説明

ヒンジキャップ

【課題】容器口部からの離脱の容易化及び確実化を図ることのできるヒンジキャップを提供すること。
【解決手段】容器口部に外嵌される外嵌壁4を有するキャップ本体1と、外嵌壁にヒンジ部2を介して連設される上蓋3とを備え、外嵌壁を外壁部分4aと内壁部分4bとに分断するように外嵌壁の上面側から下方に向かって延び、外嵌壁の下面には至らない分断溝18と、分断溝に連なり、外嵌壁の内部を通るように外嵌壁の下面から上方に向かって延びる二つの縦孔19とが設けられ、縦孔から外嵌壁の外面にかけて形成される外側弱化部20は該外面の下端から上方に向かって延びると共に、縦孔から外嵌壁の内面にかけて形成される内側弱化部21は該内面の下端から上方に向かって延び、ヒンジ部は、二つの縦孔に挟まれる位置にある外壁部分に連設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、容器の口部に装着され、容器からの離脱作業を容易に行えるヒンジキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器からの離脱作業を容易に行えるヒンジキャップに関する技術が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1、2には、容器口部に打栓される注出口(キャップ本体)と、これにヒンジを介して設けられた蓋体(上蓋)とを備え、注出口には、ヒンジを左右から挟む位置において注出口の上端から下方に向かって延びる2本の弱化ラインと、これら2本の弱化ラインを左右外側から挟む位置において注出口の下端から上方に向かって延びる2本の弱化開口ラインとが形成されたヒンジキャップが開示されている。
【0004】
斯かるヒンジキャップでは、注出口に対して蓋体と共にヒンジが引っ張り下げられると、2本の弱化ラインが上端側から下端まで各々切り離される。その後、注出口に対してヒンジが引っ張り上げられ、これにより、2本の弱化開口ラインが下端側から上端まで切り離されれば、注出口が容器口部から簡単に離脱することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−154567号公報
【特許文献2】特開2003−72807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記ヒンジキャップでは、2本の弱化ラインが注出口の下端にまでは至っておらず、各弱化ラインの下端と、各弱化開口ラインの下端とは離れている。そのため、各弱化ラインが切り離された後、ヒンジが引っ張り上げられる際に、この引っ張り上げのための力が各弱化開口ラインの下端(ヒンジの引っ張り上げに伴う弱化開口ラインの切り離し開始点となる部位)を破断させる力に効率良く変換されず、弱化開口ラインの切り離しには大きな力が必要となる。
【0007】
そうであるからといって、各弱化ラインの下端を注出口の下端にまで延ばすと、2本の弱化ラインが完全に切り離されたときにヒンジが注出口から分離することになるので、その後の弱化開口ラインの切り離し作業にヒンジを用いることができなくなってしまう。従って、各弱化ラインの下端は注出口の下端よりもある程度上方に位置していなければならない。
【0008】
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、容器口部からの離脱の容易化及び確実化を図ることのできるヒンジキャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るヒンジキャップは、
容器口部に外嵌される外嵌壁を有するキャップ本体と、
前記外嵌壁にヒンジ部を介して連設される上蓋とを備え、
前記外嵌壁を外壁部分と内壁部分とに分断するように該外嵌壁の上面側から下方に向かって延び、該外嵌壁の下面には至らない分断溝と、
