説明

ヒートポンプ給湯装置

【課題】 給湯用熱交換器が給湯必要熱量に応じた加熱能力を給湯用流体に出力できるように運転制御する制御手段を配設することで温水を迅速に適切な温度に制御することが可能なヒートポンプ給湯装置を実現する。
【解決手段】 給湯制御装置20は、給湯用流体供給回路30に流れる給湯用流体の水流に応じた給湯必要熱量を求める給湯必要熱量演算手段230と、給湯用熱交換器12で熱交換された給湯用流体が給湯必要熱量演算手段230で求められた給湯必要熱量となる一次側流路に流通する高圧冷媒の高圧圧力を目標高圧圧力として求める目標高圧圧力演算手段240と、目標高圧圧力演算手段240で求められた目標高圧圧力に基づいて、圧縮機11の目標回転数を求める目標回転数演算手段250とを具備する。これにより、温水を迅速に適切な温度に制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプサイクルからなる加熱装置により高圧冷媒と給湯用流体とを熱交換させて温水を出湯するヒートポンプ給湯装置に関するものであり、特に、給湯するときに所望する給湯温度に加熱する運転制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のヒートポンプ給湯装置として、例えば、特許文献1に示すように、圧縮機と、給水管からの給水に熱交換関係を有する給湯用熱交換器と、減圧手段と、冷媒蒸発器と、給湯用熱交換器により加熱された出水の温度を検出する出湯温度検出手段と、その出湯温度検出手段の信号を受けて圧縮機の運転制御を行なう運転制御手段を備えることにより、端末のカランが開放されたことを出湯温度検出手段で検出して運転制御手段へ信号を送り、その運転制御手段は圧縮機を運転するように構成している。
【0003】
そして、圧縮機の運転による給湯用熱交換器の作動により出水は加熱されて端末カランで出湯させるため、貯湯タンクレス化の給湯システムが実現できる。また、貯湯タンクレスのためタンクからの放熱もなくなり省エネルギーとなるようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−311597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のような瞬間加熱式のヒートポンプ給湯装置では、使用者の操作に連動して圧縮機を含むヒートポンプサイクルの動作およびその停止が任意のタイミングで行なわれる。しかも、使用者に設定された給湯温度の温水を出湯するには、カランの開け方による給湯流量、給湯用熱交換器に供給される水の給水温度が異なるため、少なくとも出湯温度の他に、給湯流量、給水温度などの環境条件に応じた加熱能力を出力するように圧縮機を含むヒートポンプサイクルの動作が必要である。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1によれば、出湯温度のみに応じた圧縮機の回転数を可変する制御のみであると、使用者が要求する給湯必要熱量に応じた加熱能力を出力する運転条件に達するのに一定の時間が必要となり応答性が遅い。これにより、出湯する温水を迅速に適切な温度に制御することが困難である。
【0006】
また、所望する給湯温度への応答性が遅いと、使用者はカランの開け方を可変させて給湯流量を変動させる。これにより、出湯温度が変化するため圧縮機の回転数が変化してしまい、さらに、所望する給湯温度への応答性が遅くなってしまう。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記点を鑑みたものであり、給湯用熱交換器が給湯必要熱量に応じた加熱能力を給湯用流体に出力できるように運転制御する制御手段を配設することで温水を迅速に適切な温度に制御することが可能なヒートポンプ給湯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記、目的を達成するために、請求項1ないし請求項9に記載の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、一次側流路に流通する高圧冷媒と二次側流路に流通する給湯用流体とを熱交換する給湯用熱交換器(12)を含むヒートポンプサイクルからなり、二次側流路に流れる給湯用流体を加熱する加熱装置(10)と、二次側流路に水を供給するとともに、給湯用熱交換器(12)により得られた温水を出湯する給湯用流体供給回路(30)と、給湯用流体供給回路(30)に供給される水を所望する給湯温度になるように圧縮機(11)、減圧手段(13)を含む加熱装置(10)を制御する制御手段(20)とを備えるヒートポンプ給湯装置において、
