説明

ヒドロゲルを形成可能な浸透性の高い膨潤性ポリマーを含む吸収性物品のための吸収性部材

本発明は、吸収性物品用の吸収性コアにおける吸収性部材に関し、これは尿のような身体の排泄物を受け取り保持することを目的とする。こうした物品は、乳児用おむつ、トレーニングパンツ、成人用失禁物品、女性用ケア物品などのような使い捨て衛生物品である。吸収性コア中の緩衝作用のある繊維状吸収材料の大部分又はすべてを、獲得挙動を保持又は改善しながら液体を保持できる液体貯蔵材料で置き換えることは、快適さの利得により緩衝作用の減少を補って余りあるために望ましく、改善はこのことを認識することに本質的に基づく。吸収性部材の吸収性コアは、樹枝状構造を有する少なくとも1つの親水性ポリマーと、少なくとも1つの非水溶性ホスフェートとを組み合わせて含む膨潤性のヒドロゲル形成ポリマーを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品用の吸収性コアにおける吸収性部材に関し、これは尿のような身体の排泄物を受け取り保持することを目的とする。こうした物品は、乳児用おむつ、トレーニングパンツ、成人用失禁物品、女性用ケア物品などのような使い捨て衛生物品である。吸収性コア中の緩衝作用のある繊維状吸収材料の大部分又はすべてを、獲得挙動を保持又は改善しながら液体を保持できる液体貯蔵材料で置き換えることは、快適さの利得により緩衝作用の減少を補って余りあるために望ましく、改善はこのことを認識することに本質的に基づく。しかしながら快適さは、液体処理に関するおむつの、より基本的要件が満たされる又は改善される場合にのみ達成され得る。特に、より薄くより乾いた吸収性物品の構築を可能にするために、この液体処理性能が従来の吸収性構造の性能を超えて改善される場合には、こうした物品のユーザーは、薄さの利得と比べて期待を超える快適さの改善を提供するものとしてこうした物品を体験する。こうした吸収性コア及びそれらを用いて製造される物品を提供することは、特に超吸収性ポリマー濃度にて液体を獲得及び伝導できる新規な浸透性の高い吸収性ゲル材料の開発によって可能となっただけであり、これは現在は使用されていない。この飛躍的な開発を可能にする第2の観点は、特に使用中にこうした物品の浸透性を維持する吸収性部材の能力を改善することにより、こうした高い超吸収性ポリマー濃度物品の快適さ及び性能を、乾いた時から完全に充填されるまでの物品の全使用周期を通じて保持する能力である。
【背景技術】
【0002】
身体の排泄物、例えば尿又は糞便を受け取り保持するための吸収性物品、例えば使い捨て紙おむつ、トレーニングパンツ、及び成人用失禁物品は、当該技術分野において周知であり、それらの性能を改善することに対して著しい努力が費やされてきた。こうした改善は一般に、これらの物品の第1の機能、すなわち体液を保持することに対処することを目指しているが、着用者の快適さを増すことにより、こうした物品を着用することに関連する欠点を最小にすることもまた目指している。こうした快適さに寄与する1つの態様は、身体の排泄物(主に液体)を、「吸収性構造」の中にどのように収集し保持するかということであり、それにより排泄物質は物品によって獲得され、次に獲得(分配、浸透)場所から導き出され、次いで貯蔵(保持)される。
【0003】
第1の厚さの原因、即ち吸収性構造を減少することにより物品の厚さを減少することは、快適さを改善するために役立つことも、定着している。しかしながら、これは常に、液体処理性能と厚さとの間のバランスについての問題であった。また、かなりの量の緩衝材が、快適なおむつのために必要であると考えられていた。最後に、当業者は、以前は繊維性マトリックスによって提供された液体の獲得及び分配の機能の一部分又は全部を最新の粒子状超吸収性材料が引き継ぐという点まで、繊維性材料を減少又は更には除去することは不可能であると考えていた。最後に、乾いている時にはこうした有益な態様全てを提供できる構造があったとしても、これを、液体の最初の噴出が吸収された後でさえも、液体処理及び快適さの性能が保持されるように、吸収性構造中に構築できるということは、全く考えも及ばないことであった。