前記分断溝に連なり、前記外嵌壁の内部を通るように該外嵌壁の下面から上方に向かって延びる二つの縦孔とが設けられ、
前記縦孔から前記外嵌壁の外面にかけて形成される外側弱化部は該外面の下端から上方に向かって延びると共に、前記縦孔から前記外嵌壁の内面にかけて形成される内側弱化部は該内面の下端から上方に向かって延び、
前記ヒンジ部は、前記二つの縦孔に挟まれる位置にある前記外壁部分に連設されている(請求項1)。
【0010】
上記ヒンジキャップにおいて、前記内側弱化部に連係し、前記ヒンジ部から遠ざかる方向に延びる上側弱化部が、前記キャップ本体において前記外嵌壁の上部から内向きに連設された部分または前記外嵌壁の上部に設けられていてもよい(請求項2)。
【0011】
上記ヒンジキャップにおいて、前記外嵌壁の内面側に前記容器口部に係合する係合突起が設けられ、該係合突起は、前記縦孔の内側に相当する位置には設けられていないとしてもよい(請求項3)。
【0012】
上記ヒンジキャップにおいて、前記縦孔は、前記外嵌壁を上下に貫く貫通孔としてもよい(請求項4)。
【0013】
上記ヒンジキャップにおいて、前記外嵌壁の下端から上方に向けて延び、前記分断溝に連通する水抜き孔が前記縦孔とは別に設けられていてもよく(請求項5)、この場合、前記分断溝の底が、前記縦孔または前記水抜き孔に向けて低くなるように傾斜していることが好ましい(請求項6)。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜6に係る発明では、容器口部からの離脱の容易化及び確実化を図ることのできるヒンジキャップが得られる。
【0015】
すなわち、請求項1〜6に係る発明では、外側弱化部及び内側弱化部がそれぞれ外嵌壁の下端にまで至っているので、上蓋を下方に引っ張って外側弱化部を破断させた後、上蓋を上方に引っ張って内側弱化部を破断させる際、上蓋を上方に引っ張る力が内側弱化部の下端(内側弱化部の破断開始点となる部位)を破断させる力へと効率的に変換される。そのため、内側弱化部を破断させる作業(特許文献1、2に記載のヒンジキャップではネックとなる作業)に要する力が低減され、ひいてはヒンジキャップを容器口部から離脱させる作業を、最初から最後まで小さな力で簡単に行えるようにすることができる。請求項1〜6に係る発明ではまた、ヒンジキャップの水洗やシャワー冷却により、縦孔や分断溝に水が侵入した場合でも、この水を外嵌壁の下端に開口する縦孔から抜き、乾燥を十分に行えるようにすることもできる。
【0016】
また、請求項1〜6に係る発明では、各外側弱化部の破断後、各内側弱化部の破断がある程度進めば、キャップ本体を容器口部から離脱させることができるが、特に請求項2に係る発明では、内側弱化部の破断をその上端まで進めた後、上蓋をヒンジ部と反対方向に引っ張ると、ヒンジ部から遠ざかる方向に延びる二つの上側弱化部が破断していくのであり、ここまで破断を進めると、キャップ本体を容器口部から非常に小さい力で離脱させることができる。つまり、請求項2に係る発明では、容器口部からのヒンジキャップの離脱作業がより容易となる。
【0017】
請求項3に係る発明では、係合突起によって内側弱化部が途切れないので、内側弱化部の破断による容器口部からのヒンジキャップの離脱作業を確実に行うことができる。
【0018】
請求項4に係る発明では、外側弱化部を外嵌壁の外面の上端から下端まで延ばすことができ、内側弱化部の破断作業の前に行う外側弱化部の破断作業に要する力も低減され、ひいては、ヒンジキャップを容器口部から離脱させる作業全体が、小さな力で簡単に行えるようになる。
【0019】
請求項5、6に係る発明では、ヒンジキャップの水洗やシャワー冷却により、縦孔や分断溝に水が浸入した場合でも、この水を縦孔のみならず縦孔とは別に設けた水抜き孔からも抜くことができ、特に請求項6に係る発明では、縦孔や分断溝に浸入した水を分断溝の底に設けた傾斜により縦孔や水抜き孔に誘導して排出することができるので、水抜き性の点でより有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態に係るヒンジキャップの構成を上蓋を開き状態として概略的に示す平面図である。