制御手段(20)は、給湯用流体供給回路(30)に流れる給湯用流体の水流に応じた給湯必要熱量を求める給湯必要熱量演算手段(230)と、給湯用熱交換器(12)で熱交換された給湯用流体が給湯必要熱量演算手段(230)で求められた給湯必要熱量となる一次側流路に流通する高圧冷媒の高圧圧力を目標高圧圧力として求める目標高圧圧力演算手段(240)と、目標高圧圧力演算手段(240)で求められた目標高圧圧力に基づいて、圧縮機(11)の目標回転数を求める目標回転数演算手段(250)とを具備することを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、給湯必要熱量演算手段(230)を有することにより、例えば、少なくとも給水温度、使用者のカラン操作による給湯流量のばらつきがあっても的確な給湯必要熱量を求めることができる。
【0010】
また、目標高圧圧力演算手段(240)および目標回転数演算手段(250)を有することにより、目標高圧圧力および目標回転数は給湯必要熱量に応じた給湯用熱交換器(12)の加熱能力を出力するための運転条件である。従って、目標高圧圧力および目標回転数に基づいて加熱装置(10)を制御すれば所望する給湯温度の温水を迅速に適切な温度に制御することが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、制御手段(20)は、給湯用流体供給回路(30)に水流が発生したときに、目標高圧圧力演算手段(240)で求めた目標高圧圧力および目標回転数演算手段(250)で求めた目標回転数に基づいて、圧縮機(11)、減圧手段(13)を含む加熱装置(10)を制御することを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、具体的には、給湯必要熱量に基づいた目標高圧圧力と目標回転数とによる運転条件で圧縮機(11)、減圧手段(13)を含む加熱装置(10)を制御することができることで所望する給湯温度の温水を迅速に適切な温度に制御することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、目標高圧圧力演算手段(240)は、給湯用流体供給回路(30)から出湯する給湯用流体の所望する給湯温度、減圧手段(13)で減圧された冷媒を蒸発する冷媒蒸発器(14)に通風される外気の外気温度、および給湯用流体供給回路(30)に供給される水の給水温度に基づいて求めることを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、少なくとも所望する給湯温度、外気温度、および給水温度によって目標高圧圧力を正確に求めることができるので、これらを運転する前に検出できるように構成しておけば、給湯必要熱量に基づいた正確な目標高圧圧力を求めることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明では、給湯用流体供給回路(30)に供給する水の給水温度を検出する給水温度検出手段(32)が設けられ、目標高圧圧力演算手段(240)は、給湯用流体供給回路(30)に水流が発生したときの目標高圧圧力を求めるときに、その目標高圧圧力を求める前の所定期間内に給水温度検出手段(32)により検出して学習制御された給水温度を用いることを特徴としている。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、給水温度の検出は給湯用流体供給回路(30)に水の流れが停止しているときに検出されるため、加熱装置(10)内の温度場条件に影響を受けやすい。そこで、所定期間内における学習制御された給水温度を用いることで精度の高い給水温度により正確な目標高圧圧力を求めることができる。
【0017】
請求項5に記載の発明では、目標回転数演算手段(250)は、減圧手段(13)で減圧された冷媒を蒸発する冷媒蒸発器(14)に通風される外気の外気温度、冷媒蒸発器(14)で蒸発する冷媒の蒸発温度、および目標高圧圧力演算手段(240)で求められた目標高圧圧力に基づいて求めることを特徴としている。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、少なくとも外気温度、蒸発温度および目標高圧圧力によって目標回転数を正確に求めることができるので、これらを運転する前に検出できるように構成しておけば、給湯必要熱量に基づいた正確な目標回転数を求めることができる。
【0019】
