説明

ヒンジ装置

【課題】 簡単な構成によってリンク機構に起動力を加えることができて、装置全体の構成の簡素化および生産性の向上を図ることができるヒンジ装置を提供すること。
【解決手段】 ドア2側の第2ヒンジベース20に設けた当接部材64をリンク機構50に当接させることによって、リンク機構50に対して直接的に起動力を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアに用いられるヒンジ装置に関し、さらに詳しくは、2つの軸を中心としてドアを回動させることによって、その開き角度を大きく設定することができるヒンジ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のヒンジ装置としては、例えば、特許文献1および2に記載のものが知られている。
【0003】
これらのヒンジ装置においては、車体側とドア側のそれぞれに取り付けられるヒンジベースに対して、ヒンジアームの両端のそれぞれが第1軸および第2軸を中心として回動自在に軸支される。そして、第1軸および第2軸を中心としてドアを回動させることにより、そのドアの開き角度を270度程度に大きく設定することができる。
【0004】
このようなヒンジ装置には、ドアが第1軸を中心として回動する時期と、ドアが第2軸を中心として回動する時期と、を切り換えるためのリンク機構が備えられている。このリンク機構は、車体側のヒンジベースと、ドア側のヒンジベースと、ヒンジアームと、の相対位置の変化に応じて動作する構成となっており、第1軸を中心とするドアの回動時期と、第2軸を中心とするドアの回動時期と、の切り換え時には、動作のトリガーとなる起動力が加えられる。例えば、ドアの開動時に、それを第1軸を中心として所定角度回動させてから、第2軸を中心として回動させる場合には、前者の回動時期から後者の回動時期に移行するときに、リンク機構に起動力が加えられることになる。
【0005】
特許文献1に記載のヒンジ装置において、このようなリンク機構の起動力は、車体側とドア側のヒンジベースの一方に設けられた調整ねじがヒンジアームに当接することによって与えられる。すなわち、それらの当接によって、一方のヒンジベースとヒンジアームとの相対的な回動が阻止され、その代わりに、他方のヒンジベースとヒンジアームとが相対的に回動し、その相対的な回動力によってリンク機構が起動される。つまり、リンク機構の起動力は、ヒンジベースに設けられた調整ねじがヒンジアームの動きを拘束することよって、間接的にリンク機構に加えられることになる。
【0006】
また特許文献2のヒンジ装置においては、リンク機構を特定の動作方向に付勢するためのばねが備えられており、そのばねによってリンク機構に起動力が加えられる。
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第2534715号公報
【特許文献2】米国特許第6,842,945号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、リンク機構に起動力を加えるために調整ねじやばねを備えることは、それらの配備スペースの確保に伴う設計の制約、および、それらの組付け作業に伴うヒンジ装置の生産性の低下などを招くおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、簡単な構成によってリンク機構に起動力を加えることができて、装置全体の構成の簡素化および生産性の向上を図ることができるヒンジ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のヒンジ装置は、車体に取り付けられる第1ヒンジベースに、ヒンジアームの一端が第1軸によって回動自在に軸支され、かつドアに取り付けられる第2ヒンジベースに、前記ヒンジアームの他端が第2軸によって回動自在に軸支され、前記第1ヒンジベース、第2ヒンジベース、および前記ヒンジアームの相対位置に応じて動作するリンク機構によって、前記第1ヒンジベースと前記ヒンジアームの一端との相対的な回動を許容する第1回動時期と、前記第2ヒンジベースと前記ヒンジアームの他端