【図2】前記ヒンジキャップの構成を上蓋を開き状態として概略的に示す縦断面図である。
【図3】前記ヒンジキャップの構成を上蓋を開き状態として概略的に示す底面図である。
【図4】前記ヒンジキャップにおける切欠部の構成を概略的に示す説明図である。
【図5】図1のX−X線断面図である。
【図6】(A)は上蓋が開き状態にあるヒンジキャップの構成を簡略的に示す平面図、(B)は(A)のヒンジキャップを容器と共に概略的に示す正面図である。
【図7】(A)は外側弱化部が破断された状態にあるヒンジキャップの構成を簡略的に示す平面図、(B)は(A)のヒンジキャップを容器と共に概略的に示す正面図である。
【図8】(A)は内側弱化部が破断された状態にあるヒンジキャップの構成を簡略的に示す平面図、(B)は(A)のヒンジキャップを容器と共に概略的に示す正面図である。
【図9】(A)は上側弱化部が破断された状態にあるヒンジキャップの構成を簡略的に示す平面図、(B)は上側弱化部が破断された直後のヒンジキャップを容器と共に概略的に示す正面図である。
【図10】前記ヒンジキャップの変形例の構成を上蓋を開き状態にして概略的に示す平面図である。
【図11】図10に示すヒンジキャップの構成を概略的に示す縦断面図である。
【図12】前記ヒンジキャップの他の変形例の構成を上蓋を開き状態にして概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら以下に説明する。
【0022】
本実施の形態に係るヒンジキャップは、例えばガラス瓶やペットボトル等の合成樹脂製容器である容器の口部に装着(打栓)されるものであり、図1〜図3に示すように、キャップ本体1と、キャップ本体1にヒンジ部2を介して連設(連結)された上蓋3とを備える。また、本形態のヒンジキャップは、図1及び図3に示すように、前後に対称な構造を備えている。
【0023】
キャップ本体1は、略筒状の容器口部に装着固定され、この装着固定のために、容器口部に外嵌される略筒状の外嵌壁4を有し、外嵌壁4の内周壁(内面側)には容器口部の外周壁にある被係合部5(図9(B)参照)に係合する係合突起6が設けられる(図2、図3参照)。
【0024】
キャップ本体1はまた、容器口部に装着固定された状態で容器口部を閉塞するように、容器口部に内嵌される略筒状の内嵌壁7と、内嵌壁7の下部に連設され、容器口部を閉塞する閉塞壁8とを有する(図2参照)。すなわち、キャップ本体1において外嵌壁4と内嵌壁7との間に形成される略環状の空間内に容器口部が嵌め込まれ、嵌め込まれた容器口部に係合する係合突起6によってキャップ本体1は容器口部に確実に固定されることになる。
【0025】
キャップ本体1の閉塞壁8には、注出用開口8a(図7(A)参照)を簡単に形成することができるように、無端状に連続するスコア9(図2、図3参照)と、このスコア9に囲まれた部位に連設されたスコア破断用のタブリング10(図1、図2参照)とが設けられる。そして、タブリング10が引っ張られてスコア9が破断すると、閉塞壁8に注出用開口8aが形成されるが、この注出用開口8aが形成されるまでの間は容器の密封状態が保たれるのであり、形成された注出用開口8aから注出される容器の内容物は、内嵌壁7の上部に設けられた略半円筒状の注出案内部11(図1、図2参照)に案内される。
【0026】
