説明

ヒンジ被覆の門扉

【課題】 門柱にヒンジで吊支持した扉体の盗難を防止できる門扉を提供する。
【解決手段】 門柱1の背面に調整金具5を,扉体3の吊元框31に軸受金具6をそれぞれ配置して,調整金具5のヒンジ軸55に軸受金具6の軸受64を被嵌してヒンジ4を形成するとともに門柱1に調整金具5を覆う背面カバー7を,吊元框31と軸受金具6にこの軸受金具6を覆う吊元框端部カバー8をそれぞれ固定する一方,吊元框端部カバー8にヒンジ4の回動を許容するように切欠いた回動用開口86と調整金具5の軸ベース54の下端間空隙の高さBとヒンジ軸55の高さAの関係をA>Bとし,扉体3を持ち上げても,ヒンジ軸55が軸受64から外れないようにして扉体3の盗難を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は門扉に関し,特にヒンジの露出を防止したヒンジ被覆の門扉に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の門扉は,先端の軸ベースにヒンジ軸を有するアームを門柱から扉体側に突出するようにヒンジ一方の軸金具を門柱背面に配置し且つ上記ヒンジ軸を回動自在に被嵌するヒンジ軸受を有するヒンジ他方の軸受金具を扉体の吊元框に配置してこれら軸金具と軸受金具によるヒンジを介して門柱に扉体を吊支持したものとされ,このとき軸金具は,例えば,下記の特許文献に示されるように,金具ケースにアームを進退調整自在に収納した調整金具,より具体的には,上下に固定片を突設した金具ケースと,先端に軸ベースを,後端に該金具ケースに進退自在に配置した嵌挿部を有するアームと,金具ケースの一方に配置した側壁から嵌挿部の後端に螺入したネジによって該嵌挿部を進退することによってアームの突出幅を調整する調整ネジと,金具ケースに螺装して嵌挿部に対して直交配置してアーム位置を固定する固定ネジとを備えた調整金具を用いることが多く,この場合,上記金具ケースの固定片に透設したネジ透孔から門柱の背面板に上下各2ヶ所のネジ止めを行ってその門柱背面への固定を行うものとされる。
【0003】
一方下記文献に明瞭には示されないが,軸受金具は,例えば固定板と,該固定板から門柱側に膨出するように配置し,中央にヒンジ軸受を透設又は穿孔したものとされ,固定板を扉体の吊元框の背面に,同じく上下各2ヶ所のネジ止めを行ってその扉体への固定を行うものとされる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−129822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この場合,門柱に対する扉体の吊支持は,門柱に配置したヒンジ一方の軸金具,例えば調整金具のヒンジ軸に,扉体に配置したヒンジ他方の軸受金具のヒンジ軸受を被嵌することによってヒンジを形成するように,扉体を持ち上げてそのヒンジ軸受をヒンジ軸に落し込む如くに,該扉体を下方に降下すればよく,従って扉体設置の作業上の難点もないし,門扉として扉体の開閉もヒンジによってスムーズになし得て,使い勝手上の難点もない。
【0006】
しかし乍ら,この場合ヒンジをなす軸金具,例えば調整金具と軸受金具が門柱の背面,扉体の吊元框の背面にそれぞれ露出することによって,特に内外方向の内側の外観を損うものとなる傾向があり,更に,上記扉体設置の作業と逆に,扉体を持ち上げると,軸受金具のヒンジ軸受が,軸金具,例えば調整金具のヒンジ軸から外れる結果,軸金具,軸受金具のネジ止めを解除するまでもなく,扉体を門柱から取外して持ち去られる可能性があり,特に各種要因によって金属価格,特にアルミ製の門扉が一般化している中でアルミ価格が上昇すると,扉体が盗難に遭う可能性が増大することにもなる。