説明

ヒンジ機構

【課題】本発明によるヒンジ機構では、プレス等により容易かつ安価に製造でき、高いホールド力を具現できる小型ヒンジ機構を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明によるヒンジ機構では、ヒンジ軸断面が略多角形状に形成され、この略多角形状は四角形の四隅を面取りした形状であって、面取り部が同心円に内接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話やノートブック型パソコン等の携帯機器に用いられる微小ヒンジ用として好適なヒンジ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の携帯機器においては、最近折り畳み型が主流である。この折り畳み式携帯電話においては、表示部と操作部とを回動可能に連結するためヒンジ装置が用いられている。ヒンジ装置には1軸型と2軸型がある。1軸型では、構造が単純になるという利点はあるが回動範囲が160度から170度に制限されるという欠点も有する。これに対して2軸型は、構造は若干複雑になるが表示部及び操作部がそれぞれの軸の周りに回動するため、開閉動作が全体の開閉角度の半分ですむという利点がある。
【0003】
一般的な2軸ヒンジ構造としては、例えば特許文献1の図2に示されるように、ヒンジを構成する2軸それぞれに平歯車を設け、これらを噛み合わせることが行われている。そして、このようなヒンジの軸としては前記文献の図9に開示さているように、断面円形のものを使用することが一般的であった。ところが、このような断面円形の軸を固定しようとすると困難であり、通常は軸の一部(1面或いは2面)を平坦に切削加工して、同形状の穴に挿通することにより固定していた。しかし、このような軸の製造においては、円筒状に加工した軸をさらに端部近傍だけ平坦切削しなければならないので、加工コストが高くなってしまうという問題があった。
【0004】
また、取付け穴部における強いホールド力の獲得を目的として、特許文献2には取付け穴部に嵌挿する嵌挿連結部の外形状を断面円形状とせず、断面略正多角形状としたヒンジ装置が開示されている。しかしこのヒンジ装置は一軸ヒンジであり、嵌挿連結部内に付勢体及びカム機構を内蔵しているため、外形が大きくなってしまい小型携帯機器には適さないばかりか、二軸型ヒンジの場合は二軸を連動機構により連結しなければならないので、この構造自体が適用不可能である。
【0005】
【特許文献1】特開2006−64000号公報
【特許文献2】特開2003−113833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来の問題点を解決するため、本発明によるヒンジ機構では、プレス等により容易かつ安価に製造でき、高いホールド力を具現できる小型ヒンジ機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため本発明によるヒンジ機構では、断面が略多角形状のヒンジ軸からなることを特徴とする。
【0008】
前記軸が四角形の四隅を面取りした断面形状であることが望ましい。
【0009】
前記軸の断面形状が円に内接する略多角形であることが好適である。軸受け部においては、断面略多角形状軸を回動自在に保持するため、少なくとも軸受け接触部においては四角形の四隅を外接円に沿って面取りした形状であることがさらに望ましい。
【0010】
上述のようなヒンジ機構の軸は、プレス成形により形成することが望ましい。
【0011】
本発明による略多角形状のヒンジ軸は、従来の1軸型ヒンジばかりでなく、平行な二軸からなる平行二軸ヒンジに適用することもできる。
【0012】
また、前記のような平行二軸ヒンジにおいては、二軸のそれぞれが本体取り付け部材内側に配設され、前記軸の少なくとも一端部を該本体取付け部材に固定すると共に、同じく前記本体取付け部材内側に配設された軸受け部により回動自在に支持することも好適である。
【0013】
前記二軸のそれぞれには、前記二軸を連動させるための連動機構及びクリックを発生させるためのクリック機構が設けることもできる。
【0014】
さらには、前記本体取付け部材の片側軸取付け部の中心部を中空に形成し、前記軸受け部により支持することも好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるヒンジ機構では断面形状が略多角形状であるため、軸端部を回り止め固定する際には、支持部材に同形状の穴を形成することにより高いホールド力を容易に確保することができる。また、軸断面の最外部形状を外接円に沿った曲面状とすることにより、軸受けでの回動自在支持が通常の断面円形軸と同様に容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例】