請求項6に記載の発明では、給湯用熱交換器(12)の一次側流路に流通する高圧冷媒の高圧圧力を検出する高圧圧力検出手段(15a)が設けられ、制御手段(20)は、目標回転数演算手段(250)で求めた目標回転数で圧縮機(11)を制御しているときに、高圧圧力検出手段(15a)により検出された高圧圧力が目標高圧圧力演算手段(240)で求めた目標高圧圧力になるように減圧手段(13)の開度を制御することを特徴としている。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、減圧手段(13)の開度を制御することにより、迅速に目標高圧圧力にすることができる。これにより、所望する給湯温度の温水を迅速に適切な温度に制御することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明では、給湯用流体供給回路(30)に流れる給湯用流体の出湯温度を検出する出湯温度検出手段(31)が設けられ、制御手段(20)は、目標回転数演算手段(250)で求めた目標回転数で圧縮機(11)を制御しているときに、出湯温度検出手段(31)により検出された出湯温度と所望する給湯温度との温度差に基づいて、目標回転数を補正するように制御することを特徴としている。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、所望する給湯温度との温度差を監視することで容易に目標回転数の補正できることで所望する給湯温度の温水を迅速に適切な温度に制御することができる。
【0023】
請求項8に記載の発明では、給湯用流体供給回路(30)に流れる給湯用流体の流量を検出する流量検出手段(34)が設けられ、制御手段(20)は、目標回転数演算手段(250)で求めた目標回転数で圧縮機(11)を制御しているときにおいて、流量検出手段(34)により検出された流量が変動したときは、給湯必要熱量演算手段(230)により変動後の給湯必要熱量を求めるとともに、目標高圧圧力演算手段(240)で求めた変動後の目標高圧圧力および目標回転数演算手段(250)で求めた変動後の目標回転数に基づいて、圧縮機(11)、減圧手段(13)を含む加熱装置(10)を制御することを特徴としている。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、使用者の操作で容易に給湯流量が可変されるが、変動に応じた加熱能力を出力することができる。これにより、給湯流量に変動があっても所望する給湯温度の温水を迅速に適切な温度に制御することができる。
【0025】
請求項9に記載の発明では、加熱装置(10)は、冷媒の高圧側圧力が臨界圧力以上となる超臨界ヒートポンプサイクルであり、臨界圧力以上に昇圧された冷媒により給湯用流体供給回路(30)に供給された水を加熱することを特徴としている。
【0026】
請求項9に記載の発明によれば、目標高圧圧力を運転条件として採用することは超臨界ヒートポンプサイクルにおいて好適である。また、超臨界ヒートポンプサイクルでは一般のヒートポンプサイクルよりも高温の温水を出力することが可能である。
【0027】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態におけるヒートポンプ給湯装置を図1ないし図3に基づいて説明する。図1はヒートポンプ給湯装置の全体構成を示す模式図である。本実施形態のヒートポンプ給湯装置は、図1に示すように、圧縮機11、給湯用熱交換器12、減圧手段である電気式膨張弁13、および冷媒蒸発器14を順に環状に冷媒回路15で接続している。
【0029】
そして、その冷媒回路15には、冷媒として二酸化炭素(CO)が封入された超臨界式のヒートポンプサイクルからなっており、給湯用熱交換器12の二次側流路12bに流れる給湯用流体(例えば、水)を加熱するための加熱装置10である。
【0030】
圧縮機11は、冷媒蒸発器14で蒸発した低温低圧の気相冷媒を吸い込んで臨界圧力以上まで圧縮して吐出するもので、内部に内蔵する電動モータ(図示せず)によって駆動される。そして、電動モータ(図示せず)は、詳しくは後述する制御手段である給湯制御装置20によって制御される。
【0031】
給湯用熱交換器12は、冷媒と給湯用流体とを熱交換するもので、例えば、冷媒が流れる一次側流路12aと給湯用流体が流れる二次側流路12bとが二重管構造に設けられ、かつ冷媒の流れ方向と給湯用流体の流れ方向とが対向するように構成された対向流式の熱交換器である。
【0032】
また、一次側流路12aは冷媒回路15に接続され、二次側流路12bは、上流端から水を供給するとともに下流側に給湯用熱交換器12で得られた温水を出湯する給湯用流体供給回路30(後述する)に接続している。
【0033】
そして、電気式膨張弁13は、給湯用熱交換器12から流出する冷媒を減圧して冷媒蒸発器14に供給する。冷媒蒸発器14は、電気式膨張弁13で減圧された冷媒を外気と熱交換させて蒸発させる。14aは送風機であり冷媒蒸発器14の空気側に外気を通風する。
【0034】
また、冷媒回路15には、高圧圧力を検出する高圧圧力検出手段である第1圧力センサ15a、蒸発圧力を検出する低圧圧力検出手段である第2圧力センサ15b、蒸発温度を検出する蒸発温度検出手段である蒸発温度センサ15c、蒸発器入口冷媒温度を検出する冷媒温度センサ15d、給湯用熱交換器冷媒入口温度を検出する冷媒温度センサ15eおよび給湯用熱交換器冷媒出口温度を検出する冷媒温度センサ15fが設けられている。なお、図中に示す21は、外気温度を検出する外気温センサである。
