ヒータを備えた培養装置
【課題】培養器内の温度が所定温度以下に低下しても、短時間で復帰できる上、培養器内に温度のむらが発生しない培養装置の提供。
【解決手段】開口を有する断熱箱本体2、断熱扉7、透明内扉3、培養器4、空気等のダクト及び循環用送風機14、湿度を制御する加湿水16を貯溜した加湿皿15とを備え、断熱箱本体が、金属製の外箱21、金属製の内箱22、断熱材24、空気層25、培養器内を加熱するためのヒータ30、31、32を備えた培養装置において、ダクト内の循環用送風機の下流側に急速加熱用ヒータ33を配設し、培養器内の温度が所定温度以下に低下した際に作動させて、急速に所定温度に復帰させるように構成したことを特徴とする培養装置。
【解決手段】開口を有する断熱箱本体2、断熱扉7、透明内扉3、培養器4、空気等のダクト及び循環用送風機14、湿度を制御する加湿水16を貯溜した加湿皿15とを備え、断熱箱本体が、金属製の外箱21、金属製の内箱22、断熱材24、空気層25、培養器内を加熱するためのヒータ30、31、32を備えた培養装置において、ダクト内の循環用送風機の下流側に急速加熱用ヒータ33を配設し、培養器内の温度が所定温度以下に低下した際に作動させて、急速に所定温度に復帰させるように構成したことを特徴とする培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータを備えた培養装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
細胞や微生物等の培養物を培養器内で培養する培養装置がある。この培養装置は、加湿皿が載置される培養器内を加熱するためのヒータを備えており、例えば、このヒータを制御して培養器内を所定温度(例えば、37℃)に維持するとともに、同器内をこの所定温度に応じた所定湿度(例えば、95%RH)に維持するようになっている。
【0003】
また、例えば、加湿皿の水を加熱するための底ヒータと、この加湿皿以外の培養器内を加熱するためのヒータと、断熱箱本体に開閉自在に取り付けられる断熱扉に取り付けられるヒータを備え、これら3種類のヒータを個別に制御して加湿皿の水の温度を培養器内の温度よりも低めに維持することによって、培養器内の過飽和分の水を加湿皿に戻して、結露を抑制する培養装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この培養装置は、培養器内の温度を検出するための温度センサと外気温を検出するための温度センサを備えており、これら2つの温度センサの検出結果に基づいて、前記3種類のヒータをそれぞれ個別に制御するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−227942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、細胞や微生物等の培養物を培養器内で培養するために、培養物を入れた培養皿などを多数培養器内に入れると、培養器内の温度が所定温度(例えば、37℃)以下に低下してしまい、既存のヒータだけでは前記所定温度に復帰するためには長時間を要するという問題があった。所定温度に復帰するために長時間を要すると、例えば培養物に近い場所で結露が生じ、この結露した水に雑菌が発生して、培養物に悪影響を及ぼすという問題が生じる。
そこで、培養器内に器内ヒータを設置すると、培養器内に温度のむらが発生し、培養器における培養物に影響を及ぼす恐れがでるという問題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、従来の問題を解決し、培養器内の温度が所定温度以下に低下しても、短時間で復帰できる上、培養器内に温度のむらが発生しない培養装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために発明者は鋭意研究した結果、培養器に空気等の気体を強制対流させるための循環用送風機を備えたダクト内の前記循環用送風機の下流側に急速加熱用ヒータを配設して制御することにより前記課題を解決できることを見いだし、本発明を成すに至った。
【0008】
前記課題を解決するための請求項1記載の発明は、前面に開口を有する断熱箱本体と、前記断熱箱本体に開閉自在に取り付けられる断熱扉と、前記開口を開閉自在に閉塞する透明内扉と、前記内扉と断熱箱本体とで囲まれ細胞や微生物等の試料の培養を行う培養器と、培養器に空気等の気体を強制対流させるためのダクト及び循環用送風機と、培養器の湿度を制御するための加湿水を貯溜し前記ダクト内で且つ培養器の底部に配置した加湿皿とを備え、前記断熱箱本体は、金属製の外箱と、金属製の内箱と、外箱と内箱の間で外箱の内側に配置される断熱材と、前記断熱材よりも内側に配置される空気層と、前記内箱の外側およびに断熱扉の内側に前記培養器内を加熱するためのヒータを備えた培養装置において、
