ヒトTIMP−1抗体
【課題】メタロプロテアーゼ-1組織阻害剤(TIMP-1)のマトリクスメタロプロテア−ゼ阻害活性を減少させる方法を提供する。
【解決手段】TIMP-1に結合するヒト抗体、該ヒト抗体は肝線維症、アルコール性肝疾患、心線維症、急性冠血管症候群、ループス腎炎、糸球体硬化性腎疾患、良性前立腺過形成、結腸癌、肺癌、および特発性肺線維症のような、TIMP-1が上昇している障害を診断および治療するための試薬として用いることができる。
【解決手段】TIMP-1に結合するヒト抗体、該ヒト抗体は肝線維症、アルコール性肝疾患、心線維症、急性冠血管症候群、ループス腎炎、糸球体硬化性腎疾患、良性前立腺過形成、結腸癌、肺癌、および特発性肺線維症のような、TIMP-1が上昇している障害を診断および治療するための試薬として用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2001年4月24日に提出された同時係属中の仮出願番号第60/285,683号に対する優先権を主張し、参照として本明細書に組み入れる。
【0002】
発明の分野
本発明は、TIMP-1結合ヒト抗体に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
メタロプロテアーゼの組織阻害剤(TIMP)は、エンドペプチドヒドロラーゼのファミリーであるメタロプロテアーゼを阻害する。メタロプロテアーゼは、結合組織および造血細胞によって分泌され、触媒のためにZn2+またはCa2+を利用し、TIMP分子と共に金属キレート剤によって不活化される可能性がある。マトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)は、組織の多くの構造成分、特に細胞外マトリクス(ECM)の分解を含む生物学的に重要な多様なプロセスに関与している。
【0004】
細胞外マトリクス組織の分解は、既存の組織の破壊が例えば、胚の体内移植(Reponenら、Dev. Dyn. 202、388〜96、1995(非特許文献1))、胚形成、および組織の再構築が必要であるプロセスにおいて望ましい。しかし、マトリクス蛋白質の合成と分解の不均衡によって、肝線維症のような疾患が起こりうる(Iredaleら、Hepatology 24、176〜84、1996(非特許文献2))。この不均衡は、例えば、TIMPのレベルが上昇した場合に起こりうる。TIMP-1レベルが増加した障害には、例えば、肝線維症、アルコール性肝疾患、心線維症、急性冠血管症候群、ループス腎炎、糸球体硬化性腎疾患、特発性肺線維症、良性前立腺過形成、肺癌、および結腸癌が含まれる。例えば、Inokuboら、Am. Heart J. 141:211〜17、2001(非特許文献3);Ylisirnioら、Anticancer Res. 20:1311〜16、2000(非特許文献4);Holten-Andersenら、Clin. Cancer Res. 6:4292〜99、2000(非特許文献5);Holten-Andersenら、Br. J. Cancer 80:495〜503、1999(非特許文献6);Petersonら、Cardiovascular Res. 46:307〜15、2000(非特許文献7);Arthurら、Alcoholism:Clinical and Experimental Res. 23:840〜43、1999(非特許文献8);Iredaleら、Hepatol. 24:176〜84、1996(非特許文献2)を参照のこと。
【0005】
当技術分野において、治療効果を提供するために用いることができるTIMP-1活性を阻害する試薬および方法が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Reponenら、Dev. Dyn. 202、388〜96、1995
【非特許文献2】Iredaleら、Hepatology 24、176〜84、1996
【非特許文献3】Inokuboら、Am. Heart J. 141:211〜17、2001
【非特許文献4】Ylisirnioら、Anticancer Res. 20:1311〜16、2000
【非特許文献5】Holten-Andersenら、Clin. Cancer Res. 6:4292〜99、2000
【非特許文献6】Holten-Andersenら、Br. J. Cancer 80:495〜503、1999
【非特許文献7】Petersonら、Cardiovascular Res. 46:307〜15、2000
【非特許文献8】Arthurら、Alcoholism:Clinical and Experimental Res. 23:840〜43、1999
【発明の概要】
【0007】
発明の簡単な概要
本発明の目的は、TIMP-1活性を阻害する試薬および方法を提供することである。本発明のこの目的および他の目的は、下記の態様の一つまたはそれ以上によって提供される。
【0008】
本発明の一つの態様は、抗体がメタロプロテアーゼ-1の組織阻害剤(TIMP-1)に結合して、TIMP-1のマトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害活性を中和する、ヒト抗体の精製調製物である。
【0009】
本発明のもう一つの態様は、配列番号:1〜43および360からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVHCDR3領域を含む第一のヒト抗体の精製調製物である。
【0010】
本発明のなおもう一つの態様は、配列番号:44〜86および365〜379からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVLCDR3領域を含む第一のヒト抗体の精製調製物である。
【0011】
本発明のなおもう一つの態様は、第二のヒト抗体のTIMP-1結合およびMMP-阻害活性を有する第一のヒト抗体の精製調製物である。第二の抗体は、配列番号:1と44、配列番号:2と45、配列番号:3と46、配列番号:4と47、配列番号:5と48、配列番号:6と49、配列番号:7と50、配列番号:3と44、配列番号:3と45、配列番号:3と47、配列番号:3と48、配列番号:3と49、配列番号:3と50、配列番号:7と44、配列番号:7と45、配列番号:7と47、配列番号:7と48、配列番号:8と51、配列番号:9と52、配列番号:10と53、配列番号:11と54、配列番号:12と55、配列番号:13と56、配列番号:14と57、配列番号:15と58、配列番号:16と59、配列番号:17と60、配列番号:18と61、配列番号:19と62、配列番号:20と63、配列番号:21と64、配列番号:22と65、配列番号:23と66、配列番号:24と67、配列番号:25と68、配列番号:26と69、配列番号:27と70、配列番号:28と71、配列番号:29と72、配列番号:30と73、配列番号:31と74、配列番号:32と75、配列番号:33と76、配列番号:34と77、配列番号:35と78、配列番号:36と79、配列番号:37と80、配列番号:38と81、配列番号:39と82、配列番号:40と83、配列番号:41と84、配列番号:42と85、配列番号:43と86、配列番号:3と48、配列番号:360と48、配列番号:3と365、配列番号:16と59、配列番号:18と61、配列番号:34と77、配列番号:34と379、配列番号:18と376、配列番号:18と377、および配列番号:18と378からなる群より選択されるVHCDR3とVLCDR3のアミノ酸配列対を含む。
【0012】
本発明のさらにもう一つの態様は、配列番号:1と44、配列番号:2と45、配列番号:3と46、配列番号:4と47、配列番号:5と48、配列番号:6と49、配列番号:7と50、配列番号:3と44、配列番号:3と45、配列番号:3と47、配列番号:3と48、配列番号:3と49、配列番号:3と50、配列番号:7と44、配列番号:7と45、配列番号:7と47、配列番号:7と48、配列番号:8と51、配列番号:9と52、配列番号:10と53、配列番号:11と54、配列番号:12と55、配列番号:13と56、配列番号:14と57、配列番号:15と58、配列番号:16と59、配列番号:17と60、配列番号:18と61、配列番号:19と62、配列番号:20と63、配列番号:21と64、配列番号:22と65、配列番号:23と66、配列番号:24と67、配列番号:25と68、配列番号:26と69、配列番号:27と70、配列番号:28と71、配列番号:29と72、配列番号:30と73、配列番号:31と74、配列番号:32と75、配列番号:33と76、配列番号:34と77、配列番号:35と78、配列番号:36と79、配列番号:37と80、配列番号:38と81、配列番号:39と82、配列番号:40と83、配列番号:41と84、配列番号:42と85、配列番号:43と86、配列番号:3と48、配列番号:360と48、配列番号:3と365、配列番号:16と59、配列番号:18と61、配列番号:34と77、配列番号:34と379、配列番号:18と376、配列番号:18と377、および配列番号:18と378からなる群より選択されるVHCDR3とVLCDR3のアミノ酸配列対を含むヒト抗体の精製調製物である。
【0013】
本発明のさらなる態様は、配列番号:140と97、配列番号:141と98、配列番号:142と99、配列番号:143と100、配列番号:144と101、配列番号:145と102、配列番号:146と103、配列番号:142と97、配列番号:142と98、配列番号:142と100、配列番号:142と101、配列番号:142と102、配列番号:142と103、配列番号:146と97、配列番号:146と98、配列番号:146と100、配列番号:146と101、配列番号:148と104、配列番号:148と105、配列番号:149と106、配列番号:150と107、配列番号:151と108、配列番号:152と109、配列番号:153と110、配列番号:154と111、配列番号:155と112、配列番号:156と113、配列番号:157と114、配列番号:158と115、配列番号:159と116、配列番号:160と117、配列番号:161と118、配列番号:162と119、配列番号:163と120、配列番号:164と121、配列番号:165と122、配列番号:166と123、配列番号:167と124、配列番号:168と125、配列番号:169と126、配列番号:170と127、配列番号:171と128、配列番号:172と129、配列番号:173と130、配列番号:174と131、配列番号:175と132、配列番号:176と133、配列番号:177と134、配列番号:178と135、配列番号:179と136、配列番号:180と137、配列番号:181と138、および配列番号:182と139からなる群より選択される重鎖および軽鎖アミノ酸対を含むヒト抗体の精製調製物である。
【0014】
本発明のもう一つの抗体は、ヒト抗体と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物である。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、および(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。
【0015】
本発明のさらにもう一つの態様は、配列番号:1〜43および360からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVHCDR3領域を含むヒト抗体をコードする精製ポリヌクレオチドである。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。
【0016】
本発明のさらにもう一つの態様は、配列番号:44〜86および365〜379からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVLCDR3領域を含むヒト抗体をコードする精製ポリヌクレオチドである。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。
【0017】
本発明のなおもう一つの態様は、配列番号:1〜43および360からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVHCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターである。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。
【0018】
本発明のさらなる態様は、配列番号:1〜43および360からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVHCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターである。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。VHCDR3領域は、配列番号:227〜269からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0019】
本発明のもう一つの態様は、配列番号:44〜86および365〜379からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVLCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターである。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。
【0020】
本発明のなおもう一つの態様は、配列番号:44〜86および365〜379からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVLCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターである。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。VLCDR3領域は、配列番号:184〜226からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0021】
本発明のなおもう一つの態様は、配列番号:1〜43および360からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVHCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターである。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。ヒト抗体は、配列番号:140〜182からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する重鎖を含む。
【0022】
本発明のさらにもう一つの態様は、配列番号:1〜43および360からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVHCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターである。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。ヒト抗体は、配列番号:140〜182からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する重鎖を含む。重鎖は、配列番号:269〜311からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0023】
本発明のさらなる態様は、配列番号:44〜86および365〜379からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVLCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターである。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。ヒト抗体は、配列番号:97〜139からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
【0024】
本発明のもう一つの態様は、配列番号:44〜86および365〜379からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVLCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターである。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。ヒト抗体は、配列番号:97〜139からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。軽鎖は、配列番号:312〜354からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0025】
本発明のなおもう一つの態様は、発現ベクターを含む宿主細胞である。発現ベクターは、ヒト抗体が、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する、配列番号:1〜43および360からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVHCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0026】
本発明のなおもう一つの態様は、発現ベクターを含む宿主細胞である。発現ベクターは、ヒト抗体が、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する、配列番号:1〜43および360からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVHCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む。VHCDR3領域は、配列番号:227〜269からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0027】
本発明のなおもう一つの態様は、発現ベクターを含む宿主細胞である。発現ベクターは、配列番号:44〜86および365〜379からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVLCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。
【0028】
本発明のさらなる態様は、発現ベクターを含む宿主細胞である。発現ベクターは、配列番号:44〜86および365〜379からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVLCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。VLCDR3領域は、配列番号:184〜226からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0029】
本発明のもう一つの態様は、発現ベクターを含む宿主細胞である。発現ベクターは、ヒト抗体が、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する、配列番号:1〜43および360からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVHCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む。ヒト抗体は、配列番号:140〜182からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する重鎖を含む。
【0030】
本発明のさらにもう一つの態様は、発現ベクターを含む宿主細胞である。発現ベクターは、ヒト抗体が、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する、配列番号:1〜43および360からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVHCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む。ヒト抗体は、配列番号:140〜182からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する重鎖を含む。重鎖は、配列番号:269〜311からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0031】
本発明のなおもう一つの態様は、発現ベクターを含む宿主細胞である。発現ベクターは、配列番号:44〜86および365〜379からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVLCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。ヒト抗体は、配列番号:97〜139からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
【0032】
本発明のなおさらなる態様は、発現ベクターを含む宿主細胞である。発現ベクターは、配列番号:44〜86および365〜379からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVLCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。ヒト抗体は、配列番号:97〜139からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。軽鎖は、配列番号:312〜354からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0033】
本発明のさらなる態様は、ヒト抗体を作製する方法である。請求項43記載の宿主細胞は、抗体が発現される条件で培養される。ヒト抗体は宿主細胞培養物から精製される。
【0034】
本発明のもう一つの態様は、TIMP-1のMMP-阻害活性を減少させる方法である。TIMP-1を、TIMP-1に結合するヒト抗体に接触させる。抗体の非存在下のTIMP-1のMMP-阻害活性と比較すると、TIMP-1のMMP阻害活性は減少する。
【0035】
本発明のなおもう一つの態様は、TIMP-1が上昇している障害の症状を改善する方法である。TIMP-1のMMP阻害活性を中和するヒト抗体の有効量を、障害を有する患者に投与する。それによって障害の症状が改善される。
【0036】
本発明のさらなる態様は、試験調製物中のTIMP-1を検出する方法である。試験調製物を、TIMP-1に特異的に結合するヒト抗体に接触させる。試験調製物を抗体TIMP-1複合体の存在についてアッセイする。
【0037】
本発明のさらにもう一つの態様は、TIMP-1レベルが上昇している障害を診断するために役立つ方法である。障害を有することが疑われる患者からの試料を、TIMP-1に結合するヒト抗体に接触させる。試料を、抗体-TIMP-1複合体の存在についてアッセイする。正常試料中の複合体の量以上である複合体量が検出されれば、障害を有する可能性がある患者が同定される。
【0038】
本発明はこのように、TIMP-1に結合して、TIMP-1のMMP-阻害活性を中和するヒト抗体を提供する。これらの抗体は、とりわけ診断および治療法において用いることができる。
【0039】
発明の詳細な説明
本発明は、TIMP-1に結合するヒト抗体を提供する。これらの抗体は、多様な治療および診断目的にとって有用である。
【0040】
ヒトTIMP-1抗体の特徴
本明細書において用いられる「抗体」には、無傷の免疫グロブリン分子(例えば、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgM、IgD、IgE、IgA)と共に、ヒトおよび/またはラットTIMP-1蛋白質のエピトープに特異的に結合することができるFab、F(ab')2、scFv、およびFvのようなその断片が含まれる。TIMP-1に特異的に結合する抗体は、免疫化学アッセイにおいて用いた場合に他の蛋白質によって提供される検出シグナルより少なくとも5、10、または20倍高い検出シグナルを提供する。好ましくは、ヒトおよび/またはラットTIMP-1に特異的に結合する抗体は、免疫化学アッセイにおいて他の蛋白質を検出せず、溶液からTIMP-1を免疫沈殿することができる。
【0041】
TIMP-1に対するヒト抗体結合のKdは、リアルタイム生体分子相互作用分析(BIA)(Sjolander and Urbaniczky、Anal. Chem. 63、2338〜45、1991、およびSzaboら、Curr. Opin. Struct. Biol. 5:699〜705、1995)のような技術を含む当技術分野で既知の如何なる方法も用いてアッセイすることができる。BIAは、如何なる相互作用物質も標識せずに、生体特異的相互作用をリアルタイムで研究する技術(例えば、BIAcore(商標))である。光学現象である表面プラズモン共鳴(SPR)の変化を生体分子間のリアルタイム相互作用の指標として用いることができる。
【0042】
BIAcore(商標)アッセイにおいて、本発明のいくつかのヒト抗体は、Kd約0.1 nM〜約10μM、約2 nM〜約1μM、約2 nM〜約200 nM、約2 nM〜約150 nM、約50 nM〜約100 nM、約0.2 nM〜約13 nM、約0.2 nM〜約0.5 nM、約2 nM〜約13 nM、および約0.5 nM〜約2 nMでヒトTIMP-1に特異的に結合する。より好ましいヒト抗体は、約0.2 nM、約0.3 nM、約0.5 M、約0.6 nM、約2 nM、約7 nM、約10 nM、約11 nMおよび約13 nMからなる群より選択されるKdでヒトTIMP-1に特異的に結合する。
【0043】
本発明の他のヒト抗体は、Kd約0.1 nM〜約10μM、約2 nM〜約1μM、約2 nM〜約200 nM、約2 nM〜約150 nM、約50 nM〜約100 nM、約1.3 nM〜約13 nM、約1.8 nM〜約10 nM、約2 nM〜約9 nM、約1.3 nM〜約9 nM、および約2 nM〜約10 nMでヒトTIMP-1に特異的に結合する。好ましいKdの範囲は、約0.8 nM、約1 nM、約1.3 nM、約1.9 nM、約2 nM、約3 nM、約9 nM、約10 nM、約13 nM、約14 nM、および約15 nM〜である。
【0044】
好ましくは、本発明の抗体は、TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。MMPは、例えばMMP-1、MMP-2、MMP-3、MMP-7、MMP-8、MMP-9、MMP-10、MMP-11、MMP-12、MMP-13、MMP-19、MMP-20、またはMMP-23でありうる。
【0045】
TIMP-1のMMP阻害活性を中和するためのIC50は、当技術分野で既知の如何なる手段によっても測定することができる。好ましくは、IC50は、Bickettら、Anal. Biochem. 212、58〜64、1993に記載される高処理能蛍光発光アッセイを用いて決定される。典型的な蛍光発光アッセイにおいて、ヒトTIMP-1 MMP阻害活性を中和するためのヒト抗体のIC50は、約0.1 nM〜約200 nM、約1 nM〜約100 nM、約2 nM〜約50 nM、約5 nM〜約25 nM、約10 nM〜約15 nM、約0.2 nM〜約11 nM、約0.2 nM〜約4 nM、および約4 nM〜約11 nMの範囲である。いくつかのヒト抗体のヒトTIMP-1 MMP阻害活性を中和するためのIC50は、約0.2 nM、約0.3 nM、約0.4 nM、約4 nM、約7 nM、約9 nM、および約11 nMである。
【0046】
ラットTIMP-1 MMP阻害活性を中和するための典型的なIC50は、約0.1 nM〜約300 nM、約1 nM〜約100 nM、約2 nM〜約50 nM、約5 nM〜約25 nM、約10 nM〜約15 nM、約1.1 nM〜約14 nM、約1.6 nM〜約11 nM、約3 nM〜約7 nM、約1.1 nM〜約7 nM、約1.1 nM〜約11 nM、約3 nM〜約11 nM、および約3 nM〜約14 nMの範囲である。いくつかのヒト抗体のラットTIMP-1 MMP阻害活性を中和するためのIC50は、約1.1 nM、約1.6 nM、約3 nM、約7 nM、約11 nM、約14 nM、約19 nM、約20 nM、約30 nM、および約100 nMである。
【0047】
本発明の好ましいヒト抗体は、TIMP-1に対する結合に関するKdと、TIMP-1のMMP-阻害活性を中和するためのIC50とがほぼ等しい抗体である。
【0048】
上記のTIMP-結合およびMMP-阻害活性中和特徴を有する多くのヒト抗体が、MorphoSys HuCAL(登録商標)Fab 1ライブラリをスクリーニングすることによって同定されている。HuCAL(登録商標)ライブラリのために構築したCDRカセットは、95〜102位までの枝を含む長さがアミノ酸残基5〜28個の範囲の分布を有するようにデザインされた。Knappikら、J. Mol. Biol. 296、57〜86、2000。しかし、いくつかのクローンはより短いVHCDR3領域を有していた。実際に、それらが全てVH312と比較的短いVHCDR3領域、典型的にアミノ酸4個との組み合わせを示すことは、このライブラリから同定された抗ヒトTIMP-1ヒト抗体の顕著な特徴である。
【0049】
本発明のいくつかの態様において、ヒト抗体のVHCDR3領域は、配列番号:1〜43に示すアミノ酸配列を有する。本発明の他の態様において、ヒト抗体のVLCDR3領域は、配列番号:44〜86に示すアミノ酸配列を有する。表2、3、および7を参照のこと。上記および表2、3、および7に記載した抗体のような抗体のTIMP-1結合特徴およびMMP-阻害活性中和特徴を有するヒト抗体も同様に、本発明のヒト抗体である。
【0050】
ヒト抗体を得る
上記のTIMP-1結合およびMMP活性中和特徴を有するヒト抗体は、以下のようにMorphoSys HuCAL(登録商標)ライブラリから同定することができる。例えば、ヒトまたはラットTIMP-1をマイクロタイタープレートにコーティングして、MorphoSys HuCAL(登録商標)Fabファージライブラリと共にインキュベートする(下記の実施例1を参照のこと)。TIMP-1に結合しないそれらのファージ結合Fabは、プレートから洗浄することができ、それによってTIMP-1に強く結合しているファージのみが残る。結合したファージは、例えばpHの変化によって、または大腸菌と共に溶出することによって溶出して、大腸菌宿主の感染によって増幅することができる。この選別プロセスは、TIMP-1に強く結合する抗体集団を濃縮するために1回または2回繰り返すことができる。濃縮したプールからのFabをELISAアッセイにおいて発現、精製、およびスクリーニングする。次に、同定されたヒットをBickettら、1993、およびBoddenら、1994に記載される酵素アッセイにおいてスクリーニングする。ペプチドの分解に至るそれらのFabは、TIMP-1に結合して、それによっておそらくMMP-1とのその相互作用を遮断するFabである。
【0051】
HuCAL(登録商標)Fab 1ライブラリの初回選別も同様に、ラウンド1において抗原としてのTIMP-1について行うことができ、ラウンド2ではBSAまたはトランスフェリンのような担体蛋白質に融合したTIMP-1ペプチドについて行い、そしてラウンド3ではTIMP-1について再度行うことができる。選別のために用いることができるヒトTIMP-1ペプチドには、ヒトTIMP-1残基2〜12位
28〜36位
64〜75位
64〜79位
および145〜157位
が含まれる。これらのペプチド配列は、MMPと相互作用すると予想されるヒトTIMP-1の領域から選択される。Gomis-Ruthら、Nature 389、77〜81、1997を参照のこと。ラウンド2においてヒトTIMP-1のMMP-相互作用領域にFabを向ければ、ヒトTIMP-1のヒトMMP-1活性阻害能を遮断することができるFabを同定する可能性が増加するはずである。
【0052】
中和Fabを単離する可能性を改善するために用いることができるもう一つの方法は、ヒトTIMP-1について選別して、ヒトMMP-1によって結合したFabを溶出することである。この戦略によって、そうでなければ得られないであろうより高い親和性の抗体が得られるはずである。
【0053】
スクリーニングプロセスの詳細を、下記の特定の実施例に記述する。非常に活性な特異的抗体または抗体断片に関する他の選択法は、当業者によって想起され、ヒトTIMP-1抗体を同定するために用いることができる。
【0054】