との相対的な回動を許容する第2回動時期と、が設定されるヒンジ装置において、前記第1ヒンジベースまたは前記第2ヒンジベースに、前記第1回動時期と前記第2回動時期との移行時に前記リンク機構に当接して起動力を与える当接部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車体側の第1ヒンジベースまたはドア側の第2ヒンジベースに設けた当接部をリンク機構に当接させることによって、リンク機構に対して直接的に起動力を与える構成であるため、簡単な構成によってリンク機構に起動力を加えることができて、装置全体の構成の簡素化および生産性の向上を図ることができる。
【0012】
リンク機構は、ドアの開動途中または閉動途中において、ドア側の第2ヒンジベースとヒンジアームの他端との相対的な回動を許容する第2回動時期から、車体側の第1ヒンジベースとヒンジアームの一端との相対的な回動を許容する第1回動時期に、移行させるように構成することができ、その場合には、第2ヒンジベースに設けた当接部をリンク機構に当接させればよい。
【0013】
また、リンク機構は、ドアの開動途中または閉動途中において、車体側の第1ヒンジベースとヒンジアームの一端との相対的な回動を許容する第1回動時期から、ドア側の第2ヒンジベースとヒンジアームの他端との相対的な回動を許容する第2回動時期に、移行させるように構成することができ、その場合には、第1ヒンジベースに設けた当接部をリンク機構に当接させればよい。
【0014】
また、リンク機構は、第1および第2ヒンジベースに設けた第1および第2カムと、ヒンジアームに回動自在に軸支された第1および第2コントロールレバーと、第1および第2コントロールレバーを連結するリンク部材と、によって簡易に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、自動車のサイドドアに備わるヒンジ装置としての適用例である。
【0016】
図1は、ドアを閉じたとき、つまりドアの開き角度が0度のときにおけるヒンジ装置の側面図である。図2、図3、および図4は、それぞれドアの開き角度が0度、90度、170度のときのヒンジ装置の平面図であり、図2は図1のII矢視図に相当する。
【0017】
本例のヒンジ装置は、車体1側に取り付けられる第1ヒンジベース10と、ドア2側に取り付けられる第2ヒンジベース20と、それらの間を連結するヒンジアーム30と、を備えている。第1ヒンジベース10は、図1のように、上面部10A、側面部10B、および下面部10Cを有する断面略コ字状に形成されており、同様に、第2ヒンジベース20も上面部20A、側面部20B、および下面部20Cを有する断面略コ字状に形成されている。ヒンジアーム30は、図1のように、上面部30A、側面部30B、および下面部30Cを有する断面略コ字状に形成され、かつ図2のように平面略コ字状に形成されている。
【0018】
第1ヒンジベース10の上面部10Aと下面部10Cとの間には、ヒンジアーム30の一端側の上面部30Aと下面部30Cとを貫く第1軸31が掛け渡されており、ヒンジアーム30の一端は、この第1軸31を中心として第1ヒンジベース10に回動自在に軸支されている。ドア2の開き角度が0度と90度との間においては、後述するように、ヒンジアーム30の一端が第1軸31を中心として矢印A1,A2方向に回動する(図2および図3参照)。一方、第2ヒンジベース20の上面部20Aと下面部20Cとの間には、ヒンジアーム30の他端側の上面部30Aと下面部30Cとを貫く第2軸32が掛け渡されており、ヒンジアーム30の他端は、この第2軸32を中心として第2ヒンジベース20に回動自在に軸支されている。ドア2の開き角度が90度と170度との間においては、後述するように、ヒンジアーム30の他端が第2軸32を中心として矢印B1,B2方向に回動する(図3および図4参照)。
【0019】
