説明

ヒドロフルオロオレフィンおよびヒドロクロロフルオロオレフィン冷媒を伴う酸素含有潤滑油の伝熱性組成物

本発明は、ポリビニルエーテルオイルを含む酸素含有潤滑油と、ヒドロフルオロオレフィンおよび/またはヒドロクロロフルオロオレフィンを含む冷媒とを含む伝熱性組成物に関する。本発明の伝熱性組成物は、優れた熱安定性を示す利点を有し、たとえば冷凍、空気調和、および伝熱システムのような用途において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルエーテルオイルを含む酸素含有潤滑油と、ヒドロフルオロオレフィンおよび/またはヒドロクロロフルオロオレフィンを含む冷媒とを含む伝熱性組成物に関する。本発明の伝熱性組成物は、優れた熱安定性を示す利点を有し、たとえば冷凍、空気調和、および伝熱システムのような用途において有用である。
【背景技術】
【0002】
依然として規制の圧力がかかる中で、冷媒、伝熱流体、発泡剤、溶媒、およびエーロゾルのための、より低いオゾン層破壊係数および地球温暖化係数を有する、環境的により持続可能な代替え物を確立する必要性が増してきている。それらの用途で広く使用されているクロロフルオロカーボン(CFC)およびヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)は、オゾン層破壊性物質であり、モントリオール議定書のガイドラインに従って段階的に廃止されつつある。多くの用途においては、ヒドロフルオロカーボン(HFC)が、CFCおよびHCFCのための主たる代替え物である。それらは、オゾン層に対しては「優しい(friendly)」とみなされてはいるが、それにも関わらずそれらは一般的に、高い地球温暖化係数を有している。オゾン層破壊性物質または地球温暖化物質に取って代わることが確認された一つの新規なタイプの化合物が、ハロゲン化オレフィン、たとえばヒドロフルオロオレフィン(HFO)およびヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)である。HFOおよびHCFOにはアルケン結合が存在しているために、HCFCやCFCに比較して、化学的に不安定となるであろうと考えられる。これらの物質は下層大気中で本来的に化学的に不安定であるために、所望されるように、大気中における寿命が短く、そのために地球温暖化係数が低く、かつオゾン層破壊性能もゼロまたはほとんどゼロとなる。しかしながら、そのような本来的な不安定性が、そのような物質の商業的な応用に悪影響を与えるとも考えられる。
【0003】
冷凍、空気調和、または伝熱システムにおいて使用されるHFOまたはHCFOが劣化することによって、システムの性能の低下、毒性または腐食性の副生物の生成、装置の短期間での故障、その他の問題を引き起こす可能性がある。したがって、冷凍、空気調和、または伝熱装置において使用するための熱的および化学的に充分に安定な、HFOおよび/またはHCFO冷媒と潤滑オイルとの組合せを見出すことが極めて重要である。
【0004】
冷媒と潤滑油との組合せを変えると、熱的/化学的安定性の程度が変化するであろうということは公知である。したがって、冷凍、空気調和、または伝熱システムに使用する際に受容可能な熱的/化学的安定性を示す、HFOまたはHCFOと潤滑油との特定の組合せを見出すことも可能であるかもしれないが、広い範囲にわたるHFOおよびHCFO冷媒に対して優れた安定性を与えて、非相溶性の組合せが使用されるリスクを限定したり、あるいは使用時における冷媒および/または潤滑油の劣化の程度を抑えたりする潤滑油が得られれば、大いに好ましい。
【0005】
依然として規制の圧力がかかる中で、冷媒、伝熱流体、発泡剤、溶媒、およびエーロゾルのための、より低いオゾン層破壊係数および地球温暖化係数を有する、環境的により持続可能な代替え物を確立する必要性が増してきている。それらの用途で広く使用されているクロロフルオロカーボン(CFC)およびヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)は、オゾン層破壊性物質であり、モントリオール議定書のガイドラインに従って段階的に廃止されつつある。多くの用途においては、ヒドロフルオロカーボン(HFC)が、CFCおよびHCFCの主たる代替え物であるが、それらは、オゾン層に対しては「優しい(friendly)」とみなされてはいるものの、それらは一般的に、高い地球温暖化係数を有している。オゾン層破壊性物質または地球温暖化物質に取って代わることが確認された一つの新規なタイプの化合物が、ハロゲン化オレフィン、たとえばヒドロフルオロオレフィン(HFO)およびヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)である。HFOおよびHCFOにはアルケン結合が存在しているために、先行物質のHCFC、CFCまたはHFCに比較して、化学的に不安定となるであろうと考えられる。これらの物質は下層大気中で本来的に化学的に不安定であるために、所望されているように、大気中における寿命が短く、そのために地球温暖化係数が低く、かつオゾン層破壊性能もゼロまたはほとんどゼロとなる。しかしながら、そのような本来的な不安定性が、そのような物質の商業的な応用に悪影響を与え、貯蔵、取扱いまたは使用時に、高温に暴露されたり、他の化合物たとえば湿分、酸素、またはそれらと縮合反応を起こし得るその他の化合物と接触したりすると、劣化する可能性があるとも考えられる。この劣化は、ハロ−オレフィンが、伝熱装置(たとえば冷凍または空気調和装置)の中の作動流体として使用されたり、あるいはいくつかのその他の用途において使用されたりしたときに起きる可能性がある。この劣化は、異なったメカニズムが複数存在することによって起きることもあり得る。一つの例では、極端な温度における化合物の不安定性によって、劣化が起こりうる。他の例では、システムの中に不注意で入り込んだ空気が存在することによる酸化によって、劣化が起こりうる。そのような劣化の原因が何であるとしても、ハロ−オレフィンの不安定性が理由なので、これらのハロ−オレフィンを冷凍または空気調和システムの中に組み入れることは実用的ではない場合がある。
