説明

ヒートシール装置

【課題】ヒータのフィルムと接する面の温度を正確に知り得ることができ、シールする対象物とフィルムとの溶着部に非溶着部分を生じることがないヒートシール装置を提供する。
【解決手段】被包装物を包被するフィルムをヒータ部10の熱によって溶着しシールするヒートシール装置であって、前記ヒータ部は、発熱体のフィルムと対向する一方側と、該一方側と反対側の他方側とに、略同一の熱伝導率の熱伝導媒体25,30を配置し、更に、他方側の熱伝導媒体30の温度を検知する温度センサ29を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被包装物を包被するフィルムを熱溶着して密閉の包装形態を確立するヒートシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製の袋体に被包装物を収容し、その袋体の開口部をヒータ部で挟み溶着してシール(封止)する、所謂、ヒートシール装置がある。そして、このヒートシール装置としては、クリップ形状をしたハンディタイプから、卓上タイプまで各種存在する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、例えば手で操作するハンドヒートシール装置等があるが、例えば、10秒間圧着後、数秒間を置いてから再びシール作業をする等、シールする時間が予め決められている。しかし、その時間を守らないと、一般的な熱源である例えばニクロム線等から発する熱が蓄熱して高温になってしまい、シールした際にフィルムに穴が開いてしまう場合がある。そのため、フィルムと接する面の温度を管理することが考えられる。そして、例えば、フィルムと接する面の温度を直接測ることも考えられ、フィルムと接する面に温度を計測するための部材を設けると、該部材によりフィルムが対象物と完全に接しない状態が発生し、非溶着部ができてしまう恐れがある。そして、その箇所から被包装物である、例えば肉や魚の汁等がしみ出てしまう恐れがある。
【0004】
この問題に対し、熱源のフィルムと面する側とは反対側に、例えば絶縁体等を設けて温度センサにより温度を検知することも考えられるが、フィルムと接する面とは温度差が生じてしまい正しい温度を検知することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−156044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の技術が有する問題に鑑みてなされたもので、ヒータのフィルムと接する面の温度を正確に知り得ることができ、シールする対象物とフィルムとの溶着部に非溶着部分を生じることがないヒートシール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明のヒートシール装置は、被包装物を包被するフィルムをヒータ部の発熱体の熱によって溶着しシールするヒートシール装置であって、前記発熱体を挟んでフィルムと面する一方側と、該一方側と反対側の他方側とに熱伝導媒体を配置し、該他方側の熱伝導媒体の温度を検知する温度検知手段を設けたことを特徴とする。
【0008】
前記ヒータ部を構成する発熱体としては、板状発熱体(例えば、ニクロム帯)、線状発熱体(例えば、ニクロム線)、或いはセラミック材料の表面に発熱体を薄膜状に蒸着又は接着固定したもの等、何れでもよい。
また、前記発熱体の一方側及び他方側に熱伝導媒体を被覆することで、温度検知手段による温度測定面の環境が、フィルムの熱溶着面(ヒータ部表面)とより同じになるので、より正確にフィルムの熱溶着面の温度を計測できる。また、フィルムと接する面は熱伝導媒体と接するようになるので、フィルムと均一に接するようになり、非溶着部分がなくなり、肉汁等が漏れることがない。
そして、前記一方側、他方側の熱伝導媒体の熱伝導率を略同じにすることは、熱的に略対称となるのでフィルムの熱溶着面と接する面の温度を検知する上でより好適である。
