説明

ヒ素を含むオレフィンガソリンの脱硫の二工程方法

【課題】ヒ素を捕捉し、かつ、オレフィン、硫黄およびヒ素を含む炭化水素フラクションを脱硫するための固定床方法において、水素化脱硫活性、HDS/HDO選択性および捕捉塊体上のヒ素の捕捉の間の良好な折衷を得る。
【解決手段】本発明は、水素の存在下に捕捉塊体を該炭化水素フラクションと接触させる工程a)を包含し、該捕捉塊体は、硫化物形態のモリブデンおよび硫化物形態のニッケル;およびアルミナ類、シリカ、シリカ−アルミナ類、酸化チタンおよび酸化マグネシウムによって構成された群から選択された少なくとも1種の多孔質担体を含み、ニッケル含有量は、10〜28重量%(硫化前の捕捉塊体上の酸化ニッケルの百分率として表される)であり、モリブデン含有量は、0.3〜2.1重量%(硫化前の捕捉塊体上の酸化モリブデンの百分率として表される)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
低硫黄ガソリンの製造には、水素化脱硫方法が必要とされる。この水素化脱硫方法は、従来、ガソリンに含まれる硫黄含有化合物を、水素を豊富に含むガスと接触させる工程を含む。このようなガソリンのオクタン価は、そのオレフィン含有量と非常に強く関連している。ガソリンのオクタン価を維持するために、オレフィンの水素化反応は制限されなければならない。それ故に、オレフィンガソリンを選択的に水素化脱硫する方法は、製油業者が燃料に関する将来の規格に従うことができるように1990年代の間に開発された。
【0002】
このような方法において、硫黄含有化合物の転化度を高く維持するために、使用済み触媒は、規則的に新鮮な触媒と置き換えられる。水素化処理触媒の不活性化は、通常、処理されたガソリン中に存在する不純物の存在と関連している。それ故に、ガソリン中に水銀、ヒ素のような重金属または有機金属化合物類の形態のケイ素等の汚染物が存在すると、水素化処理触媒の迅速な不活性化がもたらされる。
【0003】
種々の解決方法が、オレフィンおよび硫黄含有化合物を含むガソリン中に存在するヒ素を抽出するために提案された。しかしながら、これらの解決方法のいずれも、水素化反応を制限しながら、前記ガソリンからヒ素を捕捉し、かつ、前記ガソリンを脱硫するために適していない。
【背景技術】
【0004】
特許文献1には、ニッケル、モリブデンおよびリンを含有するナフサ留分または原油の蒸留からの留出物中のヒ素の捕捉に適している触媒が記載されている。ニッケルおよびモリブデン含有量は8重量%超であり、リン含有量は0.1〜3重量%である。本発明との関連で提示された解決方法は、特許文献1において提示された解決方法とは、特に、第VIB族元素の量が0.3〜2.1重量%であるという事実により異なっている。
【0005】
特許文献2には、耐火性担体と、モリブデンおよびタングステンから選択された少なくとも8重量%の第VIB族元素と、ニッケルおよびコバルトから選択された所定量の第VIII族元素とを含み、第VIII族元素と第VIB族元素の間のモル比が1.5〜2.5であるようにされる、炭化水素留分中のヒ素の捕捉に適している触媒が記載されている。本発明との関連で提示された解決方法は、この特許出願において提示された解決方法とは、特に、第VIB族元素の量が0.3〜2.1重量%である点で異なっている。
【特許文献1】米国特許第6759364号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/111391号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、水素化脱硫活性、HDS/HDO(hydrodesulphurization(水素化脱硫)/olefin hydrogenation(オレフィン水素化))選択性および捕捉塊体上のヒ素の捕捉の間の良好な折衷を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、ヒ素を捕捉し、かつ、オレフィン、硫黄およびヒ素を含む炭化水素フラクションを脱硫するための固定床方法であって、水素の存在下に捕捉塊体を該炭化水素フラクションと接触させる工程a)を包含し、該捕捉塊体は、