【0006】
信頼性があり、長い実用寿命を有するシステムを設計するためには、冷媒と、潤滑油と、冷凍システム中の金属との化学的な相互作用を充分に理解しておくことが必要である。冷媒と他の成分との間、または冷凍もしくは伝熱システムの内部における非相溶性が、冷媒、潤滑油および/またはその他の成分の分解、望ましくない副生物の生成、機械部品の腐食もしくは劣化、効率の低下、または、装置、冷媒および/または潤滑油の実用寿命の全般的な短縮を起こさせる可能性がある。
【0007】
冷凍、空気調和、または伝熱システムにおいては、潤滑オイルと冷媒とは、そのシステムの大部分においてではないにしても、そのシステムの少なくともいくつかの部分では相互に接触した状態にあると考えられるが、これについては、『ASHRAE Handbook:HVAC Systems and Equipment』に解説されている。したがって、冷凍、空気調和、または伝熱システムに対して、潤滑油と冷媒が別途に添加されるか、あるいは予備混合パッケージの一部として添加されるかには関係なく、それらは、そのシステムの内部では接触状態にあり、そのために相溶可能でなければならないと考えられる。
【0008】
HFC冷媒が一般的に、従来から使用されている鉱油潤滑油との混和性に乏しいために、いくつかの酸素含有潤滑油、たとえば主としてポリアルキレングリコール(PAG)オイルおよびポリオールエステル(POE)オイルが開発され、使用されてきた。自動車用の空気調和において使用する目的でHFO−1234yf(2,3,3,3−テトラフルオロプロペン)が開発されたときには、HFO−1234yfと共にPAGおよびPOEが使用できると提案された。しかしながら、入手可能な、たとえばC.Puhlによって提供されたデータ(VDA Winter Meeting,Saalfeldon 2009。「Refrigeration Oils for Future Mobile A/C Systems」)では、HFO−1234yfをPAGもしくはPOEと組み合わせても、HFC−134aとPAGもしくはPOEとを組み合わせたものと同等の熱的/化学的安定性は有していないかもしれないということが示唆されている。また、PAGオイル中では、他のHFO、たとえばHFO−1234ze(1,3,3,3−テトラフルオロプロペン)も、HFO−1234yfよりも低い安定性を有することになる可能性があることもまた示されていた。熱安定性が低いために、いくつかの用途においては、HFO−1234zeの使用が排除される可能性がある。PAGオイルも一般的に、でないことが見出されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ポリビニルエーテル(PVE)オイルは、HFC冷媒と組み合わせて使用するために開発された、別のタイプの酸素含有冷凍オイルである。PVE冷凍オイルの市販製品の例としては、出光興産製のFVC32DおよびFVC68Dが挙げられる。本発明においては、PVEオイルと、HFOおよび/またはHCFO含有冷媒とを含む伝熱性組合せ物が、PVEオイルなしでPAGまたはPOEオイルを含むそのような組合せ物よりも、優れた熱的/化学的安定性を有していることが示される。本発明は、標準的な装置において使用するのに適した安定性を有する、冷媒/潤滑油のさらなる組合せを提供するのに有用である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
いかなる点においても本発明の範囲を限定する意図はないが、本発明の一つの実施態様においては、そのポリビニルエーテルオイルとしては、米国特許第5,399,631号明細書および第6,454,960号明細書に記載されているような、文献に教示されているものが挙げられる。本発明のまた別な実施態様においては、そのポリビニルエーテルオイルは、式1で示したタイプの構造単位からなっている:
式1: −[C(R1,R2)−C(R3,−O−R4)]−
式中、R1、R2、R3、およびR4は独立して、水素およびヒドロカーボンから選択されるが、そのヒドロカーボンには、場合によっては、1個もしくは複数のエーテル基が含まれていてもよい。本発明の一つの好ましい実施態様においては、式2に示すように、R1、R2およびR3がそれぞれ水素である:
式2: −[CH2−CH(−O−R4)]−
本発明のまた別な実施態様においては、そのポリビニルエーテルオイルが、式3で示したタイプの構造単位からなっている:
式3: −[CH2−CH(−O−R5)]m−[CH2−CH(−O−R6)]n
式中、R5およびR6は独立して、水素およびヒドロカーボンから選択され、mおよびnは整数である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