しかし、必ずしも略同一の熱伝導率でなくても、一方側と他方側の熱伝導媒体の熱伝導率が異なる場合には、熱伝導率の差を補うために、例えば他方側の熱伝導媒体の表面積を変える、あるいは熱伝導媒体自体の厚みを変える等することで、フィルムの熱溶着面の温度と同視できる温度を、他方側の熱伝導媒体にて検知することが可能になる。
温度検知手段としては、この種物品に一般的に使用される今日周知のもの、例えば、半導体温度センサ(例えば、バイポーラトランジスタのベースエミッタ間電圧や、ダイオード順方向電流が持つ温度特性を利用して温度を測定する。)、熱電対、白金測定抵抗体等が挙げられるが、小型化という点では特に半導体センサが好ましい。この温度検知手段の検出信号で該ヒータ部への通電/非通電が制御され、ヒータ部の表面温度を一定の温度に保つことができる。
また、温度検出手段である温度センサの取り付け位置は熱伝導媒体の長さ方向の範囲内であればどこでもよい。
また、温度検知の仕方は問わず、熱伝導媒体に対し接触、非接触のいずれの方式でもよい。
【0009】
また、前記発熱体をサンドイッチ状に挟む熱伝導媒体は、略同一の熱伝導率のものを使用する場合、その熱伝導率は発熱体の熱伝導率より高い熱伝導率の材料を使用するのが好適である。一般的な熱源としてニクロム線があるが、熱伝導媒体としてはそれよりも熱伝導率の高い例えば、アルミナ系のファインセラミックスシート、或いは窒化アルミニウム系、炭化ケイ素系のセラミックス等が挙げられる。そして、前記発熱導体が板状(帯状)である場合は、熱伝導媒体も発熱導体と同様板状(帯状)に形成し、安定して積層し得るようにする。
【0010】
これにより、たとえニクロム線のように熱源自体の熱伝導率が悪く温度のバラツキがあったとしても、それよりも熱伝導率の良い熱伝導媒体が覆うことにより、フィルムと接するヒータ部の全域(熱伝導媒体の全域)において表面温度がより均一になるよう作用し、表面温度にバラツキが生じるのを防止できる。それにより、シール部分に溶着不良が発生するのを防止できる。
【0011】
また、前記発熱体を挟む表裏に位置する熱伝導媒体それぞれは、材質の同一性に加えて、形状、例えば板厚、外形寸法等も同一とする。
その場合は、発熱体から表裏の熱伝導媒体への熱の伝わりが略同じになり、より正確に熱溶着面の温度を管理することができる。
【0012】
温度検知手段である温度センサは他方側の熱伝導媒体側に配置するが、より安定した温度検知をする場合、前記ヒータ部を支持する取付台に前記温度センサを収容する凹部を形成し、その凹部内に、弾性部材を介して温度センサを収容し、該温度センサが弾性部材の弾発力で熱伝導媒体に圧接されるようにする。
前記弾性部材としては、コイルスプリング、板バネ、ゴム材、樹脂製スポンジなど何れでもよい。
【0013】
上記手段によれば、温度センサは弾性部材によって熱伝導媒体に押圧接されるので、温度センサと熱伝導媒体の接触状態を維持でき、安定して確実に温度を検知することができる。また、温度センサと弾性部材は凹部に収容されているため、温度センサと弾性部材が移動し、紛失するのを防止できる。
【0014】
前記ヒータ部を備えるヒートシール装置は、樹脂製袋体の開口部を挟んで熱溶着封止するクリップ形状のハンドシーラー、或いは卓上型のヒートシール装置等、その形態、大きさは問わない。また、包装形態も、前記袋の開口部を熱溶着封止する形態、収納凹部を有したトレイの側壁上部(凹部上面)にフィルムを熱溶着するトップシール形態等、何れの包装形態にも対応可能である。例えば、下地材に載った被包装物を覆うフィルムの周囲を、前記下地材に溶着するよう、前記ヒータ部を平面視環状に配置したヒートシール装置とする。
上記手段によれば、被包装物を覆うフィルムの周囲を下地材に確実に熱溶着することができる。よって、肉や魚等の生鮮食品で汁が出るような物品のシール包装に好適なヒートシール装置を提供できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のヒートシール装置は請求項1記載の構成により、温度検知手段による温度測定面の環境が、フィルムの熱溶着面(ヒータ部表面)とより同じになるので、より正確にフィルムの熱溶着面の温度を計測できる。また、フィルムと接する面は熱伝導媒体と接するようになるので、フィルムと均一に接するようになり、非溶着部分がなくなり、被包装物の汁等が漏れることがない。