上記の特徴を有するヒト抗体も同様に、抗体をコードする発現構築物をトランスフェクトした宿主細胞を含む、抗体を発現する如何なる細胞からも精製することができる。宿主細胞は、それによってヒト抗体が発現される条件で培養される。精製ヒト抗体は、当技術分野で周知の方法を用いて、特定の蛋白質、糖質、または脂質のような、細胞において抗体と通常会合する他の成分から分離されている。そのような方法には、サイズ排除クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム分画、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、および調整的ゲル電気泳動が含まれるがこれらに限定されない。精製ヒト抗体の調製物は少なくとも80%純粋であり、好ましくは調製物は90%、95%、または99%純粋である。調製物の純度は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動のような当技術分野で既知の如何なる手段によっても評価することができる。本発明の精製ヒト抗体の調製物は、上記のTIMP-1結合および中和特徴を有するヒト抗体の一つ以上のタイプを含むことができる。
【0055】
または、ヒト抗体は、固相技術を用いた直接ペプチド合成によるような、そのアミノ酸配列を合成する化学法を用いて作製することができる(Merrifield、J. Am. Chem. Soc. 85、2149〜54、1963;Robergeら、Science 269:202〜04、1995)。蛋白質合成は、手動の技術を用いて、または自動によって行うことができる。自動合成は、例えば、アプライドバイオシステムズ431Aペプチドシンセサイザー(パーキンエルマー社)を用いて行うことができる。選択的に、ヒト抗体の断片は、化学法を用いて個々に合成して組み合わせ、完全長の分子を作製することができる。
【0056】
新たに合成された分子は、高速液体クロマトグラフィーによって実質的に精製することができる(例えば、Creighton、「PROTEINS:STRUCTURES AND MOLECULAR PRINCIPLES」、WH Freeman and Co.、ニューヨーク、ニューヨーク州、1983)。合成ポリペプチドの組成は、アミノ酸分析またはシークエンシングによって確認することができる(例えば、エドマン分解を用いて)。
【0057】
ヒト抗体の治療的有用性の評価
特定の抗体が、例えば肝線維症を治療するために治療的に有用となりうるか否かを評価するために、抗体をラット肝線維症モデルにおいてインビボで試験することができる。このように、本発明の好ましいヒト抗体は、ヒトとラット双方のTIMP-1活性を遮断することができる。望ましければ、ヒトFab TIMP-1抗体は、治療評価を行う前に、完全な免疫グロブリン、例えばIgG1抗体に変換することができる。この変換は、下記の実施例5に記述する。
【0058】
ヒトおよびラットTIMP-1と交叉反応する抗体を同定するために、ラットTIMP1を用いてELISAを行うことができる。機能的交叉反応性は、Bickettら、Anal. Biochem. 212:58〜64、1993に記述されるように酵素アッセイにおいて確認することができる。アッセイは、ヒトもしくはラットTIMP-1、ヒトMMP-1、またはラットMMP-13(ヒトMMP-1のラット相対物)、および合成蛍光原ペプチド基質を利用する。非複合体形成MMP-1(またはMMP-13)の酵素活性は、蛍光シグナルの増加を観察することによって評価する。
【0059】
ヒトおよび/またはラットTIMP-1活性を遮断する抗体は、HepG2細胞培養においてTIMP-1/MMP-1複合体形成の減少を検出するELISAアッセイにおいてスクリーニングすることができる。この基準を満たす抗体を、治療的有効性を評価して、この有効性をインビトロで抗体がMMP-1のTIMP-1阻害を遮断できることと相関させるために、ラット肝線維症モデルにおいて調べることができる。
【0060】
次に、ラット肝線維症モデルにおいて治療有効性を示す抗体をインビトロ酵素アッセイにおいてTIMP-2、-3、および-4の結合および遮断に関して調べることができる。肝線維症または他のTIMP-関連病態における有効性にとって必要なTIMPの最小数を遮断することは、起こりうる副作用を最小限にするために好ましい。
【0061】
ヒトTIMP-1抗体をコードするポリヌクレオチド
本発明はまた、ヒトTIMP-1抗体をコードするポリヌクレオチドを提供する。これらのポリヌクレオチドは、例えば、治療または診断的用途のために抗体の量を産生するために用いることができる。
【0062】
配列番号:1〜43に示すVHCDR3領域をコードするために用いることができるポリヌクレオチドをそれぞれ、配列番号:226〜268に示す。配列番号:44〜86に示すVLCDR3領域をコードするために用いることができるポリヌクレオチドをそれぞれ、配列番号:183〜225に示す。MorphoSys HuCAL(登録商標)ライブラリから単離された本発明のヒト抗体の重鎖(配列番号:140〜182)および軽鎖(配列番号:97〜139)をコードするポリヌクレオチドをそれぞれ、配列番号:269〜311および配列番号:312〜354に示す。
【0063】
宿主細胞に存在する本発明のポリヌクレオチドは、膜成分、蛋白質、および脂質のような他の細胞成分を含まずに単離することができる。ポリヌクレオチドは、細胞によって産生されてもよく、標準的な核酸精製技術を用いて単離してもよく、またはポリメラーゼ連鎖反応のような増幅技術または自動シンセサイザーを用いて合成してもよい。ポリヌクレオチドを単離する方法は一般的で当技術分野で既知である。ポリヌクレオチドを得るための如何なるそのような技術も用いて、本発明の抗体をコードする単離されたポリヌクレオチドを得ることができる。例えば、制限酵素およびプローブを用いて抗体をコードするポリヌクレオチドを単離することができる。単離されたポリヌクレオチドは、他の分子を少なくとも70、80、または90%含まない調製物に存在する。
【0064】
ヒト抗体をコードする本発明のDNA分子は、鋳型としてmRNAを用いる標準的な分子生物学技術を用いて作製することができる。その後、DNA分子は、当技術分野で既知の、そしてSambrookら(1989)のようなマニュアルに開示される分子生物学技術を用いて複製することができる。PCRのような増幅技術を用いて、ポリヌクレオチドのさらなるコピーを得ることができる。
【0065】
または、合成化学技術を用いて、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドを合成することができる。遺伝子コードの縮重により、例えば、配列番号:1〜43、44〜86、97〜139、または140〜182にそれぞれ示されるVHCDR3、VLCDR3、軽鎖または重鎖アミノ酸配列の一つを有する抗体をコードするもう一つのヌクレオチド配列を合成することができる。
【0066】
ポリヌクレオチドの発現
本発明のヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを発現させるために、ポリヌクレオチドを、挿入されたコード配列の転写および翻訳のために必要な要素を含む発現ベクターに挿入することができる。当業者に周知の方法を用いて、ヒト抗体をコードする配列、ならびに適当な転写および翻訳制御要素を含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、インビトロ組み換え型DNA技術、合成技術、およびインビボ遺伝子組み換えが含まれる。そのような技術は、例えば、Sambrookら(1989)、およびAusubelら「CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY」、ジョンウィリー&サンズ、ニューヨーク、ニューヨーク州、1995に記載されている。同様に下記の実施例1〜3を参照のこと。
【0067】
多様な発現ベクター/宿主系を利用して、本発明のヒト抗体をコードする配列を含み発現させることができる。これらには、組み換え型バクテリオファージ、プラスミド、またはコスミドDNA発現ベクターによって形質転換した細菌のような微生物;酵母発現ベクターによって形質転換した酵母;ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)もしくは細菌発現ベクター(例えば、TiもしくはpBR322プラスミド)によって形質転換した植物細胞系、または動物細胞系が含まれるがこれらに限定されない。
【0068】
制御要素または調節配列は、宿主細胞蛋白質と相互作用して転写および翻訳を行うベクターの非翻訳領域、すなわちエンハンサー、プロモーター、5'および3'非翻訳領域である。そのような要素は、その効力および特異性が変化しうる。用いるベクター系および宿主に応じて、構成的および誘導型プロモーターを含む如何なる数の適した転写および翻訳要素も用いることができる。例えば、細菌系においてクローニングする場合、BLUESCRIPTファージミド(ストラタジーン社、ラホヤ、カリフォルニア州)またはpSPORT1プラスミド(ライフテクノロジーズ社)のハイブリッドlacZプロモーター等のような誘導型プロモーターを用いることができる。バキュロウイルスポリヘドリンプロモーターは、昆虫細胞において用いることができる。植物細胞のゲノム(例えば、熱ショック、RUBISCO、および貯蔵蛋白質遺伝子)、または植物ウイルス(例えば、ウイルスプロモーターまたはリーダー配列)に由来するプロモーターまたはエンハンサーを、ベクターにクローニングすることができる。哺乳類細胞系において、哺乳類遺伝子または哺乳類ウイルスからのプロモーターが好ましい。ヒト抗体をコードするヌクレオチド配列の多数のコピーを含む細胞株を作製する必要がある場合、SV40またはEBVに基づくベクターを適当な選択マーカーと共に用いることができる。
【0069】
ヒトTIMP-1抗体の大規模産生は、Wurmら、Ann. N.Y. Acad. Sci. 782:70〜78、1996およびKimら、Biotechnol. Bioengineer. 58:73〜84、1998に記載される方法のような方法を用いて行うことができる。
【0070】
薬学的組成物
上記の如何なるヒトTIMP-1抗体も、薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物において提供することができる。薬学的に許容される担体は好ましくは、非発熱性である。組成物は、単独で、または安定化化合物のような少なくとも一つの他の物質と併用して投与することができ、これらは、生理食塩液、緩衝生理食塩液、デキストロース、および水を含むがこれらに限定されない如何なる滅菌の生体適合性の薬学的担体において投与することができる。多様な水溶性担体、例えば0.4%生理食塩液、0.3%グリシン等を用いてもよい。これらの溶液は無菌であり、一般的に微粒子状物質を含まない。これらの溶液は、通常の周知の滅菌技術(例えば、濾過)によって滅菌してもよい。組成物は、pH調節剤および緩衝剤等のような生理的条件を近似するために必要であれば、薬学的に許容される補助物質を含んでもよい。そのような薬学的製剤における本発明の抗体の濃度は、広く、すなわち重量の約0.5%未満、通常約1%または少なくとも約1%から15もしくは20%まで変化させることができ、選択される特定の投与様式に従って、液体の容積、粘度等に主に基づいて選択されるであろう。米国特許第5,851,525号を参照のこと。望ましければ、ヒト抗体、例えば、TIMP-1結合のKdが異なる、またはMMP阻害活性中和のIC50が異なるヒト抗体の一つ以上のタイプを薬学的組成物に含めることができる。
【0071】
組成物は、患者に単独で、または他の物質、薬剤、もしくはホルモンと併用して投与することができる。活性成分の他に、これらの薬学的組成物は、薬学的に用いることができる調製物への活性化合物の処理を容易にする賦形剤および補助剤を含む適した薬学的に許容される担体を含みうる。本発明の薬学的組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、脳室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、非経口、局所、舌下、または直腸内手段を含むがこれらに限定されない多数の経路によって投与することができる。
【0072】
薬学的組成物を調製した後、それらを適当な容器に入れて表記の病態の治療に関するラベルを貼ることができる。そのようなラベルには投与の量、回数、および方法が含まれるであろう。
【0073】
ヒトTIMP-1のMMP-阻害活性を減少させる方法
本発明は、ヒトまたはラットTIMP-1のMMP阻害活性を減少させる方法を提供する。そのような方法は、下記のように、または研究の状況において治療的に用いることができる。このように、方法は、無細胞系、細胞培養系、またはインビボで行うことができる。ヒトまたはラットのTIMP-1のMMP阻害活性を減少させるインビボ法を以下に記述する。
【0074】
ヒトTIMP-1を、ヒトTIMP-1に結合するヒト抗体に接触させて、それによって抗体の非存在下でのヒトTIMP-1活性と比較してヒトTIMP-1のMMP阻害活性を減少させる。抗体は、無細胞系、細胞培養系、または動物被験者もしくは患者に直接加えることができ、または抗体をコードする発現ベクターによって提供されうる。
【0075】
診断法
本発明はまた、ヒトまたはラットTIMP-1を、血清、肺、肝臓、心臓、腎臓、結腸、細胞培養系、または無細胞系(例えば、組織ホモジネート)の試料を含むがこれらに限定されない試験調製物において検出することができる診断法を提供する。そのような診断法は、例えばTIMP-1が上昇している障害を診断するために用いることができる。そのような障害には、肝線維症、アルコール性肝疾患、心線維症、急性心症候群、ループス腎炎、糸球体硬化性腎疾患、良性前立腺過形成、肺癌、結腸癌、および特発性肺線維症が含まれるがこれらに限定されない。診断のために用いる場合、患者からの試験試料中に検出される抗体-TIMP-1複合体の量が正常試料における複合体の量より多ければ、患者が障害を有する可能性があることが同定される。
【0076】
試験調製物を本発明のヒト抗体に接触させて、次に、試験調製物を抗体-TIMP-1複合体の存在に関してアッセイする。望ましければ、ヒト抗体は、蛍光、放射性同位元素、化学発光、またはホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、もしくはルシフェラーゼのような酵素標識のような検出可能な標識を含みうる。
【0077】
選択的に、抗体は、アッセイの自動化に適応させることができる固相支持体に結合させることができる。適した固相支持体には、ガラスまたはプラスチックのスライド、組織培養プレート、マイクロタイターウェル、チューブ、シリコンチップ、またはビーズのような粒子(ラテックス、ポリスチレン、もしくはガラスビーズを含むがこれらに限定されない)が含まれるがこれらに限定されない。共有結合および非共有結合、受動的吸収、または抗体と固相支持体とに結合させた結合部分対を用いることを含む当技術分野で既知の如何なる方法も用いて、固相支持体に抗体を結合させることができる。TIMP-1と抗体との結合は、反応物質を含むために適した如何なる容器において行うこともできる。そのような容器の例には、マイクロタイタープレート、試験管、および微量遠心管が含まれる。
【0078】
治療方法
本発明はまた、TIMP-1が上昇している障害の症状を改善する方法を提供する。これらの障害には、肝線維症、アルコール性肝疾患、心線維症、急性冠血管症候群、ループス腎炎、糸球体硬化性腎疾患、特発性肺線維症、良性前立腺過形成、肺癌、結腸癌および瘢痕化が含まれるがこれらに限定されない。例えば、Inokuboら、Am. Heart J. 141:211〜17、2001;Ylisirnioら、Anticancer Res. 20:1311〜16、2000;Holten-Andersenら、Clin. Cancer Res. 6:4292〜99、2000;Holten-Andersenら、Br. J. Cancer 80:495〜503、1999;Petersonら、Cardiovascular Res. 46:307〜15、2000;Arthurら、Alcoholism:Clinical and Experimental Res. 23:840〜43、1999;Iredaleら、Hepatol. 24:176〜84、1996を参照のこと。
【0079】
本発明のヒト抗体は、肝線維症を治療するために特に有用である。慢性肝疾患は全て、肝臓において線維症の発症を引き起こす。線維症は、プログラムされた均一な創傷治癒反応である。外来蛋白質によって引き起こされた毒性の障害または損傷は、コラーゲン、フィブロネクチン、およびラミニンのような細胞外マトリクスの沈着を引き起こす。肝線維症および肝硬変は、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、嚢胞性線維症、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、および非アルコール性脂肪性肝炎と共に化学的損傷のような肝臓の慢性変性疾患によって引き起こされうる。
【0080】
細胞外マトリクス(特にコラーゲン)の分解および合成の変化は、肝線維症の発病において中心的な役割を有する。初期相において、肝星細胞(HSC)が最初に活性化されて、正常な肝マトリクスの分解能を有するマトリクスメタロプロテアーゼを放出する。HSCが十分に活性化されると、組織メタロプロテアーゼ阻害剤(TIMP)-1および-2の合成の増加および細胞外放出によって媒介されるマトリクス分解の真のダウンレギュレーションが起こる。肝線維症のあいだのメタロプロテアーゼ活性を動的に調節することによって、それらおよびその阻害剤が治療介入の標的となる。
【0081】
本発明のヒト抗体はまた、肺線維症を治療するために特に有用である。肺気道線維症は、慢性喘息患者における気道リモデリングの重要な特徴であるため、本発明のヒト抗体も同様に、慢性喘息患者にとって特に有用である。気道リモデリングは、慢性喘息患者において十分に認識された特徴である。TIMP-1レベルはグルココルチコイド処置被験者または対照者(p<0.0001)と比較して無処置の喘息被験者において有意に高く、MMP-1、MMP-2、MMP-3、およびMMP-9を合わせたよりかなり高かったが、TIMP-2レベルはそうではなかった(Mautinoら、Am. J. Respir. Crit. Care Med. 1999、160:324〜330)。TIMP-1 mRNAおよび蛋白質発現は、ブレオマイシン誘導肺線維症のマウスモデルにおいて選択的および顕著に増加する(Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 24:599〜607、2001)。喘息患者においてMMPが増加することなくTIMP-1がこのように特異的に上昇することは、抗体によってTIMP-1を阻害すれば、肺における正常なコラーゲン分解を回復しうることを示唆している。
【0082】
本発明のヒト抗体は、癌を治療するために特に有用である。TIMP-1蛋白質は、結腸(Holten-Andersenら、Br. J. Cancer 1999、80:495〜503)および前立腺(Jungら、Int. J. Cancer、1997、74:220〜223)癌患者の血漿において上昇することが判明し、高いTIMP-1血漿レベルは、結腸癌の不良な臨床転帰と相関する(Holten-Andersenら、Clin. Cancer Res. 2000、6:4292〜4299)。TIMP-1は、乳腺腫瘍形成クローン細胞株の用量依存的な増殖およびチロシン燐酸化を誘導する(Luparelloら、Breast Cancer Res. Treat、1999、54:235〜244)。したがって、TIMP-1に対する抗体を用いると、その癌の誘導能を遮断する可能性がある。
【0083】
ヒトTIMP-1抗体は、術後(特に眼科手術)または損傷(火傷、擦過傷、挫傷、切り傷、または裂傷)後の瘢痕形成のような瘢痕形成を予防または減少させるために用いることができる。
【0084】
本発明の一つの態様において、本発明のヒト抗体の治療的有効量を、上記の障害のようなTIMP-1が上昇している障害を有する患者に投与する。細胞外マトリクスの沈着と共に組織または臓器機能の喪失を含む障害の症状は、それによって改善される。
【0085】
治療的有効量の決定
治療的有効量の決定は、十分に当業者の能力範囲内である。治療的有効量は、治療的有効量の非存在下で起こる活性と比較してTIMP-1のMMP-阻害活性を減少させるヒト抗体の量を意味する。
【0086】
治療的有効量は、細胞培養アッセイまたは動物モデル、通常、ラット、マウス、ウサギ、イヌ、またはブタのいずれかにおいて最初に推定することができる。動物モデルはまた、適当な濃度範囲および投与経路を決定するために用いることができる。次に、そのような情報を用いて、ヒトにおける有用な用量および投与経路を決定することができる。ラット肝線維症モデルを実施例6に記載する。
【0087】
治療的有効性および毒性、例えば、ヒト抗体のED50(集団の50%において治療的に有効な用量)およびLD50(集団の50%に対して致死的である用量)を、細胞培養または実験動物において標準的な薬学的技法によって決定することができる。毒性対治療効果の用量比が治療指数であり、比LD50/ED50として表記することができる。
【0088】
大きい治療指数を示す薬学的組成物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータは、ヒトで用いるための用量範囲を処方するために用いられる。そのような組成物に含まれる用量は、好ましくは毒性をほとんどまたは全く示さないED50を含む循環濃度の範囲内である。用量は、用いる投与剤形、患者の感受性、および投与経路に応じてこの範囲内で変化する。
【0089】
正確な用量は、治療を必要とする患者に関連する要因に照らして医師が決定するであろう。用量および投与は、ヒト抗体の有意なレベルを提供するために、または所望の作用を維持するために調節される。考慮に入れることができる要因には、疾患状態の重症度、被験者の全身健康、被験者の年齢、体重、および性別、食事、投与時期および回数、薬物併用、反応感受性、治療に対する認容性/反応が含まれる。長時間作用型の薬学的組成物は、特定の製剤の半減期およびクリアランス速度に応じて3〜4日毎、1週間毎、または2週間に1回投与することができる。
【0090】
本発明のヒト抗体をコードするポリヌクレオチドは、トランスフェリン-ポリ陽イオン媒介DNA移入、裸または封入された核酸によるトランスフェクション、リポソーム媒介細胞融合、DNAコーティングラテックスビーズの細胞内輸送、プロトプラスト融合、ウイルス感染、電気穿孔、「遺伝子ガン」およびDEAEまたは燐酸カルシウム媒介トランスフェクションを含むがこれらに限定されないエクスビボまたはインビボのいずれかで構築して細胞に導入することができる。
【0091】
抗体の有効なインビボ用量は、患者の体重の約5 mg〜約50 mg/kg、約50 mg〜約5 mg/kg、約100 mg〜約500 mg/kg、および患者の体重の約200〜約250 mg/kgの範囲である。抗体をコードするポリヌクレオチドを投与するための有効なインビボ用量は、約100 ng〜約200 ng、500 ng〜約50 mg、約1 mg〜約2 mg、約5 mg〜約500 mg、および約20 mg〜約100 mg DNAの範囲である。
【0092】
本発明のヒト抗体含有薬学的組成物の投与様式は、宿主に抗体を輸送する如何なる適した経路でもありうる。本発明の薬学的組成物は、非経口投与、すなわち皮下、筋肉内、静脈内、または鼻腔内投与のために特に有用である。
【0093】
本開示において引用した全ての特許、特許出願、および参考文献は、特別に参照として本明細書に組み入れられる。上記の開示は本発明を一般的に説明している。より完全な理解は、説明する目的に限って提供され、本発明の範囲を制限するとは解釈されない以下の特定の実施例を参照することによって得ることができる。
【0094】
実施例1
ヒト複合抗体ライブラリ(HuCAL(登録商標)Fab 1)の構築
HuCAL(登録商標)Fab 1のクローニング。HuCAL(登録商標)Fab 1は、Fab抗体断片フォーマットでの完全な合成モジュール性ヒト抗体ライブラリである。HuCAL(登録商標)Fab 1は、一本鎖フォーマットでの抗体ライブラリから開始して構築した(HuCAL(登録商標)-scFv;Knappikら、J. Mol. Biol. 296:55、2000)。HuCAL(登録商標)Fab 1を、ファージミド発現ベクターpMORPH(登録商標)18 Fab 1(図3)にクローニングした。このベクターは、C-末端で、糸状ファージの切断された遺伝子III蛋白質に融合したphoAシグナル配列を有するFd断片を含み、さらに、ompAシグナル配列を有する軽鎖VL-CLを含む。双方の鎖は、lacオペロンの制御下である。定常ドメインC?、C?、およびCHは、HuCAL(登録商標)のモジュール系と完全に適合性の合成遺伝子である(Knappikら、2000)。
【0095】
第一に、V?およびV?ライブラリをHuCAL(登録商標)-scFvから単離した。プライマー
および
を用いて、V?l断片をPCRサイクル(Pwoポリメラーゼ)15回によって増幅した。PCR産物はEcoRV/DraIIIによって消化してゲル精製した。VL?鎖は、EcoRV/BsiWIによる制限消化物から得て、ゲル精製した。これらのV?およびV?ライブラリをそれぞれ、EcoRV/DraIIIおよびEcoRV/BsiWIによって切断したpMORPH(登録商標)18 Fab1にクローニングした。ライゲーションして大腸菌TG-1において形質転換した後、ライブラリサイズ4.14×108および1.6×108個を得たが、これはいずれもHuCAL(登録商標)-scFvのV?多様性を超えた。
【0096】
同様に、VHライブラリは、StyI/MunIを用いて制限消化によってHuCAL(登録商標)-scFvから単離した。このVHライブラリを、StyI/MunIによって切断したpMORPH(登録商標)18-V?およびV?ライブラリにクローニングした。ライゲーションして大腸菌TG-1において形質転換した後、全体的なライブラリサイズ2.09×1010個を得て、67%が正確なクローンであった(クローン207個のシークエンシングによって同定)。
【0097】
ファージミドの救出、ファージの増幅および精製。 HuCAL(登録商標)Fabを、34μg/mlクロラムフェニコールおよび1%グルコースを含む2×TY培地(2×TY-CG)において増幅させた。ヘルパーファージ(VCSM13)を37℃、OD600約0.5で感染させた後、2×TY/34μg/mlクロラムフェニコール/50μg/mlカナマイシンにおいて遠心および再懸濁した後、細胞を30℃で一晩増殖させた。ファージを上清からPEG沈殿させた後(Ausubelら、1998)、PBS/20%グリセロールに再浮遊させて、−80℃で保存した。2回の選別ラウンドのあいだのファージ増殖は以下のように行った:溶出したファージを対数中期TG1細胞に感染させて、1%グルコースおよび34μg/mlクロラムフェニコールを添加したLB-寒天に播種した。30℃で一晩インキュベートした後、コロニーを掻き取ってOD600 0.5に調節した。ヘルパーファージを上記のように添加した。
【0098】
実施例2
固相選別
MaxiSorp(商標)マイクロタイタープレート(ヌンク社)のウェルを、PBSに溶解して50μg/mlに希釈した(2μg/ウェル)ラットまたはヒトTIMP蛋白質によってコーティングした。5%脱脂粉乳のPBS溶液によってブロッキングした後、上記のように精製したHuCAL(登録商標)Fabファージ1〜5×1012個を20℃で1時間加えた。数回の洗浄段階の後、結合したファージを100 mMトリエチルアミンによるpH溶出によって放出した後、1 Mトリス塩素、pH 7.0によって中和した。Krebsら、J. Immunol. Meth. 254:67、2001を参照のこと。2〜3ラウンドの選別を行い、上記のように各ラウンドのあいだにファージの増殖を行った。
【0099】
実施例3
溶液の選別
ビオチン結合抗原をPBS中40 nMとなるように希釈して、HuCAL(登録商標)-Fab 1ファージ1013個を加えて、20℃で1時間インキュベートした。ファージ抗原複合体をニュートラビジンプレート(ピアス社)上で捕獲した。数回洗浄後、結合したファージを異なる方法によって溶出した(Krebsら、2001)。通常どおり選別2ラウンドを行った。
【0100】
実施例4
選択したFab断片の発現のためのサブクローニング
選択したHuCAL(登録商標)Fab 1断片のFabコードインサートを、可溶性Fabの迅速な発現を促進するために、発現ベクターpMORPH(登録商標)×7_FS(Knappikら、J. Mol. Biol. 296:55、2000)にサブクローニングした。選択したHuCAL(登録商標)Fab 1クローンのDNA調製物をXbaI/EcoRIによって消化した後、Fabコードインサート(ompA-VLおよphoA-Fd)を切り出した。精製したインサートを、scFv-インサートを既に有するXbaI/EcoRI切断ベクターpMORPH(登録商標)×7にサブクローニングすると、pMORPH(登録商標)×9_Fab1_FS(図4)と命名されるFab発現ベクターが作製される。このベクターにおいて発現されたFabは、検出および精製のために二つのC-末端タグ(FLAG(商標)およびStrep-tagII)を有する。
【0101】
実施例5
TIMP結合Fab断片のELISAによる同定
384ウェルMaxiSorp ELISAプレートのウェルを、コーティング緩衝液によって濃度5μg/mlに希釈したラットTIMPまたはヒトTIMPの20μl/ウェル溶液によってコーティングした。発現ベクターpMORPH(登録商標)×9_FSからの大腸菌TG-1における個々のFabの発現は、0.5 mM IPTGによって30℃で12時間誘導した。可溶性Fabは、浸透圧ショックによって(Ausubelら、1998)ペリプラスムから抽出して、ELISAに用いた。Fab断片は、アルカリホスファターゼ結合抗Fab抗体(ディアノバ(Dianova)社)と共にインキュベートした後、Attophos基質(ロシュ社)によって発色させ、Ex450 nm/Em 535 nmで測定することによって検出した。ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG抗体およびPOD可溶性基質(ロシュディアグノスティックス社)を添加した後370 nmでの値を読み取った。
【0102】
大腸菌におけるHuCAL(登録商標)Fab 1抗体の発現および精製
pMORPH(登録商標)×9_FSによってコードされるFab断片のTG-1細胞における発現は、34μg/mlクロラムフェニコールを添加した2×TY培地1 Lと共に振とうフラスコ培養において行った。0.5 mM IPTGによって誘導した後、細胞を22℃で16時間増殖させた。細胞沈降物のペリプラスム抽出物を調製して、Fab断片をStrep-tactin(登録商標)クロマトグラフィー(IBA社、ゲッティンゲン、ドイツ)によって単離した。見かけの分子量は、較正標準物質を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定した。濃度は、UV分光光度法によって決定した。
【0103】
実施例7
HuCAL(登録商標)免疫グロブリン発現ベクターの構築
重鎖のクローニング。pcDNA3.1+(インビトロジェン社)の多重クローニング部位を除去して(NheI/ApaI)、HuCAL(登録商標)デザインのために用いた制限部位と適合性のスタッファーを、リーダー配列(NheI/EcoRI)、VH-ドメイン(EcoRI/BlpI)、および免疫グロブリン定常領域(BlpI/ApaI)をライゲーションするために挿入した。リーダー配列(EMBL M83133)に、コザック配列(Kozak、1987)を加えた。ヒトIgG1(PIR J00228)、IgG4(EMBL K01316)、および血清IgA1(EMBL J00220)の定常領域を長さ約70塩基の重なり合うオリゴヌクレオチドに分解した。サイレント突然変異を導入して、HuCAL(登録商標)デザインと適合しない制限部位を除去した。オリゴヌクレオチドは、オーバーラップ伸長-PCRによってスプライシングした。
【0104】
軽鎖のクローニング。pcDNA3.1/Zeo+(インビトロジェン社)の多重クローニング部位を二つの異なるスタッファーに置換した。?スタッファーは、?-リーダー(NheI/EcoRV)、HuCAL(登録商標)-scV V?ドメイン(EcoRV/BsiWI)および?-鎖定常領域(BsiWI/ApaI)を挿入するための制限部位を提供した。?スタッファーにおける対応する制限部位は、NheI/EcoRV(?-リーダー)、EcoRV/HpaI(V?-ドメイン)、およびHpaI/ApaI(?鎖定常領域)であった。?-リーダー(EMBL Z00022)と共に?-リーダー(EMBL L27692)はいずれもコザック配列を有した。ヒト?-(EMBL J00241)および?-鎖(EMBL M18645)の定常領域は、上記のように、オーバーラップ伸長-PCRによって構築した。
【0105】
IgG発現CHO細胞の作製。CHO-K1細胞にIgG重鎖および軽鎖発現ベクターの等モル混合物を同時トランスフェクトさせた。600μg/ml G418および300μg/mlゼオシン(インビトロジェン社)によって二重抵抗トランスフェクタントを選択した後、限界希釈を行った。捕獲-ELISA(下記を参照のこと)によって、単一のコロニーの上清をIgG発現に関して評価した。陽性クローンを、10%ウルトラフローIgG-FCS(ライフテクノロジーズ社)を添加したRPMI-1640培地中で増殖させた。上清のpHを8.0 に調節して、濾過滅菌した後、溶液に標準的なプロテインAカラムクロマトグラフィー(Poros 20A、PEバイオシステムズ社)を行った。