・硫化物形態のモリブデンおよび硫化物形態のニッケル;および
・アルミナ類、シリカ、シリカ−アルミナ類、酸化チタンおよび酸化マグネシウムによって構成された群から選択された少なくとも1種の多孔質担体
を含み、ニッケル含有量は、10〜28重量%(硫化前の捕捉塊体上の酸化ニッケルの百分率として表される)であり、モリブデン含有量は、0.3〜2.1重量%(硫化前の捕捉塊体上の酸化モリブデンの百分率として表される)であるものである。
【0008】
上記本発明において、好ましくは、工程a)からの流出物が、選択的水素化脱硫触媒と接触させられる工程b)を包含する。
【0009】
好ましくは、炭化水素フラクションは、5〜60重量%のオレフィン、50〜6000重量ppmの硫黄および10〜1000重量ppbのヒ素を含有する接触分解ガソリンである。
【0010】
好ましくは、前記多孔質担体は、アルミナ類およびシリカ−アルミナ類によって構成された群から選択される。
【0011】
好ましくは、前記多孔質担体の比表面積は30〜350m/gである。
【0012】
好ましくは、捕捉塊体はリンを含み、リン含有量は、0.1〜10重量%(硫化前の捕捉塊体上の酸化リンの百分率として表される)である。
【0013】
好ましくは、選択的水素化脱硫触媒は、第VIB族金属と、第VIII族金属と、アルミナ類、シリカ、シリカ−アルミナ類、炭化ケイ素、酸化チタン(単独でまたはアルミナまたはシリカ−アルミナとの混合物として用いられる)および酸化マグネシウム(単独でまたはアルミナまたはシリカ−アルミナとの混合物として用いられる)によって構成された群から選択された少なくとも1種の担体とを含む。
【0014】
好ましくは、工程a)において、水素流量と炭化水素フラクションの流量との間の比は、50〜800Nm/mであり、操作温度は200〜400℃であり、操作圧力は0.2〜5MPaである。
【0015】
好ましくは、工程a)において、水素流量と炭化水素フラクションの流量との間の比は、100〜600Nm/mであり、操作温度は240〜350℃であり、操作圧力は0.5〜3MPaである。
【0016】
好ましくは、工程b)は、工程a)からの流出物の硫黄含有量が10ppm超である場合に行われる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、ヒ素を捕捉し、かつ、オレフィン、硫黄およびヒ素を含む炭化水素フラクションを脱硫するための固定床方法であって、水素の存在下に捕捉塊体を前記炭化水素フラクションと接触させる工程a)を包含し、水素流量と炭化水素フラクションの流量との間の比は50〜800Nm/mであり、操作温度は200〜400℃であり、操作圧力は0.2〜5MPaである方法に関する。捕捉塊体は、硫化物形態のモリブデンと、硫化物形態のニッケルと、アルミナ類、シリカ、シリカ−アルミナ類、酸化チタンおよび酸化マグネシウムによって構成された群から選択された少なくとも1種の多孔質担体とを含む。ニッケル含有量は、10〜28重量%であり、モリブデン含有量は、0.3〜2.1重量%である。上記のような本発明により、水素化脱硫活性、HDS/HDO(hydrodesulphurization(水素化脱硫)/olefin hydrogenation(オレフィン水素化))選択性および捕捉塊体上のヒ素の捕捉の間の良好な折衷を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、ヒ素を捕捉し、かつ、オレフィン、硫黄およびヒ素を含む炭化水素フラクションを脱硫するための固定床方法に関する。本方法は、水素の存在下に捕捉塊体を前記炭化水素フラクションと接触させる工程a)を包含する。水素流量と炭化水素フラクションの流量との間の比は、50〜800Nm/m、好ましくは100〜600Nm/m、より好ましくは200〜400Nm/mである。操作温度は、200〜400℃、好ましくは240〜350℃である。操作圧力は、0.2〜5MPa、好ましくは0.5〜3MPaである。
【0019】
捕捉塊体は、
・硫化物形態のモリブデンおよび硫化物形態のニッケル;および
・アルミナ類、シリカ、シリカ−アルミナ類、酸化チタン、酸化マグネシウムによって、好ましくは、アルミナおよびシリカアルミナ類によって構成された群から選択された少なくとも1種の多孔質担体
