ヒト細胞からの新規の炭水化物、ならびにその分析および修飾のための方法
本発明は幹細胞のグリカン構造に対する特異的結合剤のための試薬および方法を記載するものである。さらに本発明は、幹細胞表面の特定のグリカンエピトープに対するさらなる結合試薬のスクリーニングに関する。グリカン構造の好ましい結合剤としては、酵素、レクチン、および抗体等のタンパク質が挙げられる。
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト血液関連、好ましくは造血幹細胞調製物の状態を評価する方法であって、前記調製物中の伸長グリカン構造、または、少なくとも2つの、グリカン構造の群の存在を検出する工程を含み、前記グリカン構造またはグリカン構造の群は、幹細胞の状態の分析および/または幹細胞の操作のための式T1
[式中、Xは結合位置であり
R1、R2、およびR6はOHもしくはグリコシド結合した単糖残基シアル酸、好ましくはNeu5Acα2もしくはNeu5Gc α2、最も好ましくはNeu5Acα2であり、または
R3、はOHまたはグリコシド結合した単糖残基Fucα1(L‐フコース)またはN‐アセチル(N‐アセトアミド、NCOCH3)であり;
R4、はH、OHまたはグリコシド結合した単糖残基Fucα1(L‐フコース)であり、
R4がHである場合、R5はOHであり、R4がHではない場合、R5はHであり;
R7はN‐アセチルまたはOHであり
Xは前記細胞由来の天然オリゴ糖主鎖構造、好ましくはN‐グリカン、O‐グリカンもしくは糖脂質構造であり;またはnが0である場合、Xは無であり、
Yはリンカー基、好ましくはO‐グリカンおよびO‐結合末端オリゴ糖および糖脂質のための酸素、ならびにN‐グリカンのためのN、またはnが0である場合、無であり;
Zは担体構造、好ましくは細胞により産生された天然担体であり、例えばタンパク質または脂質であって、好ましくは担体上のセラミドもしくは分岐グリカンコア構造、またはHであり;
アーチはガラクトピラノシルからの結合が左側の残基の3位または4位いずれかに対するものであること、およびR4構造が他の4または3位にあることを表し;
nは0または1の整数であり、mは1〜1000、好ましくは1〜100、および最も好ましくは1〜10の整数(担体上のグリカンの数)であり、
ただしR2およびR3のうち1つはOHまたはR3はN‐アセチルであり、
左側の第1の残基が右側の残基の4位に結合する場合、R6はOHであり:
XはGalα4Galβ4Glcではなく、(SSEA‐3または4のコア構造)またはR3はフコシルである]
であり、ここで前記細胞調製物は胚性幹細胞調製物であり。
ならびに、前記グリカン構造が伸長構造である場合、ここで、前記結合剤は前記構造およびさらに少なくとも1つの還元末端伸長エピトープ、好ましくは式E1:
AxHex(NAc)n、[式中、Aはアノマー構造アルファまたはベータであり、Xは結合位置2、3または6であり;およびHexはヘキソピラノシル残基Gal、またはManであり、nは0または1の整数であり、
ただし
nが1である場合、AxHexNAcはβ4GalNAcまたはβ6GalNAcであり、
HexがManである場合、AxHexはβ2Manであり、および、
HexがGalである場合、AxHexはβ3Galまたはβ6Galまたはα3Galまたはα4Galである];
の単糖エピトープ(Xおよび/またはYを置換)に結合し、
または
前記結合剤エピトープはさらに還元末端伸長エピトープ
還元末端GalNAcα含有構造に結合するSer/Thrもしくは
Galβ4Glc含有構造に結合するβCerに結合し、および前記グリカン構造は関連するまたは混入した細胞集団から決定される幹細胞集団である方法。
【請求項2】
幹細胞の状態の分析のための、および/または幹細胞の操作のための方法であって、幹細胞の試料から伸長グリカン構造または少なくとも2つのグリカン構造を検出する工程を含み、ここで前記グリカン構造は:末端ラクトサミン構造
(R1)n1Gal(NAc)n3β3/4(Fucα4/3)n2GlcNAcβR[式中、R1はGalβ4GlcNAcに結合するFucα2、またはSAα3、またはSAα6であり、および
RはN‐グリカン、O‐グリカンおよび/または糖脂質の還元末端コア構造である];a、
または、構造
(SAα3)n1Galβ3(SAα6)n2GalNAc;[式中
n1、n2およびn3は0または1であって構造の存在または非存在を表し、
式中、SAはシアル酸である];または分岐エピトープ
Galβ3(GlcNAcβ6)GalNAcまたは
R1Galβ4(R3)GlcNAcβ6(R2Galβ3)GalNAc、
[式中、R1およびR2は独立に無またはSAα3であり;およびR3は独立に無またはFucα3である];または
N‐結合グリカンのコア構造中のManβ4GlcNAc構造;またはエピトープGalβ4Glc、
または末端マンノース
または末端SAα3/6Gal[式中、SAはシアル酸であり、ただし
i)幹細胞は癌細胞株の細胞ではなく、そして
ii)細胞は造血CD34+細胞ではなく、該構造は、N‐アセチルラクトサミンを含む場合は、フコシル化された特異的な伸長構造であるか、またはSAα3Galβ4GlcNAcβ3Gal構造ではない]
からなる群より選択される方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法であって、前記結合物質が式T8Eベータ
[Mα]mGalβ1‐3/4[Nα]nGlcNAcβxHex(NAc)p
[式中
式中、xは結合位置2、3、または6であり
式中、m、nおよびpは独立に0または1の整数であり
MおよびNは単糖残基であって
i)独立に無(その位置における遊離水酸基)
および/または
ii)Galの3位または/およびGlcNAcの6位に結合するシアル酸であるSA
および/または
iii)Galの2位および/またはGlcNAcの3もしくは4位に結合するFuc(L‐フコース)残基(GalがGlcNAcの他の位置(4または3)に結合する場合)
であり、
ただしm、nおよびpは独立に0または1であり。
Hexはヘキソピラノシル残基GalまたはManであり、
ただしpが1の場合、βxHexNAcはβ6GalNAcであり、
pが0の場合
HexはManであり、かつβxHexはβ2Manであり、またはHexはGalであり、かつβxHexはβ3Galもしくはβ6Galである]
の構造を認識する方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法であって、前記結合物質が
式T10E
[Mα]mGalβ1‐4[Nα]nGlcNAcβxHex(NAc)p
[ただしpが1である場合、βxHexNAcはβ6GalNAcであり、
pが0である場合、HexはManであり、かつβxHexはβ2Manであり、または、HexはGalであり、かつβxHexはβ6Galである]
のII型ラクトサミンを基盤とする構造を認識する方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法であって、前記結合物質が式T10EMan:
[Mα]mGalβ1‐4[Nα]nGlcNAcβ2Man、
[式中、変数は請求項2の式T8Eベータに対して記載されるものと同様である]
のII型ラクトサミンを基盤とする構造を認識する方法。
【請求項6】
前記構造がGalβ4GlcNAcβ2Man、Galβ4(Fucα3)GlcNAcβ2Man、Fucα2Galβ4GlcNAcβ2Man、SAα6Galβ4GlcNAcβ2Man、SAα3Galβ4GlcNAcβ2Manからなる群より選択される、請求項5記載の方法
【請求項7】
前記構造がHII型構造Fucα2Galβ4GlcNAcβ2Manである、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記構造がLewis x構造Galβ4(Fucα3)GlcNAcβ2Manである、請求項5記載の方法。
【請求項9】
請求項4記載の方法であって、前記結合物質が
式T10EGal(NAc):
[Mα]mGalβ1‐4[Nα]nGlcNAcβ6Gal(NAc)p
[式中、変数は請求項2の式T8Eベータに対して記載される通りである]
のII型ラクトサミンを認識する方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法であって、前記構造が
Galβ4GlcNAcβ6Gal、Galβ4GlcNAcβ6GalNAc、Galβ4(Fucα3)GlcNAcβ6GalNAc、Fucα2Galβ4GlcNAcβ6GalNAc、SAα3/6Galβ4GlcNAcβ6GalNAc、およびSAα3Galβ4GlcNAcβ6GalNAc、SAα3Galβ4(Fucα3)GlcNAcβ6GalNAc、SAα3Galβ4(Fuca3)GlcNAcβ6(RGalβ3)GalNAc[式中、RはSAα3または無である]
からなる群より選択される方法。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法であって、前記結合物質が式T9E