【0106】
実施例8
CDR3ライブラリのデザイン
V?の1位と2位。その真正のN-末端を有する当初のHuCAL(登録商標)マスター遺伝子を構築した:V?11:QS(CAGAGC)、V?12:QS(CAGAGC)、およびV?13:SY(AGCTAT)。これらのアミノ酸を含む配列は国際公開公報第97/08320号に示される。HuCAL(登録商標)ライブラリ構築の際、ライブラリのクローニング(EcoRI部位)を容易にするために、最初の2つのアミノ酸をDIに置換する。HuCAL(登録商標)ライブラリは全て、その5'末端にEcoRV部位GATATC(DI)を有するV?1遺伝子を含む。HuCAL(登録商標)カッパ遺伝子(マスター遺伝子およびライブラリにおける全ての遺伝子)は全てその5'末端にDIを含む。
【0107】
VHの1位。その真正のN-末端を有する当初のHuCAL(登録商標)マスター遺伝子を構築した:第一のアミノ酸としてQ(=CAG)を有するVH1A、VH1B、VH2、VH4、およびVH6、ならびに第一のアミノ酸としてE(=GAA)を有するVH3およびVH5。これらのアミノ酸を含む配列は国際公開公報第97/08320号に示されている。HuCAL(登録商標)Fab 1ライブラリにおいて、VH鎖は全て第一位にQ(=CAG)を含む。
【0108】
V?1/V?3の85位。CDR3ライブラリを導入するために用いられるカセット変異誘発技法のために(Knappikら、J. Mol. Biol. 296、57〜86、2000)、V?1およびV?3の85位はTまたはVのいずれかとなりうる。このように、HuCAL(登録商標)scFv 1ライブラリ構築の際に、V?1およびV?3の85位は以下のように変化した:V?1オリジナル、85T(コドンACC);V?1ライブラリ、85Tまたは85V(TRIMコドンACTまたはGTT);V?3オリジナル、85V(コドンGTG);V?3ライブラリ、85Tまたは85V(TRIMコドンACTまたはGTT);同じことがHuCAL(登録商標)Fab 1にも当てはまる。
【0109】
CDR3のデザイン。一定のままであるCDR3残基を全て図1に示す。
【0110】
CDR3の長さ。デザインしたCDR3の長さの分布は以下の通りである。変化した残基を図1においてブラケット(×)で示す。VカッパCDR3、アミノ酸残基8個(89位〜96位)(時に残基7個)、Q90は固定;VラムダCDR3、アミノ酸残基8〜10個(89〜96位)(時に残基7〜10個)、Q89、S90、およびD92は固定;ならびにVH CDR3、アミノ酸残基5〜28個(95〜102位)(時に4〜28位)、D101は固定。
【0111】
実施例9
慢性的な四塩化炭素誘発肝線維症
Sprague Dawley系ラット(200〜220 g)を肝線維症のインビボモデルにおいて用いる。四塩化炭素代謝のミクロソーム代謝を最大に誘導するために、四塩化炭素を投与する1週間前から始めて、動物に飲料水によって1 g/Lイソニアジドを投与する。四塩化炭素(鉱油中に1:1)を0.2 ml/100 g体重の用量で5日毎に経口投与する。ヒトTIMP-1抗体を、四塩化炭素処置期間のあいだ1回または繰り返し静脈内投与する。処置5〜7週間後に剖検を行う。McLeanら、Br. J. Exp. Pathol. 50:502〜06、1969。
【0112】
肝組織の横断面円柱を右肝葉から切除して、ホルムアルデヒド中で固定し、パラフィンに包埋する。肝臓における線維症の量は、ピクロシリウス赤染色線維症領域によって示される。ピクロシリウス陽性領域は各切片においていくつかの中心葉領域に示される。色の検出パラメータを標準化して、実験を通して一定に維持する。領域は、31 mm2の領域がその範囲に入る標準グリッドを用いて選択する。ライカQuantimed 500 MCシステムを形態測定のために用いる。
【0113】
実施例10
ヒドロキシプロリン測定
ProckopおよびUdenfried(Anal. Biochem. 1:228〜39、1960)の方法に以下の改変を加えて用い、肝組織におけるヒドロキシプロリンの量を測定することができる。湿重量60〜90 mgの肝標本を乾燥させて、6 N HCl中で100℃で17時間加水分解する。加水分解した材料を乾燥させて脱イオン水5 mlに溶解する。この加水分解物200μlをエタノール200 mlおよびクロラミンT溶液200 ml(0.7%クエン酸緩衝液[5.7 g酢酸ナトリウム、3.75 gクエン酸三ナトリウム、0.55 gクエン酸、38.5 mlエタノールを水で100 mlにする])と共に混合して、室温で20分間酸化させる。エールリッヒ試薬(エタノール40 mlおよびH2SO4 2.7 ml中にp-ジメチルアミノベンズアルデヒド12 g)400μlを加える。35℃で3時間インキュベートした後、573 nmでの吸光度を測定する。
【0114】
実施例11
表面プラズモン共鳴測定(BIAcore(商標))による親和性の測定
親和性を測定するために、アフィニティおよびSEC精製Fab断片の単量体分画または精製IgG1分子を用いた。実験は全て、BIAcore(商標)機器において25℃で流速20μl/分でHBS緩衝液において実施した。pH 5.0の100 mM酢酸ナトリウム中の抗原を、標準的なEDC-NHSカップリング化学を用いてCM 5センサーチップにカップリングさせた、5μg/ml TIMP-1 3〜4μlを適用すると、典型的に速度論測定に関して500共鳴単位が得られた。BIA評価ソフトウェアを用いて全てのセンソグラムを球状に適合させた。一価のFab断片に関しては一価の適合(ラングミュア結合)、そしてIgGに関して二価の適合を適用した。
【0115】
実施例12
ヒトTIMP-1/ヒトMMP-1およびラットTIMP-1/ラットMMP-13アッセイにおけるIC50の測定
精製Fab断片またはIgGをIC50測定のために用いた。抗体を、0.05%BSAを含むアッセイ緩衝液によって1試料あたり3本ずつ表記の濃度に希釈した。TIMP(改変ヒトTIMP-1/ヒトMMP-1アッセイにおいて最終濃度、1.2 nMまたは0.4 nM)、MMP(改変ヒトTIMP-1/ヒトMMP-1アッセイにおいて最終濃度、1.2 nMまたは0.4 nM)、およびペプチド基質(最終濃度50μM)を添加して、37℃で1〜3時間インキュベートした後、Ex320 nm/Em430 nmでの蛍光を測定した。
【0116】
以下の対照をアッセイに含めて、IC50測定の参照値として用いた:
A:MMP+基質:この値は、抗体およびTIMPの非存在下で100%MMP活性として定義された。
B:MMP+TIMP+基質:この値は、アッセイにおいて得られた最大阻害として定義され、総MMP活性の%として計算された。
【0117】
阻害の50%逆転が起こる抗体の濃度(IC50)を定義するために、以下の技法を用いた:
・ 阻害の50%逆転の値(%活性MMPとして表記)は、Y=[(A−B)/2]+Bとして計算した。
・ MMP活性はアッセイにおいて抗体濃度に対してプロットした。
・ 阻害の50%逆転が起こる抗体濃度(Y)は、x-軸上で読み取って、IC50として定義した。
・ グラフ上のエラーバーは、一つのアッセイにおいて1試料あたり3個ずつのウェルに由来した。
・ IC50値の標準偏差は、独立した3回のアッセイから計算した。
【0118】
実施例13
CDRカセットの段階的交換による選択したFabの親和性の成熟
選択した抗体断片の親和性および生物活性を増加させるために、CDR領域を、トリヌクレオチド方向変異誘発(Virnekasら、1994)を用いるカセット変異誘発によって最適化した。発現ベクターpMORPH(登録商標)×9におけるFab断片を、EcoRI/XbaI制限部位を用いてファージミドベクターpMORPH(登録商標)_18にクローニングした。いくつかの多様な位置を含むCDRカセットを合成して、独自の制限部位を用いて(Knappikら、2000)pMORPH(登録商標)_18におけるFab断片にクローニングした。親和性成熟ライブラリは、大腸菌TOP10Fへの形質転換によって作製して、ファージを上記のように調製した。改善された親和性を示すFab断片を示すファージは、ストリンジェントな洗浄条件(例えば、1μM非ビオチン結合抗原による競合、または頻繁に緩衝液交換を行う48時間までの洗浄)および抗原の限定量(0.04〜4 nM)を用いて、2〜3ラウンドの溶液選別によって選択した。BIAcore(商標)アッセイを用いてヒトTIMP-1抗体17個を、ヒトTIMP-1(いくつかはラットTIMP-1に対する親和性に関して調べた)に対する親和性に関して調べた。ヒトTIMP-1およびラットTIMP-1に対するこれらの抗体のKd値を表1に示す。
【0119】
(表1)種交叉反応性Fabの概要
* 標準偏差を示している場合では、3回の異なる蛋白質発現/精製について3回の独立した測定を行った。
〜 測定を1回限り行った場合では、予備的なデータを示す。
【0120】
実施例14
表面プラズモン共鳴を用いてkoffランキングによるオフ速度の改善を有するFabのスクリーニング
溶液選別後に溶出したファージを用いて、大腸菌TG-1に感染させ、34μg/mlクロラムフェニコールを含む寒天プレートに播種した。クローンを96ウェルプレートに採取して、これを用いてFab断片を作製した。同じプレートにおいて、親クローンを対照として接種した。可溶性のFabは浸透圧ショックによりペリプラスムから抽出して(Ausubelら、1998)、BIAcore(商標)におけるkoffランキングのために用いた。
【0121】
測定は全て、BIAcore(商標)機器において25℃で流速20μl/分でHBS緩衝液において行った。pH 4.5の100 mM酢酸ナトリウム中の抗原を、標準的なEDC-NHSカップリング化学を用いてCM 5センサーチップにカップリングさせた。25μg/ml TIMP-1 10μlを適用すると、典型的に、koffランキングに関して5000共鳴単位が得られた。センソグラムは全てBIA評価ソフトウェアを用いて適合させた。親クローンとの比較によってオフ速度が改善されたクローンを選択した。
【0122】
実施例15
種交叉反応性抗体の作製
ヒトとラットTIMP-1のあいだで交叉反応性であるブロッキング抗体を得る可能性を最大限にするために、ラットおよびヒト蛋白質について別の選別を行った。さらに、偶然に選択される可能性がある交叉反応性抗体をチェックするために、ヒトまたはラットTIMP-1蛋白質のみに関する選別によって選択された抗体を全て、交叉反応性に関して分析した。これらの選別から選択された抗体を粗大腸菌抽出物を用いてELISAにおいて交叉反応性に関して分析した。このアッセイにおいて交叉反応性抗体は、1 Lの規模での発現を行った後精製した。精製抗体は、BIAcore(商標)およびプロテアーゼアッセイにおける交叉反応性に関して調べた(表1)。
【0123】
表1に示すように、ヒトおよびラットTIMP-1と交叉反応する異なるFabを全体で5個作製した。BIAcore(商標)測定によって、これらの抗体は明らかにヒトおよびラットTIMP-1に結合するが、双方の種に対する親和性は少なくとも50倍異なることが判明した。ヒトの治療または動物モデルにおいて用いられる抗体は、標的蛋白質に対する親和性が低いナノモル濃度、好ましくはナノモル濃度以下でなければならない。上記の抗体はいずれも、双方の種に関してこの範囲の親和性を有しないことから、これらの抗体は、さらなる実験または開発のために有用ではないと見なされた。
【0124】
実施例16
ヒトTIMP-1に対するブロッキング抗体の作製
ヒトTIMP-1に対するブロッキング抗体を作製するために、HuCAL(登録商標)-Fab 1ライブラリを、精製TIMP-1蛋白質に関する抗体選択(Autopan(登録商標))のために用い、その後選択したFab断片の大腸菌におけるサブクローニングおよび発現を行った。粗抗体を含む大腸菌抽出物をELISAにおける一次抗体特徴付け(Autoscreen(登録商標))のために用いた。精製したFab蛋白質をELISA、TIMP-1/MMP-1アッセイおよびBIAcore(商標)においてさらに特徴を調べた。全体でクローン6100個をAutoscreen(登録商標)において分析し、それらの670個がヒトTIMP-1に対する結合を示した。配列分析から、全体で7個の独自の抗体クローンが選択されたことが判明した(表2)。これらの7個のFabクローンに関して、BIAcore(商標)において測定した親和性は、10〜180 nMの範囲内であった(表4)。ヒトプロテアーゼアッセイにおいて調べると、それらの5個は、ヒトTIMP-1とMMP-1とのあいだの相互作用を遮断することができた。ヒトMMP-1活性に対するヒトTIMP-1の阻害作用を50%逆転するために必要な一価Fabの濃度(IC50)は、11〜100 nMの範囲であった(表2)。最も活性なFabクローンは、MS-BW-3(Kd 13 nM;IC50 11 nM)およびMS-BW-28(Kd 10 nM;IC50 22 nM)である。
【0125】
ヒトTIMP-1に対して選択された抗体の顕著な特徴は、それらが全てVH312と比較的短いVH-CDR3領域、主にアミノ酸4個との組み合わせを示すことである(表2を参照のこと)。アミノ酸残基5〜28個の範囲の長さの分布を得るために、HuCAL(登録商標)-Fab 1ライブラリに関して構築したHCDR3カセットをデザインした。アミノ酸4個のHCDR3は、TRIM欠失のためにライブラリにおいて起こりうるが、非常にまれであると考えられる。もう一つの顕著な特徴は、選択したLCDR3配列における配列相同性の程度が高いことであった。
【0126】
(表2)抗ヒトTIMP-1 Fabの概要
* 標準偏差を示している場合では、3回の異なる蛋白質発現/精製について3回の独立した測定を行った。
〜 測定を1回限り行った場合では、予備的なデータを示す。
【0127】
実施例17
選択された抗ヒトTIMP-1抗体の親和性の増加
一価の抗ヒトTIMP-1 Fab断片の親和性をナノモル濃度以下の範囲に増加させるために、CDR配列を最適にして、フレームワーク領域を一定に維持することによって、段階的成熟アプローチを適用した。
【0128】
軽鎖クローニングによる親和性成熟
最高の親和性を有する二つの抗体断片のCDR3配列(MS-BW-3およびMS-BW-28)は、異常に短いアミノ酸4個のHCDR3配列の顕著な特徴を有した。さらに、それぞれのFabは、非常に類似のLCDR3配列を有した。これは、MS-BW-3とMS-BW-28とが同じエピトープに結合すること、そしてこのエピトープがCDR3配列の非常に小さいサブセットに限って認容する可能性があることを示している。アミノ酸4個のHCDR3は、ライブラリにおいて非常にまれな事象であるため、最初のライブラリにおいて、短いHCDR3と好ましいLCDR3との考えられる組み合わせが必ずしも全て存在するとは限らないと予測することができる。したがって、選択したHCDR3およびLCDR3配列とのもう一つの組み合わせは親和性を増加する可能性があると考慮される。このアプローチのため、クローニングによって、MS-BW-3とMS-BW-28との重鎖をMS-BW-1、-2、-3、-25、-26、-27、および-28の軽鎖と対にした。
【0129】
得られた構築物を大腸菌に形質転換して、1 L規模での発現/精製を行った。新しい構築物12個のうち、10個から機能的Fab分子が得られた。これらを表3に要約するように、BIAcore(商標)およびヒトプロテアーゼアッセイにおいて分析した。MS-BW-44と命名された最もよい抗体は、一価の親和性が2 nMでIC50は4 nM(図7)であり、このように、6.5倍(Kd)または2.75(IC50)倍改善した。
【0130】
(表3)軽鎖クローニングに由来するFabの概要
* 標準偏差を示している場合では、3個の異なる蛋白質発現/精製について3回の独立した測定を行った。
〜 測定を1回限り行った場合では、予備的なデータを示す。
【0131】
HCDR1およびHCDR2の最適化による親和性の成熟
HuCAL(登録商標)Fab 1ライブラリでは、CDR HCDR3およびLCDR3のみが高度に多様化している。これらの二つのCDRのアミノ酸は、抗体抗原接触のほとんどを形成することが結晶学研究からわかっているが、残りの4個のCDR3も同様に抗原結合にとって重要である。しかし、結合エネルギーに対するその関与は、抗体によって異なる。HuCAL(登録商標)-Fab 1ライブラリにおいて、それらのCDRは、異なるマスターフレームワークの存在によりごく限られた多様性を示したに過ぎない(Knappikら、2000)。選択した抗体の親和性を改善するために、HCDR1およびHCDR2を無作為化することによる親和性成熟アプローチを応用した。このアプローチに関して、ファージディスプレイベクターpMORPH(登録商標)18にクローニングしたMS-BW-44に基づいて二つの親和性成熟ライブラリを作製した。ライブラリ1では、MS-BW-44のHCDR2のみが、Virnekasら(Nucl. Acids Res. 22:5600〜07、1994;Knappikら、J. Mol. Biol. 296:57〜86、2000)に記載されるように「TRIM技術」を用いて多様化された。ライブラリ2では、HCDR1とHCDR2の双方がTRIM技術を用いて多様化された。いずれの場合にも、異なるクローン1×108個を含むファージ抗体ライブラリを得た。双方のライブラリを混合して、改変AutoPan(登録商標)技法のための入力として用いた。ヒトTIMP-1に対して親和性が増加した抗体を選択するために、ビオチン化抗原の限定量とストリンジェントな洗浄条件とを用いた溶液選別を適用した。抗体のオフ速度は、選択した抗体の粗大腸菌抽出物を用いてBIAcore(商標)によって分類した。親クローンMS-BW-44より遅いオフ速度を有するクローンに、1 L規模の発現および精製を行った。精製したFabをBIAcore(商標)およびヒトプロテアーゼアッセイにおいて分析した(表4)。
【0132】
(表4)親クローンMS-BW-44によるHCDR1とHCDR2最適化に由来するFabの比較
* IC50値は、TIMP-1とMMP-1(それぞれ、0.4 nM)の減少量を用いた改変プロテアーゼアッセイに由来する。
【0133】
クローンMS-BW-44-2は、ライブラリ1から誘導され、このように改変HCDR2カセットを用いる。BIAcore(商標)によって測定したその親和性は0.5 nMであった。クローンMS-BW-44-6は、改変HCDR1およびHCDR2カセットを有するライブラリ2に由来し、BIAcore(商標)によって測定したその親和性は0.6 nMであった。親和性成熟抗体とその親クローンとの配列比較を表8に示す。
【0134】
(表8)ヒトTIMP-1に対する親和性成熟Fab断片の概要と配列比較。親Fab断片(太字)と比較した配列の変化を斜体で示す。
* IC50値は、TIMP-1とMMP-1の減少量を用いて改変プロテアーゼアッセイに由来する;MS-BW-44のIC50は、これらの条件下で2 nMである。
【0135】
ヒトTIMP-1/MMP-1アッセイにおいて最初に分析したところ、ヒトMMP-1活性に対するヒトTIMP-1の50%阻害作用を逆転するために必要なFabの濃度は、アッセイにおけるTIMP-1全体の濃度以下であったため、ナノモル濃度以下の親和性を有するFabを親和性1 nMのFabと区別することは不可能であった。1.2 nMから0.4 nMに減少させたTIMP-1およびMMP-1の濃度について改変アッセイを行ったところ、2 nM Fabをナノモル濃度以下のFabと区別することが可能であった(表4、図8)。この改変プロテアーゼアッセイを用いると、MS-BW-44-2およびMS-BW-44-6のIC50値はそれぞれ、0.4 nMおよび0.2 nMであった。親クローンMS-BW-44は、これらの条件でIC50が2 nMであった。このように、この親和性成熟アプローチによって、5倍(Kd)または5〜10倍(IC50)の親和性の増加を得た。
【0136】
HCDR3の最適化による親和性成熟
先に述べたように、HCDR3およびLCDR3におけるアミノ酸残基は、抗原結合にとって最も重要であると考えられる。アミノ酸4個のHCDR3がHuCAL(登録商標)-Fab 1のデザインにおいて計画されておらず、このようにTRIM欠失によるまれな場合に限って起こることを考慮すると、おそらくHCDR3におけるアミノ酸4個の必ずしも全ての考えられる組み合わせが当初のHuCAL(登録商標)-Fab 1ライブラリにおいて示されていなかった。したがって、先の成熟サイクル(中でも、MS-BW-44-2およびMS-BW-44-6)に由来するFabに挿入したアミノ酸4個および5個のHCDR3成熟カセットを有する親和性成熟ライブラリを構築した。得られた親和性成熟ライブラリは、多様なクローン1×108個を有し、したがって、理論的に可能性がある全てのアミノ酸4および5個のHCDR3変種がその中に含まれる。非常にストリンジェントな選別条件を適用すると、最善の抗体、MS-BW-44-2-4が同定され、これは、BIAcore(商標)によって測定すると、親和性が0.2 nMであり、ヒトTIMP-1/MMP-1アッセイにおいてIC50が0.2 nMであった。親和性成熟抗体とその親クローンとの配列比較を表8に示す。この親和性成熟アプローチによって得られた改善率は、親和性に関して2.5倍であり、IC50に関して2倍である。
【0137】
LCDR3の最適化による親和性成熟
もう一つのアプローチとして、成熟戦略を用いて、軽鎖CDR3配列をさらに最適化した。これは、選択した抗体のあいだの軽鎖交換クローニングが適用される第一の成熟サイクルにおいて、配列変化のごく非常に限られたサブセットが利用されていたという事実のためであった。したがって、TRIM技術を用いて、多様なLCDR3カセットをHCDR1およびHCDR2最適化に由来するFabに挿入した成熟ライブラリを構築した(中でもMS-BW-44-2およびMS-BW-44-6)。この成熟戦略によって同定された最善のFabは、MS-BW-44-6-1であり、BIAcore(商標)によって測定した親和性は0.15 nM、ヒトTIMP-1/MMP-1アッセイにおけるIC50は0.2 nMであった。親和性成熟抗体とその親クローンとの配列比較を表8に示す。この成熟アプローチによって得られた改善率は親和性に関して4倍である。プロテアーゼアッセイにおけるIC50のさらなる改善は、アッセイの限界のために測定できなかった。
【0138】
異なる四つの成熟戦略を用いた段階的親和性成熟の結果として、抗ヒトTIMP-1特異的Fab断片の一価の親和性は87倍改善され、ヒトTIMP-1/MMP-1アッセイにおけるその活性は55倍改善された。最善のFab断片を定義するための決定は、BIAcore(商標)は、ナノモル濃度未満の親和性を有する抗体を分類するために信頼できることが証明されたが、ヒトTIMP-1/MMP-1アッセイの感度は、互いに関してナノモル濃度未満の最善のFabの活性を分類するために適していないと考えられたため、BIAcore(商標)を用いて、Kd測定に基づいて行った。
【0139】
最善のFab MS-BW-44-6-1は、BIAcore(商標)によって測定した親和性が0.15 nMであり、ヒトTIMP-1/MMP-1アッセイにおけるIC50が0.2 nMである。その親クローン、MS-BW-3と比較すると、これは最適化されたLCDR3、HCDR1、およびHCDR2配列を有する。
【0140】
実施例18
選択した抗ヒトTIMP-1 FabとTIMP-2、TIMP-3、およびTIMP-4との交叉反応性
TIMP-1は、全てがMMPプロテアーゼファミリーの様々なメンバーに結合する近縁のプロテアーゼ阻害剤ファミリーに属する。今日まで、ヒトTIMP蛋白質4個が記述されている。ヒトTIMP-1に対して選択された抗体断片と、他のヒトTIMPファミリーメンバーとの交叉反応性の可能性を調べるために、固定された精製ヒトTIMP-1、-2、-3、または-4に対する抗体断片の結合を分析するELISAを行った(図10)。固定されたヒトTIMP-1に対する抗体断片の結合は、無関係な対照蛋白質BSAと比較した場合に、ヒトTIMP-2、-3、-4に対してバックグラウンドレベル以上の結合を示さなかった。
【0141】
実施例19
ラットTIMP-1に対するブロッキング抗体の作製
ラットTIMP-1に対するブロッキング抗体を作製するために、HuCAL(登録商標)-Fab 1ライブラリを、固定されたラットTIMP-1上での抗体選択(AutoPan(登録商標))のために用いた後、選択されたFab断片をサブクローニングして大腸菌において発現させた。粗抗体含有大腸菌抽出物をELISAにおける一次抗体特徴付け(AutoScreen(登録商標))のために用いた。精製Fab蛋白質にELISA、プロテアーゼアッセイおよびBIAcore(商標)においてさらなる特徴付けを行った。AutoScreen(登録商標)において分析した選択されたクローン8,450個のうち、それらの750個がラットTIMP-1に対する結合を示した。配列分析は、ラットTIMP-1に対して特異的な独自のFabクローン全体36個が選択の際に濃縮された(表7)。それらの親和性をBIAcore(商標)によって測定したところ、9〜1000 nMの範囲であることが判明した(表7)。ラットプロテアーゼアッセイにおいて調べたところ、それらの一つを除く全てが、ラットTIMP-1とラットMMP-13との相互作用を遮断することができた(表7)。ラットMMP-13活性に対するラットTIMP-1の阻害作用を50%逆転するために必要な一価のFabの濃度(IC50)は、7〜300 nMの範囲であった。最も活性なFabクローンは、MS-BW-14(Kd、10 nM;IC50、14 nM)、MS-BW-17(Kd、13 nM;IC50、11 nM)およびMS-BW-54(Kd、9 nM;IC50、7 nM)である。
【0142】
(表7)抗ラットTIMP-1 Fabの概要
* 標準偏差を示している場合では、3回の異なる蛋白質発現/精製について3回の独立した測定を行った。
〜 測定を1回限り行った場合では、予備的なデータを示す。
【0143】
実施例20
選択した抗ラットTIMP-1抗体の親和性の増加
親和性成熟を応用して、一価の抗ラットTIMP-1 Fab断片の親和性をナノモル濃度以下の範囲まで増加させた。選択した抗体断片の軽鎖CDR3配列において明白な配列相同性を同定することができず、このことは、最適な軽鎖CDR3配列はおそらく存在しないか、または当初のHuCAL(登録商標)-Fab 1ライブラリから選択されていなかったことを示している。したがって、われわれはFabの親和性を増加させるためにLCDR3の改変から始めた。
【0144】
ファージディスプレイベクターpMORPH(登録商標)18にクローニングしたMS-BW-14、-17、および-54に基づいて二つの親和性成熟ライブラリを作製した。ライブラリ1では、LCDR3のみがVirnekasら(Nucl. Acids Res. 22:5600〜07、1994;Knappikら、J. Mol. Biol. 296:57〜86、2000)に記載されるように、TRIM技術を用いて多様化された。ライブラリ2では、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3が、TRIM技術を用いて同時に多様化されたが、結合するフレームワーク領域は一定のままであった。双方の場合において、異なるクローン3×108個を含むファージ抗体ライブラリを得た。双方のライブラリを混合して、改変AutoPan(登録商標)技法のための入力として用いた。ラットTIMP-1に対する親和性が増加した抗体を選択するために、ビオチン化抗原の限定量およびストリンジェントな洗浄条件を用いた溶液選別を適用した。
【0145】
抗体のオフ速度を、粗大腸菌抽出物を用いてBIAcore(商標)によって分類した。親クローンMS-BW-14、-17、または-54より遅いオフ速度を有するクローンに、1 L規模での発現および精製を行った。精製FabをBIAcore(商標)およびラットプロテアーゼアッセイにおいて分析した(表6)。MS-BW-17-1(Kd、0.8 nM、IC50、1.6 nM)、MS-BW-17-2(Kd、1.3 nM、IC50、1.1 nM)およびMS-BW-17-3(Kd、1.9 nM、IC50、3 nM)は、最適化LCDR3配列を有する親和性成熟ライブラリ1に由来したが、MS-BW-54-1(Kd、2 nM、IC50、3 nM)は、最適化LCDR1、-2、および-3配列を有する親和性成熟ライブラリ2に由来した(表9)。
【0146】
(表9)ラットTIMP-1に対する親和性成熟Fab断片の概要と配列比較。親Fab断片(太字)と比較した配列変化を斜体で示す。
【0147】
これらの異なる一段階成熟戦略によって得られた改善は、親和性に関して16.3倍まで、そしてプロテアーゼアッセイにおける機能的活性に関して10倍までであった。
【0148】
実施例21
ラットの慢性四塩化炭素誘発肝線維症モデルにおいて用いるためのヒトIgG1分子への抗TIMP-1 Fab断片の変換
抗TIMP-1 Fab断片をヒトIgG1分子に変換して、ラットの慢性四塩化炭素誘発肝線維症モデルにおいて用いるための持続的なインビボ半減期を有する抗体分子を作製した。これは、哺乳類のIgG1を発現させるために二つの異なるベクターにFabの重鎖および軽鎖可変領域をクローニングすることによって行った(Krebsら、2001)。
【0149】
抗ラットTIMP-1クローンMS-BW-14を第一のインビボ試験のために選択し、IgG1蛋白質を一過性の発現によって産生させた。抗ヒトTIMP-1クローンMS-BW-3を陰性対照IgG1として選択して、同様に一過性の発現によって産生させた。精製IgG1蛋白質MS-BW-14およびMS-BW-3にBIAcore(商標)およびラットTIMP-1/ラットMMP-13アッセイにおける品質管理を行った。BIAcore(商標)(チップ密度500 RU、二価分析体の適合モデル)において測定したラットTIMP-1に対する二価の親和性は、MS-BW-14に関して0.2 nMであるのに対し、対応する一価のFab断片については13 nMであった。IgG1に対する親和性の増加は、BIAcore(商標)チップ上に固定されたラットTIMP-1蛋白質に対する二価IgG1の結合によって引き起こされた結合力の作用による。予想されたように、陰性対照IgG1 MS-BW-3は、ラットTIMP-1に対して結合を示さなかったが、二価の親和性約0.4 nMでヒトTIMP-1に結合した。
【0150】
図12は、ラットTIMP-1/ラットMMP-13アッセイにおけるMS-BW-14 FabおよびIgG1ならびにMS-BW-3 IgG1の活性を示す。MS-BW-14 FabとIgG1のIC50はほぼ同一である。BIAcore(商標)実験とは対照的に、このアッセイは、TIMP-1とIgG1との溶液中での一価の相互作用に基づいているため、BIAcore(商標)において認められた結合力効果はこのアッセイでは起こらない。予想されるように、MS-BW-3は、ラットMMP-13に対するラットTIMP-1結合に対して効果を示さず、このように、ラットのインビボ試験に関して適した陰性対照である。
【0151】
次に、親和性成熟クローンMS-BW-17-1を一価のFab断片から二価のIgG1に変換した。蛋白質は安定なトランスフェクションによって作製した。精製蛋白質に、BIAcore(商標)およびラットTIMP-1/ラットMMP-13アッセイにおいて品質管理を行った(図13)。BIAcore(商標)において、一価のFab断片に関する0.8 nMと比較すると、IgG1に関して0.04 nMという二価の親和性(結合力)の増加を認めたが、ラットTIMP-1/ラットMMP-13アッセイにおける活性は、予想されるように、IgG1およびFabに関して同等であった。
【0152】
実施例22
抗ラットTIMP-1 IgG1 MS-BW-17-1とマウスTIMP-1との交叉反応性
MS-BW-17-1 IgG1およびFabとマウスTIMP-1との種間交叉反応性を、BIAcore(商標)によって決定し、ラットの代わりにマウスを用いるもう一つのインビボモデルの実現可能性を調べた。MS-BW-17-1は、チップ表面上に固定されたマウスTIMP-1に明らかに結合したが、Fab(180 nM)とIgG1(9 nM)の親和性はいずれも、ラットTIMP-1に対する親和性より225倍弱かった。血清中のマウスTIMP-1とBW-17-1 IgG1との相互作用は、一価である可能性が最も高いため、BW-17-1 Fabの親和性はおそらく、この相互作用の「真の」親和性を反映している。したがって、マウスインビボ試験においてBW-17-1 IgG1を用いる実現可能性を計算する場合には、Fab親和性の値を考慮しなければならない。
【0153】
実施例23
ブレオマイシン誘発肺線維症の発症に及ぼすTimp-1抗体の影響
以下の実施例は、ヒト抗ラットTimp-1抗体(BW17.1)がブレオマイシン誘発ラット肺線維症モデルにおける線維症コラーゲン沈着を予防できることを証明する。
【0154】
雄性Lewisラット(6週齢)に、0日目にブレオマイシン(0.3 mg/ラット、生理食塩液)または溶媒(生理食塩液)の1回気管内チャレンジを行った。14日後、動物を安楽死させて、肺を切除して固定し、肺線維症の評価のために処理した。肺組織切片を切断して、マッソンの三重染色によって染色した肺組織切片における肺コラーゲンの画像分析によって定量的な評価を行った。
【0155】
