説明

ビスマス回収カートリッジ、ビスマス回収装置およびビスマス回収方法

【課題】操業効率が高く、MRT樹脂の充填量が少なく、MRT樹脂の交換作業が容易に行えるビスマス回収カートリッジ、それを用いた回収装置と回収方法を提供する。
【解決手段】ビスマス回収用のMRT樹脂20が充填されたカートリッジAが二分割式のハウジングに着脱自在に収容されている。カートリッジAは、外ケース1と内プロテクタ10とフィルタ15とストレーナ16とを備えている。外ケース1は、筒状部材であって側壁には処理対象液の流入を許容する多孔窓6Wが形成され、底部には処理液を排出するための口部5が設けられ、内プロテクタ10は、外ケース内に内挿される筒状部材であって、側壁には処理対象液の通過を許容する多孔窓11Wが形成され、フィルタ15は、外ケース1の内壁と内プロテクタ10の外壁との間に挿入され、ストレーナ16は口部5の内側に固定され、MRT樹脂20の流出を防止している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスマス回収カートリッジ、ビスマス回収装置およびビスマス回収方法に関する。さらに詳しくは、湿式銅精錬で銅電解液中に蓄積される不純物である金属のうち、とくに電解精製された銅の品質に悪影響を及ぼす可能性の高いビスマスを回収する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ビスマスは、銅鉱石中に含有され、銅製錬で副産物として回収される。
ビスマスは、銅鉱石に多く含有されて産出され、その大部分は銅製錬の乾式工程で高熱によって揮発し、煙灰として鉛、砒素、アンチモンなどと共にコットレル等に捕集されるが、溶体中に残ったビスマスは、スラグへの分配率が小さいため、乾式工程で産出される粗銅中に残留する。粗銅はアノードとして電解工程で使用されるが、粗銅中に残留したビスマスは、銅電解精製工程で電解液中に溶出し、電解液内に蓄積される。
ビスマスと銅の析出電位は実質的に同程度であるため、電解液中のビスマス濃度が上昇すると精製された銅(電気銅)中に、ビスマスが不純物として共析する。そして、ある一定量以上のビスマスが電気銅内に取り込まれると、電気銅の電気特性が悪化し、製品とならない。
【0003】
このため銅電解液中に蓄積されたビスマスは、脱銅電解工程で強制的に電着させて、銅電解液中から除去し、ビスマス濃度の低下した銅電解液は、電解工程に戻される。電着物は、主成分が銅であり、不純物としてビスマスを多く含むので、上工程である乾式製錬工程へ戻されることが一般的である。
前記脱銅電解の工程によって銅電解液中のビスマス濃度は一時的に低下するが、前記電着物に含まれるビスマスは、乾式製錬工程に戻され、再び粗銅中に残留し、電解液中に溶出するというように、乾式−湿式工程を繰返し移動しているだけである。したがって、ビスマスが製錬工程全体で循環している量(以下、循環量という)が低減されることは無く、前記電気特性が悪化するリスクも低減されることは無い。
【0004】
前記煙灰中のビスマスを回収する方法としては、鉛製錬の乾式工程を利用した方法が広く知られているが、有害物質である鉛を仲介とした工程であり、作業環境上好ましくない。このため、例えば、特許文献1には、鉛製錬の乾式工程を利用することなく、MRT(Molecular
Recognition Technology、分子認識技術)樹脂を用いてビスマスを回収する技術が開発されている(特許文献1参照)。
【0005】
MRT樹脂を使うビスマスを回収方法は、図8に示すようにヒータH、フィルタF、およびカラムCを直列に接続した設備を使用する。ヒータHやフィルタFは公知のものである。カラムCは、電解液量やビスマス濃度によって様々に変るが、たとえば3〜4m程度の容量の筒状容器が用いられる。このカラムC内には、低層にMRT樹脂211が充填され、その上層には処理始液の偏流を抑制するため、またMRT樹脂の浮き上がりを抑制することを目的として、PPビーズ212が充填されている。なお、213はストレーナであり、MRT樹脂211の流出を防止するため最下層に挿入されている。
このカラムCには、通常であれば、MRT樹脂211がを600kg程度(1.5m程度)充填されるので、その大きさは非常に大きなものである。
【0006】
上記設備を用いたビスマス回収方法を図9に基づき説明する。この回収方法は、吸着ステップIと溶離ステップIIを含んでいる。
吸着ステップIにおいては、ビスマス濃度が上昇した銅電解液(以下、処理始液という場合がある)をヒータHに通じ(201)、50〜60℃程度の吸着に適した温度とし、続いて、目開き1μm程度のフィルタFに通じて(202)、アノードスライムをはじめとする浮遊固形成分を除去し、その後、MRT樹脂211を充填したカラムCに通液する(203)ことによって、ビスマスをMRT樹脂211に吸着させる。
吸着の終わった液(以下、吸着後液という場合がある)からは、ビスマスが除去されており、電解槽に戻され、電解液として再び使用される。
【0007】
MRT樹脂の吸着能力が限界となって、それ以上通液してもビスマスが吸着しなくなったら、カラムCに残留した電解液を排出し、樹脂表面に残った電解液を洗浄し、溶離ステップIIを開始する。溶離液としては9モル/リットル程度の硫酸が好適に利用され、前記吸着ステップIにおける処理始液と同様に、ヒータHでの加温(204)、フィルタFでの浮遊固形成分除去(205)、カラムCでのビスマス吸着(206)の順で実行される。