[Mα]mGalβ1‐3[Nα]nGlcNAcβ3Gal
のI型ラクトサミンを基盤とする構造を認識する方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法であって、前記構造が
Galβ3GlcNAcβ3Gal、Galβ3(Fucα4)βGlcNAcβ3Gal、およびFucα2Galβ3GlcNAcβ3Gal、およびFucα2Galβ3(Fucα4)GlcNAcβ3Gal
からなる群より選択される方法。
【請求項13】
前記構造がHI型構造Fucα2Galβ3GlcNAcβ3GalまたはI型LAcNAc‐構造Galβ3GlcNAcβ3Galである、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記検出が、前記調製物における少なくとも1種のグリカン構造の量または存在を特異的結合物質または管理された結合剤により分析することによって行われる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記構造が少なくとも1個のFucα残基を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記の伸長オリゴ糖構造が(SAα3)0または1Galβ3/4(Fucα4/3)GlcNAc、Fucα2Galβ3GalNAcα/βおよびFucα2Galβ3(Fucα4)0または1GlcNAcβからなる群より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項17】
請求項2のいずれかに記載の方法であって、前記の伸長オリゴ糖が、Galβ4Glc、Galβ3GlcNAc、Galβ3GalNAc、Galβ4GlcNAc、Galβ3GlcNAcβ、Galβ3GalNAcβ/α、Galβ4GlcNAcβ、GalNAcβ4GlcNAc、SAα3Galβ4Glc、SAα3Galβ3GlcNAc、SAα3Galβ3GalNAc、SAα3Galβ4GlcNAc、SAα3Galβ3GlcNAcβ、SAα3Galβ3GalNAcβ/α、SAα3Galβ4GlcNAcβ、SAα6Galβ4Glc、SAα6Galβ4Glcβ、SAα6Galβ4GlcNAc、SAα6Galβ4GlcNAcβ、Galβ3(Fucα4)GlcNAc (Lewis a)、SAα3Galβ3(Fucα4)GlcNAc (シアリル‐Lewis a)、Fucα2Galβ3GlcNAc (H‐1型)、Fucα2Galβ3(Fucα4)GlcNAc (Lewis b)、Galβ4GlcNAc (2型ラクトサミン基盤)、Galβ4(Fucα3)GlcNAc (Lewis x)、SAα3Galβ3(Fucα4)GlcNAc (シアリル‐Lewis x)、Fucα2Galβ4GlcNAc (H‐2型)およびFucα2Galβ4(Fucα3)GlcNAc (Lewis y)からなる群より選択される方法。
【請求項18】
前記構造が少なくとも1つの末端ManαMan‐構造とともに用いられる場合の、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記検出がモノクローナル抗体、グリコシダーゼ、グリコシル転移酵素、植物レクチン、動物レクチンおよびそれらのペプチド模倣物からなる群より選択される組み替えタンパク質である結合剤により行われる、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記結合物質がGF287、GF279、GF288、GF284、GF283、GF286、GF290、GF289、GF275、GF276、GF277、GF278、GF297、GF298、GF302、GF303、GF305、GF296、GF300、GF304、GF307、GF353、およびGF354からなる群より選択される抗体と同一のエピトープに結合する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記結合物質がGF287、GF279、GF288、GF284、GF283、GF286、GF290、およびGF289、GF275、GF276、GF277、GF278、GF297、GF298、GF302、GF303、GF305、GF296、GF300、GF304、GF307、GF353、GF354、およびGF367からなる群より選択される、請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記組み替えタンパク質が少なくとも部分的に2つの単糖構造および前記単糖残基間の結合構造を認識する高特異性結合剤である、請求項19記載の方法。
【請求項23】
前記結合剤が、生体材料または他の細胞型を含む細胞材料等の試料からヒト幹細胞を選別または選択するために用いられる、請求項19記載の方法。
【請求項24】
前記結合剤が、異なるヒト幹細胞型間の選別または選択のために用いられる、請求項19記載の方法。
【請求項25】
選別または選択がFACSまたは細胞集団を濃縮するための任意の他の手段により行われる、請求項19記載の方法。
【請求項26】
請求項25記載の方法により得られた細胞集団。
【請求項27】
前記細胞調製物が血液関連細胞集団からなる群より選択される、請求項24記載の方法。
【請求項28】
分析されるべき細胞の量が103および106細胞の間である、請求項1記載の方法。
【請求項29】
前記グリカン構造がN‐グリカンコア構造を有するN‐グリカンを含むN‐グリカンサブグライコーム中に存在し、前記N‐グリカンがN‐グリコシダーゼにより細胞から遊離され得る、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記N‐グリカンコア構造がManβ4GlcNAcβ4(Fucα6)nGlcNAc[式中、nは0または1である]である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法であって、前記グリカン構造が、O‐グリカンコア構造を有するO‐グリカンを含むO‐グリカンサブグライコーム中に存在し、または前記グリカン構造が、糖脂質コア構造を有する糖脂質を含む糖脂質サブグライコーム中に存在し、前記グリカンがグリコシルセラミダーゼにより遊離され得る方法。
【請求項32】
前記グリカン構造の群が本明細書の表および図に示される特異的な量のオリゴ糖を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記細胞調製物の細胞表面グライコームの存在または非存在が検出される、請求項1〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記細胞調製物が、前記細胞調製物の細胞集団内の混入する構造、時間依存的変化または細胞集団の状態の変化に関して、前記細胞調製物内のグリカンの質量分析を用いたグリコシル化分析により、評価/検出される、請求項1〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記細胞状態が、細胞培養中または細胞精製中に、低温における貯蔵もしくは操作と関連して、または細胞の凍結保存と関連して、制御される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
細胞状態の時間依存的変化が、細胞の栄養状態、細胞培養の密集度(confluency)、細胞の密度、細胞の遺伝的安定性の変化、細胞構造の完全性もしくは細胞齢、または細胞に影響する化学的、物理的、もしくは生化学的要素に依存する、請求項34記載の方法。
【請求項37】
哺乳動物細胞の集団内の幹細胞を同定、分析、選択または単離するための方法であって、結合剤または結合物質の使用を含み、前記結合剤/結合物質は請求項1〜18のいずれかのグリカン構造またはグリカン構造群に結合し、前記構造は
(i)幹細胞上/内における発現、およびフィーダー細胞または分化した細胞における発現の非存在または低発現を示す;
(ii)幹細胞における発現の非存在または低発現、およびフィーダー細胞または分化した細胞における発現または高発現または主な発現を示す;
(iii)幹細胞の亜集団における発現を示す;または(iv)分化した幹細胞の亜集団における発現を示す;
方法。
【請求項38】
前記幹細胞が全能性、多能性または多分化能である、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記胚幹細胞結合剤が多能性または多分化能幹細胞の同定のために用いられ、前記方法がさらに同定された多能性または多分化能幹細胞を回収のために選択することを含む、請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記の選択された多能性または多分化能幹細胞を哺乳動物細胞の集団から分離することをさらに含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記の分離された多能性または多分化能幹細胞を単離することをさらに含む、請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記細胞集団が臍帯血、胚体液(embryonal body fluids)、胚組織試料、胚組織培養物、細胞株および非造血成体起源の細胞培養物より選択される、請求項40記載の方法。
