説明

ヒドロフルオロアルカンスルホン酸の製造

スルホン酸基に結合された炭素原子に隣接する炭素原子に結合された少なくとも1個の水素を有するヒドロフルオロアルカンスルホン酸の製造方法であって、約pH4〜pH12に調節された水溶液中でフルオロオレフィンを亜硫酸塩と接触させる工程と、溶液から水を除去して固体を形成させる工程と、固体をオレウムで直接処理する工程と、ヒドロフルオロアルカンスルホン酸を蒸留する工程とを含むことを特徴とする方法。高い純度でヒドロフルオロアルカンスルホン酸カリウムの製造する方法も記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は触媒に有用な強酸の分野である。
【背景技術】
【0002】
トリフルオロメタンスルホン酸は強酸が必要とされる触媒に用いられる。トリフルオロメタンスルホン酸は、工業プロセスにおいて広く用いられている弗化水素および硫酸などの無機酸のより安全でより容易に取り扱われる代替品を提供する。テトラフルオロエタンスルホン酸(TFESA)などの既知のヒドロフルオロアルカンスルホン酸は、触媒用途においてトリフルオロメタンスルホン酸を置き換えるためのより有効な候補であり得る。
【0003】
ヒドロフルオロアルカンスルホン酸はフルオロオレフィンに亜硫酸(HSO)の元素を添加することにより製造される。例えば、TFESAは、テトラフルオロエチレン(TFE)との反応の生成物である。
CF=CF+HSO→HCF−CFSOH (1)
実際、フルオロオレフィンは亜硫酸塩水溶液、通常はアルカリ金属亜硫酸塩水溶液と反応する。溶液は、競争反応(カルボン酸副生物を形成させるフルオロオレフィンの水和)を抑制するために緩衝される。TFEの場合、水和から生じる酸はジフルオロ酢酸、HCFCOHである。
【0004】
文献は、この反応のための効率的な製造方法を提供していない。早期の文献、米国特許公報(特許文献1)(1946年)はラジカル開始剤の任意の使用を教示している。(非特特許文献1)においてキラン(A.Kilian)およびワエシェク(H.Waeschke)は、反応のために過酸化物開始剤の有用性を教示している。硼酸ナトリウムは、一般に緩衝剤として用いられる。通常はエタノールによる抽出が製品塩または製品酸を回収するために用いられる。典型的には、反応混合物は、乾燥、その後の高温エタノールによる抽出によって仕上げられる。抽出物はエタノールを除去するために乾燥させ、得られた固体は硫酸で処理される。この混合物を蒸留して、水が存在する場合に通常水和物としてヒドロフルオロアルカンスルホン酸と副生物(有機酸または酢酸塩)をもたらす。非水和ヒドロフルオロアルカンスルホン酸を必要とする場合、塩化チオニルによる処理などの更なる工程が必要である。1995年になってようやく、(特許文献2)は利用可能な製造方法の欠点(「過酷な反応条件、低い収率、低い反応均一性および高いコスト」)を指摘し、反応において水を有機水溶液に代えることと有機アンモニウム化合物の使用を提案した。これらの提案された修正は、反応をより複雑且つ高価にする。2年後、そして米国特許公報(特許文献1)から50年後、(特許文献3)(1997年)は、TFEとヘキサフルオロプロピレン(HFP)と水性亜硫酸塩の反応の調製例を開示した。反応時間は110時間であり、収率は20%以下であった。
【0005】
【特許文献1】米国特許第2,403,207号明細書
【特許文献2】中国特許出願第1097191号明細書
【特許文献3】特願平第9−104686号公報
【特許文献4】米国特許第5,345,013号明細書
【非特許文献1】Wissenschaeftliche Beitraege,Ingenieurhochschule Koethen,22〜28頁(1978年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
単純化されたプロセスが良好な純度と収率でヒドロフルオロアルカンスルホン酸を製造するために必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、スルホン酸基に結合された炭素原子に隣接する炭素原子に結合された少なくとも1個の水素を有するヒドロフルオロアルカンスルホン酸の製造方法であって、a)約pH4〜pH12に調節された水溶液中でフルオロオレフィンを亜硫酸塩と接触させる工程と、b)溶液から水を除去して固体を形成させる工程と、c)固体をオレウムで直接処理して、ヒドロフルオロアルカンスルホン酸を含む混合物を形成させる工程と、d)ヒドロフルオロアルカンスルホン酸を前記混合物から蒸留する工程とを含むことを特徴とする方法を提供する。抽出工程および付随する溶媒を排除することが可能であるので、本プロセスは最終製品の回収を単純化する。
【0008】
本発明による好ましいプロセスは、所望の付加反応に有害であるとして開始剤の使用を排除し、および/または硼酸ナトリウムまたは燐酸塩などの外部試薬を導入せずに反応を緩衝し、よって副生物が殆どまたは全くなく、且つ緩衝剤誘導不純物による最終製品(ヒドロフルオロアルカンスルホン酸)を汚染することなく迅速な反応を促進する。
【0009】
本発明は、スルホネート基に結合された炭素原子に隣接する炭素原子に結合された少なくとも1個の水素を有するヒドロフルオロアルカンスルホン酸カリウムの製造方法であって、a)少なくとも3個の炭素原子を有するフルオロオレフィンを、亜硫酸塩とカリウムを含む対イオンからなるpHが約4〜12の水溶液と接触させる工程と、b)前記ヒドロフルオロアルカンスルホン酸カリウムを前記溶液から沈殿させる条件を用いる工程とを含むことを特徴とする方法をさらに提供する。