抗体の投与:ヒト抗ラットTIMP-1抗体または対照ヒト抗体(IgG)20 mg/kg用量を−1日目に投与した。その後、ヒト抗ラットTIMP-1抗体または対照ヒト抗体(IgG)10 mg/kg用量を2、5、8、および11日目に皮下投与した。以下の動物5群を調べた:生理食塩液の気管内チャレンジ+抗体溶媒(PBS);生理食塩液の気管内チャレンジ+TIMP-1抗体;ブレオマイシンの気管内チャレンジ+TIMP-1抗体;ブレオマイシンの気管内チャレンジ+抗体溶媒(PBS);ブレオマイシンの気管内チャレンジ+対照抗体。
【0156】
図14は、ブレオマイシン誘発肺線維症コラーゲンに及ぼすTIMP-1抗体の阻害作用の影響を示す。
【0157】
実施例24
ラットのCCl4誘発肝線維症モデルにおけるBW-14抗TIMP-1抗体の影響
四塩化炭素(CCl4)を用いて、実施例9に記載するように肝線維症を誘発した。3 mg/kg BW-14または対照抗体BW-3の1回静脈内用量をそれぞれ、19日目に投与した。この時点で、総肝コラーゲン(Prockop and Udenfriedに従って測定したヒドロキシプロリン)は、CCl4によって既に有意に増加し、線維症コラーゲンは、翌週のあいだに急速に蓄積する。ラットを28日目に屠殺した。処置群は以下の通りであった:CCl4なし+対照抗体BW3(ラットn=10)、CCl4+対照抗体BW3(ラットn=20)、およびCCl4+BW14(ラットn=20)。
【0158】
線維症コラーゲンの形態学的測定(場全体の百分率としてのシリウスレッド染色領域)において反映された対照対TIMP-1抗体の影響を図15に示す。双方の対照抗体処置群の比較から、CCl4がコラーゲン領域において約3倍の増加を引き起こしたことを示している。BW-14抗体処置は、病的なコラーゲンの増加を26%減少させた。CCl4+BW-3群と比較してCCl4+BW-14群の線維様コラーゲン値がより低かったことは、統計学的に有意であった(p<0.05、コルモゴロフ・スミルノフの検定)。
【0159】
参考文献
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】HuCAL(登録商標)VHおよびVL Fabマスター遺伝子によってコードされる蛋白質配列。VHおよびVL配列7個を並置して、対応するDNA配列に導入された制限エンドヌクレアーゼ部位のおおよその位置を示す。番号付けは、Vl 9位のギャップを除きVBASEに従う。VBASEでは、ギャップを10位に設定する。同様に、Chothiaら(1992)、J. Mol. Biol. 227:776〜798、Tomlinsonら(1995)、EMBO J. 14:4628〜4638、およびWilliamsら(1996)、J. Mol. Biol. 264:220〜232も参照のこと。
【図2】HuCAL(登録商標)VHおよびVL Fabマスター遺伝子のヌクレオチド配列。
【図3】FabディスプレイベクターpMORPH(登録商標)18 Fab 1。
【図4】pMORPH(登録商標)x9Fab 1_FSのベクターマップ。
【図5】ヒトとラットTIMP-1の配列比較。太字の配列領域は、ペプチド合成に用いられた。MMP-3とより強く直接接触させる残基を斜体で示し、MMP-3とより弱く直接接触させる残基を下線で示す(Gomis-Ruthら、1997)。
【図6】ヒトTIMP-1/MMP-1アッセイにおけるMS-BW-3の活性。抗体Fab断片を、0.05%BSAを含むアッセイ緩衝液において1試料あたり3個ずつ表記の濃度に希釈した。TIMP(最終濃度、1.2 nM)、MMP(最終濃度、1.2 nM)、およびペプチド基質(最終濃度50μM)を加えて、37℃で1〜3時間インキュベートした後、Ex320 nm/Em 430 nmでの蛍光を測定した。IC50は、参照値として100%MMP-1活性(TIMP-1の非存在下)と27%MMP-1活性(抗体の非存在下)とを用いて、材料と方法の章に概要するように計算した。
【図7】ヒトTIMP-1/MMP-1アッセイにおけるMS-BW-44の活性。抗体Fab断片を、0.05%BSAを含むアッセイ緩衝液において1試料あたり3個ずつ表記の濃度に希釈した。TIMP(最終濃度、1.2 nM)、MMP(最終濃度、1.2 nM)、およびペプチド基質(最終濃度50μM)を加えて、37℃で1〜3時間インキュベートした後、Ex320 nm/Em 430 nmでの蛍光を測定した。IC50は、参照値として100%MMP-1活性(TIMP-1の非存在下)と25%MMP-1活性(抗体の非存在下)とを用いて、材料と方法の章に概要するように計算した。
【図8】ヒトTIMP-1/MMP-1アッセイにおけるMS-BW-44、-44-2、44-6の活性。Fab抗体断片を、0.05%BSAを含むアッセイ緩衝液において1試料あたり3個ずつ表記の濃度に希釈した。TIMP(最終濃度、0.4 nM)、MMP(最終濃度、0.4 nM)、およびペプチド基質(最終濃度50μM)を加えて、37℃で7時間インキュベートした後、Ex320 nm/Em 430 nmでの蛍光を測定した。IC50は、参照値として100%MMP-1活性(TIMP-1の非存在下)と55%MMP-1活性(抗体の非存在下)とを用いて、材料と方法の章に概要するように計算した。
【図9】ヒトTIMP-1/MMP-1アッセイにおけるMS-BW-44、-44-2-4、44-6-1の活性。Fab抗体断片を、0.05%BSAを含むアッセイ緩衝液において1試料あたり3個ずつ表記の濃度に希釈した。TIMP(最終濃度、0.4 nM)、MMP(最終濃度、0.4 nM)、およびペプチド基質(最終濃度50μM)を加えて、37℃で7時間インキュベートした後、Ex320 nm/Em 430 nmでの蛍光を測定した。IC50は、参照値として100%MMP-1活性(TIMP-1の非存在下)と50%MMP-1活性(抗体の非存在下)とを用いて、材料と方法の章に概要するように計算した。
【図10】ヒトTIMP-1、-2、-3および-4に対するFab断片の結合。TIMP-1、-2、-3、-4蛋白質をELISAプレートに固定して、精製Fab断片の結合を、アルカリホスファターゼ結合抗Fab抗体(ディアノバ社)と共にインキュベートした後アトフォス基質(ロシュ社)によって発色させて、Ex405 nm/Em 535 nmで測定することによって測定した。
【図11】ラットTIMP-1/MMP-13アッセイにおけるMS-BW-14、-17、-54の活性。抗体Fab断片を、0.05%BSAを含むアッセイ緩衝液において1試料あたり3個ずつ表記の濃度に希釈した。TIMP(最終濃度、1.2 nM)、MMP(最終濃度、1.2 nM)、およびペプチド基質(最終濃度50μM)を加えて、37℃で1〜3時間インキュベートした後、Ex320 nm/Em 430 nmでの蛍光を測定した。IC50は、参照値として100%MMP-13活性(TIMP-1の非存在下)と20%MMP-13活性(抗体の非存在下)とを用いて、材料と方法の章に概要するように計算した
【図12】ラットTIMP-1/MMP-13アッセイにおけるMS-BW-14 FabおよびIgG1、ならびにMS-BW-3 IgG1の活性。抗体を、0.05%BSAを含むアッセイ緩衝液において1試料あたり3個ずつ表記の濃度に希釈した。TIMP(最終濃度、1.2 nM)、MMP(最終濃度、1.2 nM)、およびペプチド基質(最終濃度50μM)を加えて、37℃で1〜3時間インキュベートした後、Ex320 nm/Em 430 nmでの蛍光を測定した。IC50は、参照値として100%MMP-13活性(TIMP-1の非存在下)と30%MMP-13活性(抗体の非存在下)とを用いて、材料と方法の章に概要するように計算した。
【図13】ラットTIMP-1/MMP-13アッセイにおけるMS-BW-17-1 FabおよびIgG1の活性。Fab抗体断片を、0.05%BSAを含むアッセイ緩衝液において1試料あたり3個ずつ表記の濃度に希釈した。TIMP(最終濃度、1.2 nM)、MMP(最終濃度、1.2 nM)、およびペプチド基質(最終濃度50μM)を加えて、37℃で1〜3時間インキュベートした後、Ex320 nm/Em 430 nmでの蛍光を測定した。IC50は、参照値として100%MMP-13活性(TIMP-1の非存在下)と15%MMP-13活性(抗体の非存在下)とを用いて、材料と方法の章に概要するように計算した。
【図14】ブレオマイシン誘発肺線維症コラーゲンに及ぼすMS-BW-17-1 TIMP-1抗体の阻害作用の影響。
【図15】四塩化炭素誘発ラット肝線維症モデルにおいてサイラスレッドによって染色した線維症コラーゲンに及ぼす抗TIMP-1抗体の影響。サイラスレッド染色領域は、PBS、対照抗体、およびMS-BW-14抗TIMP-1抗体によって処置した四塩化炭素処置ラットにおける総領域の割合として表す。
【図1−1】
【図1−2】
【図1−3】
【図2−1】
【図2−2】
【図2−3】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2001年4月24日に提出された同時係属中の仮出願番号第60/285,683号に対する優先権を主張し、参照として本明細書に組み入れる。
【0002】
発明の分野
本発明は、TIMP-1結合ヒト抗体に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
メタロプロテアーゼの組織阻害剤(TIMP)は、エンドペプチドヒドロラーゼのファミリーであるメタロプロテアーゼを阻害する。メタロプロテアーゼは、結合組織および造血細胞によって分泌され、触媒のためにZn2+またはCa2+を利用し、TIMP分子と共に金属キレート剤によって不活化される可能性がある。マトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)は、組織の多くの構造成分、特に細胞外マトリクス(ECM)の分解を含む生物学的に重要な多様なプロセスに関与している。
【0004】
細胞外マトリクス組織の分解は、既存の組織の破壊が例えば、胚の体内移植(Reponenら、Dev. Dyn. 202、388〜96、1995(非特許文献1))、胚形成、および組織の再構築が必要であるプロセスにおいて望ましい。しかし、マトリクス蛋白質の合成と分解の不均衡によって、肝線維症のような疾患が起こりうる(Iredaleら、Hepatology 24、176〜84、1996(非特許文献2))。この不均衡は、例えば、TIMPのレベルが上昇した場合に起こりうる。TIMP-1レベルが増加した障害には、例えば、肝線維症、アルコール性肝疾患、心線維症、急性冠血管症候群、ループス腎炎、糸球体硬化性腎疾患、特発性肺線維症、良性前立腺過形成、肺癌、および結腸癌が含まれる。例えば、Inokuboら、Am. Heart J. 141:211〜17、2001(非特許文献3);Ylisirnioら、Anticancer Res. 20:1311〜16、2000(非特許文献4);Holten-Andersenら、Clin. Cancer Res. 6:4292〜99、2000(非特許文献5);Holten-Andersenら、Br. J. Cancer 80:495〜503、1999(非特許文献6);Petersonら、Cardiovascular Res. 46:307〜15、2000(非特許文献7);Arthurら、Alcoholism:Clinical and Experimental Res. 23:840〜43、1999(非特許文献8);Iredaleら、Hepatol. 24:176〜84、1996(非特許文献2)を参照のこと。
【0005】
当技術分野において、治療効果を提供するために用いることができるTIMP-1活性を阻害する試薬および方法が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Reponenら、Dev. Dyn. 202、388〜96、1995
【非特許文献2】Iredaleら、Hepatology 24、176〜84、1996
【非特許文献3】Inokuboら、Am. Heart J. 141:211〜17、2001
【非特許文献4】Ylisirnioら、Anticancer Res. 20:1311〜16、2000
【非特許文献5】Holten-Andersenら、Clin. Cancer Res. 6:4292〜99、2000
【非特許文献6】Holten-Andersenら、Br. J. Cancer 80:495〜503、1999
【非特許文献7】Petersonら、Cardiovascular Res. 46:307〜15、2000
【非特許文献8】Arthurら、Alcoholism:Clinical and Experimental Res. 23:840〜43、1999
【発明の概要】
【0007】
発明の簡単な概要
本発明の目的は、TIMP-1活性を阻害する試薬および方法を提供することである。本発明のこの目的および他の目的は、下記の態様の一つまたはそれ以上によって提供される。
【0008】
本発明の一つの態様は、抗体がメタロプロテアーゼ-1の組織阻害剤(TIMP-1)に結合して、TIMP-1のマトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害活性を中和する、ヒト抗体の精製調製物である。
【0009】
本発明のもう一つの態様は、配列番号:1〜43および360からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVHCDR3領域を含む第一のヒト抗体の精製調製物である。
【0010】
本発明のなおもう一つの態様は、配列番号:44〜86および365〜379からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVLCDR3領域を含む第一のヒト抗体の精製調製物である。
【0011】
本発明のなおもう一つの態様は、第二のヒト抗体のTIMP-1結合およびMMP-阻害活性を有する第一のヒト抗体の精製調製物である。第二の抗体は、配列番号:1と44、配列番号:2と45、配列番号:3と46、配列番号:4と47、配列番号:5と48、配列番号:6と49、配列番号:7と50、配列番号:3と44、配列番号:3と45、配列番号:3と47、配列番号:3と48、配列番号:3と49、配列番号:3と50、配列番号:7と44、配列番号:7と45、配列番号:7と47、配列番号:7と48、配列番号:8と51、配列番号:9と52、配列番号:10と53、配列番号:11と54、配列番号:12と55、配列番号:13と56、配列番号:14と57、配列番号:15と58、配列番号:16と59、配列番号:17と60、配列番号:18と61、配列番号:19と62、配列番号:20と63、配列番号:21と64、配列番号:22と65、配列番号:23と66、配列番号:24と67、配列番号:25と68、配列番号:26と69、配列番号:27と70、配列番号:28と71、配列番号:29と72、配列番号:30と73、配列番号:31と74、配列番号:32と75、配列番号:33と76、配列番号:34と77、配列番号:35と78、配列番号:36と79、配列番号:37と80、配列番号:38と81、配列番号:39と82、配列番号:40と83、配列番号:41と84、配列番号:42と85、配列番号:43と86、配列番号:3と48、配列番号:360と48、配列番号:3と365、配列番号:16と59、配列番号:18と61、配列番号:34と77、配列番号:34と379、配列番号:18と376、配列番号:18と377、および配列番号:18と378からなる群より選択されるVHCDR3とVLCDR3のアミノ酸配列対を含む。
【0012】
本発明のさらにもう一つの態様は、配列番号:1と44、配列番号:2と45、配列番号:3と46、配列番号:4と47、配列番号:5と48、配列番号:6と49、配列番号:7と50、配列番号:3と44、配列番号:3と45、配列番号:3と47、配列番号:3と48、配列番号:3と49、配列番号:3と50、配列番号:7と44、配列番号:7と45、配列番号:7と47、配列番号:7と48、配列番号:8と51、配列番号:9と52、配列番号:10と53、配列番号:11と54、配列番号:12と55、配列番号:13と56、配列番号:14と57、配列番号:15と58、配列番号:16と59、配列番号:17と60、配列番号:18と61、配列番号:19と62、配列番号:20と63、配列番号:21と64、配列番号:22と65、配列番号:23と66、配列番号:24と67、配列番号:25と68、配列番号:26と69、配列番号:27と70、配列番号:28と71、配列番号:29と72、配列番号:30と73、配列番号:31と74、配列番号:32と75、配列番号:33と76、配列番号:34と77、配列番号:35と78、配列番号:36と79、配列番号:37と80、配列番号:38と81、配列番号:39と82、配列番号:40と83、配列番号:41と84、配列番号:42と85、配列番号:43と86、配列番号:3と48、配列番号:360と48、配列番号:3と365、配列番号:16と59、配列番号:18と61、配列番号:34と77、配列番号:34と379、配列番号:18と376、配列番号:18と377、および配列番号:18と378からなる群より選択されるVHCDR3とVLCDR3のアミノ酸配列対を含むヒト抗体の精製調製物である。
【0013】
本発明のさらなる態様は、配列番号:140と97、配列番号:141と98、配列番号:142と99、配列番号:143と100、配列番号:144と101、配列番号:145と102、配列番号:146と103、配列番号:142と97、配列番号:142と98、配列番号:142と100、配列番号:142と101、配列番号:142と102、配列番号:142と103、配列番号:146と97、配列番号:146と98、配列番号:146と100、配列番号:146と101、配列番号:148と104、配列番号:148と105、配列番号:149と106、配列番号:150と107、配列番号:151と108、配列番号:152と109、配列番号:153と110、配列番号:154と111、配列番号:155と112、配列番号:156と113、配列番号:157と114、配列番号:158と115、配列番号:159と116、配列番号:160と117、配列番号:161と118、配列番号:162と119、配列番号:163と120、配列番号:164と121、配列番号:165と122、配列番号:166と123、配列番号:167と124、配列番号:168と125、配列番号:169と126、配列番号:170と127、配列番号:171と128、配列番号:172と129、配列番号:173と130、配列番号:174と131、配列番号:175と132、配列番号:176と133、配列番号:177と134、配列番号:178と135、配列番号:179と136、配列番号:180と137、配列番号:181と138、および配列番号:182と139からなる群より選択される重鎖および軽鎖アミノ酸対を含むヒト抗体の精製調製物である。
【0014】
本発明のもう一つの抗体は、ヒト抗体と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物である。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、および(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。
【0015】
本発明のさらにもう一つの態様は、配列番号:1〜43および360からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVHCDR3領域を含むヒト抗体をコードする精製ポリヌクレオチドである。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。
【0016】
本発明のさらにもう一つの態様は、配列番号:44〜86および365〜379からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVLCDR3領域を含むヒト抗体をコードする精製ポリヌクレオチドである。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。
【0017】
本発明のなおもう一つの態様は、配列番号:1〜43および360からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVHCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターである。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。
【0018】
本発明のさらなる態様は、配列番号:1〜43および360からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVHCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターである。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。VHCDR3領域は、配列番号:227〜269からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0019】
本発明のもう一つの態様は、配列番号:44〜86および365〜379からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVLCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターである。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。
【0020】
本発明のなおもう一つの態様は、配列番号:44〜86および365〜379からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVLCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターである。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。VLCDR3領域は、配列番号:184〜226からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0021】
本発明のなおもう一つの態様は、配列番号:1〜43および360からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVHCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターである。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。ヒト抗体は、配列番号:140〜182からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する重鎖を含む。
【0022】
本発明のさらにもう一つの態様は、配列番号:1〜43および360からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVHCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターである。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。ヒト抗体は、配列番号:140〜182からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する重鎖を含む。重鎖は、配列番号:269〜311からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0023】
本発明のさらなる態様は、配列番号:44〜86および365〜379からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVLCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターである。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。ヒト抗体は、配列番号:97〜139からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
【0024】
本発明のもう一つの態様は、配列番号:44〜86および365〜379からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVLCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターである。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。ヒト抗体は、配列番号:97〜139からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。軽鎖は、配列番号:312〜354からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0025】
本発明のなおもう一つの態様は、発現ベクターを含む宿主細胞である。発現ベクターは、ヒト抗体が、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する、配列番号:1〜43および360からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVHCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0026】
本発明のなおもう一つの態様は、発現ベクターを含む宿主細胞である。発現ベクターは、ヒト抗体が、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する、配列番号:1〜43および360からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVHCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む。VHCDR3領域は、配列番号:227〜269からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0027】
本発明のなおもう一つの態様は、発現ベクターを含む宿主細胞である。発現ベクターは、配列番号:44〜86および365〜379からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVLCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。
【0028】
本発明のさらなる態様は、発現ベクターを含む宿主細胞である。発現ベクターは、配列番号:44〜86および365〜379からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVLCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。VLCDR3領域は、配列番号:184〜226からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0029】
本発明のもう一つの態様は、発現ベクターを含む宿主細胞である。発現ベクターは、ヒト抗体が、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する、配列番号:1〜43および360からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVHCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む。ヒト抗体は、配列番号:140〜182からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する重鎖を含む。
【0030】
本発明のさらにもう一つの態様は、発現ベクターを含む宿主細胞である。発現ベクターは、ヒト抗体が、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する、配列番号:1〜43および360からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVHCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む。ヒト抗体は、配列番号:140〜182からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する重鎖を含む。重鎖は、配列番号:269〜311からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0031】
本発明のなおもう一つの態様は、発現ベクターを含む宿主細胞である。発現ベクターは、配列番号:44〜86および365〜379からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVLCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。ヒト抗体は、配列番号:97〜139からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
【0032】
本発明のなおさらなる態様は、発現ベクターを含む宿主細胞である。発現ベクターは、配列番号:44〜86および365〜379からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVLCDR3領域を含むヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを含む。ヒト抗体は、(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。ヒト抗体は、配列番号:97〜139からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。軽鎖は、配列番号:312〜354からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0033】
本発明のさらなる態様は、ヒト抗体を作製する方法である。請求項43記載の宿主細胞は、抗体が発現される条件で培養される。ヒト抗体は宿主細胞培養物から精製される。
【0034】
本発明のもう一つの態様は、TIMP-1のMMP-阻害活性を減少させる方法である。TIMP-1を、TIMP-1に結合するヒト抗体に接触させる。抗体の非存在下のTIMP-1のMMP-阻害活性と比較すると、TIMP-1のMMP阻害活性は減少する。
【0035】
本発明のなおもう一つの態様は、TIMP-1が上昇している障害の症状を改善する方法である。TIMP-1のMMP阻害活性を中和するヒト抗体の有効量を、障害を有する患者に投与する。それによって障害の症状が改善される。
【0036】
本発明のさらなる態様は、試験調製物中のTIMP-1を検出する方法である。試験調製物を、TIMP-1に特異的に結合するヒト抗体に接触させる。試験調製物を抗体TIMP-1複合体の存在についてアッセイする。
【0037】
本発明のさらにもう一つの態様は、TIMP-1レベルが上昇している障害を診断するために役立つ方法である。障害を有することが疑われる患者からの試料を、TIMP-1に結合するヒト抗体に接触させる。試料を、抗体-TIMP-1複合体の存在についてアッセイする。正常試料中の複合体の量以上である複合体量が検出されれば、障害を有する可能性がある患者が同定される。
【0038】
本発明はこのように、TIMP-1に結合して、TIMP-1のMMP-阻害活性を中和するヒト抗体を提供する。これらの抗体は、とりわけ診断および治療法において用いることができる。
【0039】
発明の詳細な説明
本発明は、TIMP-1に結合するヒト抗体を提供する。これらの抗体は、多様な治療および診断目的にとって有用である。
【0040】
ヒトTIMP-1抗体の特徴
本明細書において用いられる「抗体」には、無傷の免疫グロブリン分子(例えば、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgM、IgD、IgE、IgA)と共に、ヒトおよび/またはラットTIMP-1蛋白質のエピトープに特異的に結合することができるFab、F(ab')2、scFv、およびFvのようなその断片が含まれる。TIMP-1に特異的に結合する抗体は、免疫化学アッセイにおいて用いた場合に他の蛋白質によって提供される検出シグナルより少なくとも5、10、または20倍高い検出シグナルを提供する。好ましくは、ヒトおよび/またはラットTIMP-1に特異的に結合する抗体は、免疫化学アッセイにおいて他の蛋白質を検出せず、溶液からTIMP-1を免疫沈殿することができる。
【0041】
TIMP-1に対するヒト抗体結合のKdは、リアルタイム生体分子相互作用分析(BIA)(Sjolander and Urbaniczky、Anal. Chem. 63、2338〜45、1991、およびSzaboら、Curr. Opin. Struct. Biol. 5:699〜705、1995)のような技術を含む当技術分野で既知の如何なる方法も用いてアッセイすることができる。BIAは、如何なる相互作用物質も標識せずに、生体特異的相互作用をリアルタイムで研究する技術(例えば、BIAcore(商標))である。光学現象である表面プラズモン共鳴(SPR)の変化を生体分子間のリアルタイム相互作用の指標として用いることができる。