【0016】
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。図1は、本発明によるヒンジ機構の軸形状を示す斜視図である。この軸10は、途中に段差はあるものの、全体的に断面形状が略四角形に形成されている。軸10端部の回り止め部11は本体部より細く形成されており、この部分が軸取付け部(図示していない)に嵌合して固定される。
【0017】
図1に示したヒンジ軸を使用した1軸ヒンジの実施例の斜視図を図2に、またその組立図を図3に示す。本体取付け部材1の2箇所において、ヒンジ軸支持部6が突出しており、この支持部6に設けた軸穴41に挿通されたヒンジ軸10を回動自在に支持している。図3における右側のヒンジ軸支持部6にはカムフォロワ43が固着され、ヒンジ軸10に固着されたカム20と付勢スプリング60により係合している。このヒンジの右端部にはクリック機構ケースを兼ねた軸取付け部71がヒンジ軸10に固着されこの取付け部70から伸びる本体取付け部2において、例えば携帯電話部材に接続される。本体取付け部1は例えば携帯電話等の別の部材に接続されるため、上記ヒンジ機構を通して折り畳み式携帯電話等の開閉が可能となる。
【0018】
図4には、本発明によるヒンジ機構の別の実施例として、平行2軸ヒンジの要部斜視図を示した。ヒンジ軸10は断面が四隅を面取りした四角形状に形成してあり、それぞれの軸にクリックを発生させるためのカム20と2つの軸を連動させるための連動連結機構30のギアが固着されている。これらの軸にはさらに、カムフォロワと軸を回動自在に支持するヒンジ基体が接続されているが、この図では軸の構成を見やすくするため省略してある。上記の二軸10のそれぞれはさらに、一端部11において本体取付け部1、2の軸取付け穴3に挿通され固定されている。図示してはないが、軸取付け穴3は軸10の断面形状と同一の形状をしているため、軸を挿通固定した際に回転モーメントに対する強いホールド力を発揮する。
図5には図4に示した実施例における、カム20とヒンジ軸10との固着の状態を示している。ヒンジ軸10は断面四角形状に形成してあり、四隅が同心円に沿って曲面状に面取り12してあるため、略四角形状となる。この軸をやはり略四角形状の軸穴22に挿通することにより、軸の周りのモーメントに対して強いホールド力を発揮できる。カム20をヒンジ軸10上に固定するためには、カムとヒンジ軸との接点近傍をかしめればよい。
【0019】
図6には、図4に示した実施例について、ヒンジ軸10とヒンジ基体40との関係を示している。ヒンジ基体40は側面から見るとコの字状に形成されており、ヒンジ軸10に平行な基底部45とヒンジ軸10に垂直な支持部46A、Bとからなる。また、ヒンジ基体40にはカム保持板42が固定穴44においてネジ止めすることによりヒンジ基体に固定されている。カム保持板42は側面から見るとL字状に形成されて、ヒンジ基体基底部45に平行な固定部とヒンジ基体支持部に平行なカムフォロワ保持部とからなる。ヒンジ基体支持部46A及びカム保持板42のカムフォロワ保持部にはそれぞれ2個ずつの軸穴41が形成されており、ヒンジ軸10が挿通されて回動自在に支持している。
【0020】
図7にはヒンジ基体支持部46Aにおける軸穴41とヒンジ軸10との関係を示している。ヒンジ基体支持部46Aの軸穴41は円形状に形成されており、ヒンジ軸10は面取り部13がこの軸穴41の内周に沿った曲面状に形成されているので、ヒンジ軸10は軸穴41に支持されて軸穴内で自在に回動することができる。
【0021】
図8には、図4に示した本発明の実施例による平行二軸ヒンジ機構の完成図を示した。本体取付け部1、2は手前側がヒンジ軸10を介して反対側は本体取付け部1、2に形成された中空突部5を直接ヒンジ基体支持部46Bの軸穴に嵌挿することにより連結する。本体取付け部突部5には中空穴4が形成されていて、この穴を通して電気配線ハーネス等を配線することが可能である。また、ヒンジ基体支持部46Aとカム保持板42の間には2つのヒンジ軸10を連動するためのギア機構30が設けられている。この軸連動連結機構30は、ギアだけでなく他の機構を利用することももちろん可能である。カム保持板42に固定されたカムフォロワ43にはカム20が隣接配置され、さらにこのカム20はスプリング60によりカム保持板42側にカムを付勢しているので、ヒンジ軸が回動することにより所定の位置でクリックを発生させることができる。