いかなる点においても本発明の範囲を限定する意図はないが、本発明の冷媒には、少なくとも1種のHFOまたはHCFO、たとえば少なくとも1個のフッ素を含み、場合によっては少なくとも1個の塩素を含むC3〜C6アルケンが含まれるが、これらに限定される訳ではない。本発明の一つの好ましい実施態様においては、そのHFOまたはHCFOにはCF3−末端基が含まれる。本発明のまた別な好ましい実施態様においては、そのHFOが、以下のものからなる群より選択される:3,3,3−トリフルオルプロペン(HFO−1234zf)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、特にtrans−異性体、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1255ye)、特にZ−異性体、E−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロブタ−2−エン(E−HFO−1336mzz)、Z−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロブタ−2−エン(Z−HFO−1336mzz)、1,1,1,4,4,5,5,5−オクタフルオロペンタ−2−エン(HFO−1438mzz)、およびそれらの混合物。そのHFOが、HFO−1243zf、trans−HFO−1234ze、HFO−1234yf、およびそれらの混合物からなる群より選択されるのが好ましい。本発明のまた別な実施態様においては、そのHCFOが、モノ−クロロフルオロプロペン、ジ−クロロフルオロプロペン、およびそれらの混合物からなる群より選択される。本発明のまた別な実施態様においては、そのHCFOが、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)、特にtrans−異性体、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)、およびそれらの混合物から選択される。
【0012】
本発明のHFOおよび/またはHCFO冷媒は、たとえば以下の他の冷媒と組み合わせて使用してもよい、すなわち、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロオレフィン、ヒドロフルオロクロロカーボン、ヒドロカーボン、ヒドロフルオロエーテル、フルオロケトン、クロロフルオロカーボン、trans−1,2−ジクロロエチレン、二酸化炭素、アンモニア、ジメチルエーテル、およびそれらの混合物。ヒドロフルオロカーボンの例としては以下のものが挙げられる、すなわち、ジフルオロメタン(HFC−32);1−フルオロエタン(HFC−161);1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a);1,2−ジフルオロエタン(HFC−152);1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a);1,1,2−トリフルオロエタン(HFC−143);1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a);1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134);1,1,1,2,2−ペンタフルオロエタン(HFC−125);1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa);1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245ca);1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb);1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa);1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea);1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロプロパン(HFC−4310)、およびそれらの混合物。クロロフルオロカーボンの例としては以下のものが挙げられる、すなわち、トリクロロフルオロメタン(R−11)、ジクロロジフルオロメタン(R−12)、1,1,2−トリフルオロ−1,2,2−トリフルオロエタン(R−113)、1,2−ジクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン(R−114)、クロロ−ペンタフルオロエタン(R−115)およびそれらの混合物。ヒドロカーボンの例としては以下のものが挙げられる、すなわち、プロパン、ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソ−ペンタン、ネオ−ペンタン、シクロペンタン、およびそれらの混合物。