又は誘導体形態を称する。例えば、Wilman, 「Prodrugs in Cancer Chemotherapy」, Biochemical Society Transactions, 14, pp.375-382, 615th Meeting Belfast(1986)及びStellaら,「Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery」, Directed Drug Delivery, Borchardtら,(編), pp.247-267, Humana Press(1985)を参照。限定するものではないが、本発明のプロドラッグには、ホスファート含有プロドラッグ、チオホスファート含有プロドラッグ、スルファート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸変性プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β-ラクタム含有プロドラッグ、任意に置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ又は任意に置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、より活性のある細胞毒のない薬剤に転換可能な5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグが含まれる。限定するものではないが、本発明で使用されるプロドラッグ形態に誘導体化可能な細胞傷害剤の例には、前掲の化学療法剤が含まれる。
【0043】
「外来抗原」とは、それに暴露される哺乳動物に内在しない、又は該哺乳動物に先天的に存在しない分子又は分子群を意味する。外来抗原は、哺乳動物において、免疫反応、例えばホルモン及び/又はT細胞媒介性反応を誘発する可能性がある。一般的に、外来抗原に対して抗体が生産される。ここで考慮される外来抗原の例には、免疫原性療法剤、例えば抗体等のタンパク質、特に非-ヒトアミノ酸残基を含有する抗体(例えば齧歯動物の、キメラ化/ヒト化、及びプリマタイズした抗体));毒素(場合によっては抗体等の分子にコンジュゲート又はターゲティングしていてよく、ここでターゲティング分子は免疫原性であってよい);遺伝子治療用ウイルスベクター、例えばレトロウイルス及びアデノウイルス;移植片;病原菌(例えば細菌及びウイルス);アロ抗原(すなわち、あるものでは生じるが、同種の他のメンバーでは生じない抗原)、例えば血液型の差異、リンパ球抗原(HLA)、血小板抗原、移植された器官で発現する抗原、血液成分、妊娠(Rh)、及び血友病因子(第VIII因子及び第IX因子)が含まれる。
【0044】
外来抗原に対して「免疫反応をブロックする」とは、外来抗原への暴露からの、少なくとも一の免疫媒介性反応を低下又は防止することを意味する。例えば、一つには、哺乳動物において抗原に対する抗体の生産を防止又は低減することによって、外来抗原に対する液性応答を弱化させる。代替的に又は付加的に、イディオタイプを抑制;アロ抗体でコーティングされた細胞の除去を沈静化;及び/又は抗原-提示細胞の枯渇によるアロ抗原の付与に影響を与えてもよい。
【0045】
ここで使用される場合、「移植片」なる用語は、レシピエントへの移植のために、ドナーから得られた生物学的物質を称する。移植片には、多様な物質、例えば島細胞等の単離された細胞;組織、例えば新生児の羊膜、骨髄、造血前駆細胞、及び眼組織、例えば角膜組織;及び器官、例えば皮膚、心臓、肝臓、脾臓、膵臓、甲状腺葉、肺、腎臓、管状臓器(例えば腸、血管、又は食道)が含まれる。管状臓器は、食道、血管又は胆管の損傷を受けた部分と置き換えるために使用することができる。皮膚移植片は、火傷のためばかりでなく、横隔膜ヘルニアなどのある種の血管を閉じるため、又は損傷を受けた腸の包帯しても使用することができる。移植片は、屍体又は生存しているドナーのいずれからでも、ヒトを含む任意の哺乳動物源から得られる。好ましくは、移植片は骨髄又は心臓等の器官であり、移植片のドナー及びホストは、HLAクラスII抗原に適合している。
【0046】
ここで使用される場合、「哺乳動物ホスト」なる用語は、任意の適合性のある移植レシピエントを称する。「適合性」とは、提供される移植片を受容するであろう哺乳動物ホストを称する。好ましくはホストはヒトである。移植片のドナーとホストの双方がヒトである場合、組織適合性を改善させるために、HLAクラスII抗原で適合していることが好ましい。
ここで使用される場合、「ドナー」なる用語は、そこから移植片を得るための、死亡した又は生存している哺乳動物種を称する。好ましくはドナーはヒトである。ヒトドナーでは、主要血液型の境界が交じると、同種移植片の生存率が損なわれるため、主要ABO血液型が同じで、健康診断で正常であり、自ら志願した血縁関係のあるドナーであることが好ましい。しかしながら、A、B又はABレシピエントへ、O型ドナーの腎臓を移植することはできる。
【0047】
「移植」なる用語又はその変形は、移植手術が同系(ドナーとレシピエントが遺伝学的に同一)、同種異系(ドナーとレシピエントが遺伝的由来は異なるが、同じ種)、又は異種(ドナーとレシピエントが異なる種)であろうとなかろうと、ホストに移植片を挿入することを称する。例えば、典型的なシナリオでは、ホストはヒトであり、移植片は、異なる遺伝的由来、又は同じヒトから得られた同系移植片である。他のシナリオでは、移植片は、移植されるところとは異なる種から得られたものであり、例えばヒトレシピエントホストに移植されるヒヒの心臓、系統的に広範囲の種の動物を含み、例えばブタの心臓弁、又はヒトホストに移植される動物のベータ島細胞又は神経細胞がそれである。
【0048】
「遺伝子治療」とは、それで治療される哺乳動物に核酸を挿入する一般的アプローチを意味する。核酸は関心あるポリペプチドをコードするものであってもよいし、アンチセンス核酸であってもよい。遺伝子治療用ベクターの一又は複数の成分又は組成は、それで治療される哺乳動物において免疫原性であってよい。例えば組成物中のウイルスベクター(例えばアデノウイルス、単純疱疹I型ウイルス又はレトロウイルス);脂質;及び/又はターゲティング分子は、それで治療される哺乳動物において免疫反応を誘発し得る。
【0049】
「哺乳動物待機移植の脱感作」なる表現は、哺乳動物への移植片の投入前に、移植に対するアレルギー敏感性又は反応性を低下又は根絶することを称する。これは、任意のメカニズム、例えば脱感作された哺乳動物における抗-ドナー抗体の低減化により達成され、例えばこのような抗-ドナー抗体は、ヒトリンパ球抗原(HLA)に対する。
ここで「中和抗体」とは、関心のある抗原(例えば治療用抗体、例えばCD20抗体)にのみ結合するのではなく、ある程度、抗原の生物活性を阻害する抗体を称する。
【0050】
II.中和抗体アッセイ
この発明は、少なくとも部分的に、B細胞表面マーカーに結合するアンタゴニスト又は治療用抗体(例えば、CD20に結合する抗体)に対し、中和抗体を検出するためのアッセイに関する。アッセイは、抗体又はアンタゴニストの生物活性をブロックするための、抗体又はアンタゴニストで治療された患者からの生体サンプルの能力を測定するものである。ブロック活性は、抗体又はアンタゴニストの効果の低減度合いを示し得る。
サンプルは、一般的に、患者を抗体又はアンタゴニストで治療する前及び/又は後に、患者から得られる。通常、生体サンプルは、一連の時点で、例えば治療前から、治療サイクルの間中、患者から得られる。このアッセイの実施を妨害する薬剤を回避するために、生体サンプルは、通常、薬剤のウォッシュアウトが生じたときに取り出されるであろう。例えば、ベースライン、3、6及び9ヶ月でのサンプルがテストされ得る。患者が後日再治療されるならば、ベースライン、及び3又は6ヶ月でのサンプルが、中和抗体用にテストされ得る。
生体サンプルは、ヒト抗-マウス抗体(HAMA)、ヒト抗-キメラ抗体(HACA)又はヒト抗-ヒト抗体(HAHA)等の、患者を治療する抗体又はアンタゴニストに結合する抗体を含み得る。HAHAはヒト化又はヒト治療用抗体のいずれかに対する。一実施態様において、サンプルは、このような抗体を含有することが測定されるものである。例えば患者からの血清は、以下の実施例1又は米国特許出願第2003/0068664号(Albitarら)におけるELISAアッセイを介して、当該問題における薬剤に対する抗体を含有することが見出され得る。
アッセイに使用される生体サンプルは、血清、血漿、細胞溶解物、ミルク、唾液、及び他の分泌物、並びに、一又は複数の任意のこのような生物検体から回収された抗体であってよい。好ましくは、患者からの血清は、ここでアッセイにかけられる。
【0051】
中和抗体は、注入された薬剤の予期された薬理学的レベルを低下させる、よって効果を低減させ、より多様な反応可能性を作り出す。中和抗体は、再治療時の、血清の病気又は免疫複合体病に関連している可能性がある。例えば、中和抗体反応が示される場合、治療を中止又は延期してもよく、又は用量を増加してもよく、又は患者に抗体又はアンタゴニストの効果が改善された薬剤をさらに投与してもよく、及び/又はそこでの免疫反応を低下させてもよい。中和抗体反応が観察される箇所での免疫反応を低下させるために、治療と組み合わせることが可能な種々の免疫抑制剤が知られており、例示的なこのような薬剤は、特にここに記載される。
【0052】
アッセイの使用方法に加えて、患者を治療する臨床医学者により、HAMA、HACA又はHAHAデータと合わせた抗-薬剤抗体の中和特性、 免疫原性、又は免疫原性の傾向、並びに抗体又はアンタゴニストの免疫原性の性質が示される。この情報は、治療に対する患者の潜在的免疫反応を予測し、薬剤の安全性を評価するのに有用である。
【0053】
本アッセイは、米国特許第2003/0068664号, Albitarら)のELISAアッセイ以上に改良されており、当該問題において、薬剤に対する任意の抗体反応が、薬剤の生物活性を実質的に(少なくともある程度)中和可能であろうとなかろうと、薬剤がB細胞表面マーカーに対する抗体又はアンタゴニストであろうとなかろうと、評価することができる。CD20抗体、又はB細胞表面マーカーに結合する他のアンタゴニストにおいて、アッセイは、それによる治療のみで部分的なB細胞枯渇に至る、B細胞の過反応が生じる(例えばSLEにおいて)、又は病気の持続性症候群が、何年にもわたって存在する(例えばSLE及びRA)場合に、特に有用であると考えられる。
自己免疫疾患を治療するために、抗体又はアンタゴニストで治療される患者にアッセイを使用することが特に望ましい。種々の自己免疫疾患がここで記載されるが、例示的なものには、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、ヴェーゲナー病、炎症性大腸炎、突発性又は免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症(MS)、乾癬、IgA腎症、IgM多発性神経障害、重症筋無力症、脈管炎、真性糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群、糸球体腎炎、自己免疫性溶血性貧血が含まれる。
アンタゴニスト又は抗体がB細胞表面マーカー、例えばCD20抗原に結合する場合、患者は、自己免疫疾患、B細胞悪性腫瘍を有している可能性が高く、またアンタゴニスト又は抗体は、外来抗原に対する免疫反応をブロックするのに使用され得る(例えば、ここで外来抗原は免疫原性治療剤、又は移植片である)。
【0054】
本発明の好ましい実施態様では、生物活性アッセイには、細胞ベースの機能アッセイ、例えば補体依存性細胞傷害性(CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、アポトーシス、又は細胞の成長阻害を測定するアッセイが含まれる。
好ましくは、アッセイではCDC活性が検査される。本発明のこの実施態様では、抗体又はアンタゴニストが結合する抗原(例えばB細胞表面マーカー、特にCD20)を発現する細胞を、抗体又はアンタゴニスト、並びに抗体又はアンタゴニストで治療される患者からの生体サンプルの存在(又は不在)下、補体(好ましくはヒト補体)に暴露してよい。本出願では、任意の順序で同時に又は逐次、4つの成分(細胞、補体、抗体又はアンタゴニスト、及び生体サンプル)を暴露することが考えられており;これら全ての可能性は、「治療用抗体とそれで治療される患者からの生体サンプルの存在下、治療用抗体が結合する抗原を発現する細胞を、補体に暴露」なる表現に包含される。しかしながら、本発明の好ましい実施態様においては、生体サンプル(例えば血清)が、抗体又はアンタゴニスト活性を中和可能なように、抗体又はアンタゴニストと組み合わせられ、ついで、細胞と補体が、この混合物に添加される。
【0055】
暴露工程の後、CDC活性、好ましくは細胞生存率を算定する(すなわち生存している細胞を定量化する)ことにより測定する。細胞生存率を測定するための種々の方法が利用可能であり、 AlamarBlueTMアッセイ等、未処理細胞に対し、ヨウ化プロピジウム(PI)、トリパンブルー(Mooreら Cytotechnology 17:1-11 (1995)を参照)、アネキシンV、又は7AADの取り込みにより評価されるような、膜の完全性の損失度合いの測定が含まれる。CDCを媒介する抗体又はアンタゴニストの能力の低下は、中和抗体が生体サンプルに存在していることを示す。
