説明

ヒメヒオウギズイセンの鱗茎を含有する腫瘍の予防及び/又は治療用組成物

【課題】 腫瘍の予防及び/又は治療に有用な組成物を提供する
【解決手段】 ヒメヒオウギズイセンの鱗茎を含有することを特徴とする、腫瘍の予防及び/又は治療用組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍の予防及び/又は治療用の組成物、並びにこの組成物の食品及び医薬としての用途に関する。
【背景技術】
【0002】
わが国では第2次世界大戦後、公衆衛生の改善と抗生物質の発見等により、感染症による死亡が激減したが、代わって生活習慣病の他、特に癌の発生数は増加の一途を辿り、1981年には国民の死亡原因の第1位となったほどである。今日、癌で死亡する者は約3人に1人の割合である。また、癌はわが国だけでなく他の国々においても急速に増加しており、人類共通の敵というべき疾患である。
したがって、癌をはじめとする腫瘍の予防又は治療方法の開発は、重要かつ急務の課題といえる。
実際、薬剤として種々の抗癌剤が開発、使用されてきているが、重篤な有害事象を伴うなどの問題も多い。
【0003】
したがって、安全性が高く、しかも有効な抗腫瘍剤の開発が求められている。例えば、特許文献1にはセンダン科に属する植物の葉などの乾燥粉砕物やその抽出物を含有する抗腫瘍剤が、特許文献2には落花生の種皮又は種子の処理物を含有する抗腫瘍剤が、特許文献3には紅豆杉植物体又はその処理物とテコマ・イペ植物体又はその処理物とを含有する抗腫瘍剤医薬組成物が、特許文献4には梅肉の疎水性有機溶媒抽出物を含有する高い抗腫瘍作用を有する飲食品及び医薬品が、それぞれ記載されている。
【特許文献1】特開2004−256426号公報
【特許文献2】特開2004−217558号公報
【特許文献3】特開2004−59500号公報
【特許文献4】特開2003−265138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、腫瘍の予防及び/又は治療に有用な組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、ヒメヒオウギズイセンの鱗茎が、優れた抗腫瘍活性を有し、腫瘍の予防又は治療に有用であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、ヒメヒオウギズイセンの鱗茎を含有することを特徴とする、腫瘍の予防及び/又は治療用組成物に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の組成物は、抗腫瘍活性、特に優れた抗悪性腫瘍活性を有する。
また、その抗腫瘍効果は、甲殻類又は真菌の由来物と併用すると相乗効果でより増強される。
さらに、ヒメヒオウギズイセンの鱗茎は、化学物質と異なり、天然由来のものなので、本発明によれば、安全で、長期に服用しても副作用などの心配の少ない組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のヒメヒオウギズイセンの鱗茎は、アヤメ科の植物〔Tritonia crocosmaeflora Lemoine(Tritonia x crocosmaeflora Lemoine又はCrocosmia crocosmiiflora [Nicholson]N.E.Brともいう)〕又はその近縁種の鱗茎(いわゆる球根と呼ばれるものである)である。
【0008】
本発明では、ヒメヒオウギズイセンの鱗茎は、生のまま使用してもよいし、あるいは加熱したり蒸したり茹でたり干したりするなどして加工処理されたヒメヒオウギズイセンの鱗茎を使用してもよい。
本発明では、ヒメヒオウギズイセンの鱗茎は、細片、粉末及びこれらの懸濁液、並びに抽出液、濃縮抽出液及びエキス末などの抽出物などの形態で使用することができる。本発明のヒメヒオウギズイセンの鱗茎として、これらの形態のものを1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。優れた抗腫瘍活性が得られる上で、ヒメヒオウギズイセンの鱗茎の形態が粉末、抽出液、又はエキス末であるのが好ましい。