【0010】
本発明は、R−CFH−CFSO(式中、Rは、フルオロアルキル基、パーフルオロアルキル基、シクロフルオロアルキル基、シクロパーフルオロアルキル基、エーテル酸素を任意に含む前記基からなる群から選択される)のカリウム塩も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明により用いられるフルオロオレフィンは、二重結合炭素に結合された少なくとも1個の弗素原子を有するオレフィンである。好ましくは、フルオロオレフィンは、末端二重結合を有する。すなわち、ビニル基を有する。このタイプのフルオロオレフィンの1つのクラスは、a)アクリル系の場合、式C(式中、Xはハロゲンであり、a≧1、b=0〜2n−1、c=0〜2n−1、a+b+c=2n、少なくとも1個のFは二重結合炭素に結合されており、好ましくはビニルF、すなわちビニル基の炭素原子の1つに結合された弗素原子である)、b)環式の場合、式C(式中、Xはハロゲンであり、a≧1、b=0〜2n−3、c=0〜2n−3、a+b+c=2n−2、少なくとも1個のFは二重結合炭素に結合されており、好ましくはビニルFである)を有する。こうしたフルオロオレフィンの例は、弗化ビニル(VF)、弗化ビニリデン(VF)、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)およびヘキサフルオロプロピレン(HFP)である。
【0012】
フルオロオレフィンの上の類のサブセットは一般式CF=CF−Rを有する。Rは、水素、ハロゲン置換されているか、またはされていないアルキルであってもよく、そのように置換されている場合、好ましくは塩素および/または弗素により置換されており、好ましくはフルオロアルキルであり、より好ましくはパーフルオロアルキルであり、直鎖または分岐あるいは環式であってもよい。
【0013】
フルオロオレフィンは好ましくは少なくとも2個、より好ましくは3個の弗素原子を有する。フルオロオレフィンにおいて、一価原子の好ましくは少なくとも約35%、より好ましくは少なくとも約50%、なおより好ましくは、約75%は弗素原子であり、最も好ましくは、フルオロオレフィンはパーフルオロオレフィンである。好ましくは、フルオロオレフィンは、二重結合がオレフィン分子の末端にあるオレフィンであるα−フルオロオレフィンである。好ましいフルオロオレフィンはTFEおよびHFPである。
【0014】
TFEは、米国特許公報(特許文献4)で開示されたように二酸化炭素(CO)との混合物として安全且つ便利に出荷し、貯蔵することが可能である。時には出荷用混合物と呼ばれる混合物は、COからTFEを分離する必要なく用いることが可能である。
【0015】
亜硫酸塩(SO)という用語は、水溶液中のこの化学種が亜硫酸水素塩(HSO)と平衡にあるという理解で本明細書において用いられる。亜硫酸塩対亜硫酸水素塩の比は溶液のpHの関数である。この平衡は亜硫酸(HSO)および二酸化硫黄(SO)も含んでよい。SO/HSOは、製品の中の不純物源であり得るとともに、加えて、原料のコストを増し、廃棄製品中に様々な化学品を増し、よって処理または回収の難しさとコストを増す硼酸ナトリウムまたは燐酸塩などの外部材料を導入せずに本発明による反応を適切な制御により効果的に緩衝することができる緩衝剤を形成させる。
【0016】
本発明によるヒドロフルオロアルカンスルホン酸の形成のための最適なpH範囲は、約4〜12、好ましくは約5〜11、より好ましくは約5〜10、最も好ましくは約5〜9である。最適なpHは、二酸化硫黄(SO)、亜硫酸、亜硫酸水素塩および/または亜硫酸塩などの亜硫酸塩源を水に添加し、反応に外部材料を導入しない試薬の更なる添加によりpHを調節することによって達成することが可能である。非外部材料は、本発明による反応の必要な原料に関連する材料を意味し、これらは水、亜硫酸塩または亜硫酸である。炭酸塩、炭酸水素塩および/または二酸化炭素など、製品または残留物の汚染なしに容易に除去される意味で一過性である原料は外部材料とみなさない。
【0017】
こうした非外部材料には、水酸化物、二酸化炭素(CO)、炭酸水素塩、炭酸塩、硫酸、硫酸水素塩および硫酸塩、亜硫酸、亜硫酸水素塩および亜硫酸塩が挙げられる。初期に製造された溶液が高すぎるpHを有する場合、上で記載された材料の酸タイプの1つまたは複数、例えば、SO、硫酸、亜硫酸水素塩またはCOが添加される。初期に製造された溶液が低すぎるpHを有する場合、上で記載された材料の塩基タイプの1つまたは複数、例えば、水酸化物、亜硫酸塩または炭酸塩が添加される。
【0018】
COは特に有効な試薬である。COが存在する時、COは反応を緩衝し、所望の製品を除くすべてを抑制するように機能する。有効な反応物である亜硫酸塩の反応において形成されたヒドロキシル(OH)イオンと水中で平衡で存在する炭酸(HCO)の形で、フルオロオレフィン、例えばTFEと以下の式(2)で反応することにより、COがこれを行うことが考えられる。
CF=CF+SO+HO→HCF−CFSO+OH(2)
COの1モルは2つのOHと反応して炭酸塩(CO)を形成し、よってOHとTFEが反応してジフルオロ酢酸を形成させるのを抑制する。従って、COの1モルはTFEまたは他のフルオロオレフィンの2モルとSOの反応からOHを中和する。TFEがTFE:CO出荷用混合物、典型的には約30/70のモル比の形で供給される場合、COがOH中和のための化学量論量の過剰であることを認識して、TFE:CO出荷用混合物を直接用いてもよい。好ましくは、出荷用混合物を膜分離などによって使用前に処理して、約50:50〜約75:25、より好ましくは約60:40〜70:30、最も好ましくは約64:36〜68:32の範囲内などの化学量論比66:33(TFE/CO)により近いモル比にもっていく。