前記ダクト内の循環用送風機の下流側に急速加熱用ヒータを配設し、培養器内の温度が所定温度以下に低下した際に作動させて、急速に所定温度に復帰させるように構成としたことを特徴とする培養装置である。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の培養装置において、培養器内の温度が所定温度に達した後、急速加熱用ヒータ自身の温度が培養器内の所定温度に維持されるように制御して作動されるように構成としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1記載の発明は、前面に開口を有する断熱箱本体と、前記断熱箱本体に開閉自在に取り付けられる断熱扉と、前記開口を開閉自在に閉塞する透明内扉と、前記内扉と断熱箱本体とで囲まれ細胞や微生物等の試料の培養を行う培養器と、培養器に空気等の気体を強制対流させるためのダクト及び循環用送風機と、培養器の湿度を制御するための加湿水を貯溜し前記ダクト内で且つ培養器の底部に配置した加湿皿とを備え、前記断熱箱本体は、金属製の外箱と、金属製の内箱と、外箱と内箱の間で外箱の内側に配置される断熱材と、前記断熱材よりも内側に配置される空気層と、前記内箱の外側およびに断熱扉の内側に前記培養器内を加熱するためのヒータを備えた培養装置において、
前記ダクト内の循環用送風機の下流側に急速加熱用ヒータを配設し、培養器内の温度が所定温度以下に低下した際に作動させて、急速に所定温度に復帰させるように構成としたことを特徴とするものであり、
前記ダクト内の循環用送風機の下流側に急速加熱用ヒータを配設し、培養器内の温度が所定温度以下に低下した場合には、作動させて、短時間で復帰できるうえ、培養器内に温度のむらが発生しないという顕著な効果を奏する。
【0011】
本発明の請求項2記載の発明は、請求項1記載の培養装置において、培養器内の温度が所定温度に達した後、急速加熱用ヒータ自身の温度が培養器内の所定温度に維持されるように制御して作動されるように構成としたことを特徴とするものであり、
培養器内の温度が所定温度に達した後、急速加熱用ヒータの作動を停止すると、急速加熱用ヒータ自身の温度が培養器内の所定温度以下になって、急速加熱用ヒータに結露する恐れがあるが、急速加熱用ヒータ自身の温度が培養器内の所定温度に維持されるように微量の電流を流すなどして制御すれば、結露を防止できるというさらなる顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のヒータを備えた培養装置の断熱扉を開いた状態を説明する斜視図である。
【図2】本発明のヒータを備えた培養装置の培養器とダクトを中心として空気循環を説明するインキュベータを右側から見た状態の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明の実施例を詳述する。
本発明の実施形態における培養装置1は、図1および図2に示すように、左開き式の扉(詳しくは外扉と内扉)及び観音開き式の小扉を備えるものであり、前面に開口2Aを有する断熱箱本体2と、この開口2Aを開閉自在に閉塞する内扉としての透明扉3とで囲まれる空間により培養器4を形成している。この透明扉3は、その左側をヒンジにより断熱箱本体2に開閉自在に保持されており、培養器4の間口部分に設けられたガスケット2Bによって気密的に開口2Aを閉塞している。断熱箱本体2の間口には、透明内扉3と断熱箱本体2とをシールするシール部材2Bを備えている。
【0014】
培養器4の内部は、複数の棚5により上下に(ここでは4枚の棚で5つに)区画されている。尚、培養装置1は、例えば、CO2インキュベータであれば、CO2の濃度を5%程度に設定・維持するケースが多く、CO2の濃度制御に扉の閉塞後にCO2ガスを培養器4内に供給するようにしている。このため、内扉3を開放しても複数に区画された培養器4全体に外気進入が為されないように、内扉3よりも器内側に、観音開き式の小扉6A,6Bを各区画に対応して複数(ここでは5対)設けている。7は断熱箱本体2にヒンジによって開閉自在に支持され、培養器4の開口2Aからの熱進入を防止する外扉としての断熱扉であり、その裏面周囲に磁石入りのガスケット8を設けている。
【0015】