【請求項43】
前記幹細胞が成体幹細胞、胚幹細胞または胎児起源の幹細胞、好ましくは母親細胞集団内のヒト胎児起源のものである、請求項40記載の方法。
【請求項44】
前記幹細胞が脱分化した体細胞である、請求項40記載の方法。
【請求項45】
前記抗体がポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、および抗体フラグメントからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項46】
前記結合剤が管理された結合剤である、請求項1のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
前記結合剤が、請求項1〜18のいずれかに記載のグリカン構造の少なくとも1つのエピトープに特異的な、抗体、レクチン、またはグリコシダーゼの、少なくともグリカン構造結合部位を含み、前記グリカン構造が幹細胞および/または分化した細胞に付着する、請求項1のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
哺乳動物の体液または組織からの胚幹細胞の同定、選択または分析のための方法であって、請求項1〜18のいずれかに記載のグリカン構造の少なくとも1つのエピトープに特異的な抗体、レクチン、またはグリコシダーゼを得ること、および、前記抗体、レクチンまたはグリコシダーゼを幹細胞と接触させてこのような細胞を同定、選択、単離および/または分析することを含む方法。
【請求項49】
請求項48記載の方法により単離される哺乳動物幹細胞。
【請求項50】
請求項1〜18のいずれかのいずれかのグリカン構造に対する選択的幹細胞結合剤を同定するための方法であって:
幹細胞内/上の特異的発現ならびにフィーダー細胞および/または分化した体細胞内/上の発現の非存在を示すグリカン構造を選択し;そして幹細胞内/上のグリカン構造への前記結合剤の結合を確認すること
を含む方法。
【請求項51】
請求項1〜18のいずれかに記載のグリカン構造を検出するための結合剤を含む少なくとも1つの試薬;および前記試薬を用いて幹細胞の濃縮を行うための説明書を含み、任意に幹細胞の濃縮を行うための手段を含む、試料内の幹細胞の濃縮および検出のためのキット。
【請求項52】
前記試薬が検出可能なトレーサーで標識される、請求項51記載のキット。
【請求項53】
幹細胞、および幹細胞上の請求項1〜18のいずれかに記載のグリカン構造と結合する結合剤を有する、請求項1〜18のいずれかに記載のグリカン構造を含んだ組成物。
【請求項54】
幹細胞調製物の状態を評価する方法であって、前記調製物中のグリカン構造またはグリカン構造の群の存在を検出する工程を含み、前記グリカン構造またはグリカン構造の群が式T11:
[M]mGalβ1‐x[Nα]nHex(NAc)p
[式中、m、nおよびpは独立に0または1の整数であり
HexはGalまたはGlcであり、Xは結合位置であり;
MおよびNは単糖残基であって
独立に無(前記位置の遊離水酸基)
ならびに/または
Galの3位もしくは/およびHexNAcの6位に結合したシアル酸であるSAα
Galの3もしくは4位に結合したGalα、または
Galの4位に結合するGalNAcβ、ならびに/または
Galの2位;および/もしくは、Galが他の位置(4または3)に結合し、HexNAcがGlcNAcである場合、HexNAcの3もしくは4位;または、Galが他の位置(3)に結合する場合、Glcの3位;に結合したFuc(L‐フコース)残基であり、
ただし、mおよびnの合計は2であり
好ましくはmおよびnは独立に0または1であり、ならびに
MがGalαである場合、Galβ1に結合するシアル酸は存在せず、ならびに
nは0であり、xは好ましくは4であり。
MがGalNAcβである場合、Galβ1にα6結合するシアル酸は存在せず、nは0であり、xは4である]
によるものである方法。
【請求項55】
請求項54記載の方法であって、前記構造が式T12:
[M][SAα3]nGalβ1‐4Glc(NAc)p、
[式中、nおよびpは独立に0または1の整数であり、
MはGalの3もしくは4位に結合したGalα、またはGalの4位に結合したGalNAcβであり、および/またはSAαはGalの3位に結合したシアル酸分岐であり
MがGalαである場合、Galβ1に結合するシアル酸は存在しない(nは0である)]
によるものである方法。
【請求項56】
前記構造がグロボトリオース(Gb3)非還元末端の末端構造Galα4Galを含む、請求項54または55に記載の方法。
【請求項57】
新規標的/マーカー構造を含む幹細胞からの細胞成分の単離のための、上記請求項のうちいずれかに記載の結合剤分子の使用。
【請求項58】
前記の単離された細胞成分が遊離グリカン、またはタンパク質もしくは脂質もしくはその断片に結合したグリカンである、請求項57記載の使用。
【請求項59】
57〜58に記載の結合剤分子を用いる次の工程を含む、細胞成分を単離するための方法であって、
1)幹細胞試料を提供すること。
2)本発明の結合剤分子を対応する標的構造に接触させること。
3)前記結合剤および標的構造の複合体を少なくとも細胞材料の一部から単離すること。
である工程を含む方法。
【請求項60】
請求項59記載の方法により産生される標的構造組成物であって、幹細胞において、または幹細胞に特徴的な割合で特異的に発現する、前記結合剤構造に対応するグリカン構造およびペプチドまたはタンパク質エピトープを含む糖タンパク質または糖ペプチドを含み、前記組成物が請求項記載の方法で産生される標的構造組成物。
【請求項61】
式
NeuAcmNeuGcnHexoHexNAcpdHexqHexArPensActModXx (I)
[式中、m、n、o、p、q、r、s、t、およびxは≧0および約100未満の値の独立の整数であり、ただし各グリカンマス成分(glycan mass components)に対して主鎖単糖変数o、p、またはrのうち少なくとも2つは≧1であり、そして
式中、Hexはヘキソースを表し、Penはペントースを表し、ModXは修飾を表す]
の単糖組成を含む、複数のオリゴ糖の本質的に純粋なオリゴ糖グライコーム組成の分析のための方法であって、前記方法は
a)単離されたヒト幹細胞試料を提供すること;
b)前記幹細胞試料から全グリカンまたは全グリカン群を遊離させること、または前記幹細胞試料から遊離グリカンを抽出すること;
c)前記試料からグライコームを単離すること
d)質量分析プロファイリングにより組成を分析すること
である工程を含む方法。
【請求項62】
請求項61または1に記載の方法であって、前記方法が質量分析プロファイルの定量的な比較を伴い、前記方法が抗体、酵素および またはレクチン等の結合分子による分析のためのマーカーの選択に用いられる方法。
【請求項63】
細胞表面上の本質的にグライコーム組成の分析のための方法であって、
a)単離されたヒト幹細胞試料を提供すること;
b)前記細胞試料を、前記グライコーム組成内のグリカン構造またはグリカン構造群を認識する少なくとも1種の結合分子と接触させること;
c)結合した結合分子の量を分析すること
である工程を含む方法。
【請求項64】
請求項62または63に記載の方法であって、前記方法が群:
a)好ましくは混入細胞の表面上にある、マンノース型構造、特にレクチンPSAのようなアルファ‐Man構造
b)好ましくは造血型幹細胞の識別のための、MAA‐レクチンによるものと類似のα3‐シアル化および/またはフコシル化構造
c)Gal/GalNac結合特異性、好ましくはGal1‐3/GalNAc1‐3結合特異性、より好ましくはPNAに類似のGalβ1‐3/GalNAcβ1‐3結合特異性
からの1つまたはいくつかの構造に対する結合特異性を有する好ましい結合分子を必要とする方法。
【請求項65】
前記検出が、モノクローナル抗体、グリコシダーゼ、グリコシル転移酵素、植物レクチン、動物レクチンまたはそれらのペプチド模倣物からなる群より選択される組み替えタンパク質である結合剤により行われる、請求項62または63に記載の方法。
【請求項66】
前記組み替えタンパク質が、少なくとも部分的に2つの単糖構造および前記単糖残基間の結合構造を認識する高特異性結合剤である、請求項62または63に記載の方法。
【請求項67】
前記結合剤が、異なるヒト幹細胞型間の選別または選択のために用いられる、請求項62または63に記載の方法。
【請求項68】
前記結合剤が、胚性幹細胞およびフィーダー細胞集団の選別または選択のために用いられる、請求項62または63に記載の方法。
【請求項69】
請求項61または62に記載の方法であって、前記方法が:
a)前記分析のためのグリカンを含んだ幹細胞試料を調製すること;