ヒドロフルオロオレフィンの例としては以下のものが挙げられる、すなわち、3,3,3−トリフルオルプロペン(HFO−1234zf)、E−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(E−HFO−1234ze)、Z−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(Z−HFO−1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、E−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(E−HFO−1255ye)、Z−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(Z−HFO−1225ye)、E−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロブタ−2−エン(E−HFO−1336mzz)、Z−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロブタ−2−エン(Z−HFO−1336mzz)、1,1,1,4,4,5,5,5−オクタフルオロペンタ−2−エン(HFO−1438mzz)およびそれらの混合物。ヒドロフルオロエーテルの例としては以下のものが挙げられる、すなわち、1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロ−3−メトキシ−プロパン、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロ−4−メトキシ−ブタン、およびそれらの混合物。フルオロケトンの一例は、1,1,1,2,2,4,5,5,5−ノナフルオロ−4(トリフルオロメチル)−3−3ペンタノンである。ヒドロクロロフルオロカーボンの例としては以下のものが挙げられる、すなわち、クロロ−ジフルオロメタン(HCFC−22)、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン(HCFC−142b)、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)、1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン(HCFC−123)、および1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン(HCFC−124)。ヒドロクロロフルオロオレフィンの例としては以下のものが挙げられる:1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)、特にtrans−異性体、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)、およびジクロロ−テトラフルオロプロペン、たとえばHCFO−1214の異性体。
【0013】
本発明の実施態様においては、その冷媒組成物には、約1〜100重量%のHFOおよび/またはHCFOが含まれる。本発明のまた別な実施態様においては、その冷媒組成物には、約50〜100重量%のHFOおよび/またはHCFOが含まれる。
【0014】
本発明の一つの実施態様においては、その潤滑オイルに、ポリビニルエーテル潤滑オイルが含まれる。本発明のまた別な実施態様においては、その潤滑オイルには、約50〜100%のポリビニルエーテル潤滑オイルが含まれる。そのPVE潤滑オイルには、場合によっては、他の潤滑油、好ましくは酸素含有潤滑油、たとえばポリアルキレングリコールオイル、ポリオールエステルオイル、ポリグリコールオイル、およびそれらの混合物(これらに限定される訳ではない)が含まれる。
【0015】
冷媒/潤滑油混合物の熱的/化学的安定性は、当業者には公知の各種の試験、たとえばANSI/ASHRAE Standard 97−2007(ASHRAE 97)を使用して評価することができる。そのような試験においては、冷媒と潤滑油との混合物を、場合によっては触媒、または水、空気、金属、金属酸化物、セラミックなどを含むその他の物質の存在下に、典型的には、高温下に所定のエージング時間をかけてエージングさせる。エージングさせた後、その混合物を分析して、その混合物の分解または劣化を詳しく評価する。試験のための典型的な組成物は、冷媒/潤滑油の50/50(wt/wt)混合物であるが、他の組成を使用することも可能である。典型的には、エージング条件は約140℃〜200℃で1〜30日間であるか、より典型的には175℃で14日間のエージングである。
【0016】
典型的には、複数の方法を使用して、エージェント後の混合物の分析を実施する。混合物の液状画分について、色の変化、沈殿物、または重質物の徴候の有無の目視検査を使用して、冷媒または潤滑油のいずれかで正味の分解が起きたかどうかをチェックする。さらに、試験の際に入れておいた各種の金属試験片を目視検査することによって、腐食、付着物などの徴候のチェックをする。典型的には、液状画分についてのハライド分析を実施して、存在しているハライド(たとえばフルオリド)イオンの濃度を定量する。ハライド濃度が高くなっていれば、エージングの間にハロゲン化冷媒の部分がより多く劣化していて、安定性低下の徴候であることが示唆される。典型的には、液状画分における全酸価(Total Acid Number=TAN)を測定して、回収された液状画分の酸度を測定するが、酸度が高くなっていれば、冷媒、潤滑油、またはその両方が分解した徴候である。典型的には、サンプルの気相画分についてのGC−MSを実施して、分解生成物の定性および定量を行う。
【0017】
冷媒/潤滑油の組合せの安定性に及ぼす水の影響は、極めて乾燥(水、10ppm未満)から極めて湿潤(水、10000ppm超)までの範囲の各種湿分レベルでエージング試験を実施することによって評価することができる。酸化安定性は、空気の存在下または空気の非存在下のいずれかでエージング試験を実施することによって評価することができる。
【0018】