【0009】
上記のヒメヒオウギズイセンの鱗茎の粉末は、鱗茎を慣用の方法、例えば粉砕機にて粉砕し、粗粉末として得るか、あるいはさらに、該粗粉末を粉砕し、微粉末として得ることもできる。
【0010】
上記ヒメヒオウギズイセンの鱗茎の抽出物は、慣用の方法に従って得ることができる。例えば、ヒメヒオウギズイセンの鱗茎を、そのままか、あるいはその細片若しくは粉末又はこれらの混合物に、抽出用溶媒を加え懸濁して、ヒメヒオウギズイセンの鱗茎の懸濁液を得る。該懸濁液を、場合により攪拌しながら、一定の温度で一定時間加熱及び/又は超音波処理により抽出を行ってから、ろ過又は遠心分離して、ヒメヒオウギズイセンの鱗茎の抽出液を得ることができる。場合により、このろ過又は遠心分離操作で残った残渣に、抽出用溶媒を加え、上記の抽出操作を再び繰り返して、抽出液を得てもよい。この繰り返しの回数は特に制限されないが、抽出効率と抽出工程の簡便化の点から、1回の繰り返しが好ましい。次に、該抽出液を、場合により減圧濃縮して、ヒメヒオウギズイセンの鱗茎の濃縮抽出液を得ることもできる。さらに、該抽出液又は該濃縮抽出液から、慣用の方法に従い、例えばスプレードライして篩過することによりヒメヒオウギズイセンの鱗茎のエキス末を得ることができる。
【0011】
上記の抽出用溶媒は、生薬類の抽出に慣用される溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、水及び有機溶媒が挙げられる。該有機溶媒として、メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコールなどのアルコール、エーテル、並びにアセトンなどが挙げられる。エタノールは飲用エタノールが好ましい。これらの抽出用溶媒は、単独で使用することもできるし、2種類以上の混合溶媒として使用することもできる。また、抽出用溶媒による抽出回数を2回以上設けた場合、抽出工程ごとに、それぞれ異なる抽出用溶媒を使用することもできる。
優れた抗腫瘍活性を有するヒメヒオウギズイセンの鱗茎の抽出物を得る上で好ましい抽出用溶媒は、水又は飲用エタノール、特に5〜10%の飲用エタノールの水溶液である。
【0012】
上記の抽出時の加熱温度は特に限定されないが、通常、室温〜80℃の温度、好ましくは80℃である。また、上記の抽出は、必要に応じて還流下で行ってもよい。抽出時間も特に限定されないが、抽出効率及び抽出工程の簡便化から、好ましくは数時間、より好ましくは3時間である。
【0013】
さらに、安全面の点から、ヒメヒオウギズイセンの鱗茎の細片、粉末及びこれらの懸濁液:並びにヒメヒオウギズイセンの鱗茎の抽出液、濃縮抽出液及びエキス末などの抽出物の調製において、さらに殺菌工程(例えば80℃、1時間)を設けることが好ましい。
【0014】
本発明の組成物は、ヒメヒオウギズイセンの鱗茎以外に、他の成分、例えば腫瘍の予防及び/又は治療に有用な物質などを含んでいてもよい。例えば、サメ軟膏、薬用人参、冬虫夏草、甲殻類の由来物、特にキチン及びこれから誘導されるキトサン、並びに真菌の由来物などである。相乗効果で抗腫瘍活性を増強できる点で、甲殻類又は真菌の由来物が好ましい。
【0015】
本発明において甲殻類の由来物として、甲殻類に属する動物の頭胸部、腹部、顎脚、胸肢、甲殻、及び触角などの各部位の由来物が使用できる。良好な抗腫瘍活性が得られる点で、甲殻類の触角(いわゆるヒゲと呼ばれるものである)が好ましい。
本発明で、上記の触角などの各部位は、生のまま使用してもよいし、あるいは加熱したり蒸したり茹でたり干したりするなどして加工処理されたものを使用してもよい。良好な抗腫瘍活性が得られる点で、生のものが好ましい。
また、上記各部位の由来物として、各部位の細片、粉末、又はこれらの懸濁液、あるいは各部位の抽出液、濃縮抽出液、又はエキス末などの抽出物などが使用できる。良好な抗腫瘍活性が得られる点で、粉末又は抽出液若しくはエキス末などの抽出物が好ましい。
本発明では、良好な抗腫瘍活性が得られる点で、触角の抽出物が好ましい。