【0056】
細胞ベースアッセイにおいては、抗体又はアンタゴニストが結合する抗原を発現する細胞系が、一般的に使用されるであろう。CD20抗原のケースにおいて、WIL2-S細胞(ATCC CRL 8885, American Type Culture Collection)、又はCD20発現リンパ芽B細胞系を含む、種々の細胞が利用可能である。CD20陽性細胞を使用するCDCアッセイは、Idusogieら, J. Immunol. 164:4178-4184 (2000); Idusogieら, J. Immunol. 166:2571-2575 (2001); Reffら Blood 83(2):435-445 (1994); 米国特許第6,194,551B1号(Idusogieら); 及び米国特許第5,736,137号(Andersonら)に記載されている。
【0057】
ADCCを評価するアッセイの場合、抗体又はアンタゴニストは、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)及び/又は治療用抗体が結合する抗原を発現する細胞の末梢血液単核細胞(PBMC)の溶解を媒介する能力についてアッセイされ得る。CD20抗原のケースにおいては、WIL2-S細胞が使用され、 Shieldsら, J. Biol. Chem. 276:6591-6604(2001)及び国際公開第00/42072号(Presta, L.)には、これらの細胞を使用する例示的なADCCアッセイについて記載されている。またClynesら Nature Medicine 6:443-6 (2000)を参照。さらに米国特許第5,736,137号(Andersonら)には、CD20陽性細胞を使用するADCCアッセイが記載されている。
【0058】
アポトーシスとは、ブロック細胞等の、プログラムされた細胞死を称し、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞断片化、及び/又は膜小胞の形成(アポトーシス体と呼ばれる)等の多様なアッセイにより決定され得る。アポトーシスを誘発する抗体(例えばリツキシマブ)の能力を測定するアッセイは、例えば、Shanら Cancer Immunol Immunther 48:673-83 (2000); Pedersenら Blood 99:1314-9 (2002); Demidemら Cancer Chemotherapy & Radiopharmaceuticals 12(3):177-186 (1997)に記載されている。
細胞、例えばアンタゴニスト又は抗体が結合する抗原を発現する癌性B細胞の成長を阻害する、アンタゴニスト又は抗体の能力は、種々のアッセイにより評価することができる。Tajiら Jpn J. Cancer Res 89:748-56 (1998)には、CD20抗体によるCD20-陽性Bリンパ腫細胞系の成長阻害度の測定方法が記載されている。
【0059】
ここで中和抗体アッセイを使用すると、抗体又はアンタゴニストで治療された患者からの生体サンプルの、抗体又はアンタゴニストの生物活性をブロックする能力が測定されて、抗体又はアンタゴニスト(例えばCD20に結合するもの)の効果が測定され、ここで、対象サンプルに対して生物活性が低下することは、患者に当該問題における抗体又はアンタゴニストに対する抗体が産生され、及び/又はこのような抗体が、少なくともある程度、抗体又はアンタゴニストの生物活性を中和可能であることを示している。有意な反応は、中和抗体開発における安全性に関する問題、及び/又は薬剤の改変クリアランスに応じて、一次薬剤の用量を変えるための必要条件に帰するものであり得る。例えば、同量の前治療された対応物(例えばHAMA、HACA及びHAHAネガティブ)と比較して、付与された濃度にて、抗体又はアンタゴニスト薬剤の約20%又はそれ以上の活性が中和されたサンプルは、抗体又はアンタゴニストに対する中和抗体に対してポジティブであると考えられる。
【0060】
III. アンタゴニスト又は抗体の製造
本発明の方法は、B細胞表面マーカーに結合するアンタゴニスト又は治療用抗体を使用するか、これを導入したものである。従って、このようなアンタゴニスト又は抗体を生産するための方法を以下に記載する。
アンタゴニスト又は抗体の製造又はスクリーニングに使用される抗原は、例えば所望のエピトープを含む抗原又はそれらの一部の可溶形態のものであってよい。あるいは、又は付加的に、アンタゴニスト又は抗体を生産又はスクリーニングするために、その細胞表面に抗原を発現する細胞を使用することもできる。アンタゴニスト又は抗体の生産に有用な他の形態の抗原は当業者には明らかであろう。好ましくは、抗原は、B細胞表面マーカー、例えばCD20抗原である。
好ましいアンタゴニストは抗体であるが、ここでは抗体以外のアンタゴニストを考慮することとする。例えば、アンタゴニストには細胞傷害剤(例えば上述したもの)と融合又はコンジュゲートしてもよい小分子アンタゴニストが含まれ得る。小分子のライブラリーは、抗原に結合する小分子を同定するために、ここで関心あるB細胞表面マーカーに対してスクリーニングされる。さらに小分子は、その拮抗特性がスクリーニングされ、及び/又は細胞傷害剤とコンジュゲートされ得る。
また、アンタゴニストは、理論的設計又はファージ表示(例えば、1998年8月13日に公開された国際公開第98/35036号)により生産されるペプチドであってもよい。一実施態様において、分子は「CDR模倣物」又は抗体のCDRに基づいて設計された抗体類似物が選択されてもよい。このようなペプチドはそれら自体で拮抗作用を示すが、ペプチドの拮抗特性を高める又は添加するために、細胞傷害剤とペプチドを融合させてもよい。
他の実施態様において、アンタゴニストは、免疫グロブリンFc領域等の免疫グロブリンに融合するCD20のような、B細胞表面マーカーに結合するペプチド又はタンパク質等の、結合ドメインを含むイムノアドヘシンである。
以下に、本発明で使用される抗体アンタゴニストの生産のための例示的技術を示す。
【0061】
(i) ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連する抗原とアジュバントを複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することにより動物に産生される。免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又は大豆トリプシンインヒビターに関連する抗原を、二官能性又は誘導体形成剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基によるコンジュゲート)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl、又はRとRが異なったアルキル基であるRN=C=NRによりコンジュゲートさせることが有用である。
動物を、例えばタンパク質又はコンジュゲート100μg又は5μg(それぞれウサギ又はマウスの場合)を完全フロイントアジュバント3容量と併せ、この溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して免疫化する。1ヶ月後、該動物を、完全フロイントアジュバントに入れた初回量の1/5ないし1/10のペプチド又はコンジュゲートを用いて複数部位に皮下注射することにより、追加免疫する。数日ないし14日後に動物を採血し、抗体価について血清を検定する。動物は、力価がプラトーに達するまで追加免疫する。好ましくは、動物は、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なったタンパク質にコンジュゲートさせた、及び/又は異なった架橋剤によってコンジュゲートさせたコンジュゲートで追加免疫する。コンジュゲートはまたタンパク融合として組換え細胞培養中で調製することもできる。また、ミョウバンのような凝集化剤が、免疫反応の増強のために適切に使用される。
【0062】
(ii) モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する、すなわち、集団に含まれる個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じる可能な突然変異を除いて同一である。よって、「モノクローナル」との修飾詞は、別個の抗体の混合物ではなく、抗体の特性を示すものである。
例えば、モノクローナル抗体は、Kohlerら, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製でき、又は組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作製することができる。
ハイブリドーマ法においては、マウス又はその他の適当な宿主動物、例えばハムスターを上記したようにして免疫し、免疫化に用いられるタンパク質と特異的に結合する抗体を生産するか又は生産することのできるリンパ球を導き出す。別法として、リンパ球をインビトロで免疫してもよい。次に、リンパ球を、ポリエチレングリコールのような適当な融剤を用いて骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成させる(Goding, モノクローナル抗体: Principles及びPractice,pp.59-103(Academic Press, 1986))。
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合していない親の骨髄腫細胞の増殖又は生存を阻害する一又は複数の物質を好ましくは含む適当な培養培地に蒔き、増殖させる。例えば、親の骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニジンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失するならば、ハイブリドーマのための培養培地は、典型的には、HGPRT欠失細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含有するであろう(HAT培地)。
【0063】
好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの生産を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性である細胞である。これらの中でも、好ましい骨髄腫細胞系は、マウス骨髄腫系、例えば、ソーク・インスティテュート・セル・ディストリビューション・センター、サンディエゴ、カリフォルニア、USAから入手し得るMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍、及びアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ロックヴィル、メリーランド、USAから入手し得るSP-2又はX63-Ag8-653細胞から誘導されたものである。ヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞系もまたヒトモノクローナル抗体の産生のために記載されている(Kozbor, J.Immunol., 133:3001 (1984);Brodeurら, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51-63(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
【0064】
ハイブリドーマ細胞が生育している培養培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって測定する。
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunsonほか, Anal. Biochem., 107:220 (1980)のスキャッチャード分析法によって測定することができる。
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、該クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる(Goding, Monoclonal antibodies:Principles and Practice, pp.59-103(Academic Press, 1986))。この目的に対して好適な培養培地には、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地が包含される。加えて、該ハイブリドーマ細胞は、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。
【0065】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィーのような常套的な免疫グロブリン精製法により、培養培地、腹水、又は血清から好適に分離される。
【0066】
