説明

ビウレット化合物、その製造及び使用、ならびにその製造のための中間体

【課題】塗料、エポキシ系コーティングのような液状コーティングシステムのレオロジーを調節するチキソトロピー剤として有効な化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式で表されるビウレット化合物。


ここで、R1はアルキレン、シクロアルキレン、アリーレン又はアラルキレン、Yは−O−及び/又は−NH−、R2はアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アラルキルなど、R3、R4及びR5はアルキレン、シクロアルキレン、アリーレン又はアラルキレン、Zは−COO−、NHCO−、NHCOO−、NHCONH−及び/又はこれらの混合物、aは1〜20である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビウレット化合物、それを製造する方法及びその使用に関する。さらに、本発明のビウレット化合物を製造するために有用な中間体であるウレタン及び/又は尿素を含有するウレトジオン(uretdione)に関する。
本発明のビウレット化合物は、溶媒系(solvent−borne)、無溶媒系及び水系の塗料、PVCプラスチゾル、エポシキ系コーティング及び不飽和ポリエステル樹脂系のコーティングのようなコーティングシステムのためのチキソトロピー剤としての使用に適している。
【0002】
例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3に記述されているように、液状コーティングシステムのレオロジーを調節するために、シリカ、水添ひまし油又は有機物で修飾したベントナイトを使用するのが一般的である。また、ポリアミドワックスも広く使用されている。特に、ポリアミド及びポリアミドエステル分野においては、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7及び特許文献8などの多くの特許がある。また、特許文献9及び特許文献10に記述されているように、修飾したベントナイトとポリアミドとの組合せも使用されている。
【0003】
これらの物質は一般的に乾燥固体物又はペーストであり、剪断力を用いて溶媒を使用する半製品に移送しなければならず、また、目標温度を調節して液状コーティングシステムに導入しなければならないという、デメリットがある。この温度が目標値通りに維持できない場合には、完成したコーティングシステム中で結晶化が生じ、このコーティングの欠陥となる。このシステムの一般的なデメリットは、クリヤーで透明なコーティングに濁りやヘイズを生じる原因となることである。さらに、乾燥製品を取扱うことで、プロセシングの間に粉塵が生じる。上記のポリアミドエステルは液状であることが多いので、本質的に固体物質よりも効果が低い。
【0004】
レオロジー調節のための他の解決策が特許文献11に開示されている。ここでは、バインダの存在下にイソシアネーとアミンとが反応して尿素となる。この尿素は非常に細かい分散型で針状結晶となる。このように修飾されたバインダはレオロジー調節及び垂れ防止バインダとして提供され、「垂れ調節剤」と称されている。これらの製品のデメリットは、これらがバインダ中で製造されるので、常にバインダと結びついており、既成のコーティング材料を自在に修正することができないということである。
【0005】
特許文献12には、上述のデメリットの幾つかを解消するためのチキソトロピー剤を製造する方法が記述され、非プロトン性溶媒中、LiClの存在下にイソシアネート付加物とポリアミンとを反応させて得られる尿素ウレタンが記述されている。このようにして製造された生成物のデメリットは、該尿素ウレタンの構造を明確にすることができず、その製造方法に影響することである。この方法では、1モルのジイソシアネートと1モルのモノアルコールとを最初に反応させる。これにより、所望のNCO官能性モノ付加物のみならず、NCO官能性でない二付加物も製造される。また、単量体であるジイソシアネートのある量が未反応のままで残存する。NCO基の有効性ならびに温度や時間のような反応条件により、これらの種々の化合物の割合が変化する。しかしながら、このようにして製造された付加物のすべてが比較的多量の未反応ジイソシアネートを含有し、これがさらにポリアミドと反応して分子鎖を延長するが、これを調節することができない。これらの生成物は沈殿や所望しないゲル化を生じさせる傾向にあり、いわゆるバインダ中に種まきするということになる。特許文献13には、過剰のイソシアネートを除去してこれらのデメリットを回避している。しかし、これらの生成物は、例えばアルカリ金属塩を一緒に用いたN−メチルピロリドンのような高極性溶媒中でのみ安定な溶液となるというデメリットがある。