なお、本発明では、これら甲殻類の由来物を1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
本発明では甲殻類に属する動物として、カニ及びエビが例示され、特にエビが好ましい。エビとして、例えば、サクラエビ(Sergia lucens)、オオサクラエビ(Sergia glandis)、及びコツノサクラエビ(Sergia robusta)などのサクラエビ属(Sergia);ブラックタイガー(Penaeus monodon)及びクルマエビ(Penaeus japonicus)などのクルマエビ属(Penaeus)に属するエビ;並びにイセエビ(Panulirus japonicus)、カノコイセエビ(Panulirus longipes)、シマイセエビ(Panulirus penlicillatus)、ゴシキエビ(Panulirus versicolor)、シークローフィッシュ(Panulirus argus)、カリフォルニアイセエビ(Panulirus interruptus)、ナンヨウイセエビ(Jasus lalandi)、ハコエビ(Linuparus trigonus)、ウチワエビ(Ibacus ciliatus)、ゾウリエビ(Parribacus antarcticus)、セミエビ(Scyllarides squeamosus)、及びコブセミエビ (Scyllarides haani)などのイセエビ属(Panulirus)に属するエビなどが挙げられる。好ましくは、サクラエビ、オオサクラエビ、及びコツノサクラエビなどのサクラエビ属に属するエビ、特にサクラエビが挙げられる。
【0017】
本発明では、サクラエビの触角の由来物、特に抽出物が、ヒメヒオウギズイセンの鱗茎との相乗効果で優れた抗腫瘍活性を発揮するので好ましい。
【0018】
本発明において真菌の由来物として、子実体又は菌糸体の細片、粉末、又はこれらの懸濁液、あるいは子実体又は菌糸体の抽出液、濃縮抽出液、若しくはエキス末などの抽出物又は培養液などが使用できる。培養液は、取り扱いの容易さから乾燥させて粉末にしてから使用するのが好ましい。本発明の真菌の由来物として、これらを1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
本発明でヒメヒオウギズイセン鱗茎と併用できる真菌として、担子菌の子実体又は菌糸体が例示される。上記担子菌として、シイタケ(Lentinus edodes)、霊芝(Ganoderma lucidum)、マイタケ(Grifola frondosa)、コフキサルノコシカケ(Ganoderma applanatum)、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)、エノキタケ(ナメタケ)(Flammulina velutipes)、ナメコ(Pholiota nameko)、カワラタケ(Coriolus versicolor)、キクラゲ(Auricularia auricula)、スエヒロタケ(Schizophyllum commune)、チョレイマイタケ(Grifora umbcllata)、フクロタケ(Volvariella volvacea)、アガリクス(Agaricus bisporus)、ニンギョータケ(Albatrellus confluens)、メシマコブ(Phellinus linteus、P.yucatensis、Fomes yucatensis)、及びニオウシメジ(Tricholoma giganteum)などが例示される。好ましい担子菌は霊芝、アガリクス、及びメシマコブである。
【0020】
本発明の組成物は、良好な抗腫瘍活性が得られる点で、ヒメヒオウギズイセンの鱗茎100重量部に対して、甲殻類の由来物を10〜1000重量部、特に30〜300重量部、とりわけ100重量部含有するのが好ましい。
また、本発明の組成物は、良好な抗腫瘍活性が得られる点で、ヒメヒオウギズイセンの鱗茎100重量部に対して、真菌の由来物を20〜500重量部、特に30〜300重量部、とりわけ100重量部含有するのが好ましい。