ヒンジアーム30の上側には、第1軸31を中心とする第1ヒンジベース10とヒンジアーム30の一端との相対的な回動を許容する時期と、第2軸32を中心とする第2ヒンジベース20とヒンジアーム30の他端との相対的な回動を許容する時期と、を関連的に設定するためのリンク機構50が備えられている。また、ヒンジアーム30の下側には、第1軸31を中心とする第1ヒンジベース10とヒンジアーム30の一端との相対的な回動に対して、所定のチェック力を付与するための第1チェック機構70と、第2軸32を中心とする第2ヒンジベース20とヒンジアーム30の他端との相対的な回動に対して、所定のチェック力を付与するための第2チェック機構80と、が備えられている。
【0020】
以下においては、リンク機構50、第1チェック機構70、および第2チェック機構80毎に、それらの構成および動作について説明する。
(リンク機構50)
リンク機構50は、第1コントロールレバー51と、第2コントロールレバー52と、それらを連結するリンク部材53と、を含む。第1コントロールレバー51は、図1のように、軸54によってヒンジアーム30の一端側の上面部30Aに軸支されて、図5中の矢印C1,C2方向に回動自在とされている。同様に、第2コントロールレバー52は、軸55によってヒンジアーム30の他端側の上面部30Aに軸支されて、図5中の矢印D1,D2方向に回動自在とされている。第1コントロールレバー51には、軸56によってリンク部材53の一端が相対的に回動自在に連結され、第2コントロールレバー52には、軸57によってリンク部材53の他端が相対的に回動自在に連結されている。
【0021】
第1コントロールレバー51には、図5のように、第1ヒンジベース10に設けられた第1カム61のカム面と対向するカムフォロア部51Aが形成され、同様に、第2コントロールレバー52には、第2ヒンジベース20に設けられた第2カム62と対向するカムフォロア部52Aが形成されている。本例の場合、第1カム61は第1軸31と同一軸上に固定され、第2カム62は第2軸32と同一軸上に固定されている。第1カム61のカム面には、起部61Aと、伏部61Bと、それらの間に位置する段差部61Cと、が形成されており、同様に、第2カム62のカム面には、起部62Aと、伏部62Bと、それらの間に位置する段差部62Cと、が形成されている。
【0022】
リンク機構50は、図5、図6、および図7のように、ドア2の開き角度に応じて、第1コントロールレバー51、第2コントロールレバー52、およびヒンジアーム30の相対位置が変化することにより、次のように動作する。
【0023】
まず、ドア2の開き動作によって、その開き角度が0度から90度近くに達するまでは、図5のように、第1コントロールレバー51のカムフォロア部51Aが第1カム61の起部61Aに沿って移動して、第1軸31を中心とするヒンジアーム30の矢印A1方向の回動を許容する。また、このときは図5のように、第2コントロールレバー52のカムフォロア部52Aが第2カム62の段差部62Cに突き当たって、第2軸32を中心とするヒンジアーム30の矢印B1方向の回動を阻止する。
【0024】
ドア2の開き角度が90度近くに達したときは、図6のように、第1コントロールレバー51のカムフォロア部51Aが第1カム61の起部61Aから外れ、その第1コントロールレバー51の矢印C1方向の回動が許容される。そのため、第2コントロールレバー52は矢印D1方向に回動可能となり、そのカムフォロア部52Aは、第2カム62の段差部62Cの斜面に沿って移動する。ドアの開き角度が90度少し前から、90度を少し過ぎるまでの若干の期間においては、このように第1コントロールレバー51が矢印C1方向に回動し、かつ第2コントロールレバー52が矢印D1方向に回動するため、ヒンジアーム30は、第1軸31および第2軸32のそれぞれを中心として矢印A1およびB2方向に回動することになる。
【0025】
また、ドア2の開き角度が90度に達したときは、図7のように、ヒンジアーム30が第1ヒンジベース10のストッパーピン63に当接して、第1軸31を中心とするヒンジアーム30の矢印A1方向の回動を阻止する。ストッパーピン63は、図1のように、第1ヒンジベース10の上面部10Aと下面部10Cとの間に掛け渡されている。
【0026】