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって,その解決課題とするところは,ヒンジ及びこれを形成する軸金具と軸受金具の露出を防止して外観を良好とするとともに扉体の盗難可能性を可及的に解消し得るようにした門扉を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に沿って本発明は,ヒンジ一方の軸部材を配置した門柱に該軸部材を含めて門柱背面を被覆する門柱背面カバーを,またヒンジ他方の軸受部材を配置した扉体の吊元框に該吊元框側でヒンジ,特にヒンジの軸支部分を被覆する吊元框端部カバーをそれぞれ配置することによって,ヒンジを介した門柱に対する扉体の吊支持を妨げることなく,ヒンジの露出を防止して良好な外観を確保する一方,吊元框端部カバーを配置することによって該吊元框端部カバーには,扉体の開閉に伴うヒンジ,特にヒンジ軸を起立した軸ベースの回動を許容する上で必要な回動用の開口とヒンジ軸との関係を規制することによって,門柱背面カバー及び吊元框端部カバーの配置状態で,扉体を持上げようとしても該回動用開口とヒンジ軸の関係から,扉体の持ち上げを不能として,その盗難の可能性を可及的に解消したものであって,即ち請求項1に記載の発明を,先端の軸ベースにヒンジ軸を有するアームを門柱から扉体側に突出するようにヒンジ一方の軸金具を門柱背面に配置し且つ上記ヒンジ軸を回動自在に被嵌するヒンジ軸受を有するヒンジ他方の軸受金具を扉体の吊元框に配置してこれら軸金具と軸受金具によるヒンジを介して門柱に扉体を吊支持した門扉であって,ヒンジ位置で上記軸金具のアームを挿通する挿通用開口を有して門柱背面を覆う門柱背面カバーを,同じくヒンジ位置で該アーム先端の軸ベースを回動する回動用開口を有してヒンジを覆う吊元框端部カバーをそれぞれ配置し且つ該吊元框端部カバーの上記回動用開口の下端と軸ベース下端間の空隙高さBと上記ヒンジ軸の軸ベースからの起立高さAの関係をA>Bとしてなることを特徴とする門扉としたものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は,上記に加えて,門柱背面に設置したブラケットを介して,例えばネジ止め等の比較的簡易な固定手段によって,煩雑な作業の発生を可及的に防止して,門柱に対する背面カバーの配置をなし得るものとするように,これを,上記門柱背面カバーを,門柱の背面に設置したヒンジ一方の軸金具より背面側の突出幅を大としたブラケットを介して門柱に配置してなることを特徴とする請求項1に記載の門扉としたものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は,同じく上記に加えて,吊元框端部カバーを内外2部材の構成として,これらを順次吊元框の端部に配置することによって,同じく煩雑な作業の発生を可及的に防止して,吊元框端部カバーの配置をなし得るものとするように,これを,上記吊元框端部カバーを,内側カバー部材と外側カバー部材の2部材構成とし,その一方を吊元框又は軸受金具に先付けし,他方を該先付したカバー部材に後付けして吊元框に配置してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の門扉としたものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は,同じく上記に加えて,吊元框端部カバーの内外一方を吊元框に一体成形し,内外他方を吊元框に配置することによって,同様に煩雑な作業の発生を可及的に防止して,吊元框に対する吊元框端部カバーの配置をなし得るものとするように,これを,上記吊元框端部カバーを,吊元框の内側又は外側の一方で吊元框に一体成形し,残余の他方を吊元框の外側又は内側に配置してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の門扉としたものである。
【0012】