【0004】
特定の薄さの吸収性構造の開発はまた、こうした開発を実質的な商業的利益の対象にするその他の有益な態様を有する。例えば、より薄いおむつは着用するのにより嵩高くなく、また衣類の下によりよく適合するというだけでなく、それらはまた包装がより小型であり、消費者がおむつを運搬及び保管するのをより容易にする。包装の小型化はまた、おむつ単位あたりの店内で必要な陳列棚の空間がより小さくなることを含む、製造業者や流通業者にとっての保管運送費の減少を結果としてもたらす。
【0005】
示されたように、おむつのようなより薄い吸収性物品を提供する能力は、多量の排泄された体液、特に尿を獲得し貯蔵できる相対的に薄い吸収性構造を開発する能力に付随してきた。この点に関して、「ヒドロゲル」、「ヒドロゲル形成ポリマー」、「超吸収体」、「ヒドロコロイド」、「超吸収性ポリマー又はSAP」と称されることが多い超吸収性ポリマーの使用は、特に重要であった。例えば、EP1 393 757A、第8〜22章に含まれる議論を参照のこと。
【0006】
これらのSAPのより高い濃度での重要な特性は、それらの浸透性/流れ伝導性である。浸透性/流れ伝導性は、塩水流伝導度(SFC)値に関して定義され得る。SFCは、当該技術分野において既定のことであり、例えばPCT国際公開特許WO95/26209の69ページ以下、又はEP−B−752892の224項以下に非常に詳細に定義されている。SFCは、膨らんだSAPから形成されるヒドロゲル層の、体液を移送する能力のように、塩水を移送する材料の能力を測定する。パルプ繊維をエアレイドした(例えば、密度が0.15g/ccの)ウェブは、通常約200×10−7cms/gのSFC値を示す。対照的に、アクアリック(Aqualic)L−74(株式会社日本触媒(Nippon Shokubai Co.,LTD)製造)、及びナルコ(Nalco)−1180(ナルコ・ケミカル社(Nalco Chemical Co.)製造)のような典型的なSAPは、多くとも1×10−7cms/gのSFC値を提示する。それ故に、SFCに関して木材パルプ繊維のエアレイドウェブに、より接近するSAPを使用できることは極めて望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それ故に、(1)相対的に高濃度のSAP粒子を有する1以上の領域を含み;(2)エアレイド繊維性ウェブにより近い相対的に高い浸透性/流れ伝導特性を有し;(3)通常の使用条件/圧力下で、通常の使用応力に供される場合であっても毛管吸引力の高い獲得層から流体を容易に獲得でき、さらにはその機能を提供できる吸収性部材を提供することが可能になるのが望ましい。また、体液によって膨潤した場合に、良好な浸透性、改善された吸上及び/又は改善された膨潤特性を有し続けるSAPをこうした吸収性部材に使用できることが極めて望ましい。
【発明を解決するための手段】
【0008】
本発明及びその特質は独立した請求項の中で定義され、好ましい実施形態は従属する請求項の中で特定される。特に本発明は、乳児用おむつ又は成人用失禁物品のような吸収性失禁物品の提供に有用な吸収性コアに関し、この物品は好ましくは吸収性コアが(直接)隣接して配置されるトップシート、及び更に任意に、トップシートと共に吸収性コアを挟むバックシートを含む。
【0009】
本発明の吸収性コアは、尿のような体液の収集のために特に有用である。吸収性コアは、体液の獲得、移送、分配、及び貯蔵を含む、物品の流体処理特性に主として関与する吸収性物品の構成要素である。そのようなものとして、吸収性コアは典型的には、吸収性物品のトップシート又はバックシートを含まない。吸収性コアは、多数の吸収性部材によって提供されることができる。吸収性部材は、通常1以上の流体処理特性、例えば流体獲得、流体分配、流体移送、流体貯蔵などを提供する吸収性コアの構成成分を指す。吸収性部材は、吸収性コア全体又は吸収性コアの一部のみを提供でき、すなわち吸収性コアは1以上の吸収性部材を含むことができる。
【0010】
