説明

ヒートシンク

【課題】ファン等の空気交換手段の負荷を減らすことが可能でかつ安価に製造できる、強制空冷式ヒートシンクを提供すること。
【解決手段】平板状のベース板11に複数の平板状のフィンが櫛形に配置された櫛形ヒートシンクであって、前記フィンのうちの一部は前記ベース板に固定された固定フィン12であり、前記フィンのうちの別の一部は可動フィン13であり、前記固定フィン12と可動フィン13とがバイメタル14を介して接続されている。チップが比較的低温である間は、可動フィン13を固定フィン13の近傍に移動させて、空気交換手段に負荷がかからない状態とする。他方、高温になったら、可動フィン12を固定フィン13間の中央付近に移動させ、空気循環経路を狭くして放熱効率を高くした状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高発熱量の電子部品などを効率よく冷却することを目的としたヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
CPUに代表される電子計算機用の半導体素子(以下チップと呼ぶ)を用いる場合、その発熱量に応じた熱対策が必要となる。放熱の方法にはペルチェ効果を利用したものやヒートパイプを組み合わせたもの等さまざまであるが、いずれも最終的には空気、水などの冷却流体に放熱するようになっており、大きくは空冷式と液冷式に分けることができる。空冷式は、熱伝導性の優れた金属(アルミニウムや銅)を用い、周囲の空気との接触面積が広くなるような形状に形成されたフィンを通して空気中に放熱するものである。液冷式は、発熱体にごく近い位置に設置されたパイプ等の中を流れる液体へ放熱するものである。後者は前者に比べ高い冷却能力を有するが、高価である、メンテナンスに労力を要するなどの理由から、一般的には可能な限り前者が選択される。
空冷式の中でも、ヒートシンク周囲の空気の交換を、自然対流に任せる自由対流熱伝達(以下、自然空冷と呼ぶ)により行なうものと、ファン等により強制的に入れ替える強制対流熱伝達(以下、強制空冷と呼ぶ)により行なうものとに分類でき、後者のほうが高い放熱性能を有している。
強制空冷を行なう場合のファン等の空気交換手段は、周囲に空気循環の障害物となるものが少ないほうが負荷は小さくなり、逆に、周囲に空気循環の障害物となるものが多いと負荷は大きくなる。負荷が大きい状態で使用し続けると、ファン等の空気交換手段の寿命が短くなるため、なるべく負荷の小さい状態でファン等の空気交換手段を使用できることが望ましい。
例えば、電源投入直後でチップがまだあまり熱くなっておらず、ヒートシンクからの放熱がそれほど必要ではない間は、空気循環の障害物になるヒートシンク自体のフィンの数や向きを調節して空気交換手段にあまり負荷がかからない状態とし、チップが熱くなってきたら空気交換手段に負荷はかかるが放熱効率を高くした状態とすることができれば、ファン等の空気交換手段の寿命を延ばすことができる。
特許文献1には、ヒートシンクに導かれる風量を調節するために、ヒートシンクの排気口側に可動フィンを設けてその角度を調整するという技術が記載されている。
しかしながら、特許文献1の可動フィンは制御機構により動作制御されていて特許文献1の高温試験装置のような用途には向いていると考えられるが、実際の電子計算機等の製品中で使用されるようなヒートシンクとしては、より簡便な仕組みで安価に製造できることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3339484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の問題点に鑑みなされたものであって、ファン等の空気交換手段の負荷を減らすことが可能でかつ安価に製造できる、強制空冷式ヒートシンクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明の請求項1においては、
平板状のベース板の主面の一方に複数の平板状のフィンが櫛形に配置された櫛形ヒートシンクであって、
前記平板状のフィンのうちの一部は前記ベース板に固定された固定フィンであり、
前記平板状のフィンのうちの別の一部は可動フィンであり、
前記固定フィンと可動フィンとが、温度によって両者の距離を変化させる接続板を介して接続されていることを特徴とするヒートシンク、
としたものである。なお、このような接続板としてはバイメタルや形状記憶合金の薄板が使用できる。
【発明の効果】
【0006】
本発明のヒートシンクによれば、チップがまだあまり熱くなっておらず、従ってヒートシンク全体および接続板が比較的低温である間は、可動フィンを固定フィンの近傍に移動させることにより、空気循環経路を広くして空気交換手段にあまり負荷がかからない状態とできる。また、このためその騒音も小さいという効果がある。
また、チップが熱くなって、従ってヒートシンク全体および接続板が高温になったら、可動フィンを固定フィン間の中央付近に移動させることにより、空気循環経路を狭くして空気交換手段に負荷はかかるが放熱効率を高くした状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施形態で、比較的低温の状態を示す模式図
【図2】本発明の第1の実施形態で、高温の状態を示す模式図
【図3】本発明の第2の実施形態で、比較的低温の状態を示す模式図
