説明

ヒーターによる加熱装置

【課題】加工しやすい半導体ヒーターを用いた火災のおそれがない加熱装置であって、本来半導体ヒーターが上昇しうる最高到達温度以上に加熱させることのできる半導体ヒーターによる加熱装置を提供する。
【解決手段】ヒーターによる加熱装置は、半導体ヒーターを用いた加熱装置において、金属製の内部管内3に、線状の半導体ヒーター4が1又は2本以上挿入され、金属製の外周管2内に、前記半導体ヒーター4を内挿した内部管4が2本以上収容される。この場合、外周管2と内部管3の間又は/及び内部管3と半導体ヒーター4の間に、熱伝導材5が充填されたものとし、外周管2内に収容される内部管3同士を連結する保持具が取り付けられたものとすることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ヒーターによる加熱装置に関するものであり、より具体的には半導体ヒーターを用いた加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ヒーターは、PTC(positive temperature coefficient)と呼ばれる正の温度特性をもつサーミスタを備えたものであり、通電すると温度上昇するが、同時に電流を通しにくくするため一定の温度を超えて上昇することがないという特徴を有し、自己温度制御ヒーターとも呼ばれている。半導体ヒーターは、少ない消費電力で一定の温度を保つものであり、エネルギーの有効活用を重視する昨今では、最も注目されているヒーターのひとつである。
【0003】
従来の半導体ヒーターは、図6に示すように2本の導線Bを平行に配置し、これらの間にPTC特性を有する架橋性ポリマーに導電性カーボンが混入された発熱体Cを形成した、いわゆる平型半導体ヒーターAが一般的であった。しかしながら、この平型の半導体ヒーターは、後に説明する丸型のものよりも発熱面積が大きいため消費電力量が多く、また物が接触すると火災になりやすく、平型であるために加工も容易でないという問題を抱えていた。
【0004】
そこで特許文献1では、断面視円形の丸型自己温度制御ヒーター(以下便宜上、「丸型半導体ヒーター」という。)を提案している。この丸型半導体ヒーターは、ひも状のコアを中心に据え、この周りに2本の導線Bが配置され、この導線Bの間には絶縁材が配置され、さらにPTC特性を有する導電性ポリマーがコアの周囲に設けられて、これらを絶縁被覆層で円形に覆って小径の円形断面を形成したものである。このように自己温度制御ヒーターを小径の円形断面にすることによって、従来の平型半導体ヒーターAが抱える加工し難いという問題点が解消された。
【0005】
また、特許文献2では、金属製パイプ内に半導体ヒーターを封入した「半導体ヒートパイプ」が提案されている。この「半導体ヒートパイプ」は、電磁波の発生を抑制することを課題として提案された技術であるが、可撓性のある半導体ヒーターは外力に対して脆弱で損傷しやすいという弱点を抱えており、金属製パイプ内に封入することでこの弱点を克服しうるという効果も備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−173195号公報
【特許文献2】特開2001−248981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の丸型半導体ヒーターは、小径の円形断面であることから加工しやすいという利点はあるものの、その主な構成材であるポリマーの強度は脆弱で損傷しやすく、利用場所によっては金属製の保護管内に収容して設置しなければならない。しかしながら、この丸型半導体ヒーターを保護管内に収容した場合、小径断面であるが故に放熱面積が小さくすなわち発熱量が少ないこともあって、丸型半導体ヒーター表面の温度に比べると保護管の表面は極端に低温となり、加熱装置としての機能を有効に発揮できなかった。
一方、保護管に収容せずに直接この丸型半導体ヒーターを例えば床下に設置する場合、繰り返し荷重により丸型半導体ヒーターが損傷し、圧壊するおそれがあるばかりでなく、丸型半導体ヒーターは周辺の床材を集中的に加熱してしまうため火災のおそれもあった。
