説明

ヒートポンプ式温水暖房装置

【課題】使用者の希望設定温度を維持しながら極力供給温水温度を抑え経済的なヒートポンプ式温水暖房装置を提供する。
【解決手段】熱源器1からの水熱媒を循環ポンプ12の駆動で放熱器7に循環させることで暖房を行うもので、冷媒水熱交換器5と放熱器7とを結ぶ往き管8と戻り管9には、それぞれ水熱媒の往き温度を検知する往き温度センサ10と、水熱媒の戻り温度を検知する戻り温度センサ11とを備え、更にこの放熱器7からの戻り温度をリモコン13による設定温度に保持するように熱源器1を制御する制御部17とを備え、前記制御部17は戻り温度が設定温度となり安定後は、この安定時の往き戻り温度差を記憶し、戻り温度を自動的に低温側へ移動させて、この時の温度差が前記記憶した温度差と一致するかを確認しながら、戻り温度を段階的に低下させるようにしたので、省エネでCOPの向上が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヒートポンプサイクルを利用した温水暖房で、戻り温度を極力低下させて暖房することで、COP(暖房能力/入力)を向上させて経済的なヒートポンプ式温水暖房装置を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の温水暖房装置では、ヒートポンプサイクルではないが、往き戻り温度差>10℃で高温水を連続供給、10℃>往き戻り温度差>5℃で低温水を連続供給、5℃>往き戻り温度差で低温水を断続供給、この3つの条件で暖房運転を制御することで、往き温度と戻り温度の温度差から床温を推定し、実際の床温に対応して適切な暖房を行うことが出来るものであった。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3753566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこの従来のものでは、使用者が望む温度や、往き温度や戻り温度には全く関係なく、往き戻り温度差を基準に温度制御されるので、使用者が自由に暖房温度を設定出来なかったり、往き戻り温度共にどうしても高温側にのみ移動し、過剰暖房となりエネルギーの無駄で不経済であり、しかも戻り温度も高温となるので、ヒートポンプサイクルでは熱源器が異常となったり、COPは低下するなどの課題を有するものであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上記課題を解決するために、特に請求項1ではその構成を、ヒートポンプサイクルで加熱された冷媒と水熱媒とを熱交換させる冷媒水熱交換器を備えた熱源器と、該熱源器からの水熱媒を循環ポンプの駆動で放熱器に循環させることで暖房を行うヒートポンプ式温水暖房装置に於いて、前記冷媒水熱交換器と放熱器とを結ぶ往き管と戻り管には、それぞれ水熱媒の往き温度を検知する往き温度センサと、水熱媒の戻り温度を検知する戻り温度センサとを備え、更にこの放熱器からの戻り温度をリモコンによる設定温度に保持するように熱源器を制御する制御部とを備え、前記制御部は戻り温度が設定温度となり安定後は、この安定時の往き戻り温度差を記憶し、戻り温度を自動的に低温側へ移動させて、この時の温度差が前記記憶した温度差と一致するかを確認しながらながら、戻り温度を段階的に低下させるようにしたものである。
【0006】
又請求項2では、前記制御部は、戻り温度を自動的に低温側へさせた時の往き戻り温度差が、前記記憶された温度差が小さくなっている時は、熱源器を制御して戻り温度を高温側へ補正するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の請求項1によれば、使用者自身が選択した設定温度に放熱器の戻り温度がなるように熱源器を制御し、そしてこの温度が安定後には、この時の往き戻り温度差と一致することを確認しながら、戻り温度を自動的に低温側へ段階的に移行するので、放熱器での放熱温度が使用者の設定温度と大きく変わることなく、過剰暖房を防止して極めて経済的であり、しかも戻り温度が低くCOPの向上も図ることが出来るものである。
【0008】