なお、本発明において重量部は乾燥重量を意味する。また、ヒメヒオウギズイセン鱗茎又は甲殻類若しくは真菌の由来物としてエキスなどの抽出物を使用する場合は、上記のヒメヒオウギズイセン鱗茎又は甲殻類若しくは真菌の由来物の重量は、原材料相当量を意味する。
【0021】
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない限り、添加剤、例えば、賦形剤、甘味料、酸味料、増粘剤、香料、色素又は乳化剤などを含有してもよい。
【0022】
本発明に係る組成物は、食品として、特に健康食品、機能性食品、健康補助食品、特定保健用食品として使用することができる。これら食品は、例えばお茶、ジュースといった飲料水;ゼリー、あめ、チョコレート、チューインガムなどの形態であってもよい。また、本発明に係る食品は、栄養補助食品(サプリメント)として、液剤、粉剤、粒剤、カプセル剤、錠剤の形で製造されてもよい。
【0023】
また、本発明に係る組成物は、医薬としても、使用することができる。これら医薬は、例えば錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬若しくは軟ゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤又は懸濁剤の形態で経口投与することができるが、例えば坐剤の形態で直腸内に;例えば軟膏、クリーム剤、ゲル剤又は液剤の形態で局部的に非経口的に投与することもできる。
【0024】
本発明に係る組成物の摂取量は、特に制限されないが、投与経路、疾病の種類、剤型、摂取者の年齢、体重及び症状に応じて適宜選択することができる。例えば、本発明の組成物を経口摂取する場合には、体重60kgの成人1日当たり有効成分量としてヒメヒオウギズイセンの鱗茎を0.1〜20g、好ましくは0.2〜5.0g、より好ましくは0.4〜1.0g摂取することが、良好な抗腫瘍活性を得る上で望ましい。また、摂取期間は、摂取者の年齢、症状などに応じて任意に定めることができる。
【0025】
本発明の組成物で予防又は治療され得る腫瘍としては、例えば、良性腫瘍、前癌病変又は悪性腫瘍(がん)が挙げられる。良性腫瘍として、色素性母斑、形成異常母斑、懸垂線維腫、脂肪腫、血管腫、リンパ管腫、化膿性肉芽腫、脂漏性角化症、皮膚線維腫、ケラトアカントーマ、ケロイド、腱鞘巨細胞腫などの軟部腫瘍、又は大腸ポリープ若しくは声帯ポリープなどのポリープが例示され、また、前癌病変として、子宮頸部異型上皮又は口腔白斑症が例示され、悪性腫瘍として、急性若しくは慢性の白血病、悪性リンパ腫、骨髄腫、又はマクログロブリン血症などの造血器由来の悪性腫瘍;脳腫瘍、頭頸部癌(例えば、喉頭癌、咽頭癌、舌癌など)、乳癌、肺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、肝癌、胆嚢・胆管癌、膵癌、膵島細胞癌、腎細胞癌、副腎皮質癌、膀胱癌、前立腺癌、睾丸腫瘍、卵巣癌、子宮癌、絨毛癌、甲状腺癌、悪性カルチノイド腫瘍、皮膚癌、悪性黒色腫、骨肉腫、軟骨肉腫、軟部組織肉腫、神経芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、線維肉腫、脂肪肉腫、血管肉腫又は網膜芽細胞腫などの固形腫瘍;あるいはそれらに由来・関連する癌が例示される。本願発明の組成物は、特に、白血病、乳癌、肺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、肝癌、前立腺癌、膀胱癌、子宮癌、膵癌、腎細胞癌、及び甲状腺癌、とりわけ白血病及び乳癌の予防又は治療に有用である。
【0026】
以下、本発明を、実施例によってさらに詳細に説明する。本発明は、実施例によって限定されるものではない。また、実施例では%は特に規定されていない限り重量%を意味する。
【実施例1】
【0027】
腫瘍細胞の試験管内培養における増殖抑制効果
(1)試験試料の調製