【0019】
あるいは、フルオロオレフィンおよびCOは、所望の比で別個のストリームにおいて添加してもよいか、またはCO添加は、反応溶液のpHを監視し、CO添加速度を調節して所望の範囲内にpHを維持する手段によって制御してもよい。
【0020】
イオン性である試薬のためにアルカリ金属カチオン、好ましくはナトリウムイオンまたはカリウムイオン、より好ましくはカリウムイオンを有する試薬を用いることが好ましい。これらのカチオンは、本明細書においてヒドロフルオロアルカンスルホネートに対する対イオンとも呼ぶ。
【0021】
先行技術の教示に反して、ラジカル開始剤、特に反応混合物中に存在するフルオロオレフィンの重合を開始させることができるラジカル開始剤を有することは有益性はいうまでもなく望ましくない。好ましくは、ラジカル開始剤を添加しない。さらに、酸素は、好ましくは反応容器から除かれるべきである。酸素がフルオロオレフィン、特にTFEの重合を開始させることができるからである。反応において用いられるべきフルオロオレフィンがTFEである時、酸素または開始剤を除くことは特に重要である。TFEの重合が熱の実質的な発生を伴って激しく進行するからである。HFPなどのより容易に重合しないフルオロオレフィンに関しては、酸素に関わる安全問題はより重要ではない。しかし、フルオロオレフィンは高価であり、開始剤および酸素はヒドロフルオロアルカンスルホン酸の生成と競争する副反応を引き起こし、収率を下げるとともに反応器を汚しラインの目詰まりを引き起こし得る無用な副生物を作り出す。さらに、酸素は亜硫酸塩と反応して硫酸塩を生成させる。亜硫酸塩濃度が反応のpHを制御するのに重要であるので、こうした酸素による酸化は望ましくない。
【0022】
本発明によるプロセスにおいて、好ましくはステンレススチールまたは他の耐腐食性金属の適する容器に亜硫酸塩水溶液を投入する。溶液は水および乾燥原料を投入することによって容器の外で調製してもよいか、または現場(in−situ)で製造してもよい。水が脱イオン水であるとともに酸素フリーであることが好ましい。乾燥原料の取り扱いを避けることを望む場合、水性苛性アルカリ、好ましくは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムに二酸化硫黄(SO)を添加することにより亜硫酸塩溶液を調製してもよい。溶液のpHは、約4〜12に調節されるべきである。亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸カリウムなどの亜硫酸塩の塩が亜硫酸塩源である場合、硫酸がpH調節のために好都合な酸である。
【0023】
水性亜硫酸塩を投入した後、容器を約0℃〜−40℃に冷却し、排気し、その後、特にTFEがフルオロオレフィンであるべき場合、酸素を排除するために少なくとも一度、好ましくは二〜三度、窒素または他の不活性ガスを投入する。容器を排気し、その後、フルオロオレフィンを投入し、密閉し、加熱を始める。温度を約125℃に上げ、攪拌しつつ、または振とうしつつ、あるいは容器内容物を攪拌する他の手段を用いつつ約2〜12時間にわたりそこで保持する。フルオロオレフィンがガスである場合、反応の進行は、フルオロオレフィンが消費されるにつれて圧力低下によって監視してもよい。反応時間の終わりに、容器を室温に冷却し、排気し、内容物を取り出す。
【0024】
好ましくはロータリーエバポレータ内で好ましくは減圧での水の除去によって水性内容物を濃縮する。より好ましくは、ロータリーエバポレータ内での水の除去を乾燥点まで行わない。そうでなく、水を凍結乾燥によってさらに除去する。凍結乾燥は、堅くてつぶつぶのある傾向がある非凍結乾燥固体から得られた収率より優れた収率をオレウムで処理すると与える微細で容易に取り扱えて低水分の固体をもたらす。凍結乾燥機からの製品は、好ましくは約5重量%未満の水を含有し、より好ましくは約1重量%未満の水を含有し、最も好ましくは約0.5重量%未満の水を含有する。
【0025】
水性反応生成物を噴霧乾燥させることによる水の除去も好ましい。
【0026】
亜硫酸塩反応物のカリウム塩をHFPまたはより高級のフルオロオレフィンとの反応に用いる場合、反応が終わった後に冷却すると、乾燥は別として更なる処理なしに製品が良好な収率および高い純度で沈殿することが驚くべきことに見出されている。従って、本発明の好ましい形態によると、溶液からカリウム塩を沈殿させる条件を用いる。冷却は、好ましくは約15℃未満まで、より好ましくは約10℃未満まで、最も好ましくは約5℃未満までである。冷却は、好ましくは反応器内容物の凍結を引き起こすほどに低くないのがよい。
【0027】
亜硫酸塩とHFPまたはより高い分子量のフルオロオレフィンとの反応のスルホネート製品のカリウム塩の高い純度および高い収率での容易な回収の発見はカリウム塩を本特許によるプロセスにおける好ましい塩にする。さらに、スルホネート塩がスルホン酸への転化なしに分離される場合、スルホネート塩はイオン性液体および光酸発生剤の製造における便利なアニオン源である。
【0028】
この高純度で高転化率の合成による製品の好ましいカリウム塩は、一般式R−CFH−CFSOK(式中、Rは、フルオロアルキル基、パーフルオロアルキル基、シクロフルオロアルキル基、シクロパーフルオロアルキル基、エーテル酸素を任意に含む前記基からなる群から選択される)のカリウム塩である。
【0029】