請求項5及び6に記載の発明は,同じく上記に加えて,それぞれ上記ヒンジ一方の軸金具を調整金具として,門柱に対する扉体の傾斜角度の調整とこれによる扉体の良好な納まりを確保するとともに該調整金具とヒンジを形成するヒンジ他方の軸受金具を可及的簡易な構成として且つヒンジの軸心と吊元框の中心線を自ずと一致する好ましい形態のものとするように,請求項5に記載の発明を,上記ヒンジ一方の軸金具を,金具ケースにアームを進退調整自在に収納した調整金具とし,ヒンジ他方の軸受金具を吊元框固定片から起立片を介して先端に軸受を配置した平面T字状一体の金具としてなることを特徴とする請求項1,2,3又は4に記載の門扉とし,請求項6に記載の発明を,上記ヒンジ一方の軸金具を,金具ケースにアームを進退調整自在に収納した調整金具とし,ヒンジ他方の軸受金具を吊元框固定片の先端に軸受を配置した四分音符状一体の金具としてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の門扉としたものである。
【0013】
請求項7に記載の発明は,同じく上記に加えて,上記背面カバーは,これを外観の良好な形態とすることによって,門柱の正背面を逆にして,該背面カバーを正面カバーとして正面に位置するように設置して使用し得るものとするように,これを,上記ヒンジ一方の軸金具を門柱正面に配置し,上記門柱背面を覆う門柱背面カバーに代えて,門柱正面を覆う門柱正面カバーを用いてなることを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6に記載の門扉としたものである。
【0014】
本発明はこれらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以上のとおりに構成したから,請求項1に記載の発明は,ヒンジ一方の軸部材を配置した門柱に該軸部材を含めて門柱背面を被覆する門柱背面カバーを,またヒンジ他方の軸受部材を配置した扉体の吊元框に該吊元框側でヒンジ,特にヒンジの軸支部分を被覆する吊元框端部カバーをそれぞれ配置することによって,ヒンジを介した門柱に対する扉体の吊支持を妨げることなく,ヒンジの露出を防止して良好な外観を確保する一方,吊元框端部カバーを配置することによって該吊元框端部カバーには,扉体の開閉に伴うヒンジ,特にヒンジ軸を起立した軸ベースの回動を許容する上で必要な回動用の開口とヒンジ軸との関係を規制することによって,門柱背面カバー及び吊元框端部カバーの配置状態で,扉体を持上げようとしても該回動用開口とヒンジ軸の関係から,扉体の持ち上げを不能として,その盗難の可能性を可及的に解消した門扉を提供することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は,上記に加えて,門柱背面に設置したブラケットを介して,例えばネジ止め等の比較的簡易な固定手段によって,煩雑な作業の発生を可及的に防止して,門柱に対する背面カバーの配置をなし得るものとすることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は,同じく上記に加えて,吊元框端部カバーを内外2部材の構成として,これらを順次吊元框に配置することによって,同じく煩雑な作業の発生を可及的に防止して,吊元框端部カバーの配置をなし得るものとすることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は,同じく上記に加えて,吊元框端部カバーの内外一方を吊元框に一体成形し,内外他方を吊元框に配置することによって,同様に煩雑な作業の発生を可及的に防止して,吊元框に対する吊元框端部カバーの配置をなし得るものとすることができる。
【0019】
請求項5及び6に記載の発明は,同じく上記に加えて,それぞれ上記ヒンジ一方の軸金具を調整金具として,門柱に対する扉体の傾斜角度の調整とこれによる扉体の良好な納まりを確保するとともに該調整金具とヒンジを形成するヒンジ他方の軸受金具を可及的簡易な構成として且つヒンジの軸心と吊元框の中心線を自ずと一致する好ましい形態のものとすることができる。
【0020】