b)前記幹細胞試料から全グリカンまたは全グリカン群を遊離すること、または前記幹細胞試料から遊離グリカンを抽出すること;
c)任意にグリカンを修飾すること;
d)前記試料の生体材料からグリカン画分/画分群を精製すること;
e)任意にグリカンを修飾すること;
f)遊離されたグリカンの組成を質量分析により分析すること;
g)任意に、遊離されたグリカンに関するデータを定量的に示し、前記定量的データセットを他の幹細胞試料からの他のデータセットと比較すること;
h)前記の遊離したグリカンに関するデータを定量的にまたは定性的に他の幹細胞試料から生成されたデータと比較すること;
である工程を含む方法。
【請求項70】
前記二糖エピトープが
式CGN:
[Manα3]n1(Manα6)n2Manβ4GlcNAcβ4(Fucα6)n3GlcNAcxR
[式中、n1、n2およびn3は0または1の整数であり、独立に残基の存在または非存在を表し、そして
式中、非還元末端の末端Manα3/Manα6‐残基は、幹細胞の状態の分析および/または幹細胞の操作のための、複合型、特に二分岐構造に、またはマンノース型(高Manおよび/または低Man)に、またはハイブリッド型構造に伸長してよく、式中、xRはβAsnもしくはβAsn‐ペプチドもしくはβAsn‐タンパク質等のタンパク質もしくはペプチドに結合するN‐グリカンの還元末端構造、またはN‐グリカンの遊離還元末端、またはヒト胚幹細胞の分析のために生成された前記還元の化学的誘導体を表す]
のN‐結合グリカンのコア構造におけるManβ4GlcNAc構造である、N‐グリカンコアマーカー構造。
【請求項71】
請求項70記載のマーカー構造を含むN‐グリカンコアであって、前記構造が式M2:
[Mα2]n1[Mα3]n2{[Mα2]n3[Mα6)]n4}[Mα6]n5{[Mα2]n6[Mα2]n7[Mα3]n8}Mβ4GNβ4[{Fucα6}]mGNyR2
[式中、n1、n2、n3、n4、n5、n6、n7、n8、およびmは独立に0または1のいずれかであり;ただしn2が0である場合、n1も0であり;n4が0である場合、n3も0であり;n5が0である場合、n1、n2、n3およびn4も0であり;n7が0である場合、n6も0であり;n8が0である場合、n6およびn7も0であり;
yはアノマー結合構造αおよび/もしくはβまたは誘導体化アノマー炭素からの結合であり、そして
R2は還元末端水酸基、化学的還元末端誘導体、または、タンパク質由来のアスパラギンN‐グリコシドアミノ酸および/もしくはペプチドを含むアスパラギンN‐グリコシド等の天然アスパラギンN‐グリコシド誘導体であり;
[]はn1、n2、n3、n4、n5、n6、n7、n8、およびmの値によって存在するかまたは存在しないかのいずれかである決定基を表し;そして
{}は前記構造中の分岐を表し;
そして前記構造は任意に高マンノース構造であり、これはさらにグルコース残基またはn6で表されるマンノース残基に結合する残基で置換される]
のマンノース型グリカンであるN‐グリカンコア。
【請求項72】
請求項71記載の方法であって、少なくとも1つの構造の量が分化中の幹細胞における減少または増加によって変化し、前記構造が単糖
HnN2Fm組成H [式中、Hはヘキソース、好ましくはManまたはGlcであり、NはN‐アセチルヘキソサミン、好ましくはGlcNAcであり、Fはデオキシヘキソース、好ましくはフコースであり、nは1〜11の整数であり、mは0または1である]
に対応する方法。
【請求項73】
それに由来する分化した細胞よりも、前記構造は造血幹細胞と関連している、請求項72記載の方法。
【請求項74】
前記構造の量が、造血幹細胞において、その分化したバリアントにおけるよりも増加する、請求項72または73に記載の方法。
【請求項75】
前記構造が、造血幹細胞に特異的な単糖組成を表す表に示される、請求項74に記載の方法
【請求項76】
前記構造の量が造血幹細胞において、その分化したバリアントにおけるよりも減少する、請求項72または73に記載の方法。
【請求項77】
表中に示されるものが造血幹細胞に特異的な単糖組成を示す、請求項76記載の方法
【請求項78】
請求項70記載の方法であって、前記構造が式GNβ2:
[R1GNβ2]n1[Mα3]n2{[R3]n3[GNβ2]n4Mα6}n5Mβ4GNXyR2、
[任意に、Mα6、Mα3、またはMβ4に結合する1または2または3個の式[RxGNβz]nxのさらなる分岐を有し、Rxは各分岐で異なっていて良く
式中、n1、n2、n3、n4、n5およびnxは独立に0または1のいずれかであり、
ただしn2が0である場合、n1は0であり、n3が1および/またはn4が1である場合、n5も1であり、少なくともn1もしくはn4は1、またはn3は1であり;
n4が0であり、かつn3が1である場合、R3はマンノース型置換基または無であり、そして
式中、Xはグリコシド結合二糖エピトープβ4(Fucα6)nGNであり、ここでnは0もしくは1、またはXは無であり、そして
yはアノマー結合構造αおよび/もしくはβ、または誘導体化アノマー炭素からの結合であり、そして
R1、RXおよびR3は独立に、コア構造に結合する1、2または3個の天然置換基を表し、
R2は還元末端水酸基、化学的還元末端誘導体、または、タンパク質由来のアスパラギンN‐グリコシドアミノ酸および/もしくはペプチドを含むアスパラギンN‐グリコシド等の天然アスパラギンN‐グリコシド誘導体であり。
[]は直鎖配列中に存在するまたは存在しない基を表し。{}もまた存在しても存在しなくてもよい分岐を表す]
の複合型N‐グリカンである方法。
【請求項79】
それに由来する分化した細胞よりも、前記構造は胚性幹細胞と関連している、請求項78記載の方法。
【請求項80】
請求項79記載の方法であって、前記構造が、H6N5、およびH6N5F1等の大型の複合型N‐グリカンであるhESC‐iiの群に属する。
または、前記構造が、H5N4F1、H5N4F2、およびH5N4F3等の二分岐サイズ複合型N‐グリカンであるhESC‐iiiの群に属する。
または、前記構造が、H5N4F2、H5N4F3、およびH4N5F3等の複合フコシル化N‐グリカンであるhESC‐ivの群に属する。
または、前記構造が、H4N3、およびH4N3F1等の単分岐型N‐グリカンであるhESC‐viiの群に属する。
または、構造が、H4N5F3等の末端HexNAc N‐グリカンであるhESC‐viiiの群に属する。
または、前記構造が、胚性幹細胞よりも、胚幹細胞に由来する分化した胚性幹細胞と関連する。
または、前記構造が、H5N6F2、H3N4、H3N5、H4N4F2、H4N5F2、H4N4、H4N5F1、H2N4F1、H3N5F1、およびH3N4F1等の末端HexNAc N‐グリカンであるDiff‐ivの群に属する。
または、前記構造が、H3N3、H3N3F1、およびH2N3F1等の末端HexNAc単分岐N‐グリカンであるDiff‐viの群に属する。
または、前記構造が、H5N5F1、H5N5、およびH5N5F3等のH=N型末端HexNAc N‐グリカンであるDiff‐viiの群に属する。
または、前記構造が、H4N3F2等の複合フコシル化単分岐型N‐グリカンであるDiff‐ixの群に属する。
または、前記構造が、胚性幹細胞よりも、胚幹細胞に由来する分化した胚性幹細胞と関連する、ハイブリッド型N‐グリカンである。
または、前記構造が、H6N4、およびH7N4等の伸長ハイブリッド型N‐グリカンであるDiff‐viiiの群に属する。
または、前記構造が、H5N3F1、H5N3、H6N3F1、およびH6N3等のハイブリッド型N‐グリカンであるDiff‐vの群に属する。
方法。
【請求項81】
Manα3/Manα6残基が複合型、特に二分岐構造に伸長し、n3が1であり、Manβ4GlcNAcエピトープがGlcNAc置換または置換群を含む、請求項70記載のN‐グリカンコアマーカー構造。
【請求項82】
ヒト血液関連、好ましくは造血、幹細胞調製物および/または混入細胞集団の状態を評価する方法であって、伸長グリカン構造、または、少なくとも2つの、前記調製物中のグリカン構造の群の存在を検出する工程を含み、ここで前記グリカン構造またはグリカンの群Tnおよびシアリル‐Tn構造は、式MUC
(R)nGalNAcα(Ser/Thr)m
[式中、nおよびmは独立に0または1であり、RはSAα6またはGalβ3であり、SAはシアル酸、好ましくはNeu5Acであり、RがGalβ3の場合、nは1である]、好ましくはTn抗原:
(SAα6)nGalNAcα(Ser/Thr)m、
[式中、nおよびmは独立に0または1であり、SAはシアル酸、好ましくはNeu5Acである]、
またはTF抗原
Galβ3GalNAcα(Ser/Thr)m
によるものである方法。
【請求項1】
ヒト血液関連、好ましくは造血幹細胞調製物の状態を評価する方法であって、前記調製物中の伸長グリカン構造、または、少なくとも2つの、グリカン構造の群の存在を検出する工程を含み、前記グリカン構造またはグリカン構造の群は、幹細胞の状態の分析および/または幹細胞の操作のための式T1
[式中、Xは結合位置であり