を含む。
【0020】
ニッケル含有量は、10〜28重量%(硫化前の捕捉塊体上の酸化ニッケルの百分率(%)として表される)である。モリブデン含有量は、0.3〜2.1重量%(硫化前の捕捉塊体上の酸化モリブデンの百分率(%)として表される)である。
【0021】
(工程a))
この説明中にppmまたはppbで与えられた値は、重量によって表されるppmおよびppbである;1000ppb=1ppm。
【0022】
用語「モノ−オレフィン」(通常は、アルケンと称される)は、単一の二重結合を有する炭化水素分子を指す。
【0023】
本発明は、好ましくは、接触分解装置、熱分解(thermal cracking)装置または水蒸気分解(steam cracking)装置に由来する分解ガソリン留分の処理に適用する。ガソリンは、一般的には、沸点範囲が5個の炭素原子を含む炭化水素の沸点から約250℃まで延びる炭化水素留分である。
【0024】
本発明はまた、オレフィンを含有する分解ガソリンを伴う、原油に由来する重金属を含み得る直留蒸留からのガソリン混合物の処理に適用する。
【0025】
好ましくは、炭化水素フラクションは、接触分解ガソリンであって、5〜60重量%のオレフィン、50〜6000重量ppmの硫黄および10〜1000重量ppbのヒ素を含有するものである。
【0026】
本発明との関連で、捕捉工程a)の間のオレフィンの水素化度は、50%未満、好ましくは30%未満、より好ましくは20%未満である。
【0027】
ヒ素含有化合物を捕捉する際に活性であるために、捕捉塊体は、一般的には、ヒ素の捕捉速度が最大にされ、その一方でオレフィンの水素化速度を制限するような操作条件下に用いらなければならない。
【0028】
用いられる水素は、あらゆる水素源に由来し得る。好ましくは、精油所に由来する新鮮な水素および/または水素化脱硫装置から、好ましくは、精製されるべき炭化水素留分の水素化脱硫装置から再循環させられた水素が用いられる。
【0029】
反応器の操作温度は、一般的には200〜400℃、好ましくは240〜350℃、より好ましくは260〜340℃である。
【0030】
圧力は、一般的には0.2〜5MPa、好ましくは0.5〜3MPaである。
【0031】
用いられるべき捕捉塊体の量は、一般的に、仕込原料の汚染物の量、所望の耐用期間および固体上の「捕捉剤」の最大量に応じて計算される。
【0032】
担体の比表面積は、一般的には30〜350m/g、好ましくは60〜200m/g、より好ましくは79〜140m/gである。
【0033】
変形例において、捕捉塊体はリンを含み、リンの含有量は、0.1〜10重量%(硫化前の捕捉塊体上の酸化リンの百分率(%)として表される)である。
【0034】
(工程b))
工程a)に次いで、一般的には、選択的水素化脱硫工程b)が行われる。実際に、工程a)は、硫黄含有有機化合物の一部をHSに変換し得る。しかしながら、工程a)からの流出物の硫黄含有量が10ppm超である場合、ヒ素を含まないガソリンは、この選択的水素化脱硫工程b)において処理されて、現行の規格を満たす低硫黄含有量のガソリンが生じさせられる。工程b)の間、工程a)からの流出物は、選択的水素化脱硫触媒と接触させられる。
【0035】
工程b)において用いられる触媒は、一般的には、工程a)において用いられた捕捉塊体によって仕込原料中に存在するヒ素から保護される。それ故に、高度に選択的な水素化脱硫触媒であって、ヒ素の存在に敏感なものが工程b)において用いられ得る。
【0036】
あらゆる水素化脱硫触媒が工程b)において用いられ得る。しかしながら、水素化脱硫反応に関して良好な選択性を有する触媒を用いることが好ましい。このような触媒は、一般的には、少なくとも1種の無定型鉱物、多孔質担体、第VIB族金属および第VIII族金属を含む。第VIB族金属は、一般的には、モリブデンまたはタングステンであり、第VIII族金属は、一般的にはニッケルまたはコバルトである。
【0037】