【0035】
さらに、給湯用流体供給回路30には、二次側流路12bで高圧冷媒と熱交換された温水の出湯温度を検出する出湯温度検出手段である出湯サーミスタ31、二次側流路12bに供給する水の給水温度を検出する給水温度検出手段である給水サーミスタ32、温度調節された温水の給湯温度を検出する給湯温度検出手段である給湯サーミスタ33が設けられている。
【0036】
また、給湯用流体供給回路30の下流側は台所、洗面所、浴室などに設けられたカランなどの給湯水栓(図示せず)に通ずる給湯配管である。そして、図中に示す34は、給湯用流体供給回路30に流れる水の流量を検出する流量検出手段である流量カウンタであり、図中に示す35は流量調節弁であって、給湯用熱交換器12の二次側流路12bから出湯される温水に水道水を混合させて給湯水栓(図示せず)から給湯される温水の温度を使用者が設定した設定温度に調節するための温度調節弁である。
【0037】
因みに、本実施形態では、給湯用熱交換器12の二次側流路12bから出湯される出湯温度は使用者が設定した設定温度に対して、例えば、2℃程度高めの出湯温度となるように制御しており、流量調節弁35の開度を制御することで二次側流路12bから出湯される温水に水を混合させて給湯水栓(図示せず)から給湯される給湯温度を設定温度となるようにしている。
【0038】
そして、以上の構成による各センサは、その各センサで検出された温度、圧力、流量情報を給湯制御装置20に出力するように電気的に接続されている。給湯制御装置20は、周知のように、マイクロコンピュータからなり、上記各センサからの温度、圧力、流量情報、および図示しない操作パネルからの操作信号に基づいて、予め設定された給湯制御プログラムに従って所定の演算処理を行なって、圧力機11、電気式膨張弁13、送風機14aおよび流量調節弁35を制御するものである。
【0039】
次に、本発明の要部である給湯水栓(図示せず)を開弁させて給湯するときの給湯制御について説明する。図2は給湯制御装置20に設けられた給湯制御プログラムの制御処理を示すフローチャートである。図2に示すように、使用者が給湯水栓(図示せず)を開弁すると、流量カウンタ34が作動して給湯用流体供給回路30内の流量を検出する。これをステップ210にて、水流を検知したか否かを判定させて、水流を検知することで給湯制御プログラムの制御処理が開始される。
【0040】
そして、ステップ220にて、各センサからの温度、流量情報と操作パネルに設定された設定温度などを読み込む。ここで、温度情報のうち、給水温度では、給湯水栓(図示せず)を開弁する前の所定期間(例えば、1から2日間程度)内に学習制御したときにおける平均給水温度を読み込むようにすると良い。
【0041】
これは、給湯水栓(図示せず)を開弁した直後は、加熱装置10内の温度場の影響を受けるため、給湯水栓(図示せず)を開弁した直後の給水温度は記憶することはやめて、給湯水栓(図示せず)が閉弁直前の給水温度を所定期間内記憶させておいて、その所定期間内の平均給水温度を用いると良い。
【0042】
次に、給湯必要熱量演算手段であるステップ230にて、給湯必要熱量を算出する。この給湯必要熱量は、操作パネル(図示せず)で設定された設定温度、流量カウンタ34で検出された給湯流量、および所定期間内に記憶された給水温度の平均給水温度に基づいて演算する。なお、ここでは、出湯サーミスタ31で検出された出湯温度が設定温度+2℃程度高くなるような給湯必要熱量を求めるようにしている。
【0043】
次に、目標高圧圧力演算手段であるステップ240にて、目標高圧圧力を算出する。ここで、目標高圧圧力は、上記ステップで求めた給湯必要熱量に応じた給湯用熱交換器12の加熱能力を出力するための目標となる高圧圧力であり、各センサの環境条件のうち、少なくとも所望する出湯温度(設定温度+2℃程度)、外気温センサ21で検出される外気温度、および上述した給水温度によって設定される。
【0044】
そして、次の目標回転数演算手段であるステップ250にて、圧縮機11の目標回転数と電気式膨張弁13の目標開度とを算出する。目標回転数の算出は、給湯用熱交換器12の加熱能力を出力するための冷媒回路15内を循環する冷媒循環流量を求めるものであって、具体的には、図3に示すように、二酸化炭素(CO)を冷媒とするモリエル線図の高圧側の加熱エンタルピΔhを出力する冷媒循環流量を算出すれば良い。
【0045】
この加熱エンタルピΔhは給湯用熱交換器12の加熱能力であって、目標高圧圧力と外気温度によって決まる蒸発圧力Pおよび二次側流路に流れる水の給水温度との関係から冷媒循環流量を求めることができる。
【0046】