ドアの開き角度が90度を少し過ぎたときからは、図7のように、第1コントロールレバー51のカムフォロア部51Aが第1カム61の伏部61Bに位置し、第2コントロールレバー52のカムフォロア部52Aが第2カム62の起部62Aに位置する。そして、第2コントロールレバー52のカムフォロア部52Aが第2カム62の起部62Aに沿って移動して、第2軸32を中心とするヒンジアーム30の矢印B1方向の回動を許容する。
【0027】
ドア2の開き角度が170度に達したときは、図7のように、第2ヒンジベース10の上面部20Aおよび下面部20Cのそれぞれに位置するストッパー部20Eと、ヒンジアーム30の上面部30Aと下面部30Cのそれぞれに位置するストッパー部30Dと、が当接して、ドア2の170度以上の開きが阻止される。
【0028】
このように、ドア2の開き動作においては、その開き角度が0度から90度近くに達するまでは、第1軸31を中心としてヒンジアーム30が矢印A1方向に回動し、その開き角度が90度を少し過ぎるまでの若干の期間(以下、「移行時期」ともいう)を経てからは、第2軸32を中心としてヒンジアーム30が矢印B1方向に回動する。つまり、第1ヒンジベース10とヒンジアーム30との相対的な回動を許容する時期(第1回動時期)の後、移行時期を経てから、第2ヒンジベース20とヒンジアーム30との相対的な回動を許容する時期(第2回動時期)となる。その結果、ヒンジアーム30の回動中心が第1軸31から第2軸32に移されることになる。
【0029】
このような移行時期におけるリンク機構50の起動力は、第1コントロールレバー51のカムフォロア部51Aが第1カム61の起部61Aから外れたときに、第2カム62の段差部62Cが第2コントロールレバー52を矢印D1方向に回動させる回動力によって与えられる。
【0030】
次に、ドア2の閉じ動作によって、ドア2の開き角度が170度から90度近くになるまでは、図7のように、第2コントロールレバー52のカムフォロア部52Aが第2カム62の起部62Aに沿って移動して、第2軸32を中心とするヒンジアーム30の矢印B2方向の回動を許容する。また、このときは図7のように、第1コントロールレバー51のカムフォロア部51Aが第1カム61の段差部61Cに突き当たって、第1軸31を中心とするヒンジアーム30の矢印A2方向の回動を阻止する。
【0031】
ドア2の開き角度が90度近くに達したときは、図6のように、第2コントロールレバー52のカムフォロア部52Aが第2カム62の起部62Aから外れ、その第2コントロールレバー52の矢印D2方向の回動が許容される。さらに図6のように、第2ヒンジベース20の定位置に設けられている当接部材(当接部)64が第2コントロールレバー52に当接する。この当接部材64から受ける当接力により、第2コントロールレバー52が矢印D2方向に回動し、かつ第1コントロールレバー51が矢印C2方向に回動する。ドアの開き角度が90度近くに達してから、90度を少し過ぎるまでの若干の期間においては、このように第1コントロールレバー51が矢印C2方向に回動し、かつ第2コントロールレバー52が矢印D2方向に回動するため、ヒンジアーム30は、第1軸31および第2軸32のそれぞれを中心として矢印A2およびB2方向に回動することになる。
【0032】
ドアの開き角度が90度を少し過ぎたときからは、図5のように、第1コントロールレバー51のカムフォロア部51Aが第1カム61の伏部61Bに位置し、第2コントロールレバー52のカムフォロア部52Aが第2カム62の起部62Aに位置する。そして、第1コントロールレバー51のカムフォロア部51Aが第1カム61の起部61Aに沿って移動して、第1軸31を中心とするヒンジアーム30の矢印A2方向の回動を許容する。
【0033】
このように、ドア2の閉じ動作においては、ドア2の開き角度が170度から90度近くに達するまでは、第2軸32を中心としてヒンジアーム30が矢印B2方向に回動し、その開き角度が90度を少し過ぎるまでの若干の期間(以下、「移行時期」ともいう)を経てからは、第1軸31を中心としてヒンジアーム30が矢印A2方向に回動する。つまり、第2ヒンジベース20とヒンジアーム30との相対的な回動を許容する時期(第2回動時期)の後、移行時期を経てから、第1ヒンジベース10とヒンジアーム30との相対的な回動を許容する時期(第1回動時期)となる。その結果、ヒンジアーム30の回動中心が第2軸32から第1軸31に移されることになる。