モノクローナル抗体をコードしているDNAは、常法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)即座に分離され配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源である。ひとたび分離されたならば、DNAを発現ベクター中に入れ、ついでこれを、免疫グロブリンタンパク質を産生等しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞のような宿主細胞中にトランスフェクトし、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成をなすことができる。抗体をコードするDNAの細菌中での組換え発現に関する概説論文には、Skerraら, Curr. Opinion in Immunol., 5:256-262(1993)及びPlueckthum, Immunol. Revs., 130:151-188(1992)が含まれる。
【0067】
さらなる実施態様では、抗体又は抗体断片は、McCaffertyら, Nature, 348:552-554 (1990)に記載された技術を使用して産生される抗体ファージライブラリから単離することができる。Clacksonら, Nature, 352:624-628 (1991)及び Marksら, J.Mol.Biol., 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリを使用したマウス及びヒト抗体の単離を記述している。続く刊行物は、鎖シャフリングによる高親和性(nM範囲)のヒト抗体の生産(Marksら, Bio/Technology, 10:779-783(1992))、並びに非常に大きなファージライブラリを構築するための方策としてコンビナトリアル感染とインビボ組換え(Waterhouseら, Nuc.Acids.Res., 21:2265-2266(1993))を記述している。従って、これらの技術はモノクローナル抗体の単離に対する伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術に対する実行可能な別法である。
【0068】
DNAはまた、例えば、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード化配列を、相同的マウス配列に代えて置換することにより(米国特許第4,816,567号;Morrisonら, Proc.Nat.Acad.Sci.,USA,81:6851(1984))、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部又は一部を共有結合させることで修飾できる。
典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインに置換され、又は抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに置換されて、抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合部位と異なる抗原に対する特異性を有するもう一つの抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を作り出す。
【0069】
(iii) ヒト化抗体
非ヒト抗体をヒト化する方法は当該技術に記載されている。好ましくは、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入されている。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と呼ばれる。ヒト化は、ヒト抗体の該当する配列を高頻度可変領域配列で置換することによりウィンターと共同研究者の方法(Jonesほか, Nature, 321:522-525 (1986)、Riechmannほか;Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyenほか, Science, 239:1534-1536(1988))に本質的に従って実施することができる。よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の該当する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的にはいくらかの高頻度可変領域残基及び場合によってはいくらかのFR残基が齧歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
【0070】
抗原性を低減するには、ヒト化抗体を生成する際に使用するヒトの軽重両方の可変ドメインの選択が非常に重要である。いわゆる「ベストフィット法」では、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対してスクリーニングする。次に齧歯動物のものと最も近いヒト配列をヒト化抗体のヒトフレームワーク領域(FR)として受け入れる(Simsほか, J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothiaら, J. Mol. Biol., 196:901(1987))。他の方法では、軽又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用してよい(Carterほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Prestaほか, J. Immunol., 151:2623[1993])。
【0071】
さらに、抗体を、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが重要である。この目標を達成するべく、好ましい方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは購入可能である。これら表示を見ることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性が高まるといった、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、高頻度可変領域は、直接かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
【0072】
(iv) ヒト化抗体
ヒト化のための別法により、ヒト抗体を生産することができる。例えば、内因性の免疫グロブリン産生がなくともヒト抗体の全レパートリーを免疫化することで産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作ることが今は可能である。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子の同型接合除去が内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖系列突然変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子列の転移は、抗原投与時にヒト抗体の産生をもたらす。Jakobovitsら, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:2551 (1993);Jakobovitsら, Nature 362:255-258 (1993); Bruggermanら, Year in Immuno., 7:33 (1993);米国特許第5,591,669号、同5,589,369号及び同5,545,807号を参照されたい。
【0073】
別に、ファージ表示技術(McCaffertyら, Nature 348:552-553(1990))を、非免疫化ドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体及び抗体断片を産出させるために使用することができる。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子は、繊維状バクテリオファージ、例えばM13又はfdの大きい又は小さいコートタンパク質遺伝子のいずれかにインフレームでクローン化し、ファージ粒子の表面に抗体断片の機能として表示する。繊維状粒子がファージゲノムの単一ストランドのDNAコピーを含むので、抗体の機能特性に基づいた選択により、これらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択がなされる。よって、ファージはB細胞の特性のいくつかを模倣している。ファージ表示は多様な形式で行うことができる;例えばJohnson, Kevin S. 及びChiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571(1993)を参照のこと。V-遺伝子セグメントのいくつかの供給源がファージ表示のために使用可能である。Clacksonら, Nature, 352:624-628(1991)は、免疫化されたマウス脾臓から得られたV遺伝子の小ランダム組合せライブラリからの抗-オキサゾロン抗体の異なった配列を単離した。非免疫化ヒトドナーからのV遺伝子のレパートリーを構成可能で、抗原(自己抗原を含む)とは異なる配列の抗体を、Marksら, J. Mol. Biol. 222:581-597(1991)、又はGriffithら, EMBO J. 12:725-734(1993)に記載の技術に本質的に従って単離することができる。また、米国特許第5,565,332号及び同5,573,905号を参照のこと。
また、ヒト抗体は、活性化B細胞によりインビトロで生産してもよい(例えば米国特許第5,567,610号及び同5,229,275号を参照)。
【0074】
(v) 抗体断片
抗体断片を生産するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、無傷の抗体のタンパク分解性消化を介して誘導されていた(例えば、Morimotoら, Journal of Biochemical及びBiophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennanら, Science, 229:81(1985)を参照されたい)。しかし、これらの断片は現在は組換え宿主細胞により直接生産することができる。例えば、抗体断片は上述において検討した抗体ファージライブラリから単離することができる。別法として、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収することができ、化学的に結合してF(ab')断片を形成することができる(Carterら, Bio/Technology 10:163-167(1992))。他のアプローチ法では、F(ab')断片を組換え宿主細胞培養から直接単離することができる。抗体断片の生産のための他の技術は当業者には明らかであろう。他の実施態様では、選択抗体は単鎖Fv断片(scFV)である。国際公開第93/16185号;米国特許第5,571,894号;及び米国特許第5,587,458号を参照のこと。また、抗体断片は、例えば米国特許第5,641,870号に記載されているような「線形抗体」であってもよい。このような線形抗体断片は単一特異性又は二重特異性であってよい。
【0075】
(vi) 二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する抗体である。例示的な二重特異性抗体は、B細胞表面マーカーの2つの異なるエピトープに結合しうる。他のこのような抗体は第1のB細胞表面マーカーに結合し、さらに第2のB細胞表面マーカーに結合する。あるいは、抗B細胞表面マーカー結合アームは、B細胞に細胞防御メカニズムを集中させるように、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)等のIgG(FcγR)に対するFcレセプター、又はT細胞レセプター分子(例えばCD2又はCD3)等の白血球上のトリガー分子に結合するアームと結合しうる。また、二重特異性抗体はB細胞に細胞傷害剤を局在化するためにも使用されうる。これらの抗体はB細胞表面マーカー結合アーム及び細胞傷害剤(例えば、サポリン(saporin)、抗インターフェロン-α、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキセート又は放射性同位体ハプテン)と結合するアームを有する。二重特異性抗体は全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab')2二重特異性抗体)として調製することができる。
【0076】