この過程でMRT樹脂211に吸着したビスマスは、樹脂から溶離され、溶離液中に溶解し、その結果、ビスマスを含んだ溶離後液が得られる。そして、溶離後液は冷却され、ビスマスは硫酸ビスマスとして析出し、固液分離することによって、ビスマスが回収される。
【0008】
しかるに、上記従来例の回収方法では、吸着ステップIでカラムC内に通液されたビスマスを含む電解液がMRT樹脂211内を通液する場合に、前述のとおり、処理始液の偏流を抑制するためPPビーズ212が充填されているものの、充分ではなく、カラムCの横断面が広いのと、MRT樹脂の充填密度等のバラツキによる流路抵抗のバラツキ等に起因して均一にMRT樹脂211を通液することは非常に難しいという問題がある。そのため、多くの場合、通液量をMRT樹脂211の吸着能力を大きく超える通液量とすることで、MRT樹脂吸着量を最大に利用する方法が取られている。
しかしながら、上記のように通液量を増加させ、MRT樹脂本来の吸着能力を最大限に利用したときは、1バッチ当りの通液時間は長時間となるため、操業効率は低下する。
【0009】
また、ビスマスの除去が必要な銅電解液には、電解スライムをはじめとする浮遊物が含まれているので、前記フィルタFを通すステップ(202)が必要になるが、通液量が増えると、フィルタFで除去しきれなかった電解スライムがフィルタ後の液に混入するリスクが高くなる。そして、前記浮遊物がカラムCに入ると、樹脂表面を覆い、MRT樹脂211の能力を物理的に阻害するというリスクも増えてしまう。このため、MRT樹脂211の吸着能力を十分に使用することは難しいという問題点があり、計画した吸着量を確保するためには、前記の阻害によるロス分を考慮し所定量よりも余分のMRT樹脂211をカラムCに充填する必要があり、充填量の面で操業効率は低下する。
【0010】
また、MRT樹脂211の吸着、溶離能力が劣化すると樹脂交換作業が行なわれる。樹脂交換時は大量の砂状樹脂(0.5mm程度の粒状)をカラムC外へ排出し、あらためて新品のMRT樹脂211を充填する必要があるので、作業時間が多くかかり交換作業中は操業を停止せざるを得ないので、操業効率が低下するという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−213350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記事情に鑑み、操業効率が高く、MRT樹脂の充填量が少なくてすみ、MRT樹脂の交換作業が容易に行えるビスマス回収カートリッジおよびそれを用いたビスマス回収装置を提供することを目的とする。
また、操業効率の高いビスマス回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1発明のビスマス回収カートリッジは、ビスマス回収用のMRT樹脂が充填されたビスマス回収カートリッジであって、外ケースと内プロテクタとフィルタとストレーナとを備えており、前記外ケースは、頂部が塞がった筒状部材であって、側壁には処理対象液の流入を許容する多孔窓が形成されており、底部には処理液を排出するための口部が設けられており、前記内プロテクタは、前記外ケース内に内挿される筒状部材であって、その側壁には処理対象液の通過を許容する多孔窓が形成されており、前記フィルタは、前記外ケースの内壁と前記内プロテクタの外壁との間に挿入されており、前記ストレーナは、前記内プロテクタの内部に充填されたMRT樹脂の流出を防止するように、前記口部の内側に固定されていることを特徴とする。
第2発明のビスマス回収カートリッジは、第1発明において、前記フィルタは、目開きが0.5〜2μmのろ過素材であることを特徴とする。
第3発明のビスマス回収カートリッジは、第1または第2発明において、前記ストレーナは、目開きが30〜300μmの多孔質材料であることを特徴とする。
第4発明のビスマス回収装置は、単装用ハウジングと1本の請求項1記載のビスマス回収カートリッジとからなり、前記単装用ハウジングは、カートリッジ収容部と流入口と排出口とを有しており、前記カートリッジ収容部は、分離結合が可能な少なくとも二部材からなり、分離状態で前記ビスマス回収カートリッジの取付け取外しが可能であり、結合状態で前記ビスマス回収カートリッジを内部に固定できることを特徴とする。
第5発明のビスマス回収装置は、連装用ハウジングと複数本の請求項1記載のビスマス回収カートリッジとからなり、前記連装用ハウジングは、カートリッジ収容部と流入口と排出口とを有しており、前記カートリッジ収容部分は、分離結合が可能な少なくとも二部材からなり、分離状態で前記ビスマス回収カートリッジの取付け取外しが可能であり、結合状態で前記ビスマス回収カートリッジを内部に固定できることを特徴とする。
第6発明のビスマスの回収方法は、フィルタで包囲された内部にMRT樹脂が充填されたビスマス回収カートリッジを用いて、ビスマス濃度の高くなった銅電解液からビスマスを回収する方法であって、吸着ステップと溶離ステップとを含み、前記吸着ステップでは、処理始液を前記ビスマス回収カートリッジに通液して、フィルタで浮遊固形成分を除去すると共にMRT樹脂にビスマスを吸着させることによって処理始液からビスマスを除去した処理後液を得て、前記溶離ステップでは溶離液を前記ビスマス回収カートリッジに通液して、フィルタで浮遊固形成分を除去すると共にMRT樹脂に吸着したビスマスを溶離することによってビスマス濃度の高くなった溶離後液を得ることを特徴とする。