【0006】
【特許文献1】米国特許4,208,218
【特許文献2】米国特許4,410,364
【特許文献3】米国特許4,412,018
【特許文献4】ドイツ特許69523221
【特許文献5】欧州特許0528363
【特許文献6】欧州特許0239419
【特許文献7】米国特許5,510,452
【特許文献8】米国特許5,349,011
【特許文献9】欧州特許0509202
【特許文献10】ドイツ特許69704691
【特許文献11】欧州特許0198 519
【特許文献12】欧州特許出願0 006 252
【特許文献13】ドイツ特許出願19919482
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、所定の構造を有するチキソトロピー剤を製造する方法、ならびに該チキソトロピー剤によりチキソトロピークの効果的プロフィル及び再現性を確実に改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、ウレトジオン(成分A)及びジアミン(成分B)から製造され、A−B−Aの一般構造を有するビウレット化合物を用いて、この目的を達成することを見出した。
【発明の効果】
【0009】
所定の構造を有するチキソトロピー剤によりチキソトロピーの効果的プロフィル及び再現性を確実に改善する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
すなわち、本発明は下記の一般式のビウレット化合物を提供する。
【0011】
【化1】

【0012】
ここで、R1はC2〜C18のアルキレン、シクロアルキレン、アリーレン又はアラルキレン、Yは−O−及び/又は−NH−、R2はC4〜C22アルキル、C3〜C18アルケニル、シクロアルキル、アラルキル、Cm2m+1(O−Cn2nx−(O−CH(C65)−CH2u−、Cm2m+1(OOC−Cv2vx−、X−C64−(O−Cn2nx−(O−CH(C65)−CH2u−(ここで、m=1〜22、n=2〜4、x=0〜15、u=0〜15、v=4〜5、及びXはC1〜C12アルキル又は−(C651-4)、ならびにR3、R4及びR5はC2〜C18アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン又はアラルキレンであり、それぞれ同一でも異なっていても良く、Zは−COO−、NHCO−、NHCOO−、NHCONH−及び/又はこれらの混合物であり、aは1〜20である。
【0013】
2ラジカルとしては、エチレンオキシド基、プロピレンオキシド基及び/又はブチレンオキシド基を含有するポリアルコキシモノアルコールラジカルが好ましい。
【0014】
さらに、本発明はビウレット化合物を製造する方法を提供するものであり、該製造方法においては、下記の一般式(A)のウレトジオンと下記一般式(B)のジアミンと反応させる。
【0015】
【化2】

【0016】
ここで、R1はC2〜C18のアルキレン、シクロアルキレン、アリーレン又はアラルキレン、Yは−O−及び/又は−NH−、R2はC4〜C22アルキル、C3〜C18アルケニル、シクロアルキル、アラルキル、Cm2m+1(O−Cn2nx−(O−CH(C65)−CH2u−、Cm2m+1(OOC−Cv2vx−、X−C64−(O−Cn2nx−(O−CH(C65)−CH2u−(ここで、m=1〜22、n=2〜4、x=0〜15、u=0〜15、v=4〜5)、及びXはC1〜C12アルキル又は−(C651-4である。
【0017】
(B) H2N−R3−[Z−R4−Z−R5a−NH2
ここで、R3、R4及びR5はC2〜C18アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン又はアラルキレンであり、それぞれ同一でも異なっていても良く、Zは−COO−、NHCO−、NHCOO−、NHCONH−及び/又はこれらの混合物であり、aは1〜20である。