二重特異性抗体を作成する方法は当該分野において既知である。全長二重特異性抗体の伝統的な産生は二つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づき、ここで二つの鎖は異なる特異性を持っている(Millsteinら, Nature, 305:537-539(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖が無作為に取り揃えられているため、これらのハイブリドーマ(四部雑種)は10個の異なる抗体分子の可能性ある混合物を産生し、そのうちただ一つが正しい二重特異性構造を有する。通常、アフィニティークロマトグラフィー工程により行われる正しい分子の精製は、かなり煩わしく、生成物収率は低い。同様の方法が国際公開93/08829号及びTrauneckerら、EMBO J. 10:3655-3659(1991)に開示されている。
【0077】
異なったアプローチ法では、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗原−抗体結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合させる。該融合は好ましくは、少なくともヒンジの一部、CH2及びCH3領域を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。軽鎖の結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)を、融合の少なくとも一つに存在させることが望ましい。免疫グロブリン重鎖の融合、望まれるならば免疫グロブリン軽鎖をコードしているDNAを、別個の発現ベクター中に挿入し、適当な宿主生物に同時トランスフェクトする。これにより、組立に使用される三つのポリペプチド鎖の等しくない比率が最適な収率をもたらす態様において、三つのポリペプチド断片の相互の割合の調節に大きな融通性が与えられる。しかし、少なくとも二つのポリペプチド鎖の等しい比率での発現が高収率をもたらすとき、又はその比率が特に重要性を持たないときは、2または3個全てのポリペプチド鎖のためのコード化配列を一つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0078】
このアプローチ法の好適な実施態様では、二重特異性抗体は、第一の結合特異性を有する一方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖と他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)とからなる。二重特異性分子の半分にしか免疫グロブリン軽鎖がないと容易な分離法が提供されるため、この非対称的構造は、所望の二重特異性化合物を不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから分離することを容易にすることが分かった。このアプローチ法は、国際公開94/04690号に開示されている。二重特異性抗体を産生するさらなる詳細については、例えばSureshら, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照されたい。米国特許第5,731,168号に記載された他のアプローチ法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養から回収されるヘテロダイマーのパーセントを最大にすることができる。好適な界面は抗体定常ドメインのC3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同じ又は類似のサイズの相補的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第2の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモダイマーのような不要の他の最終産物に対してヘテロダイマーの収量を増大させるメカニズムが提供される。
【0079】
二重特異性抗体は、架橋した又は「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲートの抗体の一方はアビジンに結合され、他方はビオチンに結合され得る。そのような抗体は、例えば、不要の細胞に対する免疫系細胞をターゲティングするため(米国特許第4,676,980号)、及びHIV感染の治療のために提案された(国際公開91/00360号、国際公開第92/00373号、及び欧州特許第03089号)。ヘテロコンジュゲート抗体は、あらゆる簡便な架橋法を用いて作製することができる。好適な架橋剤は当該分野において良く知られており、幾つかの架橋技術と共に米国特許第4,676,980号に開示されている。
【0080】
抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennanら, Science, 229:81 (1985);Shalabyら., J. Exp. Med., 175:217-225(1992)。
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作成し単離する様々な技術もまた記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生産されている。Kostelnyら, J.Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab'部分に結合させる。抗体ホモダイマーをヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、ついで再酸化して抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法はまた抗体ホモダイマーの生産に対して使用することができる。Hollingerら, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作成する別のメカニズムを提供した。断片は、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには十分に短いリンカーにより軽鎖可変ドメイン(V)に重鎖可変ドメイン(V)を結合してなる。従って、一つの断片のV及びVドメインは他の断片の相補的V及びVドメインと強制的に対形成させられ、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用により二重特異性抗体断片を製造する他の方策もまた報告されている。Gruberら, J.Immunol. 152:5368 (1994)を参照されたい。
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tuttら J.Immunol. 147:60(1991)。三又はそれ以上の抗原結合部位を有する抗体は、特に出典明示によりここに取り込まれる、国際公開第01/77342号(Miller及びPresta)に記載されている。
【0081】
IV. アンタゴニスト又は抗体のコンジュゲート及び他の修飾
ここでの方法に使用され、製造品に包含されるアンタゴニスト又は抗体は、通常、細胞傷害剤とコンジュゲートされる。
このようなアンタゴニスト又は抗体-細胞傷害剤コンジュゲートの生成に有用な化学療法剤は上述したものである。
また、ここではカリケアマイシン、メイタンシン(maytansine)(米国特許第5,208,020号)、トリコセン(trichothene)、及びCC1065等の、一又は複数の小分子毒素とアンタゴニスト又は抗体とのコンジュゲートが考察される。本発明の一実施態様において、アンタゴニスト又は抗体は一又は複数のメイタンシン分子(例えば、アンタゴニスト又は抗体1分子当たり、約1〜10のメイタンシン分子)とコンジュゲートされる。例えば、メイタンシンはMay-SH3に還元され、修飾されたアンタゴニスト又は抗体と反応するMay-SS-Meに転化され(Chariら, Cancer Research, 52:127-131(1992))、メイタンシノイド-アンタゴニスト又は抗体コンジュゲートを生産する。
【0082】
別法では、アンタゴニスト又は抗体は一又は複数のカリケアマイシンにコンジュゲートされる。カリケアマイシンファミリーの抗生物質はサブピコモル濃度で二重ストランドDNAを破壊することができる。限定するものではないが、使用されるカリケアマイシンの構図類似体には、γ、α、α、N-アセチル-γ、PSAG及びθが含まれる(Hinmanら, Cancer Research, 53:3336-3342(1993)及びLodeら, Cancer Research, 58:2925-2928(1998))。
【0083】
使用可能な酵素活性毒素及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa))、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン(sarcin)、アレウライツ・フォルディイ(Aleurites fordii)プロテイン、ジアンシン(dianthin)プロテイン、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)プロテイン(PAPI、PAPII及びPAP-S)、モモルディカ・キャランティア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア(sapaonaria)オフィシナリスインヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコセセンス(tricothecenes)が含まれる。例えば1993年10月28日に公開の国際公開第93/21232号を参照のこと。
本発明では、核酸分解活性を有する化合物(例えば、リボヌクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNase)とコンジュゲートしたアンタゴニスト又は抗体をさらに考慮する。
種々の放射活性同位体も放射性コンジュゲートアンタゴニスト又は抗体の生成に利用できる。具体例にはAt211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位体が含まれる。
【0084】
アンタゴニスト又は抗体と細胞傷害剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルチオール)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート類(例えば、トリエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitettaら, Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレン-トリアミン五酢酸(MX-DTPA)が、アンタゴニスト又は抗体に放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするためのキレート剤の例である。国際公開第94/11026号を参照されたい。リンカーは細胞中の細胞傷害剤の放出を容易にするための「切断可能リンカー」であってよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチターゼ過敏性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカー(Chariら, Cancer Research, 52:127-131(1992))が使用され得る。
別法として、アンタゴニスト又は抗体及び細胞傷害剤を含有する融合タンパク質は、例えば組換え技術又はペプチド合成により作製され得る。
【0085】
また、本発明のアンタゴニスト又は抗体は、プロドラッグ(例えばペプチジル化学療法剤、国際公開第81/01145号を参照)を活性な抗癌剤に転化させるプロドラッグ活性化酵素にコンジュゲートさせてもよい。例えば国際公開第88/07378及び米国特許第4,975,278号を参照されたい。
このようなコンジュゲートの酵素成分には、より活性な細胞傷害形態に転化するように、プロドラッグに作用し得る任意の酵素が含まれる。
限定するものではないが、この発明の方法に有用な酵素には、ホスファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアルカリ性ホスファターゼ;スルファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアリールスルファターゼ;非毒性5-フルオロシトシンを抗癌剤5-フルオロウラシルに転化するのに有用なシトシンデアミナーゼ;プロテアーゼ、例えばセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ及びカテプシン(例えば、カテプシンB及びL)で、ペプチド含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なもの;D-アミノ酸置換基を含有するプロドラッグの転化に有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;炭水化物切断酵素、例えばグリコシル化プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なノイラミニダーゼ及びβ-ガラクトシダーゼ;β-ラクタム類で誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化させるのに有用なβ-ラクタマーゼ;及びペニシリンアミダーゼ、例えばそれぞれフェノキシアセチル又はフェニルアセチル基で、それらのアミン性窒素において誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化するのに有用なペニシリンVアミダーゼ又はペニシリンGアミダーゼが含まれる。あるいは、「アブザイム」としてもまた公知の酵素活性を有する抗体を、遊離の活性薬剤に本発明のプロドラッグを転化させるために使用することもできる(例えば、Massey, Nature 328:457-458(1987)を参照)。アンタゴニスト又は抗体-アブザイムコンジュゲートは、ここで記載されているようにして、腫瘍細胞個体群にアブザイムを送達するために調製することができる。