請求項7に記載の発明は,同じく上記に加えて,上記背面カバーは,これを外観の良好な形態とすることによって,門柱の正背面を逆にして,該背面カバーを正面カバーとして正面に位置するように設置して使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下図面の例に従って本発明を更に具体的に説明すれば,図1乃至図7において,1は,例えばアルミ製とした,両開きの門扉であり,該門扉1は,先端の軸ベース54にヒンジ軸55を有するアーム53を門柱2から扉体3側に突出するようにヒンジ一方の軸金具5を門柱2背面に配置し且つ上記ヒンジ軸55を回動自在に被嵌するヒンジ軸受64を有するヒンジ他方の軸受金具6を扉体3の吊元框31に配置してこれら軸金具5と軸受金具6によるヒンジ4を介して門柱2に扉体3を吊支持したものとしてあり,このとき該門扉1は,ヒンジ4位置で上記軸金具5のアーム53を挿通する挿通用開口72を有して門柱2背面を覆う門柱背面カバー7を,同じくヒンジ4位置で該アーム53先端の軸ベース54を回動する回動用開口86を有してヒンジ4を覆う吊元框端部カバー8をそれぞれ配置し且つ該吊元框端部カバー8の上記回動用開口86の下端と軸ベース54下端間の空隙高さBと上記ヒンジ軸55の軸ベース54からの起立高さAの関係をA>Bとしたものとしてある。
【0022】
本例の門扉1は,その門柱2を,正面側を幅狭に,背面側を幅広に,これらの幅方向端部を結ぶ側面を内側から外側に拡開するように拡開傾斜した断面台形状,本例にあっては両側面を拡開傾斜した幅方向に対称の台形をなすものとしてあり,これによって吊元側の側面に扉体受スペースを配置し,扉体3の開閉角度を外側に,例えば100±5度とする一方,上記門柱背面カバー7を配置することによって該扉体3の内側の開閉角度を,該外側の開閉角度と同等,本例にあっては同じく100±5度としてあり,従って扉体3は,内外双方向に押開き可能となり,車椅子使用者,介護者,身体障害者,高齢者等を含めて,道路に出るときも,道路から入るときも,錠を外して扉体3を進行方向に押すことによって出入りができ,従来の門扉の如くに,例えば,道路に出るときに,錠を外して,扉体を手持ちして車椅子を後退させ乍ら,扉体を開成し,再度扉体を手持ちして扉体を閉成し乍ら,車椅子を進行させるといった煩雑な動作を必要とすることなく,その開閉をなし得ることによって,使い勝手の極めて良好な門扉1としてある。
【0023】
扉体3は,例えば,吊元框31,戸先框及び上下の横框を框組するとともに該框組内に多数の縦小桟を配置した縦格子タイプのものとしてあり,本例にあって該扉体3は,例えば上下桟間に多数の縦小桟を起立配置した仕切パネルを框組内に装着することによって,これを形成してある。
【0024】
ヒンジ4は,軸金具5と軸受金具6とを備えて形成してあり,このとき本例の軸金具5は,これを,金具ケース51にアーム53を進退調整自在に収納した調整金具としてあり,本例にあって該軸金具5は,門柱2の幅広の背面に添設固定する金具ケース51,該金具ケース51に幅方向突出幅調整自在に配置したアーム53,該アーム53の先端に配置した軸ベース54及び該軸ベース54上に起立配置したヒンジ軸55を備えた調整金具によるものとしてある。
【0025】
該軸金具5の門柱2背面への配置は,例えば金具ケース51の上下に突設した固定片の幅方向各2ヶ所の透孔から門柱の背面板の透孔を介して,その裏面に配置した裏板22の雌ネジに螺入することによって,該金具ケース51をネジ56止めすることによって,これを行ってある。該ネジ56止めは,固定片の幅方向各2ヶ所で行うものとしてあるが,本例にあって背面板及び裏板22には,それぞれ幅方向に3ヶ所の透孔及び雌ネジを配置し,その中央を共通にして幅方向一方を選択的に使用して,金具ケース51を上下に反転し,上記アーム53を左右に反転して,調整金具とした軸部材5の向きを変更した固定を行うように左右勝手を自在としてある。
【0026】