そして、この冷媒循環流量は外気温度によって決まる圧縮機11の吸入側冷媒密度と圧縮機11の回転数によって決めることができる。次に、加熱エンタルピΔhを出力する高圧圧力となる開度を目標開度として求める。そして、ステップ260にて、求めた目標開度で電気式膨張弁13を制御するとともに、求めた目標回転数で圧縮機11の運転を開始する。
【0047】
そして、ステップ270にて、圧縮機11の回転数が目標回転数に達したか否かを判定する。ここで、回転数が目標回転数に達しておれば、次のステップ280にて、温度、圧力情報のうち、少なくとも、出湯サーミスタ31で検出された出湯温度、蒸発温度センサ15cで検出された蒸発温度、および第1圧力センサ15aで検出された高圧圧力を読み込む。
【0048】
そして、ステップ290にて、高圧圧力が目標高圧圧力に達したか否かを判定する。ここで、高圧圧力が目標高圧圧力に達していないときは、ステップ300にて、電気式膨張弁13の開度を目標高圧圧力になるように開度補正を行なう。一方ステップ290にて、高圧圧力が目標高圧圧力に達しておれば、ステップ310にて、流量カウンタ34で検出された給湯流量が変動したか否かを判定する。
【0049】
なお、ここでは、給湯水栓(図示せず)から給湯する給湯流量に変化があったか否かを判定する手段であって、ここで、給湯流量の変動があれば、ステップ220に戻るようにしている。そして、ここで、給湯流量に変動なければ、ステップ320に移行して、出湯サーミスタ31で検出された出湯温度と設定温度(設定温度+2℃程度)との温度差があるか否かを判定する。
【0050】
ここで、出湯温度と設定温度との温度差があれば、ステップ340にて、圧縮機11の目標回転数を補正する。因みに、出湯温度が設定温度に未達であれば、その温度差に応じて目標回転数を上昇する補正を行なう。つまり、ステップ320とステップ340とで、目標回転数を温度差に応じて補正するようにして出湯温度を設定温度(設定温度+2℃程度)に達するように微調節している。
【0051】
そして、ステップ330の水流の停止を検知するまで運転を継続する。一方、ステップ330にて、流量カウンタ34で検出された給湯流量が水流の停止を検知すれば、ステップ350にて、電気式膨張弁13の開度制御停止、および圧縮機11の運転停止を行なう。
【0052】
なお、流量調節弁35は、給湯サーミスタ33で検出された給湯温度に基づいて、給湯用熱交換器12で熱交換された温水と水道水とを混合して給湯水栓(図示せず)より給湯する温水を設定温度になるように温度調節を行なっている。これにより、給湯水栓(図示せず)を使用者が開弁することで給湯流量、給水温度などに変化が生じてもいち早く設定温度の温水を給湯することができるものである。
【0053】
以上の第1実施形態によるヒートポンプ給湯装置によれば、給湯制御装置20に、給湯用流体供給回路30に流れる給湯用流体の水流に応じた給湯必要熱量を求める給湯必要熱量演算手段(ステップ230)と、給湯用熱交換器12で熱交換された給湯用流体が給湯必要熱量演算手段(ステップ230)で求められた給湯必要熱量となる一次側流路に流通する高圧冷媒の高圧圧力を目標高圧圧力として求める目標高圧圧力演算手段(ステップ240)と、目標高圧圧力演算手段(ステップ240)で求められた目標高圧圧力に基づいて、圧縮機11の目標回転数を求める目標回転数演算手段(ステップ250)とを具備することにより、例えば、少なくとも給水温度、使用者のカラン操作による給湯流量のばらつきがあっても的確な給湯必要熱量を求めることができる。
【0054】
また、目標高圧圧力演算手段(ステップ240)および目標回転数演算手段(ステップ250)を有することにより、目標高圧圧力および目標回転数は給湯必要熱量に応じた給湯用熱交換器12の加熱能力を出力するための運転条件である。従って、目標高圧圧力および目標回転数に基づいて加熱装置10を制御すれば所望する給湯温度の温水を迅速に適切な温度に制御することが可能となる。
【0055】
また、給湯用流体供給回路30に水流が発生したときに、目標高圧圧力演算手段(ステップ240)で求めた目標高圧圧力および目標回転数演算手段(ステップ250)で求めた目標回転数に基づいて、圧縮機11、電気式膨張弁13を含む加熱装置10を制御することにより、具体的には、給湯必要熱量に基づいた目標高圧圧力と目標回転数とによる運転条件で圧縮機11、電気式膨張弁13を含む加熱装置10を制御することができることで所望する給湯温度の温水を迅速に適切な温度に制御することができる。
【0056】
また、目標高圧圧力演算手段(ステップ240)は、給湯用流体供給回路30から出湯する給湯用流体の所望する給湯温度、電気式膨張弁13で減圧された冷媒を蒸発する冷媒蒸発器14に通風される外気の外気温度、および給湯用流体供給回路30に供給される水の給水温度に基づいて求めることにより、少なくとも所望する給湯温度、外気温度、および給水温度によって目標高圧圧力を正確に求めることができるので、これらを運転する前に検出できるように構成しておけば、給湯必要熱量に基づいた正確な目標高圧を求めることができる。