【0086】
この発明の酵素は、当該分野においてよく知られている技術、例えば上述にて検討したヘテロ二官能性架橋試薬を使用することにより、アンタゴニスト又は抗体に共有的に結合させることができる。あるいは、抗体の少なくとも抗原結合領域を本発明の酵素の少なくとも機能的に活性な部位に結合せしめてなる融合タンパク質を、当該技術においてよく知られている組換えDNA技術を使用して作成することができる(Neuberger等, Nature 312:604-608(1984))。
アンタゴニスト又は抗体の他の修飾をここで考察する。例えば、アンタゴニスト又は抗体は種々の非タンパク質様ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレン、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのコポリマーに結合してもよい。
【0087】
また、ここに開示するアンタゴニスト又は抗体は、リポソームとして調製してもよい。アンタゴニスト又は抗体を含むリポソームは、Epstein等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 3688 (1985); Hwang等, Proc. natl. Acad. Sci. USA, 77: 4030 (1980); 米国特許第4,485,045号及び同4,544,545号;及び1997年10月23日に公開された国際公開第97/38731号に記載されたような、この分野で知られた方法で調製される。向上した循環時間を持つリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG-誘導ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物での逆相蒸発法によって生成することができる。リポソームは、所定の孔サイズのフィルターを通して押し出され、所望の径を有するリポソームが生成される。本発明の抗体のFab'断片は、Martin等, J. Biol. Chem. 257: 286-288 (1982)に記載されているように、ジスルフィド交換反応を介してリポソームにコンジュゲートされ得る。化学療法剤は、場合によってはリポソーム内に包含される。Gabizon等, J. National Cancer Inst. 81(19) 1484 (1989)を参照。
【0088】
ここで記載のタンパク質又はペプチドアンタゴニスト又は抗体のアミノ酸配列の修飾(類)を考察する。例えば、アンタゴニスト又は抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性が改善されることが望ましい。アンタゴニスト又は抗体のアミノ酸配列変異体は、適当なヌクレオチド変化をアンタゴニスト又は抗体核酸に導入することにより、又はペプチド合成により調製される。そのような修飾は、例えば、アンタゴニスト又は抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失、及び/又は挿入及び/又は置換を含む。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせは、最終構造物に達するまでなされるが、その最終構造物は所望の特徴を有する。また、アミノ酸変化は、グリコシル化部位の数又は位置の変化などの、アンタゴニスト又は抗体の翻訳後過程を変更しうる。
【0089】
突然変異誘発に好ましい位置にあるアンタゴニスト又は抗体の所定の残基又は領域の同定のために有用な方法は、Cunningham及びWells , Science 244: 1081-1085 (1989)に記載されているように「アラニンスキャンニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここで、標的残基の残基又は基が同定され(例えば、arg, asp, his, lys及びglu等の荷電残基)、中性又は負荷電アミノ酸(最も好ましくはアラニン又はポリアラニン)に置換され、アミノ酸と抗原との相互作用に影響を及ぼす。次いで置換に対する機能的感受性を示すこれらのアミノ酸の位置は、置換部位において又はそれに対してさらに又は他の変異を導入することにより精密にされる。即ち、アミノ酸配列変異を導入する部位は予め決定されるが、変異自体の性質は予め決める必要はない。例えば、与えられた部位における突然変異の性能を分析するために、alaスキャンニング又はランダム突然変異誘発を標的コドン又は領域で実施し、発現されたアンタゴニスト又は抗体変異体を所望の活性についてスクリーニングする。
【0090】
アミノ酸配列挿入は、1残基から100以上の残基を含むポリペプチドの長さの範囲のアミノ-及び/又はカルボキシル末端融合物、並びに一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入物を含む。末端挿入物の例は、N-末端メチオニル残基を持つアンタゴニスト又は抗体、もしくは細胞傷害ポリペプチドに融合したアンタゴニストを含む。アンタゴニスト又は抗体分子の他の挿入変異体は、アンタゴニスト又は抗体の血清半減期を向上させる酵素又はポリペプチドのアゴニスト又は抗体のN-又はC-末端への融合物を含む。
【0091】
他の型の変異体はアミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、アンタゴニスト又は抗体分子において少なくとも一つのアミノ酸残基が異なる残基で置き換えられている。抗体アンタゴニストの置換突然変異について最も関心ある部位は高頻度可変領域を含むが、FR交互変化も考慮される。保存的置換は、「好ましい置換」と題して表1に示す。これらの置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、表1に「例示的置換」と名前を付けた又はアミノ酸の分類を参照して以下にさらに記載するような、より実質的な変化を導入し、生成物をスクリーニングしてよい。

【0092】
アンタゴニスト又は抗体の生物学的特性における実質的な修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又はへリックス構造、(b)標的部位もしくは(c)側鎖全体における分子の電荷又は疎水性、を維持する効果においてかなり異なる置換基を選択することにより達成される。天然に生じる残基は共通の側鎖特性に基づいてグループに分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン, met, ala, val, leu, ile;
(2)中性の親水性:cys, ser, thr;
(3)酸性:asp, glu;
(4)塩基性:asn, gln, his, lys, arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly, pro; 及び
(6)芳香族:trp, tyr, phe。
非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類のものに交換することが必要であろう。
【0093】
アンタゴニスト又は抗体の適切な配置の維持に含まれない任意のシステイン残基は、一般的にセリンで置換し、分子の酸化的安定性を向上させて異常な架橋を防止してよい。逆に、アンタゴニスト又は抗体にシステイン結合を付加して、その安定性を向上させてもよい(特に、アンタゴニストがFv断片などの抗体断片である場合)。
【0094】
特に好ましい型の置換変異体は、親抗体の一又は複数の高頻度可変領域残基の置換を含む。一般的に、さらなる発展のために選択されて得られた変異体は、それらが生成された親抗体に比較して向上した生物学的特性を有している。そのような置換変異体を生成する簡便な方法はファージ表示を使用する親和成熟である。簡潔に言えば、高頻度可変領域部位(例えば6-7部位)を突然変異させて各部位における全ての可能なアミノ酸置換を生成させる。このように生成された抗体変異体は、繊維状ファージ粒子から、各粒子内に充填されたM13の遺伝子III産物への融合物として一価形式で表示される。ファージ表示変異体は、次いで、ここに開示されるようなそれらの生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。修飾の候補となる高頻度可変領域部位を同定するために、アラニンスキャンニング突然変異誘発を実施し、抗原結合に有意に寄与する高頻度可変領域残基を同定することができる。あるいは、又はそれに加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造を分析して抗体と抗原との接点を同定するのが有利である。このような接触残基及び隣接残基は、ここに述べた技術に従う置換の候補である。そのような変異体が生成されたら、変異体のパネルにここに記載するようなスクリーニングを施し、一又は複数の関連アッセイにおいて優れた特性を持つ抗体をさらなる開発のために選択する。
【0095】
アンタゴニスト又は抗体のアミノ酸変異の他の型は、アンタゴニスト又は抗体の元のグリコシル化パターンを変更する。変更とは、アンタゴニスト又は抗体に見られる一又は複数の炭水化物部分の欠失、及び/又はアンタゴニスト又は抗体に存在しない一又は複数のグリコシル化部位の付加を意味する。
ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N-結合又はO-結合の何れかである。N-結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を称する。アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(ここでXはプロリンを除く任意のアミノ酸)というトリペプチド配列は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的結合のための認識配列である。したがって、ポリペプチド中にこれらのトリペプチド配列の何れかが存在すると、潜在的なグリコシル化部位が作出される。O-結合グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンに、糖類N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースの一つが結合することを称するが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンもまた用いられる。
【0096】
アンタゴニスト又は抗体へのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列を、それが一又は複数の上述したトリペプチド配列(N-結合グリコシル化部位のもの)を含むように変化させることによって簡便に達成される。この変化は、元のアンタゴニスト又は抗体配列への一又は複数のセリン又はスレオニン残基の付加、又はこれによる置換によってもなされる(O-結合グリコシル化部位の場合)。
変更されたFc領域グリコシル化を有する抗体は、特に出典明示によりここに取り込まれる、国際公開第02/079255号(Reff及びDavies)及び国際公開第03/035835号(Presta)に記載されている。
アンタゴニスト又は抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、この分野で知られた種々の方法によって調製される。これらの方法は、限定されるものではないが、天然源からの単離(自然に生じるアミノ酸配列変異体の場合)又はオリゴヌクレオチド媒介(又は部位指向性)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、及びカセット突然変異誘発による初期調製されたアンタゴニスト又は抗体の変異体又は非変異体の調製を含む。
【0097】