また、請求項2記載の構成により、熱伝導媒体の熱伝導率が略同じであるので、温度測定面は熱的に略対称となるため、熱伝導媒体の厚みを変える等の補正等することなく、正確に熱溶着面の温度を管理することができる。
また、請求項3記載の構成により、熱伝導媒体は略同形状であるので熱は同じように伝わり、より正確に熱溶着面の温度を管理することができる。
【0016】
また、請求項4記載の構成により、温度センサと熱伝導媒体の接触状態を確実に維持でき、安定して確実に温度を検知することができる。また、温度センサと弾性部材は凹部に収容されているため、温度センサと弾性部材が移動し、紛失するのを防止できる。
また、請求項5記載の構成により、被包装物を覆うフィルムの周囲を下地材に確実に熱溶着することができる。よって、肉や魚等の生鮮食品で汁が出るような物品のシール包装に好適なヒートシール装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るヒートシール装置の実施の一例を示す外観斜視図。
【図2】同側面図。
【図3】ヒータ部を備えた保持手段を示す斜視図。
【図4】同一部切欠底面図。
【図5】(a)は保持手段の下面にフィルムを吸着保持した状態の断面図、(b)は下地材載承手段を上昇させて下地材にフィルムを溶着する状態の断面図。
【図6】(a)はヒータ部の一部切欠正面図、(b)は(a)図のX−X線に沿える拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るヒートシール装置の実施の形態の一例を図面に基づいて説明する。
図1乃至図2に示すヒートシール装置Aは、平板状の下地材上に被包装物Wを載せ、その被包装物Wにストレッチフィルムを被せ、被包装物Wより外側のフィルム縁を前記下地材表面に熱溶着してシール包装する装置で、被包装物Wに被せるフィルムの引き出し、シール加工の上下動作をモータ駆動によって行う電動駆動タイプのヒートシール包装装置を示す。
そのヒートシール装置Aは、基台1上に、被包装物Wが載った下地材12を載承保持し、下地材12の周縁と対応する周囲位置に、ヒータと対応するヒータ受け部を有する下地材載承手段2と、被包装物Wが載った下地材12を、前記下地材載承手段2に供給する案内手段3と、前記案内手段3上の下地材12を前記下地材載承手段2に載せ換える移載手段4と、前記下地材12上の被包装物Wに被せるフィルムを繰り出すフィルムロール配置部5と、前記フィルムロール配置部5に配置したフィルムロール6からフィルム6aを所定長さ引き出すフィルムフィード手段7と、前記フィルムフィード手段7によって引き出したフィルム6aを前記下地材載承手段2の上方に展張保持する保持手段8と、前記保持手段8が吸引保持するフィルム6aで下地材12上の被包装物Wを覆うように、前記下地材載承手段2を移動させる移動手段9と、被包装物Wを覆ったフィルム6aの縁を、被包装物Wを載せた下地材12表面に熱溶着するヒータ部10と、フィルム6aの縁が下地材12の周縁に熱溶着された包装物W’を装置外に排出する排出手段11と、を備えて構成されている。そして、下地材載承手段2に載置された下地材12とフィルム6aとが上方に位置するヒータ部10により熱溶着されるので、下地材載承手段2上、更に、下地材載承手段2の上方の空間が、包装に利用されるヒートステーションとなる。
【0019】
前記下地材載承手段2は、下地材12および被包装物Wを載せて上昇し、上方に位置するヒータ部10に押し付けても変形しない強度を有するよう、金属材を用いて平面視矩形状の載せ台2aに構成されている。そして、前記矩形状の載せ台2aはサイズの異なる大・小二種類の下地材(横寸法は同じ、縦寸法が異なる)に対応するよう、大きいサイズの下地材に合わせて形成され、上面全面が平板で覆われている。その載せ台2aの表面にはヒータ部10と対応する箇所にシリコンゴム等の耐熱性部材からなるヒータ受け部が取り付けられ、下地材12に対するフィルム6aの溶着が安定して行われるようになっている。尚、下地材載承手段2の上面は全面を板部材で覆うことなく、大・小二種類の下地材12の外周縁と対応する枠形状に構成してもよい。