【0042】
BIAcore(商標)アッセイにおいて、本発明のいくつかのヒト抗体は、Kd約0.1 nM〜約10μM、約2 nM〜約1μM、約2 nM〜約200 nM、約2 nM〜約150 nM、約50 nM〜約100 nM、約0.2 nM〜約13 nM、約0.2 nM〜約0.5 nM、約2 nM〜約13 nM、および約0.5 nM〜約2 nMでヒトTIMP-1に特異的に結合する。より好ましいヒト抗体は、約0.2 nM、約0.3 nM、約0.5 M、約0.6 nM、約2 nM、約7 nM、約10 nM、約11 nMおよび約13 nMからなる群より選択されるKdでヒトTIMP-1に特異的に結合する。
【0043】
本発明の他のヒト抗体は、Kd約0.1 nM〜約10μM、約2 nM〜約1μM、約2 nM〜約200 nM、約2 nM〜約150 nM、約50 nM〜約100 nM、約1.3 nM〜約13 nM、約1.8 nM〜約10 nM、約2 nM〜約9 nM、約1.3 nM〜約9 nM、および約2 nM〜約10 nMでヒトTIMP-1に特異的に結合する。好ましいKdの範囲は、約0.8 nM、約1 nM、約1.3 nM、約1.9 nM、約2 nM、約3 nM、約9 nM、約10 nM、約13 nM、約14 nM、および約15 nM〜である。
【0044】
好ましくは、本発明の抗体は、TIMP-1のMMP阻害活性を中和する。MMPは、例えばMMP-1、MMP-2、MMP-3、MMP-7、MMP-8、MMP-9、MMP-10、MMP-11、MMP-12、MMP-13、MMP-19、MMP-20、またはMMP-23でありうる。
【0045】
TIMP-1のMMP阻害活性を中和するためのIC50は、当技術分野で既知の如何なる手段によっても測定することができる。好ましくは、IC50は、Bickettら、Anal. Biochem. 212、58〜64、1993に記載される高処理能蛍光発光アッセイを用いて決定される。典型的な蛍光発光アッセイにおいて、ヒトTIMP-1 MMP阻害活性を中和するためのヒト抗体のIC50は、約0.1 nM〜約200 nM、約1 nM〜約100 nM、約2 nM〜約50 nM、約5 nM〜約25 nM、約10 nM〜約15 nM、約0.2 nM〜約11 nM、約0.2 nM〜約4 nM、および約4 nM〜約11 nMの範囲である。いくつかのヒト抗体のヒトTIMP-1 MMP阻害活性を中和するためのIC50は、約0.2 nM、約0.3 nM、約0.4 nM、約4 nM、約7 nM、約9 nM、および約11 nMである。
【0046】
ラットTIMP-1 MMP阻害活性を中和するための典型的なIC50は、約0.1 nM〜約300 nM、約1 nM〜約100 nM、約2 nM〜約50 nM、約5 nM〜約25 nM、約10 nM〜約15 nM、約1.1 nM〜約14 nM、約1.6 nM〜約11 nM、約3 nM〜約7 nM、約1.1 nM〜約7 nM、約1.1 nM〜約11 nM、約3 nM〜約11 nM、および約3 nM〜約14 nMの範囲である。いくつかのヒト抗体のラットTIMP-1 MMP阻害活性を中和するためのIC50は、約1.1 nM、約1.6 nM、約3 nM、約7 nM、約11 nM、約14 nM、約19 nM、約20 nM、約30 nM、および約100 nMである。
【0047】
本発明の好ましいヒト抗体は、TIMP-1に対する結合に関するKdと、TIMP-1のMMP-阻害活性を中和するためのIC50とがほぼ等しい抗体である。
【0048】
上記のTIMP-結合およびMMP-阻害活性中和特徴を有する多くのヒト抗体が、MorphoSys HuCAL(登録商標)Fab 1ライブラリをスクリーニングすることによって同定されている。HuCAL(登録商標)ライブラリのために構築したCDRカセットは、95〜102位までの枝を含む長さがアミノ酸残基5〜28個の範囲の分布を有するようにデザインされた。Knappikら、J. Mol. Biol. 296、57〜86、2000。しかし、いくつかのクローンはより短いVHCDR3領域を有していた。実際に、それらが全てVH312と比較的短いVHCDR3領域、典型的にアミノ酸4個との組み合わせを示すことは、このライブラリから同定された抗ヒトTIMP-1ヒト抗体の顕著な特徴である。
【0049】
本発明のいくつかの態様において、ヒト抗体のVHCDR3領域は、配列番号:1〜43に示すアミノ酸配列を有する。本発明の他の態様において、ヒト抗体のVLCDR3領域は、配列番号:44〜86に示すアミノ酸配列を有する。表2、3、および7を参照のこと。上記および表2、3、および7に記載した抗体のような抗体のTIMP-1結合特徴およびMMP-阻害活性中和特徴を有するヒト抗体も同様に、本発明のヒト抗体である。
【0050】
ヒト抗体を得る
上記のTIMP-1結合およびMMP活性中和特徴を有するヒト抗体は、以下のようにMorphoSys HuCAL(登録商標)ライブラリから同定することができる。例えば、ヒトまたはラットTIMP-1をマイクロタイタープレートにコーティングして、MorphoSys HuCAL(登録商標)Fabファージライブラリと共にインキュベートする(下記の実施例1を参照のこと)。TIMP-1に結合しないそれらのファージ結合Fabは、プレートから洗浄することができ、それによってTIMP-1に強く結合しているファージのみが残る。結合したファージは、例えばpHの変化によって、または大腸菌と共に溶出することによって溶出して、大腸菌宿主の感染によって増幅することができる。この選別プロセスは、TIMP-1に強く結合する抗体集団を濃縮するために1回または2回繰り返すことができる。濃縮したプールからのFabをELISAアッセイにおいて発現、精製、およびスクリーニングする。次に、同定されたヒットをBickettら、1993、およびBoddenら、1994に記載される酵素アッセイにおいてスクリーニングする。ペプチドの分解に至るそれらのFabは、TIMP-1に結合して、それによっておそらくMMP-1とのその相互作用を遮断するFabである。
【0051】
HuCAL(登録商標)Fab 1ライブラリの初回選別も同様に、ラウンド1において抗原としてのTIMP-1について行うことができ、ラウンド2ではBSAまたはトランスフェリンのような担体蛋白質に融合したTIMP-1ペプチドについて行い、そしてラウンド3ではTIMP-1について再度行うことができる。選別のために用いることができるヒトTIMP-1ペプチドには、ヒトTIMP-1残基2〜12位
28〜36位
64〜75位
64〜79位
および145〜157位
が含まれる。これらのペプチド配列は、MMPと相互作用すると予想されるヒトTIMP-1の領域から選択される。Gomis-Ruthら、Nature 389、77〜81、1997を参照のこと。ラウンド2においてヒトTIMP-1のMMP-相互作用領域にFabを向ければ、ヒトTIMP-1のヒトMMP-1活性阻害能を遮断することができるFabを同定する可能性が増加するはずである。
【0052】
中和Fabを単離する可能性を改善するために用いることができるもう一つの方法は、ヒトTIMP-1について選別して、ヒトMMP-1によって結合したFabを溶出することである。この戦略によって、そうでなければ得られないであろうより高い親和性の抗体が得られるはずである。
【0053】
スクリーニングプロセスの詳細を、下記の特定の実施例に記述する。非常に活性な特異的抗体または抗体断片に関する他の選択法は、当業者によって想起され、ヒトTIMP-1抗体を同定するために用いることができる。
【0054】
上記の特徴を有するヒト抗体も同様に、抗体をコードする発現構築物をトランスフェクトした宿主細胞を含む、抗体を発現する如何なる細胞からも精製することができる。宿主細胞は、それによってヒト抗体が発現される条件で培養される。精製ヒト抗体は、当技術分野で周知の方法を用いて、特定の蛋白質、糖質、または脂質のような、細胞において抗体と通常会合する他の成分から分離されている。そのような方法には、サイズ排除クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム分画、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、および調整的ゲル電気泳動が含まれるがこれらに限定されない。精製ヒト抗体の調製物は少なくとも80%純粋であり、好ましくは調製物は90%、95%、または99%純粋である。調製物の純度は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動のような当技術分野で既知の如何なる手段によっても評価することができる。本発明の精製ヒト抗体の調製物は、上記のTIMP-1結合および中和特徴を有するヒト抗体の一つ以上のタイプを含むことができる。
【0055】
または、ヒト抗体は、固相技術を用いた直接ペプチド合成によるような、そのアミノ酸配列を合成する化学法を用いて作製することができる(Merrifield、J. Am. Chem. Soc. 85、2149〜54、1963;Robergeら、Science 269:202〜04、1995)。蛋白質合成は、手動の技術を用いて、または自動によって行うことができる。自動合成は、例えば、アプライドバイオシステムズ431Aペプチドシンセサイザー(パーキンエルマー社)を用いて行うことができる。選択的に、ヒト抗体の断片は、化学法を用いて個々に合成して組み合わせ、完全長の分子を作製することができる。
【0056】
新たに合成された分子は、高速液体クロマトグラフィーによって実質的に精製することができる(例えば、Creighton、「PROTEINS:STRUCTURES AND MOLECULAR PRINCIPLES」、WH Freeman and Co.、ニューヨーク、ニューヨーク州、1983)。合成ポリペプチドの組成は、アミノ酸分析またはシークエンシングによって確認することができる(例えば、エドマン分解を用いて)。
【0057】
ヒト抗体の治療的有用性の評価
特定の抗体が、例えば肝線維症を治療するために治療的に有用となりうるか否かを評価するために、抗体をラット肝線維症モデルにおいてインビボで試験することができる。このように、本発明の好ましいヒト抗体は、ヒトとラット双方のTIMP-1活性を遮断することができる。望ましければ、ヒトFab TIMP-1抗体は、治療評価を行う前に、完全な免疫グロブリン、例えばIgG1抗体に変換することができる。この変換は、下記の実施例5に記述する。
【0058】
ヒトおよびラットTIMP-1と交叉反応する抗体を同定するために、ラットTIMP1を用いてELISAを行うことができる。機能的交叉反応性は、Bickettら、Anal. Biochem. 212:58〜64、1993に記述されるように酵素アッセイにおいて確認することができる。アッセイは、ヒトもしくはラットTIMP-1、ヒトMMP-1、またはラットMMP-13(ヒトMMP-1のラット相対物)、および合成蛍光原ペプチド基質を利用する。非複合体形成MMP-1(またはMMP-13)の酵素活性は、蛍光シグナルの増加を観察することによって評価する。
【0059】
ヒトおよび/またはラットTIMP-1活性を遮断する抗体は、HepG2細胞培養においてTIMP-1/MMP-1複合体形成の減少を検出するELISAアッセイにおいてスクリーニングすることができる。この基準を満たす抗体を、治療的有効性を評価して、この有効性をインビトロで抗体がMMP-1のTIMP-1阻害を遮断できることと相関させるために、ラット肝線維症モデルにおいて調べることができる。
【0060】
次に、ラット肝線維症モデルにおいて治療有効性を示す抗体をインビトロ酵素アッセイにおいてTIMP-2、-3、および-4の結合および遮断に関して調べることができる。肝線維症または他のTIMP-関連病態における有効性にとって必要なTIMPの最小数を遮断することは、起こりうる副作用を最小限にするために好ましい。
【0061】
ヒトTIMP-1抗体をコードするポリヌクレオチド
本発明はまた、ヒトTIMP-1抗体をコードするポリヌクレオチドを提供する。これらのポリヌクレオチドは、例えば、治療または診断的用途のために抗体の量を産生するために用いることができる。
【0062】
配列番号:1〜43に示すVHCDR3領域をコードするために用いることができるポリヌクレオチドをそれぞれ、配列番号:226〜268に示す。配列番号:44〜86に示すVLCDR3領域をコードするために用いることができるポリヌクレオチドをそれぞれ、配列番号:183〜225に示す。MorphoSys HuCAL(登録商標)ライブラリから単離された本発明のヒト抗体の重鎖(配列番号:140〜182)および軽鎖(配列番号:97〜139)をコードするポリヌクレオチドをそれぞれ、配列番号:269〜311および配列番号:312〜354に示す。
【0063】
宿主細胞に存在する本発明のポリヌクレオチドは、膜成分、蛋白質、および脂質のような他の細胞成分を含まずに単離することができる。ポリヌクレオチドは、細胞によって産生されてもよく、標準的な核酸精製技術を用いて単離してもよく、またはポリメラーゼ連鎖反応のような増幅技術または自動シンセサイザーを用いて合成してもよい。ポリヌクレオチドを単離する方法は一般的で当技術分野で既知である。ポリヌクレオチドを得るための如何なるそのような技術も用いて、本発明の抗体をコードする単離されたポリヌクレオチドを得ることができる。例えば、制限酵素およびプローブを用いて抗体をコードするポリヌクレオチドを単離することができる。単離されたポリヌクレオチドは、他の分子を少なくとも70、80、または90%含まない調製物に存在する。
【0064】
ヒト抗体をコードする本発明のDNA分子は、鋳型としてmRNAを用いる標準的な分子生物学技術を用いて作製することができる。その後、DNA分子は、当技術分野で既知の、そしてSambrookら(1989)のようなマニュアルに開示される分子生物学技術を用いて複製することができる。PCRのような増幅技術を用いて、ポリヌクレオチドのさらなるコピーを得ることができる。
【0065】
または、合成化学技術を用いて、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドを合成することができる。遺伝子コードの縮重により、例えば、配列番号:1〜43、44〜86、97〜139、または140〜182にそれぞれ示されるVHCDR3、VLCDR3、軽鎖または重鎖アミノ酸配列の一つを有する抗体をコードするもう一つのヌクレオチド配列を合成することができる。
【0066】
ポリヌクレオチドの発現
本発明のヒト抗体をコードするポリヌクレオチドを発現させるために、ポリヌクレオチドを、挿入されたコード配列の転写および翻訳のために必要な要素を含む発現ベクターに挿入することができる。当業者に周知の方法を用いて、ヒト抗体をコードする配列、ならびに適当な転写および翻訳制御要素を含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、インビトロ組み換え型DNA技術、合成技術、およびインビボ遺伝子組み換えが含まれる。そのような技術は、例えば、Sambrookら(1989)、およびAusubelら「CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY」、ジョンウィリー&サンズ、ニューヨーク、ニューヨーク州、1995に記載されている。同様に下記の実施例1〜3を参照のこと。
【0067】
多様な発現ベクター/宿主系を利用して、本発明のヒト抗体をコードする配列を含み発現させることができる。これらには、組み換え型バクテリオファージ、プラスミド、またはコスミドDNA発現ベクターによって形質転換した細菌のような微生物;酵母発現ベクターによって形質転換した酵母;ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)もしくは細菌発現ベクター(例えば、TiもしくはpBR322プラスミド)によって形質転換した植物細胞系、または動物細胞系が含まれるがこれらに限定されない。
【0068】
制御要素または調節配列は、宿主細胞蛋白質と相互作用して転写および翻訳を行うベクターの非翻訳領域、すなわちエンハンサー、プロモーター、5'および3'非翻訳領域である。そのような要素は、その効力および特異性が変化しうる。用いるベクター系および宿主に応じて、構成的および誘導型プロモーターを含む如何なる数の適した転写および翻訳要素も用いることができる。例えば、細菌系においてクローニングする場合、BLUESCRIPTファージミド(ストラタジーン社、ラホヤ、カリフォルニア州)またはpSPORT1プラスミド(ライフテクノロジーズ社)のハイブリッドlacZプロモーター等のような誘導型プロモーターを用いることができる。バキュロウイルスポリヘドリンプロモーターは、昆虫細胞において用いることができる。植物細胞のゲノム(例えば、熱ショック、RUBISCO、および貯蔵蛋白質遺伝子)、または植物ウイルス(例えば、ウイルスプロモーターまたはリーダー配列)に由来するプロモーターまたはエンハンサーを、ベクターにクローニングすることができる。哺乳類細胞系において、哺乳類遺伝子または哺乳類ウイルスからのプロモーターが好ましい。ヒト抗体をコードするヌクレオチド配列の多数のコピーを含む細胞株を作製する必要がある場合、SV40またはEBVに基づくベクターを適当な選択マーカーと共に用いることができる。
【0069】
ヒトTIMP-1抗体の大規模産生は、Wurmら、Ann. N.Y. Acad. Sci. 782:70〜78、1996およびKimら、Biotechnol. Bioengineer. 58:73〜84、1998に記載される方法のような方法を用いて行うことができる。
【0070】
薬学的組成物
上記の如何なるヒトTIMP-1抗体も、薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物において提供することができる。薬学的に許容される担体は好ましくは、非発熱性である。組成物は、単独で、または安定化化合物のような少なくとも一つの他の物質と併用して投与することができ、これらは、生理食塩液、緩衝生理食塩液、デキストロース、および水を含むがこれらに限定されない如何なる滅菌の生体適合性の薬学的担体において投与することができる。多様な水溶性担体、例えば0.4%生理食塩液、0.3%グリシン等を用いてもよい。これらの溶液は無菌であり、一般的に微粒子状物質を含まない。これらの溶液は、通常の周知の滅菌技術(例えば、濾過)によって滅菌してもよい。組成物は、pH調節剤および緩衝剤等のような生理的条件を近似するために必要であれば、薬学的に許容される補助物質を含んでもよい。そのような薬学的製剤における本発明の抗体の濃度は、広く、すなわち重量の約0.5%未満、通常約1%または少なくとも約1%から15もしくは20%まで変化させることができ、選択される特定の投与様式に従って、液体の容積、粘度等に主に基づいて選択されるであろう。米国特許第5,851,525号を参照のこと。望ましければ、ヒト抗体、例えば、TIMP-1結合のKdが異なる、またはMMP阻害活性中和のIC50が異なるヒト抗体の一つ以上のタイプを薬学的組成物に含めることができる。
【0071】
組成物は、患者に単独で、または他の物質、薬剤、もしくはホルモンと併用して投与することができる。活性成分の他に、これらの薬学的組成物は、薬学的に用いることができる調製物への活性化合物の処理を容易にする賦形剤および補助剤を含む適した薬学的に許容される担体を含みうる。本発明の薬学的組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、脳室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、非経口、局所、舌下、または直腸内手段を含むがこれらに限定されない多数の経路によって投与することができる。
【0072】
薬学的組成物を調製した後、それらを適当な容器に入れて表記の病態の治療に関するラベルを貼ることができる。そのようなラベルには投与の量、回数、および方法が含まれるであろう。
【0073】
ヒトTIMP-1のMMP-阻害活性を減少させる方法
本発明は、ヒトまたはラットTIMP-1のMMP阻害活性を減少させる方法を提供する。そのような方法は、下記のように、または研究の状況において治療的に用いることができる。このように、方法は、無細胞系、細胞培養系、またはインビボで行うことができる。ヒトまたはラットのTIMP-1のMMP阻害活性を減少させるインビボ法を以下に記述する。
【0074】
ヒトTIMP-1を、ヒトTIMP-1に結合するヒト抗体に接触させて、それによって抗体の非存在下でのヒトTIMP-1活性と比較してヒトTIMP-1のMMP阻害活性を減少させる。抗体は、無細胞系、細胞培養系、または動物被験者もしくは患者に直接加えることができ、または抗体をコードする発現ベクターによって提供されうる。
【0075】
診断法
本発明はまた、ヒトまたはラットTIMP-1を、血清、肺、肝臓、心臓、腎臓、結腸、細胞培養系、または無細胞系(例えば、組織ホモジネート)の試料を含むがこれらに限定されない試験調製物において検出することができる診断法を提供する。そのような診断法は、例えばTIMP-1が上昇している障害を診断するために用いることができる。そのような障害には、肝線維症、アルコール性肝疾患、心線維症、急性心症候群、ループス腎炎、糸球体硬化性腎疾患、良性前立腺過形成、肺癌、結腸癌、および特発性肺線維症が含まれるがこれらに限定されない。診断のために用いる場合、患者からの試験試料中に検出される抗体-TIMP-1複合体の量が正常試料における複合体の量より多ければ、患者が障害を有する可能性があることが同定される。
【0076】
試験調製物を本発明のヒト抗体に接触させて、次に、試験調製物を抗体-TIMP-1複合体の存在に関してアッセイする。望ましければ、ヒト抗体は、蛍光、放射性同位元素、化学発光、またはホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、もしくはルシフェラーゼのような酵素標識のような検出可能な標識を含みうる。
【0077】
選択的に、抗体は、アッセイの自動化に適応させることができる固相支持体に結合させることができる。適した固相支持体には、ガラスまたはプラスチックのスライド、組織培養プレート、マイクロタイターウェル、チューブ、シリコンチップ、またはビーズのような粒子(ラテックス、ポリスチレン、もしくはガラスビーズを含むがこれらに限定されない)が含まれるがこれらに限定されない。共有結合および非共有結合、受動的吸収、または抗体と固相支持体とに結合させた結合部分対を用いることを含む当技術分野で既知の如何なる方法も用いて、固相支持体に抗体を結合させることができる。TIMP-1と抗体との結合は、反応物質を含むために適した如何なる容器において行うこともできる。そのような容器の例には、マイクロタイタープレート、試験管、および微量遠心管が含まれる。
【0078】
治療方法
本発明はまた、TIMP-1が上昇している障害の症状を改善する方法を提供する。これらの障害には、肝線維症、アルコール性肝疾患、心線維症、急性冠血管症候群、ループス腎炎、糸球体硬化性腎疾患、特発性肺線維症、良性前立腺過形成、肺癌、結腸癌および瘢痕化が含まれるがこれらに限定されない。例えば、Inokuboら、Am. Heart J. 141:211〜17、2001;Ylisirnioら、Anticancer Res. 20:1311〜16、2000;Holten-Andersenら、Clin. Cancer Res. 6:4292〜99、2000;Holten-Andersenら、Br. J. Cancer 80:495〜503、1999;Petersonら、Cardiovascular Res. 46:307〜15、2000;Arthurら、Alcoholism:Clinical and Experimental Res. 23:840〜43、1999;Iredaleら、Hepatol. 24:176〜84、1996を参照のこと。
【0079】
本発明のヒト抗体は、肝線維症を治療するために特に有用である。慢性肝疾患は全て、肝臓において線維症の発症を引き起こす。線維症は、プログラムされた均一な創傷治癒反応である。外来蛋白質によって引き起こされた毒性の障害または損傷は、コラーゲン、フィブロネクチン、およびラミニンのような細胞外マトリクスの沈着を引き起こす。肝線維症および肝硬変は、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、嚢胞性線維症、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、および非アルコール性脂肪性肝炎と共に化学的損傷のような肝臓の慢性変性疾患によって引き起こされうる。
【0080】
細胞外マトリクス(特にコラーゲン)の分解および合成の変化は、肝線維症の発病において中心的な役割を有する。初期相において、肝星細胞(HSC)が最初に活性化されて、正常な肝マトリクスの分解能を有するマトリクスメタロプロテアーゼを放出する。HSCが十分に活性化されると、組織メタロプロテアーゼ阻害剤(TIMP)-1および-2の合成の増加および細胞外放出によって媒介されるマトリクス分解の真のダウンレギュレーションが起こる。肝線維症のあいだのメタロプロテアーゼ活性を動的に調節することによって、それらおよびその阻害剤が治療介入の標的となる。
【0081】
本発明のヒト抗体はまた、肺線維症を治療するために特に有用である。肺気道線維症は、慢性喘息患者における気道リモデリングの重要な特徴であるため、本発明のヒト抗体も同様に、慢性喘息患者にとって特に有用である。気道リモデリングは、慢性喘息患者において十分に認識された特徴である。TIMP-1レベルはグルココルチコイド処置被験者または対照者(p<0.0001)と比較して無処置の喘息被験者において有意に高く、MMP-1、MMP-2、MMP-3、およびMMP-9を合わせたよりかなり高かったが、TIMP-2レベルはそうではなかった(Mautinoら、Am. J. Respir. Crit. Care Med. 1999、160:324〜330)。TIMP-1 mRNAおよび蛋白質発現は、ブレオマイシン誘導肺線維症のマウスモデルにおいて選択的および顕著に増加する(Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 24:599〜607、2001)。喘息患者においてMMPが増加することなくTIMP-1がこのように特異的に上昇することは、抗体によってTIMP-1を阻害すれば、肺における正常なコラーゲン分解を回復しうることを示唆している。
【0082】
本発明のヒト抗体は、癌を治療するために特に有用である。TIMP-1蛋白質は、結腸(Holten-Andersenら、Br. J. Cancer 1999、80:495〜503)および前立腺(Jungら、Int. J. Cancer、1997、74:220〜223)癌患者の血漿において上昇することが判明し、高いTIMP-1血漿レベルは、結腸癌の不良な臨床転帰と相関する(Holten-Andersenら、Clin. Cancer Res. 2000、6:4292〜4299)。TIMP-1は、乳腺腫瘍形成クローン細胞株の用量依存的な増殖およびチロシン燐酸化を誘導する(Luparelloら、Breast Cancer Res. Treat、1999、54:235〜244)。したがって、TIMP-1に対する抗体を用いると、その癌の誘導能を遮断する可能性がある。
【0083】
ヒトTIMP-1抗体は、術後(特に眼科手術)または損傷(火傷、擦過傷、挫傷、切り傷、または裂傷)後の瘢痕形成のような瘢痕形成を予防または減少させるために用いることができる。
【0084】
本発明の一つの態様において、本発明のヒト抗体の治療的有効量を、上記の障害のようなTIMP-1が上昇している障害を有する患者に投与する。細胞外マトリクスの沈着と共に組織または臓器機能の喪失を含む障害の症状は、それによって改善される。
【0085】
治療的有効量の決定
治療的有効量の決定は、十分に当業者の能力範囲内である。治療的有効量は、治療的有効量の非存在下で起こる活性と比較してTIMP-1のMMP-阻害活性を減少させるヒト抗体の量を意味する。
【0086】
治療的有効量は、細胞培養アッセイまたは動物モデル、通常、ラット、マウス、ウサギ、イヌ、またはブタのいずれかにおいて最初に推定することができる。動物モデルはまた、適当な濃度範囲および投与経路を決定するために用いることができる。次に、そのような情報を用いて、ヒトにおける有用な用量および投与経路を決定することができる。ラット肝線維症モデルを実施例6に記載する。
【0087】
治療的有効性および毒性、例えば、ヒト抗体のED50(集団の50%において治療的に有効な用量)およびLD50(集団の50%に対して致死的である用量)を、細胞培養または実験動物において標準的な薬学的技法によって決定することができる。毒性対治療効果の用量比が治療指数であり、比LD50/ED50として表記することができる。
【0088】
大きい治療指数を示す薬学的組成物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータは、ヒトで用いるための用量範囲を処方するために用いられる。そのような組成物に含まれる用量は、好ましくは毒性をほとんどまたは全く示さないED50を含む循環濃度の範囲内である。用量は、用いる投与剤形、患者の感受性、および投与経路に応じてこの範囲内で変化する。
【0089】
正確な用量は、治療を必要とする患者に関連する要因に照らして医師が決定するであろう。用量および投与は、ヒト抗体の有意なレベルを提供するために、または所望の作用を維持するために調節される。考慮に入れることができる要因には、疾患状態の重症度、被験者の全身健康、被験者の年齢、体重、および性別、食事、投与時期および回数、薬物併用、反応感受性、治療に対する認容性/反応が含まれる。長時間作用型の薬学的組成物は、特定の製剤の半減期およびクリアランス速度に応じて3〜4日毎、1週間毎、または2週間に1回投与することができる。
【0090】
本発明のヒト抗体をコードするポリヌクレオチドは、トランスフェリン-ポリ陽イオン媒介DNA移入、裸または封入された核酸によるトランスフェクション、リポソーム媒介細胞融合、DNAコーティングラテックスビーズの細胞内輸送、プロトプラスト融合、ウイルス感染、電気穿孔、「遺伝子ガン」およびDEAEまたは燐酸カルシウム媒介トランスフェクションを含むがこれらに限定されないエクスビボまたはインビボのいずれかで構築して細胞に導入することができる。
【0091】
抗体の有効なインビボ用量は、患者の体重の約5 mg〜約50 mg/kg、約50 mg〜約5 mg/kg、約100 mg〜約500 mg/kg、および患者の体重の約200〜約250 mg/kgの範囲である。抗体をコードするポリヌクレオチドを投与するための有効なインビボ用量は、約100 ng〜約200 ng、500 ng〜約50 mg、約1 mg〜約2 mg、約5 mg〜約500 mg、および約20 mg〜約100 mg DNAの範囲である。
【0092】
本発明のヒト抗体含有薬学的組成物の投与様式は、宿主に抗体を輸送する如何なる適した経路でもありうる。本発明の薬学的組成物は、非経口投与、すなわち皮下、筋肉内、静脈内、または鼻腔内投与のために特に有用である。
【0093】
本開示において引用した全ての特許、特許出願、および参考文献は、特別に参照として本明細書に組み入れられる。上記の開示は本発明を一般的に説明している。より完全な理解は、説明する目的に限って提供され、本発明の範囲を制限するとは解釈されない以下の特定の実施例を参照することによって得ることができる。
【0094】
実施例1
ヒト複合抗体ライブラリ(HuCAL(登録商標)Fab 1)の構築
HuCAL(登録商標)Fab 1のクローニング。HuCAL(登録商標)Fab 1は、Fab抗体断片フォーマットでの完全な合成モジュール性ヒト抗体ライブラリである。HuCAL(登録商標)Fab 1は、一本鎖フォーマットでの抗体ライブラリから開始して構築した(HuCAL(登録商標)-scFv;Knappikら、J. Mol. Biol. 296:55、2000)。HuCAL(登録商標)Fab 1を、ファージミド発現ベクターpMORPH(登録商標)18 Fab 1(図3)にクローニングした。このベクターは、C-末端で、糸状ファージの切断された遺伝子III蛋白質に融合したphoAシグナル配列を有するFd断片を含み、さらに、ompAシグナル配列を有する軽鎖VL-CLを含む。双方の鎖は、lacオペロンの制御下である。定常ドメインC?、C?、およびCHは、HuCAL(登録商標)のモジュール系と完全に適合性の合成遺伝子である(Knappikら、2000)。
【0095】
第一に、V?およびV?ライブラリをHuCAL(登録商標)-scFvから単離した。プライマー
および
を用いて、V?l断片をPCRサイクル(Pwoポリメラーゼ)15回によって増幅した。PCR産物はEcoRV/DraIIIによって消化してゲル精製した。VL?鎖は、EcoRV/BsiWIによる制限消化物から得て、ゲル精製した。これらのV?およびV?ライブラリをそれぞれ、EcoRV/DraIIIおよびEcoRV/BsiWIによって切断したpMORPH(登録商標)18 Fab1にクローニングした。ライゲーションして大腸菌TG-1において形質転換した後、ライブラリサイズ4.14×108および1.6×108個を得たが、これはいずれもHuCAL(登録商標)-scFvのV?多様性を超えた。
【0096】