本発明によれば、吸収性コアに含まれる吸収性部材は、膨潤性ヒドロゲル形成ポリマーを用いて提供される。この膨潤性ヒドロゲル形成ポリマーは、樹枝状構造を有する少なくとも1つの親水性ポリマーと少なくとも1つの非水溶性ホスフェートとを組み合わせて含む。
【0011】
好ましい実施形態において、樹枝状構造を有する親水性ポリマーは、ポリオールと2,2−ジメチロールプロピオン酸とから製造されるポリエステルであり、あるいは親水性ポリマーは、ポリプロピレンイミン、ポリアミドアミン、ポリエステルアミド又はこれらの組み合わせから成る群から選択できる。
【0012】
好ましい実施形態において、非水溶性ホスフェートはリン酸カルシウムである。他の好ましい代替物又は前記実施形態との組み合わせにおいて、ヒドロゲル形成ポリマーは、粉末化された及び/又は塵状の添加剤を含むことができ、好ましくはこの添加剤は、金属塩、焼成ケイ酸、多糖類、非イオン性界面活性剤、ワックス、珪藻土又はこれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0013】
本発明のヒドロゲル形成ポリマーは、好ましくは高い塩水流伝導度、好ましくは少なくとも80×10−7cmsg−1、好ましくは少なくとも120×10−7cmsg−1の塩水流伝導度を有する。
【0014】
本発明の吸収性コアの特に有益な実施形態において、吸収性部材は、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも75重量%、最も好ましくは少なくとも85重量%の前記ヒドロゲル形成ポリマーを含む。尿のような体液を受け取るための液体透過性トップシートを含む吸収性物品にて吸収性コアを使用する場合、吸収性部材がトップシートに対して可能な限り近くに位置するようにコアがトップシートに隣接して配置されるのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
A.定義
本明細書で使用する時、「吸収性コア」という用語は、体液の獲得、移送、分配、及び貯蔵を含む、物品の流体処理特性に主として関与する吸収性物品の構成要素を指す。そのようなものとして、吸収性コアは典型的には、吸収性物品のトップシート又はバックシートを含まない。
【0016】
本明細書で使用する時、「吸収性部材」という用語は、通常1以上の流体処理特性、例えば流体獲得、流体分配、流体移送、流体貯蔵などを提供する吸収性コアの構成成分を指す。吸収性部材は、吸収性コア全体又は吸収性コアの一部のみを提供でき、すなわち吸収性コアは1以上の吸収性部材を含むことができる。
【0017】
本明細書で使用する時、「含む」という用語は、例えば様々な構成成分、部材、工程などが、本発明によって共に使用され得ることを意味する。それ故に、「含む」という用語は、より限定的な用語「〜から製造される」及び「〜から成る」を包含し、これらの後者の、より限定的用語は、当該技術で理解されるようなそれらの標準的な意味を有する。
【0018】
本明細書で使用する全ての百分率、比率、及び割合は、特に指定のない限り、重量基準である。
【0019】
B.吸収性コアの材料及び構成成分
a.ヒドロゲル形成吸収性ポリマーの化学組成
本発明で有用なSAP、超吸収性ポリマー(SAP(複数可))又はヒドロゲル形成ポリマーには、多量の流体を吸収することが可能である、非水溶性であるが、水膨潤性の多様なポリマーが含まれる。こうしたポリマー材料は一般に当該技術分野において既知であり、使い捨て吸収性物品の技術との関連において用いられる又は有用であると見なされるすべてのそれらの周知のポリマーを含む。特にEP−A−752892に開示されるSAP、又はF.L.ブーフホルツ(F.L.Buchholz)及びA.T.グラハム(A.T.Graham)著の教科書である名称「最新超吸収体技術(Modern Super Absorbent Technology)」、ニューヨーク、ワイリーVCH出版、1998年に開示されるものが、本発明との関連において有用である。
【0020】