本発明のアンタゴニスト又は抗体をエフェクター機能について改変し、例えばアンタゴニスト又は抗体の抗原依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)及び/又は補体依存性細胞傷害性(CDC)を増強することが望ましい。このことは、抗体アンタゴニストのFc領域に一又は複数のアミノ酸置換基を導入することにより達成される。別に、又は付加的にシステイン残基(類)をFc領域に導入して、この領域における鎖間ジスルイド結合を形成させる。このようにして産生されたホモダイマー抗体は改善された内部移行能力及び/又は増加した補体媒介細胞死滅及び抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)を有しうる。Caron等, J. Exp. Med. 176:1191-1195 (1992)及びShopes, B. J. Immunol. 148:2918-2922 (1992)を参照されたい。抗腫瘍活性が高められたホモダイマー抗体は、Wolff等, Cancer Research 53:2560-2565(1993)に記載されているようなヘテロ二官能性架橋剤を使用して調製することもできる。あるいは二重Fc領域を有し、よって増強された補体溶解及びADCC能を有しうる抗体を設計することができる。Stevensonら, Anti-cancer Drug Design 3:219-230 (1989)を参照。変更(増加又は減少)したC1q結合及び又はCDC活性を有する抗体は、特に出典明示によりここに取り込まれる、米国特許第6,194,551B1号及び同6,538,124B1号(Idusogieら)に記載されている。変更(増加又は減少)したFcR結合及び又はADCC活性を有する抗体は、特に出典明示によりここに取り込まれる、国際公開第00/42072号(Presta, L.)に記載されている。
【0098】
アンタゴニスト又は抗体の血清半減期を増加させるために、例えば米国特許第5,739,277号に記載されているようにして、アンタゴニスト又は抗体(特に抗体断片)にサルベージレセプター結合エピトープを導入してもよい。ここで用いられる場合、「サルベージレセプター結合エピトープ」という用語は、IgG分子のインビボ血清半減期を向上させる原因となるIgG分子(例えば、IgG、IgG、IgG、又はIgG)のFc領域のエピトープを意味する。別に、又は付加的に、変更したFcRn結合を有する変異体を産出させるため、抗体のFc領域のアミノ酸配列を変更することにより、血清半減期を増加又は減少させてもよい。変更したFcRn結合及び/又は血清半減期を有する抗体は、特に出典明示によりここに取り込まれる、国際公開第00/42072号(Presta, L.)に記載されている。
【0099】
V. 製薬用調製物
本発明で使用されるアンタゴニスト又は抗体の治療用調製物は、所望される程度の純度を持つアンタゴニスト又は抗体を、凍結乾燥された調製物又は水性溶液の形態で、任意の製薬的に許容可能な担体、賦形剤又は安定化剤と混合することにより調製され保存される(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))。許容可能な担体、賦形剤、又は安定化剤は、用いられる用量及び濃度でレシピエントに非毒性であり、ホスファート、シタラート、及び他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンズアルコニウムクロリド;ベンズエトニウムクロリド;フェノール;ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又はトゥイーン(TWEEN)TM、プルロニクス(PLURONICS)TM、又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0100】
例示的なCD20抗体調製物は、特に出典明示によりここに取り込まれる国際公開第98/56418号に記載されている。この公報には、40mg/mLのリツキシマブ、25mMのアセタート、150mMのトレハロース、0.9%のベンジルアルコール、0.02%のポリソルバート20、pH5.0を含有し、2-8℃で2年間保管される最小寿命を有する液状多用量調製物が記載されている。関心ある他のCD20調製物は、10mg/mLのリツキシマブ、9.0mg/mLの塩化ナトリウム、7.35mg/mLのクエン酸ナトリウム二水和物、0.7mg/mLのポリソルバート80、及び注射用の滅菌水、pH6.5を含有する。
皮下投与に適した凍結乾燥調製物は、国際公開第97/04801号及び米国特許第6,267,958号(Andyaら)に記載されている。このような凍結乾燥調製物は適切な希釈剤で高濃度タンパク質に再構成され、再構成された調製物はここで治療される哺乳動物に皮下的に投与され得る。
ここでの調製物は、特に治療的指示に必要な1以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない補足的活性を有するものをさらに含有する。例えば、細胞傷害剤、化学療法剤、サイトカイン又は免疫抑制剤をさらに提供することが望ましい。このような他の薬剤の有効量は、調製物中に存在するアンタゴニスト又は抗体の量、疾患又は疾病又は治療の種類、及び上述した他の要因に依存する。これらは一般的に、同じ用量、上述にて使用したような投与経路、又は上述にて使用した用量の1〜99%で使用される。
【0101】
活性成分はまたコロイド状薬剤送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)、又はマクロエマルションにおいて、例えばコアセルベーション技術又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリラート)マイクロカプセルに捕捉されている。このような技術はRemington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osal, A. Ed.(1980)に開示されている。
【0102】
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の好適な例には、アンタゴニスト又は抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが含まれ、このマトリックスは成形品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリラート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド類(米国特許第3,773,919号)、Lグルタミン酸とγ-エチル-L-グルタマートのコポリマー、非分解性エチレン-ビニルアセタート、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注入可能なミクロスフィア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。
インビボ投与に使用される調製物は滅菌されなくてはならない。これは滅菌濾過膜を通した濾過により容易に達成される。
【0103】
V. アンタゴニスト又は抗体を用いた治療
本発明では、抗体及びアンタゴニストを用いた種々の疾病及び疾患の治療を考察している。抗体又はアンタゴニストがB細胞表面マーカー、例えばCD20に結合している場合、治療される病状には、B細胞悪性腫瘍(特に出典明示によりここに取り込まれる米国特許第6,455,043B1号, Grillo-Lopezを参照)、及び自己免疫疾患(特に出典明示によりここに取り込まれる国際公開第00/67796, Curdら)が含まれる。またB細胞表面マーカーに結合するアンタゴニスト又は抗体は、外来抗原に対する免疫反応をブロックするのにも使用され、例えばここで外来抗原は免疫原性剤又は移植である(特に出典明示によりここに取り込まれる国際公開第01/03734号, Grillo-Lopezらを参照)。
ここに開示されている種々の効能において、アンタゴニスト又は抗体を含有する組成物は、良好な医学的実務に合致する方式で調製され、調薬され、そして投与される。このときに考慮する因子は、治療される特定の疾患又は病状、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床的状態、疾患又は病状の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医療実務者に知られた他の要因を含む。投与されるアンタゴニスト又は抗体の治療的有効量は、そのような考察によって決定される。
一般的な提案として、腸管外投与されるアンタゴニスト又は抗体の治療的有効量は、患者体重1kg当たり1日に約0.1〜20mgであり、用いられるアンタゴニスト又は抗体の典型的な初期範囲は約2〜10mg/kgの範囲である。
【0104】
好ましいアンタゴニストは、細胞傷害剤とコンジュゲートしていない抗体、例えばリツキシマブ又はヒト化2H7等の抗体である。非コンジュゲート抗体の適切な用量は、例えば約20mg/m〜約1000mg/mの範囲である。一実施態様において、抗体の用量はリツキシマブで現在推奨されている量とは異なる。CD20抗体の例示的な用法・用量は、一週間に375mg/mを4又は8回;又は1000mgを2回(1及び15日)含む。
【0105】
しかしながら、上述したように、アゴニスト又は抗体のこれらの示唆量は多くの治療的裁量による。適切な用量及びスケジュールの選択における重要な要因は上述したようにして得られた結果である。例えば、比較的高用量は進行性及び急性疾患の治療に当初必要である。最も効果的な結果を得るためには、アンタゴニスト又は抗体を疾患又は疾病に応じて、疾患又は疾病の最初の徴候、診断、外観、又は発生が可能な限り収束するか、又は疾患又は疾病が緩和されるように投与する。
【0106】
アンタゴニスト又は抗体は、腸管外、皮下、腹腔内、肺内、及び鼻内、そして局所的免疫抑制治療が望まれる場合は、病変部内投与を含む任意の適当な手段によって投与される。腸管外注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹膜内、又は皮下投与を含む。さらにアンタゴニスト又は抗体は、例えば減少させたアンタゴニスト又は抗体用量で、パルス注入によって適切に投与され得る。好ましくは、投与は注射によって、最も好ましくは、部分的には投与が簡潔か慢性的かに応じて、静脈内又は皮下注射によってなされる。
【0107】
ここでは、他の化合物、例えば細胞傷害剤、化学療法剤、免疫抑制剤及び/又はサイトカインを、アンタゴニスト又は抗体と共に投与してもよい。組合せ投与には、別々の調製物又は単一の製薬用調製物を使用する同時投与、及び好ましくは両方(又は全ての)活性剤が同時にその生物活性を働かせる時間がある、いずれかの順での連続投与が含まれる。
【0108】
RA、及び他の自己免疫疾患において、アンタゴニスト又は抗体(例えばCD20抗体)は、上述の部分に列挙された、任意の一又は複数の免疫抑制剤、化学療法剤及び/又はサイトカイン類;任意の一又は複数の疾患緩和抗リウマチ剤(DMARD)、例えばヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、メトトレキサート、レフルノミド、アザチオプリン、D-ペニシラミン、金(経口用)、金(筋内用)、ミノサイクリン、シクロスポリン、ブドウ球菌タンパク質A免疫吸着;静注用免疫グロブリン(IVIG);非ステロイド性抗炎症剤(NSAID);グルココルチコイド(例えば関節注射);コルチコステロイド(例えば、メチルプレドニゾロン及び/又はプレドニゾン);葉酸塩;抗腫瘍壊死因子(TNF)抗体、例えばエタネルセプト/ENBRELTM、インフリキシマブ/REMICADETM、D2E7(Knoll)又はCDP-870 (Celltech);IL-1Rアンタゴニスト(例えばKineret);1L-10アンタゴニスト(例えばIlodecakin);血液凝固調節剤(例えばWinRho);IL-6アンタゴニスト/抗-TNF(CBP 1011);CD40アンタゴニスト(例えばIDEC 131);Ig-Fcレセプターアンタゴニスト(MDX33);免疫調節剤(例えば、サリドマイド又はImmuDyn);抗-CD5抗体(例えばH5g1.1);マクロファージインヒビター(例えばMDX 33);共刺激ブロッカー(例えば、BMS 188667又はトレリマブ(Tolerimab));補体インヒビター(例えば、h5G1.1、3E10、又は抗-分解促進因子(DAF)抗体);又はIL-2アンタゴニスト(zxSMART)と組み合わせてもよい。
【0109】
B細胞悪性腫瘍においては、アンタゴニスト又は抗体(例えばCD20抗体)は、化学療法剤;サイトカイン、例えばリンフォカイン、例えばIL-2、IL-12、又はインターフェロン、例えばインターフェロンアルファ-2a;他の抗体、例えば放射性標識抗体、例えばイブリツモマブ・チウキセタン(ZEVALIN(登録商標))、ヨウ素 I131トシツモマブ(tositumomab)(BEXXARTM)、131I Lym-1 (ONCOLYMTM)、90Y-LYMPHOCIDETM;抗-CD52抗体、例えばアレムツズマブ(alemtuzumab)(CAMPATH-1HTM)、抗-HLA-DR-β抗体、例えばアポリズマブ(apolizumab)、抗-CD80抗体(例えばIDEC-114)、エプラツズマブ(epratuzumab)、Hu1D10 (SMART 1D10TM)、CD19抗体、CD40抗体又はCD22抗体;免疫調節剤(例えば、サリドマイド又はImmuDyn);血管形成インヒビター(例えば、抗-血管内皮成長因子(VEGF)抗体、例えばAVASTINTM、又はサリドマイド);イディオタイプワクチン(EPOCH);ONCO-TCSTM;HSPPC-96(ONCOPHAGETM);リポソーム治療(例えばダウノルビシンシタラートリポソーム等)と組み合わせてもよい。