【0008】
また特許文献2では金属製パイプ内に半導体ヒーターを封入しており、半導体ヒーターが保護され損傷等のおそれはがないという利点はあるものの、後に説明するようにパイプ内に半導体ヒーターを挿入しただけの単管形式では、半導体ヒーターから放出された熱はパイプ内で大きく失われ、その結果パイプ表面では十分に温度が上がらないことがわかった。(特許文献2でも、半導体ヒートパイプを多数並べたヒートパネルを提案している。)
【0009】
本願発明の課題は、加工しやすい半導体ヒーターを用い、火災のおそれがなく、半導体ヒーターを金属製の管で保護できるとともに、半導体ヒーターからの熱量を大きく失うことなく、保護管の大きな放熱面積を利用して周辺温度を効果的に上昇させることのできるヒーターによる加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明のヒーターによる加熱装置は、半導体ヒーターを用いた加熱装置において、金属製の内部管内に、線状の半導体ヒーターが1又は2本以上挿入され、金属製の外周管内に、前記半導体ヒーターを内挿した内部管が2本以上収容されたものである。
【0011】
本願発明のヒーターによる加熱装置は、請求項1記載のヒーターによる加熱装置において、外周管と内部管の間、又は/及び内部管と半導体ヒーターの間に、熱伝導材が充填されたものである。
【0012】
本願発明のヒーターによる加熱装置は、請求項1又は請求項2記載のヒーターによる加熱装置において、外周管内に収容される内部管同士を連結する保持具が取り付けられたものである。
【発明の効果】
【0013】
本願発明のヒーターによる加熱装置には次のような効果がある。
(1)半導体ヒーターから放出される熱は、一旦外周管内で蓄熱された上で外周管の表面から放熱されるため、半導体ヒーターから放出された熱が大きく失われることなく効率よく周辺温度を上昇させることができる。
(2)上記の結果、効率的に電力を消費することができる。
(3)半導体ヒーターは金属製の内部管で保護され、さらにその外周を金属製の外周管で保護されているので、不測の荷重が作用しても半導体ヒーターが損傷等するおそれがない。(4)金属製の二重管式を採用しているので、火災になる心配がない。
(5)線状の半導体ヒーターを使用するので、いわゆる平型半導体ヒーターに比べ加工し易い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本願発明のヒーターによる加熱装置の内部を示す斜視図。
【図2】(a)は、本願発明のヒーターによる加熱装置の断面図。(b)は、熱伝導材が充填された本願発明のヒーターによる加熱装置の断面図。(c)は、保持具が取り付けられた本願発明のヒーターによる加熱装置の断面図。
【図3】(a)は、1本の半導体ヒーターが外周管に直接収容されたケースを示す断面図。(b)は、1本の半導体ヒーターが内部管に挿入され、これが外周管に収容されたケースを示す断面図。(c)は、1本の半導体ヒーターが内部管に挿入され、これが外周管に収容され、さらに外周管の空隙部分に熱伝導材が充填されたケースを示す断面図。(d)は、外周管に、半導体ヒーターが内挿された内部管が2本収容されたケースを示す断面図。(e)は、外周管に、半導体ヒーターが内挿された内部管が2本収容され、さらに外周管の空隙部分に熱伝導材が充填されたケースを示す断面図。(f)は、外周管に、半導体ヒーターが内挿された内部管が3本収容され、さらに外周管の空隙部分に熱伝導材が充填されたケースを示す断面図。
【図4】(a)は、植物の周辺温度を加温しながら栽培する従来方法を示す説明図。(b)は、本願発明のヒーターによる加熱装置を用いて植物の周辺温度を加温しながら栽培する方法を示す説明図。
【図5】(a)は本願発明のヒーターによる加熱装置を利用してロードヒーティングを行う方法を示す断面図。 (b)は、本願発明のヒーターによる加熱装置を利用してロードヒーティングを行う方法を示す平面図。 (c)は、本願発明のヒーターによる加熱装置を利用してロードヒーティングを行う方法を示す部分詳細平面図。