第7発明のビスマスの回収方法は、請求項6のビスマス回収方法で得られた溶離後液を冷却し、ビスマスを硫酸ビスマスとして析出し、ついで固液分離してビスマスを回収する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1発明のビスマス回収カートリッジは、フィルタとMRT樹脂も内蔵しているので、そのフィルタで浮遊固形物質を除去し、MRT樹脂でビスマスを吸収するという作業を同時に行うことができる。
第2発明によれば、ビスマス含有電解液などの処理対象液を通液したとき、目開き0.5〜2μmのろ過素材によってアノードスライム等の浮遊固形成分を効率よく除去できる。
第3発明によれば、ビスマスをMRT樹脂に吸着させた後の処理対象液をストレーナを経由して排出させるが、目開き30〜300μmの多孔質材料のストレーナがMRT樹脂の流出を防止するので、MRT樹脂に損失が生じない。
第4発明によれば、MRT樹脂の吸収能力が限界に達すると、古いカートリッジと新しいカートリッジを交換することでビスマス回収能力を回復できるが、この交換はカートリッジ収容部を分離し再び結合することで行え、手間がかからないので、操業効率が向上する。また、カートリッジのサイズを選択することで、用途に応じた容量のビスマス回収装置を構成できる。
第5発明によれば、MRT樹脂の吸収能力が限界に達すると、古いカートリッジと新しいカートリッジを交換することでビスマス回収能力を回復できるが、この交換はカートリッジ収容部を分離し再び結合することで行え、手間がかからないので、操業効率が向上する。また、MRT樹脂を小分けすればするほど、液は均一にMRT樹脂に通液することが可能となり、適正な通液量に近づけることが可能となるので、1バッチ当たりの通液時間を短縮できる。さらに、カートリッジの装着本数を選択することにより用途に応じた容量の回収装置を構成できる。
第6発明によれば、本発明のカートリッジおよびそれを用いたビスマス回収装置を利用すれば、加温工程の後で従来必要としていたフィルタ工程を通すことなく銅電解液からビスマスを回収することができ、操業効率を向上させることができる。
第7発明によれば、冷却や固液分離という簡便な工程を実行することでビスマスを回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)は本発明の一実施形態であるビスマス回収カートリッジAの外観図、(B)は同ビスマス回収カートリッジAの縦断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る単装型ビスマス回収装置Bの部分断面斜視図である。
【図3】図1に示した単装型ビスマス回収装置Bにおいてケーシングを断面視した一部断面正面図である。
【図4】図1に示した単装型ビスマス回収装置Bの使用状態説明図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る連装型ビスマス回収装置Cであって、図6のV−V線縦断面図である。
【図6】図5に示した連装型ビスマス回収装置CのVI-VI線横断図である。
【図7】本発明のビスマス回収方法の工程図である。
【図8】従来のビスマス回収装置の説明図である。
【図9】従来のビスマス回収方法の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(ビスマス回収装置の全体構成)
本発明は、MRT樹脂を充填したビスマス回収カートリッジをハウジングに着脱自在に装着してビスマス回収装置を構成しており、ビスマス回収カートリッジを交換することでMRT樹脂の交換が容易にできるようにした点に特徴がある。
【0017】
(ビスマス回収カートリッジ)
そこで、まず本発明を特徴づけるビスマス回収カートリッジA(以下、単にカートリッジAという)を、図1に基づき説明する。
カートリッジAは、外ケース1と内プロテクタ10とフィルタ15とストレーナ16を備えている。
【0018】
外ケース1は筒状の本体部2と、本体部2の上端部分を閉塞している頂部3と、本体部2の下端部分の底部4と、底部4の下方で形成されている口部5からなる筒状部材である。
外ケース1の寸法に特別の制約はないが、交換作業等の取扱いの便宜からは、高さが100〜800mm、直径が50〜400mmの範囲が好ましく、とくに高さが200〜300mm、直径が80〜120mmが好適である。
【0019】
外ケース1の側壁、つまり本体部2には、処理始液の流入を許容する多数の孔6が形成されている。本明細書では、このような多数の孔を総称して多孔窓6Wという。
孔6の大きさは、処理始液の通過が可能であり、内外の圧力によって内側に挿入されるフィルタ15が変形しない程度であればよく、縦5〜10mm、横7〜13mm位の範囲が好適である。このような孔6の数は、外ケース1の寸法に依存して変動するが、たとえば、円周方向に14〜24個、上下方向に15〜30段設けられる。