そして、この下地材載承手段2は上方に配置されるヒータ部10と前記基台1上の排出手段11との間を移動手段9で上下するように支持されている。
【0020】
前記移動手段9は、前記下地材載承手段2の載せ台2aを、初期位置(下限位置)での下向き傾斜状態から初期位置より上方位置の下地材12を載せてもらう水平受取位置(中間位置)、更に下地材12を載承した水平状態で上方のヒータ部10に押し当てて下地材にフィルムを熱溶着する溶着位置(上限位置)との間を上昇・下降させるもので、前記載せ台2aの奥行き寸法の略中間位置に支軸13が幅方向を貫通して横架支持され、その支軸13の両側端は、基台1上に前記下地材載承手段2を挟むように起立固定した案内支柱14に沿って上下する摺動体15に取り付けられている。
そして、前記摺動体15には、基台1上に起立固定した機枠16に一端を軸支した左右一対のアーム17の先端部に取り付けた第1リンク杆18の端部が連結され、前記アーム17の上下動により前記下地材載承手段2が案内支柱14に沿って上下される。
【0021】
又、前記フィルムフィード手段7の作動で引き出された所定長さのフィルム6aは保持手段8で略水平状に展張保持される。
前記保持手段8は、図3に示すように、外箱20と内箱21とで形成される二重箱枠19と、その二重箱枠19で形成される空間に吸引力を発生させる電動ファン22とで構成されている。
前記二重箱枠19を構成する外箱20は、平面視矩形状の箱体で、上面と4つの側壁のうちの3面が閉鎖され、下面と側壁の1面が開放されており、その側壁の開放部分に仕切り壁20’が気密状態を維持した状態で移動可能に配置されている。
前記内箱21は、図4に示すように、上面と4つの側壁のうちの3面が閉鎖され、下面と側壁の1面が開放された箱枠21a,21bを、開放された側面同士を向かい合わせ嵌合し、伸縮スライド可能に構成されている。そして、その組み合わせた箱枠21a,21bは、前記外箱20内に嵌合し、一方の箱枠21aは前記外箱20の3つの側壁と一定の間隔(隙間)を維持して上下方向に移動可能に支持されている。又、他方の箱枠21bは前記仕切り壁20’との間に前記外箱20と箱枠21aとで形成される間隔(隙間)と同じ間隔(隙間)を維持して上下方向に移動可能に連結支持されている。
即ち、前記外箱20の側壁及び仕切り壁20’と内箱21(箱枠21a,21b)の側壁とで区画される間隔(隙間)が、前記フィルム6aを展張保持する保持手段8の吸引部8aであり、その吸引部8aの外側に、該吸引部8aを囲むようにヒータ部10が形成されている。以下、ヒータ部10の詳細を図6に基づいて説明する。
【0022】
前記ヒータ部10は、図6に示すように、耐熱絶縁性部材、例えば、フェノール樹脂製平板からなる取付台23の上面に、ニクロム製帯板で構成された発熱体24のフィルム6aと対向する一方側(表面側)と、該一方側と反対側の他方側(裏面側)とに、耐熱絶縁性を有し熱伝導率の高い熱伝導媒体25,30を積層したサンドイッチ構造のヒータを配置し、且つ他方側(裏面側)の熱伝導媒体30の温度を検知する温度センサ29が前記取付台23と熱伝導媒体30との間に収容配置され、更に前記熱伝導媒体25の表面が耐熱性のガラスクロス26で被覆されて構成されている。
そして、熱伝導媒体25,30で挟まれた前記発熱体24の長手方向の端部には端子27が接続され、その端子27に電線28が接続され、制御装置(図示省略)により発熱体24への通電/非通電が制御されるようになっている。
【0023】
前記発熱体24は、図示したニクロム製帯板の板状発熱体に限らず、例えば、ニクロム線等の線状発熱体でもよいものである。また、前記発熱体24の長さは、熱溶着しようとする対象物のサイズに応じて適宜決定される。
【0024】