又請求項2によれば、戻り温度の低温側への移動で往き戻り温度差が小さくなった時は、戻り温度を高温側へ補正するようにしたので、放熱器での放熱温度が低下した時には、素速く元に戻すことが出来、放熱温度が低下したまま使用することがなく、常に良好な放熱温度を維持しながら戻り温度を低く抑えて、好適な暖房と共に省エネを実現出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の一実施形態のヒートポンプ式温水暖房装置の概略構成図。
【図2】同暖房運転の作動状態の説明図。
【図3】同暖房運転のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次にこの発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
1は暖房用の水熱媒を生成するヒートポンプ式の熱源器で、外気から熱を採熱する空気熱交換器2と、該空気熱交換器2に外気を送風する室外ファン3と、熱を搬送する冷媒を圧縮する圧縮機4と、高温高圧の冷媒と不凍液からなる水熱媒とが熱交換する冷媒水熱交換器5と、冷媒の流量を調節する膨張弁6とからなるヒートポンプサイクルで構成されている。
【0011】
7は前記熱源器1で高温に加熱された水熱媒を床に敷設したパイプ(図示せず)内を流通させることで暖房を行う放熱器で、冷媒水熱交換器5とは高温の水熱媒を放熱器7まで流通させる往き管8と、放熱器7で温度低下した水熱媒を冷媒水熱交換器5まで流通させる戻り管9とで連通され、温水暖房回路を構成するものである。
【0012】
又前記往き管8には、放熱器7に向かう水熱媒の温度を検知する往き温度センサ10が備えられており、更に放熱器7から冷媒水熱交換器5に水熱媒を戻す戻り管9には、放熱器7で放熱後の水熱媒の温度を検知する戻り温度センサ11及び、水熱媒を循環させる循環ポンプ12が備えられている。
【0013】
13は放熱器7の近傍に備えられた各種設定用のリモコンで、表示部14に表示された弱・中・強のバー表示15を見ながら設定スイッチ16を操作することで、目標とする戻り温度を使用者の希望通りに設定することが出来るものであり、弱の20℃から中の40℃、強の60℃までを2℃刻みで設定可能である。
【0014】
17はマイコンからなる制御部で、往き温度センサ10の検知する水熱媒の往き温度及び、戻り温度センサ11の検知する水熱媒の戻り温度とを随時入力し、更にリモコン13で設定された設定戻り温度を入力して記憶し、戻り温度センサ11の検知する戻り温度が設定温度になるように、出力して圧縮機4の能力或いは膨張弁6の開度を調節して熱源器1の加熱能力を可変することで設定温度に保持させ、又この設定温度と戻り温度が一致した数十秒間の安定期間に、往き温度と戻り温度の温度差を演算して記憶し、次に戻り温度が低温側に数度低くなるように熱源器1の能力も下げると共に、この時の往き温度と戻り温度の温度差を演算し、最初に記憶した温度差と比較して同じであれば、更に戻り温度を下げて同じことを繰り返し、比較した温度差が小さくなっていれば、熱源器1の能力を上げて戻り温度を高温側に補正すると言う制御を、順次繰り返すようにしたものである。
【0015】
次にこの一実施形態の作動を図2の説明図及び図3に示すフローチャートに従って説明する。(気温一定、循環ポンプ12流量一定とした場合)
今リモコン13で使用者が設定温度を30℃にした場合、熱源器1は駆動して冷媒水熱交換器5での水熱媒の加熱を、放熱器7の放熱後に戻り温度センサ11で検知される戻り温度が30℃になるように制御し、そしてステップ18で戻り温度が設定温度の30℃になったことを確認し、YESでステップ19に進み往き温度と戻り温度の温度差Aを演算し、ここでは10℃を記憶した後、ステップ20に進んで20秒間の安定期間のカウントを行うものである。
【0016】
次にステップ21では、戻り温度を低温側に移動しここでは2℃低い28℃になるように圧縮機4の能力を下げるように熱源器1を制御し、ステップ22で戻り温度28℃を確認して、YESでステップ23に進み往き温度と戻り温度の温度差Bを計測して、ここでは往き温度は38℃であるから温度差Bは10℃となり、ステップ24で安定時の温度差Aと今の温度差Bを比較して、温度差A=温度差Bで温度差に変化がなく一致したことを確認し、ステップ25に進み所定時間ここでは10秒間のカウントを行うもので、戻り温度の低温側への移動を更に継続させるものである。