所望の最終製品が酸である時、水の除去後、製品をオレウムで直接処理する。「オレウム」という用語は、好ましくは約1〜15重量%の範囲内で三酸化硫黄(SO)を含む硫酸(HSO)を意味する。乾燥製品の部当たり好ましくは少なくとも約1部のオレウムの重量比でオレウムを用いる。一般に2〜5重量%の水を含有する濃硫酸でなくオレウムを用いることにより、ヒドロフルオロアルカンスルホン酸水和物の生成が避けられる。例えば、TFESAの酸水和物またはHFPから誘導された酸の酸水和物は室温で蝋状の固体である。コンデンサの冷媒の温度が制御されていない場合、それらは蒸留中にコンデンサ内で固化し得る。それは厄介な必然である。
【0030】
市販のオレウムは高すぎるSO含有率を有する場合がある。それならば、市販のオレウムを硫酸と混合することによってSO濃度を下げることが可能である。硫酸の添加は市販のオレウムを希釈し、硫酸中の水は多少のSOと反応して硫酸を生成させる。結果は、より低いSO濃度のオレウムである。
【0031】
オレウムの添加は、蒸留缶内で加熱すると特定のスルホン酸に応じて溶液を形成させる場合があるスラリーを与える。
【0032】
大過剰のオレウムは望ましくない。それは、スルホン酸の低い収率と、スルホン酸エステルであると考えられるより低い沸点の製品の生成につながり得る。本プロセスにおいて、少量、好ましくは約5重量%以下、より好ましくは約3重量%以下、最も好ましくは約1重量%以下の、所望のスルホン酸製品の前に蒸留から生じる低沸点材料が存在するべきである。これは蒸留缶を汚す水和物が残らないことを確実にする。この過剰にある低沸点材料は、多すぎるオレウムが使用されており、その量を減らすべきであることの指標である。
【0033】
オレウムで「直接処理する」という用語は、介在抽出工程を用いず、処理のための製品にオレウムを混合または接触させることを意味する。その後、オレウム混合物を沸騰まで加熱し、製品酸を蒸留する。酸が水と組み合わされている水和物形態であることが分かった場合、より強いオレウムまたは製品からのより完全な水除去は、酸水和物を塩化チオニルで処理して非水和酸にするなどの追加のプロセス工程を避けるために望ましい。
【0034】
上述したプロセスをバッチプロセスで行ってもよい。本発明によるプロセスは、反応器の液体内容物の連続排出または周期的排出および反応物の連続補充または周期的補充により連続で行ってもよい。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
実施例1のパートA−Fは、オレウムで直接処理してヒドロフルオロアルカンスルホン酸を製造する工程の前のフルオロオレフィンとしてTFEによる本発明のプロセスの工程を例示している。約4〜約12のpHで亜硫酸塩との反応を行うと、カルボン酸副製品の付随生成、TFEの場合はジフルオロ酢酸の付随生成を伴うフルオロオレフィンの望ましくない水和反応を抑制する。パートA〜Cは亜硫酸ナトリウム溶液を用いており、pHを硫酸で調節している。パートD〜Fは、ジフルオロ酢酸の大幅な生成を防ぐに当たり酸添加によるpHの調節が全くない状態でのCOの効果を示している。
【0036】
(パートA)
「ハステロイ(Hastelloy)」(登録商標)C276容器(シェーカーチューブ)を用いる。亜硫酸ナトリウム(23.94g)および脱イオン水(90ml)の溶液を調製し、pHを硫酸で5.59に調節して最終体積130mlの溶液を与える。溶液をチューブに入れ、チューブを冷却し、排気し、窒素でパージする。この後に、テトラフルオロエチレン(TFE、38g)をチューブに入れる。チューブの出発温度は−32.3℃であり、温度を2.5時間にわたって125℃に上げる。この温度上昇中に、圧力は182psig(1360kPa)から545psig(3860kPa)に上昇する。125℃の温度を12時間にわたり維持し、その時間の間に圧力は545psig(3760kPa)から353psig(2530kPa)に迅速(2時間以内)に低下し、その後、ほぼ一定のままである。反応を放置して室温に冷却した後に、過剰のガスを排出し、シェーカーチューブからの反応混合物を脱イオン水でリンスする。反応混合物の最終pHは7.25である。
【0037】
ロータリーエバポレータ内で減圧下で反応混合物から水を除去して51gの製品を与える。DO中のH NMRによって分析された得られた固体のサンプルは1%未満のジフルオロ酢酸を含んでいる。弗素(19F)NMR(DO)δ−122.0(dt,FH=6Hz,FF=6Hz,2F);−136(dt,FH=53Hz,2F)はテトラフルオロエタンスルホネート(TFES−Na)と一致する。
【0038】
陽子(H)NMR(DO)δ6.4(tt,FH=53Hz,FH=6Hz,1H)。粗テトラフルオロエタンスルホン酸ナトリウム(TFES−Na)の一部をその4倍重量のアセトンで抽出し、濾過し、アセトンをロータリーエバポレータ内で除去する。製品はNMRおよび化学分析によって示されるように99%を上回る(TFES−Na)を含んでいる。
【0039】
(パートB)
実施例1と同じ容器内で亜硫酸ナトリウム(23.94g)および脱イオン水(90ml)の溶液を調製し、pHを硫酸で5.67に調節して最終体積130mlの溶液を与える。溶液をシェーカーチューブ(上で詳述したもの)に入れ、チューブを冷却し、排気し、窒素でパージする。この後に、TFE(38g)をチューブに入れる。チューブの出発温度は−22.1℃であり、温度を75分にわたって125℃に上げる。この温度上昇中に、圧力は205psig(1515kPa)から594psig(4200kPa)に上昇する。125℃の温度を3.5時間にわたり維持し、その時間の間に圧力は594psig(4200kPa)から372psig(2660kPa)に迅速に低下し、その後、ほぼ一定のままである。反応を放置して室温に冷却した後に、過剰のガスを排出し、シェーカーチューブからの反応混合物を脱イオン水でリンスする。反応混合物の最終pHは7.25である。