斯かるキャップ本体1に対して、上蓋3は、ヒンジ部2を軸にして回動し、キャップ本体1に上方から当接し閉塞壁8を覆う閉じ状態と、キャップ本体1から離れ閉塞壁8に形成された注出用開口8aからの内容物の注出を妨げない開き状態とになる。ここで、上蓋3の閉じ状態が適度の力で保持されるように、上蓋3の外周壁の内周面側に設けられた凹溝12(図2参照)と、キャップ本体1において外嵌壁4及び内嵌壁7を繋ぐブリッジ部分B(図2、図3参照)から上方に向けて延びる筒状部13の外周面側に設けられた平面視略円弧状の突起14(図1、図2参照)とは、上蓋3が閉じ状態のときに係合する。また、上蓋3の開き状態は、ヒンジ部2の両側に設けられた二つのバンド部2aによって保持される(図1〜図3参照)。
【0027】
上蓋3の天壁には、上蓋3が閉じ状態のときにキャップ本体1の内嵌壁7の内側面に密着する環状壁15(図1、図2参照)が連設され、これにより、キャップ本体1の閉塞壁8に注出用開口8aが形成された後においても、上蓋3が閉じ状態のときには容器のシール性が確保される。
【0028】
上蓋3にはさらに、閉じ状態の上蓋3を開く操作の利便性を図るために、上蓋3においてヒンジ部2が連設される部分とは反対側につば部16(図1〜図3参照)が設けられ、さらにこのつば部16に指を掛け易くするための欠落部17が、キャップ本体1の外嵌壁4においてヒンジ部2が連設される部分とは反対側に設けられる(図1、図2参照)。
【0029】
そして、本形態のヒンジキャップは、図6〜図9に示す手順によって容器口部から簡単に離脱(除去)させることができる。この離脱のための構成と離脱作業の内容について次に述べる。尚、図7〜図9には、容器の内容物が完全に消費された後に、例えば分別廃棄のために容器口部からのヒンジキャップの離脱作業を行うことを想定して、タブリング10が除去され閉塞壁8に注出用開口8aが形成された状態を示しているが、ヒンジキャップの離脱作業自体は、スコア9が破断せず注出用開口8aが形成されていない状態でも行うことができる。
【0030】
キャップ本体1の外嵌壁4には、外嵌壁4を外壁部分4aと内壁部分4bとに分断するように外嵌壁4の上面側から下方に向かって延び、外嵌壁4の下面には至らない分断溝18(図1、図2参照)と、分断溝18に連なり、外嵌壁4の内部を通るように外嵌壁4の下面から上方に向かって延びる二つの縦孔19(図1、図3参照)とが設けられる。
【0031】
分断溝18は、図1に示すように、二つの縦孔19に挟まれるセンター分断溝18Aと、二つの縦孔19を介してセンター分断溝18Aの左右両側に連なりヒンジ部2から離れる方向に延びる二つのサイド分断溝18Bとからなる。
【0032】
各縦孔19は、図5に示すように、縦孔19から外嵌壁4の外面にかけて外側弱化部(薄肉部)20を形成し、かつ、縦孔19から外嵌壁4の内面にかけて内側弱化部(薄肉部)21を形成するように構成され、本形態の縦孔19は横断面視略矩形状をしている。また、縦孔19は外嵌壁4を上下に貫く貫通孔として形成され、外側弱化部20及び内側弱化部21は、それぞれ外嵌壁4の外面及び内面の下端から上方に向かって延び、外側弱化部20は外嵌壁4の外面の上端に至る。
【0033】
尚、上述したように、外嵌壁4の内周壁には係合突起6が設けられる(図2、図3参照)が、この係合突起6は、各縦孔19の内側に相当する位置には設けられていない。従って、内側弱化部21は外嵌壁4の内面の下端から上端まで連続し、係合突起6によって途切れない。
【0034】
そして、ヒンジ部2は、二つの縦孔19に挟まれる位置にある(センター分断溝18Aの外側にある)外壁部分4aに連設されている。従って、図6(A)及び(B)に示すように上蓋3を開いた状態とした後、この上蓋3を下方に向けて引っ張ると、図7(A)及び(B)に示すように、二つの縦孔19に挟まれる位置にある外壁部分4aの略全体が、この外壁部分4aとこの外壁部分4aの内側に位置する内壁部分4bとの連設部分を中心にして回動するように動き、この動きに伴って二つの外側弱化部20が上端から下方に向けて破断していき、最終的に外側弱化部20はその下端まで破断する。
【0035】
この各外側弱化部20の破断は、各外側弱化部20が外嵌壁4の外面の上端から下端まで延びているので、小さな力で容易に行うことができる。