同様に、VHライブラリは、StyI/MunIを用いて制限消化によってHuCAL(登録商標)-scFvから単離した。このVHライブラリを、StyI/MunIによって切断したpMORPH(登録商標)18-V?およびV?ライブラリにクローニングした。ライゲーションして大腸菌TG-1において形質転換した後、全体的なライブラリサイズ2.09×1010個を得て、67%が正確なクローンであった(クローン207個のシークエンシングによって同定)。
【0097】
ファージミドの救出、ファージの増幅および精製。 HuCAL(登録商標)Fabを、34μg/mlクロラムフェニコールおよび1%グルコースを含む2×TY培地(2×TY-CG)において増幅させた。ヘルパーファージ(VCSM13)を37℃、OD600約0.5で感染させた後、2×TY/34μg/mlクロラムフェニコール/50μg/mlカナマイシンにおいて遠心および再懸濁した後、細胞を30℃で一晩増殖させた。ファージを上清からPEG沈殿させた後(Ausubelら、1998)、PBS/20%グリセロールに再浮遊させて、−80℃で保存した。2回の選別ラウンドのあいだのファージ増殖は以下のように行った:溶出したファージを対数中期TG1細胞に感染させて、1%グルコースおよび34μg/mlクロラムフェニコールを添加したLB-寒天に播種した。30℃で一晩インキュベートした後、コロニーを掻き取ってOD600 0.5に調節した。ヘルパーファージを上記のように添加した。
【0098】
実施例2
固相選別
MaxiSorp(商標)マイクロタイタープレート(ヌンク社)のウェルを、PBSに溶解して50μg/mlに希釈した(2μg/ウェル)ラットまたはヒトTIMP蛋白質によってコーティングした。5%脱脂粉乳のPBS溶液によってブロッキングした後、上記のように精製したHuCAL(登録商標)Fabファージ1〜5×1012個を20℃で1時間加えた。数回の洗浄段階の後、結合したファージを100 mMトリエチルアミンによるpH溶出によって放出した後、1 Mトリス塩素、pH 7.0によって中和した。Krebsら、J. Immunol. Meth. 254:67、2001を参照のこと。2〜3ラウンドの選別を行い、上記のように各ラウンドのあいだにファージの増殖を行った。
【0099】
実施例3
溶液の選別
ビオチン結合抗原をPBS中40 nMとなるように希釈して、HuCAL(登録商標)-Fab 1ファージ1013個を加えて、20℃で1時間インキュベートした。ファージ抗原複合体をニュートラビジンプレート(ピアス社)上で捕獲した。数回洗浄後、結合したファージを異なる方法によって溶出した(Krebsら、2001)。通常どおり選別2ラウンドを行った。
【0100】
実施例4
選択したFab断片の発現のためのサブクローニング
選択したHuCAL(登録商標)Fab 1断片のFabコードインサートを、可溶性Fabの迅速な発現を促進するために、発現ベクターpMORPH(登録商標)×7_FS(Knappikら、J. Mol. Biol. 296:55、2000)にサブクローニングした。選択したHuCAL(登録商標)Fab 1クローンのDNA調製物をXbaI/EcoRIによって消化した後、Fabコードインサート(ompA-VLおよphoA-Fd)を切り出した。精製したインサートを、scFv-インサートを既に有するXbaI/EcoRI切断ベクターpMORPH(登録商標)×7にサブクローニングすると、pMORPH(登録商標)×9_Fab1_FS(図4)と命名されるFab発現ベクターが作製される。このベクターにおいて発現されたFabは、検出および精製のために二つのC-末端タグ(FLAG(商標)およびStrep-tagII)を有する。
【0101】
実施例5
TIMP結合Fab断片のELISAによる同定
384ウェルMaxiSorp ELISAプレートのウェルを、コーティング緩衝液によって濃度5μg/mlに希釈したラットTIMPまたはヒトTIMPの20μl/ウェル溶液によってコーティングした。発現ベクターpMORPH(登録商標)×9_FSからの大腸菌TG-1における個々のFabの発現は、0.5 mM IPTGによって30℃で12時間誘導した。可溶性Fabは、浸透圧ショックによって(Ausubelら、1998)ペリプラスムから抽出して、ELISAに用いた。Fab断片は、アルカリホスファターゼ結合抗Fab抗体(ディアノバ(Dianova)社)と共にインキュベートした後、Attophos基質(ロシュ社)によって発色させ、Ex450 nm/Em 535 nmで測定することによって検出した。ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG抗体およびPOD可溶性基質(ロシュディアグノスティックス社)を添加した後370 nmでの値を読み取った。
【0102】
大腸菌におけるHuCAL(登録商標)Fab 1抗体の発現および精製
pMORPH(登録商標)×9_FSによってコードされるFab断片のTG-1細胞における発現は、34μg/mlクロラムフェニコールを添加した2×TY培地1 Lと共に振とうフラスコ培養において行った。0.5 mM IPTGによって誘導した後、細胞を22℃で16時間増殖させた。細胞沈降物のペリプラスム抽出物を調製して、Fab断片をStrep-tactin(登録商標)クロマトグラフィー(IBA社、ゲッティンゲン、ドイツ)によって単離した。見かけの分子量は、較正標準物質を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定した。濃度は、UV分光光度法によって決定した。
【0103】
実施例7
HuCAL(登録商標)免疫グロブリン発現ベクターの構築
重鎖のクローニング。pcDNA3.1+(インビトロジェン社)の多重クローニング部位を除去して(NheI/ApaI)、HuCAL(登録商標)デザインのために用いた制限部位と適合性のスタッファーを、リーダー配列(NheI/EcoRI)、VH-ドメイン(EcoRI/BlpI)、および免疫グロブリン定常領域(BlpI/ApaI)をライゲーションするために挿入した。リーダー配列(EMBL M83133)に、コザック配列(Kozak、1987)を加えた。ヒトIgG1(PIR J00228)、IgG4(EMBL K01316)、および血清IgA1(EMBL J00220)の定常領域を長さ約70塩基の重なり合うオリゴヌクレオチドに分解した。サイレント突然変異を導入して、HuCAL(登録商標)デザインと適合しない制限部位を除去した。オリゴヌクレオチドは、オーバーラップ伸長-PCRによってスプライシングした。
【0104】
軽鎖のクローニング。pcDNA3.1/Zeo+(インビトロジェン社)の多重クローニング部位を二つの異なるスタッファーに置換した。?スタッファーは、?-リーダー(NheI/EcoRV)、HuCAL(登録商標)-scV V?ドメイン(EcoRV/BsiWI)および?-鎖定常領域(BsiWI/ApaI)を挿入するための制限部位を提供した。?スタッファーにおける対応する制限部位は、NheI/EcoRV(?-リーダー)、EcoRV/HpaI(V?-ドメイン)、およびHpaI/ApaI(?鎖定常領域)であった。?-リーダー(EMBL Z00022)と共に?-リーダー(EMBL L27692)はいずれもコザック配列を有した。ヒト?-(EMBL J00241)および?-鎖(EMBL M18645)の定常領域は、上記のように、オーバーラップ伸長-PCRによって構築した。
【0105】
IgG発現CHO細胞の作製。CHO-K1細胞にIgG重鎖および軽鎖発現ベクターの等モル混合物を同時トランスフェクトさせた。600μg/ml G418および300μg/mlゼオシン(インビトロジェン社)によって二重抵抗トランスフェクタントを選択した後、限界希釈を行った。捕獲-ELISA(下記を参照のこと)によって、単一のコロニーの上清をIgG発現に関して評価した。陽性クローンを、10%ウルトラフローIgG-FCS(ライフテクノロジーズ社)を添加したRPMI-1640培地中で増殖させた。上清のpHを8.0 に調節して、濾過滅菌した後、溶液に標準的なプロテインAカラムクロマトグラフィー(Poros 20A、PEバイオシステムズ社)を行った。
【0106】
実施例8
CDR3ライブラリのデザイン
V?の1位と2位。その真正のN-末端を有する当初のHuCAL(登録商標)マスター遺伝子を構築した:V?11:QS(CAGAGC)、V?12:QS(CAGAGC)、およびV?13:SY(AGCTAT)。これらのアミノ酸を含む配列は国際公開公報第97/08320号に示される。HuCAL(登録商標)ライブラリ構築の際、ライブラリのクローニング(EcoRI部位)を容易にするために、最初の2つのアミノ酸をDIに置換する。HuCAL(登録商標)ライブラリは全て、その5'末端にEcoRV部位GATATC(DI)を有するV?1遺伝子を含む。HuCAL(登録商標)カッパ遺伝子(マスター遺伝子およびライブラリにおける全ての遺伝子)は全てその5'末端にDIを含む。
【0107】
VHの1位。その真正のN-末端を有する当初のHuCAL(登録商標)マスター遺伝子を構築した:第一のアミノ酸としてQ(=CAG)を有するVH1A、VH1B、VH2、VH4、およびVH6、ならびに第一のアミノ酸としてE(=GAA)を有するVH3およびVH5。これらのアミノ酸を含む配列は国際公開公報第97/08320号に示されている。HuCAL(登録商標)Fab 1ライブラリにおいて、VH鎖は全て第一位にQ(=CAG)を含む。
【0108】
V?1/V?3の85位。CDR3ライブラリを導入するために用いられるカセット変異誘発技法のために(Knappikら、J. Mol. Biol. 296、57〜86、2000)、V?1およびV?3の85位はTまたはVのいずれかとなりうる。このように、HuCAL(登録商標)scFv 1ライブラリ構築の際に、V?1およびV?3の85位は以下のように変化した:V?1オリジナル、85T(コドンACC);V?1ライブラリ、85Tまたは85V(TRIMコドンACTまたはGTT);V?3オリジナル、85V(コドンGTG);V?3ライブラリ、85Tまたは85V(TRIMコドンACTまたはGTT);同じことがHuCAL(登録商標)Fab 1にも当てはまる。
【0109】
CDR3のデザイン。一定のままであるCDR3残基を全て図1に示す。
【0110】
CDR3の長さ。デザインしたCDR3の長さの分布は以下の通りである。変化した残基を図1においてブラケット(×)で示す。VカッパCDR3、アミノ酸残基8個(89位〜96位)(時に残基7個)、Q90は固定;VラムダCDR3、アミノ酸残基8〜10個(89〜96位)(時に残基7〜10個)、Q89、S90、およびD92は固定;ならびにVH CDR3、アミノ酸残基5〜28個(95〜102位)(時に4〜28位)、D101は固定。
【0111】
実施例9
慢性的な四塩化炭素誘発肝線維症
Sprague Dawley系ラット(200〜220 g)を肝線維症のインビボモデルにおいて用いる。四塩化炭素代謝のミクロソーム代謝を最大に誘導するために、四塩化炭素を投与する1週間前から始めて、動物に飲料水によって1 g/Lイソニアジドを投与する。四塩化炭素(鉱油中に1:1)を0.2 ml/100 g体重の用量で5日毎に経口投与する。ヒトTIMP-1抗体を、四塩化炭素処置期間のあいだ1回または繰り返し静脈内投与する。処置5〜7週間後に剖検を行う。McLeanら、Br. J. Exp. Pathol. 50:502〜06、1969。
【0112】
肝組織の横断面円柱を右肝葉から切除して、ホルムアルデヒド中で固定し、パラフィンに包埋する。肝臓における線維症の量は、ピクロシリウス赤染色線維症領域によって示される。ピクロシリウス陽性領域は各切片においていくつかの中心葉領域に示される。色の検出パラメータを標準化して、実験を通して一定に維持する。領域は、31 mm2の領域がその範囲に入る標準グリッドを用いて選択する。ライカQuantimed 500 MCシステムを形態測定のために用いる。
【0113】
実施例10
ヒドロキシプロリン測定
ProckopおよびUdenfried(Anal. Biochem. 1:228〜39、1960)の方法に以下の改変を加えて用い、肝組織におけるヒドロキシプロリンの量を測定することができる。湿重量60〜90 mgの肝標本を乾燥させて、6 N HCl中で100℃で17時間加水分解する。加水分解した材料を乾燥させて脱イオン水5 mlに溶解する。この加水分解物200μlをエタノール200 mlおよびクロラミンT溶液200 ml(0.7%クエン酸緩衝液[5.7 g酢酸ナトリウム、3.75 gクエン酸三ナトリウム、0.55 gクエン酸、38.5 mlエタノールを水で100 mlにする])と共に混合して、室温で20分間酸化させる。エールリッヒ試薬(エタノール40 mlおよびH2SO4 2.7 ml中にp-ジメチルアミノベンズアルデヒド12 g)400μlを加える。35℃で3時間インキュベートした後、573 nmでの吸光度を測定する。
【0114】
実施例11
表面プラズモン共鳴測定(BIAcore(商標))による親和性の測定
親和性を測定するために、アフィニティおよびSEC精製Fab断片の単量体分画または精製IgG1分子を用いた。実験は全て、BIAcore(商標)機器において25℃で流速20μl/分でHBS緩衝液において実施した。pH 5.0の100 mM酢酸ナトリウム中の抗原を、標準的なEDC-NHSカップリング化学を用いてCM 5センサーチップにカップリングさせた、5μg/ml TIMP-1 3〜4μlを適用すると、典型的に速度論測定に関して500共鳴単位が得られた。BIA評価ソフトウェアを用いて全てのセンソグラムを球状に適合させた。一価のFab断片に関しては一価の適合(ラングミュア結合)、そしてIgGに関して二価の適合を適用した。
【0115】
実施例12
ヒトTIMP-1/ヒトMMP-1およびラットTIMP-1/ラットMMP-13アッセイにおけるIC50の測定
精製Fab断片またはIgGをIC50測定のために用いた。抗体を、0.05%BSAを含むアッセイ緩衝液によって1試料あたり3本ずつ表記の濃度に希釈した。TIMP(改変ヒトTIMP-1/ヒトMMP-1アッセイにおいて最終濃度、1.2 nMまたは0.4 nM)、MMP(改変ヒトTIMP-1/ヒトMMP-1アッセイにおいて最終濃度、1.2 nMまたは0.4 nM)、およびペプチド基質(最終濃度50μM)を添加して、37℃で1〜3時間インキュベートした後、Ex320 nm/Em430 nmでの蛍光を測定した。
【0116】
以下の対照をアッセイに含めて、IC50測定の参照値として用いた:
A:MMP+基質:この値は、抗体およびTIMPの非存在下で100%MMP活性として定義された。
B:MMP+TIMP+基質:この値は、アッセイにおいて得られた最大阻害として定義され、総MMP活性の%として計算された。
【0117】
阻害の50%逆転が起こる抗体の濃度(IC50)を定義するために、以下の技法を用いた:
・ 阻害の50%逆転の値(%活性MMPとして表記)は、Y=[(A−B)/2]+Bとして計算した。
・ MMP活性はアッセイにおいて抗体濃度に対してプロットした。
・ 阻害の50%逆転が起こる抗体濃度(Y)は、x-軸上で読み取って、IC50として定義した。
・ グラフ上のエラーバーは、一つのアッセイにおいて1試料あたり3個ずつのウェルに由来した。
・ IC50値の標準偏差は、独立した3回のアッセイから計算した。
【0118】
実施例13
CDRカセットの段階的交換による選択したFabの親和性の成熟
選択した抗体断片の親和性および生物活性を増加させるために、CDR領域を、トリヌクレオチド方向変異誘発(Virnekasら、1994)を用いるカセット変異誘発によって最適化した。発現ベクターpMORPH(登録商標)×9におけるFab断片を、EcoRI/XbaI制限部位を用いてファージミドベクターpMORPH(登録商標)_18にクローニングした。いくつかの多様な位置を含むCDRカセットを合成して、独自の制限部位を用いて(Knappikら、2000)pMORPH(登録商標)_18におけるFab断片にクローニングした。親和性成熟ライブラリは、大腸菌TOP10Fへの形質転換によって作製して、ファージを上記のように調製した。改善された親和性を示すFab断片を示すファージは、ストリンジェントな洗浄条件(例えば、1μM非ビオチン結合抗原による競合、または頻繁に緩衝液交換を行う48時間までの洗浄)および抗原の限定量(0.04〜4 nM)を用いて、2〜3ラウンドの溶液選別によって選択した。BIAcore(商標)アッセイを用いてヒトTIMP-1抗体17個を、ヒトTIMP-1(いくつかはラットTIMP-1に対する親和性に関して調べた)に対する親和性に関して調べた。ヒトTIMP-1およびラットTIMP-1に対するこれらの抗体のKd値を表1に示す。
【0119】
(表1)種交叉反応性Fabの概要
* 標準偏差を示している場合では、3回の異なる蛋白質発現/精製について3回の独立した測定を行った。
〜 測定を1回限り行った場合では、予備的なデータを示す。
【0120】
実施例14
表面プラズモン共鳴を用いてkoffランキングによるオフ速度の改善を有するFabのスクリーニング
溶液選別後に溶出したファージを用いて、大腸菌TG-1に感染させ、34μg/mlクロラムフェニコールを含む寒天プレートに播種した。クローンを96ウェルプレートに採取して、これを用いてFab断片を作製した。同じプレートにおいて、親クローンを対照として接種した。可溶性のFabは浸透圧ショックによりペリプラスムから抽出して(Ausubelら、1998)、BIAcore(商標)におけるkoffランキングのために用いた。
【0121】
測定は全て、BIAcore(商標)機器において25℃で流速20μl/分でHBS緩衝液において行った。pH 4.5の100 mM酢酸ナトリウム中の抗原を、標準的なEDC-NHSカップリング化学を用いてCM 5センサーチップにカップリングさせた。25μg/ml TIMP-1 10μlを適用すると、典型的に、koffランキングに関して5000共鳴単位が得られた。センソグラムは全てBIA評価ソフトウェアを用いて適合させた。親クローンとの比較によってオフ速度が改善されたクローンを選択した。
【0122】
実施例15
種交叉反応性抗体の作製
ヒトとラットTIMP-1のあいだで交叉反応性であるブロッキング抗体を得る可能性を最大限にするために、ラットおよびヒト蛋白質について別の選別を行った。さらに、偶然に選択される可能性がある交叉反応性抗体をチェックするために、ヒトまたはラットTIMP-1蛋白質のみに関する選別によって選択された抗体を全て、交叉反応性に関して分析した。これらの選別から選択された抗体を粗大腸菌抽出物を用いてELISAにおいて交叉反応性に関して分析した。このアッセイにおいて交叉反応性抗体は、1 Lの規模での発現を行った後精製した。精製抗体は、BIAcore(商標)およびプロテアーゼアッセイにおける交叉反応性に関して調べた(表1)。
【0123】
表1に示すように、ヒトおよびラットTIMP-1と交叉反応する異なるFabを全体で5個作製した。BIAcore(商標)測定によって、これらの抗体は明らかにヒトおよびラットTIMP-1に結合するが、双方の種に対する親和性は少なくとも50倍異なることが判明した。ヒトの治療または動物モデルにおいて用いられる抗体は、標的蛋白質に対する親和性が低いナノモル濃度、好ましくはナノモル濃度以下でなければならない。上記の抗体はいずれも、双方の種に関してこの範囲の親和性を有しないことから、これらの抗体は、さらなる実験または開発のために有用ではないと見なされた。
【0124】
実施例16
ヒトTIMP-1に対するブロッキング抗体の作製
ヒトTIMP-1に対するブロッキング抗体を作製するために、HuCAL(登録商標)-Fab 1ライブラリを、精製TIMP-1蛋白質に関する抗体選択(Autopan(登録商標))のために用い、その後選択したFab断片の大腸菌におけるサブクローニングおよび発現を行った。粗抗体を含む大腸菌抽出物をELISAにおける一次抗体特徴付け(Autoscreen(登録商標))のために用いた。精製したFab蛋白質をELISA、TIMP-1/MMP-1アッセイおよびBIAcore(商標)においてさらに特徴を調べた。全体でクローン6100個をAutoscreen(登録商標)において分析し、それらの670個がヒトTIMP-1に対する結合を示した。配列分析から、全体で7個の独自の抗体クローンが選択されたことが判明した(表2)。これらの7個のFabクローンに関して、BIAcore(商標)において測定した親和性は、10〜180 nMの範囲内であった(表4)。ヒトプロテアーゼアッセイにおいて調べると、それらの5個は、ヒトTIMP-1とMMP-1とのあいだの相互作用を遮断することができた。ヒトMMP-1活性に対するヒトTIMP-1の阻害作用を50%逆転するために必要な一価Fabの濃度(IC50)は、11〜100 nMの範囲であった(表2)。最も活性なFabクローンは、MS-BW-3(Kd 13 nM;IC50 11 nM)およびMS-BW-28(Kd 10 nM;IC50 22 nM)である。
【0125】
ヒトTIMP-1に対して選択された抗体の顕著な特徴は、それらが全てVH312と比較的短いVH-CDR3領域、主にアミノ酸4個との組み合わせを示すことである(表2を参照のこと)。アミノ酸残基5〜28個の範囲の長さの分布を得るために、HuCAL(登録商標)-Fab 1ライブラリに関して構築したHCDR3カセットをデザインした。アミノ酸4個のHCDR3は、TRIM欠失のためにライブラリにおいて起こりうるが、非常にまれであると考えられる。もう一つの顕著な特徴は、選択したLCDR3配列における配列相同性の程度が高いことであった。
【0126】
(表2)抗ヒトTIMP-1 Fabの概要
* 標準偏差を示している場合では、3回の異なる蛋白質発現/精製について3回の独立した測定を行った。
〜 測定を1回限り行った場合では、予備的なデータを示す。
【0127】
実施例17
選択された抗ヒトTIMP-1抗体の親和性の増加
一価の抗ヒトTIMP-1 Fab断片の親和性をナノモル濃度以下の範囲に増加させるために、CDR配列を最適にして、フレームワーク領域を一定に維持することによって、段階的成熟アプローチを適用した。
【0128】
軽鎖クローニングによる親和性成熟
最高の親和性を有する二つの抗体断片のCDR3配列(MS-BW-3およびMS-BW-28)は、異常に短いアミノ酸4個のHCDR3配列の顕著な特徴を有した。さらに、それぞれのFabは、非常に類似のLCDR3配列を有した。これは、MS-BW-3とMS-BW-28とが同じエピトープに結合すること、そしてこのエピトープがCDR3配列の非常に小さいサブセットに限って認容する可能性があることを示している。アミノ酸4個のHCDR3は、ライブラリにおいて非常にまれな事象であるため、最初のライブラリにおいて、短いHCDR3と好ましいLCDR3との考えられる組み合わせが必ずしも全て存在するとは限らないと予測することができる。したがって、選択したHCDR3およびLCDR3配列とのもう一つの組み合わせは親和性を増加する可能性があると考慮される。このアプローチのため、クローニングによって、MS-BW-3とMS-BW-28との重鎖をMS-BW-1、-2、-3、-25、-26、-27、および-28の軽鎖と対にした。
【0129】
得られた構築物を大腸菌に形質転換して、1 L規模での発現/精製を行った。新しい構築物12個のうち、10個から機能的Fab分子が得られた。これらを表3に要約するように、BIAcore(商標)およびヒトプロテアーゼアッセイにおいて分析した。MS-BW-44と命名された最もよい抗体は、一価の親和性が2 nMでIC50は4 nM(図7)であり、このように、6.5倍(Kd)または2.75(IC50)倍改善した。
【0130】
(表3)軽鎖クローニングに由来するFabの概要
* 標準偏差を示している場合では、3個の異なる蛋白質発現/精製について3回の独立した測定を行った。
〜 測定を1回限り行った場合では、予備的なデータを示す。
【0131】
HCDR1およびHCDR2の最適化による親和性の成熟
HuCAL(登録商標)Fab 1ライブラリでは、CDR HCDR3およびLCDR3のみが高度に多様化している。これらの二つのCDRのアミノ酸は、抗体抗原接触のほとんどを形成することが結晶学研究からわかっているが、残りの4個のCDR3も同様に抗原結合にとって重要である。しかし、結合エネルギーに対するその関与は、抗体によって異なる。HuCAL(登録商標)-Fab 1ライブラリにおいて、それらのCDRは、異なるマスターフレームワークの存在によりごく限られた多様性を示したに過ぎない(Knappikら、2000)。選択した抗体の親和性を改善するために、HCDR1およびHCDR2を無作為化することによる親和性成熟アプローチを応用した。このアプローチに関して、ファージディスプレイベクターpMORPH(登録商標)18にクローニングしたMS-BW-44に基づいて二つの親和性成熟ライブラリを作製した。ライブラリ1では、MS-BW-44のHCDR2のみが、Virnekasら(Nucl. Acids Res. 22:5600〜07、1994;Knappikら、J. Mol. Biol. 296:57〜86、2000)に記載されるように「TRIM技術」を用いて多様化された。ライブラリ2では、HCDR1とHCDR2の双方がTRIM技術を用いて多様化された。いずれの場合にも、異なるクローン1×108個を含むファージ抗体ライブラリを得た。双方のライブラリを混合して、改変AutoPan(登録商標)技法のための入力として用いた。ヒトTIMP-1に対して親和性が増加した抗体を選択するために、ビオチン化抗原の限定量とストリンジェントな洗浄条件とを用いた溶液選別を適用した。抗体のオフ速度は、選択した抗体の粗大腸菌抽出物を用いてBIAcore(商標)によって分類した。親クローンMS-BW-44より遅いオフ速度を有するクローンに、1 L規模の発現および精製を行った。精製したFabをBIAcore(商標)およびヒトプロテアーゼアッセイにおいて分析した(表4)。
【0132】
(表4)親クローンMS-BW-44によるHCDR1とHCDR2最適化に由来するFabの比較
* IC50値は、TIMP-1とMMP-1(それぞれ、0.4 nM)の減少量を用いた改変プロテアーゼアッセイに由来する。
【0133】
クローンMS-BW-44-2は、ライブラリ1から誘導され、このように改変HCDR2カセットを用いる。BIAcore(商標)によって測定したその親和性は0.5 nMであった。クローンMS-BW-44-6は、改変HCDR1およびHCDR2カセットを有するライブラリ2に由来し、BIAcore(商標)によって測定したその親和性は0.6 nMであった。親和性成熟抗体とその親クローンとの配列比較を表8に示す。
【0134】
(表8)ヒトTIMP-1に対する親和性成熟Fab断片の概要と配列比較。親Fab断片(太字)と比較した配列の変化を斜体で示す。
* IC50値は、TIMP-1とMMP-1の減少量を用いて改変プロテアーゼアッセイに由来する;MS-BW-44のIC50は、これらの条件下で2 nMである。
【0135】
ヒトTIMP-1/MMP-1アッセイにおいて最初に分析したところ、ヒトMMP-1活性に対するヒトTIMP-1の50%阻害作用を逆転するために必要なFabの濃度は、アッセイにおけるTIMP-1全体の濃度以下であったため、ナノモル濃度以下の親和性を有するFabを親和性1 nMのFabと区別することは不可能であった。1.2 nMから0.4 nMに減少させたTIMP-1およびMMP-1の濃度について改変アッセイを行ったところ、2 nM Fabをナノモル濃度以下のFabと区別することが可能であった(表4、図8)。この改変プロテアーゼアッセイを用いると、MS-BW-44-2およびMS-BW-44-6のIC50値はそれぞれ、0.4 nMおよび0.2 nMであった。親クローンMS-BW-44は、これらの条件でIC50が2 nMであった。このように、この親和性成熟アプローチによって、5倍(Kd)または5〜10倍(IC50)の親和性の増加を得た。
【0136】
HCDR3の最適化による親和性成熟
先に述べたように、HCDR3およびLCDR3におけるアミノ酸残基は、抗原結合にとって最も重要であると考えられる。アミノ酸4個のHCDR3がHuCAL(登録商標)-Fab 1のデザインにおいて計画されておらず、このようにTRIM欠失によるまれな場合に限って起こることを考慮すると、おそらくHCDR3におけるアミノ酸4個の必ずしも全ての考えられる組み合わせが当初のHuCAL(登録商標)-Fab 1ライブラリにおいて示されていなかった。したがって、先の成熟サイクル(中でも、MS-BW-44-2およびMS-BW-44-6)に由来するFabに挿入したアミノ酸4個および5個のHCDR3成熟カセットを有する親和性成熟ライブラリを構築した。得られた親和性成熟ライブラリは、多様なクローン1×108個を有し、したがって、理論的に可能性がある全てのアミノ酸4および5個のHCDR3変種がその中に含まれる。非常にストリンジェントな選別条件を適用すると、最善の抗体、MS-BW-44-2-4が同定され、これは、BIAcore(商標)によって測定すると、親和性が0.2 nMであり、ヒトTIMP-1/MMP-1アッセイにおいてIC50が0.2 nMであった。親和性成熟抗体とその親クローンとの配列比較を表8に示す。この親和性成熟アプローチによって得られた改善率は、親和性に関して2.5倍であり、IC50に関して2倍である。
【0137】
LCDR3の最適化による親和性成熟
もう一つのアプローチとして、成熟戦略を用いて、軽鎖CDR3配列をさらに最適化した。これは、選択した抗体のあいだの軽鎖交換クローニングが適用される第一の成熟サイクルにおいて、配列変化のごく非常に限られたサブセットが利用されていたという事実のためであった。したがって、TRIM技術を用いて、多様なLCDR3カセットをHCDR1およびHCDR2最適化に由来するFabに挿入した成熟ライブラリを構築した(中でもMS-BW-44-2およびMS-BW-44-6)。この成熟戦略によって同定された最善のFabは、MS-BW-44-6-1であり、BIAcore(商標)によって測定した親和性は0.15 nM、ヒトTIMP-1/MMP-1アッセイにおけるIC50は0.2 nMであった。親和性成熟抗体とその親クローンとの配列比較を表8に示す。この成熟アプローチによって得られた改善率は親和性に関して4倍である。プロテアーゼアッセイにおけるIC50のさらなる改善は、アッセイの限界のために測定できなかった。
【0138】
異なる四つの成熟戦略を用いた段階的親和性成熟の結果として、抗ヒトTIMP-1特異的Fab断片の一価の親和性は87倍改善され、ヒトTIMP-1/MMP-1アッセイにおけるその活性は55倍改善された。最善のFab断片を定義するための決定は、BIAcore(商標)は、ナノモル濃度未満の親和性を有する抗体を分類するために信頼できることが証明されたが、ヒトTIMP-1/MMP-1アッセイの感度は、互いに関してナノモル濃度未満の最善のFabの活性を分類するために適していないと考えられたため、BIAcore(商標)を用いて、Kd測定に基づいて行った。
【0139】
最善のFab MS-BW-44-6-1は、BIAcore(商標)によって測定した親和性が0.15 nMであり、ヒトTIMP-1/MMP-1アッセイにおけるIC50が0.2 nMである。その親クローン、MS-BW-3と比較すると、これは最適化されたLCDR3、HCDR1、およびHCDR2配列を有する。
【0140】
実施例18
選択した抗ヒトTIMP-1 FabとTIMP-2、TIMP-3、およびTIMP-4との交叉反応性
TIMP-1は、全てがMMPプロテアーゼファミリーの様々なメンバーに結合する近縁のプロテアーゼ阻害剤ファミリーに属する。今日まで、ヒトTIMP蛋白質4個が記述されている。ヒトTIMP-1に対して選択された抗体断片と、他のヒトTIMPファミリーメンバーとの交叉反応性の可能性を調べるために、固定された精製ヒトTIMP-1、-2、-3、または-4に対する抗体断片の結合を分析するELISAを行った(図10)。固定されたヒトTIMP-1に対する抗体断片の結合は、無関係な対照蛋白質BSAと比較した場合に、ヒトTIMP-2、-3、-4に対してバックグラウンドレベル以上の結合を示さなかった。
【0141】
実施例19
ラットTIMP-1に対するブロッキング抗体の作製
ラットTIMP-1に対するブロッキング抗体を作製するために、HuCAL(登録商標)-Fab 1ライブラリを、固定されたラットTIMP-1上での抗体選択(AutoPan(登録商標))のために用いた後、選択されたFab断片をサブクローニングして大腸菌において発現させた。粗抗体含有大腸菌抽出物をELISAにおける一次抗体特徴付け(AutoScreen(登録商標))のために用いた。精製Fab蛋白質にELISA、プロテアーゼアッセイおよびBIAcore(商標)においてさらなる特徴付けを行った。AutoScreen(登録商標)において分析した選択されたクローン8,450個のうち、それらの750個がラットTIMP-1に対する結合を示した。配列分析は、ラットTIMP-1に対して特異的な独自のFabクローン全体36個が選択の際に濃縮された(表7)。それらの親和性をBIAcore(商標)によって測定したところ、9〜1000 nMの範囲であることが判明した(表7)。ラットプロテアーゼアッセイにおいて調べたところ、それらの一つを除く全てが、ラットTIMP-1とラットMMP-13との相互作用を遮断することができた(表7)。ラットMMP-13活性に対するラットTIMP-1の阻害作用を50%逆転するために必要な一価のFabの濃度(IC50)は、7〜300 nMの範囲であった。最も活性なFabクローンは、MS-BW-14(Kd、10 nM;IC50、14 nM)、MS-BW-17(Kd、13 nM;IC50、11 nM)およびMS-BW-54(Kd、9 nM;IC50、7 nM)である。