【0022】
本発明によるヒンジ機構の断面略多角形状軸については、プレス成形により製造することができる。まず、所定の厚さの金属平板フープ材を打ち抜き、何回かに分けてプレスすることにより四角形状を形成し、最後にやはりプレスで面取り部を形成すれば本発明の実施例に使用したヒンジ軸を製造することができる。上記の作業は一連の工程で行うことができるため、型は必要となるものの、大量に生産すれば製造時間が早く手間がかからないため、従来の丸型軸に平坦部を形成する場合に比較して、コストが安くできる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、携帯電話やノートブック型パソコン等の携帯機器用として、高いホールド力を容易に確保できコストの安いヒンジ機構を提供することができるため、携帯機器分野の小型化やコスト削減に寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明によるヒンジ機構の軸形状を示す斜視図である。
【図2】図1に示したヒンジ軸を使用した1軸ヒンジの実施例を示す斜視図である。
【図3】図2に示した1軸ヒンジの組立図である。
【図4】本発明による平行二軸ヒンジ機構の実施例要部を示す斜視図である。
【図5】図4に示したヒンジ機構実施例のヒンジ軸とカムとの関係を示す部分断面図である。
【図6】図4に示したヒンジ機構実施例の別の要部を示す斜視図である。
【図7】図6に示したヒンジ機構実施例におけるヒンジ基体支持部とヒンジ軸との関係を示す正面図である。
【図8】本発明によるヒンジ機構実施例の完成状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1 本体取付け部材
2 本体取付け部材
3 軸取付け穴
4 中空穴
5 突部
6 ヒンジ軸支持部
10 ヒンジ軸
11 軸回り止め端部
12 面取り部
13 面取り部
20 カム
21 カム突起
22 カム軸穴
30 軸連動連結機構
40 ヒンジ基体
41 軸穴
42 カム保持板
43 カムフォロワ
44 カム保持板固定穴
45 ヒンジ基体基底部
46A、46B ヒンジ基体支持部
50 カム保持板固定ネジ
60 付勢スプリング
70 クリック機構
71 クリック機構ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が略多角形状のヒンジ軸からなることを特徴とするヒンジ機構。
【請求項2】
前記軸が四角形の四隅を面取りした断面形状であることを特徴とする請求項1記載のヒンジ機構。
【請求項3】
前記軸の断面形状が円に内接する略多角形であることを特徴とする請求項1または2記載のヒンジ機構。
【請求項4】
前記軸が、プレス成形により形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のヒンジ機構。
【請求項5】
前記ヒンジ機構が平行な二軸からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のヒンジ機構。
【請求項6】
前記二軸のそれぞれが本体取り付け部材内側に配設され、前記軸の少なくとも一端部を該本体取付け部材に固定すると共に、同じく前記本体取付け部材内側に配設された軸受け部により回動自在に支持されることを特徴とする請求項5記載のヒンジ機構。
【請求項7】
前記二軸のそれぞれには、前記二軸を連動させるための連動機構及びクリックを発生させるためのクリック機構が設けてあることを特徴とする請求項6記載のヒンジ機構。
【請求項8】
前記本体取付け部材の片側軸取付け部の中心部が中空に形成され、前記軸受け部により支持されていることを特徴とする請求項7記載のヒンジ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−151332(P2008−151332A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−357324(P2006−357324)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(392017222)太陽工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】