担体は、一般的には、アルミナ類、シリカ、シリカ−アルミナ類、炭化ケイ素、酸化チタン(単独でまたはアルミナまたはシリカ−アルミナとの混合物として用いられる)、および酸化マグネシウム(単独でまたはアルミナまたはシリカ−アルミナとの混合物として用いられる)によって構成された群から選択される。好ましくは、担体は、アルミナ類、シリカおよびシリカ−アルミナ類によって構成された群から選択される。
【0038】
工程a)およびb)が連続して行われる場合、同一の圧力、温度および水素流量の条件下に二工程を操作することが有利である。
【0039】
変形例では、捕捉塊体は、工程b)が行われる水素化脱硫反応器の保護層(guard bed)としての位置に置かれる。
【0040】
別の変形例では、工程a)は、別の捕捉反応器において行われ、工程b)が行われる水素化脱硫反応器の上流に置かれる。
【0041】
捕捉塊体を調製する方法は、いかなる場合にも、本発明の制限要素ではない。
【0042】
本発明の捕捉塊体は、当業者に知られるあらゆる技術を用いて調製され得る。
【0043】
それは、一般的には、溶解塩の形態の所望量の金属元素を選択された溶媒、例えば、脱ミネラル水に正確に溶解させ、調製された溶液を用いて可及的に精密に担体の細孔を満たすことからなる乾式含浸法を用いて調製される。
【0044】
これにより得られた固体は、乾燥工程および/または焼成工程および/または還元工程を経てよい。次に、それは、一般的には、硫化工程を経る。好ましくは、固体は、乾燥工程を経、場合によっては、次いで焼成工程が行われる。
【0045】
一般的に、硫化は、所定の温度で水素とHSを生じ得る分解可能な硫黄含有有機化合物、例えば、DMDS(dimethyl disulphide:ジメチルジスルフィド)とに接触させて、または、HSおよび水素のガス流と直接的に接触させて捕捉塊体を処理することによって行われる。
【0046】
この工程は、反応装置の内側(現場)または外側(現場外)のいずれかにおいて、100〜600℃、好ましくは200〜500℃、さらには300〜450℃の温度で行われる。
【0047】
変形例では、捕捉塊体の硫化は、重金属の捕捉の間に行われる。それ故に、捕捉塊体は、酸化物の形態で装入され、処理されるべき炭化水素フラクションは、それが含む硫黄含有化合物の部分的な分解によって、HSを生じさせ、これが、捕捉塊体を硫化し得、金属酸化物を金属硫化物に変換する。
【0048】
本方法は、当業者に知られるあらゆるタイプの反応器において行われ得る。操作は、本質的な性能を改変することなく、しかし、簡単に耐用期間を最適化することによって、原理と塊体の適用を促進する。
【0049】
(実施例1:固体の調製)
以下の実施例では、担体の比表面積は、BET法(標準ASTM D3663)を用いて測定された。細孔容積は、標準ASTM D4284−92を用いるぬれ角140°による水銀多孔度測定法によって測定された。
【0050】
本発明の捕捉塊体は、連続的な含浸によって調製された。ニッケルは、硝酸ニッケルから調製された水溶液の二重の乾式含浸によって担持させられ、金属を含有する溶液の容積は、担体の塊体の細孔容積に等しかった。捕捉塊体A(本発明に一致しない)のために、このニッケルの含浸工程のみが行われた。
【0051】
用いられた担体は、遷移アルミナであって、比表面積が135m/gであり、細孔容積が1.12cm/gであるものであった。
【0052】
水溶液の前駆体の濃度は、重量による所望量を担体上に担持させるように調節された。
【0053】
次いで、固体は、12時間にわたって120℃で乾燥させられ、空気中500℃で2時間にわたって焼成された。
【0054】
モリブデンを含有する捕捉塊体(塊体BおよびC)の場合、これは、第二工程において、七モリブデン酸六アンモニウムから調製された水溶液の乾式含浸によって担持させられ、金属を含有する溶液の容積は、担体塊体の細孔容積と厳密に等しかった。水溶液中の前駆体の濃度は、重量による所望量を担体上に担持させるように調節された。次いで、固体は、12時間にわたって120℃で乾燥させられ、空気中500℃で2時間にわたって焼成された。
【0055】
捕捉塊体中の金属酸化物の量は、表1に記載される。
【0056】