【0040】
ロータリーエバポレータ内で減圧下で反応混合物から水を除去して49gの製品を与える。DO中のH NMRによって分析された得られた固体のサンプルは0.1%未満のジフルオロ酢酸を含んでいる。19F NMR(DO)δ−122(dt,FH=6Hz,FF=6Hz、2F);−136.2(dt,FH=53Hz,2F)はテトラフルオロエタンスルホネート(TFES−Na)と一致する。H NMR(DO)δ6.4(tt,FH=53Hz,FH=6Hz,1H)。
【0041】
粗テトラフルオロエタンスルホン酸ナトリウム(TFES−Na)の一部をその4倍重量のアセトンで抽出し、濾過し、アセトンをロータリーエバポレータ内で除去する。製品はNMRおよび化学分析によって示されるように99%を上回る(TFES−Na)を含んでいる。
【0042】
(パートC)
実施例1と同じ容器内で亜硫酸ナトリウム(12.6g)および脱イオン水(100ml)の溶液を調製し、pHを濃硫酸で10.06から5.53に調節する。溶液をシェーカーチューブ(上で詳述したもの)に入れ、チューブを冷却し、排気し、窒素でパージする。この後に、TFE(10g)および二酸化炭素(13.2g)をチューブに入れる。チューブの出発温度は−28.8℃であり、温度を75分にわたって125℃に上げる。この温度上昇中に、圧力は109psig(855kPa)から369psig(2650kPa)に上昇する。125℃の温度を12.5時間にわたり維持し、その時間の間に圧力は369psig(2550kPa)から272psig(1875kPa)に絶え間なく低下する。反応を放置して室温に冷却した後に、過剰のガスを排出し、シェーカーチューブからの反応混合物を脱イオン水でリンスする。反応混合物の最終pHは6.19である。
【0043】
ロータリーエバポレータ内で減圧下で反応混合物から水を除去して20.3gの製品を与える。DO中のH NMRによって分析された得られた固体のサンプルは0.1%未満のジフルオロ酢酸を含んでいる。19F NMR(DO)δ−121.9(dt,FH=6Hz,FF=6Hz、2F);−136.2(dt,FH=53Hz,2F)はテトラフルオロエタンスルホネート(TFES−Na)と一致する。H NMR(DO)δ6.4(tt,FH=53Hz,FH=6Hz,1H)。
【0044】
粗テトラフルオロエタンスルホン酸ナトリウム(TFES−NA)の一部をその4倍重量のアセトンで抽出し、濾過し、アセトンをロータリーエバポレータ内で除去する。製品はNMRおよび化学分析によって示されるように99%を上回る(TFES−NA)を含んでいる。
【0045】
この実施例は反応がCOの存在下でうまく進むことを示している。
【0046】
(パートD)
実施例1と同じ容器を用いて亜硫酸ナトリウム(6.3g)および水(100g)をシェーカーチューブ(上で詳述したもの)に入れ、チューブを冷却し、排気し、窒素でパージする。この後に、TFE(10g)および二酸化炭素(22g)をチューブに入れる。チューブの出発温度は−19.4℃であり、温度を75分にわたって125℃に上げる。この温度上昇中に、圧力は277psig(1210kPa)から833psig(5850kPa)に上昇する。125℃の温度を5時間にわたり維持し、その時間の間に圧力は833psig(5850kPa)から770psig(5410kPa)に絶え間なく低下する。動力停止後、温度を110℃から125℃に上げ戻し、4時間にわたり維持する。その時間の間に圧力一定である。反応を放置して室温に冷却した後に、過剰のガスを排出し、シェーカーチューブからの反応混合物を脱イオン水でリンスする。反応混合物の最終pHは約8である。減圧下で混合物から水を除去し、DO中の陽子NMRによって分析された得られた固体のサンプルは0.1%未満のジフルオロ酢酸を含んでいる。
【0047】
(パートE)
実施例1と同じ容器を用いて亜硫酸ナトリウム(12.6g)および水(100g)をシェーカーチューブ(上で詳述したもの)に入れ、チューブを冷却し、排気し、窒素でパージする。この後に、TFE(10g)と二酸化炭素(13g)(合計23g)の予備組み合わせ混合物をチューブに入れる。チューブの出発温度は−20℃であり、温度を60分にわたって125℃に上げる。この温度上昇中に、圧力は274psig(1990kPa)から598psig(4125kPa)に上昇する。125℃の温度を12時間にわたり維持し、その時間の間に圧力は598psig(4225kPa)から554psig(3920kPa)に絶え間なく低下する。反応を放置して室温に冷却した後に、過剰のガスを排出し、シェーカーチューブからの反応混合物を脱イオン水でリンスする。反応混合物の最終pHは7〜8の間である。溶液のサンプルをDO中で希釈し、H NMRによって分析すると0.1%未満のジフルオロ酢酸を含んでいる。
【0048】
(パートF)
1リットルの「ハステロイ(Hastelloy)」C276攪拌反応容器に53gの無水亜硫酸ナトリウム(NaSO、98%、アクロス(Acros)、0.42モル)および300mlの脱イオン水の溶液を投入する。溶液のpHは10.3である。容器を25℃で保持し、大気圧まで排気し、窒素でパージする。排気/パージサイクルをもう4回繰り返す。その後、テトラフルオロエチレンと二酸化炭素の26/74モル混合物(約36gのTFE)の450psig(3.2MPa)を容器に添加する。1000rpmの攪拌機速度で容器を125℃に加熱し、その時の内圧は650psig(4.60MPa)である。反応を放置してこの温度で4時間にわたり進め、その時間の間に圧力は440psig(3.14MPa)に低下する。容器を排気し、25℃に冷却する。無色反応溶液のpHは8.0であり、それは炭酸の形態を取っている溶解二酸化炭素が緩衝剤として実際に機能していることを示している。