【0057】
また、給湯用流体供給回路30に供給する水の給水温度を検出する給水サーミスタ32が設けられ、目標高圧圧力演算手段(ステップ240)は、給湯用流体供給回路30に水流が発生したときの目標高圧圧力を求めるときに、その目標高圧圧力を求める前の所定期間内に給水サーミスタ32により検出して学習制御された給水温度を用いることにより、給水温度の検出は給湯用流体供給回路30に水の流れが停止しているときに検出されるため、加熱装置10内の温度場条件に影響を受けやすい。そこで、所定期間内における学習制御された給水温度を用いることで精度の高い給水温度により正確な目標高圧圧力を求めることができる。
【0058】
また、目標回転数演算手段(ステップ250)は、電気式膨張弁13で減圧された冷媒を蒸発する冷媒蒸発器14に通風される外気の外気温度、冷媒蒸発器14で蒸発する冷媒の蒸発温度、および目標高圧圧力演算手段(ステップ240)で求められた目標高圧圧力に基づいて求めることにより、少なくとも外気温度、蒸発温度および目標高圧圧力によって目標回転数を正確に求めることができるので、これらを運転する前に検出できるように構成しておけば、給湯必要熱量に基づいた正確な目標回転数を求めることができる。
【0059】
また、給湯用熱交換器12の一次側流路12aに流通する高圧冷媒の高圧圧力を検出する第1圧力センサ15aが設けられ、給湯制御装置20は、目標回転数演算手段(ステップ250)で求めた目標回転数で圧縮機11を制御しているときに、第1圧力センサ15aにより検出された高圧圧力が目標高圧圧力演算手段(ステップ240)で求めた目標高圧圧力になるように電気式膨張弁13の開度を制御することにより、迅速に目標高圧圧力にすることができる。これにより、所望する給湯温度の温水を迅速に適切な温度に制御することができる。
【0060】
また、給湯用流体供給回路30に流れる給湯用流体の出湯温度を検出する出湯サーミスタ31が設けられ、給湯制御装置20は、目標回転数演算手段(ステップ250)で求めた目標回転数で圧縮機11を制御しているときに、出湯サーミスタ31により検出された出湯温度と所望する給湯温度との温度差に基づいて、目標回転数を補正するように制御することにより、所望する給湯温度との温度差を監視することで容易に目標回転数の補正できることで所望する給湯温度の温水を迅速に適切な温度に制御することができる。
【0061】
また、給湯用流体供給回路(30)に流れる給湯用流体の流量を検出する流量カウンタ34が設けられ、給湯制御装置20は、目標回転数演算手段(ステップ250)で求めた目標回転数で圧縮機11を制御しているときにおいて、流量カウンタ34により検出された流量が変動したときは、給湯必要熱量演算手段(ステップ230)により変動後の給湯必要熱量を求めるとともに、目標高圧圧力演算手段(ステップ240)で求めた変動後の目標高圧圧力および目標回転数演算手段(ステップ250)で求めた変動後の目標回転数に基づいて、圧縮機11、電気式膨張弁13を含む加熱装置10を制御することにより、使用者の操作で容易に給湯流量が可変されるが、変動に応じた加熱能力を出力することができる。これにより、給湯流量に変動があっても所望する給湯温度の温水を迅速に適切な温度に制御することができる。
【0062】
また、加熱装置10は、冷媒の高圧側圧力が臨界圧力以上となる超臨界ヒートポンプサイクルであり、臨界圧力以上に昇圧された冷媒により給湯用流体供給回路30に供給された水を加熱することにより、目標高圧圧力を運転条件として採用することは超臨界ヒートポンプサイクルにおいて好適である。また、超臨界ヒートポンプサイクルでは一般のヒートポンプサイクルよりも高温の温水を出力することが可能である。
【0063】
(第2実施形態)
以上の第1実施形態では、給湯用流体供給回路30に流量カウンタ34を設けて、それに流れる給湯流量の検出を行なったが、これに限らず、流量検出手段である流量カウンタ34を設けずに、具体的には、図4に示すように、適量からなる貯湯タンク36を設け、その貯湯タンク36内の貯湯量に基づいて給湯流量を求めても良い。
【0064】
ただし、本実施形態では、給湯用流体供給回路30を第1給湯用流体供給回路30aと第2給湯用流体供給回路30bとに2分し、その第2給湯用流体供給回路30b側に水流を検知するためのフロースイッチ34aを給湯用流体供給回路30に設けている。
【0065】
また、貯湯タンク36は、耐食性に優れた金属製(例えば、ステンレス製)のタンクであり、外周部に図示しない断熱材が配置されており、高温の給湯水を長時間に渡って保温することができるようになっている。さらに、第1給湯用流体供給回路30aは、循環ポンプ37を設けて給湯用熱交換器12で熱交換された温水を貯湯タンク36内に循環するように構成している。