【図6】従来の平型半導体ヒーターを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態)
本願発明のヒーターによる加熱装置の実施形態を図1に基づいて説明する。図1は、加熱装置1の内部構造を示す斜視図である。この図に示すように加熱装置1は、外周管2の内部に複数本(図では3本)の内部管3が収容されており、さらにこの内部管3にはそれぞれ半導体ヒーター4が内挿されている。
【0016】
半導体ヒーター4は、図2(a)に示すように断面が円形であり、断面の径に対してその長さが極端に長い、いわゆる線状(ロープ状、ひも状)の形状となっている。また半導体ヒーター4は、導線と発熱体から構成されており、導線には銅線をはじめ、銀線、金線、アルミ線、白金線、合金線、各種メッキ線など、導電性に富む材質のものが用いられる。
【0017】
発熱体は、PTC特性を備えたポリマーと導電性のあるカーボンから構成されており、このポリマーには絶縁性の架橋性ポリマーが通常用いられ、導電性カーボンにはカーボンブラックが用いられている。ポリマーと導電性カーボンからなる発熱体と導線の外周を被覆層で覆い、半導体ヒーター4は形成されている。この被覆層の材質としては、テフロン(登録商標)及びゴムの合成材、テフロン(登録商標)及びシリコンの合成材、その他シリコン材が利用されている。なお、半導体ヒーター4は、市販されているものを用いることができる。
【0018】
半導体ヒーター4の導線に通電すると、導電性カーボンを通じて発熱体内にも電気が流れ、このときPTC特性を備えたポリマーは温度上昇を始める。ポリマーは、温度上昇とともに膨張を始め導電性カーボンの通電面積を圧迫していき、最終的には導電性カーボンは通電できない状態となり、これ以上ポリマーは温度上昇しなくなる。ポリマーの温度が下降すると、ポリマーが収縮し導電性カーボンの通電面積が回復されるため、再びポリマーは温度上昇する。このように、半導体ヒーター4は特別な制御を必要とせず、一定の温度を保ち続けることができるという特性を備え、自己温度制御ヒーターと呼ばれる所以でもある。
【0019】
この維持される一定温度、換言すれば半導体ヒーター4の最高到達温度は、半導体ヒーター4の規格によって定められ、例えば市販されている半導体ヒーター4のうち20W/mのものは55℃、30W/mでは70℃、40W/mでは90℃、50W/mでは130℃である。
【0020】
図1に示すように、半導体ヒーター4は金属製の内部管3の内部に挿入されている。この内部管3は熱伝導率の高い材質のものがより好ましく、たとえばアルミ製の管が好適である。内部管3は半導体ヒーター4を収容できる内空面積が必要であり、例えば半導体ヒーター4の外径が8mmの場合、内部管3の内径は10mm程度が必要である。図1では、内部管3に1本の半導体ヒーター4を挿入しているが、これに限らず内径の大きい内部管3の中に複数の半導体ヒーター4を挿入することもできる。
【0021】
半導体ヒーター4が内挿された内部管3は、さらに金属製の外周管2の内部に収容されている。この場合、半導体ヒーター4が内挿された内部管3を2本以上外周管2内に収容(図では3本収容)すると、後に説明するように外周管2内での蓄熱効果が飛躍的に向上する。この外周管2には、汎用的な一般構造用炭素鋼管(通称、単管パイプ)の利用が可能で、汎用品を使うことで製品コストを抑えることができる。一般的な単管パイプの内径は43.8mm(外径48.6mm)であり、アルミ製の内部管3(外径12mm)3本を十分収容することができる。なお、外周管2として熱伝導率の高い例えばアルミ製の管を用いると、製品のコストは上がるものの発熱効率が向上し、より性能の高い加熱装置1とすることもできる。
【0022】
図2(a)に示すように、半導体ヒーター4が内挿された内部管3を収容しても、外周管2の内部にはなお空隙が残る。この空隙部分には、図2(b)に示すように熱伝導材5を充填(中詰め)することができる。これにより半導体ヒーター4からの放熱は、熱伝導材5を介してより効率的に外周管2の外周へ伝達されることが期待できる。この熱伝導材5は、熱伝導率が高く、かつ外周管2内の空隙部の複雑な形状にも追随して変形しうるものが適しており、一例としてアルミ不織布が挙げられる。その他、鉄鋼スラグや、やや高価ではあるがアルミ箔なども熱伝導材5として用いることができる。