培養器4には、その背面及び底面に、それぞれ空気等の気体通路Kを形成するための間隔を存して背面ダクト11A及び底面ダクト11Bからなるダクト11が配置され、背面ダクト11Aの上部に形成した吸込口12から培養器4内の空気等の気体を吸い込み、底面ダクト11Bの前部及び側面に設けた吹出口13から培養器4内に吹き出す空気等の気体の強制循環を行う。ダクト11内(ここでは上部)には、この空気等の気体の強制循環のために循環用送風機14を配置している。この送風機14は、ファンとモータと軸とで構成されており、モータは後述する培養庫4の外側背面の機械室19に配置され、軸はこの機械室19のモータから断熱箱本体2の背面を貫通して空気等の気体通路Kまで延びてファンに接続されている。
【0016】
金属製の内箱22の外側に培養器4内を加熱するためのヒータ30が設けられており、断熱扉7の内側にも培養器4内を加熱するためのヒータ31が設けられている。培養器4の底面で且つダクト11内には、加湿用の水(即ち加湿水)16を貯溜する加湿皿15が配置され、金属例えばステンレス製の内箱22の底面外側に配置されたヒータ32により加熱されて水を蒸発させる。尚、加湿皿15をダクト11内で且つ培養器4の底部に配置することにより、循環用送風機14及びダクト11にて形成される培養器4への空気等の気体通路Kに加湿されたガスを効率よく吹き出すことが可能となる。
【0017】
断熱箱本体2の外箱21の背面には、循環用送風機14の駆動手段たるモータや、培養器4にCO2ガスや空気等の気体を供給するためのガス供給手段17、及び図示しない制御基板等の電装部品を配置するための機械室19が形成される。
【0018】
ガス供給手段17は、ガス供給管17Aと、開閉弁17Bと、フィルタ17C等で構成され、ガス供給管17Aの先端部分は、気体通路Kに臨むようになっている。
【0019】
培養器4のガス濃度を制御するためにガス出口17Aから供給されるCO2ガスを噴射させることができる。
【0020】
断熱箱本体2は、金属製の外箱21と、ステンレス製の内箱22と、外箱21と内箱22の間で外箱21の内側に配置される断熱材24と、前記断熱材24よりも内側に配置される空気層(所謂エアージャケット)25とを備える。培養器4を形成する内箱22の左右両側面、天面及び背面には、培養器を加熱するための加熱ヒータ(図示せず)が配置される。
【0021】
本発明の培養装置1は、図2に示したようにダクト11内の循環用送風機14の下流側に急速加熱用ヒータ33を配設し、培養器4内の温度が図示しない温度センサにより検知されて所定温度以下に低下した際には、その情報が図示しない制御装置に送られ、制御装置からの信号によって作動させて加熱を開始して、急速に所定温度に復帰させるように構成されている。
ダクト11内の循環用送風機14の下流側に急速加熱用ヒータ33を配設し、培養器4内の温度が所定温度以下に低下した場合には、作動させて、背面ダクト11Aの上部に形成した吸込口12から培養器4内の空気等の気体を循環用送風機14により吸い込み、急速加熱用ヒータ33により加熱された気体を背面ダクト11A及び底面ダクト11Bダクト11を経て底面ダクト11Bの前部及び側面に設けた吹出口13から培養器4内に吹き出す空気の強制循環を行うので、短時間で培養器4内の温度を所定温度に復帰できる上、培養器4内に温度のむらが発生しない。
【0022】
培養器4内の温度が所定温度に達した後、急速加熱用ヒータ33をオフにすると急速加熱用ヒータ33自体の温度が培養器4内の所定温度以下になる恐れがあり、そのために急速加熱用ヒータ33に結露が発生する。結露が発生すると雑菌などが繁殖し、培養物の培養に支障をきたす恐れがある。そこで培養器4内の温度が所定温度に達した後、急速加熱用ヒータ33自体の温度が培養器4内の所定温度に維持されるように微量の電流を流すなどして制御すれば、結露を防止することができる。
【0023】
本発明で使用する急速加熱用ヒータの電気容量、形状、寸法、個数などは培養装置の容量、形状、大きさ、培養物などによって異なる。
【0024】
なお、上記実施形態の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮するものではない。又、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、前面に開口を有する断熱箱本体と、前記断熱箱本体に開閉自在に取り付けられる断熱扉と、前記開口を開閉自在に閉塞する透明内扉と、前記内扉と断熱箱本体とで囲まれ細胞や微生物等の試料の培養を行う培養器と、培養器に空気等の気体を強制対流させるためのダクト及び循環用送風機と、培養器の湿度を制御するための加湿水を貯溜し前記ダクト内で且つ培養器の底部に配置した加湿皿とを備え、前記断熱箱本体は、金属製の外箱と、金属製の内箱と、外箱と内箱の間で外箱の内側に配置される断熱材と、前記断熱材よりも内側に配置される空気層と、前記内箱の外側およびに断熱扉の内側に前記培養器内を加熱するためのヒータを備えた培養装置において、