【図4】本発明の第2の実施形態で、高温の状態を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のヒートシンクの実施形態について説明する。
図1および図2は、本発明のヒートシンクの第1実施形態の一例を示した模式図である。図1はヒートシンクが比較的低温のときの状態を示したもので、図1(A)は上面図、図1(B)は側面図である。また、図2はヒートシンクが高温になったときの状態を示したもので、図2(A)は上面図、図2(B)は側面図である。
本実施形態のヒートシンク10は、通常の櫛形ヒートシンクと同様にベース板11の一方の面に複数の固定フィン12が一体的に形成されており、さらに固定フィン12には接続板14を介して可動フィン13が接続されている。
空気循環効率を良くするためには、固定フィン12と可動フィン13は互いに略平行になるよう配置しておくことが望ましい。従って固定フィン12と可動フィン13を接続する接続版14は、1組につき2箇所以上あることが望ましい。
可動フィン13は、固定フィン12と同様の長方形の板状であり、その側面をベース板11の面と接触させた状態で配置する。これは可動フィン13にも熱をよく伝えるためである。
接続板14はバイメタルや形状記憶合金からなる薄板であり、曲がった状態でその片方の端部が固定フィン12に、もう片方の端部が可動フィン13に固定されている。ヒートシンク10が比較的低温の時には図1に示すように強く曲がった状態で、可動フィン13を固定フィン12に近い位置で保持する。
一方、ヒートシンク10が高温になった時には図2に示すように、接続板14は開いた状態となり、可動フィン13を固定フィン12から遠い位置で保持する。このとき、可動フィン13が隣の固定フィンとの間の略中央に来るように、接続板14の長さや開き具合を調節しておくのが望ましい。
図1および図2においては、接続板14は折り目がついた状態で折り曲げられているものの場合を示しているが、折り目がない湾曲状態のものを用いてもかまわない。また、接続板14はヒートシンク10の内側に折り込まれている場合を示しているが、設置スペース
の周囲に余裕があればヒートシンク10の外側に出ていてもかまわない。
また、図1および図2においては、接続板14が、ヒートシンク10の各フィンの側面がわの端部に取り付けられている場合を示しているが、ヒートシンク10の各フィンの上面がわの端部に取り付けられていてもかまわない。
図3および図4は、本発明のヒートシンクの第2実施形態の一例を示した模式図である。図3はヒートシンクが比較的低温のときの状態を示したもので、図3(A)は上面図、図3(B)は側面図である。また、図4はヒートシンクが高温になったときの状態を示したもので、図4(A)は上面図、図4(B)は側面図である。
可動フィン13は、それぞれ、個別接続板17により共通の全体接続板18に接続されている。全体接続板18の端部は、可動接続板15に接続されており、さらに可動接続板15は固定接続板16により所定の固定フィン12aと接続されている。この可動接続板15は、バネやゴムなどの伸縮可能な弾性体から構成されており、他方、個別接続板17、全体接続板18、固定接続板16は、実質的に伸縮不可能な剛性材料から構成されている。
そして、固定接続板16の接続された固定フィン12aは、バイメタルから構成される接続板14を介して所定の可動フィン13が接続されている。この接続板14としては、前述のとおり、バイメタルの他、形状記憶合金などが使用できる。
この実施形態にあっては、ヒートシンク10が比較的低温の時には図3に示すように、接続板14が強く曲がった状態である。このため、固定フィン12aに接続された可動フィン13を固定フィン12に近い位置で保持する。
一方、ヒートシンク10が高温になった時には図4に示すように、接続板14は開いた状態となり、固定フィン12aに接続された可動フィン13を固定フィン12から遠い位置に移動させる。
【0009】
そして、この可動フィン13は個別接続板17により共通の全体接続板18に接続されており、その他の可動フィン13も共通の全体接続板18に接続されているから、固定フィン12aに接続された可動フィン13の移動に伴い、すべての可動フィン13が固定フィン12aから遠い位置に移動する。このとき、可動接続板15が伸縮するから、可動フィン13には無理な力がかかることなくスムーズに移動することができる。
【符号の説明】
【0010】
10 櫛形ヒートシンク
11 櫛形ヒートシンクのベース板
12,12a 櫛形ヒートシンクの固定フィン
13 可動フィン
14 接続板
15 可動接続板
16 個別接続板
18 全体接続板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状のベース板の主面の一方に複数の平板状のフィンが櫛形に配置された櫛形ヒートシンクであって、
前記平板状のフィンのうちの一部は前記ベース板に固定された固定フィンであり、
前記平板状のフィンのうちの別の一部は可動フィンであり、
前記固定フィンと可動フィンとが、温度によって両者の距離を変化させる接続板を介して接続されていることを特徴とするヒートシンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−199371(P2010−199371A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43715(P2009−43715)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】