なお、図示の孔6の形状は、横長の長方形であるが、縦長の長方形でもよく、正四角形でもよく、また、円形や三角、五角等の任意の形状であってよい。
【0020】
外ケース1の底部の口部5は直径が本体部2より小さくなっている。口部5の外周には円周方向にパッキン溝7aが形成され、そこにOリング等のパッキン7が装着されている。
一方、外ケース1の頂部3には位置決め板8が設けられている。この位置決め板8は2枚の三角形の板8aを平面視で直交するように組み合わせたものである。このため、正面視や側面視では三角形に見え、各板8aの間には三角錐状の隙間が空いている。そして、三角形の板8aの斜辺の一部が後述するハウジングの内壁に接触して位置決め機能を果たすことができる。
【0021】
外ケース1の材料は、ビスマスを回収するための処理始液、洗浄液、溶離液が、2〜9モル/l程度の硫酸酸性であるため、耐酸性がもとめられ、耐酸性を満たせば、特定の材質に限定されることはない。
ただし、重量、強度、価格などの面からポリプロピレン、テフロン(登録商標)、ポリエステル、ポリエチレンから選ばれる1以上の材質とすることが好ましい。
【0022】
内プロテクタ10は、上端も下端も開口された筒状部材である。高さは外ケース1の内部に収まり、かつ遊動しないようにピッタリ収まる寸法であればよい。直径は、外ケース1の内周径よりも小さく、外ケース1の内周面と内プロテクタ10の外周面との間にフィルタ15を収容する空間を作れる寸法とする必要がある。
【0023】
内プロテクタ10の側壁には、多数の孔11が形成され、多孔窓11Wに構成されている。その寸法や形状、多段多行に並べた構成は、実質的に外ケース1の孔6と同じでよい。
内プロテクタ10の材料も外ケース1と同じものを、とくに制限なく用いることができる。
【0024】
フィルタ15は、柔らかい素材からなるフィルタ材料を襞状に折り畳み、それを全体として円環状に成形したものである。そして、外ケース1と内プロテクタ10の間の空間に挿入されている。このフィルタ15は、原料液中の不純物であるアノードスライム等の固形成分の流入を阻止するものである。
このフィルタ15は、処理始液に侵されない材質であって、アノードスライム等を補足できればよく、どのような濾過素材を使ってもよいが、代表的には、PP(ポリプロピレン)製の濾紙が用いられる。
【0025】
また、フィルタ15に使用する濾過素材の目開きは、濾過対象物のサイズによって適宜選択すればよい。銅電解液を通液する場合、濾過対象はアノードスライムをはじめとする浮遊固形成分であり、0.5〜2μmの目開きの濾過素材であることが好ましい。0.5μm未満であると、濾過そのものは問題ないが、圧力損失が上昇して通液に時間がかかり操業効率が低下する。2μmを超えると、濾過が不充分となる場合がある。そのため、公称値1μmの目開きのものを使用すると、通液時間の面でも充分な濾過のためにも安定した性能を発揮できるため最も好ましい。
【0026】
口部5の内側にはストレーナ16が設けられている。このストレーナ16はカートリッジA内部に充填されるMRT樹脂の流出を防止すると共にビスマスを吸着した後の処理後液のみを通すために設けられている。
【0027】
この目的に適するなら、どのような材料、構造のストレーナであってもよいが、代表的には、焼結ガラス等のガラス繊維や各種の樹脂繊維などの多孔質材料が用いられる。
また、ストレーナ16の目開きは、30〜300μmであることが好ましい。30μm未満だと加工が困難で部材単価が上昇するため好ましくない。また、300μmを超えるとMRT樹脂20が漏れ出すおそれがあるからである。
【0028】
ストレーナ16は、口部5に嵌め込むために邪魔にならなければどのようなサイズでも形状でもよい。ただし、MRT樹脂20の充填量を確保するためには、蓋の厚み方向のサイズは薄いほうがよく、たとえば、3〜8mm程度が好ましい。
【0029】
ストレーナ16の口部5内への固定は、必要な固定強度が得られるなら任意の手段を採用してもよく、たとえばストレーナ16の素材が硝子繊維の場合は、溶融樹脂で接着するポリ塩化ビニル溶接などが用いられる。
【0030】
MRT樹脂20は内プロテクタ10の内部に充填される。充填量は、カートリッジAの大きさに依存するが、通常は500〜700gである。
また、充填するMRT樹脂20の種類は、使用する目的により適切なものを選択すればよい。多くのMRT樹脂20は粒径が350μm〜650μmであるが、上記した目開きのストレーナ16を用いると、こぼれ出ることはない。
カートリッジAの中空部分、つまり内プロテクタ10の内部にMRT樹脂20を充填する際には、充分にタッピング(容器中に粉粒体を入れ、容器側に振動を与えて隙間が少なくなるようにする操作)をすることが望ましい。
【0031】
(ビスマス回収装置)
本発明のビスマス回収装置は、上記したカートリッジAと適宜のハウジングを組合わせて構成される。ハウジングは、カートリッジAを収容して、処理始液(電解液)を導入し、カートリッジA内のMRT樹脂20でビスマスを吸着し、ビスマスを除去した処理後液を排出でき、かつカートリッジAの交換が可能なものであれば、どのような構造、形状のものであってもよい。
以下にカートリッジAを1個用いた単装型ビスマス回収装置BとカートリッジAを複数個用いた連装型ビスマス回収装置Cを説明する。