【0017】
そしてステップ25での所定時間のカウント後は、YESでステップ26に進み戻り温度を低温側に移動しここでは更に2℃低い26℃になるように圧縮機4を制御し、ステップ27で戻り温度26℃を確認して、YESでステップ28に進み往き温度と戻り温度の温度差Cを計測して、ここでは往き温度34℃であるから温度差Cは8℃となり、ステップ29で安定時の温度差Aと今の温度差Cを比較して、温度差A>温度差Cで今の温度差Cが小さくなることで、ステップ30に進み戻り温度の低温側への移動制御を一旦中止し、戻り温度を元に戻す高温側への補正制御を行うものである。
【0018】
従ってステップ31では、戻り温度を高温側に移動しここでは2℃高い28℃に戻るように圧縮機4の能力を上げるように熱源器1を制御し、ステップ32で戻り温度28℃を確認して、YESでステップ33に進み往き温度と戻り温度の温度差Dを計測して、ここでは往き温度は38℃であるから温度差Dは10℃となり、ステップ34で安定時の温度差Aと温度差Dを比較して、温度差A=温度差Dで温度差が一致したことを確認し、ステップ35に進み所定時間ここでは10秒間のカウント行い、再び戻り温度を低温側に移動させる制御を開始し、温水暖房運転が終了するまで継続されるものである。
【0019】
ステップ28で往き温度と戻り温度の温度差Cが安定時の温度差Aより小さくなったのは、放熱器7の放熱特性で往き温度がある温度以下になると放熱が悪くなると言うものであり、往き温度34℃がその限界温度と言うことである。
【0020】
このように使用者が希望する設定温度を軸に、往き温度と戻り温度の温度差をキープしていることを条件に、戻り温度を低温側に段階的に移動させることで、使用者の希望温度からはあまり離れることなく、熱源器1の能力を出来るだけ下げて省エネルギー化を図ることが出来て非常に経済的であり、しかも戻り温度を低くすることにより、COPを向上させたヒートポンプ式の温水暖房装置を提供出来るものである。
【符号の説明】
【0021】
1 熱源器
5 冷媒水熱交換器
7 放熱器
8 往き管
9 戻り管
10 往き温度センサ
11 戻り温度センサ
12 循環ポンプ
13 リモコン
17 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプサイクルで加熱された冷媒と水熱媒とを熱交換させる冷媒水熱交換器を備えた熱源器と、該熱源器からの水熱媒を循環ポンプの駆動で放熱器に循環させることで暖房を行うヒートポンプ式温水暖房装置に於いて、前記冷媒水熱交換器と放熱器とを結ぶ往き管と戻り管には、それぞれ水熱媒の往き温度を検知する往き温度センサと、水熱媒の戻り温度を検知する戻り温度センサとを備え、更にこの放熱器からの戻り温度をリモコンによる設定温度に保持するように熱源器を制御する制御部とを備え、前記制御部は戻り温度が設定温度となり安定後は、この安定時の往き戻り温度差を記憶し、戻り温度を自動的に低温側へ移動させて、この時の温度差が前記記憶した温度差と一致するかを確認しながらながら、戻り温度を段階的に低下させるようにした事を特徴とするヒートポンプ式温水暖房装置。
【請求項2】
前記制御部は、戻り温度を自動的に低温側へさせた時の往き戻り温度差が、前記記憶された温度差が小さくなっている時は、熱源器を制御して戻り温度を高温側へ補正するようにした事を特徴とする請求項1記載のヒートポンプ式温水暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−220621(P2011−220621A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91026(P2010−91026)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)
【Fターム(参考)】