SAPの製造に用いるのに好ましいポリマー材料は、部分的に中和されたポリアクリル酸及びそのデンプン誘導体の僅かに網状架橋されたポリマーである。好ましくは、SAPは約50〜約95%、好ましくは約75%の、中和された、僅かに網状架橋されたポリアクリル酸(即ち、ポリ(アクリル酸ナトリウム/アクリル酸))を含む。網状架橋は、ポリマーを実質的に非水溶性にし、またヒドロゲル形成吸収性ポリマーの吸収能力及び抽出可能なポリマー含有量の特質を部分的に決定する。これらのポリマーを網状架橋するための方法及び典型的な網状架橋剤は、米国特許第4,076,663号又は上記に引用した参照文献の中に非常に詳細に記載されている。
【0021】
SAPは、好ましくは1種類(すなわち、均質)のものであるが、ポリマーの混合物もまた本発明に用いることができる。本発明で有用なSAPは、広範囲にわたって変化する大きさ、形状及び/又は形態を有することができる。本発明の好ましい実施形態によると、これらのポリマーは、最大寸法と最小寸法との大きな比を持たない粒子の形態(例えば顆粒、粉末、粒子間凝集体、粒子間架橋凝集体など)である。SAPはまた、例えば、粉末シリカ、界面活性剤、糊、結合剤などのような、低濃度の1以上の添加物との混合物を含むことができる。
【0022】
上記のような粒子については、粒径はふるいの大きさ分析によって決定される寸法として定義される。SAP粒子の粒径を決定する方法は、米国特許第5,061,259号(ゴールドマン(Goldman)ら、1991年10月29日発行)に記載されている。
【0023】
驚くべきことに、SAPの製造に枝分かれした、特に樹枝状構造を有する親水性ポリマーを含ませることは、磨耗塵含量が低く、特に機械的応力を受けた後、粉末化された及び/又は塵様の添加剤を結合する能力が改善され、膨潤速度が速く、内部の液体移送速度も速く、最適な流動特性を有する超吸収体を提供するのに有用であることを今般見出した。
【0024】
Georg Thieme Verlag(ドイツ、シュツットガルト)発行のRomppの化学百科事典(第10版、898頁)(Rompp、Lexikon−Chemie、Georg Thieme Verlag、シュツットガルト、10版、898頁)によれば、樹枝状ポリマーは、2以上のポリマーのステップ毎の連結によって構成され、各ステップでは既に結合したモノマーが全て使用されるので、結果としてモノマー末端基の数がそれぞれのステップにて指数関数的に増大し、最終的には球状の樹木構造が形成される合成巨大分子である。
【0025】
本発明に従って使用できる樹枝状構造を有する親水性ポリマーは、少なくとも8、好ましくは少なくとも16、最も好ましくは32のヒドロキシル基、ならびに非線状の、好ましくは少なくとも14回、最も好ましくは30回分枝した基本構造を有するポリオールである。
【0026】
樹枝状構造を有する親水性ポリマーは、例えば出発物質のポリオールをC〜C20ヒドロキシカルボン酸、好ましくはC〜C12ヒドロキシカルボン酸、最も好ましくはC〜Cヒドロキシカルボン酸とエステル化することによって得られるポリエステルであり、ここでヒドロキシカルボン酸は、少なくとも2つのヒドロキシル基、好ましくは2つのヒドロキシル基及び/又は少なくとも2つのカルボン酸基を示す。特に好ましいのは、2つのヒドロキシル基及び1つのカルボン酸基を有するヒドロキシカルボン酸、特に2,2−ジメチロールプロピオン酸である。ポリオールは、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及び/又はソルビトールである。樹枝状ポリエステルが好ましく、特にボルトーン(Boltorn)(登録商標)20、ボルトーン(Boltorn)(登録商標)30、ボルトーン(Boltorn)(登録商標)40及びボルトーン(Boltorn)(登録商標)310(スウェーデンのパーストープ(Perstorp Specialty Chemicals AB))が好ましい。
【0027】
樹枝状構造を有する親水性ポリマーはまた、少なくとも2つのヒドロキシル基を有するポリオールの縮合及びその後のアルコキシル化によって得ることができるポリマーを含む。この場合の例は、グリセリン分子の縮合とその後のエトキシル化によって得ることができる分枝状ポリエチレングリコールである。