【0142】
(表7)抗ラットTIMP-1 Fabの概要
* 標準偏差を示している場合では、3回の異なる蛋白質発現/精製について3回の独立した測定を行った。
〜 測定を1回限り行った場合では、予備的なデータを示す。
【0143】
実施例20
選択した抗ラットTIMP-1抗体の親和性の増加
親和性成熟を応用して、一価の抗ラットTIMP-1 Fab断片の親和性をナノモル濃度以下の範囲まで増加させた。選択した抗体断片の軽鎖CDR3配列において明白な配列相同性を同定することができず、このことは、最適な軽鎖CDR3配列はおそらく存在しないか、または当初のHuCAL(登録商標)-Fab 1ライブラリから選択されていなかったことを示している。したがって、われわれはFabの親和性を増加させるためにLCDR3の改変から始めた。
【0144】
ファージディスプレイベクターpMORPH(登録商標)18にクローニングしたMS-BW-14、-17、および-54に基づいて二つの親和性成熟ライブラリを作製した。ライブラリ1では、LCDR3のみがVirnekasら(Nucl. Acids Res. 22:5600〜07、1994;Knappikら、J. Mol. Biol. 296:57〜86、2000)に記載されるように、TRIM技術を用いて多様化された。ライブラリ2では、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3が、TRIM技術を用いて同時に多様化されたが、結合するフレームワーク領域は一定のままであった。双方の場合において、異なるクローン3×108個を含むファージ抗体ライブラリを得た。双方のライブラリを混合して、改変AutoPan(登録商標)技法のための入力として用いた。ラットTIMP-1に対する親和性が増加した抗体を選択するために、ビオチン化抗原の限定量およびストリンジェントな洗浄条件を用いた溶液選別を適用した。
【0145】
抗体のオフ速度を、粗大腸菌抽出物を用いてBIAcore(商標)によって分類した。親クローンMS-BW-14、-17、または-54より遅いオフ速度を有するクローンに、1 L規模での発現および精製を行った。精製FabをBIAcore(商標)およびラットプロテアーゼアッセイにおいて分析した(表6)。MS-BW-17-1(Kd、0.8 nM、IC50、1.6 nM)、MS-BW-17-2(Kd、1.3 nM、IC50、1.1 nM)およびMS-BW-17-3(Kd、1.9 nM、IC50、3 nM)は、最適化LCDR3配列を有する親和性成熟ライブラリ1に由来したが、MS-BW-54-1(Kd、2 nM、IC50、3 nM)は、最適化LCDR1、-2、および-3配列を有する親和性成熟ライブラリ2に由来した(表9)。
【0146】
(表9)ラットTIMP-1に対する親和性成熟Fab断片の概要と配列比較。親Fab断片(太字)と比較した配列変化を斜体で示す。
【0147】
これらの異なる一段階成熟戦略によって得られた改善は、親和性に関して16.3倍まで、そしてプロテアーゼアッセイにおける機能的活性に関して10倍までであった。
【0148】
実施例21
ラットの慢性四塩化炭素誘発肝線維症モデルにおいて用いるためのヒトIgG1分子への抗TIMP-1 Fab断片の変換
抗TIMP-1 Fab断片をヒトIgG1分子に変換して、ラットの慢性四塩化炭素誘発肝線維症モデルにおいて用いるための持続的なインビボ半減期を有する抗体分子を作製した。これは、哺乳類のIgG1を発現させるために二つの異なるベクターにFabの重鎖および軽鎖可変領域をクローニングすることによって行った(Krebsら、2001)。
【0149】
抗ラットTIMP-1クローンMS-BW-14を第一のインビボ試験のために選択し、IgG1蛋白質を一過性の発現によって産生させた。抗ヒトTIMP-1クローンMS-BW-3を陰性対照IgG1として選択して、同様に一過性の発現によって産生させた。精製IgG1蛋白質MS-BW-14およびMS-BW-3にBIAcore(商標)およびラットTIMP-1/ラットMMP-13アッセイにおける品質管理を行った。BIAcore(商標)(チップ密度500 RU、二価分析体の適合モデル)において測定したラットTIMP-1に対する二価の親和性は、MS-BW-14に関して0.2 nMであるのに対し、対応する一価のFab断片については13 nMであった。IgG1に対する親和性の増加は、BIAcore(商標)チップ上に固定されたラットTIMP-1蛋白質に対する二価IgG1の結合によって引き起こされた結合力の作用による。予想されたように、陰性対照IgG1 MS-BW-3は、ラットTIMP-1に対して結合を示さなかったが、二価の親和性約0.4 nMでヒトTIMP-1に結合した。
【0150】
図12は、ラットTIMP-1/ラットMMP-13アッセイにおけるMS-BW-14 FabおよびIgG1ならびにMS-BW-3 IgG1の活性を示す。MS-BW-14 FabとIgG1のIC50はほぼ同一である。BIAcore(商標)実験とは対照的に、このアッセイは、TIMP-1とIgG1との溶液中での一価の相互作用に基づいているため、BIAcore(商標)において認められた結合力効果はこのアッセイでは起こらない。予想されるように、MS-BW-3は、ラットMMP-13に対するラットTIMP-1結合に対して効果を示さず、このように、ラットのインビボ試験に関して適した陰性対照である。
【0151】
次に、親和性成熟クローンMS-BW-17-1を一価のFab断片から二価のIgG1に変換した。蛋白質は安定なトランスフェクションによって作製した。精製蛋白質に、BIAcore(商標)およびラットTIMP-1/ラットMMP-13アッセイにおいて品質管理を行った(図13)。BIAcore(商標)において、一価のFab断片に関する0.8 nMと比較すると、IgG1に関して0.04 nMという二価の親和性(結合力)の増加を認めたが、ラットTIMP-1/ラットMMP-13アッセイにおける活性は、予想されるように、IgG1およびFabに関して同等であった。
【0152】
実施例22
抗ラットTIMP-1 IgG1 MS-BW-17-1とマウスTIMP-1との交叉反応性
MS-BW-17-1 IgG1およびFabとマウスTIMP-1との種間交叉反応性を、BIAcore(商標)によって決定し、ラットの代わりにマウスを用いるもう一つのインビボモデルの実現可能性を調べた。MS-BW-17-1は、チップ表面上に固定されたマウスTIMP-1に明らかに結合したが、Fab(180 nM)とIgG1(9 nM)の親和性はいずれも、ラットTIMP-1に対する親和性より225倍弱かった。血清中のマウスTIMP-1とBW-17-1 IgG1との相互作用は、一価である可能性が最も高いため、BW-17-1 Fabの親和性はおそらく、この相互作用の「真の」親和性を反映している。したがって、マウスインビボ試験においてBW-17-1 IgG1を用いる実現可能性を計算する場合には、Fab親和性の値を考慮しなければならない。
【0153】
実施例23
ブレオマイシン誘発肺線維症の発症に及ぼすTimp-1抗体の影響
以下の実施例は、ヒト抗ラットTimp-1抗体(BW17.1)がブレオマイシン誘発ラット肺線維症モデルにおける線維症コラーゲン沈着を予防できることを証明する。
【0154】
雄性Lewisラット(6週齢)に、0日目にブレオマイシン(0.3 mg/ラット、生理食塩液)または溶媒(生理食塩液)の1回気管内チャレンジを行った。14日後、動物を安楽死させて、肺を切除して固定し、肺線維症の評価のために処理した。肺組織切片を切断して、マッソンの三重染色によって染色した肺組織切片における肺コラーゲンの画像分析によって定量的な評価を行った。
【0155】
抗体の投与:ヒト抗ラットTIMP-1抗体または対照ヒト抗体(IgG)20 mg/kg用量を−1日目に投与した。その後、ヒト抗ラットTIMP-1抗体または対照ヒト抗体(IgG)10 mg/kg用量を2、5、8、および11日目に皮下投与した。以下の動物5群を調べた:生理食塩液の気管内チャレンジ+抗体溶媒(PBS);生理食塩液の気管内チャレンジ+TIMP-1抗体;ブレオマイシンの気管内チャレンジ+TIMP-1抗体;ブレオマイシンの気管内チャレンジ+抗体溶媒(PBS);ブレオマイシンの気管内チャレンジ+対照抗体。
【0156】
図14は、ブレオマイシン誘発肺線維症コラーゲンに及ぼすTIMP-1抗体の阻害作用の影響を示す。
【0157】
実施例24
ラットのCCl4誘発肝線維症モデルにおけるBW-14抗TIMP-1抗体の影響
四塩化炭素(CCl4)を用いて、実施例9に記載するように肝線維症を誘発した。3 mg/kg BW-14または対照抗体BW-3の1回静脈内用量をそれぞれ、19日目に投与した。この時点で、総肝コラーゲン(Prockop and Udenfriedに従って測定したヒドロキシプロリン)は、CCl4によって既に有意に増加し、線維症コラーゲンは、翌週のあいだに急速に蓄積する。ラットを28日目に屠殺した。処置群は以下の通りであった:CCl4なし+対照抗体BW3(ラットn=10)、CCl4+対照抗体BW3(ラットn=20)、およびCCl4+BW14(ラットn=20)。
【0158】
線維症コラーゲンの形態学的測定(場全体の百分率としてのシリウスレッド染色領域)において反映された対照対TIMP-1抗体の影響を図15に示す。双方の対照抗体処置群の比較から、CCl4がコラーゲン領域において約3倍の増加を引き起こしたことを示している。BW-14抗体処置は、病的なコラーゲンの増加を26%減少させた。CCl4+BW-3群と比較してCCl4+BW-14群の線維様コラーゲン値がより低かったことは、統計学的に有意であった(p<0.05、コルモゴロフ・スミルノフの検定)。
【0159】
参考文献
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】HuCAL(登録商標)VHおよびVL Fabマスター遺伝子によってコードされる蛋白質配列。VHおよびVL配列7個を並置して、対応するDNA配列に導入された制限エンドヌクレアーゼ部位のおおよその位置を示す。番号付けは、Vl 9位のギャップを除きVBASEに従う。VBASEでは、ギャップを10位に設定する。同様に、Chothiaら(1992)、J. Mol. Biol. 227:776〜798、Tomlinsonら(1995)、EMBO J. 14:4628〜4638、およびWilliamsら(1996)、J. Mol. Biol. 264:220〜232も参照のこと。
【図2】HuCAL(登録商標)VHおよびVL Fabマスター遺伝子のヌクレオチド配列。
【図3】FabディスプレイベクターpMORPH(登録商標)18 Fab 1。
【図4】pMORPH(登録商標)x9Fab 1_FSのベクターマップ。
【図5】ヒトとラットTIMP-1の配列比較。太字の配列領域は、ペプチド合成に用いられた。MMP-3とより強く直接接触させる残基を斜体で示し、MMP-3とより弱く直接接触させる残基を下線で示す(Gomis-Ruthら、1997)。
【図6】ヒトTIMP-1/MMP-1アッセイにおけるMS-BW-3の活性。抗体Fab断片を、0.05%BSAを含むアッセイ緩衝液において1試料あたり3個ずつ表記の濃度に希釈した。TIMP(最終濃度、1.2 nM)、MMP(最終濃度、1.2 nM)、およびペプチド基質(最終濃度50μM)を加えて、37℃で1〜3時間インキュベートした後、Ex320 nm/Em 430 nmでの蛍光を測定した。IC50は、参照値として100%MMP-1活性(TIMP-1の非存在下)と27%MMP-1活性(抗体の非存在下)とを用いて、材料と方法の章に概要するように計算した。
【図7】ヒトTIMP-1/MMP-1アッセイにおけるMS-BW-44の活性。抗体Fab断片を、0.05%BSAを含むアッセイ緩衝液において1試料あたり3個ずつ表記の濃度に希釈した。TIMP(最終濃度、1.2 nM)、MMP(最終濃度、1.2 nM)、およびペプチド基質(最終濃度50μM)を加えて、37℃で1〜3時間インキュベートした後、Ex320 nm/Em 430 nmでの蛍光を測定した。IC50は、参照値として100%MMP-1活性(TIMP-1の非存在下)と25%MMP-1活性(抗体の非存在下)とを用いて、材料と方法の章に概要するように計算した。
【図8】ヒトTIMP-1/MMP-1アッセイにおけるMS-BW-44、-44-2、44-6の活性。Fab抗体断片を、0.05%BSAを含むアッセイ緩衝液において1試料あたり3個ずつ表記の濃度に希釈した。TIMP(最終濃度、0.4 nM)、MMP(最終濃度、0.4 nM)、およびペプチド基質(最終濃度50μM)を加えて、37℃で7時間インキュベートした後、Ex320 nm/Em 430 nmでの蛍光を測定した。IC50は、参照値として100%MMP-1活性(TIMP-1の非存在下)と55%MMP-1活性(抗体の非存在下)とを用いて、材料と方法の章に概要するように計算した。
【図9】ヒトTIMP-1/MMP-1アッセイにおけるMS-BW-44、-44-2-4、44-6-1の活性。Fab抗体断片を、0.05%BSAを含むアッセイ緩衝液において1試料あたり3個ずつ表記の濃度に希釈した。TIMP(最終濃度、0.4 nM)、MMP(最終濃度、0.4 nM)、およびペプチド基質(最終濃度50μM)を加えて、37℃で7時間インキュベートした後、Ex320 nm/Em 430 nmでの蛍光を測定した。IC50は、参照値として100%MMP-1活性(TIMP-1の非存在下)と50%MMP-1活性(抗体の非存在下)とを用いて、材料と方法の章に概要するように計算した。
【図10】ヒトTIMP-1、-2、-3および-4に対するFab断片の結合。TIMP-1、-2、-3、-4蛋白質をELISAプレートに固定して、精製Fab断片の結合を、アルカリホスファターゼ結合抗Fab抗体(ディアノバ社)と共にインキュベートした後アトフォス基質(ロシュ社)によって発色させて、Ex405 nm/Em 535 nmで測定することによって測定した。
【図11】ラットTIMP-1/MMP-13アッセイにおけるMS-BW-14、-17、-54の活性。抗体Fab断片を、0.05%BSAを含むアッセイ緩衝液において1試料あたり3個ずつ表記の濃度に希釈した。TIMP(最終濃度、1.2 nM)、MMP(最終濃度、1.2 nM)、およびペプチド基質(最終濃度50μM)を加えて、37℃で1〜3時間インキュベートした後、Ex320 nm/Em 430 nmでの蛍光を測定した。IC50は、参照値として100%MMP-13活性(TIMP-1の非存在下)と20%MMP-13活性(抗体の非存在下)とを用いて、材料と方法の章に概要するように計算した
【図12】ラットTIMP-1/MMP-13アッセイにおけるMS-BW-14 FabおよびIgG1、ならびにMS-BW-3 IgG1の活性。抗体を、0.05%BSAを含むアッセイ緩衝液において1試料あたり3個ずつ表記の濃度に希釈した。TIMP(最終濃度、1.2 nM)、MMP(最終濃度、1.2 nM)、およびペプチド基質(最終濃度50μM)を加えて、37℃で1〜3時間インキュベートした後、Ex320 nm/Em 430 nmでの蛍光を測定した。IC50は、参照値として100%MMP-13活性(TIMP-1の非存在下)と30%MMP-13活性(抗体の非存在下)とを用いて、材料と方法の章に概要するように計算した。
【図13】ラットTIMP-1/MMP-13アッセイにおけるMS-BW-17-1 FabおよびIgG1の活性。Fab抗体断片を、0.05%BSAを含むアッセイ緩衝液において1試料あたり3個ずつ表記の濃度に希釈した。TIMP(最終濃度、1.2 nM)、MMP(最終濃度、1.2 nM)、およびペプチド基質(最終濃度50μM)を加えて、37℃で1〜3時間インキュベートした後、Ex320 nm/Em 430 nmでの蛍光を測定した。IC50は、参照値として100%MMP-13活性(TIMP-1の非存在下)と15%MMP-13活性(抗体の非存在下)とを用いて、材料と方法の章に概要するように計算した。
【図14】ブレオマイシン誘発肺線維症コラーゲンに及ぼすMS-BW-17-1 TIMP-1抗体の阻害作用の影響。
【図15】四塩化炭素誘発ラット肝線維症モデルにおいてサイラスレッドによって染色した線維症コラーゲンに及ぼす抗TIMP-1抗体の影響。サイラスレッド染色領域は、PBS、対照抗体、およびMS-BW-14抗TIMP-1抗体によって処置した四塩化炭素処置ラットにおける総領域の割合として表す。
【図1−1】
【図1−2】
【図1−3】
【図2−1】
【図2−2】
【図2−3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体がメタロプロテアーゼ-1の組織阻害剤(TIMP-1)に結合して、TIMP-1のマトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害活性を中和する、ヒト抗体の精製調製物。
【請求項2】
MMPがヒトMMP-1である、請求項1記載の調製物。
【請求項3】
MMPがラットMMP-13である、請求項2記載の調製物。
【請求項4】
TIMP-1がヒトTIMP-1である、請求項1記載の調製物。
【請求項5】
抗体が、約0.1 nM〜約10μM、約2 nM〜約1μM、約2 nM〜約200 nM、約2 nM〜約150 nM、約50 nM〜約100 nM、約0.2 nM〜約13 nM、約0.2 nM〜約0.5 nM、約2 nM〜約13 nM、および約0.5 nM〜約2 nMからなる群より選択されるKdでヒトTIMP-1に結合する、請求項4記載の調製物。
【請求項6】
抗体が、約0.2 nM、約0.3 nM、約0.5 M、約0.6 nM、約2 nM、約7 nM、約10 nM、約11 nMおよび約13 nMからなる群より選択されるKdでヒトTIMP-1に結合する、請求項4記載の調製物。
【請求項7】
抗体が、約0.1 nM〜約200 nM、約1 nM〜約100 nM、約2 nM〜約50 nM、約5 nM〜約25 nM、約10 nM〜約15 nM、約0.2 nM〜約11 nM、約0.2 nM〜約4 nM、および約4 nM〜約11 nMからなる群より選択されるIC50でヒトTIMP-1のMMP-阻害活性を中和する、請求項4記載の調製物。
【請求項8】
抗体が、約0.2 nM、約0.3 nM、約0.4 nM、約4 nM、約7 nM、約9 nM、および約11 nMからなる群より選択されるIC50でヒトTIMP-1のMMP-阻害活性を中和する、請求項4記載の調製物。
【請求項9】
ヒトTIMP-1に対する結合に関するKdとヒトTIMP-1のMMP-阻害活性の中和に関するIC50とがほぼ等しい、請求項4記載の調製物。
【請求項10】
TIMP-1がラットTIMP-1である、請求項1記載の調製物。
【請求項11】
抗体が、約0.1 nM〜約10μM、約2 nM〜約1μM、約2 nM〜約200 nM、約2 nM〜約150 nM、約50 nM〜約100 nM、約1.3 nM〜約13 nM、約1.8 nM〜約10 nM、約2 nM〜約9 nM、約1.3 nM〜約9 nM、および約2 nM〜約10 nMからなる群より選択されるKdでラットTIMP-1に結合する、請求項10記載の調製物。
【請求項12】
抗体が、約0.8 nM、約1 nM、約1.3 nM、約1.9 nM、約2 nM、約3 nM、約9 nM、約10 nM、約13 nM、約14 nM、および約15 nMからなる群より選択されるKdでラットTIMP-1に結合する、請求項10記載の調製物。
【請求項13】
抗体が、約0.1 nM〜約300 nM、約1 nM〜約100 nM、約2 nM〜約50 nM、約5 nM〜約25 nM、約10 nM〜約15 nM、約1.1 nM〜約14 nM、約1.6 nM〜約11 nM、約3 nM〜約7 nM、約1.1 nM〜約7 nM、約1.1 nM〜約11 nM、約3 nM〜約11 nM、および約3 nM〜約14 nMからなる群より選択されるIC50でラットTIMP-1活性を中和する、請求項10記載の調製物。
【請求項14】
抗体が、約1.1 nM、約1.6 nM、約3 nM、約7 nM、約11 nM、約14 nM、約19 nM、約20 nM、約30 nM、および約100 nMからなる群より選択されるIC50でラットTIMP-1活性を中和する、請求項10記載の調製物。
【請求項15】
ラットTIMP-1に対する結合に関するKdとラットTIMP-1のMMP-阻害活性の中和に関するIC50とがほぼ等しい、請求項10記載の調製物。
【請求項16】
配列番号:1〜43および360からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVHCDR3領域を含むヒト抗体の精製調製物。
【請求項17】
配列番号:44〜86および365〜379からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVLCDR3領域を含むヒト抗体の精製調製物。
【請求項18】
配列番号:1と44、配列番号:2と45、配列番号:3と46、配列番号:4と47、配列番号:5と48、配列番号:6と49、配列番号:7と50、配列番号:3と44、配列番号:3と45、配列番号:3と47、配列番号:3と48、配列番号:3と49、配列番号:3と50、配列番号:7と44、配列番号:7と45、配列番号:7と47、配列番号:7と48、配列番号:8と51、配列番号:9と52、配列番号:10と53、配列番号:11と54、配列番号:12と55、配列番号:13と56、配列番号:14と57、配列番号:15と58、配列番号:16と59、配列番号:17と60、配列番号:18と61、配列番号:19と62、配列番号:20と63、配列番号:21と64、配列番号:22と65、配列番号:23と66、配列番号:24と67、配列番号:25と68、配列番号:26と69、配列番号:27と70、配列番号:28と71、配列番号:29と72、配列番号:30と73、配列番号:31と74、配列番号:32と75、配列番号:33と76、配列番号:34と77、配列番号:35と78、配列番号:36と79、配列番号:37と80、配列番号:38と81、配列番号:39と82、配列番号:40と83、配列番号:41と84、配列番号:42と85、配列番号:43と86、配列番号:3と48、配列番号:360と48、配列番号:3と365、配列番号:16と59、配列番号:18と61、配列番号:34と77、配列番号:34と379、配列番号:18と376、配列番号:18と377、および配列番号:18と378からなる群より選択されるVHCDR3とVLCDR3のアミノ酸配列対を含むヒト抗体の精製調製物。
【請求項19】
配列番号:1と44、配列番号:2と45、配列番号:3と46、配列番号:4と47、配列番号:5と48、配列番号:6と49、配列番号:7と50、配列番号:3と44、配列番号:3と45、配列番号:3と47、配列番号:3と48、配列番号:3と49、配列番号:3と50、配列番号:7と44、配列番号:7と45、配列番号:7と47、配列番号:7と48、配列番号:8と51、配列番号:9と52、配列番号:10と53、配列番号:11と54、配列番号:12と55、配列番号:13と56、配列番号:14と57、配列番号:15と58、配列番号:16と59、配列番号:17と60、配列番号:18と61、配列番号:19と62、配列番号:20と63、配列番号:21と64、配列番号:22と65、配列番号:23と66、配列番号:24と67、配列番号:25と68、配列番号:26と69、配列番号:27と70、配列番号:28と71、配列番号:29と72、配列番号:30と73、配列番号:31と74、配列番号:32と75、配列番号:33と76、配列番号:34と77、配列番号:35と78、配列番号:36と79、配列番号:37と80、配列番号:38と81、配列番号:39と82、配列番号:40と83、配列番号:41と84、配列番号:42と85、配列番号:43と86、配列番号:3と48、配列番号:360と48、配列番号:3と365、配列番号:16と59、配列番号:18と61、配列番号:34と77、配列番号:34と379、配列番号:18と376、配列番号:18と377、および配列番号:18と378からなる群より選択されるVHCDR3とVLCDR3のアミノ酸配列対を含むヒト抗体の精製調製物。
【請求項20】
ヒト抗体が配列番号:140〜182からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する重鎖を含む、請求項19記載の精製調製物。
【請求項21】
ヒト抗体が、配列番号:97〜139からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、請求項19記載の精製調製物。
【請求項22】
配列番号:140と97、配列番号:141と98、配列番号:142と99、配列番号:143と100、配列番号:144と101、配列番号:145と102、配列番号:146と103、配列番号:142と97、配列番号:142と98、配列番号:142と100、配列番号:142と101、配列番号:142と102、配列番号:142と103、配列番号:146と97、配列番号:146と98、配列番号:146と100、配列番号:146と101、配列番号:148と104、配列番号:148と105、配列番号:149と106、配列番号:150と107、配列番号:151と108、配列番号:152と109、配列番号:153と110、配列番号:154と111、配列番号:155と112、配列番号:156と113、配列番号:157と114、配列番号:158と115、配列番号:159と116、配列番号:160と117、配列番号:161と118、配列番号:162と119、配列番号:163と120、配列番号:164と121、配列番号:165と122、配列番号:166と123、配列番号:167と124、配列番号:168と125、配列番号:169と126、配列番号:170と127、配列番号:171と128、配列番号:172と129、配列番号:173と130、配列番号:174と131、配列番号:175と132、配列番号:176と133、配列番号:177と134、配列番号:178と135、配列番号:179と136、配列番号:180と137、配列番号:181と138、および配列番号:182と139からなる群より選択される重鎖と軽鎖のアミノ酸対を含むヒト抗体の精製調製物。
【請求項23】
以下を含む薬学的組成物:
(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP-阻害活性を中和する、ヒト抗体;および
薬学的に許容される担体。
【請求項24】
MMPがヒトMMP-1である、請求項23記載の薬学的組成物。
【請求項25】
MMPがラットMMP-13である、請求項23記載の薬学的組成物。
【請求項26】
TIMP-1がヒトTIMP-1である、請求項23記載の薬学的組成物。
【請求項27】
TIMP-1がラットTIMP-1である、請求項23記載の薬学的組成物。
【請求項28】
TIMP-1に対する結合に関するKdとTIMP-1のMMP-阻害活性の中和に関するIC50とがほぼ等しい、請求項23記載の薬学的組成物。
【請求項29】
ヒト抗体が(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する、配列番号:1〜43および360からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVHCDR3領域を含むヒト抗体をコードする精製ポリヌクレオチド。
【請求項30】
VHCDR3領域が、配列番号:227〜269からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる、請求項31記載の精製ポリヌクレオチド。
【請求項31】
ヒト抗体が(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する、配列番号:44〜86および365〜379からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVLCDR3領域を含むヒト抗体をコードする精製ポリヌクレオチド。
【請求項32】
VLCDR3領域が、配列番号:184〜226からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる、請求項31記載の精製ポリヌクレオチド。
【請求項33】
ヒト抗体が、配列番号:140〜182からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する重鎖を含む、請求項31記載の精製ポリヌクレオチド。
【請求項34】
重鎖が、配列番号:269〜311からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる、請求項33記載の精製ポリヌクレオチド。
【請求項35】
ヒト抗体が、配列番号:97〜139からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、請求項33記載の精製ポリヌクレオチド。
【請求項36】
軽鎖が配列番号:312〜354からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる、請求項35記載の精製ポリヌクレオチド。
【請求項37】
請求項29記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項38】
請求項30記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項39】
請求項31記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項40】
請求項32記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項41】
請求項33記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項42】
請求項34記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項43】
請求項35記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項44】
請求項36記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項45】
請求項37記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項46】
請求項38記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項47】
請求項39記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項48】
請求項40記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項49】
請求項41記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項50】
請求項42記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項51】
請求項43記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項52】
請求項44記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項53】
以下の段階を含む、ヒト抗体を作製する方法:
抗体が発現される条件で請求項45記載の宿主細胞を培養する段階;および
宿主細胞培養物からヒト抗体を精製する段階。
【請求項54】
発現ベクターが、配列番号:183〜357からなる群より選択されるポリヌクレオチド配列を含む、請求項55記載の方法。
【請求項55】
以下の段階を含む、TIMP-1のMMP-阻害活性を減少させる方法:
それによってTIMP-1のMMP-阻害活性が、抗体の非存在下でのTIMP-1のMMP-阻害活性と比較して減少する、TIMP-1に結合するヒト抗体にTIMP-1を接触させる段階。
【請求項56】
MMPがヒトMMP-1である、請求項55記載の方法。
【請求項57】
MMPがラットMMP-13である、請求項55記載の方法。
【請求項58】
TIMP-1がヒトTIMP-1である、請求項55記載の方法。
【請求項59】
TIMP-1がラットTIMP-1である、請求項55記載の方法。
【請求項60】
接触させる段階が、無細胞系において行われる、請求項55記載の方法。
【請求項61】
接触させる段階が、細胞培養系において行われる、請求項55記載の方法。
【請求項62】
接触させる段階がインビボで行われる、請求項55記載の方法。
【請求項63】