前記ダクト内の循環用送風機の下流側に急速加熱用ヒータを配設し、培養器内の温度が所定温度以下に低下した際に作動させて、急速に所定温度に復帰させるように構成としたことを特徴とする培養装置であり、
前記ダクト内の循環用送風機の下流側に急速加熱用ヒータを配設し、培養器内の温度が所定温度以下に低下した場合には、作動させて、短時間で復帰できるうえ、培養器内に温度のむらが発生しないという顕著な効果を奏するので、産業上の利用価値は甚だ大きい。
【符号の説明】
【0026】
1 培養装置
2 断熱箱本体
2A 開口
3 透明内扉
4 培養器
5 棚
6A,6B 小扉
7 断熱扉
8 ガスケット
11 ダクト
11B 底面ダクト
14 循環用送風機
15 加湿皿
16 加湿水
17 ガス供給手段
17A ガス出口
21 外箱
22 内箱
24 断熱材
25 空気層(エアージャケット)
30、31、32 ヒータ
33 急速加熱用ヒータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータを備えた培養装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
細胞や微生物等の培養物を培養器内で培養する培養装置がある。この培養装置は、加湿皿が載置される培養器内を加熱するためのヒータを備えており、例えば、このヒータを制御して培養器内を所定温度(例えば、37℃)に維持するとともに、同器内をこの所定温度に応じた所定湿度(例えば、95%RH)に維持するようになっている。
【0003】
また、例えば、加湿皿の水を加熱するための底ヒータと、この加湿皿以外の培養器内を加熱するためのヒータと、断熱箱本体に開閉自在に取り付けられる断熱扉に取り付けられるヒータを備え、これら3種類のヒータを個別に制御して加湿皿の水の温度を培養器内の温度よりも低めに維持することによって、培養器内の過飽和分の水を加湿皿に戻して、結露を抑制する培養装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この培養装置は、培養器内の温度を検出するための温度センサと外気温を検出するための温度センサを備えており、これら2つの温度センサの検出結果に基づいて、前記3種類のヒータをそれぞれ個別に制御するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−227942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、細胞や微生物等の培養物を培養器内で培養するために、培養物を入れた培養皿などを多数培養器内に入れると、培養器内の温度が所定温度(例えば、37℃)以下に低下してしまい、既存のヒータだけでは前記所定温度に復帰するためには長時間を要するという問題があった。所定温度に復帰するために長時間を要すると、例えば培養物に近い場所で結露が生じ、この結露した水に雑菌が発生して、培養物に悪影響を及ぼすという問題が生じる。
そこで、培養器内に器内ヒータを設置すると、培養器内に温度のむらが発生し、培養器における培養物に影響を及ぼす恐れがでるという問題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、従来の問題を解決し、培養器内の温度が所定温度以下に低下しても、短時間で復帰できる上、培養器内に温度のむらが発生しない培養装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために発明者は鋭意研究した結果、培養器に空気等の気体を強制対流させるための循環用送風機を備えたダクト内の前記循環用送風機の下流側に急速加熱用ヒータを配設して制御することにより前記課題を解決できることを見いだし、本発明を成すに至った。
【0008】