【0018】
本発明のビウレット化合物の製造では、ウレトジオン含有のポリイソシアネートをそのウレトジオン部分を保持しながら、モノアルコール及び/又はモノアミンと最初に反応させてウレタン及び/又は尿素を含有するポリマーを生成させ、次に、ポリアミンと反応させてウレトジオン環を開環し、本発明のビウレット化合物を製造する。
【0019】
当業者が知っているように、ウレトジオンは、特定の触媒を使用して単量体のジイソシアネートを付加反応させて製造する(H.J. Laas、Halpaap、J.Pedain;J.prakt.Chemie 336(1994)、185−200)。HDIウレトジオンが好ましく、Bayer社のDesmodur N 3400として市販されている。これは、ウレトジオン部分の他に、HDI三量体及びアロファネートを含有している。
【0020】
最初のステップで使用するモノアルコールは脂肪族、脂環式及びアラリファチックのアルコールである。脂肪族アルコールについては、炭素鎖長がC2〜C22の線状、分岐状又は環状アルコールが使用され、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、オレイルアルコール及びステアリルアルコールが挙げられる。脂環式アルコールとしては、シクロペンタノール及びシクロヘキサノールなどがある。アラリファチックアルコールとしては、ベンジルアルコールのようなものが使用できる。ポリオレフィンモノオール、ポリアクリレートモノオール、ポリカーボネートモノオール、ポリカプロラクトンモノオール又はポリシロキサンモノオールのような重合体アルコールも同様に使用することができるし、BASF社の商標名「Lutensol」として当業者に知られているようなもので、種々のアルコキシル化度の脂肪族アルコールアルコキシエステルのようなものである。エチレンオキシド基、プロピレンオキシド基及び/又はブチレンオキシド基を含有し、かつスチレンオキシドで修飾されてもよいポリアルコキシモノアルコールが好ましい。例えば、原料のメタノールから製造され、かつ末端OH基を有するポリエチレングリコールであるMPEG 350、MPEG 500及びMPEG 750のようなポリアルコキシモノアルコールが特に好ましい。これらのモノアルコールは混合物で使用してもよい。
【0021】
モノアミンは脂肪族、脂環式及びアラリファチックのアミンである。脂肪族アミンについては、炭素鎖長がC2〜C22の線状、分岐状又は環状アミンが使用され、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、sec−及びtert−ブチルアミン、3−メチルー1−ブタンアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、オクチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、トリデシルアミン、オレイルアミン、オクタデシルアミン及びAkzo Nobel社の商標名「Armeen」として知られているC12〜C22アミンの混合物が挙げられる。本発明によるアミンとしては、ポリイソブチレンアミンのようなポリオレフィンアミンだけでなく、Huntsman社の商標名「Jeffamine」 M 600、M 1000、M 2005及びM 2070として知られているエチレンオキシド基及び/又はポロピレンオキシド基を有するポリオキシアルキレンモノアミンが好ましい。アラリファチックアミンとしては、ベンジルアミン及びフルフリルアミンのようなものである。しかしながら、例えば安息香酸ヒドラジドのようなヒドラジドも使用することができる。また、これらのモノアミンを混合して使用することができるし、上記モノアルコールと任意に混合して使用することもできる。
【0022】