ヒメヒオウギズイセンの鱗茎部の凍結乾燥標品((株)上薬研究所より提供)をミキサーで破砕し、粉末にした。この粉末1gに10mlの蒸留水を加え、100mg/mlの溶液を調製し、それを100℃にて10分間処理して熱水抽出した。その抽出液を遠心分離(3000rpm、10分、4℃)した後、ろ過(ミリポアフィルター、穴径0.45μm)し、これを10%FCS-RPMI1640で10倍及び100倍に希釈し、ヒメヒオウギズイセンの鱗茎部の濃度が10mg/ml及び1mg/mlである試験試料をそれぞれ調製した(濃度は、原材料相当分で示している)。
また、有効対照としてマイトマイシンC(協和発酵(株))2mgアンプルに蒸留水1mlを加え、これを10%FCS-RPMI1640で希釈し、50μg/ml溶液としたものを使用した。
【0028】
(2)材料と方法
腫瘍細胞:マウス白血病細胞YAC−1(理化学研究所細胞バンクより供与)を3日間継代培養し、10%FCS-RPMI1640で1×106細胞/mlに調整した。
培養試験:上記のYAC−1細胞(1×106細胞/ml)950μlを24穴プレートの各ウエルに注入し、上記で調製した各試験試料を50μl加え、攪拌し、37℃下で3日間培養した(注:各試料最終濃度は、ここで1/20となる)。培養後、細胞数及び生存率を測定し、生存細胞数を求めた。
【0029】
(3)結果
YAC−1細胞は培養液中で3日後に約30×105細胞/mlに増殖した。そこにヒメヒオウギズイセン鱗茎の試験試料を添加すると、YAC−1細胞の増殖は抑制され、特に5mg/mlの濃度で、有効対照の制癌剤マイトマイシンC(濃度2.5μg/ml)に劣らないYAC−1細胞増殖抑制作用を示した(図1)。
【実施例2】
【0030】
マウスでの腫瘍増殖阻止試験
(1)試験飼料の調製
ヒメヒオウギズイセンの鱗茎の凍結乾燥標品((株)上薬研究所より提供)をミキサーで破砕して粉末にし、その粉末をマウス用飼料((株)クレアCE−2粉餌)に添加して、ヒメヒオウギズイセンの鱗茎をそれぞれ0.4%、1.0%及び2.5%含有する、試験飼料1、試験飼料2及び試験飼料3を調製した。
【0031】
(2)材料と方法
マウスは、C3H/HeNマウスの雌(日本チャールスリバー社、神奈川)を6週齢で購入し、一週間予備飼育後、表1に示したとおりに、対照群、試験飼料1群、試験飼料2群、試験飼料3群、及び陽性対照群に群分けした。
【0032】
【表1】

【0033】
試験は図2に示したタイムスケジュールに従った。
先ず、マウスに、Abe S et a1. Gann 73 91-96(1982)及びOhasi K et a1. Yakugaku Zasshi 113 396-399(1993)に記載の方法に従い、同系腫瘍MM46乳癌細胞1×106個をそけい部皮下に移植した。なお、移植操作時に腫瘍が筋肉内に浸潤したマウスはデータから除外した。
次いで、これら腫瘍移植マウスに上記表1に示すとおりの飼料又は投与物質を与えた。対照群にはマウス用飼料((株)クレアCE−2粉餌)を摂取させた。試験飼料1群〜試験飼料3群にはそれぞれ試験飼料1〜3を摂取させた。陽性対照群には上記マウス用飼料を摂取させ、かつ、腫瘍移植後15日目、18日目及び21日目にレンチナン((株)味の素製)を6.25mg/kg腹腔内投与した。
(2)観察
マウスそけい部皮下に移植した腫瘍が触知可能となる腫瘍移植後7日目から、その増殖を3日ないし4日おきに4週間まで観察した。また、試験終了時にマウスを屠殺し、腫瘍を取りだし、その湿重量を測定した。
【0034】
(3)結果
表2に移植後29日目の各群の腫瘍径を示した。対照群では約27.0mmを示した。陽性対照群では約20.8mmを示し、腫瘍増殖の抑制がみられた。試験飼料1群では約26.8mmであり、試験飼料2群では約24.6mmであり、腫瘍増殖の抑制傾向がみられた。試験飼料3群では約23.3mmであり、対照群と比較すると有意な腫瘍抑制作用が認められた。
また、図3に各群の移植後29日目の平均腫瘍重量を示した。対照群に比べ試験飼料2及び3群で抑制が認められた。
なお、統計学的検定は、Student'sのt検定を用いた。
【0035】
【表2】

【実施例3】
【0036】
相乗効果の確認
(1)試験飼料の調製