一方軸受金具6は,吊元框31の門柱側端部の端部受座32,即ち側面板に添設固定したベース61,該ベース61の内外方向中央位置に門柱2側に向けて突設した突出片63及び該突出片63の先端に内外方向に膨出するように配置した軸受64を備えた平面T字状の一体のものとしてあり,該軸受金具6の吊元框31への配置は,ベース61に透設した透孔からのネジ62を,吊元框31の端部受座32をなす側面板の透孔を介して,該側面板の裏面に配置した裏板33の雌ネジに螺入することによって,該ベース61をネジ62止めすることによって,上記軸金具5と同様にこれを行ってある。このように平面T字状とした軸受金具6を用いることによって,該軸受金具6を吊元框31から門柱2側に突出してヒンジ軸55にヒンジ軸受64を被嵌するようにして,ヒンジ4の軸心と内外方向中心線を同一線上に配置するとともにヒンジ4と吊元框31の位置関係を規制して,該軸心から吊元框31を離隔するように配置して,幅厚の吊元框31が門柱2に近接することにより該吊元框31のヒンジ側端部が門柱2に当る可能性を可及的に解消して,扉体3の吊支持を内外双方向の開閉を行うに適したものとしてある。
【0027】
門柱背面カバー7及び吊元框端部カバー8は,アルミ押出材に所定の加工を施して,門柱2の地表突出長さ乃至吊元框31の長さに略等しく,これらの長手方向全長を実質的にカバーする長手方向に一体又は複数分割のものとしてある。
【0028】
本例の門柱背面カバー7は,例えば門柱2背面よりやや小さめの幅を有して断面U字状に形成したものとしてあり,該門柱背面カバー7は,これを,門柱2の背面に設置したヒンジ一方の軸金具5より背面側の突出幅を大としたブラケット24を介して門柱2に配置したものとしてある。即ちブラケット24は,例えば側面S字状をなす屈曲金具によるものとし,該ブラケット24の一方の垂直片を門柱の背面板に,裏板を用い又は用いることなくネジ止めし,他方の垂直片の雌ネジに門柱背面カバー7の透孔からネジを螺入して,その固定を行ってある。該ブラケット24への門柱背面カバー7の固定は,これを,門柱2長手方向に複数箇所で行ってあり,このとき門柱背面カバー7の上端は,門柱2に配置したキャップ23がその上端を同時に閉塞するようにしてあり,下端は門柱背面カバー7専用のキャップ71で同じくこれを閉塞するものとしてある。
【0029】
一方,本例の吊元框端部カバー8は,これを,内側カバー部材81と外側カバー部材84の2部材構成とし,その一方を吊元框31又は軸受金具6,本例にあっては軸受金具6に先付けし,他方を該先付したカバー部材に後付けして吊元框31に配置したものとしてあり,本例にあって内側カバー部材81は,これを先付け用,外側カバー部材84は,これを後付け用としてあり,これら2部材のカバー部材81,84は,その先端を軸金具5の軸ベース54の外周の門柱側内外方向中央位置で突合せるようにして,ヒンジ4の内側及び外側をそれぞれ被覆するものとしてある。
【0030】
本例の内側カバー部材81及び外側カバー部材84は,その外側面形状を内外方向に対称をなすようにするとともに吊元框側端部にそれぞれ対向するように外側及び内側に向けた係合突起を配置したものとする一方,内側カバー部材81に,その幅方向中間位置に上記軸受金具6の突出片63に対接する固定片82を外側に向けて突設してその幅方向両端にスナップイン係止一方の係止条を配置し,また外側カバー部材84に,同じくその幅方向中間位置に一対の脚片85を内側に向けて突設してその先端にスナップイン係止他方の係止条を配置したものとしてある。
【0031】
従って本例に吊元框端部カバー8は,その内側カバー部材81の吊元側端部に配置した係合突起を,例えば軸受金具6のベース61の内外面に段部を形成することによって吊元框31との間に形成した係合溝に係合するとともに軸受金具6の突出片63に固定片82を対接し,外側,即ち突出片63からのネジ83を固定片82に螺入して,該内側カバー部材81を該軸受金具6に先付し,その後に外側カバー部材84を,同じくその係合突起を係合溝に係合し,固定片82に一対の脚片85をスナップイン係止することによって,その吊元框31の端部への配置を行ったものとしてある。
【0032】
このように門柱背面カバー7及び吊元框端部カバー8を配置したから,上記吊元框21から門柱2側に突出配置した軸受金具6を用いて幅広のヒンジ4とすることによって門柱2と吊元框31間に形成される幅広の空隙を閉塞して門柱2と扉体3が近接した外観を呈するものとなり,該扉体3を内外双方向に押開き開成するように構成しながら,従来の門扉におけると同様に扉体3の良好な納まり外観を確保したものとすることができる。