ウレトジオン含有ポリイソシアネートとモノアルコールとの反応は該ウレトジオン環を保持しながら、15〜60℃、好ましくは20〜50℃で、所望によりジブチル錫ジラウラート(DBTL)のような触媒を使用して行う。ウレトジオン含有ポリイソシアネートとモノアミンとの反応は該ウレトジオン環を保持しながら、15〜45℃、好ましくは20〜30℃で行う。共反応物の付加反応の順序は任意である。適切な場合には、ウレトジオン含有ポリイソシアネートを最初に不活性溶媒に入れて、次いでモノアルコール又はモノアミンを滴下する。また、最初にモノアルコール又はモノアミンを入れてから、ウレトジオン含有ポリイソシアネートを滴下することもできる。さらに、モノアルコール及びモノアミンを混合して使用する場合には、該ウレトジオン含有ポリイソシアネートは最初に該アルコールと反応し、次いで該アミンと反応する。適切な場合には、例えば、酢酸メトキシプロピル、シクロヘキサン、トルエン、キシレン又はShellsol Aのような高沸点芳香族のような不活性溶媒中で、該反応を行うこともできる。その上、N−メチルピロリドン又はN−エチルピロリドンが適切な溶媒である。
【0023】
一般式(B)のジアミンは、ポリカルボン酸、好ましくはジカルボン酸及び/又は無水ジカルボン酸とジアミンとの反応で得られ、該ジアミンと該ポリカルボン酸との比は、2:1〜20:9、好ましくは3:2〜12:11、及びより好ましくは4:3〜8:7の間である。
【0024】
該ジアミンは脂肪族及びアラリファチックの第1級アミンが好ましく、エチレンジアミン、ネオペンタンジアミン、1,2−及び3−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン,シクロヘキシルジアミン,4,4'−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジ−アミノジシクロへキシルメタン、イソホロンジアミン、4,7−ジオキサデカン−1,10−ジアミン、4,7,10−トリオキサデカン−1,13−ジアミン、Huntsman社の商標名「Jeffamine D」及び「Jeffamine ED」として知られているランダム又はブロック配列のエチレンオキシド基及び/又はプロピレンオキシド基を有し、数平均分子量が148〜4,000g/モルのポリオキシアルキレンジアミン、ならびにパラ−及びメタ−キシリレンジアミンが挙げられる。1,6−ヘキサメチレンジアミンが好ましい。しかしながら、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド又はアジピン酸ジヒドラジドのようなヒドラジドを使用することもできる。これらジアミンを混合して使用することもできる。
【0025】
ポリカルボン酸としては、少なくとも2の炭素原子、好ましくは3〜40の炭素原子を有する脂肪族、脂環式又は芳香族の、線状又は分岐の、飽和又は不飽和ジカルボン酸が好ましい。
【0026】
そのようなポリカルボン酸の例として、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、ジデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ドコサン二酸、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸又はイソフタル酸があり、単独又は混合して使用する。無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸及び無水コハク酸のような酸無水物も適しており、無水ドデカニルコハク酸のようにアルキル基又はアルキレン基で修飾してもよい。例えば、ポリブタジエンのジカルボン酸のような高分子量ポリカルボン酸、酒石酸、クエン酸及びヒドロキシフタル酸のような水酸基官能性ポリカルボン酸も使用できる。3,6,9−トリオキシウンデカン二酸のようなオキシジカルボン酸及びジカルボキシポリグリコールのようなものも含まれる。当業者にダイマー酸として知られている、炭素原子数36の炭素鎖長を有する二量化脂肪酸が好ましい。これらのダイマー酸は低単量体量(通常、8重量%未満)又は20重量%以下のトリマー酸留分を有してもよい。
【0027】
このポリカルボン酸は、その全部又は一部をジイソシネート及びジアミンの全部又は一部をジオールで置換してもよい。この場合に、エステル、ウレタン及び/又は尿素基がポリマー中の好ましいアミド部分に沿って存在していてもよい。
【0028】
このジオールは、適切な場合にはC1〜4のアルキル及び/又はアルコキシ基で修飾した、ポリアルキレンポリオール又はポリアルケニルポリオールが好ましく、又は、好ましくは2個の水酸基の末端基を有するポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、混合ポリエステルポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール及びポリシロキサンポリオールである。