【0032】
(単装型ビスマス回収装置B)
図2および図3に示すように、単装型ビスマス回収装置B(以下、単にビスマス回収装置Bということがある)は、単装用ハウジング30(以下、単にハウジング30という)に1本のカートリッジAを着脱自在に装着したものである。
ハウジング30は、上ケーシング31と下ケーシング35と両者を着脱自在に結合するクランプ40とからなる。
【0033】
上ケーシング31は全体的に円筒形のケーシングであり、本体部32の上部に流入口33が形成され、下端部では半径方向外向きに広がった下フランジ34が形成されている。この下フランジ34の内側は開口している。
上部の流入口33は、上端の上フランジ33aと、その直下の小径の小径口部33bと、更にその直下の中径の中径部33cを有しており、中径部33cの下端は直径方向に広がって、本体部32につながっている。
【0034】
下ケーシング35は、保持部36とその下方の排出口37を有し、保持部36の上端には上フランジ38が形成され、排出口37の下端には下フランジ39が形成されている。保持部36は、内径がカートリッジAの底部を収容できる大きさの筒状部材であり、排出口37は内径がカートリッジAの口部5を内挿できる大きさの筒状部材である。
【0035】
クランプ40は、上ケーシング31と下ケーシング35を任意に結合したり分離できるものであれば、どのような構造のものでも用いることができる。図示の例では、断面コ形の半円の環状体からなる一対のクランプ片41,42を用い、クランプ片41,42の一端部をヒンジ等により開閉自在に止めており、他端部をネジ止めにより固定できるものが用いられている。ネジ止めの構造は、一方のクランプ片41に形成した突起部41aにボルト43をピンで取付け、他方のクランプ片42に形成した溝付き突起部42aにボルト43を通し、ナット44で螺合するようにしたものである。なお、このネジ止め構造も一例であり、着脱自在にネジ止めできるなら、どのような構造にしてもよい。
【0036】
図3はカートリッジAのハウジング30内での固定状態を示している。
カートリッジAの口部5は、下ケーシング35の排出口37内に嵌められ、その状態でパッキン7により液密にシールされている。また、カートリッジAの底端と排出口37の上端面37aとの間には、パッキン46が介装されている。
この状態で、上ケーシング31の下フランジ34と下ケーシング35の上フランジ38との間にパッキン47を入れて、クランプ40で緊締すると組立て状態となる。また、この状態でカートリッジAの上端の位置決め板8は上ケーシング31の中径部33cの肩部33dに当たって、横方向に揺れたり、上方に動いたりしないように拘束されている。
【0037】
つぎに、図4に基づき、単装型ビスマス回収装置Bおけるビスマス含有電解液の通液要領を説明する。
ハウジング30の流入口33から流入した処理始液(ビスマスが混入している電解液)は位置決め板8の隙間を通って上ケーシング31内を下向きに流れていく。そして、この間にカートリッジAの外ケース1の多孔窓6WからカートリッジA内に流入していく。多孔窓6Wを通った処理始液は、フィルタ15を通る間に濾過されてアノードスライム等の不純物が補足され、内プロテクタ10の多孔窓11Wを通って、内プロテクタ10内に入っていく。内プロテクタ10の内部では充填されているMRT樹脂20に処理始液が接触して下方に流れていく。このとき処理始液内のビスマス成分がMRT樹脂20に吸着され、ビスマス成分が除去された処理後液が排出口37から排出されていく。このとき、処理後液はストレーナ16を通るが、ストレーナ16は処理後液を通すに充分大きな目開きをもっているので、排出に支障はない。また、MRT樹脂20はストレーナ16の目開きより大きい粒径なので、これが流出することはない。
【0038】
上記のビスマス回収装置Bにおいて、流入口33から流入させた電解液は、排出されるまでの過程でフィルタ15とMRT樹脂20の両方を通過することになり、図9に示す従来技術で必要であったフィルタ通液工程202,205とカラム通液工程203,206の2工程を同時に行うことが可能となる。これは、フィルタ15とMRT樹脂20を組み合わせた構造とすることで達成できた効果である。
【0039】
つぎに、図5および図6に基づき連装型ビスマス回収装置C(以下、単にビスマス回収装置Cということがある)を説明する。
ビスマス回収装置Cは、連装用ハウジング50(以下、単にハウジング50という)に複数本のカートリッジAを着脱自在に装着したものである。
本発明で用いる連装用ハウジングは、装着するカートリッジAの本数に何の制限もなく、2本以上なら何本用いてもよいが、図示の例は7本用いたものである。
【0040】
本実施形態では、図6に示すように、ハウジング50の中心に1本のカートリッジAを装着し、その周囲に円周方向等間隔に6本のカートリッジAを配置している。
ハウジング50の構造を図5に基づき説明する。ハウジング50は、全体的に円筒形であり、上ケーシング51と下ケーシング55とからなる。
【0041】
上ケーシング51は、本体部52の上部に流入口53が形成され、下端部では半径方向外向きに広がった下フランジ54が形成されている。
下ケーシング55は、本体部56の上部に半径方向外側に広がった上フランジ57が形成され、下端部には排出口58が形成されている。