【0034】
このような移行時期におけるリンク機構50の起動力は、第2コントロールレバー52に対する当接部材64の当接力によって与えられる。このように、当接部材64がリンク機構50を直接的に起動させることにより、リンク機構50をより確実に起動させることができる。また、第2ヒンジベース20に当接部材64を固定的に設けるだけのきわめて簡単な構成によって、リンク機構50に起動力を加えることができ、調整ねじやばねなどを用いて起動力を加える場合に比して、ヒンジ装置全体の構成の簡素化および生産性の向上を図ることができる。
【0035】
(第1チェック機構70)
第1チェック機構70は、カムレバー71、圧縮スプリング72、およびカムローラ(当接部)73を含む。カムレバー71は、図8のように、一端部71A、他端部71B、および中間部71Cを有する平面略L字状に形成されており、その一端部71Aは、軸74によって第1ヒンジベース10に矢印E1,E2方向に回動自在に軸支されている。圧縮スプリング72は、カムレバー71の他端部71Bと第1ヒンジベース10のスプリング受部10Dとの間に圧縮されて介在されており、その復元力によって、カムレバー71が矢印E2方向に付勢されている。カムローラ73は、ヒンジアーム30の定位置に固定されたピン75の下端に回動自在に取り付けられており、そのピン75は、図1のように、ヒンジアーム30の上面部30Aと下面部30Cとの間に掛け渡されている。
【0036】
カムレバー71の中間部71Cには、カムローラ73に圧接するカム面71Dが形成されている。本例におけるカム面71Dは、中間部71Cから他端部71Bに渡って長く形成されている。また、カムレバー71の中間部71Cは、圧縮スプリング72に隣接して位置し、その圧縮スプリング72の圧縮方向、つまり図8中の上下方向にほぼ沿って延在する。また、カムレバー71の他端部71Bは、図9および図10のようにドア2が開いたときに、圧縮スプリング72よりも外側、つまり図9および図10中において圧縮スプリング72よりも下側に位置する。
【0037】
このような構成の第1チェック機構70は、第1軸31を中心とする第1ヒンジベース10とヒンジアーム30との相対的な回動に対して、所定のチェック力を付与する。前述したように、第1軸31を中心とするヒンジアーム30の回動範囲は90度、つまりドア2の開き角度の0度と90度との間の範囲に相当する。ヒンジアーム30の回動に伴って、そのヒンジアーム30側のカムローラ73は、カムレバー71のカム面71Dに沿って転動しつつ図11のように移動する。
【0038】
図11中のP1は、図8のように、第1軸31を中心とするヒンジアーム30の回動角度が0度のときのカムローラ73の移動位置である。図11中のP3は、図9および図10のように、第1軸31を中心とするヒンジアーム30の回動角度が90度のときのカムローラ73の移動位置である。図11中のP2は、第1軸31を中心とするヒンジアーム30の回動角度が60度のときのカムローラ73の移動位置である。このようなヒンジアーム30の回動に対しては、カムローラ73に圧接するカム面71Dの形状に応じたチェック力が付与される。本例の場合は、ヒンジアーム30の回動角度が60度および90度のときに所定のクリック感を与えるように、チェック力を付与することになる。
【0039】
このような第1チェック機構70は、図9および図10のようにドア2を開いたときに、カムレバー71の他端部71Bが圧縮スプリング72よりも外側つまり露出側に位置するため、圧縮スプリング72の露出度を小さく抑えて、ヒンジ装置の良好な外観を維持することができる。また、ドア2を開いたときに、ヒンジアーム30も圧縮スプリング72の外側に位置するため、ヒンジ装置の外観をより良好に維持することができる。また、カムレバー71の中間部71Cが圧縮スプリング72に隣接して、その圧縮スプリング72の圧縮方向にほぼ沿って延在するため、これらのカムレバー71と圧縮スプリング72を効率よく配備することができる。
【0040】