【0028】
上記に加えて、樹枝状構造を有する親水性ポリマーはまた、少なくとも1つのヒドロキシル基を有するモノマーの重合及びその後のアルコキシル化を通して得ることができる全てのポリマーを含む。重合は、架橋剤の存在下で行うのが好ましい。その表面が親水性であり、多数のヒドロキシル基を示すポリマー粒子を得ることができる。p−ヒドロキシエチルスチレンのラジカル重合とその後のアルコキシル化によって得られるいわゆる星型ポリエチレングリコールは、上記の例として、Makromol.Chem.189,2885(1988)に記載されている。
【0029】
本発明に従って使用されるポリマーのさらなる例は、商標名HYBRANE(登録商標)並びにAstramol−Dendrimere(登録商標)(DSM N.V.(オランダ))の高度に分枝したポリマーである。このカテゴリーに含まれるのは、例えばブチレンジアミンを出発物質として、アクリロニトリルとの複数の繰り返しミカエル縮合及び水素添加によって得られる特に高度に分枝したポリ(プロピレンイミン)、星型−ポリカプロラクトン、星型−ナイロン−6、例えば無水コハク酸及びジエタノールアミンの1:1のモル比での付加生成物をベースにした高度に分枝したポリエステルアミドである。本発明に従うプロセスにおいて、例えばアンモニアを出発物質としてメチルアクリレート及びエチレンジアミンを用いた複数の繰り返し変換によって得られるポリ(アミドアミン)ベースのいわゆるPAMAMデンドリマーも使用できる。
【0030】
本発明に従う好ましいものは、樹枝状構造を有し、ガラス転移温度Tが20〜200℃、特に好ましくは25〜50℃であり、及び/又は平均分子量が1000〜10000g/mol、最も好ましくは2000〜6000g/molである親水性ポリマーである。
【0031】
本発明によれば、0.005〜10重量%の親水性ポリマーが好ましい。膨潤性のヒドロゲル形成ポリマーを参照した百分率では、さらに良好には0.01〜5重量%、より好ましくは0.05〜1重量%、最も好ましくは0.10〜0.80重量%の樹枝状構造を有する親水性ポリマーが使用される。
【0032】
樹枝状構造を有する親水性ポリマーは、乾燥した吸水性ヒドロゲルと混合されるのが好ましい。乾燥とは、20重量%未満の水分含有量を意味するのが好ましく、特に好ましいのは10重量%未満の水分含有量である。しかし、樹枝状構造を有する親水性ポリマーは、表面架橋プロセスの前に、そのプロセスの間、又はそのプロセス後に膨潤性のヒドロゲル形成ポリマーに添加されてもよい。しかし、好ましくは添加又は/及びコーティングは、表面架橋プロセスの間に生じる。混合方法は制限されない。
【0033】
コーティングがベースのヒドロゲル形成ポリマーの表面架橋に付随する場合、表面架橋剤は、樹枝状ポリマーを共に有する溶液に提供されてもよく、あるいは表面架橋ミキサーに別個に添加されてもよい。塵様の又は粉末化された添加剤もベースポリマーにコーティングされる場合、樹枝状ポリマーが塵様の又は粉末化された添加剤も分散する溶媒に溶解する可能性がある。選択肢として、この混合物はまた表面架橋剤を含有してもよい。好適な溶媒は、表面架橋に使用され得る当業者に既知のあらゆるもの、好ましくは水である。
【0034】
本発明の好ましい実施形態において膨潤性ヒドロゲル形成ポリマーは、10μm未満の直径を有する粒子の画分を、重量で100ppm未満、好ましくは重量で50ppm未満、より好ましくは重量で10ppm未満で含み、ここで、膨潤性ヒドロゲル形成ポリマーは、少なくとも1つの粉末化された又は塵様の添加剤、例えば金属塩、硫酸アルミニウム及び/又は硫酸マグネシウム、焼成ケイ酸、例えばエアロジル(Aerosil)(登録商標)200、多糖類及びそれらの誘導体、非イオン性界面活性剤、ワックス、珪藻土及び/又は微視的中空内包物を含む。
【0035】
本発明に従って、ヒドロゲル形成ポリマーはまた、非水溶性ホスフェート、例えばリン酸カルシウムを含む。「非水溶性」という用語は、25℃で100mLの水に1g未満、好ましくは0.1g未満、より好ましくは0.01g未満の溶解度を意味する。