選択的水素化脱硫触媒(触媒D)は、選択的水素化脱硫触媒であって、10.3重量%の酸化モリブデンおよび2.9重量%の酸化コバルトを含むものである。用いられた担体は、遷移アルミナであって、比表面積が135m/gであり、細孔容積が1.12cm/gであるものであった。
【0057】
この触媒の金属酸化物の量は、表1に記載される。
【0058】
【表1】

【0059】
(実施例2:ヒ素捕捉塊体)
ヒ素捕捉試験は、管状反応器の内側において連続的な固定床に充填された捕捉塊体について行われた。この場合、本発明者らは、その飽和度を研究するために、攻撃床(attack bed)中(すなわち、連続固定床の最初の床上)に配置された捕捉塊体に興味を持った。ヒ素を含有する接触分解(FCC)ガソリンであって、表2に示される組成特徴を有するものが、反応器に充填された種々の床を通じて浸透するように注入された。
【0060】
【表2】

【0061】
操作条件は、以下の通りであった:
・ P=2.0MPa;
・ H/仕込原料=300標準リットル/リットル(炭化水素仕込原料)
・ HSV(houry spece velosoty:毎時空間速度)=4h−1
・ T=260℃。
【0062】
捕捉塊体は、予備硫化された状態で充填された。捕捉塊体の活性化は、水素中250℃で、触媒の重量(g)当たり水素1.2標準リットルの流量で行われた。
【0063】
ヒ素の捕捉は、液体流出物中のヒ素含有量を測定することによってモニタリングされた。ヒ素は、原子吸光分析法(黒鉛炉)によって分析された。試験は、ヒ素が現れた時、すなわち、分析方法で流出物中にヒ素が検出された時に終了させられた。
【0064】
次いで、捕捉塊体は排出された。固体によって捕捉されたヒ素の重量による量は、X線蛍光によって測定された。
【0065】
捕捉塊体は、実施例1に従って調製された。酸化モリブデンおよび酸化ニッケルに対する活性相におけるそれらの重量含有量並びに捕捉されたヒ素の量(重量百分率)が表3に与えられる。
【0066】
【表3A】

【0067】
捕捉塊体Bは、14.8重量%のヒ素を捕捉した。すなわち、基準捕捉塊体Aにについての12.1重量%より多く、捕捉塊体Cについての10.2重量%より多かった。
【0068】
(実施例4:活性および選択性試験)
水素化脱硫(HDS)およびHDS/HDO(hydrodesulphurization/olefin hydrogenation)選択性についての触媒性能を評価するために、10重量%の2,3−ジメチルブタ−2−エンおよび0.33重量%の3−メチルチオフェン(すなわち、仕込原料に対して1000ppmの硫黄)を含有する接触分解ガソリン(FCC)の典型であるモデル装入材料が用いられた。用いられた溶媒はヘプタンであった。捕捉塊体は、現場外において気相中500℃で2時間にわたってH中HS(15%)の流れの中で予備硫化された。
【0069】
反応は、閉塞グリニャール(Grignard)型反応器中で、3.5MPaの水素圧力下に250℃で行われた。上記の仕込原料および触媒がこの反応器に導入された。種々の時間間隔でサンプルが取られ、ガスクロマトグラフィーによって分析されて、試薬の消失および結果として生じる生成物の出現が観察された。
【0070】
活性は、硫黄含有化合物に対して1次であると仮定して、酸化物形態の固体の容積に規格化された水素化脱硫反応(HDS)についての速度定数kHDSとして表された。選択性は、規格化された速度定数比kHDS/kHDOとして表された(kHDOは、オレフィンに対して1次であると仮定して、オレフィンの水素化反応(HDO)についての、酸化物形態の固体の容積当たりの規格化された速度定数である)。
【0071】
値は、基準として触媒Dを採用し、および、kHDS/kHDO=100およびkHDS=100を採用することによって規格化された。
【0072】
【表3B】

【0073】
基準触媒Dに対して規格化されたHDS活性およびHDS/HDO選択性の観点からの捕捉塊体の触媒性能が表4に与えられる。各固体によって捕捉されたヒ素の量も示される。
【0074】
【表4】

【0075】
捕捉塊体Aは、基準触媒Dよりも活性が大きく劣っており、わずかに21%のHDS活性を有していた。それは、基準触媒Dよりも選択性がはるかに高くなっており、選択性は4倍であった。
【0076】