【0042】
上ケーシング51と下ケーシング55は、それぞれのフランジ54,57を合わせてクランプで結合されるが、用いるクランプ60は、両フランジ54,57を結合分離自在に緊締できるものであれば、どのようなものでもよい。
図示のクランプ60は、上クランプ片61と下クランプ片62をボルト・ナットで結合したものであるが、円周方向で半割りしたクランプ片61,62を用いたものでもよく、もっと小形のクランプ片61,62を多数個用い、円周方向等間隔に配置してものでもよい。
さらには、両フランジ54,57を直接ボルト・ナットで結合し、適宜ナットを外して分離できるようにしたものでもよい。
【0043】
下ケーシング55の本体部56の内側には、取付板64が固定されている。この取付板64は円形の厚板であって、周縁を溶接等により本体部56の内壁に固定され、かつ液密にされている。
また、取付板64には7個の取付孔65が形成されており、この取付孔65に7本のカートリッジAの口部5が装入されている。この取付孔65の内壁には、口部5に嵌めているOリング7が接触して、液密を確保できるようになっている。
【0044】
上記のように装着された7本のカートリッジAの上端は揺れ止め板66で動きを規制されている。揺れ止め板66には7個の孔67が形成されており、この孔67を7本のカートリッジAの位置決め板8に嵌めている。
そして、揺れ止め板66は、下方の取付板64との間に通したボルト68をナット等で螺合することにより位置が固定されている。なお、揺れ止め板66の固定方法は任意であって、この方法に限定されるものではない。
【0045】
図5に示すビスマス回収装置CへのカートリッジAの組込みは、下ケーシング55の取付板64の孔65に各カートリッジAを装着し、揺れ止め板66を各カートリッジAに嵌め、ボルト68等で取付板64に対し結合する。そのうえで、下ケーシング55の上フランジ57と上ケーシング51の下フランジ54との間にパッキン63を配置して、クランプ60で上下ケーシング61,65を互いに結合することで行われる。
カートリッジAを取り出すためハウジング50を分解する手順は、上記逆に行えばよい。
【0046】
この連装型ビスマス回収装置Cにおいても、処理始液を流入口53から入れ、上ケーシング51内に導けば、各カートリッジA内に処理始液が入っていくので、MRT樹脂にビスマス吸着ができることは前記単装型ビスマス回収装置Bと同じである。
ビスマスがMRT樹脂20に吸着された後の処理後液は下ケーシング55の排出口58から排出される。
本実施形態においても、フィルタ15とMRT樹脂20の両方を通過することになり、図9に示す従来技術で必要であった、フィルタ通液工程202,205とカラム通液工程203,206の2工程を同時に行うことが可能となる。
【0047】
(ビスマス回収装置B,Cの利点)
つぎに、上記ビスマス回収装置B,Cの利点を説明する。
第1に、本発明のカートリッジAのサイズは様々に選択することが可能である。このため、単装型ビスマス回収装置Bであっても、用途に応じた容量の回収装置を構成できる。また、カートリッジAの装着本数を任意に選択できるので、連装型ビスマス回収装置Cにおいても用途に応じた容量の回収装置を構成できる。
第2に、カートリッジAの装着本数を多くすると、すなわちMRT樹脂20を小分けすればするほど、液は均一にMRT樹脂20に通液することが可能となり、適正な通液量に近づけることが可能となるので、1バッチ当たりの通液時間を短縮できる。
第3に、上記のように適切な通液量に近づけると、電解スライム等の浮遊物がMRT樹脂20の能力を物理的に阻害するリスクが低減し、適正な樹脂量とすることができるので、余分なMRT樹脂を使用する必要がなくなる。
第4に、劣化したMRT樹脂の交換作業については、カートリッジAごとの交換が可能なので、予め新しいカートリッジAを用意しておけば、ハウジング30,50を上下に分離して旧いカートリッジAを外し新しいカートリッジAを装着し再びハウジング30,50を結合するだけでMRT樹脂の交換が行える。つまり、粉体のままの大量のMRT樹脂で取り扱う必要がないので、劣化したMRT樹脂の交換が迅速に行える。このため、操業を停止させる必要もなくなる。
【0048】
さらに、本発明のビスマス回収装置B,Cの利点の説明を続ける。
本発明においては、処理設備の規模、目的にあわせてカートリッジAの濾過面積やサイズおよび材質を任意に選択することができる。つまり、カートリッジAの中空部分の容積、すなわちMRT樹脂20を充填する量を決めることで、処理設備に必要なカートリッジAの本数を調整することが可能であり、また、処理すべき液体のpHによっては、耐薬品性の低い材質を選択することが可能であり、さらに、処理すべき液体の粘性が高く、加圧流入が必要な場合は耐圧性の高い材質を選択することも可能である。
【0049】
濾過面積や材質などカートリッジAの濾過機能の寿命に関する要素は、MRT樹脂20の充填量、すなわち内プロテクタ10の内部容積にもよるが、充填されるMRT樹脂20の寿命と勘案して、適切なものを選択することが望ましい。たとえば、カートリッジAの交換頻度とMRTの交換頻度が一致するようにすれば、交換作業はすべてのカートリッジAを交換するだけでよくなるため、作業が単純となり手間が少なくなるので好ましい。