【0023】
熱伝導材5は、外周管2内部の空隙部に限らず、内部管3内に半導体ヒーター4を挿入した後に残る空隙部分に充填(中詰め)することもできる。特に、半導体ヒーター4の外径に比して内部管3の内径が比較的大きい場合には有効である。
【0024】
外周管2内部には複数の内部管3を収容するため、内部管3の本数分だけ内部管3の挿入作業が生じることとなる。とくに外周管2の管長が比較的長いと、この挿入作業を繰り返し行うことは手間や時間がかかり、ひいては製品コストを引き上げる一因となる。あるいは先に挿入した内部管3が撓んだり、折曲がったり、種々変形することによって、後から挿入する内部管3が入りにくいという問題もある。このような場合、図2(c)に示すように内部管3に保持具6を取り付けることができる。保持具6で複数(図では3本)の内部管3を連結することによって、内部管3同士の間隔を維持し(いわゆるスペーサーの機能)、しかも複数の内部管3を束ねた状態にすることができるので、内部管3の挿入作業も1回で完了し、後続の内部管3が挿入し難いといった煩わしさも解消される。
【0025】
この保持具6は、内部管3の軸方向に対して間隔をあけて取り付け、樹脂製や金属製などとすることができる。内部管3への取り付けは、保持具6が金属製の場合は溶接により行い、樹脂製の場合は接着により行いあるいは取り付け部を環状にして内部管3の周囲を掴むように把持する構造としてもよい。保持具6を内部管3へ取り付けるにあたっては、その他の従来技術を用いても構わない。前記のとおり、保持具6は内部管3を外周管2内に挿入する前に取り付けることが望ましいが、内部管3を挿入した後に手や治具が届く範囲で保持具6を取り付けてもよい。
【0026】
(本願発明のヒーターによる加熱装置の検証)
本願発明の発明者は、半導体ヒーター4を金属製管内に収容すると蓄熱効果が期待できるという仮説を立て、半導体ヒーター4と金属製の管を種々組み合わせて実験を重ねた。その結果、二重管形式で半導体ヒーター4を収容すると蓄熱効果が発揮され、さらに外周管2内に半導体ヒーター4が内挿された内部管3を2本以上収容すると蓄熱効果が飛躍的に高まり、外周管2の表面温度上昇が他例に比べ顕著であるという事実を突き止めた。以下、その実証実験について図3(a)〜(f)を用いて説明する。
【0027】
実験には以下の材料を用いた。
・半導体ヒーター4:40W/m、外径8mm、最高到達温度90℃(表面温度)
・内部管3:アルミ製、内径は10mm(外径12mm)
・外周管2:一般構造用炭素鋼管、内径は43.8mm(外径48.6mm)
【0028】
図3(a)は、1本の半導体ヒーター4を内部管3に挿入することなく、直接外周管2に収容したケースである。これをケース1とする。
図3(b)は、1本の半導体ヒーター4を内部管3に挿入し、これを外周管2に収容したケースである。これをケース2とする。
図3(c)は、1本の半導体ヒーター4を内部管3に挿入し、これを外周管2に収容し、さらに外周管2の内部の空隙部分に熱伝導材5としてアルミ不織布を充填(中詰め)したケースである。これをケース3とする。
図3(d)は、半導体ヒーター4が内挿された内部管3を2本、外周管2に収容したケースである。これをケース4とする。
図3(e)は、半導体ヒーター4が内挿された内部管3を2本、外周管2に収容し、さらに外周管2の内部の空隙部分に熱伝導材5としてアルミ不織布を充填(中詰め)したケースである。これをケース5とする。
図3(f)は、半導体ヒーター4が内挿された内部管3を3本、外周管2に収容し、さらに外周管2の内部の空隙部分に熱伝導材5としてアルミ不織布を充填(中詰め)したケースである。これをケース6とする。
【0029】