前記課題を解決するための請求項1記載の発明は、前面に開口を有する断熱箱本体と、前記断熱箱本体に開閉自在に取り付けられる断熱扉と、前記開口を開閉自在に閉塞する透明内扉と、前記内扉と断熱箱本体とで囲まれ細胞や微生物等の試料の培養を行う培養器と、培養器に空気等の気体を強制対流させるためのダクト及び循環用送風機と、培養器の湿度を制御するための加湿水を貯溜し前記ダクト内で且つ培養器の底部に配置した加湿皿とを備え、前記断熱箱本体は、金属製の外箱と、金属製の内箱と、外箱と内箱の間で外箱の内側に配置される断熱材と、前記断熱材よりも内側に配置される空気層と、前記内箱の外側およびに断熱扉の内側に前記培養器内を加熱するためのヒータを備えた培養装置において、
前記ダクト内の循環用送風機の下流側に急速加熱用ヒータを配設し、培養器内の温度が所定温度以下に低下した際に作動させて、急速に所定温度に復帰させるように構成としたことを特徴とする培養装置である。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の培養装置において、培養器内の温度が所定温度に達した後、急速加熱用ヒータ自身の温度が培養器内の所定温度に維持されるように制御して作動されるように構成としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1記載の発明は、前面に開口を有する断熱箱本体と、前記断熱箱本体に開閉自在に取り付けられる断熱扉と、前記開口を開閉自在に閉塞する透明内扉と、前記内扉と断熱箱本体とで囲まれ細胞や微生物等の試料の培養を行う培養器と、培養器に空気等の気体を強制対流させるためのダクト及び循環用送風機と、培養器の湿度を制御するための加湿水を貯溜し前記ダクト内で且つ培養器の底部に配置した加湿皿とを備え、前記断熱箱本体は、金属製の外箱と、金属製の内箱と、外箱と内箱の間で外箱の内側に配置される断熱材と、前記断熱材よりも内側に配置される空気層と、前記内箱の外側およびに断熱扉の内側に前記培養器内を加熱するためのヒータを備えた培養装置において、
前記ダクト内の循環用送風機の下流側に急速加熱用ヒータを配設し、培養器内の温度が所定温度以下に低下した際に作動させて、急速に所定温度に復帰させるように構成としたことを特徴とするものであり、
前記ダクト内の循環用送風機の下流側に急速加熱用ヒータを配設し、培養器内の温度が所定温度以下に低下した場合には、作動させて、短時間で復帰できるうえ、培養器内に温度のむらが発生しないという顕著な効果を奏する。
【0011】
本発明の請求項2記載の発明は、請求項1記載の培養装置において、培養器内の温度が所定温度に達した後、急速加熱用ヒータ自身の温度が培養器内の所定温度に維持されるように制御して作動されるように構成としたことを特徴とするものであり、
培養器内の温度が所定温度に達した後、急速加熱用ヒータの作動を停止すると、急速加熱用ヒータ自身の温度が培養器内の所定温度以下になって、急速加熱用ヒータに結露する恐れがあるが、急速加熱用ヒータ自身の温度が培養器内の所定温度に維持されるように微量の電流を流すなどして制御すれば、結露を防止できるというさらなる顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のヒータを備えた培養装置の断熱扉を開いた状態を説明する斜視図である。
【図2】本発明のヒータを備えた培養装置の培養器とダクトを中心として空気循環を説明するインキュベータを右側から見た状態の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明の実施例を詳述する。
本発明の実施形態における培養装置1は、図1および図2に示すように、左開き式の扉(詳しくは外扉と内扉)及び観音開き式の小扉を備えるものであり、前面に開口2Aを有する断熱箱本体2と、この開口2Aを開閉自在に閉塞する内扉としての透明扉3とで囲まれる空間により培養器4を形成している。この透明扉3は、その左側をヒンジにより断熱箱本体2に開閉自在に保持されており、培養器4の間口部分に設けられたガスケット2Bによって気密的に開口2Aを閉塞している。断熱箱本体2の間口には、透明内扉3と断熱箱本体2とをシールするシール部材2Bを備えている。
【0014】
培養器4の内部は、複数の棚5により上下に(ここでは4枚の棚で5つに)区画されている。尚、培養装置1は、例えば、CO2インキュベータであれば、CO2の濃度を5%程度に設定・維持するケースが多く、CO2の濃度制御に扉の閉塞後にCO2ガスを培養器4内に供給するようにしている。このため、内扉3を開放しても複数に区画された培養器4全体に外気進入が為されないように、内扉3よりも器内側に、観音開き式の小扉6A,6Bを各区画に対応して複数(ここでは5対)設けている。7は断熱箱本体2にヒンジによって開閉自在に支持され、培養器4の開口2Aからの熱進入を防止する外扉としての断熱扉であり、その裏面周囲に磁石入りのガスケット8を設けている。