【0036】
微視的中空内包物は、Chem.Ing.Techn.75,669(2003)に記載される。微視的中空内包物は、1〜1000μmの直径を有する気体が満ちた又は排気された固体状態の球形粒子である。微視的中空内包物の典型的な壁の厚さは、それらの直径の1〜10%である。壁材料は、限定されない。可能性のある壁材料は、ガラス、セラミック形成酸化物又は混合酸化物、シリケート、アルミノシリケート、ポリマー、重縮合物、及び金属である。
【0037】
本発明の膨潤性のヒドロゲル形成ポリマーは、通常、少なくとも40×10−7cms/g、好ましくは少なくとも60×10−7cms/g、特に好ましくは80×10−7cms/g、さらにより好ましくは少なくとも120×10−7cms/g、最も好ましくは少なくとも130×10−7cms/gの塩水流伝導度(SFC)を有する。
【0038】
本発明に従う膨潤性のヒドロゲル形成ポリマーは、通常、少なくとも24g/g、好ましくは少なくとも25g/g、より好ましくは少なくとも26g/g、さらにより好ましくは少なくとも28g/g、最も好ましくは少なくとも30g/gの遠心分離保持能(CRC)を有する。
【0039】
粉末化された添加剤は、好ましくは200μm未満、特に好ましくは400μm未満の平均粒径を有する。塵様の添加剤は、200μm未満、好ましくは50μm未満、特に好ましくは10μm未満の平均粒径を有する。
【0040】
b.物理的特性
(1).塩水流伝導度(SFC)
本発明に有用なSAPにとって重要な特質及び必須であることは、体液で膨れる場合にヒドロゲルの区域又は層を形成するための、それらの浸透性又は流れ伝導性である。この浸透性又は流れ伝導性は、SAPの塩水流伝導度(SFC)値に関して本明細書で定義される。SFCは、形成されたヒドロゲル層の、使用圧力下で体液を移送又は分配するための能力を測定する。SFC値を測定する方法は、例えばEP−B−752 892の224パラグラフ以下に提供される。本発明に有用なSAPのSFC値は既に、単位に関して述べられている。本明細書に表されるように、単位の数値は10−7cms/g(又はcms/g/10,000,000)である。換言すると、40SFC単位は、10−7cm3s/gの40倍のSFU値を意味する。
【0041】
(2).遠心力保持能力(CRC)
大部分のヒドロゲル形成吸収性ポリマーでは、吸収能力の測定値としてのゲルボリュームは、合成尿の代わりに0.9パーセントの食塩溶液を用いることを除き、米国再発行特許第32,649号(ブラント(Brandt)ら、1988年4月19日再発行)に記載される方法により決定される。ゲルボリューム及びCRC能力は、乾燥重量基準で計算される。ゲルボリュームを測定するための別の方法は、形成されたヒドロゲル(例えばカチオン性モノマーから調製されるポリマー)の表面に、ブルーデキストラン(Blue Dextran)を吸着するSAPについて用いることができる(USRe32,649のゲルボリュームの方法を参照のこと)。これらのヒドロゲル形成ポリマーについて、吸収能力試験が使用されるが、計算では、実際の重量の代わりに、ヒドロゲル形成ポリマーの乾燥重量が使用される。例えば、米国特許第5,124,188号(ロー(Roe)ら、1992年6月23日発行)の27〜28段、吸収能力試験の説明を参照すること。
【0042】
遠心力保持能力の評価について、いわゆるティーバッグ評価又は測定(以後CRC測定)が、SAP材料の吸収能力の飽和に近づく状態での毛管圧力の保持を反映するのに最も適切であることが判明した。試験では、標準実験室条件(21〜23℃、50%相対湿度)が用いられる。試料のSAP材料は、密閉されたフラスコ又はその他の容器中に乾いたまま保持され、これは評価の開始の際にのみ開かれる。評価に用いられるその他の材料(ティッシュ、器具など)は、測定前の24時間、上記の実験室条件で調整される。
【0043】