【0049】
水をロータリーエバポレータで真空で除去して湿潤固体を生成させる。その後、固体を真空炉(120℃、80トル)に4時間にわたり入れて含水率を約0.9重量%(82gの粗材料)に下げる。粗TFES−Naを精製し、800mlの試薬グレードアセトンにより抽出し、濾過し、乾燥させることにより分離して57gの製品を与える。
19F NMR(DO)δ−121.8(dt,FH=6Hz,FF=6Hz、2F);−135.9(dt,FH=53Hz,2F)。
H NMR(DO)δ6.4(tt,FH=53Hz,FH=6Hz,1H)。
カールフィッシャー滴定による%水:0.9重量%。
融点(DSC)298℃。
TGA(空気):382℃で10重量%損失、424℃で50重量%損失。TGA(窒素):377℃で10重量%損失、431℃で50重量%損失。
【0050】
(実施例2)
実施例2は本発明のプロセスにおけるTFEの反応を例示している。1ガロンの「ハステロイ(Hastelloy)」(登録商標)C276反応容器に176gの亜硫酸水素カリウム水和物(KHSO・HO、95%、アルドリッチ(Aldrich)、1.0モル)、610gのメタ重亜硫酸塩カリウム(K、99%、マリンクロト(Mallinckrodt)、2.8モル)および2000mlの脱イオン水の溶液を投入する。この溶液のpHは5.8である。容器を18℃に冷却し、−3psig(80kPa)まで排気し、窒素でパージする。排気/パージサイクルをもう2回繰り返す。その後、66gのテトラフルオロエチレン(TFE)を容器に添加し、容器を100℃に加熱し、その時の内圧は150psig(1.14MPa)である。反応温度を125℃に上げ、3時間にわたりそこで維持した。反応のゆえにTFEの圧力が低下するにつれて、さらにTFEを小アリコート(それぞれ10〜30g)で添加して、運転圧力をおよそ150〜200psig(1.14および1.48MPa)の間で維持した。初期66gの前投入後に一旦500g(5.0モル)のTFEをフィードしてしまうと、容器を排気し、25℃に冷却する。クリアな淡黄色反応溶液のpHは10〜11である。作業の前に16gのメタ重亜硫酸塩カリウムの添加を通して、この溶液をpH7に緩衝させる。
【0051】
水をロータリーエバポレータで真空で除去して湿潤固体を生成させる。その後、固体を凍結乾燥機(「ビルチス フリーズモービル(Virtis Freezemobile)」35xl)に72時間にわたり入れて含水率を約1.5重量%(1387gの粗材料)に下げる。全固体の理論質量は1351gである。物質収支は理想に非常に近い。分離された固体は、水分のゆえに若干より高い質量を有する。この追加された凍結乾燥工程が易流動性白色粉末をもたらす利点を有するのに対して、真空炉内での処理は除去するのが難しい石鹸様の固体ケーキをもたらす。ケーキは削ぎとって、フラスコを壊して出さなければならない。
【0052】
粗テトラフルオロエタンスルホン酸カリウム(TFES−K)の一部をさらに精製し、試薬グレードアセトンで抽出し、分離し、濾過し、乾燥させることにより分離する。分析は以下の結果を与える。
19F NMR(DO)δ−122.0(dt,FH=6Hz,FF=6Hz、2F);−136.1(dt,FH=53Hz,2F)。
H NMR(DO)δ6.4(tt,FH=53Hz,FH=6Hz,1H)。
カールフィッシャー滴定による%水:580ppm。
HOSKのために計算された分析:C;10.9、H;0.5、N;0.0、検出:C;11.1、H;0.7、N;0.2。
示差走査熱分析(DSC)による融点:242℃。
熱重量分析(TGA)(空気):367℃で10重量%損失、375℃で50重量%損失。
TGA(窒素):363℃で10重量%損失、375℃で50重量%損失。
【0053】
側流付きの100ml丸底フラスコにディジタル温度計およびマグネチックスターラーを備え付け、窒素による正圧下で氷浴に入れる。攪拌しつつ30gの濃硫酸(イーエム・サイエンス(EM Science)、95〜98%)および78gのオレウム(アクロス(Acros)、20重量%SO)に加えて、前工程からの50gの粗TFES−Kをフラスコに添加する。このオレウム量は、なお若干過剰に存在しつつSOが反応し、硫酸および粗TFES−Kの中の水を除去するように選択される。混合は僅かの発熱を引き起こし、それを氷浴によって制御する。一旦発熱が終わると、水コンデンサ付きの蒸留ヘッドをフラスコ上に置き、それを安全遮蔽材の後ろで窒素下で加熱する。発泡を避けるために100トル(13kPa)の工程でPTFEメンブレン真空ポンプ(ブチ(Buchi)V−500)を用いて圧力をゆっくり下げる。過剰の一切のSOを集めるために、蒸留装置とポンプとの間に乾燥−氷トラップも置く。一旦ポット温度が120℃に達し、圧力を20〜30トル(2.7〜4.0kPa)で保持すると、無色の液体が還流し始め、後で110℃および31トル(4.1kPa)で留出する。より低い沸点の不純物の前留分(2.0g)を得た後、28gの所望の無色酸TFESAを集める。
【0054】
50gの不純TFES−Kの中に約39.8gのTFES−Kが存在することが計算される。従って、28gの製品はTFES−KからのTFESAの85%収率であるとともにTFEからの85%総合収率である。分析は以下の結果を与える。