【0033】
このとき門柱背面カバー7及び吊元框端部カバー8,本例にあってその内側カバー部材81及び外側カバー部材84は,それぞれヒンジ4位置で上記アーム53の挿通用開口72,軸ベース54の回動用開口86を備えたものとしてあり,本例のこれら開口72,86は,門柱背面カバー7においてその扉体3側の片側端部から,吊元框端部カバー8において,その内側カバー部材81及び外側カバー部材84の突合せ先端において切欠き加工を施して,その配置を行ってある。該挿通用開口72は,アーム53の高さと幅に応じて,そのアーム53の上下調整分,即ち扉体3の傾斜調整によるアーム53の上下動幅,本例にあっては更に後述の開口カバー73の設置厚さを見込んだ大きさのものとし,また回動用開口86は,門扉1の内外双方向の開閉角度に応じて内外方向に各100±5度に,本例にあっては後述の開口カバー87の設置厚さを加えた開口幅を有し且つ軸金具5の軸ベース54の高さに同じくアーム53の上下調整動による余裕高さを見込んだ高さを有するものとしてある。
【0034】
該切欠き加工による切欠き加工の端縁が露出すると,手を切る等の可能性があるため,本例にあっては該切欠き部を被覆して,該端縁の露出を避けるように,例えばアルミ鋳物,樹脂等の成形部品による開口カバー73,87を設置してあり,該開口カバー73,87は,門柱背面カバー7にあってその切欠き加工部位を覆うコ字状にしてその開口端を門柱背面に突き当て当接してその配置を行い,また吊元框端部カバー8にあって,内側カバー部材81及び外側カバー部材84の切欠き加工部位を連続的に覆う平面湾曲のものとしてある。
【0035】
このように形成した門柱背面カバー7は門柱に軸金具5,本例にあっては調整金具を設置した後に,その挿通用開口72からそのアーム53が扉体3側に突出するように該門柱2に固定し,また吊元框端部カバー8は,軸金具5のヒンジ軸55にヒンジ軸受64を被嵌し,ヒンジ4を介して門柱2に扉体3を吊支持した後に,該吊元框31から門柱2側に突設したヒンジ4を被覆し,回動用開口86に上記アーム53先端の軸ベース54を受け入れた状態で,上記軸受金具6に対して固定するようにしてあり,これによって吊元框端部カバー8の回動用開口86が,軸金具5の軸ベース54の回動を許容し,扉体3の内外双方向の開閉を許容するものとしてある。
【0036】
該回動用開口86は,その高さを規制するとともに,その回動用開口86の下端と軸ベース54下端間の空隙高さB,即ち回動用開口86下端に配置した空隙の高さBとヒンジ軸55の軸ベース54からの起立高さAの関係をA>Bとして,ヒンジ4のヒンジ軸55における軸ベース54からの起立高さAより小さく設定することによって,上記扉体3を門柱2に吊支持して,吊元框端部カバー8を付した状態で,扉体3の傾斜調整を可能とするとともに扉体3を持ち上げようとしても,該持ち上げを該高さの差異Bの範囲で許容するも,ヒンジ4を介した扉体3の吊支持の状態を維持して,該扉体3を門柱2から取り外すことができないようにして,該扉体3の盗難を防止するようにしてある。
【0037】
即ち該回動用開口86は,ヒンジ4を介した扉体3の開閉のために,これを上下に大きく開口すること,ヒンジ軸受64を含むヒンジ4の全体を受け入れるように高さをヒンジ4と同等,それ以上乃至それ以下のものとすること,軸ベース54を受け入れる場合でも,該軸ベース54をヒンジ軸55より高く設定すること等,回動用開口86の形態はこれを様々のものとすることができるし,これらによって扉体3の開閉を阻害することはないが,回動用開口86に軸金具5の軸ベース54を受け入れ且つ該開口86の下端と軸ベース54の下端間の空隙高さBを,扉体3の傾斜調整を可能としながら,その拡大を可及的に防止するように比較的小さく設定することにより,上記良好な納まり外観を確保した門柱背面カバー7と吊元框端部カバー8に,そのデザインを損なうことなく且つ違和感のない回動用開口を配置することができる。