【0015】
培養器4には、その背面及び底面に、それぞれ空気等の気体通路Kを形成するための間隔を存して背面ダクト11A及び底面ダクト11Bからなるダクト11が配置され、背面ダクト11Aの上部に形成した吸込口12から培養器4内の空気等の気体を吸い込み、底面ダクト11Bの前部及び側面に設けた吹出口13から培養器4内に吹き出す空気等の気体の強制循環を行う。ダクト11内(ここでは上部)には、この空気等の気体の強制循環のために循環用送風機14を配置している。この送風機14は、ファンとモータと軸とで構成されており、モータは後述する培養庫4の外側背面の機械室19に配置され、軸はこの機械室19のモータから断熱箱本体2の背面を貫通して空気等の気体通路Kまで延びてファンに接続されている。
【0016】
金属製の内箱22の外側に培養器4内を加熱するためのヒータ30が設けられており、断熱扉7の内側にも培養器4内を加熱するためのヒータ31が設けられている。培養器4の底面で且つダクト11内には、加湿用の水(即ち加湿水)16を貯溜する加湿皿15が配置され、金属例えばステンレス製の内箱22の底面外側に配置されたヒータ32により加熱されて水を蒸発させる。尚、加湿皿15をダクト11内で且つ培養器4の底部に配置することにより、循環用送風機14及びダクト11にて形成される培養器4への空気等の気体通路Kに加湿されたガスを効率よく吹き出すことが可能となる。
【0017】
断熱箱本体2の外箱21の背面には、循環用送風機14の駆動手段たるモータや、培養器4にCO2ガスや空気等の気体を供給するためのガス供給手段17、及び図示しない制御基板等の電装部品を配置するための機械室19が形成される。
【0018】
ガス供給手段17は、ガス供給管17Aと、開閉弁17Bと、フィルタ17C等で構成され、ガス供給管17Aの先端部分は、気体通路Kに臨むようになっている。
【0019】
培養器4のガス濃度を制御するためにガス出口17Aから供給されるCO2ガスを噴射させることができる。
【0020】
断熱箱本体2は、金属製の外箱21と、ステンレス製の内箱22と、外箱21と内箱22の間で外箱21の内側に配置される断熱材24と、前記断熱材24よりも内側に配置される空気層(所謂エアージャケット)25とを備える。培養器4を形成する内箱22の左右両側面、天面及び背面には、培養器を加熱するための加熱ヒータ(図示せず)が配置される。
【0021】
本発明の培養装置1は、図2に示したようにダクト11内の循環用送風機14の下流側に急速加熱用ヒータ33を配設し、培養器4内の温度が図示しない温度センサにより検知されて所定温度以下に低下した際には、その情報が図示しない制御装置に送られ、制御装置からの信号によって作動させて加熱を開始して、急速に所定温度に復帰させるように構成されている。
ダクト11内の循環用送風機14の下流側に急速加熱用ヒータ33を配設し、培養器4内の温度が所定温度以下に低下した場合には、作動させて、背面ダクト11Aの上部に形成した吸込口12から培養器4内の空気等の気体を循環用送風機14により吸い込み、急速加熱用ヒータ33により加熱された気体を背面ダクト11A及び底面ダクト11Bダクト11を経て底面ダクト11Bの前部及び側面に設けた吹出口13から培養器4内に吹き出す空気の強制循環を行うので、短時間で培養器4内の温度を所定温度に復帰できる上、培養器4内に温度のむらが発生しない。
【0022】
培養器4内の温度が所定温度に達した後、急速加熱用ヒータ33をオフにすると急速加熱用ヒータ33自体の温度が培養器4内の所定温度以下になる恐れがあり、そのために急速加熱用ヒータ33に結露が発生する。結露が発生すると雑菌などが繁殖し、培養物の培養に支障をきたす恐れがある。そこで培養器4内の温度が所定温度に達した後、急速加熱用ヒータ33自体の温度が培養器4内の所定温度に維持されるように微量の電流を流すなどして制御すれば、結露を防止することができる。
【0023】
本発明で使用する急速加熱用ヒータの電気容量、形状、寸法、個数などは培養装置の容量、形状、大きさ、培養物などによって異なる。
【0024】
なお、上記実施形態の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮するものではない。又、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、前面に開口を有する断熱箱本体と、前記断熱箱本体に開閉自在に取り付けられる断熱扉と、前記開口を開閉自在に閉塞する透明内扉と、前記内扉と断熱箱本体とで囲まれ細胞や微生物等の試料の培養を行う培養器と、培養器に空気等の気体を強制対流させるためのダクト及び循環用送風機と、培養器の湿度を制御するための加湿水を貯溜し前記ダクト内で且つ培養器の底部に配置した加湿皿とを備え、前記断熱箱本体は、金属製の外箱と、金属製の内箱と、外箱と内箱の間で外箱の内側に配置される断熱材と、前記断熱材よりも内側に配置される空気層と、前記内箱の外側およびに断熱扉の内側に前記培養器内を加熱するためのヒータを備えた培養装置において、