【0050】
経済的な要請などから、各カートリッジAの交換頻度を一致させるのが困難な場合でも、濾過機能の寿命かMRT樹脂の寿命に至った場合に、別途、新品のカートリッジAを準備しておくことで、操業を停止して、全てのカートリッジAを交換すれば、速やかに操業を再開できる。このため、設備の操業停止時間は最短にすることができる。なお、取り出されたカートリッジAから寿命に至ったMRT樹脂20を取り出して、廃棄して、新しいMRT樹脂を再充填しておけば、次の使用に備えておくことができる。
【0051】
なお、本発明において、上記ビスマス回収装置B,Cのハウジング30,50は、上下に二分割する構造であったが、カートリッジAを固定でき挿入抜去が可能なら上記構成に限ることなく、左右に二分割したり、あるいは三部材以上の分割式構造や、さらには開閉式の構造などを任意に採用することができる。特許請求の範囲にいう「分離結合が可能」とは、分割式構造や開閉式構造を含む意味である。
【0052】
(ビスマス回収方法)
図7に示すフロー図により、本発明のビスマス回収装置B,Cを用いて、ビスマス濃度の高くなった銅電解液からビスマスを回収する方法を説明する。この回収方法は、吸着ステップIと溶離ステップIIとを含んでいる。
【0053】
吸着ステップIでは加温工程101と吸着工程102が、その順で実行される。
加温工程101では、ビスマス濃度が上昇した銅電解液(以下、処理始液という場合がある)をヒータHに通じ、50〜60℃程度の吸着に適した温度とする。
続く吸着工程102では、本発明のビスマス回収装置B,Cに処理始液を通液して、カートリッジA内のフィルタ15によりアノードスライムをはじめとする浮遊固形成分を除去させ、同時に、内部に充填したMRT樹脂20にビスマスを吸着させる。
【0054】
吸着の終わった液(吸着後液)は、ビスマスが除去されており、電解槽に戻され、電解液として再び使用される。なお、この吸着ステップIでは、MRT樹脂の吸着能力を最大限に活かすように通液量が管理される。
【0055】
このとき、図9で説明した従来技術と比較して、通液量は10%程度少ない量であっても樹脂の吸着能力を充分に活かすことが可能であり、また、MRT樹脂20の充填量は5%程度少ない量であっても、つまり余分な樹脂を充填しなくても問題なく操業できる。この点の詳細は実施例、比較例で説明する。
【0056】
つぎに、溶離ステップIIを説明する。
MRT樹脂の吸着能力が限界となって、それ以上通液してもビスマスが吸着しなくなったら、溶離ステップIIを開始する。この溶離ステップIIは、加温工程103と溶離工程104を、その順で実行することにより行われる。加温工程103は、吸着ステップIと同様に行われる。
【0057】
溶離工程104では、溶離液として9モル/リットル程度の硫酸が好適に利用され、前記吸着ステップIにおける吸着工程102と同様に、ビスマス回収装置B,Cに通液される。
この過程でMRT樹脂に吸着したビスマスは、MRT樹脂から溶離され、溶離液中に溶解し、その結果、ビスマスを含んだ溶離後液が得られる。
【0058】
なお、溶離後液は冷却され、ビスマスは硫酸ビスマスとして析出し、固液分離することによって、最終的に金属としてのビスマスを回収している。
以上のように、本発明のカートリッジAおよびそれを用いたビスマス回収装置B,Cを利用すれば、加温工程の後で従来必要としていたフィルタ通液工程を通すことなく銅電解液からビスマスを回収することができ、操業効率を向上させることができる。
【実施例】
【0059】
つぎに、本発明のビスマス回収装置の性能を、実施例を用いて説明する。
本発明のビスマス回収装置、方法において、濾過能力の寿命がくればフィルタ15の交換が必要となり、また、吸着、溶離を繰返してMRT樹脂20の寿命がくれば、MRT樹脂20の交換作業が必要となるが、本発明ではカートリッジAを予め用意しておけば、交換時に操業停止しても全てのカートリッジAを交換すれば、速やかに操業を再開することができる。
このとき、図8および図9で説明した従来技術と比較して、操業停止を伴う交換作業に要した時間は、30分の1程度とすることができる。以下に、その詳細を、比較例と対照しながら説明する。
【0060】
実施例1および比較例1に共通した条件は以下のとおりである。
吸着ステップIでは、処理始液としてビスマス濃度0.6g/リットル、温度60℃とした銅電解液を使用した。処理始液のベッドボリュームB.V=27.2とした。
溶離ステップIIに入る前の洗浄段階では、硫酸濃度2モル/リットル、温度60℃の硫酸を洗浄液として使用した。洗浄液のベッドボリュームB.V=1.7、線速度LV=1.2とした。
溶離ステップIIでは、硫酸濃度9モル/リットル、温度60℃の硫酸を溶離液として使用した。溶離液のベッドボリュームB.V=3.5、線速度LV=1.2とした。
処理後液としての電解液中のビスマス濃度を測定した。
処理始液、処理後液中のビスマス濃度はICP発光分析によって測定した。
交換作業はカートリッジAの濾過機能の寿命や、MRT樹脂の寿命とは無関係に実施し、所要時間を測定した。
【0061】
(実施例1)
下記のカートリッジAを用意した。
MRT樹脂は、商品名:SuperLig#83、米国IBC社製、粒径≒400μmを0.75L(0.3kg)を用いた。