常温の実験室内で、上記6ケースそれぞれについて半導体ヒーター4に100Vを印加した。通電後、半導体ヒーター4の表面温度は90℃になるが、これが如何に熱伝播されるかを調べるため、外周管2内部の空隙部分と外周管2の表面で温度を計測した。外周管2内部の空隙部分を温度計測することで、蓄熱効果の優劣も測ることができる。なお、温度計測はいずれも通電後約50分後である。以下、表1に結果を示す。
【0030】
【表1】

【0031】
ケース1の結果をみると、半導体ヒーター4の表面温度は90℃に達したにもかかわらず、外周管2の表面では45.5℃まで大きく温度が下がっている。これは、半導体ヒーター4から放出された熱が外周管2の表面に達するまでに、外周管2の内部で大きく失われたものと考えられる。
【0032】
一方、ケース2の結果をみると、半導体ヒーター4を内部管3に挿入しただけであるにもかかわらず、外周管2の表面温度がケース1の45.5℃よりも52.3℃と7℃ほど上昇している。特に注目すべきは、外周管2の内部が78.6℃(ケース1)から92.4℃(ケース2)と著しく上昇している事実である。これは、半導体ヒーター4を内部管3に挿入しさらに外周管2で覆った、いわゆる二重管形式にすると蓄熱効果が高まることを示している。
【0033】
ケース4およびケース5は、2本の内部管3を外周管2に収容したケースである。これをみると、外周管2の内部、表面ともに、ケース2や3に比べ飛躍的に温度が上昇していることがわかる。これは、ケース2におけるケース1からの温度上昇(外周管2内部で78.6℃→92.4℃)と比較すると、ケース4におけるケース2からの温度上昇(外周管2内部で92.4℃→120.7℃)が極めて顕著であることがわかる。
【0034】
以上の結果から、外周管2の中に、半導体ヒーター4が内挿された内部管3を2本収容すると飛躍的に蓄熱効果が上がることがわかる。なお、ケース4(内部管3を2本)とケース6(内部管3を3本)とを比較しても、外周管2内部の温度において大きな変化はみられなかった。言い換えると、外周管2に収容される内部管3の本数が多いほど蓄熱効果が上がるわけではなく、内部管3の本数を1本から2本に増加させたときにはじめて劇的に効果が現れる、ということを証明するものである。すなわち蓄熱効果を発揮するためには、半導体ヒーター4が内挿された内部管3を外周管2に収容する二重管形式であって、外周管2の中には複数の内部管3を収容する、ということが重要な技術要素であることが証明された。
【0035】
なお、ケース4(アルミ不織布なし)とケース5(アルミ不織布あり)を比較しても、外周管2の表面温度において大きな変化はみられなかった。熱導電性の高いアルミ不織布を充填したほうが外周管2の表面に熱を伝達しやすいはずであるが、アルミ不織布を充填しないケース4と結果に大差がないということは、ケース4の蓄熱効果がアルミ不織布による熱伝導効果と同等であることを証明するものである。
【0036】
(ヒーターによる加熱装置の使用例1)
本願発明のヒーターによる加熱装置の第1の使用例を図4(a)、(b)に基づいて説明する。図4(b)は、本願発明のヒーターによる加熱装置を利用して植物を栽培する方法を示すものである。
【0037】
従来、植物7の周辺温度を加温しながら栽培する場合、図4(a)に示すように、培養土8(培養液)内に塩化ビニル管(通称、塩ビ管)9を埋設し、この中に15〜18℃の温水を循環させる加温方法を採用していた。しかしながら、この従来手法では、水を温水にするためのヒーターに加え、水を循環させる圧力装置が必要となり、その結果、設備に掛かる初期費用や、設備運転のための燃料費、維持費といった多くの費用が掛かることとなり、植物の出荷価格を高騰させる要因となっていた。
【0038】
図4(b)に示すように、培養土8内の塩ビ管9内に本願発明の加熱装置1を挿入し、植物7の周辺温度を加温しながら栽培することができる。この方法によれば、従来手法から大きな設備変更を伴うことなく、設備運転のための燃料費が電力消費だけに抑えられ、植物の出荷価格を下げることができる。さらに、商用電力に頼らず太陽光発電を利用することも可能である。
【0039】
なお、加熱装置1に使用する半導体ヒーター4の規格は、栽培する植物や栽培時期、ハウスの状況など、種々の条件を勘案したうえで上昇させる温度を設計し、適宜選択することができる。