また、カムレバー71のカム面71Dは、圧縮スプリング72とは反対側に位置する中間部71Cの側面に形成されているため、圧縮スプリング72との干渉を特に考慮することなく、カムローラ73の位置を設定したり、カム面71Dを充分に大きく設定することができる。カム面71Dを長く形成することにより、ドア2の開き角度に応じた最適なチェック力を細かく設定することができる。本例において、カム面71Dの形成範囲が他端部71Bの位置にまでも及ぶため、それをより長く形成することができる。
【0041】
また、ヒンジアーム30の上面部30Aと下面部30Cとの間にピン75を掛け渡して、そのピン75にカムローラ73を取り付けているため、そのカムローラ73を強固に位置決めして、より適確なチェック力を付与することができる。
【0042】
(第2チェック機構80)
第2チェック機構80は、カムレバー81、圧縮スプリング82、およびカムローラ(当接部)83を含む。カムレバー81は、図8のように、一端部81A、他端部81B、および中間部81Cを有する平面略L字状に形成されており、その一端部81Aは、軸84によって第2ヒンジベース20に矢印F1,F2方向に回動自在に軸支されている。圧縮スプリング82は、カムレバー81の他端部81Bと第2ヒンジベース20のスプリング受部20Dとの間に圧縮されて介在されており、その復元力によって、カムレバー81が矢印F2方向に付勢されている。カムローラ83は、ヒンジアーム30の定位置に固定されたピン85の下端に回動自在に取り付けられており、そのピン85は、図1のように、ヒンジアーム30の上面部30Aと下面部30Cとの間に掛け渡されている。
【0043】
カムレバー81の中間部81Cには、カムローラ83に圧接するカム面81Dが形成されている。本例におけるカム面81Dは、中間部81Cから他端部81Bに渡って長く形成されている。また、カムレバー81の中間部81Cは、圧縮スプリング82に隣接して位置し、その圧縮スプリング82の圧縮方向、つまり図8中の上下方向にほぼ沿って延在する。また、カムレバー81の他端部81Bは、図9および図10のようにドア2が開いたときに、圧縮スプリング82よりも外側、つまり図9および図10中において圧縮スプリング82よりも上側に位置する。
【0044】
このような構成の第2チェック機構80は、第2軸32を中心とする第2ヒンジベース20とヒンジアーム30との相対的な回動に対して、所定のチェック力を付与する。前述したように、第2軸32を中心とするヒンジアーム30の回動範囲は80度、つまりドア2の開き角度の90度と170度との間の範囲に相当する。ヒンジアーム30の回動に伴って、そのヒンジアーム30側のカムローラ83は、カムレバー81のカム面81Dに沿って転動しつつ図12のように移動する。
【0045】
図12中のP11は、図8および図9のように、第2軸32を中心とするヒンジアーム30の回動角度が0度のときのカムローラ83の移動位置である。図12中のP12は、図10のように、第2軸32を中心とするヒンジアーム30の回動角度が80度のときのカムローラ83の移動位置である。このようなヒンジアーム30の回動に対しては、カムローラ83に圧接するカム面81Dの形状に応じたチェック力が付与される。本例の場合は、ヒンジアーム30の回動角度が0度および80度のときに所定のクリック感を与えるように、チェック力を付与することになる。
【0046】
このような第2チェック機構80は、図9および図10のようにドア2を開いたときに、カムレバー81の他端部81Bが圧縮スプリング82よりも外側つまり露出側に位置するため、圧縮スプリング82の露出度を小さく抑えて、ヒンジ装置の良好な外観を維持することができる。また、ドア2を開いたときに、ヒンジアーム30も圧縮スプリング82の外側に位置するため、ヒンジ装置の外観をより良好に維持することができる。また、カムレバー81の中間部81Cが圧縮スプリング82に隣接して、その圧縮スプリング82の圧縮方向にほぼ沿って延在するため、これらのカムレバー81と圧縮スプリング82を効率よく配備することができる。
【0047】