【0036】
ここで、二つの外側弱化部20が完全に破断した後においても、二つの縦孔19に挟まれる位置にある外壁部分4aと内壁部分4bとがそれぞれの下部において相互にしっかりと繋がった状態となっているように、センター分断溝18Aの深さを調整しておく。すなわち、センター分断溝18Aが外嵌壁4の下面のあまりにも近くにまで延びていると、各外側弱化部20が完全に破断したときに外壁部分4aが内壁部分4bから分離してしまう虞がある。逆に、センター分断溝18Aが浅すぎると、例えば外壁部分4aの上部のみが外壁部分4aの中央部を中心にして回動するだけとなって、外側弱化部20がうまくその下端まで破断せず、これより後に続く離脱作業に支障を来すのであり、本形態では、センター分断溝18Aは、係合突起6の頂部よりも下側にまで延びている。
【0037】
上記のようにして各外側弱化部20が下端まで破断すれば、今度は、図8(A)及び(B)に示すように、上蓋3を上方に向けて引っ張る。これにより、二つの縦孔19に挟まれた位置にある内壁部分4bの略全体が、この内壁部分4bの上部を中心にして(あるいは、この内壁部分4bとこの内壁部分4bの内側に位置する内嵌壁7とを繋ぐブリッジ部分Bを中心にして)回動するように動き、この動きに伴って二つの内側弱化部21が下端から上方に向けて破断していく。尚、二つの縦孔19に挟まれる位置にある内壁部分4bは、その内側の内嵌壁7に対してブリッジ部分Bによって肉厚に連設されているので(図2参照)、各内側弱化部21をその上端まで完全に破断させてもブリッジ部分Bからは分離しない。
【0038】
本形態では、外側弱化部20及び内側弱化部21がそれぞれ外嵌壁4の下端にまで至っているので、図7(A)及び(B)に示すように上蓋3を下方に引っ張って外側弱化部20を破断させた後、図8(A)及び(B)に示すように上蓋3を上方に引っ張って内側弱化部21を破断させる際、上蓋3を上方に引っ張る力が内側弱化部21の下端(内側弱化部21の破断開始点となる部位)を破断させる力へと効率的に変換される。そのため、内側弱化部21を破断させるのに大きな力は不要である。
【0039】
そして、各内側弱化部21の破断がある程度進めば、キャップ本体1を容器口部から離脱させることができるが、本形態では、内側弱化部21の破断をその上端まで進めた後、図9(B)に示すように、上蓋3をヒンジ部2と反対方向に引っ張ると、内側弱化部21に連係し(連なり)、ヒンジ部2から遠ざかる方向に延びる二つの上側弱化部22が破断していくのであり、ここまで破断を進めると、キャップ本体1を容器口部から非常に小さい力で離脱させることができる。
【0040】
ここで、各上側弱化部22は、図5と、図2において図5に対応する部分とを対比すれば明らかなように、外嵌壁4の内周部分の上部からこの外嵌壁4の上部と内嵌壁7とを繋ぐブリッジ部分Bにかけて設けられた切欠部(欠落部)23の上側(あるいは外側)に形成される薄肉部(あるいはスリット)である。すなわち、各上側弱化部22は、外嵌壁4の上部内周部分とブリッジ部分Bにおける外周部分とを切り欠いた状態とすることによって形成されるものであり、ブリッジ部分B(キャップ本体1において外嵌壁4の上部から内向きに連設された部分)または外嵌壁4の上部(外嵌壁4とブリッジ部分Bとの境界部分も含む)の何れかに設けられるものである。そして、各上側弱化部22を形成するために設けられる二つの切欠部23は、図4に斜線で示すように、各縦孔19の内側に相当する位置から、外嵌壁4の内周面に沿ってヒンジ部2から離れるように延び、それぞれキャップ本体1の前後に最も近づいた位置付近で途切れている。
【0041】
従って、図9(B)に示すように、上蓋3をヒンジ部2と反対方向に引っ張り、二つの上側弱化部22を破断させると、キャップ本体1は図9(A)に示す状態になる。尚、図9(A)では、各上側弱化部22が破断した状態のキャップ本体1をわかり易く示すため、上蓋3を、図9(B)に示す位置からヒンジ部2側へと幾らか戻した状態としてある。