前記発熱体24の一方側(表面側)及び他方側(裏面側)に積層固定する熱伝導媒体25,30としては、前記発熱体24(例えば、ニクロム製帯板)の熱伝導率(例えば、ニクロム(Ni−10Cr)の熱伝導率:17.4)より高い熱伝導率の材料、例えば、ファインセラミックスのアルミナ(Al23(緻密質)、熱伝導率λ:24〜34(w/m・k))、窒化アルミニウム(AlN(緻密質)、熱伝導率λ:150(w/m・k))、炭化ケイ素(SiC(緻密質)、熱伝導率λ:60(w/m・k)、200(w/m・k))等を使用することができる。尚、前記ニクロムの熱伝導率の数値は日本機械学会発行の「機械実用便覧」を参照、ファインセラミックスの熱伝導率の数値は京セラ株式会社紹介の材料特性表による。
そして、前記熱伝導媒体25,30は前記発熱体24の表面側及び裏面側全部を被覆するよう該発熱体24と略同じ長さ、同じ幅の帯状に形成され、接着剤で積層固定されている。
【0025】
発熱体24の一方側(表面側)に積層固定する熱伝導媒体25は、フィルム6aを熱溶着する該熱伝導媒体の表面温度が略均一の温度に加熱されるようにするものである。
発熱体24の他方側(裏面側)に積層固定する熱伝導媒体30は、フィルム6aを加熱溶着する熱伝導媒体25と同じ材料で、且つ同じ形状(長さ、幅、厚さ等)に形成し、それにより該熱伝導媒体30も表側の熱伝導媒体25と略同じ温度に昇温されるようにし、フィルム6aを加熱溶着する熱伝導媒体25の温度状態と略同じ環境が形成されるようにする。
また、前記熱伝導媒体25,30は、表裏面が平滑、平坦な板材を用い、それによりフィルム6aと面する熱伝導媒体25はフィルム6aと均一に接し、非溶着部の発生を防止できる。
【0026】
温度センサ29はヒータ部10の表面温度(熱伝導部材の表面温度)を管理するもので、具体的には前記取付台23の長手方向の略中央位置に温度センサ29を収容する凹部31を形成し、その凹部31内にコイルスプリング32(弾性部材)を介して温度センサ29が収容配置されている。
前記温度センサ29としては、バイポーラトランジスタのベースエミッタ間電圧やダイオードの順方向電流が持つ温度特性を利用して温度を測定する一般的な半導体温度センサを使用することができる。(例えば、特開2009‐58272号公報参照)
【0027】
上記構成により、発熱体24に通電すると、該発熱体24は端子27が接続された両端部の方が長手方向中央部より放熱がよいため、通電中の発熱体24は略中央部分から昇温(温度上昇)する。そして、発熱体24は長手方向の中央部と端部では昇温(温度上昇)に差が生じるため、表面温度にも温度差が生じる傾向がある。しかし、発熱体24の表面に、該発熱体24より熱伝導率の高い材料からなる熱伝導媒体25が積層固定されている為、該熱伝導媒体25は全長に亘って略均一の温度に加熱される。従って、フィルム6aの熱溶着状態にバラツキが発生するのを防止でき、確実なシールを確立することができる。また、発熱体24の表面(フィルムと対向する面)が熱伝導媒体25で被覆されるため、発熱体24を保護し、他物に接触して破損、損傷するのを防止できる。
【0028】
また、フィルム6aを加熱溶着する熱伝導媒体25の温度状態と略同じ温度状態になった熱伝導媒体30に対して温度センサ29がコイルスプリング32(弾性部材)の弾発力で圧接されるため、該温度センサ29は熱伝導媒体30から離れることはなく、常に略同じ圧力で押し付けられた状態に保持される。従って、フィルム6aを溶着する熱伝導媒体25の表面温度と略同じ環境の熱伝導媒体30の温度を安定して確実に検知することができる。
前記温度センサ29によるヒータ部10の温度制御は、例えば、装置の電源投入後、温度センサ29の検出温度が所定温度(例えば130℃)になるまで通電し、ヒータ部10への通電を続ける。そして前記温度センサ29の検出温度が前記所定温度(130℃)を越えると、通電を止め、温度センサ29の検出温度が所定温度以下、例えば129℃になると再度通電を開始する。即ち、所定温度(例えば130℃)を保つように通電、非通電を繰り返すことで、ヒータ部10の熱伝導媒体25の表面温度を一定の温度に保つことができる。