【0038】
図中21は,門柱2の側面を拡開傾斜するについて,その背面板からの基点をその内側とするように該背面板端部から対向方向に傾斜配置した傾斜連結部を示す。
【0039】
図8は,他の例の軸受金具6を用いてヒンジ4を形成した場合を示すもので,本例にあって該軸受金具6は,これを,吊元框31の門柱2側に向けて突出形成した突出受座32に添設固定したベース61,該ベース61の先端に配置したヒンジ軸受64を備えて平面倒四分音符状に形成したものとして,上記平面T字状の軸受金具と同様に,吊元框31から門柱2側に突出して,ヒンジ4の軸心と内外方向中心線の同一線上の配置及びヒンジ4と吊元框31の位置関係の規制を行うものとしてある。このとき該軸受金具6とヒンジ4を形成する軸金具5の調整金具は,これをアーム53先端にヒンジ軸55を備えた上記例のものと同一のものを用いてある。
【0040】
このとき本例の吊元框端部カバー8は,これを,吊元框31の内側又は外側の一方で吊元框31に一体成形し,残余の他方を吊元框31の外側又は内側に配置したものとしてあり,即ち本例にあって吊元框31は,その門柱2側の外側面を,上記外側カバー部材84と同様の形状をなすものとして,吊元框31の外側に外側カバー部材84を一体に成形するとともに側面板の内外方向中間位置から門柱側に向けた突出受座32を突出形成したものとしてあり,該内側に内側カバー部材81を配置し,上記吊元框31に一体配置の外側カバー部材84と該内側カバー部材81の吊元框端部カバー8で軸受金具6を覆うようにしてある。
【0041】
本例の軸受金具6は,その上記ベース61を該突出受座32の内側面に対接して,ベース61からのネジ62を該突出受座32の透孔を介してその裏面に配置した裏板33の雌ネジに螺入固定するとともにその先端に膨出するように配置したヒンジ軸受64がベース61の外側に位置するように配置することによって,該吊元框31の内外方向中心線が軸受金具の軸心と同一線上に位置するようにしてある。
【0042】
一方,上記吊元框端部カバー8の内側カバー部材81は,吊元框31における側面板の内側端部と該内側カバー部材81の吊元側端部にそれぞれスナップイン係止一方及び他方の係止条を配置してこれらをスナップイン係止して,吊元框31に片持ち状に固定するとともにその先端をヒンジ軸受64の外周に沿って湾曲してその先端を上記吊元框31に一体配置の外側カバー部材84の先端と重合するように配置してあり,このときこれら内側カバー部材81及び外側カバー部材84による該吊元框端部カバー8は,その断面形状乃至外観を上記例におけるものと略等しくするように形成してある。
【0043】
その余は上記例と変らないので同一符合を付して重複する説明を省略する。
【0044】
以上のように形成した門扉1は,その扉体3を内外双方向いずれも押開き開閉して出入可能となり,車椅子使用者,介助者,身体障害者,高齢者等を含めて,扉体の開閉を可及的に容易になし得て,使い勝手と良好な納まり外観を確保した内外押開き門扉とすることができるとともに扉体3の持ち上げを規制して,その盗難を確実に防止することができる。
【0045】
図示した例は以上のとおりとしたが,上記ヒンジ一方の軸金具を門柱正面に配置し上記門柱背面を覆う門柱背面カバーに代えて,門柱正面を覆う門柱正面カバーを用いて,該門柱の正背面を逆に設置使用するようにすること,扉体の開閉を内側に90度とした門扉とすること,吊元框端部カバーを吊元框に対して固定するようにすること,扉体の外側に向けた開閉角度100±5度とし,内側に向けた開閉角度を該外側に向けた開閉角度以上のものとして,内外の開閉角度を変化すること,門柱の片側側面を拡開傾斜して,該拡開傾斜の側面側に扉体を吊支持するようにすること等を含めて,本発明の実施に当って,門柱,扉体,ヒンジ,軸金具,軸受金具,門柱背面カバー,吊元框端部カバー等の各具体的形状,構造,材質,これらの関係,これらに対する付加,門柱乃至門扉の設置形態等は,上記発明の要旨に反しない限り様々な形態のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】門扉の背面図である。