【0040】
(ヒーターによる加熱装置の使用例2)
本願発明のヒーターによる加熱装置の第2の使用例を図5(a)〜(c)に基づいて説明する。図5(a)〜(c)は、本願発明のヒーターによる加熱装置を利用してロードヒーティングを行う方法を示すものである。
【0041】
図5(a)は、アスファルト舗装の路面下に加熱装置1を設置した状態を示す断面図である。アスファルト舗装の表層10の下に加熱装置1を保護する保護層11が配置され、この中に複数(図では8列)の加熱装置1が、例えば10cm間隔で配列されている。この保護層11は3層に分かれており、上層と下層は輪荷重等に対抗するためコンクリートで構築され、中間の加熱装置1が配置された層は熱伝導性の高い材質で構築されている。なお上層と中間層、下層と中間層の間には断熱シートを設置することが望ましい。
【0042】
8列の加熱装置1は、保護層11内でそれぞれ独立して配列して、個々に通電する方法を採っても良いが、図5(b)に示すように、外周管2及び内部管3は独立に配列するが内部管3に挿入する半導体ヒーター4は1本を折り返して使用する方法を採用しても良い。この場合、半導体ヒーター4に通電する電極を低減させる利点がある。
【0043】
なお、外周管2や内部管3も折り返しの構造とすることもできるが、金属性であることから加工に手間がかかるため、図5(c)に示すように半導体ヒーター4のみを曲線状に曲げて折り返した構造が望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本願発明のヒーターによる加熱装置は、家庭用暖房設備としての利用をはじめ、職場、学校、市町村役場などの公共施設、工場、車両や旅客機や船舶などの乗り物、商業施設、老健施設、体育施設、牛舎や豚舎や鶏舎といった家畜小屋、動物園、水族館、養魚場、プール、温浴施設、などあらゆる屋内用の暖房設備として利用することができる。
また、道路凍結を防止するためのロードヒーティングをはじめ、駐車場、鉄道ホーム、岸壁、飛行場などの凍結防止設備として利用するほか、屋根などの融雪設備として利用することもできる。
さらに、野菜や花卉の栽培、あるいは苗床などのためのハウス温室、果樹園、植物園などの暖房設備として利用するほか、野菜、果物、花、肉類、魚介類、海草、米や豆といった穀類の乾燥設備として利用するなど、様々な加熱装置として応用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 加熱装置
2 外周管
3 内部管
4 半導体ヒーター
5 熱伝導材
6 保持具
7 植物
8 培養土(培養液)
9 塩化ビニル管(塩ビ管)
10 (アスファルト舗装の)表層
11 保護層
A 平型半導体ヒーター
B 導線
C 発熱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ヒーターを用いた加熱装置において、
金属製の内部管内に、線状の半導体ヒーターが1又は2本以上挿入され、
金属製の外周管内に、前記半導体ヒーターを内挿した内部管が2本以上収容されたことを特徴とするヒーターによる加熱装置。
【請求項2】
請求項1記載のヒーターによる加熱装置において、
外周管と内部管の間、又は/及び内部管と半導体ヒーターの間に、熱伝導材が充填されたことを特徴とするヒーターによる加熱装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のヒーターによる加熱装置において、
外周管内に収容される内部管同士を連結する保持具が取り付けられたことを特徴とするヒーターによる加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−96430(P2011−96430A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247422(P2009−247422)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(309034858)
【Fターム(参考)】