捕捉塊体Bは、基準触媒Dよりも活性が劣っており、57%のHDS活性を有していた。それはまた、触媒Dより選択性が高くなっており、基準の選択性の1.7倍であった。それ故に、この固体によって、ヒ素化捕捉、HDS活性およびHDS/HDO選択性の間のより良好な折衷がもたらされる。
【0077】
捕捉塊体Cは、基準触媒Dよりも活性がわずかに高く、108%のHDS活性を有していた。それは、基準触媒Dより選択性が劣っており、その選択性は、0.88倍であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒ素を捕捉し、かつ、オレフィン、硫黄およびヒ素を含む炭化水素フラクションを脱硫するための固定床方法であって、
水素の存在下に捕捉塊体を該炭化水素フラクションと接触させる工程a)を包含し、該捕捉塊体は、
・硫化物形態のモリブデンおよび硫化物形態のニッケル;および
・アルミナ類、シリカ、シリカ−アルミナ類、酸化チタンおよび酸化マグネシウムによって構成された群から選択された少なくとも1種の多孔質担体
を含み、ニッケル含有量は、10〜28重量%(硫化前の捕捉塊体上の酸化ニッケルの百分率として表される)であり、モリブデン含有量は、0.3〜2.1重量%(硫化前の捕捉塊体上の酸化モリブデンの百分率として表される)である方法。
【請求項2】
工程a)からの流出物が、選択的水素化脱硫触媒と接触させられる工程b)を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
炭化水素フラクションは、5〜60重量%のオレフィン、50〜6000重量ppmの硫黄および10〜1000重量ppbのヒ素を含有する接触分解ガソリンである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記多孔質担体は、アルミナ類およびシリカ−アルミナ類によって構成された群から選択される、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記多孔質担体の比表面積は30〜350m/gである、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
捕捉塊体はリンを含み、リン含有量は、0.1〜10重量%(硫化前の捕捉塊体上の酸化リンの百分率として表される)である、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
選択的水素化脱硫触媒は、第VIB族金属と、第VIII族金属と、アルミナ類、シリカ、シリカ−アルミナ類、炭化ケイ素、酸化チタン(単独でまたはアルミナまたはシリカ−アルミナとの混合物として用いられる)および酸化マグネシウム(単独でまたはアルミナまたはシリカ−アルミナとの混合物として用いられる)によって構成された群から選択された少なくとも1種の担体とを含む、請求項2〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
工程a)において、水素流量と炭化水素フラクションの流量との間の比は、50〜800Nm/mであり、操作温度は200〜400℃であり、操作圧力は0.2〜5MPaである、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
工程a)において、水素流量と炭化水素フラクションの流量との間の比は、100〜600Nm/mであり、操作温度は240〜350℃であり、操作圧力は0.5〜3MPaである、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
工程b)は、工程a)からの流出物の硫黄含有量が10ppm超である場合に行われる、請求項2〜9のいずれか1つに記載の方法。

【公開番号】特開2009−127050(P2009−127050A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294993(P2008−294993)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(591007826)イエフペ (261)
【Fターム(参考)】