フィルタ15は目開き1.0μmの型式:TCP−1タイプ、アドバンテック社製である。ストレーナ16は目開き50μmのテフロン(登録商標)製である。
図7の工程図に沿って吸着ステップI、溶離ステップIIのフローを10バッチ実施した。
その結果、吸着したビスマス量は10バッチの平均で31.0(g−Bi/kg−MRT)であった。
また、吸着ステップIで充填した樹脂量は前述のとおり0.75リットルで、通液量は20.4リットルであった。
そして、同一作業者により3回実施した交換作業に要した平均時間は1分であった。
【0062】
(比較例1)
本発明のカートリッジAを使用することなく、図9のフローに沿って従来のフローを実施した以外は、実施例1と同様の条件で実施した。
その結果、吸着ビスマス量は10バッチの平均で30.0(g−Bi/kg−MRT)であった。
また、吸着ステップIで充填した樹脂量は、所定の樹脂能力を活かすために余分の充填が必要であり、0.82リットルであった。通液量は22.4リットルであった。
そして、実施例1と同一の作業者により3回実施した交換作業に要した平均時間は30分であった。
【0063】
上記、実施例1と比較例1から、吸着ビスマス量には大きな差は見られないが、実施例1のほうが、通液量、樹脂充填量ともに約10%削減され、交換作業に要する時間は、30分の1になっていることが判る。
なお、上記吸着ビスマス量の単位(g−Bi/kg−MRT)は、MRT樹脂1kgに対してBiが吸着された量をあらわす。
【符号の説明】
【0064】
A カートリッジ
B 単装型ビスマス回収装置
C 連装型ビスマス回収装置
1 外ケース
6W 多孔窓
10 内プロテクタ
11W 多孔窓
15 フィルタ
16 ストレーナ
20 MRT樹脂
30 単装用ハウジング
40 クランプ
50 連装用ハウジング
60 クランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスマス回収用のMRT樹脂が充填されたビスマス回収カートリッジであって、
外ケースと内プロテクタとフィルタとストレーナとを備えており、
前記外ケースは、頂部が塞がった筒状部材であって、側壁には処理対象液の流入を許容する多孔窓が形成されており、底部には処理液を排出するための口部が設けられており、
前記内プロテクタは、前記外ケース内に内挿される筒状部材であって、その側壁には処理対象液の通過を許容する多孔窓が形成されており、
前記フィルタは、前記外ケースの内壁と前記内プロテクタの外壁との間に挿入されており、
前記ストレーナは、前記内プロテクタの内部に充填されたMRT樹脂の流出を防止するように、前記口部の内側に固定されている
ことを特徴とするビスマス回収カートリッジ。
【請求項2】
前記フィルタは、目開きが0.5〜2μmのろ過素材である
ことを特徴とする請求項1記載のビスマス回収カートリッジ。
【請求項3】
前記ストレーナは、目開きが30〜300μmの多孔質材料である
ことを特徴とする請求項1または2記載のビスマス回収カートリッジ。
【請求項4】
単装用ハウジングと1本の請求項1記載のビスマス回収カートリッジとからなり、
前記単装用ハウジングは、カートリッジ収容部と流入口と排出口とを有しており、
前記カートリッジ収容部は、分離結合が可能な少なくとも二部材からなり、分離状態で前記ビスマス回収カートリッジの取付け取外しが可能であり、結合状態で前記ビスマス回収カートリッジを内部に固定できる
ことを特徴とするビスマス回収装置。
【請求項5】
連装用ハウジングと複数本の請求項1記載のビスマス回収カートリッジとからなり、前記連装用ハウジングは、カートリッジ収容部と流入口と排出口とを有しており、前記カートリッジ収容部分は、分離結合が可能な少なくとも二部材からなり、分離状態で前記ビスマス回収カートリッジの取付け取外しが可能であり、結合状態で前記ビスマス回収カートリッジを内部に固定できることを特徴とするビスマス回収装置。
【請求項6】
フィルタで包囲された内部にMRT樹脂が充填されたビスマス回収カートリッジを用いて、ビスマス濃度の高くなった銅電解液からビスマスを回収する方法であって、
吸着ステップと溶離ステップとを含み、
前記吸着ステップでは、処理始液を前記ビスマス回収カートリッジに通液して、フィルタで浮遊固形成分を除去すると共にMRT樹脂にビスマスを吸着させることによって処理始液からビスマスを除去した処理後液を得て、
前記溶離ステップでは溶離液を前記ビスマス回収カートリッジに通液して、フィルタで浮遊固形成分を除去すると共にMRT樹脂に吸着したビスマスを溶離することによってビスマス濃度の高くなった溶離後液を得る
ことを特徴とするビスマスの回収方法。
【請求項7】
請求項6のビスマス回収方法で得られた溶離後液を冷却し、ビスマスを硫酸ビスマスとして析出し、ついで固液分離してビスマスを回収する
ことを特徴とするビスマスの回収方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−122113(P2012−122113A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275424(P2010−275424)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】