【0029】
尚、前記温度センサ29の取り付け位置は図示した取付台23の長手方向の略中央位置に限定されず、何れの位置でもよい。それは、熱伝導媒体30が表側の熱伝導媒体25と同様、その全長に亘って略均一の温度に昇温される為、該熱伝導媒体30のどの箇所に温度センサを接触させて温度を測定しても、測定温度に殆ど差が生じないためである。
また、図4に示すように、ヒータ部10が周囲を囲むよう四辺に設けられているが、取付台23はいずれの辺に設けられていても良い。一辺のみの温度を検知することで、残りの三辺の温度を推測して制御しても良いし、あるいは四辺全てに取付台23を介して温度センサ29を設け、それぞれの温度センサ29により、各辺の温度を制御するようにしても良い。
【0030】
本発明は図示した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
(1)実施の形態では、発熱体としてニクロム製帯板(板状発熱体)を用いた例を示したが、これに限定されず、例えば、ニクロム線(線状発熱体)、或いはセラミック材料の表面に発熱体を薄膜状に蒸着又は接着固定したもの等でもよい。
(2)実施の形態では、温度センサを熱伝導媒体の長さ方向の略中央部に接触配置した例を示したが、これに限定されず、熱伝導媒体の左右の端部寄りに配置してもよい。
(3)実施の形態では、ヒートシール装置として平板状の下地材にフィルムを被せ、そのフィルムの周囲を前記下地材に熱溶着する装置を示したが、これに限定されず、例えば、フィルム製袋の開口部をヒータ部で挟んで熱溶着し封止する形態、収納凹部を有したトレイの側壁上部(凹部上面)にフィルムを熱溶着するトップシール形態等、その包装形態は問わない。
(4)実施の形態では、熱伝導媒体30と熱伝導媒体25の熱伝導率は略同一の例で示したが、必ずしも略同一の熱伝導率でなくても良い。例えば熱伝導媒体30あるいは、熱伝導媒体25の厚みを変える、あるいは熱伝導率の表面積を変える等の補正をして、フィルムと接する面の温度と同視できる温度を熱伝導媒体30にて検知できれば良い。
(5)温度の制御は、温度センサを用いたフィードバック方式(ON-OFF方式)、半導体を用いた電力制御の方式のいずれでもよい。
【符号の説明】
【0031】
A…ヒートシール装置 W…被包装物
6a…フィルム 10…ヒータ部
12…下地材 23…取付台
24…発熱体 25、30…熱伝導媒体
29…温度センサ 31…凹部
32…コイルスプリング(弾性部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被包装物を包被するフィルムをヒータ部の発熱体の熱によって溶着しシールするヒートシール装置であって、
前記発熱体を挟んでフィルムと面する一方側と、該一方側と反対側の他方側とに熱伝導媒体を配置し、
該他方側の熱伝導媒体の温度を検知する温度検知手段を設けたことを特徴とするヒートシール装置。
【請求項2】
前記熱伝導媒体の熱伝導率は略同じであることを特徴とする請求項1記載のヒートシール装置。
【請求項3】
前記発熱体を挟む前記熱伝導媒体それぞれは略同一形状であることを特徴とする請求項1又は2記載のヒートシール装置。
【請求項4】
前記ヒータ部を取り付ける取付台には前記温度検知手段である温度センサを収容する凹部が形成され、その凹部内に弾性部材を介して温度センサを収容し、該温度センサを前記他方側の熱伝導媒体に圧接したことを特徴とする請求項1乃至3記載のヒートシール装置。
【請求項5】
前記ヒータ部は、下地材に載った被包装物を覆うフィルムの周囲を前記下地材に溶着するよう平面視環状に配置されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載のヒートシール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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