【0110】
CD20抗体(又はB細胞表面マーカーに結合するアンタゴニスト)と組み合わせられる好ましい化学療法剤は、アルキル化剤又はアントラサイクリンベースの化学療法剤又はフルダラビンベースの化学療法剤;シスプラチン、フルダラビン、ビンブラスチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、及び/又はビンクリスチンである。B細胞表面マーカーに結合するCD20抗体又は他の抗体に関し、抗体と組み合わせるのに特に所望される化学療法剤には、限定されるものではないが:シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾン(CHOP) (Czuczmanら J Clin Oncol 17:268-76 (1999));シクロホスファミド、ビンクリスチン、及びプレドニゾン(CVP);フルダラビン(例えば、CLL治療のため);フルダラビン、シクロホスファミド、及びミトキサントロン(FCM);又はドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、及びダカルバジン(ABVD)が含まれる。
【0111】
アンタゴニスト又は抗体を、骨髄破壊療法に使用してもよい。例えば、アンタゴニスト又は抗体は、幹細胞回収前、又は移植後、微小残存病変を撲滅するための、インビボ浄化に使用されてもよい。
患者へのタンパク質アンタゴニストの投与の他に、本出願では、遺伝子治療によるアンタゴニスト又は抗体の投与が考慮されている。例えば、細胞内抗体を産生するための遺伝子治療の使用に関連しており、1996年3月14日に公開された国際公開第96/07321号が参照される。
【0112】
核酸(場合によってはベクター内に含まれたもの)を患者の細胞に入れるために:インビボ及びエキソビボという2つの主要な方法がある。インビボ送達では、核酸は、通常はアンタゴニストが必要とされている部位に直接注入される。エキソビボ処理では、患者の細胞を取り出し、核酸をこれらの単離された細胞に導入し、修飾された細胞を患者に、直接、又は例えば患者に埋め込まれる多孔性膜にカプセル化して投与する(米国特許第4,892,538号及び同5,283,187号参照)。核酸を生細胞に導入するために利用可能な種々の技術がある。これらの技術は、核酸が培養された細胞にインビトロで移入されるか、又は意図している宿主の細胞にインビボで移入されるかに応じて変化する。哺乳動物細胞にインビトロで核酸を移入するのに適した技術は、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム沈降法などを含む。遺伝子のエキソビボ送達に通常用いられるベクターはレトロウイルスである。
【0113】
現在インビボ核酸移入技術で好ましいのは、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、単純ヘルペスIウイルス、又はアデノ関連ウイルス)、及び脂質ベースの系(例えば、遺伝子の脂質媒介移入に有用な脂質は、DOTMA、DOPE、及びDC-Cholである)での形質移入を含む。幾つかの状況では、核酸供給源を標的細胞をターゲティングする薬剤、例えば細胞表面膜タンパク質に特異的な抗体又は標的細胞、標的細胞上のレセプターのリガンド等とともに提供するのが望ましい。リポソームが用いられる場合、エンドサイトーシスを伴って細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質が、ターゲティング及び/又は取り込みの促進のために用いられ、例えば、特定の細胞型向性のキャプシドタンパク質又はその断片、サイクリングにおいて内部移行を受けるタンパク質の抗体、及び細胞内局在化をターゲティングし細胞内半減期を向上させるタンパク質である。レセプター媒介エンドサイトーシスの技術は、例えば、Wu等, J. Biol. Chem., 262:4429-4432 (1987);及びWagner等, Proc. Natl. Acad. Sci., USA 87: 3410-3414 (1990)に記載されている。現在知られている遺伝子標識化及び遺伝子治療プロトコールの概説については、Anderson等, Science, 256:808-813 (1992)を参照のこと。また、国際公開第 93/25673及びそこに引用された参考文献も参照。
本発明のさらなる詳細を、以下の非限定的実施例により例証する。本明細書における全ての引用文の開示は、特に出典明示によりここに取り込まれる。
【実施例】
【0114】
実施例1
リツキシマブに対する中和抗体を検出するための補体依存性細胞傷害性アッセイ
リツキシマブは、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、補体依存性細胞傷害性(CDC)、又はその双方を介して、CD20+B細胞を枯渇させることにより、その生物学的機能を作用させる。インビトロにおいて、CDC活性は、種々の濃度のリツキシマブの存在下又は不在下で、ヒト補体と共にCD20+WIL2-Sリンパ腫細胞をインキュベートすることにより測定可能である。ついで、ALAMAR BLUE(登録商標)を使用し、生存細胞を定量化することにより、細胞傷害性が測定される(Gazzano-Santoroら, J. Immunol. Methods 202 163-171 (1997))。
この実施例においては、結果としてHACAになる、リツキシマブで治療された患者からの血清サンプルを同定した。ついで、免疫枯渇により確認されたHACA陽性血清を、以下に記載する中和抗体アッセイにかけた。HACAアッセイは、捕捉試薬としてリツキシマブ、検出試薬としてビオチン化リツキシマブを用いた架橋態様である。アッセイはリツキシマブに対するポリクローナルヤギ抗体を用いて作成された較正標準曲線を有する。アッセイにおけるサンプルの最小希釈度は、1RU(相対単位)/mLにて、最低スタンダードで1/5である。サンプル反応が5RU/mL(値を1/5希釈ファクターで補正)以下であると、HACAに対して陰性であるとみなす。
【0115】
リツキシマブに対する中和抗体を検出するためのアッセイを開発した。中和抗体アッセイを、0.1%のウシ血清アルブミン(BSA)、20mMのHEPES (pH 7.2 -7.4)、及び0.1mMのゲンタマイシンが補填されたRPMI 1640培養培地を使用して実施した。アッセイを、リツキシマブに対する親和精製されたポリクローナルヤギ抗体を使用して展開し較正した。アッセイをバッファーマトリックスで実施する場合、典型的には1-10μLのヤギ抗-リツキシマブを、平底96-ウェル組織培養プレートで種々の濃度のリツキシマブ(0-10μg/mL) 50μLと共にプレインキュベートした。室温で1-2時間プレインキュベートした後、アッセイ用培地に希釈した50μLの1/3 ヒト補体、アッセイ用培地に10細胞/mLで懸濁された50 μLのWIL2-Sリンパ芽球細胞を添加し、混合物を 37℃、5% COで2時間インキュベートし、補体媒介性細胞溶解を容易にさせた。ついで、50μLの未希釈のAlamarBlueTMを添加し、15-26時間インキュベートし続けた。プレートを、振とうすることにより10分間放置して室温まで冷却し、530nmで励起し590nmで発光する蛍光を、96-ウェル蛍光光度計を使用して読み取った。相対蛍光単位(RFU)を、4-パラメーター曲線適合プログラム(Softmax)を使用し、リツキシマブ濃度に対してプロットした。抗体のプレインキュベートのあるなしによる2つの曲線を比較することで、抗-リツキシマブ抗体の中和能力を測定することができる。抗-リツキシマブ抗体が、与えられた濃度において20%又はそれ以上のリツキシマブ活性を中和するならば、抗-リツキシマブは中和能力に対して陽性であると定義した。このことは、1μgのリツキシマブを中和するための抗-リツキシマブの量を測定することによりさらに定量化することができる。リツキシマブを中和するためのヤギ抗-リツキシマブポリクローナル抗体のモル比は、約3対1であると決定した。
【0116】
テスト用の殆どの患者サンプルが血清サンプルであるので、アッセイ性能に対する血清マトリックスの効果を評価した。アッセイ用培地に5%及び10%の正常なヒト血清を含めたものは、4-パラメータ曲線適合において最小効果を有した。血清濃度が20%を超えると、上部漸近線にシグナル抑制が観察された。しかしながら、血清は、IC50値において有意なシフトを示さないで、50%まで耐えることができた。これらのデータにより、患者の血清サンプルをさらに操作することなく、抗-リツキシマブ抗体を検出するためにCDCアッセイを使用することが可能であることが実証された。血清サンプルのテスト時、補体及び細胞懸濁液の添加前に、50μLまでの血清を、50μLのリツキシマブ希釈液と共にインキュベートした。残りの手順は上述したものと同じであった。データ分析において、中和活性を測定するために、リツキシマブ治療血清の中和能力を、前処理血清と個々に比較した。血清マトリックスにおけるアッセイの感度/検出限界を、親和精製されたヤギ抗-リツキシマブを正常なヒト血清にスパイクすることにより測定した。現在のアッセイ形式を使用すると、検出することができる最も少ない中和抗体の量は、約1μg/mLである。
【0117】
上述のELISAアッセイによる抗体反応(HACA+)を示す、リツキシマブで治療された全身性エリテマトーデス(SLE)患者のサンプルを、中和抗体アッセイでテストした。ベースライン血清とリツキシマブ治療後の血清との間に有意な差が観察された。CDC活性はHACA+血清で完全に又は部分的にブロックされ、治療されたサンプルに中和活性が示された。これに対して、リツキシマブでの治療前に得られた血清サンプルでは、中和活性が示されなかった。
要約すると、本実施例は、リツキシマブで治療された患者の血清における中和活性を検出するための、細胞ベースの機能アッセイ、補体依存性細胞傷害性(CDC)アッセイを記述している。このアッセイは抗-薬剤抗体反応の性質を特徴付けるのに大いに有用であり;よって、薬剤の安定性及び効能を評価する際には貴重になるであろう。
【0118】
実施例2
自己免疫疾患の治療
本発明の一実施態様では、ここで記載されるアッセイは、自己免疫疾患を有する患者の治療計画に関連して使用されうる。例示的な自己免疫疾患には、若年性関節リウマチを含む関節リウマチ(RA)、ループス腎炎を含む全身性エリテマトーデス(SLE)、ヴェグナー病、炎症性大腸炎、突発性又は免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症(MS)、乾癬、IgA腎症、IgM多発性神経障害、重症筋無力症、脈管炎、真性糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群、糸球体腎炎、自己免疫性溶血性貧血が含まれる。
CD20に結合する抗体(例えばリツキシマブ又はヒト化2H7)を、当該問題である自己免疫疾患を治療するための有効量、患者に投与する。例えば抗体は、毎週375mg/mを4又は8週、もしくは1000mgを1及び15日で投与されてもよい。抗体は、自己免疫疾患を治療するための一又は複数の他の薬剤、例えば上述の部分に列挙された免疫抑制剤、化学療法剤及び/又はサイトカイン類;任意の一又は複数の疾患緩和抗リウマチ剤(DMARD)、例えばヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、メトトレキサート、レフルノミド、アザチオプリン、D-ペニシラミン、金(経口用)、金(筋内用)、ミノサイクリン、シクロスポリン、ブドウ球菌タンパク質A免疫吸着;静注用免疫グロブリン(IVIG);非ステロイド性抗炎症剤(NSAID);グルココルチコイド(例えば関節注射);コルチコステロイド(例えば、メチルプレドニゾロン及び/又はプレドニゾン);葉酸塩;抗腫瘍壊死因子(TNF)抗体、例えばエタネルセプト/ENBRELTM、インフリキシマブ/REMICADETM、D2E7 (Knoll)又はCDP-870 (Celltech);IL-1Rアンタゴニスト(例えばKineret);1L-10アンタゴニスト(例えばIlodecakin);血液凝固調節剤(例えばWinRho);IL-6アンタゴニスト/抗-TNF(CBP 1011);CD40アンタゴニスト(例えばIDEC 131);Ig-Fcレセプターアンタゴニスト(MDX33);免疫調節剤(例えば、サリドマイド又はImmuDyn);抗-CD5抗体(例えばH5g1.1);マクロファージインヒビター(例えばMDX 33);共刺激ブロッカー(例えば、 BMS 188667又はトレリマブ);補体インヒビター(例えば、h5G1.1、3E10、又は抗-分解促進因子(DAF)抗体);又はIL-2アンタゴニスト(zxSMART)と併用してもよい。
【0119】
HACA(リツキシマブに対する)又はHAHA(ヒト化2H7に対する)を含有し得る血清の生体サンプルは、ベースライン、及び3、6及び9ヶ月の患者から得られる。血清をELISAにかけ、HACA又はHAHAがそこに存在するかどうかを測定する。アッセイは上述した実施例1に記載されている。