また、カムレバー81のカム面81Dは、圧縮スプリング82とは反対側に位置する中間部81Cの側面に形成されているため、圧縮スプリング82との干渉を特に考慮することなく、カムローラ83の位置を設定したり、カム面81Dを充分に大きく形成することができる。カム面81Dを長く形成することにより、ドア2の開き角度に応じた最適なチェック力を細かく設定することができる。本例において、カム面81Dの形成範囲が他端部81Bの位置にまでも及ぶため、それをより長く形成することができる。
【0048】
また、ヒンジアーム30の上面部30Aと下面部30Cとの間にピン85を掛け渡して、そのピン85にカムローラ83を取り付けているため、そのカムローラ83を強固に位置決めして、より適確なチェック力を付与することができる。
【0049】
(他の実施形態)
上述した実施形態におけるリンク機構50は、ドア2の閉動中に、第2ヒンジベース20とヒンジアーム30との相対的な回動を許容する時期(第2回動時期)から、第1ヒンジベース10とヒンジアーム30との相対的な回動を許容する時期(第1回動時期)に移行し、その移行時の駆動力は、第2ヒンジベース20に設けた当接部材64によって直接的に与えられる。一方、ドア2の開動中には、第1ヒンジベース10とヒンジアーム30との相対的な回動を許容する時期(第1回動時期)から、第2ヒンジベース20とヒンジアーム30との相対的な回動を許容する時期(第2回動時期)に移行し、その移行時の起動力は、第2カム62の段差部62Cが第2コントロールレバー52を矢印D1方向に回動させたときの回動力によって与えられる。
【0050】
しかし、その後者の移行時における起動力は、前者の移行時における起動力と同様に、カムを通さずに当接部材によって直接的に与えることもできる。その場合には、第1ヒンジベース10の定位置に当接部材を設けて、後者の移行時に、その当接部材がリンク機構50に当接して起動力を与えるようにすればよい。
【0051】
また、上述した実施形態においては、ドア2の開動中に、ヒンジアーム30の回動中心を第1軸31から第2軸32に移し、一方、ドア2の閉動中に、ヒンジアーム30の回動中心を第2軸32から第1軸31に移すように構成されている。しかし、これとは逆に、ドア2の開動中に、ヒンジアーム30の回動中心を第2軸32から第1軸31に移し、一方、ドア2の閉動中に、ヒンジアーム30の回動中心を第1軸31から第2軸32に移すように構成することもできる。その場合には、車体1とドア2に対して、第1ヒンジベース10と第2ヒンジベース20を上述した実施形態とは逆に取り付けるような関係とすればよい。
【0052】
このように、ドア2の開動時および閉動時に、ヒンジアーム30が先に第1軸31を中心として回動してから第2軸32を中心として回動する形態、または逆に、ドア2の開動時および閉動時に、ヒンジアーム30が先に第2軸32を中心として回動してから第1軸31を中心として回動する形態は、ドア2の使用形態などに応じて選定することができる。例えば、大きく開閉する機会が多いドアに対しては前者の形態のヒンジ装置を用い、小さく開閉する機会が多いドアに対しては後者の形態のヒンジ装置を用いることができる。特に、後者の形態のヒンジ装置を用いた場合、ドアを小さく開閉するときには、そのドアに近い側の第2軸32を中心としてドアが回動するため、ドアから遠い側の第1軸31を中心としてドアが回動するときよりも回転半径が小さくなり、その分、ドアを小さい力によって開閉できることになる。
【0053】
なお、本発明のヒンジ装置は、サイドドアに限らずバックドアなどにも適用でき、更に、ドアの中間開度および全開開度は、上述した実施形態のみに特定されず適宜変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】ドアの開き角度が0度のときの本発明の実施形態におけるヒンジ装置の側面図である。
【図2】図1のヒンジ装置の全体を矢印II方向から視た平面図である。
【図3】ドアの開き角度が90度のときにおける図1のヒンジ装置の全体の平面図である。
【図4】ドアの開き角度が170度のときにおける図1のヒンジ装置の全体の平面図である。
【図5】ドアの開き角度が0度のときにおける図1のヒンジ装置のリンク機構部分の平面図である。