【0066】
また、貯湯タンク36の外壁面には、複数の水位サーミスタ34bが縦方向にほぼ等間隔に配置され、貯湯タンク36内に満たされた水の各水位レベルでの温度情報を給湯制御装置20に出力するようになっている。
【0067】
これにより、水位サーミスタ34bからの温度情報に基づいて貯湯タンク36内上方の加熱された給湯用流体と貯湯タンク36内下方の加熱前の水との温度境界位置を検出することで、その温度境界位置が変化することで、給湯流量を求めることが可能である。
【0068】
そして、以上の構成によれば、使用者が給湯水栓(図示せず)を開弁すると、フロースイッチ34aにより、第2給湯用流体供給回路30b側の水流を検知することで給湯制御プログラムの制御処理が開始される。そして、貯湯タンク36内の温度境界位置が変動することで給湯流量を求めることができる。
【0069】
なお、本実施形態では、水位サーミスタ34bおよび複数の水位サーミスタ34bが第1実施形態における流量検出手段である。また、図4に示すように、給水サーミスタ32を第1給湯用流体供給回路30a側の給湯用熱交換器12の二次側流路12bの上流側にも設け、出湯サーミスタ31を二次側流路12bの下流側に設けると良い。これによれば、給湯用熱交換器12の二次側流路12bに供給される給水温度が正確に検出することができる。
【0070】
(他の実施形態)
以上の実施形態では、給湯制御装置20において、給湯している間に給湯流量が変動したときに、給湯必要熱量演算手段(ステップ230)により変動後の給湯必要熱量を求めるとともに、目標高圧圧力演算手段(ステップ240)で求めた変動後の目標高圧圧力および目標回転数演算手段(ステップ250)で求めた変動後の目標回転数に基づいて、圧縮機11、電気式膨張弁13を含む加熱装置10を制御するように構成したが、これに限らず、使用者が設定温度を変更したときも給湯必要熱量が変動するため上記と同じ制御を行なうように構成しても良い。
【0071】
また、以上の実施形態では、冷媒に二酸化炭素(CO)を用いた冷媒回路15からなる加熱装置10として説明したが、これに限らず、フロン、代替フロンなどの冷媒を用いる一般的なヒートポンプサイクルでも良い。また、二酸化炭素(CO)の他に、エチレン、エタン、酸化窒素などの冷媒であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1実施形態におけるヒートポンプ給湯装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態における給湯制御プログラムの制御処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1実施形態における二酸化炭素(CO)を冷媒とする加熱装置10の圧力とエンタルピとの関係を示すモニエル線図である。
【図4】本発明の第2実施形態におけるヒートポンプ給湯装置の全体構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0073】
10…加熱装置
11…圧縮機
12…給湯用熱交換器
13…電気式膨張弁(減圧手段)
14…冷媒蒸発器
15a…第1圧力センサ(高圧圧力検出手段)
20…給湯制御装置(制御手段)
30…給湯用流体供給回路
31…出湯サーミスタ(出湯温度検出手段)
32…給水サーミスタ(給水温度検出手段)
34…流量カウンタ(流量検出手段)
230…給湯必要熱量演算手段
240…目標高圧圧力演算手段
250…目標回転数演算手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側流路に流通する高圧冷媒と二次側流路に流通する給湯用流体とを熱交換する給湯用熱交換器(12)を含むヒートポンプサイクルからなり、前記二次側流路に流れる給湯用流体を加熱する加熱装置(10)と、
前記二次側流路に水を供給するとともに、前記給湯用熱交換器(12)により得られた温水を出湯する給湯用流体供給回路(30)と、
前記給湯用流体供給回路(30)に供給される水を所望する給湯温度になるように圧縮機(11)、減圧手段(13)を含む前記加熱装置(10)を制御する制御手段(20)とを備えるヒートポンプ給湯装置において、
前記制御手段(20)は、前記給湯用流体供給回路(30)に流れる給湯用流体の水流に応じた給湯必要熱量を求める給湯必要熱量演算手段(230)と、
前記給湯用熱交換器(12)で熱交換された給湯用流体が前記給湯必要熱量演算手段(230)で求められた給湯必要熱量となる一次側流路に流通する高圧冷媒の高圧圧力を目標高圧圧力として求める目標高圧圧力演算手段(240)と、