ついで、HACA又はHAHAを含有することが示された血清を、上述した実施例1に記載されたようにして中和抗体についてテストする。同量の前治療された対応物(すなわちHACA及びHAHA陰性)と比較して、与えられた濃度にて、リツキシマブ又はヒト化2H7の約20%又はそれ以上の活性を中和するサンプルは、リツキシマブ又はヒト化2H7に対する中和抗体に対して陽性であると考えられる。陽性の結果は、自己免疫疾患の治療において抗体の効果が低下したことを示す。
【0120】
実施例3
B細胞悪性腫瘍の治療
CD20陽性B細胞悪性腫瘍、例えばリンパ球優位型ホジキン病(LPHD)を含むホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、濾胞中心細胞(FCC)リンパ腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリー細胞白血病、形質細胞様リンパ性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、AIDS又はHIV-関連リンパ腫、多発性骨髄腫、中枢神経系(CNS)リンパ腫、移植後リンパ増殖症候群(PTLD)、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症(リンパ形質細胞性リンパ腫)、粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫、又は辺縁帯リンパ腫/白血病が、この実施例に従って治療される。
CD20に結合する抗体(例えばリツキシマブ又はヒト化2H7)を、当該B細胞悪性腫瘍を治療するための有効量で患者に投与する。例えば抗体は、毎週375mg/mを4又は8週投与することができる。
場合によっては、CD20抗体は、一又は複数の化学療法剤と組み合わせられる。CD20抗体と組み合わせられる好ましい化学療法剤は、アルキル化剤又はアントラサイクリンベースの化学療法剤又はフルダラビンベースの化学療法剤;シスプラチン、フルダラビン、ビンブラスチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、及び/又はビンクリスチンである。抗体と組み合わせるのに特に所望される化学療法剤には、限定されるものではないが:シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾン(CHOP) (Czuczmanら J Clin Oncol 17:268-76 (1999));シクロホスファミド、ビンクリスチン、及びプレドニゾン(CVP);フルダラビン(例えば、CLL治療のため);フルダラビン、シクロホスファミド、及びミトキサントロン(FCM);又はドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、及びダカルバジン(ABVD)等である。
【0121】
HACA(リツキシマブに対する)又はHAHA(ヒト化2H7に対する)を含有し得る血清の生体サンプルは、ベースライン、及び3、6及び9ヶ月の患者から得られる。血清をELISAにかけ、HACA又はHAHAがそこに存在するかどうかを測定する。アッセイは上述した実施例1に記載されている。
ついで、HACA又はHAHAを含有することが示された血清を、上述した実施例1に記載されたようにして中和抗体についてテストする。同量の前治療された対応物(すなわちHACA及びHAHA陰性)と比較して、与えられた濃度にて、リツキシマブ又はヒト化2H7の約20%又はそれ以上の活性を中和するサンプルを、リツキシマブ又はヒト化2H7に対する中和抗体に対して陽性であると考えられる。中和抗体の存在は、B細胞悪性腫瘍の治療において抗体の効果が低減していることを示す。
【0122】
実施例4
外来抗原に対する免疫反応のブロック
本実施例では、抗-CD20抗体は、治療用タンパク質(例えばマウス抗体又は免疫毒素)、遺伝子治療用ウイルスベクター、血液因子(例えば第VIII因子)、血小板、又は移植片等の外来抗原に対する免疫反応をブロックするために使用される。
CD20抗体の適切な用量は、毎週与えて375mg/mで4又は8回注入である。CD20抗体を投与すると、患者における免疫反応が低下し又はなくなり、よって治療の成功が容易になる。
【0123】
移植片に対する免疫反応をブロックするために、急性拒絶の予防のための組み合わせ免疫抑制法の一部として、CD20抗体を使用することができる。この設定では、CD20抗体、例えばリツキシマブ又はヒト化2H7は、抗-IL-2レセプター抗体のあるなしにて、シクロスポリン、コルチコステロイド類、ミコフェノール酸モフェチル等のT細胞に対する薬剤を含む、順次なされる組み合わせ療法の一部として、移植前後に投与される。よって、CD20抗体は導入療法の一部と見なされ、慢性的免疫抑制療法と共に使用される。CD20抗体は、アロ抗体の生成を阻害、及び/又は抗原-提示細胞の枯渇によるアロ抗原の付与に影響を与えることにより、アロ拒絶反応の防止に寄与し得る。
【0124】
さらなる免疫抑制剤の用量は、次の通りである:シクロスポリン(5mg/kg/日);コルチコステロイド類(1mg/kg、徐々に減らす);ミコフェノール酸モフェチル(1グラムを1日に2回);及び抗-IL2レセプター抗体(1mg/kg、1週間に5回注入)。またCD20抗体は、他の誘導免疫抑制剤、例えば抗-リンパ球ポリクローナル抗体又は抗-CD3モノクローナル抗体;持続性免疫抑制剤、例えばカルシニューリンインヒビター(例えばタクロリムス)、及び抗増殖剤(例えば、アザチオプリン、レフルノミド又はシロリムス);又はT細胞副刺激の封鎖、T細胞付着分子の封鎖、T細胞アクセサリー分子の封鎖を含む組み合わせ療法と組み合わせてもよい。
急性拒絶の予防の他にも、CD20抗体は急性拒絶の治療に使用してもよい。CD20の適切な用量は上述した通りである。CD20抗体は、急性拒絶の治療において、CD3モノクローナル抗体及び/又はコルチコステロイド類と組み合わせられてもよい。
またCD20抗体は、(a)「慢性」アロ移植片拒絶の治療又は予防のために、移植後期間の後期に単独で、又は他の免疫抑制剤及び/又は共刺激封鎖と組み合わせて;(b)耐性包含療法の一部として;又は(c)異種移植の設定に使用されてもよい。
【0125】
HACA(リツキシマブに対する)又はHAHA(ヒト化2H7に対する)を含有し得る血清の生体サンプルは、ベースライン、及び3、6及び9ヶ月の患者から得られる。血清をELISAにかけ、HACA又はHAHAがそこに存在するかどうかを測定する。アッセイは上述した実施例1に記載されている。
ついで、HACA又はHAHAを含むことが示された血清を、上述した実施例1に記載されたようにして中和抗体についてテストする。同量の前治療された対応物(すなわちHACA及びHAHA陰性)と比較して、与えられた濃度にて、リツキシマブ又はヒト化2H7の約20%又はそれ以上の活性を中和するサンプルを、リツキシマブ又はヒト化2H7に対する中和抗体に対して陽性であると考えることができる。中和抗体反応が検出された場合、これは、抗体が、当該外来抗原に対する免疫反応をブロックする能力が低下したことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD20に結合する抗体の効果を評価する方法において、CD20抗体で治療された患者からの生体サンプルの、CD20抗体の生物活性をブロックする能力を測定することを含む、方法。
【請求項2】
生物活性が、補体依存性細胞傷害性(CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、アポトーシス、及び細胞成長の阻害性からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生物活性が、補体依存性細胞傷害性(CDC)である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
CD20抗体がリツキシマブである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
CD20抗体がヒト化2H7である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
生体サンプルが、CD20抗体に結合する患者からの抗体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
生体サンプルを、患者からの生体サンプルにおいて、CD20抗体に結合する患者からの抗体の存在を決定するアッセイにかける、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
生体サンプルが患者からの血清を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
患者が自己免疫疾患を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
自己免疫疾患が、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、ヴェーゲナー病、炎症性大腸炎、突発性又は免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症(MS)、乾癬、IgA腎症、IgM多発性神経障害、重症筋無力症、脈管炎、真性糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群、糸球体腎炎、及び自己免疫性溶血性貧血からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
患者がB細胞悪性腫瘍を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
B細胞悪性腫瘍が、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、濾胞中心細胞(FCC)リンパ腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリー細胞白血病、形質細胞様リンパ性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、AIDS又はHIV-関連リンパ腫、多発性骨髄腫、中枢神経系(CNS)リンパ腫、移植後リンパ増殖症候群(PTLD)、ヴァルデンストレーム病、粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫、及び辺縁帯リンパ腫/白血病からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
患者が、外来抗原に対する免疫反応をブロックするCD20抗体で治療される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
外来抗原が治療剤を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
外来抗原が、抗体、毒素、遺伝子治療用ウイルスベクター、移植片、病原菌及びアロ抗原からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
外来抗原が移植片である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
アッセイが、CD20抗体と生体サンプルの存在下、補体にCD20陽性細胞を暴露させ、ついで暴露細胞の生存率を測定することを含む、請求項3に記載の方法
【請求項18】
CD20に結合する抗体を患者に投与し;
患者からの生体サンプルの、CD20抗体の生物活性をブロックする能力を測定する;
ことを含む免疫治療法。
【請求項19】
治療用抗体に対する中和抗体を検出する方法において、
治療用抗体とそれで治療される患者からの生体サンプルの存在下で、治療用抗体が結合する抗原を発現する細胞を補体に暴露させ;
治療用抗体の補体依存性細胞傷害性(CDC)活性を測定することを含み、CDC活性の低下により、生体サンプルにおける中和抗体の存在が示される方法。
【請求項20】
B細胞表面マーカーに結合するアンタゴニストの効果を評価する方法において、アンタゴニストで治療された患者からの生体サンプルの、アンタゴニストの生物活性をブロックする能力を測定することを含む方法。
【請求項21】
患者にB細胞表面マーカーに結合する抗体を投与し;
患者からの生体サンプルの、抗体の生物活性をブロックする能力を測定する;
ことを含む免疫治療法。

【公表番号】特表2007−500844(P2007−500844A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521838(P2006−521838)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/020069
【国際公開番号】WO2005/017529
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】