【0029】
ジイソシアネートは脂肪族、脂環式及び芳香族のジイソシアネートを単独又は混合して使用してよい。そのようなジイソシアネートの例として、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート及びこれらの混合物、p−及びm−キシレンジイソシアネート、4,4−ジイソシアネートジシクロヘキシルメタン、3,3−ジメチル−4,4−ビスフェニレンジイソシアネート、3,3−ジメチル−ジイソシアネートジフェニルメタン、2,4’−及び4,4’−ジイソシアネートジフェニルメタンの異性体混合物、及びC36ダイマージイソシアネートが挙げられる。
【0030】
一般式(B)のジアミンは当業者に既知の条件で製造する。このジカルボン酸とジアミン/ジオールとの縮合反応中の反応温度は100〜250℃が好ましく、140〜200℃がより好ましい。ポリカルボン酸に対するジアミンの比として、n当量のポリカルボン酸に対して(n+1)当量のジアミンを使用するので、反応終了後の縮合生成物は一個のアミン数を有している。ジアミン:ポリカルボン酸の比は2:1〜20:19、好ましくは3:2〜12:11、より好ましくは4:3〜8:7である。ジイソシアネートとジアミン/ジオールとの付加反応における反応温度は40〜120℃が好ましく、60〜100℃がより好ましい。
【0031】
本発明のビウレット化合物を製造するために、一般式(A)のウレトジオンと一般式(B)のジアミンとを、60〜120℃の間、より好ましくは75〜90℃の間の反応温度で反応する。この場合の成分AとBの比としては、1モルのAに対してBを0.3〜0.7モル、好ましくは0.4〜0.6モル、より好ましくは0.5モル使用する。反応は溶媒を使用しても、使用しなくても行うことができる。適した溶媒としては、例えば、酢酸メトキシプロピル、シクロヘキサン、トルエン、キシレン又はShellsol Aのような高沸点芳香族のようなすべての脂肪族、芳香族、プロトン性及び非プロトン性溶媒がある。N−メチルピロリドン又はN−エチルピロリドン、ならびにエタノール、プロパノール、イソブタノール又はブチルグリコールのようなアルコールも適している。さらに、これらの混合溶媒も使用できる。
【0032】
さらに、本発明は上記の付加化合物のレオロジー調節剤としての使用も提供する。このレオロジー調節剤としては、特にアルミニウム顔料やマイカ顔料のように非常に沈降し易い重い顔料の垂れ防止剤や沈降防止剤としての使用である。さらに、エポキシ又はポリウレタン系の工業用フローリングのためのポリマーコーティングの場合又は不飽和ポリエステル系のゲルコートと称されるものの場合には、レオロジー調節剤として利点があるし、本発明の付加化合物の使用にメリットがある。
【0033】
また、本発明は一般式(A)のウレタン及び/又は尿素を含有するウレトジオン及びそれを製造する方法を提供する。このウレトジオンを含有するポリイソシアネートはウレトジオン部分を保持しながら、脂肪族、脂環式及び/又はアラリファチックのモノアルコール及び/又はこれらの混合物、及び/又は脂肪族、脂環式、アラリファチックのモノアミド及び/又はこれらの混合物と反応する。
これらのウレトジオンは本発明のビウレット化合物を製造するための中間体として新規で有用なものである。これらの中間体の製造は既に詳細に上述した。
【0034】
次に、本発明を実施例によりさらに説明する。
【実施例】
【0035】
本発明の成分Aの製造
実施例 1
攪拌機、還流コンデンサ及び温度計を付けた1リッターの三口フラスコに、室温でヘキサメチレンジイシシアネートウレトジオン(Beyer社のDesmodur N3400)の79.6g(0.2モル)、メトキシポリエチレングリコール750の300g(0.4モル)の順に入れた後、80℃に加熱する。イソシアネートが検知できなくなるまで反応させる。次いで、反応混合物を50℃まで冷却する。
【0036】
本発明の成分Bの製造
実施例 2
攪拌機、水分離器及び温度計を付けた1リッターの三口フラスコに、ダイマー酸の168g(0.3モル)、ヘキサメチレンジアミンの46.4g(0.4モル)、Shellsol A (Shell社の高芳香族炭化水素溶媒)の92gの順に入れた後に、ゆっくりと160℃に加熱する。反応の間に除々に遊離してくる水を共沸させて水分離器で分離する。酸価が3未満になると反応が終る。続いて、反応混合物を50℃に冷却する。