R1、R2、およびR6はOHもしくはグリコシド結合した単糖残基シアル酸、好ましくはNeu5Acα2もしくはNeu5Gc α2、最も好ましくはNeu5Acα2であり、または
R3、はOHまたはグリコシド結合した単糖残基Fucα1(L‐フコース)またはN‐アセチル(N‐アセトアミド、NCOCH3)であり;
R4、はH、OHまたはグリコシド結合した単糖残基Fucα1(L‐フコース)であり、
R4がHである場合、R5はOHであり、R4がHではない場合、R5はHであり;
R7はN‐アセチルまたはOHであり
Xは前記細胞由来の天然オリゴ糖主鎖構造、好ましくはN‐グリカン、O‐グリカンもしくは糖脂質構造であり;またはnが0である場合、Xは無であり、
Yはリンカー基、好ましくはO‐グリカンおよびO‐結合末端オリゴ糖および糖脂質のための酸素、ならびにN‐グリカンのためのN、またはnが0である場合、無であり;
Zは担体構造、好ましくは細胞により産生された天然担体であり、例えばタンパク質または脂質であって、好ましくは担体上のセラミドもしくは分岐グリカンコア構造、またはHであり;
アーチはガラクトピラノシルからの結合が左側の残基の3位または4位いずれかに対するものであること、およびR4構造が他の4または3位にあることを表し;
nは0または1の整数であり、mは1〜1000、好ましくは1〜100、および最も好ましくは1〜10の整数(担体上のグリカンの数)であり、
ただしR2およびR3のうち1つはOHまたはR3はN‐アセチルであり、
左側の第1の残基が右側の残基の4位に結合する場合、R6はOHであり:
XはGalα4Galβ4Glcではなく、(SSEA‐3または4のコア構造)またはR3はフコシルである]
であり、ここで前記細胞調製物は胚性幹細胞調製物であり。
ならびに、前記グリカン構造が伸長構造である場合、ここで、前記結合剤は前記構造およびさらに少なくとも1つの還元末端伸長エピトープ、好ましくは式E1:
AxHex(NAc)n、[式中、Aはアノマー構造アルファまたはベータであり、Xは結合位置2、3または6であり;およびHexはヘキソピラノシル残基Gal、またはManであり、nは0または1の整数であり、
ただし
nが1である場合、AxHexNAcはβ4GalNAcまたはβ6GalNAcであり、
HexがManである場合、AxHexはβ2Manであり、および、
HexがGalである場合、AxHexはβ3Galまたはβ6Galまたはα3Galまたはα4Galである];
の単糖エピトープ(Xおよび/またはYを置換)に結合し、
または
前記結合剤エピトープはさらに還元末端伸長エピトープ
還元末端GalNAcα含有構造に結合するSer/Thrもしくは
Galβ4Glc含有構造に結合するβCerに結合し、および前記グリカン構造は関連するまたは混入した細胞集団から決定される幹細胞集団である方法。
【請求項2】
幹細胞の状態の分析のための、および/または幹細胞の操作のための方法であって、幹細胞の試料から伸長グリカン構造または少なくとも2つのグリカン構造を検出する工程を含み、ここで前記グリカン構造は:末端ラクトサミン構造
(R1)n1Gal(NAc)n3β3/4(Fucα4/3)n2GlcNAcβR[式中、R1はGalβ4GlcNAcに結合するFucα2、またはSAα3、またはSAα6であり、および
RはN‐グリカン、O‐グリカンおよび/または糖脂質の還元末端コア構造である];a、
または、構造
(SAα3)n1Galβ3(SAα6)n2GalNAc;[式中
n1、n2およびn3は0または1であって構造の存在または非存在を表し、
式中、SAはシアル酸である];または分岐エピトープ
Galβ3(GlcNAcβ6)GalNAcまたは
R1Galβ4(R3)GlcNAcβ6(R2Galβ3)GalNAc、
[式中、R1およびR2は独立に無またはSAα3であり;およびR3は独立に無またはFucα3である];または
N‐結合グリカンのコア構造中のManβ4GlcNAc構造;またはエピトープGalβ4Glc、
または末端マンノース
または末端SAα3/6Gal[式中、SAはシアル酸であり、ただし
i)幹細胞は癌細胞株の細胞ではなく、そして
ii)細胞は造血CD34+細胞ではなく、該構造は、N‐アセチルラクトサミンを含む場合は、フコシル化された特異的な伸長構造であるか、またはSAα3Galβ4GlcNAcβ3Gal構造ではない]
からなる群より選択される方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法であって、前記結合物質が式T8Eベータ
[Mα]mGalβ1‐3/4[Nα]nGlcNAcβxHex(NAc)p
[式中
式中、xは結合位置2、3、または6であり
式中、m、nおよびpは独立に0または1の整数であり
MおよびNは単糖残基であって
i)独立に無(その位置における遊離水酸基)
および/または
ii)Galの3位または/およびGlcNAcの6位に結合するシアル酸であるSA
および/または
iii)Galの2位および/またはGlcNAcの3もしくは4位に結合するFuc(L‐フコース)残基(GalがGlcNAcの他の位置(4または3)に結合する場合)
であり、
ただしm、nおよびpは独立に0または1であり。
Hexはヘキソピラノシル残基GalまたはManであり、
ただしpが1の場合、βxHexNAcはβ6GalNAcであり、
pが0の場合
HexはManであり、かつβxHexはβ2Manであり、またはHexはGalであり、かつβxHexはβ3Galもしくはβ6Galである]
の構造を認識する方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法であって、前記結合物質が
式T10E
[Mα]mGalβ1‐4[Nα]nGlcNAcβxHex(NAc)p
[ただしpが1である場合、βxHexNAcはβ6GalNAcであり、
pが0である場合、HexはManであり、かつβxHexはβ2Manであり、または、HexはGalであり、かつβxHexはβ6Galである]
のII型ラクトサミンを基盤とする構造を認識する方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法であって、前記結合物質が式T10EMan:
[Mα]mGalβ1‐4[Nα]nGlcNAcβ2Man、
[式中、変数は請求項2の式T8Eベータに対して記載されるものと同様である]
のII型ラクトサミンを基盤とする構造を認識する方法。
【請求項6】
前記構造がGalβ4GlcNAcβ2Man、Galβ4(Fucα3)GlcNAcβ2Man、Fucα2Galβ4GlcNAcβ2Man、SAα6Galβ4GlcNAcβ2Man、SAα3Galβ4GlcNAcβ2Manからなる群より選択される、請求項5記載の方法
【請求項7】
前記構造がHII型構造Fucα2Galβ4GlcNAcβ2Manである、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記構造がLewis x構造Galβ4(Fucα3)GlcNAcβ2Manである、請求項5記載の方法。
【請求項9】
請求項4記載の方法であって、前記結合物質が
式T10EGal(NAc):
[Mα]mGalβ1‐4[Nα]nGlcNAcβ6Gal(NAc)p
[式中、変数は請求項2の式T8Eベータに対して記載される通りである]
のII型ラクトサミンを認識する方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法であって、前記構造が
Galβ4GlcNAcβ6Gal、Galβ4GlcNAcβ6GalNAc、Galβ4(Fucα3)GlcNAcβ6GalNAc、Fucα2Galβ4GlcNAcβ6GalNAc、SAα3/6Galβ4GlcNAcβ6GalNAc、およびSAα3Galβ4GlcNAcβ6GalNAc、SAα3Galβ4(Fucα3)GlcNAcβ6GalNAc、SAα3Galβ4(Fuca3)GlcNAcβ6(RGalβ3)GalNAc[式中、RはSAα3または無である]
からなる群より選択される方法。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法であって、前記結合物質が式T9E
[Mα]mGalβ1‐3[Nα]nGlcNAcβ3Gal
のI型ラクトサミンを基盤とする構造を認識する方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法であって、前記構造が
Galβ3GlcNAcβ3Gal、Galβ3(Fucα4)βGlcNAcβ3Gal、およびFucα2Galβ3GlcNAcβ3Gal、およびFucα2Galβ3(Fucα4)GlcNAcβ3Gal
からなる群より選択される方法。
【請求項13】