CRC測定では、0.2+/−0.0050gのSAP粒子が、ティーバッグの中に入れられる(バッグは自由に液体が透過する必要があり、また粒子を保持せねばならない、すなわち、ティーバッグの孔は、最小粒子より大きくあってはならない。ティーバッグは、60mm×85mmの寸法を有するべきであり、充填後、溶着により封止される。ティーバッグは次に30分間、0.9パーセント食塩溶液中にSAP1グラム当たり少なくとも0.83Lの溶液があるように、好ましくはこの比を実質的に超過するように浸される。30分の浸漬後、ティーバッグは過剰の食塩溶液を除去するために250gで3分間遠心分離される。バッグは、0.01gの単位で計量され、吸収された液体が計算される。結果は、ティーバッグ中に入れられた乾いたSAPの量を用いて、SAP粒子1g当たりの吸収されたgとして報告される。
【0044】
c.SAPを含有する吸収性コア
本発明によれば、使い捨て吸収性物品のための吸収性コアの一部としての吸収性部材は、前述のSAP粒子を含み、他の任意成分、例えば繊維、分配/獲得又は熱可塑性材料、フォーム、スクリムなどを含んでいてもいなくてもよい。こうした吸収性部材は、このコアを用いて製造された吸収性物品の着用者が動く結果として通常遭遇する圧力及び張力及びねじれを受けても、流体貯蔵部材として機能する。しかし、こうしたポリマー含有吸収性部材はまた単一部材にて一体化されたいくつかの機能を果たすことができることを理解すべきである。
【0045】
本発明によるこれらの吸収性部材の重要な態様は、それらが、多量の体液を獲得、分配、吸収及び保持できる相対的に薄い吸収性物品を提供するために、高濃度のこれらのSAPを有する一以上の領域を含有することである。本発明による高濃度のSAPは、その他の構成成分、特に繊維性構成成分の濃度を減少するために望ましい。
【0046】
吸収性部材又は吸収性部材の所定領域中のSAP吸収性部材の濃度の測定において、部材中にて、それぞれポリマーを含有する同じ領域中に存在するSAPと他の構成成分(例えば繊維、熱可塑性材料など)とを組み合わせた重量と比較したSAP粒子の重量百分率が用いられる。これを考慮して、本発明による吸収性部材の所定領域のSAP濃度は、約50〜100%、好ましくは約60〜100%、より好ましくは約75〜100%、及び最も好ましくは約85%〜100%の範囲であり得る。
【0047】
高濃度のSAPを含む本発明による吸収性部材は、単独で又は本発明による吸収性コア及び吸収性物品の一部分として他の吸収性部材との組み合わせにおいて有用である。使用目的に応じて、本発明による好ましいコアは、少なくとも20グラム/m、好ましくは少なくとも100グラム/m、及び更により好ましくは少なくとも150グラム/mの坪量の、本発明によるSAPを含む。
【0048】
本発明によるコア中の好ましい吸収性部材は、排泄された体液を最初に獲得し、これらの流体を流体貯蔵部材に分配するのに有用なものを含むことができる。これらの好ましい吸収性部材は、複数の流体処理特性(例えば流体獲得及び分配)、又は単一の流体処理特性(例えば流体分配)を提供できる。他の吸収性部材はまた、前に特定された物理的特性を有する、より低濃度のSAPを含むことができるか、又は異なる物理的特性を有するSAPを含むことができる。好ましい吸収性部材は、吸収性されるべき液体の供給源に曝されるトップシートと、好ましくは近接して位置し、より好ましくは直接隣接している。
【0049】
d.吸収性物品
本発明の吸収性コアの独特な吸収特性のために、それらは尿吸収用使い捨て吸収性物品(使い捨て吸収性失禁物品とも呼ばれる)に用いるのに特に好適である。これらの吸収性物品は典型的には、液体不透過性(しかし好ましくは気体透過性)バックシート、バックシートに接合した又はさもなければバックシートに付随した流体透過性トップシート、及びバックシートとトップシートとの間に位置付けられた本発明による吸収性コアを含む。このような物品は、当該分野で周知であり、本明細書全体を通して記載される様々な文献、例えば欧州特許第752892号に完全に開示されている。
【0050】
本発明の明細書では、特定の実施形態が示され説明されたが、本発明の限界は添付の請求項により定義され、すべてのそれらの実施形態は添付の請求項の範囲に入る。更に、本明細書中で引用された参照文献の中に開示されたすべての情報は、所望の範囲及び/又は本発明を理解するために有用な範囲で参考として本明細書に組み込まれる。