【図6】ドアの開き角度が90度のときにおける図1のヒンジ装置のリンク機構部分の平面図である。
【図7】ドアの開き角度が170度のときにおける図1のヒンジ装置のリンク機構部分の平面図である。
【図8】ドアの開き角度が0度のときにおける図1のヒンジ装置のチェック機構部分の平面図である。
【図9】ドアの開き角度が90度のときにおける図1のヒンジ装置のチェック機構部分の平面図である。
【図10】ドアの開き角度が170度のときにおける図1のヒンジ装置のチェック機構部分の平面図である。
【図11】図8における第1チェック機構のカムレバーとカムローラとの関係の説明図である。
【図12】図8における第2チェック機構のカムレバーとカムローラとの関係の説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 車体
2 ドア
10 第1ヒンジベース
20 第2ヒンジベース
30 ヒンジアーム
31 第1軸
32 第2軸
50 リンク機構
51 第1コントロールレバー
52 第2コントロールレバー
53 リンク部材
61 第1カム
62 第2カム
64 当接部材(当接部)
70 第1チェック機構
71 カムレバー
72 圧縮スプリング
73 カムローラ(当接部)
80 第2チェック機構
81 カムレバー
82 圧縮スプリング
83 カムローラ(当接部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられる第1ヒンジベースに、ヒンジアームの一端が第1軸によって回動自在に軸支され、かつドアに取り付けられる第2ヒンジベースに、前記ヒンジアームの他端が第2軸によって回動自在に軸支され、前記第1ヒンジベース、第2ヒンジベース、および前記ヒンジアームの相対位置に応じて動作するリンク機構によって、前記第1ヒンジベースと前記ヒンジアームの一端との相対的な回動を許容する第1回動時期と、前記第2ヒンジベースと前記ヒンジアームの他端との相対的な回動を許容する第2回動時期と、が設定されるヒンジ装置において、
前記第1ヒンジベースまたは前記第2ヒンジベースに、前記第1回動時期と前記第2回動時期との移行時に前記リンク機構に当接して起動力を与える当接部を設けたことを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
前記リンク機構は、前記ドアの開動途中または閉動途中において、前記第2回動時期から前記第1回動時期に移行させるように動作し、
前記当接部は、前記第2ヒンジベースに設けられて、前記第2回動時期から前記第1回動時期への移行時に前記リンク機構に当接して起動力を加える
ことを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。
【請求項3】
前記リンク機構は、前記ドアの開動途中または閉動途中において、前記第1回動時期から前記第2回動時期に移行させるように動作し、
前記当接部は、前記第1ヒンジベースに設けられて、前記第1回動時期から前記第2回動時期への移行時に前記リンク機構に当接して起動力を加える
ことを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。
【請求項4】
前記リンク機構は、
前記第1ヒンジベースに設けられた第1カムと、
前記第2ヒンジベースに設けられた第2カムと、
前記ヒンジアームに回動自在に軸支されて、前記第1カムのカム面に接するカムフォロア部が形成された第1コントロールレバーと、
前記ヒンジアームに回動自在に軸支されて、前記第2カムのカム面に接するカムフォロア部が形成された第2コントロールレバーと、
前記第1コントロールレバーと前記第2コントロールレバーとを連結するリンク部材と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−283362(P2006−283362A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−103948(P2005−103948)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】