前記構造がHI型構造Fucα2Galβ3GlcNAcβ3GalまたはI型LAcNAc‐構造Galβ3GlcNAcβ3Galである、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記検出が、前記調製物における少なくとも1種のグリカン構造の量または存在を特異的結合物質または管理された結合剤により分析することによって行われる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記構造が少なくとも1個のFucα残基を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記の伸長オリゴ糖構造が(SAα3)0または1Galβ3/4(Fucα4/3)GlcNAc、Fucα2Galβ3GalNAcα/βおよびFucα2Galβ3(Fucα4)0または1GlcNAcβからなる群より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項17】
請求項2のいずれかに記載の方法であって、前記の伸長オリゴ糖が、Galβ4Glc、Galβ3GlcNAc、Galβ3GalNAc、Galβ4GlcNAc、Galβ3GlcNAcβ、Galβ3GalNAcβ/α、Galβ4GlcNAcβ、GalNAcβ4GlcNAc、SAα3Galβ4Glc、SAα3Galβ3GlcNAc、SAα3Galβ3GalNAc、SAα3Galβ4GlcNAc、SAα3Galβ3GlcNAcβ、SAα3Galβ3GalNAcβ/α、SAα3Galβ4GlcNAcβ、SAα6Galβ4Glc、SAα6Galβ4Glcβ、SAα6Galβ4GlcNAc、SAα6Galβ4GlcNAcβ、Galβ3(Fucα4)GlcNAc (Lewis a)、SAα3Galβ3(Fucα4)GlcNAc (シアリル‐Lewis a)、Fucα2Galβ3GlcNAc (H‐1型)、Fucα2Galβ3(Fucα4)GlcNAc (Lewis b)、Galβ4GlcNAc (2型ラクトサミン基盤)、Galβ4(Fucα3)GlcNAc (Lewis x)、SAα3Galβ3(Fucα4)GlcNAc (シアリル‐Lewis x)、Fucα2Galβ4GlcNAc (H‐2型)およびFucα2Galβ4(Fucα3)GlcNAc (Lewis y)からなる群より選択される方法。
【請求項18】
前記構造が少なくとも1つの末端ManαMan‐構造とともに用いられる場合の、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記検出がモノクローナル抗体、グリコシダーゼ、グリコシル転移酵素、植物レクチン、動物レクチンおよびそれらのペプチド模倣物からなる群より選択される組み替えタンパク質である結合剤により行われる、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記結合物質がGF287、GF279、GF288、GF284、GF283、GF286、GF290、GF289、GF275、GF276、GF277、GF278、GF297、GF298、GF302、GF303、GF305、GF296、GF300、GF304、GF307、GF353、およびGF354からなる群より選択される抗体と同一のエピトープに結合する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記結合物質がGF287、GF279、GF288、GF284、GF283、GF286、GF290、およびGF289、GF275、GF276、GF277、GF278、GF297、GF298、GF302、GF303、GF305、GF296、GF300、GF304、GF307、GF353、GF354、およびGF367からなる群より選択される、請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記組み替えタンパク質が少なくとも部分的に2つの単糖構造および前記単糖残基間の結合構造を認識する高特異性結合剤である、請求項19記載の方法。
【請求項23】
前記結合剤が、生体材料または他の細胞型を含む細胞材料等の試料からヒト幹細胞を選別または選択するために用いられる、請求項19記載の方法。
【請求項24】
前記結合剤が、異なるヒト幹細胞型間の選別または選択のために用いられる、請求項19記載の方法。
【請求項25】
選別または選択がFACSまたは細胞集団を濃縮するための任意の他の手段により行われる、請求項19記載の方法。
【請求項26】
請求項25記載の方法により得られた細胞集団。
【請求項27】
前記細胞調製物が血液関連細胞集団からなる群より選択される、請求項24記載の方法。
【請求項28】
分析されるべき細胞の量が103および106細胞の間である、請求項1記載の方法。
【請求項29】
前記グリカン構造がN‐グリカンコア構造を有するN‐グリカンを含むN‐グリカンサブグライコーム中に存在し、前記N‐グリカンがN‐グリコシダーゼにより細胞から遊離され得る、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記N‐グリカンコア構造がManβ4GlcNAcβ4(Fucα6)nGlcNAc[式中、nは0または1である]である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法であって、前記グリカン構造が、O‐グリカンコア構造を有するO‐グリカンを含むO‐グリカンサブグライコーム中に存在し、または前記グリカン構造が、糖脂質コア構造を有する糖脂質を含む糖脂質サブグライコーム中に存在し、前記グリカンがグリコシルセラミダーゼにより遊離され得る方法。
【請求項32】
前記グリカン構造の群が本明細書の表および図に示される特異的な量のオリゴ糖を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記細胞調製物の細胞表面グライコームの存在または非存在が検出される、請求項1〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記細胞調製物が、前記細胞調製物の細胞集団内の混入する構造、時間依存的変化または細胞集団の状態の変化に関して、前記細胞調製物内のグリカンの質量分析を用いたグリコシル化分析により、評価/検出される、請求項1〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記細胞状態が、細胞培養中または細胞精製中に、低温における貯蔵もしくは操作と関連して、または細胞の凍結保存と関連して、制御される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
細胞状態の時間依存的変化が、細胞の栄養状態、細胞培養の密集度(confluency)、細胞の密度、細胞の遺伝的安定性の変化、細胞構造の完全性もしくは細胞齢、または細胞に影響する化学的、物理的、もしくは生化学的要素に依存する、請求項34記載の方法。
【請求項37】
哺乳動物細胞の集団内の幹細胞を同定、分析、選択または単離するための方法であって、結合剤または結合物質の使用を含み、前記結合剤/結合物質は請求項1〜18のいずれかのグリカン構造またはグリカン構造群に結合し、前記構造は
(i)幹細胞上/内における発現、およびフィーダー細胞または分化した細胞における発現の非存在または低発現を示す;
(ii)幹細胞における発現の非存在または低発現、およびフィーダー細胞または分化した細胞における発現または高発現または主な発現を示す;
(iii)幹細胞の亜集団における発現を示す;または(iv)分化した幹細胞の亜集団における発現を示す;
方法。
【請求項38】
前記幹細胞が全能性、多能性または多分化能である、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記胚幹細胞結合剤が多能性または多分化能幹細胞の同定のために用いられ、前記方法がさらに同定された多能性または多分化能幹細胞を回収のために選択することを含む、請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記の選択された多能性または多分化能幹細胞を哺乳動物細胞の集団から分離することをさらに含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記の分離された多能性または多分化能幹細胞を単離することをさらに含む、請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記細胞集団が臍帯血、胚体液(embryonal body fluids)、胚組織試料、胚組織培養物、細胞株および非造血成体起源の細胞培養物より選択される、請求項40記載の方法。
【請求項43】
前記幹細胞が成体幹細胞、胚幹細胞または胎児起源の幹細胞、好ましくは母親細胞集団内のヒト胎児起源のものである、請求項40記載の方法。
【請求項44】
前記幹細胞が脱分化した体細胞である、請求項40記載の方法。
【請求項45】
前記抗体がポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、および抗体フラグメントからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項46】