前記目標高圧圧力演算手段(240)で求められた目標高圧圧力に基づいて、前記圧縮機(11)の目標回転数を求める目標回転数演算手段(250)とを具備することを特徴とするヒートポンプ給湯装置。
【請求項2】
前記制御手段(20)は、前記給湯用流体供給回路(30)に水流が発生したときに、前記目標高圧圧力演算手段(240)で求めた目標高圧圧力および前記目標回転数演算手段(250)で求めた目標回転数に基づいて、前記圧縮機(11)、前記減圧手段(13)を含む前記加熱装置(10)を制御することを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ給湯装置。
【請求項3】
前記目標高圧圧力演算手段(240)は、前記給湯用流体供給回路(30)から出湯する給湯用流体の所望する給湯温度、前記減圧手段(13)で減圧された冷媒を蒸発する冷媒蒸発器(14)に通風される外気の外気温度、および前記給湯用流体供給回路(30)に供給される水の給水温度に基づいて求めることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヒートポンプ給湯装置。
【請求項4】
前記給湯用流体供給回路(30)に供給する水の給水温度を検出する給水温度検出手段(32)が設けられ、
前記目標高圧圧力演算手段(240)は、前記給湯用流体供給回路(30)に水流が発生したときの目標高圧圧力を求めるときに、その目標高圧圧力を求める前の所定期間内に前記給水温度検出手段(32)により検出して学習制御された給水温度を用いることを特徴とする請求項3に記載のヒートポンプ給湯装置。
【請求項5】
前記目標回転数演算手段(250)は、前記減圧手段(13)で減圧された冷媒を蒸発する冷媒蒸発器(14)に通風される外気の外気温度、前記冷媒蒸発器(14)で蒸発する冷媒の蒸発温度、および前記目標高圧圧力演算手段(240)で求められた目標高圧圧力に基づいて求めることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヒートポンプ給湯装置。
【請求項6】
前記給湯用熱交換器(12)の一次側流路に流通する高圧冷媒の高圧圧力を検出する高圧圧力検出手段(15a)が設けられ、
前記制御手段(20)は、前記目標回転数演算手段(250)で求めた目標回転数で前記圧縮機(11)を制御しているときに、前記高圧圧力検出手段(15a)により検出された高圧圧力が前記目標高圧圧力演算手段(240)で求めた目標高圧圧力になるように前記減圧手段(13)の開度を制御することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のヒートポンプ給湯装置。
【請求項7】
前記給湯用流体供給回路(30)に流れる給湯用流体の出湯温度を検出する出湯温度検出手段(31)が設けられ、
前記制御手段(20)は、前記目標回転数演算手段(250)で求めた目標回転数で前記圧縮機(11)を制御しているときに、前記出湯温度検出手段(31)により検出された出湯温度と所望する給湯温度との温度差に基づいて、前記目標回転数を補正するように制御することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のヒートポンプ給湯装置。
【請求項8】
前記給湯用流体供給回路(30)に流れる給湯用流体の流量を検出する流量検出手段(34)が設けられ、
前記制御手段(20)は、前記目標回転数演算手段(250)で求めた目標回転数で前記圧縮機(11)を制御しているときにおいて、前記流量検出手段(34)により検出された流量が変動したときは、前記給湯必要熱量演算手段(230)により変動後の給湯必要熱量を求めるとともに、前記目標高圧圧力演算手段(240)で求めた変動後の目標高圧圧力および前記目標回転数演算手段(250)で求めた変動後の目標回転数に基づいて、前記圧縮機(11)、前記減圧手段(13)を含む前記加熱装置(10)を制御することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のヒートポンプ給湯装置。
【請求項9】
前記加熱装置(10)は、冷媒の高圧側圧力が臨界圧力以上となる超臨界ヒートポンプサイクルであり、前記臨界圧力以上に昇圧された冷媒により前記給湯用流体供給回路(30)に供給された水を加熱することを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載のヒートポンプ給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−200843(P2006−200843A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−14659(P2005−14659)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】