【0037】
本発明のビウレット付加物の製造
実施例 3
攪拌機、還流コンデンサ及び温度計を付けた1リッターの三口フラスコに、実施例1の反応生成物の103.6g(0.1モル)、実施例2の反応生成物の153.1g(0.05モル)の順に入れた後に、80℃に加熱する。反応混合物をアミン数が3未満になるまで、さらに3時間攪拌する。次いで、生成物をイソブタノールで希釈して固形分50%とする。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
性能の結果
本発明の生成物のゲル生成能力を二成分エポキシシステムでテストした。加えて、バインダ中で到達できるフィルムの厚みを確認した。用いた二成分系(2K)バインダシステムは次の通りであった。
1.Epikote 1001/Epikote 834、 ビスフェノールA系ポリエポキシド、Ancamide 700−X−75、高分子量ジアミン
2.Epikote 828、ビスフェノールA系ポリエポキシド、Ancamide 700−X−75、高分子量ジアミン
【0042】
テスト処方
Epikote 1001 (キシレン中75%) 34.5g
Epikote 834 (キシレン中80%) 7.6g
Byk 052(消泡剤) 0.3g
Bayferrox 130M(酸化鉄顔料) 5.0g
Micro talc At−1(CaCO3) 12.0g
燐酸亜鉛 12.0g
EWO (BaSO4) 5.6g
【0043】
混合溶媒
メチルイソブチルケトン 19.2g
イソブタノール 3.8g
【0044】
ハードナー(硬化剤)
Ancamide 700X75
【0045】
攪拌機(Dispermatを用いて、8500回転/秒で30分間)で、本発明の生成物の1%を強力に攪拌してテスト処方とする。次いで、この処方を20℃に冷却してから、混合溶媒で希釈する。その後、出来たゲルを評価する。24時間経過後、該ハードナーを攪拌しながら加え、この処方を目盛付ドクター・ブレードに塗布する。硬化した時、出来たフィルムの厚みを測定する。
【0046】
【表4】

【0047】
主な商標名
Epikote 1001:ビスフェノールA型のポリエポキシド(Shell社製)
Epikote 834:ビスフェノールA型のポリエポキシド(Shell社製)
Bye 410:尿素ウレタンで、N−メチルピロリドンで希釈
Jeffamine M 600:アルキルポリエーテルアミン MW 600(Huntsman社製)
Jeffamine M 2070:アルキルポリエーテルアミン MW 2000(Huntsman社製)
Jeffamine ED 900:アルキルポリエーテルジアミン MW 900(Huntsman社製)
Jeffamine ED 2003:アルキルポリエーテルジアミン MW 2000(Huntsman社製)
Ancamide 700−X−75:ポリアミド/エポキシド付加物(Air Products社製)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式で表されるビウレット化合物。
【化1】

[式中、R1はC2〜C18のアルキレン、シクロアルキレン、アリーレン又はアラルキレン、Yは−O−及び/又は−NH−、R2はC4〜C22アルキル、C3〜C18アルケニル、シクロアルキル、アラルキル、Cm2m+1(O−Cn2nx−(O−CH(C65)−CH2u−、Cm2m+1(OOC−Cv2vx−、X−C64−(O−Cn2nx−(O−CH(C65)−CH2u−(ここで、m=1〜22、n=2〜4、x=0〜15、u=0〜15、v=4〜5、及びXはC1〜C12アルキル又は−(C651-4)、ならびにR3、R4及びR5はC2〜C18アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン又はアラルキレンであり、それぞれ同一でも異なっていても良く、Zは−COO−、NHCO−、NHCOO−、NHCONH−及び/又はこれらの混合物であり、aは1〜20である。]
【請求項2】
2ラジカルがエチレンオキシド基、プロピレンオキシド基及び/又はブチレンオキシド基を含有するポリアルコキシモノアルコールラジカルであることを特徴とする請求項1に記載のビウレット化合物。
【請求項3】