前記結合剤が管理された結合剤である、請求項1のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
前記結合剤が、請求項1〜18のいずれかに記載のグリカン構造の少なくとも1つのエピトープに特異的な、抗体、レクチン、またはグリコシダーゼの、少なくともグリカン構造結合部位を含み、前記グリカン構造が幹細胞および/または分化した細胞に付着する、請求項1のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
哺乳動物の体液または組織からの胚幹細胞の同定、選択または分析のための方法であって、請求項1〜18のいずれかに記載のグリカン構造の少なくとも1つのエピトープに特異的な抗体、レクチン、またはグリコシダーゼを得ること、および、前記抗体、レクチンまたはグリコシダーゼを幹細胞と接触させてこのような細胞を同定、選択、単離および/または分析することを含む方法。
【請求項49】
請求項48記載の方法により単離される哺乳動物幹細胞。
【請求項50】
請求項1〜18のいずれかのいずれかのグリカン構造に対する選択的幹細胞結合剤を同定するための方法であって:
幹細胞内/上の特異的発現ならびにフィーダー細胞および/または分化した体細胞内/上の発現の非存在を示すグリカン構造を選択し;そして幹細胞内/上のグリカン構造への前記結合剤の結合を確認すること
を含む方法。
【請求項51】
請求項1〜18のいずれかに記載のグリカン構造を検出するための結合剤を含む少なくとも1つの試薬;および前記試薬を用いて幹細胞の濃縮を行うための説明書を含み、任意に幹細胞の濃縮を行うための手段を含む、試料内の幹細胞の濃縮および検出のためのキット。
【請求項52】
前記試薬が検出可能なトレーサーで標識される、請求項51記載のキット。
【請求項53】
幹細胞、および幹細胞上の請求項1〜18のいずれかに記載のグリカン構造と結合する結合剤を有する、請求項1〜18のいずれかに記載のグリカン構造を含んだ組成物。
【請求項54】
幹細胞調製物の状態を評価する方法であって、前記調製物中のグリカン構造またはグリカン構造の群の存在を検出する工程を含み、前記グリカン構造またはグリカン構造の群が式T11:
[M]mGalβ1‐x[Nα]nHex(NAc)p
[式中、m、nおよびpは独立に0または1の整数であり
HexはGalまたはGlcであり、Xは結合位置であり;
MおよびNは単糖残基であって
独立に無(前記位置の遊離水酸基)
ならびに/または
Galの3位もしくは/およびHexNAcの6位に結合したシアル酸であるSAα
Galの3もしくは4位に結合したGalα、または
Galの4位に結合するGalNAcβ、ならびに/または
Galの2位;および/もしくは、Galが他の位置(4または3)に結合し、HexNAcがGlcNAcである場合、HexNAcの3もしくは4位;または、Galが他の位置(3)に結合する場合、Glcの3位;に結合したFuc(L‐フコース)残基であり、
ただし、mおよびnの合計は2であり
好ましくはmおよびnは独立に0または1であり、ならびに
MがGalαである場合、Galβ1に結合するシアル酸は存在せず、ならびに
nは0であり、xは好ましくは4であり。
MがGalNAcβである場合、Galβ1にα6結合するシアル酸は存在せず、nは0であり、xは4である]
によるものである方法。
【請求項55】
請求項54記載の方法であって、前記構造が式T12:
[M][SAα3]nGalβ1‐4Glc(NAc)p、
[式中、nおよびpは独立に0または1の整数であり、
MはGalの3もしくは4位に結合したGalα、またはGalの4位に結合したGalNAcβであり、および/またはSAαはGalの3位に結合したシアル酸分岐であり
MがGalαである場合、Galβ1に結合するシアル酸は存在しない(nは0である)]
によるものである方法。
【請求項56】
前記構造がグロボトリオース(Gb3)非還元末端の末端構造Galα4Galを含む、請求項54または55に記載の方法。
【請求項57】
新規標的/マーカー構造を含む幹細胞からの細胞成分の単離のための、上記請求項のうちいずれかに記載の結合剤分子の使用。
【請求項58】
前記の単離された細胞成分が遊離グリカン、またはタンパク質もしくは脂質もしくはその断片に結合したグリカンである、請求項57記載の使用。
【請求項59】
57〜58に記載の結合剤分子を用いる次の工程を含む、細胞成分を単離するための方法であって、
1)幹細胞試料を提供すること。
2)本発明の結合剤分子を対応する標的構造に接触させること。
3)前記結合剤および標的構造の複合体を少なくとも細胞材料の一部から単離すること。
である工程を含む方法。
【請求項60】
請求項59記載の方法により産生される標的構造組成物であって、幹細胞において、または幹細胞に特徴的な割合で特異的に発現する、前記結合剤構造に対応するグリカン構造およびペプチドまたはタンパク質エピトープを含む糖タンパク質または糖ペプチドを含み、前記組成物が請求項記載の方法で産生される標的構造組成物。
【請求項61】
式
NeuAcmNeuGcnHexoHexNAcpdHexqHexArPensActModXx (I)
[式中、m、n、o、p、q、r、s、t、およびxは≧0および約100未満の値の独立の整数であり、ただし各グリカンマス成分(glycan mass components)に対して主鎖単糖変数o、p、またはrのうち少なくとも2つは≧1であり、そして
式中、Hexはヘキソースを表し、Penはペントースを表し、ModXは修飾を表す]
の単糖組成を含む、複数のオリゴ糖の本質的に純粋なオリゴ糖グライコーム組成の分析のための方法であって、前記方法は
a)単離されたヒト幹細胞試料を提供すること;
b)前記幹細胞試料から全グリカンまたは全グリカン群を遊離させること、または前記幹細胞試料から遊離グリカンを抽出すること;
c)前記試料からグライコームを単離すること
d)質量分析プロファイリングにより組成を分析すること
である工程を含む方法。
【請求項62】
請求項61または1に記載の方法であって、前記方法が質量分析プロファイルの定量的な比較を伴い、前記方法が抗体、酵素および またはレクチン等の結合分子による分析のためのマーカーの選択に用いられる方法。
【請求項63】
細胞表面上の本質的にグライコーム組成の分析のための方法であって、
a)単離されたヒト幹細胞試料を提供すること;
b)前記細胞試料を、前記グライコーム組成内のグリカン構造またはグリカン構造群を認識する少なくとも1種の結合分子と接触させること;
c)結合した結合分子の量を分析すること
である工程を含む方法。
【請求項64】
請求項62または63に記載の方法であって、前記方法が群:
a)好ましくは混入細胞の表面上にある、マンノース型構造、特にレクチンPSAのようなアルファ‐Man構造
b)好ましくは造血型幹細胞の識別のための、MAA‐レクチンによるものと類似のα3‐シアル化および/またはフコシル化構造
c)Gal/GalNac結合特異性、好ましくはGal1‐3/GalNAc1‐3結合特異性、より好ましくはPNAに類似のGalβ1‐3/GalNAcβ1‐3結合特異性
からの1つまたはいくつかの構造に対する結合特異性を有する好ましい結合分子を必要とする方法。
【請求項65】
前記検出が、モノクローナル抗体、グリコシダーゼ、グリコシル転移酵素、植物レクチン、動物レクチンまたはそれらのペプチド模倣物からなる群より選択される組み替えタンパク質である結合剤により行われる、請求項62または63に記載の方法。
【請求項66】
前記組み替えタンパク質が、少なくとも部分的に2つの単糖構造および前記単糖残基間の結合構造を認識する高特異性結合剤である、請求項62または63に記載の方法。
【請求項67】
前記結合剤が、異なるヒト幹細胞型間の選別または選択のために用いられる、請求項62または63に記載の方法。
【請求項68】
前記結合剤が、胚性幹細胞およびフィーダー細胞集団の選別または選択のために用いられる、請求項62または63に記載の方法。
【請求項69】
請求項61または62に記載の方法であって、前記方法が:
a)前記分析のためのグリカンを含んだ幹細胞試料を調製すること;
b)前記幹細胞試料から全グリカンまたは全グリカン群を遊離すること、または前記幹細胞試料から遊離グリカンを抽出すること;
c)任意にグリカンを修飾すること;
d)前記試料の生体材料からグリカン画分/画分群を精製すること;
e)任意にグリカンを修飾すること;
f)遊離されたグリカンの組成を質量分析により分析すること;
g)任意に、遊離されたグリカンに関するデータを定量的に示し、前記定量的データセットを他の幹細胞試料からの他のデータセットと比較すること;
h)前記の遊離したグリカンに関するデータを定量的にまたは定性的に他の幹細胞試料から生成されたデータと比較すること;
である工程を含む方法。
【請求項70】
前記二糖エピトープが
式CGN:
[Manα3]n1(Manα6)n2Manβ4GlcNAcβ4(Fucα6)n3GlcNAcxR
[式中、n1、n2およびn3は0または1の整数であり、独立に残基の存在または非存在を表し、そして