上記「マウスでの腫瘍増殖阻止試験」と同様にして、ヒメヒオウギズイセンの鱗茎の凍結乾燥標品((株)上薬研究所より提供)をミキサーで破砕して粉末にした。また、サクラエビを市場から入手し、生のままでその触角部分を切り出し、乾燥したものを破砕して粉末にした。これら粉末を、それぞれマウス用飼料((株)クレアCE−2粉餌)に添加して、ヒメヒオウギズイセンの鱗茎を0.5%含有する試験飼料4、サクラエビの触角を0.5%含有する試験飼料5、及びヒメヒオウギズイセンの鱗茎を0.25%とサクラエビの触角を0.25%含有する試験飼料6を調製した。
【0037】
(2)材料と方法
上記「マウスでの腫瘍増殖阻止試験」と同様に、マウスは、C3H/HeNマウスの雌(日本チャールスリバー社、神奈川)を6週齢で購入し、それぞれ8匹ずつ一週間予備飼育後、対照群、試験飼料4群、試験飼料5群、試験飼料6群、及び陽性対照群に群分けした。上記「マウスでの腫瘍増殖阻止試験」と同様に、対照群にはマウス用飼料((株)クレアCE−2粉餌)を摂取させ、試験飼料4群〜試験飼料6群にはそれぞれ試験飼料4〜6を摂取させ、陽性対照群には上記マウス用飼料を摂取させ、かつ、腫瘍移植後15日目、18日目及び21日目にレンチナン((株)味の素製)を6.25mg/kg腹腔内投与した。
試験は、上記「マウスでの腫瘍増殖阻止試験」に準じて行い、各群の移植後29日目の腫瘍重量を測定し、各群の平均値を計算した。
【0038】
(3)結果
対照群と比較して試験飼料4〜6群で腫瘍重量の抑制が認められた(図4)。また、試験飼料6の抑制率は、試験飼料4および試験飼料5より大きく、ヒメヒオウギズイセンの鱗茎とサクラエビの触角との相乗効果が確認できた(表3)。
【0039】
【表3】

【0040】
考察
以上から、ヒメヒオウギズイセンの鱗茎が、白血病細胞や乳癌の増殖を抑制することが分かり、抗腫瘍活性を有することが認められた。
また、ヒメヒオウギズイセンの鱗茎とサクラエビの触角由来物との相乗効果も確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、腫瘍の予防及び/又は治療用組成物を得ることができる。
より詳細には、本発明の組成物は、各種良性腫瘍、前癌病変又は悪性腫瘍の予防及び/又は治療に有用である。
これら組成物は、医薬品、あるいは健康食品、健康補助食品、特定保健用食品又は栄養補助食品などの食品に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】YAC−1細胞の生細胞数の変化を示した図である。
【図2】マウスでの腫瘍増殖阻止試験のタイムスケジュールを示した図である。
【図3】マウスの腫瘍重量を示した図である。
【図4】マウスの腫瘍重量を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒメヒオウギズイセンの鱗茎を含有することを特徴とする、腫瘍の予防及び/又は治療用組成物。
【請求項2】
ヒメヒオウギズイセンの鱗茎が、ヒメヒオウギズイセンの鱗茎の粉末、ヒメヒオウギズイセンの鱗茎のエキス末、及びヒメヒオウギズイセンの鱗茎の抽出液からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
さらに、甲殻類の由来物を含有する請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
食品である、請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
医薬である、請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−176476(P2006−176476A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−374025(P2004−374025)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(300001934)株式会社上薬研究所 (1)
【出願人】(504473511)
【Fターム(参考)】