【0042】
本形態では、容器に内容液(内容物)を充填するとき、殺菌のために内容液を高温(85℃〜92℃)とし、キャッピング後、大量の水を用いてシャワー冷却する。このとき、注出用開口8aが形成されることになる閉塞壁8の上面にまで水が至ることは、キャップ本体1の筒状部13と、この筒状部13に係合する凹溝12を有する上蓋3の周壁とによって防止されるが、筒状部13の外側にある分断溝18には水が入る。しかし、本形態では、各サイド分断溝18Bの底(下端)に、各縦孔19に向けて低くなる傾斜をつけてある(図2参照)ので、サイド分断溝18Bに入った水を外嵌壁4の下面に開口する縦孔19から抜くことができる。尚、センター分断溝18Aの底にも、縦孔19に向けて低くなる傾斜をつければ、同様の効果が得られる。
【0043】
本形態ではまた、上蓋3の周壁の内周側においてヒンジ部2側の部分に、上蓋3を閉じ状態としたときにキャップ本体1の筒状部13の先端に当接するストッパ壁24が設けられる(図1、図2参照)。従って、上蓋3が閉じ状態のときに、この上蓋3に対して上方からの外力が加わっても、この外力によって、上蓋3の環状壁15がスコア9を破断させるように押し込まれたり、外側弱化部20や内側弱化部21が破断したりするような上蓋3の変形は、効果的に防止されることになる。
【0044】
本形態のヒンジキャップを容器口部から離脱させる作業には、最初から最後まで大きな力は不要である。これに対して、特許文献1、2に記載のヒンジキャップでは、ヒンジを上方に引っ張り、各弱化開口ラインを下端側から破断させる際に特に大きな力が必要となることは上述した通りである。そこで、このことを確認するために、特許文献1、2に記載のヒンジキャップが共通して有する2本の弱化ライン及び2本の弱化開口ラインが形成された従来のヒンジキャップと、本形態のヒンジキャップとを比較する試験を行った。
【0045】
具体的には、従来のヒンジキャップについては、2本の弱化ラインが完全に破断された状態のヒンジキャップを用意し、この状態のヒンジキャップの上蓋(蓋体)を上方に引っ張り、2本の弱化開口ラインを破断させて容器口部からヒンジキャップが外れるまでに必要な力をストログラフにより計測した。また、本形態のヒンジキャップについては、2本の外側弱化部20が完全に破断された状態のヒンジキャップを用意し、この状態のヒンジキャップの上蓋3を上方に引っ張り、2本の内側弱化部21を破断させて容器口部からヒンジキャップが外れるまでに必要な力をストログラフにより計測した。尚、従来のヒンジキャップ、本形態のヒンジキャップは共に直鎖状低密度(LLD)ポリエチレン製である。
【0046】
上記試験により、従来のヒンジキャップに必要な力は37.1Nであるのに対し、本形態のヒンジキャップに必要な力は28.6Nであるという結果が得られ、この結果から、本形態のヒンジキャップを容器口部から離脱させるのに必要な力は非常に小さくて良いことが明らかとなった。
【0047】
本形態のヒンジキャップは、上記の構成や要求される各機能を持たせることのできる材料を適宜選択して製造することができ、例えば、ポリエチレン(低密度、中密度、高密度、線状低密度)、ポリプロピレン等の各種合成樹脂を用いることができる。また、本形態のヒンジキャップは、例えば一体成形により分断溝18や縦孔19が設けられるように製造することができる。
【0048】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0049】