19F NMR(CDOD)δ−125.2(dt,FH=6Hz,FF=8Hz、2F);−137.6(dt,FH=53Hz,2F)。
H NMR(CDOD)δ6.3(tt,FH=6Hz,FH=53Hz,1H)。
【0055】
(実施例3)
この実施例は本発明によるヘキサフルオロプロピレン(HFP)の反応を実証する。1ガロンの「ハステロイ(Hastelloy)」(登録商標)C276反応容器に25gの無水亜硫酸ナトリウム(NaSO、98%、アクロス(Acros)、0.20モル)、73gの亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO、アルドリッチ(Aldrich)、0.70モル)および400mlの脱イオン水の溶液を投入する。溶液のpHは5.7である。容器を4℃に冷却し、−3psig(80.6kPa)まで排気し、その後、120gのヘキサフルオロプロピレン(HFP、0.8モル、48psig(430kPa))を投入する。攪拌しつつ容器を120℃に加熱し、3時間にわたりそこで維持する。圧力は最大で250psig(1825kPa)に上昇し、その後、30分以内に25psig(275kPa)に低下する。終わりに、容器を冷却し、残りのHFPを排気し、反応器を窒素でパージする。最終溶液は7.3のpHを有する。
【0056】
水をロータリーエバポレータで真空で除去して湿潤固体を生成させる。その後、固体を真空炉(150トル(20kPa)、140℃、48時間)に入れて、約1重量%の水を含有していた219gの白色固体をもたらす。全固体の理論質量は217gである。
【0057】
側流付きの100ml丸底フラスコにディジタル温度計およびマグネチックスターラーを備え付け、窒素による正圧下で氷浴に入れる。攪拌しつつ30gの濃硫酸(イーエム・サイエンス(EM Science)、95〜98%)および58.5gのオレウム(アクロス(Acros)、20重量%SO)に加えて、前工程からの50gの粗ヘキサフルオロプロパンスルホン酸ナトリウム(HFPS−Na)をフラスコに添加する。
【0058】
このオレウム量は、なお若干過剰に存在しつつSOが反応し、硫酸および粗HFPS−Naの中の水を除去するように選択される。混合は僅かの発熱を引き起こし、それを氷浴によって制御する。一旦発熱が終わると、水コンデンサ付きの蒸留ヘッドをフラスコ上に置き、それを安全遮蔽材の後ろで窒素下で加熱する。発泡を避けるために100トル(13kPa)の工程でPTFEメンブレン真空ポンプ(ブチ(Buchi)V−500)を用いて圧力をゆっくり下げる。過剰の一切のSOを集めるために、蒸留装置とポンプとの間に乾燥−氷トラップも置く。ポット温度が100℃に達し、圧力を20〜30トル(2.7〜4kPa)で保持する時、無色の液体が還流し始め、後で118℃および23トル(3.1kPa)で留出する。より低い沸点の不純物の前留分(1.5g)を得た後、36.0gの所望の酸、ヘキサフルオロプロパンスルホン酸(HFPS)集める。
【0059】
50gの不純HFPS−Naの中に約44gのHFPS−Naが存在することが計算される。従って、36.0gのHFPS製品はHFPS−Naからの89%収率であるとともにHFPからの84%総合収率である。
【0060】
真空炉乾燥工程からの粗HFPS−Naをさらに精製し、試薬グレードアセトンにより抽出し、濾過し、乾燥させることにより分離する。
19F NMR(DO)δ−74.5m,3F);−113.1,−120.4(ABq,J=264Hz,2F);−211.6(dm,1F)。
H NMR(DO)δ5.8(dm,FH=43Hz,1H)。
融点(DSC)126℃。
TGA(空気):326℃で10重量%損失、446℃で50重量%損失。
TGA(N):322℃で10重量%損失、449℃で50重量%損失。
【0061】
(実施例4)
(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホン酸カリウム(HFPS−K)の合成)
この実施例は、特殊な分離工程および精製工程なしで高い純度および良好な収率で1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネートのカリウム塩を製造するために亜硫酸塩反応物のカリウム塩を用いる合成の驚くべき優秀性を実証する。
【0062】
1ガロンの「ハステロイ(Hastelloy)」C276反応容器に130g(0.74モル)の亜硫酸カリウム水和物(KSO・xHO、95%、アルドリッチ(Aldrich))、448g(2.02モル)のメタ重亜硫酸塩カリウム(K、99%、マリンクロト(Mallinckrodt)および1300mLの脱イオン水の溶液を投入する。この溶液のpHは6.1である。容器を−35℃に冷却し、−3psig(80kPa)まで排気し、窒素でパージする。排気/パージサイクルをもう2回繰り返す。その後、550g(3.67モル)のヘキサフルオロプロピレン(HFP)を容器に添加し、容器を125℃に加熱する。加熱中に、内圧は80℃で最大で320psig(2.3MPa)に上昇し、次の20分以内に23psig(260kPa)に急速に低下した。加熱の開始からの全反応時間は75分である。その後、容器を排気し、25℃に冷却する。
【0063】
反応生成物はpH7.0の母液中の白色沈殿物である。粗反応混合物を5℃に冷却し、真空濾過して、固体製品を分離し、それを真空(70℃、40トル(5kPa)、48時間)でさらに乾燥させて、788g(2.92モル)の白色粉末製品(収率80%)をもたらす。
カールフィッシャー滴定による水:0.15重量%。
HOSFのために計算された分析:C;13.3、H;0.4、N;0.0。