下記一般式(A)で表されるウレトジオンを下記一般式(B)で表されるジアミンと反応させることを特徴とする請求項1に記載のビウレット化合物を製造する方法。
【化2】

[式中、R1はC2〜C18のアルキレン、シクロアルキレン、アリーレン又はアラルキレン、Yは−O−及び/又は−NH−、R2はC4〜C22アルキル、C3〜C18アルケニル、シクロアルキル、アラルキル、Cm2m+1(O−Cn2nx−(O−CH(C65)−CH2u−、Cm2m+1(OOC−Cv2vx−、X−C64−(O−Cn2nx−(O−CH(C65)−CH2u−(ここで、m=1〜22、n=2〜4、x=0〜15、u=0〜15、v=4〜5)、及びXはC1〜C12アルキル又は−(C651-4である。]
(B) H2N−R3−[Z−R4−Z−R5a−NH2
[式中、R3、R4及びR5はC2〜C18アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン又はアラルキレンであり、それぞれ同一でも異なっていても良く、Zは−COO−、NHCO−、NHCOO−、NHCONH−及び/又はこれらの混合物であり、aは1〜20である。]
【請求項4】
前記一般式(A)及び(B)の化合物を60〜120℃の間の反応温度で反応させることを特徴とする請求項2に記載のビウレット化合物を製造する方法。
【請求項5】
ポリアミンに対するウレタン及び/又は尿素を含有するポリマーのモル比が1:0.3〜1:0.7の間であることを特徴とする請求項2又は3に記載のビウレット化合物を製造する方法。
【請求項6】
一般式(A)で表されるウレタン及び/又は尿素を含有するウレトジオン。
【化3】

[式中、R1はC2〜C18のアルキレン、シクロアルキレン、アリーレン又はアラルキレン、Yは−O−及び/又は−NH−、R2はC4〜C22アルキル、C3〜C18アルケニル、シクロアルキル、アラルキル、Cm2m+1(O−Cn2nx−(O−CH(C65)−CH2u−、Cm2m+1(OOC−Cv2vx−、X−C64−(O−Cn2nx−(O−CH(C65)−CH2u−(ここで、m=1〜22、n=2〜4、x=0〜15、u=0〜15、v=4〜5)、及びXはC1〜C12アルキル又は−(C651-4である。]
【請求項7】
ウレトジオンを含有するポイリソシアネートを、ウレトジオン部分を保持しながら、脂肪族、環状及び/又はアラリファチックのモノアルコール及び/又はこれらの混合物、及び/又は脂肪族、脂環式及び/又はアラリファチックのモノアミン、及び/又はこれらの混合物と反応させることを特徴とする請求項6に記載のウレトジオンを製造する方法。
【請求項8】
下記一般式で表されるビウレット化合物のレオロジー調節剤としての使用。
【化4】

[式中、R1はC2〜C18のアルキレン、シクロアルキレン、アリーレン又はアラルキレン、Yは−O−及び/又は−NH−、R2はC4〜C22アルキル、C3〜C18アルケニル、シクロアルキル、アラルキル、Cm2m+1(O−Cn2nx−(O−CH(C65)−CH2u−、Cm2m+1(OOC−Cv2vx−、X−C64−(O−Cn2nx−(O−CH(C65)−CH2u−(ここで、m=1〜22、n=2〜4、x=0〜15、u=0〜15、v=4〜5、及びXはC1〜C12アルキル又は−(C651-4)、ならびにR3、R4及びR5はC2〜C18アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン又はアラルキレンであり、それぞれ同一でも異なっていても良く、Zは−COO−、NHCO−、NHCOO−、NHCONH−及び/又はこれらの混合物であり、aは1〜20である。]
【請求項9】
垂れ防止剤及び/又は沈降防止剤としてのチキソトロピーコーティングシステム用の請求項8に記載のビウレット化合物の使用。


【公開番号】特開2006−306869(P2006−306869A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−105620(P2006−105620)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(598067245)ベーイプシロンカー ヘミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング (30)
【Fターム(参考)】