水抜き性の向上を図るために、二つの縦孔19の他に、外嵌壁4の下端から上方に向けて延び、分断溝18に連通する水抜き孔25(図10、図11参照)を適宜の位置に適宜の数(例えば2〜6個)設けてもよい。図10、図11には、各サイド分断溝18Bにそれぞれ二つの水抜き孔25を設けてある例を示しているが、センター分断溝18Aに水抜き孔25を設けることもできる。また、水抜き孔25を設ける場合、分断溝18(18A,18B)の底(下端)に、縦孔19または水抜き孔25に向けて低くなる傾斜をつければ水抜き性の向上の点でより有利であることはいうまでもない。勿論、水抜き孔25を設けない場合は、分断溝18(18A,18B)の底(下端)に、縦孔19に向けて低くなる傾斜をつければ同様の効果が得られる。
【0050】
各サイド分断溝18Bは、図1に示す例より短くしても、あるいは長くしてもよく、例えば二つのサイド分断溝18Bを繋げて一つのサイド分断溝を形成するように構成してもよいし、図12に示すように、サイド分断溝18Bを二つとも無くしてもよく、また、二つのサイド分断溝18Bをいずれか一つのみとしてもよい。
【0051】
分断溝18や縦孔19の上端は、破断が容易な薄肉部によって塞がれていてもよく、この場合、分断溝18や縦孔19に上方から水が入ることを防止することができる。
【0052】
各上側弱化部22を形成するための切欠部23は、図4に示す例より長くしても、あるいは短くしてもよく、切欠部23を設けないようにしてもよい。
【0053】
なお、上記各変形例に係る構成を適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0054】
1 キャップ本体
2 ヒンジ部
3 上蓋
4 外嵌壁
4a 外壁部分
4b 内壁部分
6 係合突起
18 分断溝
19 縦孔
20 外側弱化部
21 内側弱化部
22 上側弱化部
23 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器口部に外嵌される外嵌壁を有するキャップ本体と、
前記外嵌壁にヒンジ部を介して連設される上蓋とを備え、
前記外嵌壁を外壁部分と内壁部分とに分断するように該外嵌壁の上面側から下方に向かって延び、該外嵌壁の下面には至らない分断溝と、
前記分断溝に連なり、前記外嵌壁の内部を通るように該外嵌壁の下面から上方に向かって延びる二つの縦孔とが設けられ、
前記縦孔から前記外嵌壁の外面にかけて形成される外側弱化部は該外面の下端から上方に向かって延びると共に、前記縦孔から前記外嵌壁の内面にかけて形成される内側弱化部は該内面の下端から上方に向かって延び、
前記ヒンジ部は、前記二つの縦孔に挟まれる位置にある前記外壁部分に連設されているヒンジキャップ。
【請求項2】
前記内側弱化部に連係し、前記ヒンジ部から遠ざかる方向に延びる上側弱化部が、前記キャップ本体において前記外嵌壁の上部から内向きに連設された部分または前記外嵌壁の上部に設けられている請求項1に記載のヒンジキャップ。
【請求項3】
前記外嵌壁の内面側に前記容器口部に係合する係合突起が設けられ、該係合突起は、前記縦孔の内側に相当する位置には設けられていない請求項1または2に記載のヒンジキャップ。
【請求項4】
前記縦孔は、前記外嵌壁を上下に貫く貫通孔である請求項1〜3の何れか一項に記載のヒンジキャップ。
【請求項5】
前記外嵌壁の下端から上方に向けて延び、前記分断溝に連通する水抜き孔が前記縦孔とは別に設けられている請求項1〜4の何れか一項に記載のヒンジキャップ。
【請求項6】
前記分断溝の底が、前記縦孔または前記水抜き孔に向けて低くなるように傾斜している請求項5に記載のヒンジキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−106780(P2012−106780A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258515(P2010−258515)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000178826)日本山村硝子株式会社 (140)
【Fターム(参考)】