前記ダクト内の循環用送風機の下流側に急速加熱用ヒータを配設し、培養器内の温度が所定温度以下に低下した際に作動させて、急速に所定温度に復帰させるように構成としたことを特徴とする培養装置であり、
前記ダクト内の循環用送風機の下流側に急速加熱用ヒータを配設し、培養器内の温度が所定温度以下に低下した場合には、作動させて、短時間で復帰できるうえ、培養器内に温度のむらが発生しないという顕著な効果を奏するので、産業上の利用価値は甚だ大きい。
【符号の説明】
【0026】
1 培養装置
2 断熱箱本体
2A 開口
3 透明内扉
4 培養器
5 棚
6A,6B 小扉
7 断熱扉
8 ガスケット
11 ダクト
11B 底面ダクト
14 循環用送風機
15 加湿皿
16 加湿水
17 ガス供給手段
17A ガス出口
21 外箱
22 内箱
24 断熱材
25 空気層(エアージャケット)
30、31、32 ヒータ
33 急速加熱用ヒータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開口を有する断熱箱本体と、前記断熱箱本体に開閉自在に取り付けられる断熱扉と、前記開口を開閉自在に閉塞する透明内扉と、前記内扉と断熱箱本体とで囲まれ細胞や微生物等の試料の培養を行う培養器と、培養器に空気等の気体を強制対流させるためのダクト及び循環用送風機と、培養器の湿度を制御するための加湿水を貯溜し前記ダクト内で且つ培養器の底部に配置した加湿皿とを備え、前記断熱箱本体は、金属製の外箱と、金属製の内箱と、外箱と内箱の間で外箱の内側に配置される断熱材と、前記断熱材よりも内側に配置される空気層と、前記内箱の外側およびに断熱扉の内側に前記培養器内を加熱するためのヒータを備えた培養装置において、
前記ダクト内の循環用送風機の下流側に急速加熱用ヒータを配設し、培養器内の温度が所定温度以下に低下した際に作動させて、急速に所定温度に復帰させるように構成としたことを特徴とする培養装置。
【請求項2】
培養器内の温度が所定温度に達した後、急速加熱用ヒータ自身の温度が培養器内の所定温度に維持されるように制御して作動されるように構成としたことを特徴とする請求項1記載の培養装置。
【請求項1】
前面に開口を有する断熱箱本体と、前記断熱箱本体に開閉自在に取り付けられる断熱扉と、前記開口を開閉自在に閉塞する透明内扉と、前記内扉と断熱箱本体とで囲まれ細胞や微生物等の試料の培養を行う培養器と、培養器に空気等の気体を強制対流させるためのダクト及び循環用送風機と、培養器の湿度を制御するための加湿水を貯溜し前記ダクト内で且つ培養器の底部に配置した加湿皿とを備え、前記断熱箱本体は、金属製の外箱と、金属製の内箱と、外箱と内箱の間で外箱の内側に配置される断熱材と、前記断熱材よりも内側に配置される空気層と、前記内箱の外側およびに断熱扉の内側に前記培養器内を加熱するためのヒータを備えた培養装置において、
前記ダクト内の循環用送風機の下流側に急速加熱用ヒータを配設し、培養器内の温度が所定温度以下に低下した際に作動させて、急速に所定温度に復帰させるように構成としたことを特徴とする培養装置。
【請求項2】
培養器内の温度が所定温度に達した後、急速加熱用ヒータ自身の温度が培養器内の所定温度に維持されるように制御して作動されるように構成としたことを特徴とする請求項1記載の培養装置。
【図1】
【図2】
【図2】
【公開番号】特開2013−66436(P2013−66436A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207840(P2011−207840)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(592031097)パナソニックヘルスケア株式会社 (28)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(592031097)パナソニックヘルスケア株式会社 (28)
【Fターム(参考)】
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