酸素含有潤滑油中におけるHFO冷媒の相対的な安定性を評価するためには、たとえば上に挙げたような一連のエージング試験を、場合によっては前述のような触媒もしくはその他の物質を含む、一組の冷媒/潤滑油の組合せについて実施することになるであろう。試験する潤滑油には、市販のPVEオイル、市販のPOEオイル、および市販のPAGオイルを少なくとも含むことになるであろう。酸素含有潤滑油との組合せで試験するHFOの例としては、HFO−1234yf(2,3,3,3−テトラフルオロプロペン)、trans−HFO−1234ze(trans−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン)、HFO−1243zf(3,3,3−トリフルオロプロペン)が挙げられる。酸素含有潤滑油との組合せで試験するHCFOの例としては、trans−HCFO−1233zd(trans−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン)、およびHCFO−1233xf(2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン)が挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルエーテルオイルと、ヒドロフルオロオレフィン、ヒドロクロロフルオロオレフィン、およびそれらの混合物からなる群より選択される冷媒とを含む、伝熱性組成物。
【請求項2】
前記ポリビニルエーテルオイルが、式−[C(R1,R2)−C(R3,−O−R4)]−の構造単位[式中、R1、R2、R3、およびR4は、水素およびヒドロカーボンからなる群より選択され、前記ヒドロカーボンは、場合によっては1個または複数のエーテル基を含む]を含む、請求項1に記載の伝熱性組成物。
【請求項3】
1、R2およびR3がそれぞれ水素である、請求項1に記載の伝熱性組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の伝熱性組成物。式−[CH2−CH(−O−R5)]m−[CH2−CH(−O−R6)]n−[式中、R5およびR6は独立して、水素およびヒドロカーボンから選択され、mおよびnは整数である]
【請求項5】
前記少なくとも1種のHFOが、少なくとも1個のフッ素を含むC3〜C6アルケンである、請求項1に記載の伝熱性組成物。
【請求項6】
前記C3〜C6アルケンが、CF3−末端基を含む、請求項5に記載の伝熱性組成物。
【請求項7】
前記HFOが、3,3,3−トリフルオルプロペン(HFO−1234zf)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、特にtrans−異性体、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1255ye)、特にZ−異性体、E−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロブタ−2−エン(E−HFO−1336mzz)、Z−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロブタ−2−エン(Z−HFO−1336mzz)、1,1,1,4,4,5,5,5−オクタフルオロペンタ−2−エン(HFO−1438mzz)、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の伝熱性組成物。前記HFOが、HFO−1243zf、trans−HFO−1234ze、HFO−1234yf、およびそれらの混合物からなる群より選択されるのが好ましい。
【請求項8】
前記少なくとも1種のHCFOが、少なくとも1個のフッ素および少なくとも1個の塩素を含むC3〜C6アルケンを含む、請求項1に記載の伝熱性組成物。
【請求項9】
前記HCFOが、CF3−末端基を含む、請求項8に記載の伝熱性組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種のHCFOが、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)、およびジクロロ−テトラフルオロプロペンからなる群より選択される、請求項1に記載の伝熱性組成物。
【請求項11】
ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロオレフィン、ヒドロフルオロクロロカーボン、ヒドロカーボン、ヒドロフルオロエテスル、フルオロケトン、クロロフルオロカーボン、trans−1,2−ジクロロエチレン、二酸化炭素、アンモニア、ジメチルエーテル、およびそれらの混合物からなる群より選択される冷媒をさらに含む、請求項1に記載の伝熱性組成物。

【公表番号】特表2013−518171(P2013−518171A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551226(P2012−551226)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2011/022364
【国際公開番号】WO2011/091404
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(500307340)アーケマ・インコーポレイテッド (119)
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
【Fターム(参考)】