抗体が、配列番号:1と44、配列番号:2と45、配列番号:3と46、配列番号:4と47、配列番号:5と48、配列番号:6と49、配列番号:7と50、配列番号:3と44、配列番号:3と45、配列番号:3と47、配列番号:3と48、配列番号:3と49、配列番号:3と50、配列番号:7と44、配列番号:7と45、配列番号:7と47、配列番号:7と48、配列番号:8と51、配列番号:9と52、配列番号:10と53、配列番号:11と54、配列番号:12と55、配列番号:13と56、配列番号:14と57、配列番号:15と58、配列番号:16と59、配列番号:17と60、配列番号:18と61、配列番号:19と62、配列番号:20と63、配列番号:21と64、配列番号:22と65、配列番号:23と66、配列番号:24と67、配列番号:25と68、配列番号:26と69、配列番号:27と70、配列番号:28と71、配列番号:29と72、配列番号:30と73、配列番号:31と74、配列番号:32と75、配列番号:33と76、配列番号:34と77、配列番号:35と78、配列番号:36と79、配列番号:37と80、配列番号:38と81、配列番号:39と82、配列番号:40と83、配列番号:41と84、配列番号:42と85、配列番号:43と86、配列番号:3と48、配列番号:360と48、配列番号:3と365、配列番号:16と59、配列番号:18と61、配列番号:34と77、配列番号:34と379、配列番号:18と376、配列番号:18と377、および配列番号:18と378からなる群より選択されるVHCDR3とVLCDR3のアミノ酸配列対を含む、請求項55記載の方法。
【請求項64】
以下の段階を含む、TIMP-1が上昇している障害の症状を改善する方法:
それによって障害の症状が改善される、TIMP-1のMMP-阻害活性を中和するヒト抗体の有効量を、障害を有する患者に投与する段階。
【請求項65】
MMPがヒトMMP-1である、請求項64記載の方法。
【請求項66】
MMPがラットMMP-13である、請求項64記載の方法。
【請求項67】
障害が、肝線維症、アルコール性肝疾患、心線維症、急性冠血管症候群、ループス腎炎、糸球体硬化性腎疾患、特発性肺線維症、良性前立腺過形成、肺癌、および結腸癌からなる群より選択される、請求項64記載の方法。
【請求項68】
抗体が、配列番号:1と44、配列番号:2と45、配列番号:3と46、配列番号:4と47、配列番号:5と48、配列番号:6と49、配列番号:7と50、配列番号:3と44、配列番号:3と45、配列番号:3と47、配列番号:3と48、配列番号:3と49、配列番号:3と50、配列番号:7と44、配列番号:7と45、配列番号:7と47、配列番号:7と48、配列番号:8と51、配列番号:9と52、配列番号:10と53、配列番号:11と54、配列番号:12と55、配列番号:13と56、配列番号:14と57、配列番号:15と58、配列番号:16と59、配列番号:17と60、配列番号:18と61、配列番号:19と62、配列番号:20と63、配列番号:21と64、配列番号:22と65、配列番号:23と66、配列番号:24と67、配列番号:25と68、配列番号:26と69、配列番号:27と70、配列番号:28と71、配列番号:29と72、配列番号:30と73、配列番号:31と74、配列番号:32と75、配列番号:33と76、配列番号:34と77、配列番号:35と78、配列番号:36と79、配列番号:37と80、配列番号:38と81、配列番号:39と82、配列番号:40と83、配列番号:41と84、配列番号:42と85、配列番号:43と86、配列番号:3と48、配列番号:360と48、配列番号:3と365、配列番号:16と59、配列番号:18と61、配列番号:34と77、配列番号:34と379、配列番号:18と376、配列番号:18と377、および配列番号:18と378からなる群より選択されるVHCDR3とVLCDR3のアミノ酸配列対を含む、請求項64記載の方法。
【請求項69】
以下の段階を含む、試験調製物においてTIMP-1を検出する方法:
試験調製物をTIMP-1に特異的に結合するヒト抗体に接触させる段階;および
抗体-TIMP-1複合体の存在に関して試験調製物をアッセイする段階。
【請求項70】
抗体が検出可能な標識を含む、請求項69記載の方法。
【請求項71】
抗体が固相支持体に結合する、請求項69記載の方法。
【請求項72】
抗体が、配列番号:1と44、配列番号:2と45、配列番号:3と46、配列番号:4と47、配列番号:5と48、配列番号:6と49、配列番号:7と50、配列番号:3と44、配列番号:3と45、配列番号:3と47、配列番号:3と48、配列番号:3と49、配列番号:3と50、配列番号:7と44、配列番号:7と45、配列番号:7と47、配列番号:7と48、配列番号:8と51、配列番号:9と52、配列番号:10と53、配列番号:11と54、配列番号:12と55、配列番号:13と56、配列番号:14と57、配列番号:15と58、配列番号:16と59、配列番号:17と60、配列番号:18と61、配列番号:19と62、配列番号:20と63、配列番号:21と64、配列番号:22と65、配列番号:23と66、配列番号:24と67、配列番号:25と68、配列番号:26と69、配列番号:27と70、配列番号:28と71、配列番号:29と72、配列番号:30と73、配列番号:31と74、配列番号:32と75、配列番号:33と76、配列番号:34と77、配列番号:35と78、配列番号:36と79、配列番号:37と80、配列番号:38と81、配列番号:39と82、配列番号:40と83、配列番号:41と84、配列番号:42と85、および配列番号:43と86からなる群より選択されるVHCDR3とVLCDR3のアミノ酸配列対を含む、請求項69記載の方法。
【請求項73】
以下の段階を含む、TIMP-1レベルが上昇している障害を診断するために役立つ方法:
障害を有することが疑われる患者からの試料をTIMP-1に結合するヒト抗体に接触させる段階;および
それによって正常な試料における複合体の量より多い複合体の量が検出されれば、患者が障害を有する可能性があると同定される、抗体-TIMP-1複合体の存在をアッセイする段階。
【請求項74】
抗体が検出可能な標識を含む、請求項73記載の方法。
【請求項75】
抗体が固相支持体に結合する、請求項73記載の方法。
【請求項76】
抗体が、配列番号:1と44、配列番号:2と45、配列番号:3と46、配列番号:4と47、配列番号:5と48、配列番号:6と49、配列番号:7と50、配列番号:3と44、配列番号:3と45、配列番号:3と47、配列番号:3と48、配列番号:3と49、配列番号:3と50、配列番号:7と44、配列番号:7と45、配列番号:7と47、配列番号:7と48、配列番号:8と51、配列番号:9と52、配列番号:10と53、配列番号:11と54、配列番号:12と55、配列番号:13と56、配列番号:14と57、配列番号:15と58、配列番号:16と59、配列番号:17と60、配列番号:18と61、配列番号:19と62、配列番号:20と63、配列番号:21と64、配列番号:22と65、配列番号:23と66、配列番号:24と67、配列番号:25と68、配列番号:26と69、配列番号:27と70、配列番号:28と71、配列番号:29と72、配列番号:30と73、配列番号:31と74、配列番号:32と75、配列番号:33と76、配列番号:34と77、配列番号:35と78、配列番号:36と79、配列番号:37と80、配列番号:38と81、配列番号:39と82、配列番号:40と83、配列番号:41と84、配列番号:42と85、配列番号:43と86、配列番号:3と48、配列番号:360と48、配列番号:3と365、配列番号:16と59、配列番号:18と61、配列番号:34と77、配列番号:34と379、配列番号:18と376、配列番号:18と377、および配列番号:18と378からなる群より選択されるVHCDR3とVLCDR3のアミノ酸配列対を含む、請求項73記載の方法。
【請求項77】
試料が結腸、肝臓、心臓、腎臓、前立腺、血清、および肺からなる群より選択される組織から得られる、請求項73記載の方法。
【請求項78】
障害が、肝線維症、アルコール性肝疾患、心線維症、急性心症候群、ループス腎炎、糸球体硬化性腎疾患、良性前立腺過形成、肺癌、結腸癌、および特発性肺線維症からなる群より選択される、請求項73記載の方法。
【請求項1】
抗体がメタロプロテアーゼ-1の組織阻害剤(TIMP-1)に結合して、TIMP-1のマトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害活性を中和する、ヒト抗体の精製調製物。
【請求項2】
MMPがヒトMMP-1である、請求項1記載の調製物。
【請求項3】
MMPがラットMMP-13である、請求項2記載の調製物。
【請求項4】
TIMP-1がヒトTIMP-1である、請求項1記載の調製物。
【請求項5】
抗体が、約0.1 nM〜約10μM、約2 nM〜約1μM、約2 nM〜約200 nM、約2 nM〜約150 nM、約50 nM〜約100 nM、約0.2 nM〜約13 nM、約0.2 nM〜約0.5 nM、約2 nM〜約13 nM、および約0.5 nM〜約2 nMからなる群より選択されるKdでヒトTIMP-1に結合する、請求項4記載の調製物。
【請求項6】
抗体が、約0.2 nM、約0.3 nM、約0.5 M、約0.6 nM、約2 nM、約7 nM、約10 nM、約11 nMおよび約13 nMからなる群より選択されるKdでヒトTIMP-1に結合する、請求項4記載の調製物。
【請求項7】
抗体が、約0.1 nM〜約200 nM、約1 nM〜約100 nM、約2 nM〜約50 nM、約5 nM〜約25 nM、約10 nM〜約15 nM、約0.2 nM〜約11 nM、約0.2 nM〜約4 nM、および約4 nM〜約11 nMからなる群より選択されるIC50でヒトTIMP-1のMMP-阻害活性を中和する、請求項4記載の調製物。
【請求項8】
抗体が、約0.2 nM、約0.3 nM、約0.4 nM、約4 nM、約7 nM、約9 nM、および約11 nMからなる群より選択されるIC50でヒトTIMP-1のMMP-阻害活性を中和する、請求項4記載の調製物。
【請求項9】
ヒトTIMP-1に対する結合に関するKdとヒトTIMP-1のMMP-阻害活性の中和に関するIC50とがほぼ等しい、請求項4記載の調製物。
【請求項10】
TIMP-1がラットTIMP-1である、請求項1記載の調製物。
【請求項11】
抗体が、約0.1 nM〜約10μM、約2 nM〜約1μM、約2 nM〜約200 nM、約2 nM〜約150 nM、約50 nM〜約100 nM、約1.3 nM〜約13 nM、約1.8 nM〜約10 nM、約2 nM〜約9 nM、約1.3 nM〜約9 nM、および約2 nM〜約10 nMからなる群より選択されるKdでラットTIMP-1に結合する、請求項10記載の調製物。
【請求項12】
抗体が、約0.8 nM、約1 nM、約1.3 nM、約1.9 nM、約2 nM、約3 nM、約9 nM、約10 nM、約13 nM、約14 nM、および約15 nMからなる群より選択されるKdでラットTIMP-1に結合する、請求項10記載の調製物。
【請求項13】
抗体が、約0.1 nM〜約300 nM、約1 nM〜約100 nM、約2 nM〜約50 nM、約5 nM〜約25 nM、約10 nM〜約15 nM、約1.1 nM〜約14 nM、約1.6 nM〜約11 nM、約3 nM〜約7 nM、約1.1 nM〜約7 nM、約1.1 nM〜約11 nM、約3 nM〜約11 nM、および約3 nM〜約14 nMからなる群より選択されるIC50でラットTIMP-1活性を中和する、請求項10記載の調製物。
【請求項14】
抗体が、約1.1 nM、約1.6 nM、約3 nM、約7 nM、約11 nM、約14 nM、約19 nM、約20 nM、約30 nM、および約100 nMからなる群より選択されるIC50でラットTIMP-1活性を中和する、請求項10記載の調製物。
【請求項15】
ラットTIMP-1に対する結合に関するKdとラットTIMP-1のMMP-阻害活性の中和に関するIC50とがほぼ等しい、請求項10記載の調製物。
【請求項16】
配列番号:1〜43および360からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVHCDR3領域を含むヒト抗体の精製調製物。
【請求項17】
配列番号:44〜86および365〜379からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVLCDR3領域を含むヒト抗体の精製調製物。
【請求項18】
配列番号:1と44、配列番号:2と45、配列番号:3と46、配列番号:4と47、配列番号:5と48、配列番号:6と49、配列番号:7と50、配列番号:3と44、配列番号:3と45、配列番号:3と47、配列番号:3と48、配列番号:3と49、配列番号:3と50、配列番号:7と44、配列番号:7と45、配列番号:7と47、配列番号:7と48、配列番号:8と51、配列番号:9と52、配列番号:10と53、配列番号:11と54、配列番号:12と55、配列番号:13と56、配列番号:14と57、配列番号:15と58、配列番号:16と59、配列番号:17と60、配列番号:18と61、配列番号:19と62、配列番号:20と63、配列番号:21と64、配列番号:22と65、配列番号:23と66、配列番号:24と67、配列番号:25と68、配列番号:26と69、配列番号:27と70、配列番号:28と71、配列番号:29と72、配列番号:30と73、配列番号:31と74、配列番号:32と75、配列番号:33と76、配列番号:34と77、配列番号:35と78、配列番号:36と79、配列番号:37と80、配列番号:38と81、配列番号:39と82、配列番号:40と83、配列番号:41と84、配列番号:42と85、配列番号:43と86、配列番号:3と48、配列番号:360と48、配列番号:3と365、配列番号:16と59、配列番号:18と61、配列番号:34と77、配列番号:34と379、配列番号:18と376、配列番号:18と377、および配列番号:18と378からなる群より選択されるVHCDR3とVLCDR3のアミノ酸配列対を含むヒト抗体の精製調製物。
【請求項19】
配列番号:1と44、配列番号:2と45、配列番号:3と46、配列番号:4と47、配列番号:5と48、配列番号:6と49、配列番号:7と50、配列番号:3と44、配列番号:3と45、配列番号:3と47、配列番号:3と48、配列番号:3と49、配列番号:3と50、配列番号:7と44、配列番号:7と45、配列番号:7と47、配列番号:7と48、配列番号:8と51、配列番号:9と52、配列番号:10と53、配列番号:11と54、配列番号:12と55、配列番号:13と56、配列番号:14と57、配列番号:15と58、配列番号:16と59、配列番号:17と60、配列番号:18と61、配列番号:19と62、配列番号:20と63、配列番号:21と64、配列番号:22と65、配列番号:23と66、配列番号:24と67、配列番号:25と68、配列番号:26と69、配列番号:27と70、配列番号:28と71、配列番号:29と72、配列番号:30と73、配列番号:31と74、配列番号:32と75、配列番号:33と76、配列番号:34と77、配列番号:35と78、配列番号:36と79、配列番号:37と80、配列番号:38と81、配列番号:39と82、配列番号:40と83、配列番号:41と84、配列番号:42と85、配列番号:43と86、配列番号:3と48、配列番号:360と48、配列番号:3と365、配列番号:16と59、配列番号:18と61、配列番号:34と77、配列番号:34と379、配列番号:18と376、配列番号:18と377、および配列番号:18と378からなる群より選択されるVHCDR3とVLCDR3のアミノ酸配列対を含むヒト抗体の精製調製物。
【請求項20】
ヒト抗体が配列番号:140〜182からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する重鎖を含む、請求項19記載の精製調製物。
【請求項21】
ヒト抗体が、配列番号:97〜139からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、請求項19記載の精製調製物。
【請求項22】
配列番号:140と97、配列番号:141と98、配列番号:142と99、配列番号:143と100、配列番号:144と101、配列番号:145と102、配列番号:146と103、配列番号:142と97、配列番号:142と98、配列番号:142と100、配列番号:142と101、配列番号:142と102、配列番号:142と103、配列番号:146と97、配列番号:146と98、配列番号:146と100、配列番号:146と101、配列番号:148と104、配列番号:148と105、配列番号:149と106、配列番号:150と107、配列番号:151と108、配列番号:152と109、配列番号:153と110、配列番号:154と111、配列番号:155と112、配列番号:156と113、配列番号:157と114、配列番号:158と115、配列番号:159と116、配列番号:160と117、配列番号:161と118、配列番号:162と119、配列番号:163と120、配列番号:164と121、配列番号:165と122、配列番号:166と123、配列番号:167と124、配列番号:168と125、配列番号:169と126、配列番号:170と127、配列番号:171と128、配列番号:172と129、配列番号:173と130、配列番号:174と131、配列番号:175と132、配列番号:176と133、配列番号:177と134、配列番号:178と135、配列番号:179と136、配列番号:180と137、配列番号:181と138、および配列番号:182と139からなる群より選択される重鎖と軽鎖のアミノ酸対を含むヒト抗体の精製調製物。
【請求項23】
以下を含む薬学的組成物:
(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP-阻害活性を中和する、ヒト抗体;および
薬学的に許容される担体。
【請求項24】
MMPがヒトMMP-1である、請求項23記載の薬学的組成物。
【請求項25】
MMPがラットMMP-13である、請求項23記載の薬学的組成物。
【請求項26】
TIMP-1がヒトTIMP-1である、請求項23記載の薬学的組成物。
【請求項27】
TIMP-1がラットTIMP-1である、請求項23記載の薬学的組成物。
【請求項28】
TIMP-1に対する結合に関するKdとTIMP-1のMMP-阻害活性の中和に関するIC50とがほぼ等しい、請求項23記載の薬学的組成物。
【請求項29】
ヒト抗体が(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する、配列番号:1〜43および360からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVHCDR3領域を含むヒト抗体をコードする精製ポリヌクレオチド。
【請求項30】
VHCDR3領域が、配列番号:227〜269からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる、請求項31記載の精製ポリヌクレオチド。
【請求項31】
ヒト抗体が(1)TIMP-1に結合して、(2)TIMP-1のMMP阻害活性を中和する、配列番号:44〜86および365〜379からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むVLCDR3領域を含むヒト抗体をコードする精製ポリヌクレオチド。
【請求項32】
VLCDR3領域が、配列番号:184〜226からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる、請求項31記載の精製ポリヌクレオチド。
【請求項33】
ヒト抗体が、配列番号:140〜182からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する重鎖を含む、請求項31記載の精製ポリヌクレオチド。
【請求項34】
重鎖が、配列番号:269〜311からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる、請求項33記載の精製ポリヌクレオチド。
【請求項35】
ヒト抗体が、配列番号:97〜139からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、請求項33記載の精製ポリヌクレオチド。
【請求項36】
軽鎖が配列番号:312〜354からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる、請求項35記載の精製ポリヌクレオチド。
【請求項37】
請求項29記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項38】
請求項30記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項39】
請求項31記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項40】
請求項32記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項41】
請求項33記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項42】
請求項34記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項43】
請求項35記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項44】
請求項36記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項45】
請求項37記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項46】
請求項38記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項47】
請求項39記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項48】
請求項40記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項49】
請求項41記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項50】
請求項42記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項51】
請求項43記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項52】
請求項44記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項53】
以下の段階を含む、ヒト抗体を作製する方法:
抗体が発現される条件で請求項45記載の宿主細胞を培養する段階;および
宿主細胞培養物からヒト抗体を精製する段階。
【請求項54】
発現ベクターが、配列番号:183〜357からなる群より選択されるポリヌクレオチド配列を含む、請求項55記載の方法。
【請求項55】
以下の段階を含む、TIMP-1のMMP-阻害活性を減少させる方法:
それによってTIMP-1のMMP-阻害活性が、抗体の非存在下でのTIMP-1のMMP-阻害活性と比較して減少する、TIMP-1に結合するヒト抗体にTIMP-1を接触させる段階。
【請求項56】
MMPがヒトMMP-1である、請求項55記載の方法。
【請求項57】
MMPがラットMMP-13である、請求項55記載の方法。
【請求項58】
TIMP-1がヒトTIMP-1である、請求項55記載の方法。
【請求項59】
TIMP-1がラットTIMP-1である、請求項55記載の方法。
【請求項60】
接触させる段階が、無細胞系において行われる、請求項55記載の方法。
【請求項61】
接触させる段階が、細胞培養系において行われる、請求項55記載の方法。
【請求項62】
接触させる段階がインビボで行われる、請求項55記載の方法。
【請求項63】
抗体が、配列番号:1と44、配列番号:2と45、配列番号:3と46、配列番号:4と47、配列番号:5と48、配列番号:6と49、配列番号:7と50、配列番号:3と44、配列番号:3と45、配列番号:3と47、配列番号:3と48、配列番号:3と49、配列番号:3と50、配列番号:7と44、配列番号:7と45、配列番号:7と47、配列番号:7と48、配列番号:8と51、配列番号:9と52、配列番号:10と53、配列番号:11と54、配列番号:12と55、配列番号:13と56、配列番号:14と57、配列番号:15と58、配列番号:16と59、配列番号:17と60、配列番号:18と61、配列番号:19と62、配列番号:20と63、配列番号:21と64、配列番号:22と65、配列番号:23と66、配列番号:24と67、配列番号:25と68、配列番号:26と69、配列番号:27と70、配列番号:28と71、配列番号:29と72、配列番号:30と73、配列番号:31と74、配列番号:32と75、配列番号:33と76、配列番号:34と77、配列番号:35と78、配列番号:36と79、配列番号:37と80、配列番号:38と81、配列番号:39と82、配列番号:40と83、配列番号:41と84、配列番号:42と85、配列番号:43と86、配列番号:3と48、配列番号:360と48、配列番号:3と365、配列番号:16と59、配列番号:18と61、配列番号:34と77、配列番号:34と379、配列番号:18と376、配列番号:18と377、および配列番号:18と378からなる群より選択されるVHCDR3とVLCDR3のアミノ酸配列対を含む、請求項55記載の方法。
【請求項64】
以下の段階を含む、TIMP-1が上昇している障害の症状を改善する方法:
それによって障害の症状が改善される、TIMP-1のMMP-阻害活性を中和するヒト抗体の有効量を、障害を有する患者に投与する段階。
【請求項65】
MMPがヒトMMP-1である、請求項64記載の方法。
【請求項66】
MMPがラットMMP-13である、請求項64記載の方法。
【請求項67】
障害が、肝線維症、アルコール性肝疾患、心線維症、急性冠血管症候群、ループス腎炎、糸球体硬化性腎疾患、特発性肺線維症、良性前立腺過形成、肺癌、および結腸癌からなる群より選択される、請求項64記載の方法。
【請求項68】
抗体が、配列番号:1と44、配列番号:2と45、配列番号:3と46、配列番号:4と47、配列番号:5と48、配列番号:6と49、配列番号:7と50、配列番号:3と44、配列番号:3と45、配列番号:3と47、配列番号:3と48、配列番号:3と49、配列番号:3と50、配列番号:7と44、配列番号:7と45、配列番号:7と47、配列番号:7と48、配列番号:8と51、配列番号:9と52、配列番号:10と53、配列番号:11と54、配列番号:12と55、配列番号:13と56、配列番号:14と57、配列番号:15と58、配列番号:16と59、配列番号:17と60、配列番号:18と61、配列番号:19と62、配列番号:20と63、配列番号:21と64、配列番号:22と65、配列番号:23と66、配列番号:24と67、配列番号:25と68、配列番号:26と69、配列番号:27と70、配列番号:28と71、配列番号:29と72、配列番号:30と73、配列番号:31と74、配列番号:32と75、配列番号:33と76、配列番号:34と77、配列番号:35と78、配列番号:36と79、配列番号:37と80、配列番号:38と81、配列番号:39と82、配列番号:40と83、配列番号:41と84、配列番号:42と85、配列番号:43と86、配列番号:3と48、配列番号:360と48、配列番号:3と365、配列番号:16と59、配列番号:18と61、配列番号:34と77、配列番号:34と379、配列番号:18と376、配列番号:18と377、および配列番号:18と378からなる群より選択されるVHCDR3とVLCDR3のアミノ酸配列対を含む、請求項64記載の方法。
【請求項69】
以下の段階を含む、試験調製物においてTIMP-1を検出する方法:
試験調製物をTIMP-1に特異的に結合するヒト抗体に接触させる段階;および
抗体-TIMP-1複合体の存在に関して試験調製物をアッセイする段階。
【請求項70】
抗体が検出可能な標識を含む、請求項69記載の方法。
【請求項71】
抗体が固相支持体に結合する、請求項69記載の方法。
【請求項72】
抗体が、配列番号:1と44、配列番号:2と45、配列番号:3と46、配列番号:4と47、配列番号:5と48、配列番号:6と49、配列番号:7と50、配列番号:3と44、配列番号:3と45、配列番号:3と47、配列番号:3と48、配列番号:3と49、配列番号:3と50、配列番号:7と44、配列番号:7と45、配列番号:7と47、配列番号:7と48、配列番号:8と51、配列番号:9と52、配列番号:10と53、配列番号:11と54、配列番号:12と55、配列番号:13と56、配列番号:14と57、配列番号:15と58、配列番号:16と59、配列番号:17と60、配列番号:18と61、配列番号:19と62、配列番号:20と63、配列番号:21と64、配列番号:22と65、配列番号:23と66、配列番号:24と67、配列番号:25と68、配列番号:26と69、配列番号:27と70、配列番号:28と71、配列番号:29と72、配列番号:30と73、配列番号:31と74、配列番号:32と75、配列番号:33と76、配列番号:34と77、配列番号:35と78、配列番号:36と79、配列番号:37と80、配列番号:38と81、配列番号:39と82、配列番号:40と83、配列番号:41と84、配列番号:42と85、および配列番号:43と86からなる群より選択されるVHCDR3とVLCDR3のアミノ酸配列対を含む、請求項69記載の方法。
【請求項73】
以下の段階を含む、TIMP-1レベルが上昇している障害を診断するために役立つ方法:
障害を有することが疑われる患者からの試料をTIMP-1に結合するヒト抗体に接触させる段階;および
それによって正常な試料における複合体の量より多い複合体の量が検出されれば、患者が障害を有する可能性があると同定される、抗体-TIMP-1複合体の存在をアッセイする段階。
【請求項74】
抗体が検出可能な標識を含む、請求項73記載の方法。
【請求項75】
抗体が固相支持体に結合する、請求項73記載の方法。
【請求項76】
抗体が、配列番号:1と44、配列番号:2と45、配列番号:3と46、配列番号:4と47、配列番号:5と48、配列番号:6と49、配列番号:7と50、配列番号:3と44、配列番号:3と45、配列番号:3と47、配列番号:3と48、配列番号:3と49、配列番号:3と50、配列番号:7と44、配列番号:7と45、配列番号:7と47、配列番号:7と48、配列番号:8と51、配列番号:9と52、配列番号:10と53、配列番号:11と54、配列番号:12と55、配列番号:13と56、配列番号:14と57、配列番号:15と58、配列番号:16と59、配列番号:17と60、配列番号:18と61、配列番号:19と62、配列番号:20と63、配列番号:21と64、配列番号:22と65、配列番号:23と66、配列番号:24と67、配列番号:25と68、配列番号:26と69、配列番号:27と70、配列番号:28と71、配列番号:29と72、配列番号:30と73、配列番号:31と74、配列番号:32と75、配列番号:33と76、配列番号:34と77、配列番号:35と78、配列番号:36と79、配列番号:37と80、配列番号:38と81、配列番号:39と82、配列番号:40と83、配列番号:41と84、配列番号:42と85、配列番号:43と86、配列番号:3と48、配列番号:360と48、配列番号:3と365、配列番号:16と59、配列番号:18と61、配列番号:34と77、配列番号:34と379、配列番号:18と376、配列番号:18と377、および配列番号:18と378からなる群より選択されるVHCDR3とVLCDR3のアミノ酸配列対を含む、請求項73記載の方法。
【請求項77】
試料が結腸、肝臓、心臓、腎臓、前立腺、血清、および肺からなる群より選択される組織から得られる、請求項73記載の方法。
【請求項78】
障害が、肝線維症、アルコール性肝疾患、心線維症、急性心症候群、ループス腎炎、糸球体硬化性腎疾患、良性前立腺過形成、肺癌、結腸癌、および特発性肺線維症からなる群より選択される、請求項73記載の方法。
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−195233(P2009−195233A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93776(P2009−93776)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【分割の表示】特願2002−583600(P2002−583600)の分割
【原出願日】平成14年4月24日(2002.4.24)
【出願人】(503392792)バイエル コーポレーション (1)
【出願人】(503392817)モルフォシス アーゲー (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【分割の表示】特願2002−583600(P2002−583600)の分割
【原出願日】平成14年4月24日(2002.4.24)
【出願人】(503392792)バイエル コーポレーション (1)
【出願人】(503392817)モルフォシス アーゲー (1)
【Fターム(参考)】
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