【0051】
本明細書に沿って、本発明に従うSAP粒子を製造するために使用される製造及び評価方法の詳細な説明は、出願人/譲渡人BASF(ドイツ、ルートヴィヒスハーフェン)による名称「ヒドロゲルを形成できる浸透性の高い膨潤性ポリマーを含む吸収性物品のための吸収性部材(Absorbent member for absorbent articles comprising swellable polymers of high permeability which are capable of forming hydrogels)」の特許出願に記載されている。この出願のコピーは本発明の出願の欧州特許庁のファイルにおいて入手可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿のような体液を収集するための吸収性コアであって、前記コアが吸収性部材を含み、前記部材が
樹枝状構造を有する少なくとも1つの親水性ポリマーと
少なくとも1つの非水溶性ホスフェートと
を組み合わせて含む膨潤性ヒドロゲル形成ポリマーを含む、吸収性コア。
【請求項2】
樹枝状構造を有する前記親水性ポリマーが、ポリオール及び2,2−ジメチロールプロピオン酸から製造されるポリエステルであることを特徴とする、請求項1に記載の吸収性コア。
【請求項3】
樹枝状構造を有する前記親水性ポリマーが、ポリプロピレンイミン、ポリアミドアミン又はポリエステルアミド、あるいはこれらの組み合わせから成る群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の吸収性コア。
【請求項4】
前記非水溶性ホスフェートがリン酸カルシウムであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性コア。
【請求項5】
前記ヒドロゲル形成ポリマーが、粉末化された及び/又は塵状の添加剤を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸収性コア。
【請求項6】
前記添加剤が、金属塩、焼成ケイ酸、多糖類、非イオン性界面活性剤(tenside)、ワックス、珪藻土又はこれらの組み合わせから成る群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の吸収性コア。
【請求項7】
前記ヒドロゲル形成ポリマーが、少なくとも80×10−7cmsg−1、好ましくは少なくとも120×10−7cmsg−1の塩水流伝導度を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸収性コア。
【請求項8】
前記吸収性部材が、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも75重量%、最も好ましくは少なくとも85重量%の前記ヒドロゲル形成ポリマーを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の吸収性コア。
【請求項9】
尿のような体液を受け取るための液体透過性トップシートを含む吸収性物品であって、前記物品がさらに、請求項1〜8のいずれか一項に記載の吸収性コアを含み、前記吸収性部材が前記トップシートと可能な限り近くに位置するように前記コアが前記トップシートに隣接して配置されることを特徴とする吸収性物品。

【公表番号】特表2007−529292(P2007−529292A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505273(P2007−505273)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/010458
【国際公開番号】WO2005/094749
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】