検出:C;13.5、H;0.4、N;0.1。
【0064】
反応混合物を冷却すると製品が収率80%および高い純度で沈殿することが分かる。これは、実施例3のナトリウム塩の挙動と異なる。実施例3では、冷却された反応混合物は著しい沈殿物のない溶液であり、塩を回収するために蒸発が必要であり、それは次に更なる精製を必要とする。
【0065】
(実施例5)
(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホン酸カリウム(HFPS−K)の合成)
水の量を1000mlに減らすことを除き実施例4を繰り返す。製品は収率85%および実施例4で見られたのと同じ高い純度で沈殿する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン酸基に結合された炭素原子に隣接する炭素原子に結合された少なくとも1個の水素を有するヒドロフルオロアルカンスルホン酸の製造方法であって、
a)約pH4〜pH12に調節された水溶液中でフルオロオレフィンを亜硫酸塩と接触させる工程と、
b)前記溶液から水を除去して固体を形成させる工程と、
c)前記固体をオレウムで直接処理して、ヒドロフルオロアルカンスルホン酸を含む混合物を形成させる工程と、
d)前記混合物から前記ヒドロフルオロアルカンスルホン酸を蒸留する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
ラジカル開始剤を前記溶液に添加しないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フルオロオレフィンがパーフルオロオレフィンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フルオロオレフィンがα−オレフィンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記フルオロオレフィンがテトラフルオロエチレンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記フルオロオレフィンがヘキサフルオロプロピレンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
水溶液中の前記亜硫酸塩源が二酸化硫黄であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記水溶液の前記pHを外部試薬を使用せずに調節することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
亜硫酸、硫酸、亜硫酸水素塩、硫酸水素塩、メタ重亜硫酸塩、炭酸水素塩、二酸化硫黄および二酸化炭素からなる群から選択される少なくとも1種の試薬の添加によって前記水溶液の前記pHを調節することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記溶液から水を除去して乾燥固体を形成させる前記工程を前記溶液を凍結乾燥させることによって行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記固体が凍結乾燥された固体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記溶液から水を除去して乾燥固体を形成させる前記工程を前記溶液を凍結乾燥させることによって行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記固体が噴霧乾燥された固体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ヒドロフルオロアルカンスルホン酸が1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
スルホネート基に結合された炭素原子に隣接する炭素原子に結合された少なくとも1個の水素を有するヒドロフルオロアルカンスルホン酸カリウムの製造方法であって、
a)少なくとも3個の炭素原子を有するフルオロオレフィンを、亜硫酸塩とカリウムを含む対イオンとからなるpHが約4〜12の水溶液と接触させる工程と、
b)前記ヒドロフルオロアルカンスルホン酸カリウムを前記溶液から沈殿させる条件を用いる工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
ヒドロフルオロアルカンスルホン酸カリウムを前記溶液から沈殿させる条件を用いる前記工程が冷却を含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
−CFH−CFSO(式中、Rは、フルオロアルキル基、パーフルオロアルキル基、シクロフルオロアルキル基、シクロパーフルオロアルキル基、前記基からなる群から選択される)のカリウム塩。
【請求項18】
1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホン酸カリウム。

【公表番号】特表2008−545790(P2008−545790A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515896(P2008−515896)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/022209
【国際公開番号】WO2006/133331
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】