【図2】門扉片側の拡大背面図である。
【図3】ヒンジ部分の拡大背面図である。
【図4】門柱への扉体吊支持状態を示す部分拡大断面図である。
【図5】扉体の内外双方向への開閉状態を示す部分拡大断面図である。
【図6】他の例にかかる門柱への扉体吊支持状態を示す部分拡大断面図である。
【図7】門柱上部を示す斜視図である。
【図8】ヒンジ部分の斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1 門扉
2 門柱
21 傾斜連結板
22 裏板
23 キャップ
24 ブラケット
3 扉体
31 吊元框
32 端部受座
33 裏板
4 ヒンジ
5 軸金具
51 金具ケース
52 固定片
53 アーム
54 軸ベース
55 ヒンジ軸
56 ネジ
6 軸受金具
61 ベース
62 ネジ
63 突出片
64 ヒンジ軸受
7 門柱背面カバー
71 キャップ
72 挿通用開口
73 開口カバー
8 吊元框端部カバー
81 内側カバー部材
82 固定片
83 ネジ
84 外側カバー部材
85 脚片
86 回動用開口
87 開口カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端の軸ベースにヒンジ軸を有するアームを門柱から扉体側に突出するようにヒンジ一方の軸金具を門柱背面に配置し且つ上記ヒンジ軸を回動自在に被嵌するヒンジ軸受を有するヒンジ他方の軸受金具を扉体の吊元框に配置してこれら軸金具と軸受金具によるヒンジを介して門柱に扉体を吊支持した門扉であって,ヒンジ位置で上記軸金具のアームを挿通する挿通用開口を有して門柱背面を覆う門柱背面カバーを,同じくヒンジ位置で該アーム先端の軸ベースを回動する回動用開口を有してヒンジを覆う吊元框端部カバーをそれぞれ配置し且つ該吊元框端部カバーの上記回動用開口の下端と軸ベース下端間の空隙高さBと上記ヒンジ軸の軸ベースからの起立高さAの関係をA>Bとしてなることを特徴とする門扉。
【請求項2】
上記門柱背面カバーを,門柱の背面に設置したヒンジ一方の軸金具より背面側の突出幅を大としたブラケットを介して門柱に配置してなることを特徴とする請求項1に記載の門扉。
【請求項3】
上記吊元框端部カバーを,内側カバー部材と外側カバー部材の2部材構成とし,その一方を吊元框又は軸受金具に先付けし,他方を該先付したカバー部材に後付けして吊元框に配置してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の門扉。
【請求項4】
上記吊元框端部カバーを,吊元框の内側又は外側の一方で吊元框に一体成形し,残余の他方を吊元框の外側又は内側に配置してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の門扉。
【請求項5】
上記ヒンジ一方の軸金具を,金具ケースにアームを進退調整自在に収納した調整金具とし,ヒンジ他方の軸受金具を吊元框固定片から起立片を介して先端に軸受を配置した平面T字状一体の金具としてなることを特徴とする請求項1,2,3又は4に記載の門扉。
【請求項6】
上記ヒンジ一方の軸金具を,金具ケースにアームを進退調整自在に収納した調整金具とし,ヒンジ他方の軸受金具を吊元框固定片の先端に軸受を配置した四分音符状一体の金具としてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の門扉。
【請求項7】
上記ヒンジ一方の軸金具を門柱正面に配置し,上記門柱背面を覆う門柱背面カバーに代えて,門柱正面を覆う門柱正面カバーを用いてなることを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6に記載の門扉。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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