式中、非還元末端の末端Manα3/Manα6‐残基は、幹細胞の状態の分析および/または幹細胞の操作のための、複合型、特に二分岐構造に、またはマンノース型(高Manおよび/または低Man)に、またはハイブリッド型構造に伸長してよく、式中、xRはβAsnもしくはβAsn‐ペプチドもしくはβAsn‐タンパク質等のタンパク質もしくはペプチドに結合するN‐グリカンの還元末端構造、またはN‐グリカンの遊離還元末端、またはヒト胚幹細胞の分析のために生成された前記還元の化学的誘導体を表す]
のN‐結合グリカンのコア構造におけるManβ4GlcNAc構造である、N‐グリカンコアマーカー構造。
【請求項71】
請求項70記載のマーカー構造を含むN‐グリカンコアであって、前記構造が式M2:
[Mα2]n1[Mα3]n2{[Mα2]n3[Mα6)]n4}[Mα6]n5{[Mα2]n6[Mα2]n7[Mα3]n8}Mβ4GNβ4[{Fucα6}]mGNyR2
[式中、n1、n2、n3、n4、n5、n6、n7、n8、およびmは独立に0または1のいずれかであり;ただしn2が0である場合、n1も0であり;n4が0である場合、n3も0であり;n5が0である場合、n1、n2、n3およびn4も0であり;n7が0である場合、n6も0であり;n8が0である場合、n6およびn7も0であり;
yはアノマー結合構造αおよび/もしくはβまたは誘導体化アノマー炭素からの結合であり、そして
R2は還元末端水酸基、化学的還元末端誘導体、または、タンパク質由来のアスパラギンN‐グリコシドアミノ酸および/もしくはペプチドを含むアスパラギンN‐グリコシド等の天然アスパラギンN‐グリコシド誘導体であり;
[]はn1、n2、n3、n4、n5、n6、n7、n8、およびmの値によって存在するかまたは存在しないかのいずれかである決定基を表し;そして
{}は前記構造中の分岐を表し;
そして前記構造は任意に高マンノース構造であり、これはさらにグルコース残基またはn6で表されるマンノース残基に結合する残基で置換される]
のマンノース型グリカンであるN‐グリカンコア。
【請求項72】
請求項71記載の方法であって、少なくとも1つの構造の量が分化中の幹細胞における減少または増加によって変化し、前記構造が単糖
HnN2Fm組成H [式中、Hはヘキソース、好ましくはManまたはGlcであり、NはN‐アセチルヘキソサミン、好ましくはGlcNAcであり、Fはデオキシヘキソース、好ましくはフコースであり、nは1〜11の整数であり、mは0または1である]
に対応する方法。
【請求項73】
それに由来する分化した細胞よりも、前記構造は造血幹細胞と関連している、請求項72記載の方法。
【請求項74】
前記構造の量が、造血幹細胞において、その分化したバリアントにおけるよりも増加する、請求項72または73に記載の方法。
【請求項75】
前記構造が、造血幹細胞に特異的な単糖組成を表す表に示される、請求項74に記載の方法
【請求項76】
前記構造の量が造血幹細胞において、その分化したバリアントにおけるよりも減少する、請求項72または73に記載の方法。
【請求項77】
表中に示されるものが造血幹細胞に特異的な単糖組成を示す、請求項76記載の方法
【請求項78】
請求項70記載の方法であって、前記構造が式GNβ2:
[R1GNβ2]n1[Mα3]n2{[R3]n3[GNβ2]n4Mα6}n5Mβ4GNXyR2、
[任意に、Mα6、Mα3、またはMβ4に結合する1または2または3個の式[RxGNβz]nxのさらなる分岐を有し、Rxは各分岐で異なっていて良く
式中、n1、n2、n3、n4、n5およびnxは独立に0または1のいずれかであり、
ただしn2が0である場合、n1は0であり、n3が1および/またはn4が1である場合、n5も1であり、少なくともn1もしくはn4は1、またはn3は1であり;
n4が0であり、かつn3が1である場合、R3はマンノース型置換基または無であり、そして
式中、Xはグリコシド結合二糖エピトープβ4(Fucα6)nGNであり、ここでnは0もしくは1、またはXは無であり、そして
yはアノマー結合構造αおよび/もしくはβ、または誘導体化アノマー炭素からの結合であり、そして
R1、RXおよびR3は独立に、コア構造に結合する1、2または3個の天然置換基を表し、
R2は還元末端水酸基、化学的還元末端誘導体、または、タンパク質由来のアスパラギンN‐グリコシドアミノ酸および/もしくはペプチドを含むアスパラギンN‐グリコシド等の天然アスパラギンN‐グリコシド誘導体であり。
[]は直鎖配列中に存在するまたは存在しない基を表し。{}もまた存在しても存在しなくてもよい分岐を表す]
の複合型N‐グリカンである方法。
【請求項79】
それに由来する分化した細胞よりも、前記構造は胚性幹細胞と関連している、請求項78記載の方法。
【請求項80】
請求項79記載の方法であって、前記構造が、H6N5、およびH6N5F1等の大型の複合型N‐グリカンであるhESC‐iiの群に属する。
または、前記構造が、H5N4F1、H5N4F2、およびH5N4F3等の二分岐サイズ複合型N‐グリカンであるhESC‐iiiの群に属する。
または、前記構造が、H5N4F2、H5N4F3、およびH4N5F3等の複合フコシル化N‐グリカンであるhESC‐ivの群に属する。
または、前記構造が、H4N3、およびH4N3F1等の単分岐型N‐グリカンであるhESC‐viiの群に属する。
または、構造が、H4N5F3等の末端HexNAc N‐グリカンであるhESC‐viiiの群に属する。
または、前記構造が、胚性幹細胞よりも、胚幹細胞に由来する分化した胚性幹細胞と関連する。
または、前記構造が、H5N6F2、H3N4、H3N5、H4N4F2、H4N5F2、H4N4、H4N5F1、H2N4F1、H3N5F1、およびH3N4F1等の末端HexNAc N‐グリカンであるDiff‐ivの群に属する。
または、前記構造が、H3N3、H3N3F1、およびH2N3F1等の末端HexNAc単分岐N‐グリカンであるDiff‐viの群に属する。
または、前記構造が、H5N5F1、H5N5、およびH5N5F3等のH=N型末端HexNAc N‐グリカンであるDiff‐viiの群に属する。
または、前記構造が、H4N3F2等の複合フコシル化単分岐型N‐グリカンであるDiff‐ixの群に属する。
または、前記構造が、胚性幹細胞よりも、胚幹細胞に由来する分化した胚性幹細胞と関連する、ハイブリッド型N‐グリカンである。
または、前記構造が、H6N4、およびH7N4等の伸長ハイブリッド型N‐グリカンであるDiff‐viiiの群に属する。
または、前記構造が、H5N3F1、H5N3、H6N3F1、およびH6N3等のハイブリッド型N‐グリカンであるDiff‐vの群に属する。
方法。
【請求項81】
Manα3/Manα6残基が複合型、特に二分岐構造に伸長し、n3が1であり、Manβ4GlcNAcエピトープがGlcNAc置換または置換群を含む、請求項70記載のN‐グリカンコアマーカー構造。
【請求項82】
ヒト血液関連、好ましくは造血、幹細胞調製物および/または混入細胞集団の状態を評価する方法であって、伸長グリカン構造、または、少なくとも2つの、前記調製物中のグリカン構造の群の存在を検出する工程を含み、ここで前記グリカン構造またはグリカンの群Tnおよびシアリル‐Tn構造は、式MUC
(R)nGalNAcα(Ser/Thr)m
[式中、nおよびmは独立に0または1であり、RはSAα6またはGalβ3であり、SAはシアル酸、好ましくはNeu5Acであり、RがGalβ3の場合、nは1である]、好ましくはTn抗原:
(SAα6)nGalNAcα(Ser/Thr)m、
[式中、nおよびmは独立に0または1であり、SAはシアル酸、好ましくはNeu5Acである]、
またはTF抗原
Galβ3GalNAcα(Ser/Thr)m
によるものである方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2010−516240(P2010−516240A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545966(P2009−545966)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【国際出願番号】PCT/FI2008/050017
【国際公開番号】WO2008/087258
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(509205250)
【出願人】(509205261)グリコス フィンランド リミテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【国際出願番号】PCT/FI2008/050017
【国際公開番号】WO2008/087258
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(509205250)
【出願人】(509205261)グリコス フィンランド リミテッド (5)
【Fターム(参考)】
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